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29 年4 月2 審議結果報告書 [類 ] 医療用品 04 整形用品 [一般的名称] 人工椎間板 [販 PRESTIGE LP CERVICAL Disc システム [申 ] メドトロニックソファモアダネック株式会社 [申 ] 平成 28 年5月 30 日(製造販売承認申請) 【審 議 結 果平成 29 年4月 21 日の医療機器・体外診断薬部会の審議結果は次のとおりであ り、この内容で薬事分科会に報告することとされた。 本承認申請については、使用成績評価の対象として指定し、次の条件を付した 上で、承認することが適当である。生物由来製品及び特定生物由来製品には該当 しない。 なお、使用成績の調査期間は 5 年とすることが適当とされた。 本製造販売承認申請の承認条件 椎間板ヘルニア又は骨棘を主因とした頚椎の神経根症や脊髄症の治療及び頚椎 前方手術に対する十分な知識・経験を有する医師が、関連学会と協力して作成 された適正使用指針を遵守し、講習の受講により本品を用いた治療に関する技 術を得る等、本品が適切に用いられるよう、必要な措置を講じること。

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平 成 2 9 年 4 月 2 1 日

医 薬 ・ 生 活 衛 生 局

医 療 機 器 審 査 管 理 課

審議結果報告書

[類 別 ] 医療用品 04 整形用品

[一般的名称] 人工椎間板

[販 売 名 ] PRESTIGE LP CERVICAL Disc システム

[申 請 者 ] メドトロニックソファモアダネック株式会社

[申 請 日 ] 平成 28年5月 30日(製造販売承認申請)

【審 議 結 果 】

平成 29年4月 21日の医療機器・体外診断薬部会の審議結果は次のとおりであ

り、この内容で薬事分科会に報告することとされた。

本承認申請については、使用成績評価の対象として指定し、次の条件を付した

上で、承認することが適当である。生物由来製品及び特定生物由来製品には該当

しない。

なお、使用成績の調査期間は 5年とすることが適当とされた。

本製造販売承認申請の承認条件

椎間板ヘルニア又は骨棘を主因とした頚椎の神経根症や脊髄症の治療及び頚椎

前方手術に対する十分な知識・経験を有する医師が、関連学会と協力して作成

された適正使用指針を遵守し、講習の受講により本品を用いた治療に関する技

術を得る等、本品が適切に用いられるよう、必要な措置を講じること。

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審査報告書

平成 29 年 4 月 3 日

独立行政法人医薬品医療機器総合機構

承認申請のあった下記の医療機器にかかる医薬品医療機器総合機構での審査結果は、以

下のとおりである。

[ 類 別 ] : 医療用品 04 整形用品

[ 一 般 的 名 称 ] : 人工椎間板

[ 販 売 名 ] : PRESTIGE LP Cervical Disc システム

[ 申 請 者 ] : メドトロニックソファモアダネック株式会社

[ 申 請 年 月 日 ] : 平成 28 年 5 月 30 日

[ 特 記 事 項 ] : なし

[ 審 査 担 当 部 ] : 医療機器審査第一部

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審査結果

平成 29 年 4 月 3 日

[ 類 別 ] : 医療用品 04 整形用品

[ 一 般 的 名 称 ] : 人工椎間板

[ 販 売 名 ] : PRESTIGE LP Cervical Disc システム

[ 申 請 者 ] : メドトロニックソファモアダネック株式会社

[ 申 請 年 月 日 ] : 平成 28 年 5 月 30 日

審査結果

「PRESTIGE LP Cervical Disc システム」(以下「本品」という。)は、椎間板ヘルニアや骨

棘等の圧迫因子の除去後に頚椎の適応椎間の椎間板を本品に置換することで、適応椎間の

可動性を維持することを目的とした頚椎人工椎間板である。原則として、最低 3 か月の保存

療法が奏効しなかった患者で、画像所見(CT、MRI、X 線等)により確認される椎間板ヘル

ニア又は骨棘を伴う神経根症又は脊髄症に用いることで、可動性の維持とともに除痛が期

待される。本品は、ボール部とトラフ部から構成され、ボール部とトラフ部が組み合わさり、

可動性を維持し、また、それぞれレール、チタンプラズマスプレーコーティング及びグリッ

ドブラスト加工による粗面により椎体に固定される。

非臨床試験の成績として、機械的安全性、生物学的安全性及び MR 装置との相互作用に

関する試験の資料が提出され、特段の問題がないことが示された。

本品の臨床試験の成績として、米国での PMA(Premarket Approval Application)承認取得

の目的で実施された本品の 1 椎間使用における有効性及び安全性を評価するための IDE

G040086 Pivotal 試験(以下「1 椎間治験」という。IDE:Investigational Device Exemption。)、

体内への金属イオン濃度の溶出等を評価するために追加実施された IDE G040086 Metal Ion

試験(以下「Metal Ion 治験」という。)、患者救済目的で Pivotal 試験(1 椎間治験)に追加

して実施された IDE G040086 Continued Access 試験(以下「Continued Access 治験」という。)、

ヒストリカルコントロールとして利用した Atlantis(前方固定用プレート)の 1 椎間の成績

を含む IDE G010188 試験、並びに本品の 2 椎間使用における有効性及び安全性を評価する

ために実施された IDE G050202 試験(以下「2 椎間治験」という。)の成績が提出された。

本品の 1 椎間使用に係る主な評価資料である 1 椎間治験は、頚椎椎間板変性疾患が原因

で 1 椎間の外科的治療が必要な患者 280 例を対象とした多施設共同前向き非劣性既存対照

比較試験である。当該治験では、本品の旧モデル製品である PRESTIGE ST の承認取得のた

めに実施した多施設共同前向き無作為割付非劣性比較試験(IDE G010188 試験)における比

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較対照群である頚椎前方除圧固定術群(以下「ACDF 群」という。ACDF:Anterior Cervical

Discectomy and Fusion。)がヒストリカルに比較対照群として用いられた。有効性については、

主要評価項目として設定された術後 24 か月時点の Overall Success(術後の Neck Disability

Index(以下「NDI」という。)や神経学的所見等の 5 項目を組み合わせた評価項目)を達成

した被験者は、本品群 70.4%(159 例/226 例)、ACDF 群 63.2%(108 例/171 例)であった。

安全性については、有害事象等が評価され、本品との因果関係が否定できない有害事象は 34

例 61 件、8 事象であった。2 椎間治験は、頚椎椎間板変性疾患が原因で 2 椎間の外科的治療

が必要な患者 397 例(本品群 209 例、ACDF 群 188 例)を対象とした多施設共同前向き非劣

性比較対照試験であり、本申請においては 1 椎間治験に含まれていなかった高さ 5mm サイ

ズの評価を行う目的で添付され、その他サイズと同等の有効性及び安全性が示された。

提出された資料について専門協議の議論を踏まえて総合的に評価した結果、本品は椎間

板ヘルニア又は骨棘に起因する頚椎の神経根症又は脊髄症で1椎間レベルの外科的治療が必

要な患者に対し、一定の有効性及び安全性が見込まれると判断した。しかしながら、本品は

国内における使用経験がないことから、国内における有効性及び安全性の評価は重要であ

ると考え、製造販売承認後の使用成績調査が必要であると判断した。さらに、本品の特性を

考慮すると、適切な患者選択や手術手技等が本品の有効性及び安全性を担保する上で重要

であることから、本品の特性を理解し頚椎前方手術に習熟した医師が適応を遵守して使用

する必要があると考え、関連学会と連携して作成された適正使用指針の遵守及び講習の受

講等の必要な措置を講じることが適切と判断し、以下に示す承認条件を付すこととした。

以上、独立行政法人医薬品医療機器総合機構における審査の結果、以下の使用目的で本品

の製造販売を承認して差し支えないと判断し、医療機器・体外診断薬部会で審議されること

が妥当と判断した。

使用目的

本品は、頚椎の椎間板を置換するために用いられる頚椎人工椎間板である。

適応部位

頚椎(C3~C7)の 1 椎間

適応疾患

本品の適応疾患は、画像所見(CT、MRI、X 線等)により確認された次のいずれかを伴

う 1 椎間レベルの神経根症又は脊髄症である。

1. 椎間板ヘルニア

2. 骨棘

なお、本品は最低 3 か月の保存療法が奏効しなかった患者に用いられる。ただし、進行性の

神経障害が確認された場合は、その限りではない。

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承認条件

椎間板ヘルニア又は骨棘を主因とした頚椎の神経根症や脊髄症の治療及び頚椎前方手術

に対する十分な知識・経験を有する医師が、関連学会と協力して作成された適正使用指針を

遵守し、講習の受講により本品を用いた治療に関する技術を得る等、本品が適切に用いられ

るよう、必要な措置を講じること。

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審査報告

平成 29 年 4 月 3 日

1. 審議品目

[ 類 別 ] : 医療用品 04 整形用品

[ 一 般 的 名 称 ] : 人工椎間板

[ 販 売 名 ] : PRESTIGE LP Cervical Disc システム

[ 申 請 者 ] : メドトロニックソファモアダネック株式会社

[ 申 請 年 月 日 ] : 平成 28 年 5 月 30 日

[申請時の使用目的] : 本品は、頚椎の椎間板を置換するために用いられる頚椎人工

椎間板である。

適応部位

頚椎(C3~C7)の 1 椎間

適応疾患

本品の適応疾患は、画像所見(CT、MRI、X 線等)により

確認された次のいずれかを伴う 1 椎間レベルの神経根症

又は脊髄症である。

1. 椎間板ヘルニア

2. 骨棘

なお、本品は最低 3 か月の保存療法が奏効しなかった患者に

用いられる。ただし、進行性の神経障害が確認された場合は、

その限りではない。

[ 特 記 事 項 ] : なし

2. 審議品目の概要

「PRESTIGE LP Cervical Disc システム」(以下「本品」という。)(図 1)は、椎間板ヘル

ニアや骨棘等の圧迫因子の除去後に頚椎の適応椎間の椎間板を本品に置換することで、適

応椎間の可動性を維持することを目的とした頚椎人工椎間板である。一定期間、保存療法が

奏効せず、画像所見(CT、MRI、X 線等)により確認される椎間板ヘルニア又は骨棘を伴う

神経根症又は脊髄症の患者に対し、本品を用いることで可動性の維持とともに除痛が期待

される。本品は、ボール部とトラフ部から構成され、ボール部とトラフ部が組み合わさるこ

とで可動性を維持し、また、それぞれレール、チタンプラズマスプレーコーティング及びグ

リッドブラスト加工による粗面により椎体に固定される。ボール部とトラフ部の原材料に

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は、摩耗の低減と、埋植後、MR 画像によるインプラント周囲の評価を可能とするため、チ

タン基複合材料(Ti-6Al-4V/10wt.%TiC、以下「チタン基複合材料」という。)が採用され

ている。可動域は側屈±10°、屈曲・伸展±10°、トランスレーション±2mm となっており、ね

じりの制限はない。椎間板高(5mm~8mm)と椎体の奥行(12mm~18mm)の組合せにより、

14 サイズの中から適切なサイズを選択して用いる。

図 1. 本品の外観図及び埋植イメージ

図 2. 本品の可動域

3. 提出された資料の概略及び総合機構における審査の概要

本申請において、申請者が提出した資料及び独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下

「総合機構」という。)からの照会事項に対する申請者の回答の概略は、以下のようなもの

であった。

なお、本品に対して行われた専門協議の専門委員からは、「医薬品医療機器総合機構にお

ける専門協議等の実施に関する達」(平成 20 年 12 月 25 日付 20 達第 8 号)第 5 項に該当し

ない旨の申し出がなされている。

チタンプラズマスプレーコーティング

レール

インストゥルメント

の把持部

ボール部

トラフ部

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イ.開発の経緯及び外国における使用状況等に関する資料

【開発の経緯】

<提出された資料の概略>

頚椎の椎間板は線維軟骨で構成され、椎体と椎体をつなぐ、いわゆるクッション装置の役

割を果たしており、椎間板の中心部の髄核が脱出する状態を頚椎椎間板ヘルニアと呼ぶ。ヘ

ルニアが後外側方向に脱出すると神経根が圧迫され、通常は一側上肢への疼痛と感覚・運動

障害が出現する(神経根症)。ヘルニアが後方に脱出すると脊髄が圧迫され、手指巧緻運動

障害、歩行障害及び排尿障害が生じる(脊髄症)1。また、前方からの骨棘による圧迫や後

方からの椎間関節等の肥厚による圧迫は、神経根症及び脊髄症の発症原因となり、これら静

的因子の他、前屈・後屈等の動的因子も脊髄症の原因となる2。

神経根症及び脊髄症の治療法として、一般的には疼痛が主訴の場合、初期療法として、装

具療法(頚椎カラーによる固定)や牽引療法、薬物療法等の保存療法が選択され、保存療法

が無効又は効果不十分な場合、手術療法が選択される。

神経根症の手術選択としては、頚椎前方除圧固定術(ACDF)又は後方からの椎間孔拡大

術が選択され、脊髄症については後方からの脊柱管拡大術(椎弓形成術)又は ACDF が選

択される。

ACDF は、前方進入により頚椎の椎間板及び圧迫因子を取り除いた後、移植骨や脊椎ケー

ジ、頚椎前方固定プレート等を用いて罹患椎間を固定する手術で、国内外において広く行わ

れている術式であり、その有効性及び安全性は確立されている。しかしながら、ACDF は、

除圧後に適応椎間を固定するため、固定術が行われた椎間に隣接している椎間に代償性に

過大な力学的負荷が加わり、椎間板の変性が進行するために生じる隣接椎間障害という合

併症を伴うことがあり、再手術が必要になることもある。

そのような背景から、適応椎間の除圧は行うが固定を行わない頚椎椎間板置換術を可能

とするため、1980年代後半より、本品の原型となる頚椎人工椎間板の開発が進められ、2007

年に本品の前世代品であるPRESTIGE STの1椎間使用が初めて米国においてPMA承認を取

得した(PMA Number:P060018)。

本品は、多椎間固定を可能とするため、PRESTIGE ST を改良し、スクリュー固定から主

にレール及びチタンプラズマスプレーコーティングにより椎体に固定させるデザインとす

るとともに、摩耗の低減と MR 画像による評価を可能とするため、原材料をステンレスス

チールからチタン合金に炭化チタンセラミックスを分散させたチタン基複合材料(Ti-6Al-

4V/10wt.%TiC)へと変更し、2014 年 7 月、IDE 試験成績を添付し、1 椎間使用の PMA 承認

を取得している(PMA Number:P090029)。また、2016 年 7 月、2 椎間使用も IDE 試験成

績を添付し、PMA 承認を取得している(PMA Number:P090029/S003)。

本品の本邦における申請にあたっては、申請時点で米国において取得していた PMA 承認

が 1 椎間使用であったことから、まずは 1 椎間使用を目的とし、本品を用いた 1 椎間レベ

ルの有効性及び安全性を評価するために実施された米国 IDE 試験(IDE G040086 Pivotal 試

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験(以下「1 椎間治験」という。)、 IDE G040086 Metal Ion 試験(以下「Metal Ion 治験」と

いう。)及び IDE G040086 Continued Access 試験(以下「Continued Access 治験」という。))

が添付された。また、本邦におけるニーズを考慮し、本申請において高さ 5mm サイズ(小

サイズ)を同時に承認取得する目的で、本品の 2 椎間レベルの有効性及び安全性を評価する

ために実施された米国 IDE 試験(IDE G050202 試験(以下「2 椎間治験」という。))の成績

が添付された。

【外国における使用状況】

<提出された資料の概略>

本品は、56 か国で販売実績があり、2016 年 6 月までの期間で、計 XX,X 個販売されてい

る。主要な諸外国における本品の承認・許可及び販売状況は、表 1 のとおりである。

なお、外国での本品の使用において、これまでに規制当局等に報告された不具合は 8 件

(インプラントの移動 7 件、不快感 1 件)であり、医療機器本体の変更、回収が必要になっ

た重篤な不具合はなかった(2016 年 6 月時点)。

表 1. 主要な外国における認可状況

国名等

使用目的又は効果 承認取得

年月日

累積販売概数

米国

適応患者の年齢

-骨格が成熟していること。

適応部位

-C3-C7 の 1 又は 2 椎間

適応疾患

-難治性の神経根症(上肢痛及び/又は神経障害を伴

う。頚部痛がない場合も含む)

-脊髄症(椎間高位の異常による)

-ただし、いずれの疾患についても、次の内、少なく

とも一つの画像所見があること。

-椎間板ヘルニア

-頚椎症(骨棘があること)

-椎間板高の明らかな減少(隣接椎間に比べて)

アプローチ

-前方法

保存療法

-6 週間の保存療法に抵抗する患者が対象。ただし、

進行性の症状又は神経根/脊髄の圧迫が認められる場

合はその限りではない。

1 椎間:

2014 年 7 月PMA 取得(P090029)

2 椎間:

2016 年 7 月PMA 取得

P090029/S003

XXX 個

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その他の主要な地域

適応部位

-C2/C3 から C7/T1

適応疾患・適用する状況

-頚椎椎間板症及び不安定症

・隣接椎間が骨癒合している患者(先天性及び医原性の

両方を含む)

・頚椎椎間板症に対する初回手術又は再手術(手術範囲

の延長)

・失敗した前方除圧術、術後の狭窄症又は術後の不安定

性に対する再手術

-偽関節又は失敗した椎体間固定術に対する再手術

EU:

2006 年 6 月CE マーク取得

オーストラリア:

2004 年 4 月

中国:

2006 年 1 月

韓国:

2006 年 11 月

XXXX 個

(英、仏、独 の 合計)

XX 個

XXX 個

XXX 個

・その他の国における累積販売数:XXXX 個

・XX 個以上の販売実績があるその他の国:イタリア、インド、オーストリア、カナダ、サウ

ジアラビア、シンガポール、スイス、スペイン、台湾、チェコ、デンマーク、ニュージーラン

ド、ブラジル、ベルギー、ポーランド、ポルトガル、南アフリカ、メキシコ。

【機器に関する情報】

<提出された資料の概略>

本品の性能に関する規格として、機械的安全性(亜脱臼試験、沈み込み試験、押し出し試

験、静的圧縮試験、圧縮疲労試験、静的圧縮剪断試験、圧縮剪断疲労試験、摩耗試験、チタ

ンプラズマスプレーコーティングの静的引張試験、チタンプラズマスプレーコーティング

の静的剪断試験、チタンプラズマスプレーコーティングの剪断疲労試験、チタンプラズマス

プレーコーティングの摩耗試験及びチタンプラズマスプレーコーティングの厚さ測定)及

び生物学的安全性が設定され、各設定が妥当であることを説明する資料が提出された。

<総合機構における審査の概要>

総合機構は、後述するロ. 設計及び開発に関する資料【機械的安全性】及び【生物学的安

全性】における審査の結果、本品の規格設定に特段の問題はないと判断した。

ロ.設計及び開発に関する資料

【物理的、化学的特性】

<提出された資料の概略>

物理的、化学的特性について、本品のボール及びトラフ部の原材料であるチタン基複合

材料はチタン合金に炭化チタンセラミックスを分散させた新規原材料であるが、原材料規

格中に、物理的、化学的特性が規定されており、また、チタンプラズマスプレーコーティ

ングの原材料である純チタンは既承認前例があるとして、試験が省略された。

<総合機構における審査の概要>

総合機構は新規原材料について、成分の種類及び配合比、気孔率、炭化チタンの粒径、機

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械的性質等、物理的、化学的特性に関する情報が原材料規格として適切に規定されているこ

とに加え、機械的安全性試験、生物学的安全性試験等の成績も踏まえると、物理的、化学的

特性に関する資料を省略することに対し、特段の問題はないと判断した。

【電気的安全性及び電磁両立性】

<提出された資料の概略>

本品は電気を使用しないため、電気的安全性及び電磁両立性に関する資料は省略された。

<総合機構における審査の概要>

総合機構は、電気的安全性及び電磁両立性に関する資料を省略することに対し、特段の問

題はないと判断した。

【生物学的安全性】

<提出された資料の概略>

生物学的安全性について、チタンプラズマスプレーコーティングを含む本品全体に関す

る評価として、本品を試験検体に用いた細胞毒性試験及び抽出試験、並びに新規原材料に対

する評価として本品と同一のチタン基複合材料からなる検体を試験に用いた感作性試験、

刺激性試験(皮内反応)、急性全身毒性試験、遺伝毒性試験(復帰突然変異試験及び染色体

異常試験)及び筋肉内埋植試験の成績が提出され、局所及び全身に対する毒性がないことが

示された。また本品の使用に際し、発生する可能性のある摩耗粉の生物学的安全性について、

ウサギ腰椎硬膜外腔への微粒子投与試験の成績が提出され、投与に関連する神経毒性、全身

毒性及び局所的影響の兆候は認められず、生体適合性に特段の懸念がないことが示された。

<総合機構における審査の概要>

総合機構は、抽出試験の一部において本品特異的に検出された物質の特定及び毒性リス

ク評価を求めた。申請者は、各試験において検出された物質を特定し、当該物質の累積の毒

性リスク評価を行い、患者への健康リスクに特段の懸念はないと説明した。

総合機構は、提出された各試験成績及び上記説明に基づき、審査した結果、本品の生物学

的安全性に特段の問題はないと判断した。

【放射線に関する安全性】

<提出された資料の概略>

本品は、放射線を放出する機器ではないとして、放射線に関する安全性に関する資料は省

略された。

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<総合機構における審査の概要>

総合機構は、放射線に関する安全性に関する資料を省略することに対し、特段の問題はな

いと判断した。

【機械的安全性】

<提出された資料の概略>

本品の機械的安全性について、亜脱臼試験、沈み込み試験、押し出し試験、静的圧縮試験、

圧縮疲労試験、静的圧縮剪断試験、圧縮剪断疲労試験及び摩耗試験が実施され、チタンプラ

ズマスプレーコーティングに関する評価として、静的引張試験、静的剪断試験、剪断疲労試

験及び摩耗試験、並びにチタンプラズマスプレーコーティングの厚さ、気孔率及び気孔径の

測定が実施された。いずれの試験においても設定された規格値を満たすことが示された。ま

た、チタンプラズマスプレーコーティングの骨に対する固定性能については、本品を用いた

動物試験は省略されたが、同等のチタンプラズマスプレーコーティングを有する本邦既承

認品に関する資料が提出され、生体内における骨とコーティングを介したインプラントの

結合能が説明された。

<総合機構における審査の概要>

総合機構は、本品の摺動面はメタルオンメタル構造であるが、提出された摩耗試験の成績

から、海外既承認品である PRESTIGE ST と比較して摩耗量が少ないことが示されており、

ウサギの脊椎(硬膜外)に投与した微粒子投与試験の結果も踏まえると、本品の摩耗粉につ

いて臨床上許容できないリスクはないと判断した。また、その他の機械的安全性試験の成績

及びチタンプラズマスプレーコーティングに関する資料を審査した結果、本品の機械的安

全性に特段の問題はないと判断した。

【安定性及び耐久性】

<提出された資料の概略>

本品の原材料については、特定の貯蔵方法によらなくとも品質を確保でき、経時的にその

安定性及び耐久性が低下しないと考えられるとして、本品の安定性及び耐久性に関する資

料は省略された。

<総合機構における審査の概要>

総合機構は、チタン基複合材料を構成するチタン合金及び純チタンは広く医療用材料と

して使用されており、それらの安定性及び耐久性は既知であること、また、炭化チタンの特

性や本品の臨床使用実績を踏まえても、本品の安定性及び耐久性に臨床上許容できないリ

スクはないと考えられたことから、安定性及び耐久性に関する資料を省略することに対し、

特段の問題はないと判断した。

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【性能】

<提出された資料の概略>

本品の性能は、機械的安全性試験及び臨床試験の成績から説明可能として、性能に関する

資料は省略された。

<総合機構における審査の概要>

総合機構は、性能に関する資料を省略することに対し、特段の問題はないと判断した。

【使用方法】

<提出された資料の概略>

臨床試験の試験成績により説明され、使用方法を裏付ける試験に関する資料の提出が省

略された。

<総合機構における審査の概要>

総合機構は、本品の使用方法を裏付ける試験に関する資料については、臨床試験の試験成

績により確認可能であるため、特段の問題はないと判断した。

【MR 装置との相互作用】

<提出された資料の概略>

本品と MR 装置との相互作用について、磁気誘導性偏位力測定試験、磁気誘導性トルク

測定試験、アーチファクト測定試験及び発熱測定試験の成績が提出され、1.5T 又は 3.0T の

MR 環境にある患者に対して重大なリスクや危険を与える可能性は低いことが示された。ま

た、アーチファクトについては、撮像部位が本品の埋植部位付近又は同一部位にある場合、

画質が損なわれる可能性があるが、測定されたシグナルボイドは本品のサイズ及び形状に

対して低いレベルであることが示された。

<総合機構における審査の概要>

総合機構は、提出された資料を審査した結果、特定の条件下での MR 装置の使用は可能

であると判断した。また、添付文書上に適切に情報提供がなされており、特段の問題はない

と判断した。

ハ.法第 41 条第 3 項に規定する基準への適合性に関する資料

<提出された資料の概略>

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第 41 条第 3 項に基

づき厚生労働大臣が定める医療機器の基準(平成 17 年厚生労働省告示第 122 号。以下「基

本要件」という。)への適合性を宣言する適合宣言書が提出された。

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<総合機構における審査の概要>

総合機構は、本品に関する基本要件への適合性について審査した結果、特段の問題はない

と判断した。

ニ.リスクマネジメントに関する資料

<提出された資料の概略>

本品のリスクマネジメントに関する資料については、ISO 14971:2012(Medical Devices –

Application of risk management to medical devices)及び JIS T 14971:2012(医療機器-リスクマ

ネジメントの医療機器への適用)を参照し実施したリスクマネジメントとその実施体制及

び実施状況の概要を示す資料が提出された。

<総合機構における審査の概要>

総合機構は、リスクマネジメントに関する資料について審査した結果、特段の問題はない

と判断した。

ホ.製造方法に関する資料

<提出された資料の概略>

本品の製造方法に関する資料として、製造工程及び製造施設に関する資料、品質管理に関

する資料並びに滅菌方法に関する資料が提出された。

<総合機構における審査の概要>

総合機構は、製造方法に関する資料を審査した結果、特段の問題はないと判断した。

ヘ.臨床試験の試験成績に関する資料又はこれに代替するものとして厚生労働大臣が認め

る資料

添付資料として、本品の 1 椎間使用における有効性及び安全性を評価するために実施さ

れた IDE G040086 Pivotal 試験(1 椎間治験)、血中の Metal Ion 濃度等を評価するために追加

実施された IDE G040086 Metal Ion 試験(Metal Ion 治験)、患者救済目的で 1 椎間治験に追加

して実施された IDE G040086 Continued Access 試験(Continued Access 治験)、ヒストリカル

コントロールとして利用した Atlantis(前方固定用プレート:本邦既承認品である「滅菌済

ATLANTIS スパイナルシステム、承認番号:21600BZY00581000、承認年月日:平成 16 年 10

月 28日」又は「滅菌済ATLANTIS VISIONスパイナルシステム、承認番号:21800BZY10031000、

承認年月日:平成 18 年 2 月 8 日」i。ただし治験では未滅菌品を用時滅菌して使用。)の 1 椎

間の成績を含む IDE G010188 試験、及び本品の 2 椎間使用における有効性及び安全性を評

i 医療機器・体外診断薬部会終了後に追記(又は「滅菌済 ATLANTIS VISION スパイナルシステム、承認番号:

21800BZY10031000、承認年月日:平成 18 年 2 月 8 日」)

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価するために実施された IDE G050202 試験(2 椎間治験)の成績が提出された。

表 2. 米国で実施された臨床試験一覧

試験名 被験機器・

対照機器 症例数

1 椎間の症候性頚椎椎間板変性疾患を対象とした Artificial disc LP

の前向き多施設共同比較試験

(IDE G040086 Pivotal 試験(1 椎間治験))

本品 280

1 椎間の症候性頚椎椎間板変性疾患を対象とした Artificial disc LP

の前向き多施設共同比較試験

(IDE G040086 Metal Ion 試験(Metal Ion 治験))

本品 30

1 椎間の症候性頚椎椎間板変性疾患を対象とした Artificial disc LP

の前向き多施設共同比較試験

(IDE G040086 Continued Access 試験(Continued Access 治験))

本品 24

1 椎間の症候性頚椎椎間板変性疾患を対象とした Artificial disc の

前向き多施設共同比較試験

(IDE G010188 試験)

PRESTIGE

ST 276

Atlantis 265

2 椎間の症候性頚椎椎間板変性疾患を対象とした Artificial disc LP

の前向き多施設共同比較試験

(IDE G050202 試験(2 椎間治験))

本品 209

Atlantis 188

<提出された資料の概略>

(1)IDE G040086 Pivotal 試験(1 椎間治験)(2005 年 1 月~2008 年 1 月)

1 椎間治験は、頚椎椎間板変性疾患が原因で 1 椎間の外科的治療が必要な患者に被験機器

を埋植し、本品による治療群(以下、「本品群」という。)の術後 24 か月時の Overall Success

rate(有効性及び安全性を組み合わせた全般的な成功率)が既存療法である ACDF(以下

「ACDF 群」という。)との比較において劣らないこと(非劣性)を検証する目的で実施さ

れた多施設共同前向き非劣性既存対照比較試験である。なお、本品群の ACDF 群に対する

非劣性が認められた場合には、副次的に優越性の検証も行う計画とされていた。

対照群には、本品の旧モデル製品である PRESTIGE ST の承認取得のために実施した多施

設共同前向き無作為割付非劣性比較試験(IDE G010188 試験、2007 年 7 月 16 日 PMA 承認

取得、PMA 番号:PMA P060018)における比較対照群(ACDF 群)がヒストリカルに用い

られた。

なお、本治験及び G010188 における対象患者(選択基準及び除外基準)、観察項目(主要

評価項目、副次的評価項目及び安全性評価項目)及び観察時期は同一であった。対照群は、

頚椎椎間板変性疾患患者の 1 椎間の標準的手術手法である ACDF において評価され、ACDF

には、同種移植骨及び前方固定用プレート Atlantis を用いる術式が採用された。

主な患者選択基準、除外基準の概要は表 3 のとおりである。

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表 3. 主な患者選択基準・除外基準及び目標症例数の設定根拠

選択基準 以下の選択基準の全てに合致する患者:

1. 下記に定義された頚椎変性椎間板疾患:

- 画像診断(CT、MRI、X 線など)にて椎間板ヘルニアもしくは骨棘形成が

確認され、いずれか、あるいは両方の圧迫因子が原因で、症候性で難治

性の神経根症あるいは脊髄症と診断された患者

- 病歴にこれら症状(疼痛、機能障害、神経障害等のいずれか)が記載され

ている患者

2. 1 椎間に外科的治療を必要とする患者

3. C3/C4 から C6/C7 の椎間に疾患のある患者

4. 約6週間の保存療法に奏効しない患者、又は保存療法にも関わらず、進行性

の症状又は神経根及び脊髄の圧迫症状を呈した患者

5. 過去に適応椎間に外科的治療がされていないこと、又は術後に適応椎間や

隣接椎間で外科的治療(段階的なものを含む)が予定されていない患者

6. 手術時に 18 歳以上である患者

7. 術前の NDI (Neck Disability Index(以下「NDI」という。))スコアが 30

以上である患者

8. 術前の Neck and Arm Pain Questionnaire(頚部痛及び上肢痛に関する質問

表)での頚部痛のスコアが 20 以上である患者

9. 妊娠可能な女性については手術時に妊娠していない患者

10. 治験実施計画書に従う意思があり、同意文書に署名をする意思のある患者

除外基準 以下の除外基準のいずれかに抵触する患者

1. 適応椎間で外科的治療を要する症候性頚椎椎間板疾患以外の脊椎疾患のあ

る患者

2. X 線撮影(伸展、屈曲)により頚椎不安定性と診断又は過去に診断された患

a) 矢状面で 3.5 mm を超えるトランスレーション

b) 矢状面で 20°を超える椎間可動域

3. 外科的治療を要する椎間が 2 椎間以上の患者

4. 適応椎間の隣接椎間に固定術が施されている患者

5. 適応椎間の後方の椎間関節に重度の病変がある患者

6. 過去に適応椎間に外科的治療が施されたことがある患者

7. 過去に骨軟化症又は骨減少症と診断されたことがある患者

8. 骨粗鬆症の疑いのある以下の条件に当てはまる患者(下記のいずれかのリス

ク要因に合致する患者は、治験への適格性を検証するため DEXA 法による

骨密度測定を実施すること)

a) 黒人以外の閉経後の 60 歳より上の女性で体重が 140 ポンド(63.5 kg)

以下の患者

b) 閉経後の女性で非外傷性の股関節、脊椎、又は手関節を骨折している

患者

c) 70 歳より上の男性

d) 60 歳より上の男性で、非外傷性の股関節又は脊椎を骨折している患者

BMD の T スコアが-3.5 以下(‐3.6、-3.7 など)、又は-2.5 以下(-2.6、

-2.7 など)で脊椎圧迫骨折のある患者は治験から除外する

9. 脊椎に転移性腫瘍のある患者

10. 顕在性又は活動性の、局所又は全身性の細菌性感染症の患者

11. 重度のインスリン依存性糖尿病の患者

12. 慢性又は急性の腎不全、又は腎臓疾患の既往歴のある患者

13. 手術時に口腔内体温が 101℉(38.3℃)より高い患者

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14. ステンレススチール、チタン、又はチタン合金にアレルギーがあると診断さ

れたことのある患者

15. 精神的無能力の患者(疑いのある場合は、精神専門医の診察を受けること)

16. 囚人

17. 妊娠している患者

18. アルコール依存又は薬物乱用の治療を受けている患者

19. 手術予定日の 2 週間以内に、骨代謝の阻害が懸念される薬剤(ステロイド、

メトトレキサートなど)の投与を受ける患者。ただし、周術期に通常使用す

る抗炎症剤を除く

20. 骨形成への影響が知られている内分泌又は代謝疾患の既往歴(パジェット

病、腎性骨ジストロフィー、エーラスダンロス症候群、骨形成不全症など)

のある患者

21. ステロイドなど、術後に機器の安定性を妨げる薬剤の投与が必要な患者。た

だし、血栓予防を目的とした低用量アスピリン、周術期に通常使用する抗炎

症剤を除く

22. 手術前の 28 日以内に他の試験的治療に参加する患者、又は被験機器の埋植

後 16 週間以内に他の治験への参加が予定されている患者

目標とす

る被験者

数とその

設定根拠

目標症例数は 275±5 例とした。

[目標とする被験者数設定根拠]

目標とする被験者数は Overall Success の非劣性仮説に基づいて設定した。

過去の椎体間固定機器の治験経験から、本品群と ACDF 群の Overall Success rate

を 75%と仮定した。非劣性マージン(Δ)を 10%と設定し、Blackwelder の式か

ら両群の非劣性を証明するために必要な症例数は各群 232 例と計算された。しか

し、追跡調査が実施できない症例が全体の 10~15%と仮定して、目標とする被験

者数を 275 ± 5 例と設定した。

同意を取得した 299 例のうち、使用機器の使用拒否等により手術が実施されなかった 19

例を除外した 280 例が本治験に登録され、本品を埋植された 280 例が主要解析対象集団

(Primary Dataset)とされ、主要な治験実施計画書からの逸脱が判明した 4 例を除外した 276

例が治験実施計画書に適合した解析対象集団(Per-Protocol Dataset)とされた。また、ACDF

群については、同意を取得した 313 例のうち、同様に手術が実施されなかった 48 例を除外

した 265 例が本治験に登録され、Atlantis を埋植された 265 例が主要解析対象集団(Primary

Dataset)とされ、主要な治験実施計画書からの逸脱が判明した 16 例を除外した 249 例が治

験実施計画書に適合した解析対象集団(Per-Protocol Dataset)とされた。Per-Protocol Dataset

による解析は、主要評価項目(Overall Success)及びその構成要素のみとし、その統計学的

結果は、副次的解析結果とされた。

埋植を行った症例の背景因子は表 4 のとおりであった。

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表 4. 実施症例の人口統計学データ

項目 PRESTIGE LP 群

(N=280)

ACDF 群

(N=265)

p 値*

PRESTIGE LP 群

対 ACDF 群

年齢(歳)

N 280 265

0.369

平均値 44.5 43.9

SD 8.8 8.8

最小値 23.0 22.0

中央値 44.0 44.0

最大値 78.0 73.0

身長(cm)

N 280 265

0.622

平均値 172.0 171.5

SD 10.4 10.7

最小値 152.4 147.3

中央値 170.2 170.2

最大値 195.6 203.2

体重(kg)

N 280 264**

0.567

平均値 84.8 83.8

SD 20.4 18.8

最小値 45.4 44.5

中央値 81.6 82.1

最大値 154.2 148.8

性別(n(%)) 男性 129(46.1) 122(46.0)

1.000 女性 151(53.9) 143(54.0)

人種(n(%))

白人 271(96.8) 243(91.7)

0.043

黒人 7(2.5) 13(4.9)

アジア人 0(0.0) 2(0.8)

ヒスパニック 1(0.4) 6(2.3)

その他 1(0.4) 1(0.4)

喫煙(n(%)) あり 74(26.4) 92(34.7)

0.041 なし 206(73.6) 173(65.3)

*連続変数は ANOVA、カテゴリカル変数はフィッシャーの正確確率検定により算出 **

1 例欠測による

表 5. 術前の医学的状態及び服薬状況

項目

PRESTIGE LP 群

n(%)

(N=280)

ACDF 群

n(%)

(N=265)

p 値*

PRESTIGE LP 群

対 ACDF 群

症状が出てか

ら手術の計画

に至るまでの

時間

6 週未満 22(7.9) 15(5.7)

0.494 6 週から 6 か月 85(30.4) 89(33.6)

6 か月より長い 173(61.8) 161(60.8)

過去に受けた

頚部手術の数

0 277(98.9) 263(99.2)

0.489

1 3(1.1) 1(0.4)

2 0(0.0) 1(0.4)

3 0(0.0) 0(0.0)

4 0(0.0) 0(0.0)

5 以上 0(0.0) 0(0.0)

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非麻薬製剤** あり 208(74.3) 187(71.1)

0.441 なし 72(25.7) 76(28.9)

弱麻薬製剤** あり 133(47.7) 127(48.3)

0.931 なし 146(52.3) 136(51.7)

強麻薬製剤** あり 62(22.2) 58(22.0)

1.000 なし 217(77.8) 206(78.0)

筋弛緩剤** あり 100(35.8) 114(43.2)

0.095 なし 179(64.2) 150(56.8)

*フィッシャーの正確確率検定、**1 例又は 2 例欠測あり

表 6. 被験機器のサイズ及び適応椎間

高さ×奥行き PRESTIGE LP 群

C3/C4 C4/C5 C5/C6 C6/C7 合計

6 mm x 12 mm 1 4 15 11 31(11.1%)

6 mm x 14 mm 1 10 65 37 113(40.4%)

6 mm x 16 mm 2 1 35 23 61(21.8%)

6 mm x 18 mm 0 0 0 0 0(0.0%)

7 mm x 12 mm 0 0 1 1 2(0.7%)

7 mm x 14 mm 0 2 5 8 15(5.4%)

7 mm x 16 mm 0 4 16 9 29(10.4%)

7 mm x 18 mm 0 0 9 11 20(7.1%)

8 mm x 14 mm 0 0 0 3 3(1.1%)

8 mm x 16 mm 0 0 1 4 5(1.8%)

8 mm x 18 mm 0 0 0 1 1(0.4%)

合計 (%) 4(1.4%) 21 (7.5%) 147(52.5%) 108 (38.6%) 280(100.0%)

1)有効性評価

有効性の評価項目として、術後 24 か月時の Overall Success(以下の①~⑤の 5 項目を組

み合わせた評価項目)が主要評価項目とされ、以下の条件を全て満たした症例が「Success 症

例」と定義された。

① 術後の NDI スコア(表 7)が術前値から 15 ポイント以上改善

② 術前と比較し術後の神経学的所見(運動、知覚、反射)の維持又は改善

③ Functional Spinal Unit(FSU)Heightの維持(術後 3 か月時以降の FSU Height が術後

6 週時と比較して-2mm 以上高い)

④ 「機器と関連性あり」又は「機器及び手術手技との関連性あり」と判定された重篤

な有害事象の発現がない

⑤ Failure として分類される外科的再処置(リビジョン、抜去(被験者の希望を除く)、

補助的固定)を実施していない

なお、主要評価項目のうち、②神経学的所見、④「機器と関連性あり」又は「機器及び手

Functional Spinal Unit(FSU)Height:隣接する 2 個の椎骨とそれらを連結する椎間板等からなるモーシ

ョンセグメント

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術手技との関連性あり」と判定された重篤な有害事象及び⑤Failure として分類される外科

的再処置については、2)安全性評価において後述する。

本治験の評価は非劣性マージンを 10%と設定し、ベイズ流解析を用いて、ACDF 群に対

する非劣性が評価され、事後確率 P(p0-p1<d(delta) | Data;p0:ACDF 群の 95%最高事

後密度区間、p1:本品群の 95%最高事後密度区間)が 0.95 を上回れば非劣性があるものと

評価された。また、同様に ACDF 群に対する優越性が評価され、事後確率 P(p0-p1<0 | Data)

が 0.95 を上回れば優越性があるものと設定された。

表 7. NDI スコア

Section 1 - Pain Intensity

0 I have no pain at the moment.

1 The pain is very mild at the moment.

2 The pain is moderate at the moment.

3 The pain is fairly severe at the moment.

4 The pain is very severe at the moment.

5 The pain is the worst imaginable at the moment.

Section 2 - Personal Care (washing, dressing,

etc.)

0 I can look after myself normally without

causing extra pain.

1 I can look after myself normally, but it causes

extra pain.

2 It is painful to look after myself and I am slow

and careful.

3 I need some help, but manage most of my

personal care.

4 I need help every day in most aspects of self

care.

5 I do not get dressed, wash with difficulty, and

stay in bed.

Section 3 - Lifting

0 I can lift heavy weights without extra pain.

1 I can lift heavy weights, but it causes extra pain.

2 Pain prevents me from lifting heavy weights off

the floor, but I can manage if

3 Pain prevents me from lifting heavy weights,

but I can manage light to

4 I can lift only very light weights.

5 I cannot lift or carry anything at all.

Section 4 - Reading

0 I can read as much as I want to with no pain in

my neck.

1 I can read as much as I want to with slight pain

in my neck.

2 I can read as much as I want with moderate pain

in my neck.

3 I can't read as much as I want because of

moderate pain in my neck.

4 I can hardly read at all because of severe pain in

my neck.

Section 6 - Concentration

0 I can concentrate fully when I want to with

no difficulty.

1 I can concentrate fully when I want to with

slight difficulty.

2 I have a fair degree of difficulty in

concentrating when I want to.

3 I have a lot of difficulty in concentrating

when I want to.

4 I have a great deal of difficulty in

concentrating when I want to.

5 I cannot concentrate at all.

Section 7 - Work

0 I can do as much work as I want to.

1 I can only do my usual work, but no more.

2 I can do most of my usual work, but no

more.

3 I cannot do my usual work.

4 I can hardly do any work at all.

5 I can't do any work at all.

Section 8 - Driving

0 I can drive my car without any neck pain.

1 I can drive my car as long as I want with

slight pain in my neck.

2 I can drive my car as long as I want with

moderate pain in my neck.

3 I can't drive my car as long as I want

because of moderate pain in my neck.

4 I can hardly drive at all because of severe

pain in my neck.

5 I can't drive my car at all.

Section 9 - Sleeping

0 I have no trouble sleeping.

1 My sleep is slightly disturbed (less than 1

hour sleepless).

2 My sleep is mildly disturbed (1-2 hours

sleepless).

3 My sleep is moderately disturbed (2-3 hours

sleepless).

4 My sleep is greatly disturbed (3-5 hours

sleepless).

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5 I cannot read at all.

Section 5 - Headaches

0 I have no headaches at all.

1 I have slight headaches which come

infrequently.

2 I have moderate headaches which come

infrequently.

3 I have moderate headaches which come

frequently.

4 I have severe headaches which come frequently.

5 I have headaches almost all the time.

5 My sleep is completely disturbed (5-7 hours

sleepless).

Section 10 - Recreation

0 I am able to engage in all my recreation

activities with no pain at all.

1 I am able to engage in all my recreation

activities, with some pain in my neck.

2 I am able to engage in most, but not all of

my usual recreation activities because of

pain in my neck.

3 I am able to engage in a few of my usual

recreation activities because of pain in my

neck.

4 I can hardly do any recreation activities

because of pain in my neck.

5 I can't do any recreation activities at all.

※個々の質問に対する回答は 0~5(各項目の左に記載されているポイント)の 6 段階で判定、合

計の NDI スコアは以下の計算式で算出。

NDI スコア(%)=(個々の回答のスコアの合計) /(個々の質問の最大スコアの合計:全て

回答した場合 50)×100

<Overall Success>

本品群の術後 24 か月時の Overall Success(FSU Height を含む)の Success rate は 70.4%

(159 例/226 例)、ACDF 群は 63.2%(108 例/171 例)であった(表 8)。また、FSU Height の

欠測率が高く判定不能症例が多くなったことを踏まえ、申請者により、その他の指標による

評価として Overall Success(FSU Height を除く)についての解析も実施された。その結果、

本品群の術後 24 か月時の Overall Success rate は 79.3%(215 例/271 例)、ACDF 群は 66.8%

(147 例/220 例)であった。

表 8. 術後 24 か月時の Overall Success の結果

項目 PRESTIGE LP 群

(N=280)

ACDF 群

(N=265)

NDI スコア Success rate

n/N(%)

237/270

(87.8)

177/219

(80.8)

神経学的所見 Success rate

n/N(%)

252/270

(93.3)

184/220

(83.6)

FSU Height の維持 Success rate

n/N(%)

205/224

(91.5)

156/164

(95.1)

「Failure」として分類される外科的再処置

N 12 12

機器に関連性あり又は、機器及び手術手技に関連性ありと判断された重篤な有害事象

N 12 10

Overall Success(FSU Height を除く) Success rate

n/N(%)

215/271

(79.3)

147/220

(66.8)

Overall Success(FSU Height を含む)

(主要評価項目)

Success rate

n/N(%)

159/226

(70.4)

108/171

(63.2)

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また、両群とも、いずれの Overall Success rate も術後 24 か月までの術後観察期間

中を通じ安定していたことが示された(表 9 及び表 10)。

表 9. Overall Success rate(FSU Height を含む)の推移

治療群 術 後 (n/N(%))

3 か月 6 か月 12 か月 24 か月

PRESTIGE LP 群

(N=280)

187/238

(78.6)

189/233

(81.1)

187/234

(79.9)

159/226

(70.4)

ACDF 群

(N=265)

113/181

(62.4)

119/174

(68.4)

110/173

(63.6)

108/171

(63.2)

表 10. Overall Success rate(FSU Height を除く)の推移

治療群 術 後 (n/N(%))

3 か月 6 か月 12 か月 24 か月

PRESTIGE LP 群

(N=280)

223/277

(80.5)

224/271

(82.7)

227/274

(82.8)

215/271

(79.3)

ACDF 群

(N=265)

154/239

(64.4)

158/224

(70.5)

150/223

(67.3)

147/220

(66.8)

ベイズ流解析を実施した結果、Overall Success(FSU Height を含む)は、FSU Height の欠

測により判定可能な症例が減少したものの、術後 24 か月時における本品群の ACDF 群に対

する非劣性の事後確率は 99.5%であったことから、本品群の ACDF 群に対する非劣性が認

められた。また、Overall Success(FSU Height を除く)は、術後 24 か月時における本品群の

ACDF 群に対する非劣性の事後確率はほぼ 100%であったことから、本品群の ACDF 群に対

する非劣性が認められ、優越性の事後確率は 99.5%であったことから、本品群の ACDF 群

に対する優越性も認められた(表 11)。

表 11. 術後 24 か月時の Overall Success rate のベイズ流統計解析結果

主要評価 項目

術後 24 か月時の

Success rate

(n/N(%))

術後 24 か月時の

非劣性の事後確率

(Δ=0.10)

術後 24 か月時の

95%最高事後密度区間

PRESTIGE LP 群

ACDF 群 非劣性 優越性 PRESTIGE

LP 群 ACDF 群

Overall Success

(FSU Height を除く)

215/271

(79.3)

147/220

(66.8)

~100.0%

99.5%

78.9%

(74.1%-84.0%)

67.8%

(61.2%-74.0%)

Overall Success

(FSU Height を含む)

159/226

(70.4)

108/171

(63.2) 99.5% 73.6%

68.9%

(62.7%-75.1%)

65.7%

(58.3%-73.4%)

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22

以上の結果から、いずれの解析方法でも非劣性が示され、Overall Success(FSU Height を

除く)においては優越性も示されたことから、申請者は、本品を用いる治療法は頚椎変性疾

患に対する既存の標準治療である ACDF と同様に安全かつ有効であることが示されたとし

ている。

<NDI スコア>

術前後の日常生活における頚部疼痛の影響について、NDI スコアを用いて評価し

た。術後の NDI スコアが術前値から 15 ポイント以上改善した症例が Success 例と

定義され、Success Rate は全ての術後観察期で本品群が ACDF 群を上回っていた。

表 12. NDI スコアの評価における Success rate の推移

治療群 術 後 (n/N(%))

6 週 3 か月 6 か月 12 か月 24 か月

PRESTIGE LP 群

(N=280)

215/277

(77.6)

241/276

(87.3)

241/271

(88.9)

241/272

(88.6)

237/270

(87.8)

ACDF 群

(N=265)

168/245

(68.6)

174/235

(74.0)

173/224

(77.2)

176/222

(79.3)

177/219

(80.8)

表 13. NDI スコアの推移

治療群 項目 術前 術後

6 週 3 か月 6 か月 12 か月 24 か月

PRESTIGE LP 群

(N=280)

例数 280 277 276 271 272 270

平均値 55.5 22.8 17.1 15.8 14.9 15.6

SD 14.7 17.9 17.8 18.3 18.0 18.3

最小値 30.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0

中央値 54.0 20.0 12.0 10.0 8.0 8.0

最大値 98.0 84.0 86.0 88.0 86.0 82.0

ACDF 群

(N=265)

例数 264 245 236 225 223 220

平均値 56.4 32.1 26.8 24.5 23.4 22.4

SD 15.9 18.4 20.9 20.9 21.3 21.5

最小値 26.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0

中央値 58.0 32.0 24.0 20.0 18.0 16.0

最大値 100.0 72.0 88.0 93.3 84.0 88.0

また、NDI スコアの平均は本品群、ACDF 群ともに術後の全ての観察期間におい

て術前に比べて改善しており、これらの改善は統計学的に有意であった(p<0.001:

paired t-test)。ベイズ流統計解析結果では、術後 24 か月時点の ACDF 群に対する

本品群の非劣性の事後確率はほぼ 100%であり、統計学的に非劣性であることが示

された。

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<FSU Height>

FSU Height の維持又はインプラントの沈み込みの有無を評価するため、FSU Height が

測定され、術後 3 か月時以降の FSU Height が術後 6 週時と比較して-2mm 以上高い症例

が Success 例と定義された。適応椎間と解剖学的な関係で治療高位の画像が撮像できなか

った、あるいは画像の悪さが原因で FSU Height が評価できなかった症例があり、術後 24

か月時における評価可能症例数は本品群 224 例/280 例、ACDF 群 164 例/265 例であった。

術後 24 か月時の FSU Height の Success rate は本品群 91.5%(205 例/224 例)、ACDF 群

95.1%(156 例/164 例)であり、ベイズ流統計解析の結果、本品群の ACDF 群に対する非

劣性の事後確率は 99.2%であり、統計学的な非劣性が示された。

表 14. FSU Height の Success rate

治療群 術 後 (n/N(%))

3 か月 6 か月 12 か月 24 か月

PRESTIGE LP 群

(N=280)

229/235

(97.4)

227/230

(98.7)

225/233

(96.6)

205/224

(91.5)

ACDF 群

(N=265)

182/182

(100.0)

174/175

(99.4)

164/172

(95.3)

156/164

(95.1)

有効性の副次評価項目として、X 線画像評価(motion の維持)、全般的健康状態(SF-36)、

疼痛評価(頚部痛、上肢痛)、被験者の満足度、治療結果に対する被験者の評価、歩行評価

(Nurick 分類3)、椎間孔圧迫テストが設定された。

<X 線画像評価(motion の維持)>

適応椎間の motion(可動性)の維持に関し、X 線画像評価を用いて、屈曲伸展の椎間可動

域、骨梁形成、トランスレーション(並進可動域)、左右側屈が評価された。Success の定義

は下記のとおりとされ、評価は二名の独立した放射線科医により測定され、画像所見に相違

があった場合には三番目の放射線科医により判定された。

X 線機能撮影(屈曲、伸展)画像を用いて椎間可動域を測定した結果、本品群の平

均椎間可動域は術前 5.67°、術後 24 か月時 7.51°であり、術後の全観察期間を通じて

約 7°から 8°の範囲で維持されていた(表 15)。術後 24 か月時の Success rate は 67.8%

であった(表 16)。

Success の定義

(PRESTIGE LP 群)

a. 4°< 屈曲伸展の椎間可動域 < 20°

b. 上下椎体間で繋がった骨梁が形成されていないこと

(ACDF 群)

a. 屈曲伸展の椎間可動域≦ 4°

b. 繋がった骨梁が形成されていること。少なくとも側方又は前後方及び/又はインプラントを取り囲む自家骨周りで、上下椎体の連続した骨の癒合が認められること

c. 上位又は下位椎体表面の 50%以上を覆う透過性がないこと

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表 15. 椎間可動域(屈曲・進展)の推移

治療群 項目 術前 術後

6 週 3 か月 6 か月 12 か月 24 か月

PRESTIGE LP 群

(N=280)

例数 260 265 264 258 266 264

平均値 5.67° 6.88° 7.51° 7.47° 7.85° 7.51°

SD 3.69° 3.79° 4.05° 4.46° 4.32° 4.87°

最小値 0.27° 0.45° 0.10° 0.23° 0.34° 0.19°

中央値 4.79° 6.44° 7.44° 7.18° 7.27° 7.27°

最大値 18.10° 21.27° 19.45° 21.03° 19.75° 26.43°

ACDF 群

(N=265)

例数 220 162 174 164 161 161

平均値 7.87° 0.53° 0.33° 0.31° 0.33° 0.35°

SD 4.32° 1.94° 0.34° 0.23° 0.30° 0.33°

最小値 0.74° 0.04° 0.01° 0.01° 0.02° 0.02°

中央値 7.29° 0.29° 0.28° 0.27° 0.28° 0.29°

最大値 21.34° 23.10° 2.71° 2.36° 3.09° 3.42°

表 16. X 線画像評価における Success rate の推移(PRESTIGE LP 群)

項目 Success 症例数及び Success rate (%)

6 週 3 か月 6 か月 12 か月 24 か月

4°<可動域<20° 197 201 189 204 181

骨梁なし 278 274 268 269 253

Success/Failure 197/67 201/56 189/67 203/61 179/85

Success rate 74.6% 78.2% 73.8% 76.9% 67.8%

椎間のトランスレーション(並進可動域)は、側面伸屈の X 線画像により評価さ

れ、本品群の全ての術後評価時点において平均値は 0.90 から 1.03 mm の間であった

(表 17)。

表 17. トランスレーション(並進可動域)の推移

治療群 項目 術後

6 週 3 か月 6 か月 12 か月 24 か月

PRESTIGE LP 群

(N=280)

例数 257 253 250 260 255

平均値 0.90 mm 0.99 mm 0.96 mm 0.97 mm 1.03 mm

SD 0.58 mm 0.59 mm 0.59 mm 0.67 mm 0.70 mm

最小値 0.00 mm 0.00 mm 0.00 mm 0.00 mm 0.00 mm

中央値 0.80 mm 0.87 mm 0.89 mm 0.80 mm 0.85 mm

最大値 2.98 mm 2.91 mm 3.15 mm 3.65 mm 3.71 mm

ACDF 群

(N=265)

例数 198 200 201 209 193

平均値 0.16 mm 0.15 mm 0.20 mm 0.15 mm 0.15 mm

SD 0.12 mm 0.13 mm 0.62 mm 0.12 mm 0.13 mm

最小値 0.00 mm 0.00 mm 0.00 mm 0.00 mm 0.00 mm

中央値 0.14 mm 0.12 mm 0.13 mm 0.13 mm 0.13 mm

最大値 0.66 mm 0.84 mm 8.69 mm 0.61 mm 0.60 mm

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左右側屈は、左右側屈位の X 線画像により評価され、本品群の全ての術後評価時

点において、平均値は 6.15°から 6.78°の範囲内で一定であった(表 18)。

表 18. 左右側屈の推移

治療群 項目 術後

6 週 3 か月 6 か月 12 か月 24 か月

PRESTIGE LP 群

(N=280)

例数 274 274 268 270 264

平均値 6.25° 6.60° 6.78° 6.58° 6.15°

SD 3.06° 3.34° 3.58° 3.75° 3.81°

最小値 0.35° 0.27° 0.33° 0.36° 0.04°

中央値 6.03° 6.19° 6.55° 5.82° 5.63°

最大値 16.55° 15.83° 16.60° 17.52° 18.17°

<全般的健康状態(SF-36)>

全般的な健康状態は SF-36(Medical Outcomes Study 36-Item Short Form Health Survey)を

用いて評価された。身体的側面の QOL(Quality of Life)サマリースコア(PCS:Physical

Component Summary)及び精神的側面の QOL サマリースコア(MCS:Mental Component

Summary)に要約され、スコアが高いほどよい健康状態を示す。Success の定義は、それぞ

れ術後の PCS-術前の PCS≧0、術後の MCS-術前の MCS≧0 と定義された。PCS 及び MCS

は、本品群、ACDF 群ともに術前より高い数値を示しており、QOL が改善していることが

示された。

PCS 及び MCS のベイズ流統計解析の結果、術後 24 か月時の ACDF 群に対する本品群の

非劣性の事後確率は、PCS では 93.6%と統計学的な非劣性は示されなかったが、MCS では

ほぼ 100%であり、非劣性が示されるとともに、優越性の事後確率は 99.2%であったことか

ら、本品群の ACDF 群に対する優越性も確認された。

表 19. SF-36(PCS)の推移

治療群 項目 術前 術後

6 か月 12 か月 24 か月

PRESTIGE LP 群

(N=280)

例数 279 267 270 265

平均値 32.2 47.3 47.6 46.6

SD 7.4 10.9 10.4 11.4

中央値 32.4 50.2 51.7 51.0

ACDF 群

(N=265)

例数 263 222 222 218

平均値 32.0 42.9 43.4 44.4

SD 7.5 11.7 11.7 12.0

中央値 31.5 43.2 46.4 47.9

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表 20. SF-36(MCS)の推移

治療群 項目 術前 術後

6 か月 12 か月 24 か月

PRESTIGE LP 群

(N=280)

例数 279 267 270 265

平均値 44.5 51.3 52.0 52.6

SD 11.5 10.5 10.3 9.6

中央値 46.5 55.1 56.2 56.2

ACDF 群

(N=265)

例数 263 222 222 218

平均値 42.7 49.4 48.8 50.2

SD 12.4 10.7 11.4 11.1

中央値 42.1 52.7 52.6 52.9

<疼痛評価(頚部痛及び上肢痛)>

頚部痛及び上肢痛は、Measuring Health4より一部適用した NRS(Numerical Rating

Scale)を用いて、痛みの強さ及び痛みの頻度を 0 から 10(スコアが低いほど痛みが

少ない)で評価し、それらを掛け合わせることで 0 から 100 となる疼痛スコアを算出

した。Success は、術前のスコア-術後のスコア≧ 0(スコア= 痛みの強さ×痛みの

頻度)と定義された。

頚部痛及び上肢痛のスコアの平均は NDI スコアと同様、両群ともに、術後の全て

の観察時期において、術前に比べて有意に改善していた(表 21 及び表 22)。また、

本品群の術後 24 か月時の頚部痛、上肢痛の Success rate はともに 96.3%(260 例/270

例及び 258 例/268 例)であった。ベイズ流統計解析により、ACDF 群に対する本品群

の非劣性の事後確率は頚部痛、上肢痛ともにほぼ 100%であり、統計学的な非劣性が

示された。

表 21. 頚部痛のスコアの推移

治療群 項目 術前 術後

6 週 3 か月 6 か月 12 か月 24 か月

PRESTIGE LP 群

(N=280)

例数 280 277 276 270 274 270

平均値 67.0 13.3 10.4 10.3 11.8 10.6

SD 20.8 19.4 16.8 18.5 20.4 19.2

最小値 20.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0

中央値 70.0 4.0 2.0 1.5 1.5 1.0

最大値 100.0 81.0 90.0 100.0 100.0 90.0

ACDF 群

(N=265)

例数 264 245 237 223 222 220

平均値 69.3 20.2 17.9 18.5 19.5 16.6

SD 21.5 22.8 23.0 23.3 25.1 24.4

最小値 20.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0

中央値 72.0 12.0 6.0 7.0 6.0 4.0

最大値 100.0 100.0 100.0 100.0 90.0 90.0

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表 22. 上肢痛のスコアの推移

治療群 項目 術前 術後

6 週 3 か月 6 か月 12 か月 24 か月

PRESTIGE LP 群

(N=280)

例数 280 277 276 271 274 268

平均値 59.6 10.8 8.4 8.5 9.4 8.5

SD 26.3 19.3 18.0 19.1 19.7 18.3

最小値 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0

中央値 64.0 1.0 0.0 0.0 0.0 0.0

最大値 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0

ACDF 群

(N=265)

例数 264 245 237 223 221 220

平均値 62.4 13.2 12.7 13.3 16.1 14.2

SD 28.5 23.0 22.6 23.1 25.6 24.3

最小値 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0

中央値 67.0 2.0 1.0 2.0 3.0 1.0

最大値 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0

<被験者の満足度>

割り付けられた治療に対する被験者の満足度が、以下の 3 つの質問を用いて評価さ

れた。回答は「確実に真実(Definitely True)」から「確実に誤り(Definitely False)」

までの 5 段階評価とされ、「確実に真実(Definitely True)」又は「ほぼ真実(Mostly

True)」と評価された場合に Success と定義された。

質問 1. 手術結果に満足している

質問 2. 期待通りの効果であった

質問 3. 同様の状態になった時、同じ治療を受けようと思う

3 つの質問において、本品群の術後 24 か月時の Success 例はそれぞれ 90.0%(243

例/270 例)、87.4%(236 例/270 例)、90.7%(245 例/270 例)であり、ACDF 群の術

後 24 か月時の Success 例はそれぞれ 87.7%(192 例/219 例)、82.2%(180 例/219 例)、

83.5%(183 例/219 例)であり、2 群間で大きな差は認められなかった。

<治療結果に対する被験者の評価>

割り付けられた治療に対する治療結果について、被験者により「完全に回復した

(Completely Recovered)」から「非常に悪化した(Vastly Worsened)」までの 7 段階

評価で評価され、「完全に回復した (Completely Recovered)」又は「とても良くな

った(Much Improved)」、「少し良くなった (Slightly Improved)」と評価された場

合に Success と定義された。 術後 24 か月時の Success 症例は本品群では 95.5%(258

例/270 例)であり、ACDF 群の 90.8%(199 例/219 例)よりも高いことが示された。

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<歩行評価>

歩行評価は、術前及び術後に Nurick 分類を使用して評価された。Nurick 分類は、0

~5 までの Grade で評価し、スコアが高いほど神経学的所見に起因する重い機能障害

があることを示す指標である。神経根症又は脊髄症状がない歩行が正常な症例は

Normal に分類された。Success の定義は、術前のスコア-術後のスコア≧ 0 とされ

た。

Nurick 分類

Grade 0

Grade 1

Grade 2

Grade 3

Grade 4

Grade 5

:根障害はあるが、脊髄障害はない。

:脊髄障害の兆候はあるが、歩行障害はない。

:軽微な歩行障害はあるが、全時間就労を妨げるものではない。

:歩行障害のため、全時間就労できず、また家事の全ては行えない。

しかし他人の援助は要さない。

:歩行に他人の補助か歩行器が必要である。

:車椅子生活又は寝たきり。

術前の歩行評価は本品群の 93.6%(262 例/280 例)、ACDF 群の 76.9%(203 例/264

例)が「Normal」であり、術後 24 か月時では PRESTIGE LP 群の 99.3%(268 例/270

例)、ACDF 群の 96.4%(212 例/220 例)が「Normal」となった。術後 24 か月時の

Success rate は本品群 99.3%、ACDF 群 99.5%であった。

<椎間孔圧迫テスト>

神経根の圧迫の有無が椎間孔圧迫テストにより評価され、術前は両群ともに 40%

以上の症例が「Positive(陽性)」であったが、術後 24 か月時では両群とも「Negative

(陰性)」の症例が 94%を超え、同様であった(表 23)。

表 23. 椎間孔圧迫テストによる評価の推移

治療群 項目 術前 術後

6 週 3 か月 6 か月 12 か月 24 か月

PRESTIGE LP 群

(n(%))

(N=280)

Negative 160(57.1) 271(97.5) 273(98.9) 269(99.3) 271(99.3) 265(98.1)

Positive 120(42.9) 7(2.5) 3(1.1) 2(0.7) 2(0.7) 5(1.9)

ACDF 群(n(%))

(N=265)

Negative 121(46.0) 242(96.0) 228(95.0) 220(96.5) 211(94.2) 208(94.5)

Positive 142(54.0) 10(4.0) 12(5.0) 8(3.5) 13(5.8) 12(5.5)

また、有効性に関するその他の評価項目として、隣接椎間の評価、就労状況及び治

療に対する医師の評価が設定された。

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<隣接椎間の評価>

本治療の隣接椎間への有効性への影響の有無を評価するために、適応椎間の上下椎

の可動域及びトランスレーション(並進可動域)について評価した。

隣接椎間の可動域は全ての観察期間において ACDF 群の可動域が、本品群に比し

て大きく、本品群では、術後 24 か月時点において、それぞれの可動域の平均値は、

適応椎間 7.51°(表 15)、上位隣接椎間 10.40°、下位隣接椎間 6.77°であった(表 24)。

表 24. 隣接椎間の可動域(屈曲・進展)の推移(平均±SD)

PRESTIGE LP 群 (N=280) ACDF 群 (N=265)

症例数 可動域 症例数 可動域

上位隣接椎間

術前 274 8.51° ± 4.13° 230 10.77° ± 4.71°

術後 6 週 271 7.83° ± 3.82° 207 9.66° ± 3.75°

術後 3 か月 269 8.82° ± 3.95° 218 11.03° ± 4.11°

術後 6 か月 268 9.35° ± 4.31° 216 11.33° ± 4.49°

術後 12 か月 272 9.79° ± 4.43° 212 12.05° ± 4.78°

術後 24 か月 267 10.40° ± 4.26° 211 11.88° ± 4.56°

下位隣接椎間

術前 187 6.09° ± 4.02° 128 7.77° ± 4.17°

術後 6 週 199 5.68° ± 3.76° 113 8.22° ± 4.51°

術後 3 か月 199 6.25° ± 3.99° 114 9.24° ± 4.64°

術後 6 か月 187 6.63° ± 4.31° 121 8.71° ± 4.73°

術後 12 か月 195 6.95° ± 4.33° 120 9.53° ± 4.79°

術後 24 か月 188 6.77° ± 4.38° 120 9.10° ± 4.82°

適応椎間の隣接椎間のトランスレーション(並進可動域)は、術後観察期間を通じ

て安定していたことが示された(表 25)。

表 25. 隣接椎間のトランスレーション(並進可動域)の推移 (平均±SD)

PRESTIGE LP 群 (N=280) ACDF 群 (N=265)

症例数 可動域 症例数 可動域

上位隣接椎間 術後 12 か月 272 1.82 mm ± 0.91 mm 212 1.47 mm ± 0.80 mm

術後 24 か月 267 1.94 mm ± 0.96 mm 211 1.46 mm ± 0.79 mm

下位隣接椎間 術後 12 か月 180 1.10 mm ± 0.80 mm 120 0.85 mm ± 0.61 mm

術後 24 か月 177 1.12 mm ± 0.82 mm 120 0.89 mm ± 0.66 mm

<就労状況>

就労状況について、術前に仕事に従事していた症例は本品群で 67.1%(188 例/280 例)、

ACDF 群で 62.6%(166 例/265 例)、術後 24 か月時では本品群で 73.4%(199 例/271 例)、

ACDF 群で 75.9%(167 例/220 例)であり、両群とも同様であった。術後仕事に復帰するま

での日数を Kaplan-Meier 法で解析した結果、日数の中央値は本品群で 40 日、ACDF 群で 60

日であり、統計学的な有意差が認められた(p=0.0019;Log-Rank 検定、p=0.0001;Wilcoxon

検定)。

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<治療に対する医師の評価>

被験者の状態に関し、治験担当医師により各観察時期に 4 段階評価がなされ、術後 24 か

月時で本品群の 94.5%(256 例/271 例)、ACDF 群の 88.2%(194 例/220 例)が Excellent 又

は Good と評価された。

2)安全性評価

安全性評価として、前述の主要評価項目における安全性評価項目、不具合・有害事象及び

予測できない重篤な有害事象の確認が行われた。本品の安全性は、有害事象の特性及び頻度

について、本品群及び ACDF 群を比較することで評価された。有害事象は、FDA 推奨の有

害事象用語のテンプレートを使用し、分類された。当該テンプレートは、MedDRA 器官別

大分類(SOC)及び Medtronic 社のオリジナルの用語集を合わせたものである。

有害事象のグレードは、世界保健機構(WHO)の「急性及び亜急性の毒性作用のグレー

ド分類に関するガイダンス」(Recommendations for Grading of Acute and Subacute Toxic Effects)

に基づき分類された。グレード 3 又は 4 と評価された有害事象及び救急処置室に来院又は

入院となった有害事象が「重篤」とされた。

<主要評価項目>

i)神経学的所見

神経学的所見については、運動、知覚及び反射に関して医師が正常であるか判定し、異常

と判定された場合は、その項目について異常所見の測定が行われた。当該所見の Success の

基準は運動、知覚及び反射の全てにおいて維持又は改善していることとされた。

表 26. 神経学的所見

神経学的所見の

評価項目 術前からの変化

被験者の割合(%)

PRESTIGE LP 群 ACDF 群

運動

改善 59.6 36.4

維持 37.8 58.6

悪化 2.6 5.0

知覚

改善 56.3 41.4

維持 39.3 47.3

悪化 4.4 11.4

反射

改善 32.6 34.5

維持 67.0 60.5

悪化 0.4 5.0

神経学的所見総括

改善 72.6 55.9

維持 20.7 27.7

悪化 6.7 16.4

神経学的所見の各項目では術後 24 か月時において、反射を除き、本品群は ACDF 群と比

較して「改善」と評価された症例が多くなっており、反射については大きな差は認められな

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かった。また、術前及び術後ともに「Abnormal(異常)」とされ、かつ術後 24 か月時の成績

が「Success」と判定された症例は、反射 2 例、運動 1 例のみであった。神経学的所見(総

括)の Success rate は術後 24 か月時では、本品群 93.3%(252 例/270 例)、ACDF 群 83.6%

(184 例/220 例)であり、各項目においても本品群が高かった。ベイズ流統計解析では、

ACDF 群に対する本品群の非劣性の事後確率はほぼ 100%、優越性の事後確率は 99.9%であ

り、非劣性のみならず優越性も示された。

ii)重篤かつ機器又は、機器及び手術手技に関連する有害事象

術後 24 か月時までに発生した重篤かつ機器又は、機器及び手術手技に関連する有害事象

は、本品群で 14 例/280 例(5.0%)33 件、ACDF 群で 13 例/265 例(4.9%)22 件であり、当

該事象の詳細は表 28 のとおりである。

表 27. 重篤かつ機器又は、機器及び手術手技に関連する有害事象

(術後 24 か月まで)

有害事象

PRESTIGE LP 群 (N=280) ACDF 群 (N=265)

件数 報告例数 (%)

件数 報告例数(%)

全ての有害事象 33 14(5.0) 22 13(4.9)

異所性骨化 1 1(0.4) 2 1(0.4)

インプラントに関する事象 4 4(1.4) 0 0(0.0)

頚部痛又は(及び)上肢痛 7 5(1.8) 5 4(1.5)

神経系障害 5 5(1.8) 4 4(1.5)

骨癒合不全 0 0(0.0) 6 6(2.3)

その他 0 0(0.0) 1 1(0.4)

その他の疼痛 3 3(1.1) 2 2(0.8)

脊椎に関する事象 12 7(2.5) 1 1(0.4)

外傷 1 1(0.4) 0 0(0.0)

創傷(非感染性) 0 0(0.0) 1 1(0.4)

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表 28. 重篤かつ機器又は、機器及び手術手技に関連する有害事象の詳細

(PRESTIGE LP 群) 被験者

番号

(手術高位)

FDA

Hybrid

MedDRA

AE LLT

重症度

グレード

関連性 処置 転帰

AF*(C5/6)

インプラントに関する事象

機器の不具合

3 機器に関連性あり

[薬剤投与、理学療法]

回復 頚部痛又は(及び)上肢痛

頚部痛 3 機器に関連性あり

[薬剤投与、CT、MRI]→[理学療法、薬剤投与、抜去(術後 259 日)、C5/6 の ACDF、カラー固定]

AQ*(C4/5)

脊椎に関する事象

頚椎狭窄症

(椎間孔狭窄)

3 機器に関連性あり

[薬剤投与、CT]

保留※

外傷 転倒 3 機器に関連性あり

[薬剤投与、抜去(術後 49 日)、C4/5 のACDF]→[薬剤投与]→[薬剤投与、MRI]→[薬剤投与、理学療法、C4/5 及び C5/6 の左後方椎間孔拡大術、MRI]→[薬剤投与、他の専門医への紹介、理学療法、トリガーポイント注射]→[薬剤投与]

AR*(C5/6)

頚部痛又は(及び)上肢痛

頚部痛 3

機器 /手術手技に関連性あり

[抜去(術後 159 日)、C5/6 の ACDF]

回復

頚部痛又は(及び)上肢痛

頚部硬直 3

機器 /手術手技に関連性あり

[抜去(術後 159 日)]

その他の疼痛

頭痛 3

機器 /手術手技に関連性あり

[薬剤投与]→[薬剤投与、理学療法、ブロック注射]→[薬剤投与]

AS*(C5/6)

脊椎に関する事象

頚椎狭窄症

(椎間孔狭窄)

3

機器 /手術手技に関連性あり

[EMG、CT]→[EMG(筋電図)、CT、神経伝導速度検査、薬剤投与]→[薬剤投与、C3/4 及び C5/6 の左後方椎弓切除術]→[薬剤投与、C6/7 の人工椎間板置換術(他社の人工椎間板を使用)、理学療法]→[薬剤投与、他の専門医への紹介、X 線、ブロック注射]→[薬剤投与、ブロック注射、理学療法]

後遺症あり

AT*(C5/6)

異所性骨化 脊椎骨棘 3

機器 /手術手技に関連性あり

なし

後遺症あり

脊椎に関する事象

頚椎椎間板ヘルニア

3

機器 /手術手技に関連性あり

[薬剤投与、理学療法]

脊椎に関する事象

頚椎狭窄症

(椎間孔狭窄)

3

機器 /手術手技に関連性あり

[薬剤投与、理学療法、温熱療法、超音波]

脊椎に関する事象

変形性頚椎症

3

機器 /手術手技に関連性あり

[CT、薬剤投与、理学療法]→[EMG、神経伝導速度検査 ]→[C5/6 の左椎間孔拡大術]→[薬剤投与、MRI]

P*(C4/5)

インプラントに関する事象

機器の移動 3 機器に関連性あり

[薬剤投与、抜去(術後 1 日)、C4/5 の ACDF]

回復

脊椎に関する事象

頚椎骨折 3 機器に関連性あり

[骨密度測定]

*情報提供時に置き換え

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被験者

番号

(手術高位)

FDA

Hybrid

MedDRA

AE LLT

重症度

グレード

関連性 処置 転帰

AU*(C6/7)

脊椎に関する事象

頚椎圧迫 3

機器 /手術手技に関連性あり

[MRI]

回復

脊椎に関する事象

頚椎椎間板ヘルニア

3

機器 /手術手技に関連性あり

[MRI]

脊椎に関する事象 頚椎狭窄症

(脊柱管狭窄)

3

機器 /手術手技に関連性あり

[抜去(術後 150 日)、C6/7 の ACDF]

AV*(C6/7)

神経系障害 頚椎神経根障害

3 機器に関連性あり

[薬剤投与]

保留※

脊椎に関する事象

頚椎椎間板ヘルニア

3 機器に関連性あり

-

脊椎に関する事象

頚椎狭窄症(椎間孔狭窄)

3 機器に関連性あり

[MRI]→[抜去(術後 518 日)、C6/7 の ACDF、薬剤投与、他の専門医への紹介、EMG、CT、ミエロ CT、MRI、X 線]

AG*(C6/7)

神経系障害 頚椎神経根障害

3

機器 /手術手技に関連性あり

[薬剤投与、理学療法]→[薬剤投与、理学療法]→[他の専門医への紹介]→[薬剤投与、抜去(術後 215 日)、C5/7 の ACDF、X 線]→[ブロック注射、後枝内側枝高周波熱凝固法、C5/7 の頚椎後方固定、C6/7 の頚椎後方椎間孔拡大術、薬剤投与]→[MRI、ブロック注射、X 線、神経切離、薬剤投与]→[薬剤投与、理学療法、MRI]

保留※

AA*(C5/6)

インプラントに関する事象

機器の破損 3 機器に関連性あり

[新しい人工椎間板を使用] 回復

BB*(C5/6)

インプラントに関する事象

機器の移動 3 機器に関連性あり

[X 線]

回復

脊椎に関する事象

脊柱後弯症 3 機器に関連性あり

[新しい人工椎間板でリビジョン(術後 56

日)、装具療法、活動制限]

AW*(C6/7)

神経系障害 神経根痛 3

機器 /手術手技に関連性あり

[薬剤投与、理学療法]

回復

その他の疼痛

筋痙縮 3

機器 /手術手技に関連性あり

[薬剤投与、理学療法]→[薬剤投与]→[理学療法]→[抜去(術後 423 日)、C5/7 の ACDF、カラー固定、骨成長刺激、薬剤投与、理学療法]

頚部痛又は(及び)上肢痛

肩痛 3 機器に関連性あり

[薬剤投与]→[理学療法]→[薬剤投与]→[抜去(術後 423 日)、C5/7 の ACDF、カラー固定、骨成長刺激、薬剤投与、理学療法]

回復

*情報提供時に置き換え

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被験者

番号

(手術高位)

FDA

Hybrid

MedDRA

AE LLT

重症度

グレード

関連性 処置 転帰

AX*(C5/6)

頚部痛又は(及び)上肢痛

頚部痛 3 機器に関連性あり

[理学療法、ブロック注射、MRI]

保留※

頚部痛又は(及び)上肢痛

肩滑液包炎 3 機器に関連性あり

[薬剤投与、エクササイズ]

神経系障害 四肢ピリピリ感

3 機器に関連性あり

[薬剤投与]

その他の疼痛

関節の炎症 3 機器に関連性あり

[抜去(術後 1161 日)、C5/6 の ACDF、C6/7

の人工椎間板置換術(他社の人工椎間板を使用)]

AY*(C4/5)

頚部痛又は(及び)上肢痛

頚部痛 3 機器に関連性あり

[薬剤投与、他の専門医への紹介、理学療法]

回復

神経系障害 神経根痛 3 機器に関連性あり

[薬剤投与、他の専門医への紹介、理学療法、トリガーポイント注射]→[薬剤投与、他の専門医への紹介、ブロック注射]→[薬剤投与、他の専門医への紹介、ブロック注射、ラジオ波焼灼療法、MRI]→[薬剤投与、ミエロ CT、抜去(術後 469 日)、C4/5 の ACDF、カラー固定]

※保留:120 か月までフォローアップ中のため

iii)Failure として分類される外科的再処置

有害事象又は治療の失敗により必要となった追加手術が外科的再処置とされ、リビ

ジョン、抜去、補助的固定、再手術(リビジョン、抜去、補助的固定に分類されない

全ての手術)及びその他に分類された。主要評価項目の評価にあたり、これらのうち、

リビジョン、抜去、補助的固定が「Failure」として分類された。

表 29. 外科的再処置(術後 24 か月まで)

事象数合計 報告された例数(%)

PRESTIGE LP 群

ACDF 群 PRESTIGE

LP 群 ACDF 群

適応椎間の何らかの再手術 16 27 14(5.0%) 21(7.9%)

リビジョン 1 5 1(0.4%) 5(1.9%)

抜去 10 11 10(3.6%) 11(4.2%)

補助的固定 2 9 2(0.7%) 83.0%)

再手術 3 2 3(1.1%) 2(0.8%)

その他(適応椎間以外の手術) 100 66 62(22.1%) 50(18.9%)

a)リビジョン

リビジョンは、本品群で 1 件報告され、当該症例では、機器の移動及び後弯変形が

認められたため、術後約 2 か月時に被験機器が抜去され、異なるサイズの機器が埋植

された。初回手術後約 6 か月時に当該事象(後弯変形)は回復した。ACDF 群では、

*情報提供時に置き換え

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5 件のリビジョンが報告され、リビジョンの発現率は本品群では ACDF 群より低かっ

た(本品群 0.4%(1 例/280 例)1 件、ACDF 群 1.9%(5 例/265 例)5 件)が、統計学

的な差は認められなかった。

b)抜去

本品群 10 例/280 例(3.6%)10 件、ACDF 群 11 例/265 例(4.2%)11 件において機

器の抜去術が施行され、本品群では、主に疼痛及び神経学的症状に対する治療を目的

として行われた処置であり、機器の抜去後には頚椎固定術が実施された。本品群での

発現率は ACDF 群のそれに比し低かったが、統計学的な差は認められなかった。

c)補助的固定

補助的固定については、本品群で 2 例/280 例(0.7%)2 件、ACDF 群で 8 例/265 例

(3.0%)9 件であり、本品群での発現率は ACDF 群のそれに比し統計学的に低かっ

た。本品群のうち 1 例は、術後 2 週で頚椎捻挫になり、疼痛が持続し保存療法が無効

であったことから、術後約 9 か月時に後方からの補助的固定術を受けた。また、別の

1 例では、疼痛及び神経学的症状が持続し、術後 7 か月時、被験機器が抜去され 2 椎

間の ACDF が施行され、さらに術後 12 か月時に後方椎間孔拡大術及び補助的固定手

術が施行された。

d)再手術、その他

再手術と分類された外科的再処置について、本品群での発現率は 3 例/280 例(1.1%)

3 件、ACDF 群で 2 例/265 例(0.8%)2 件であり、その他と分類された外科的再処置

については、本品群で 22.1%、ACDF 群で 18.9%であり、いずれも本品群での発現率

が ACDF 群のそれに比し高かったが、いずれの比較においても統計学的な差は認め

られなかった。

e)Failure と分類される外科的再処置(リビジョン、抜去、補助的固定)

術後 24 か月までに発現した Failure と分類される外科的再処置例は、本品群、ACDF

群ともに 12 例であった。本品群における再処置の実施時期は、術後 1 日:1 件(抜

去)、~術後 6 週:2 件(抜去、リビジョン各 1 件)、~術後 3 か月:1 件(抜去)、

~術後 6 か月:4 件(抜去 3 件、補助的固定 1 件)、~術後 12 か月:5 件(抜去 3 件、

補助的固定 1 件、再手術 1 件)、~術後 24 か月:3 件(抜去 1 件、再手術 2 件)で

あった。また、主要評価項目の術後 24 か月を超えた時期では、Failure と分類される

外科的再処置例は、本品群及び ACDF 群でそれぞれ、4 例及び 3 例認められた。

iv)抜去された機器の分析

抜去した機器について、組織学的検査及び冶金学的分析が実施された。組織学的検

査では、関節形成術に用いられる金属製インプラントの近傍の組織における所見と同

様の組織反応が認められた。冶金学的分析では、ほとんどの機器の表面で摩耗した所

見のみ認め、製造工程での欠陥を示す破損や損傷の証拠は認められなかった。

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<有害事象>

手術時から術後 24 か月時までに報告された有害事象は、本品が 257 例/280 例(91.8%)

1559 件、ACDF 群が 219 例/265 例(82.6%)1198 件であったが、本品群のフォローアップ

率が全観察期間において ACDF 群よりも高かったことによるものと説明された。主な事象

は、「異所性骨化」(本品群 9.6%、ACDF 群 5.7%)、「神経系障害」(本品群 48.6%、ACDF 群

40.8%)、「脊椎に関する事象」(本品群 29.6%、ACDF 群 20.8%)等であった。

重篤な有害事象は、本品群で 133 例/280 例(47.5%)433 件、ACDF 群で 98 例/265 例

(37.0%)267 件であり、「頚部痛又は(及び)上肢痛」(本品群 13.2%、ACDF 群 9.1%)、

「その他の疼痛(本品群 15.4%、ACDF 群 10.2%)」、「脊椎に関する事象」(本品群 14.6%、

ACDF 群 11.7%)等であった。

表 30. 術後 24 か月までに発現した有害事象及び重篤な有害事象

有害事象カテゴリー

全ての有害事象 重篤な有害事象**

PRESTIGE

LP 群

(N=280)

ACDF 群 (N=265)

PRESTIGE

LP 群

(N=280)

ACDF 群 (N=265)

件数 報告例数(%)

件数 報告例数(%)

件数 報告例数(%)

件数 報告例数(%)

全ての有害事象 1559 257(91.8) 1198 219(82.6) 433 133(47.5) 267 98(37.0)

解剖学的/技術的困難 2 2(0.7) 0 0(0.0) 0 0(0.0) 0 0(0.0)

悪性腫瘍 5 3(1.1) 2 2(0.8) 4 2(0.7) 2 2(0.8)

心血管系障害 21 16(5.7) 20 18(6.8) 10 9(3.2) 8 7(2.6)

死亡* 0 0(0.0) 0 0(0.0) 0 0(0.0) 0 0(0.0)

嚥下障害/発声困難 33 26(9.3) 23 22(8.3) 4 3(1.1) 1 1(0.4)

胃腸系障害 55 35(12.5) 68 38(14.3) 22 13(4.6) 20 12(4.5)

異所性骨化 31 27(9.6) 21 15(5.7) 13 11(3.9) 12 8(3.0)

インプラントに関する事象 17 16(5.7) 5 5(1.9) 4 4(1.4) 0 0(0.0)

感染症 57 34(12.1) 37 27(10.2) 17 11(3.9) 8 8(3.0)

頚部痛又は(及び)上肢痛 275 144(51.4) 213 124(46.8) 52 37(13.2) 36 24(9.1)

神経系障害 242 136(48.6) 217 108(40.8) 52 35(12.5) 32 27(10.2)

骨癒合不全 0 0(0.0) 30 29(10.9) 0 0(0.0) 6 6(2.3)

その他 177 93(33.2) 133 81(30.6) 45 28(10.0) 30 22(8.3)

その他の疼痛 278 146(52.1) 231 132(49.8) 67 43(15.4) 34 27(10.2)

呼吸器系障害 34 24(8.6) 23 17(6.4) 9 7(2.5) 1 1(0.4)

脊椎に関する事象 172 83(29.6) 103 55(20.8) 80 41(14.6) 59 31(11.7)

外傷 71 61(21.8) 44 35(13.2) 22 20(7.1) 10 10(3.8)

泌尿生殖器系障害 42 26(9.3) 11 9(3.4) 20 15(5.4) 4 4(1.5)

血管障害 13 12(4.3) 4 4(1.5) 7 6(2.1) 0 0(0.0)

創傷(非感染性) 34 25(8.9) 13 13(4.9) 5 5(1.8) 4 4(1.5) *MedDRA コーディングに従い、死亡には原因不明の死亡数のみを記載し、原因の特定ができる死亡については各有害事象カテゴリーに含めた。

**重篤な有害事象には、WHO グレード 3(対症療法の実施にも関わらず、日常活動が著しく損なわれ、機器の抜去が必要であるかもしれない。)及びグレード 4(機器の抜去が必要であり、患者は致死リスクに面している。)が含まれる。

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37

機器又は、機器及び手術手技に関連する有害事象は、本品群が ACDF 群よりも低く(12.1%、

15.5%)、ほぼ全てのカテゴリーにおいて同様の発現率であったが、インプラントに関する

事象は本品群の方が高く、機器の移動等であった。

表 31. 機器又は、機器及び手術手技に関連する有害事象(術後 24 か月まで)

有害事象カテゴリー

PRESTIGE LP 群 (N=280)

ACDF 群 (N=265)

件数 報告例数

(%) 件数

報告例数(%)

全ての有害事象 61 34(12.1) 60 41(15.5)

嚥下障害/発声困難 0 0(0.0) 1 1(0.4)

異所性骨化 4 4(1.4) 3 2(0.8)

インプラントに関する事象 16 15(5.4) 5 5(1.9)

頚部痛又は(及び)上肢痛 9 7(2.5) 6 4(1.5)

神経系障害 11 9(3.2) 7 7(2.6)

骨癒合不全 0 0(0.0) 27 27(10.2)

その他 2 2(0.7) 2 2(0.8)

その他の疼痛 5 5(1.8) 4 3(1.1)

脊椎に関する事象 13 8(2.9) 4 2(0.8)

外傷 1 1(0.4) 0 0(0.0)

創傷(非感染性) 0 0(0.0) 1 1(0.4)

※ 骨癒合不全はコンセプトの違いによる

予測できない重篤な有害事象は下記のように定義され、術後 24 か月までに当該有害事象

を発現した症例は 1 例であった。

・治験実施計画又は申請書において、その特性、重篤度又は発現率が示されていな

い、機器が原因となる又は関連性のある、健康又は安全性又は生命を脅かす事象

又は死亡等の全ての重篤な有害事象

・又は、被験者の権利、安全性、福祉に係る、機器と関連性のあるその他の予測で

きない重篤な事象

当該症例は、椎間板が適応椎間に残存していることを認め、その残存物が術後、ヘ

ルニア症状を引き起こしていた。機器が抜去され、その後被験者は ACDF による治療

を受けた。当該症例は、外科的再処置を受けたこと、及び神経学的所見結果から、術

後 24 か月時の Overall Success は Failure と判定されたが、NDI スコアについては、全

ての術後観察時期において Success であった。

死亡例は 8 例(本品群 3 例、ACDF 群 5 例)あったが、いずれも本治験との関連

性は否定された。

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表 32. 全ての死亡例(術後 24 か月まで)

治療群 所見

PRESTIGE LP 群 悪性腫瘍

PRESTIGE LP 群 悪性腫瘍

PRESTIGE LP 群 自ら薬物を過剰に摂取したことによる心肺停止

ACDF 群 不明(遺族が死因に関する情報提供を拒否)

ACDF 群 自殺

ACDF 群 心筋梗塞

ACDF 群 急性心筋梗塞

ACDF 群 心停止

隣接椎間への外科的処置について、隣接椎間に生じた症状の有無及び進行に関する

データの収集は前向きに実施されなかったが、隣接椎間の症状、診断、治療及び手術

と考えられる事象の検索のため、疼痛(頚部及び又は上肢)、異常感覚(頚部及び又

は上肢)、神経系、脱力、筋肉のけいれん、手術、偽関節又は頭痛とコーディングさ

れた有害事象の原資料を詳細に再調査することにより、隣接椎間の症状、治療及び受

けた手術が評価された。表 33 のとおり、隣接椎間に手術を受けた被験者数(被験機

器とともに隣接椎間にも手術を受けた被験者を含む)は本品群で 7 例/280 例(2.5%)

9 件、ACDF 群で 11 例 /265 例(4.2%)14 件であり、有意差は認められなかった

(p=0.2477:Fisher’s Exact Test)。加えて、被験機器による適応椎間以外の他の椎間

(頚椎の隣接椎間の手術、頚椎の他の椎間の手術、頚椎以外の脊椎の手術及び脊椎以

外の手術)に手術を受けた被験者の割合は PRESTIGE LP 群(22.1%)及び ACDF 群

(18.9%)で同程度であった。本品群の隣接椎間に施行された外科的再処置の一覧を

表 34 に示す。

表 33. 隣接椎間に外科的処置を受けた被験者数(術後 24 か月まで)

時点

PRESTIGE LP 群 (N=280)

ACDF 群 (N=265)

報告例数 (%)

件数 報告例数 (%)

件数

手術 0(0.0%) 0 0(0.0%) 0

術後 1 日-4 週 0(0.0%) 0 0(0.0%) 0

術後 6 週 0(0.0%) 0 0(0.0%) 0

術後 3 か月 0(0.0%) 0 3(1.1%) 3

術後 6 か月 1(0.4%) 1 0(0.0%) 0

術後 12 か月 5(1.8%) 5 8(3.0%) 9

術後 24 か月 3(1.1%) 3 2(0.8%) 2

合計(術後 24 か月まで) 7(2.5%) 9 11(4.2%) 14

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表 34. 隣接椎間を含む高位に施行された外科的再処置(術後 24 か月まで)

(PRESTIGE LP 群)

適応椎間 事象名 隣接椎間の手術 までの期間

手術の詳細

C6/C7 椎間孔狭窄を伴う C6/C7 の頚椎神経根症

術後 6 か月 (術後 215 日)

C6/C7 の被験機器の抜去、C5/C7 の ACDF

C4/C5 C5/C6、C6/C7 の脊柱管狭窄、C5/C6 の骨棘形成、後縦靱帯の骨化

術後 12 か月 (術後 321 日)

自家骨を用いた C5/C7 のACDF、C6 の椎体切除術

C5/C6 C6/C7 右方の椎間板ヘルニア、海に飛び込んだのちに生じた C7の神経根症

術後 12 か月 (術後 377 日)

C6/C7 の顕微鏡下での右ACDF

C6/C7 右上肢の神経根症を伴う C5/C6の椎間板ヘルニア

術後 12 か月 (術後 423 日)

C6/C7 の被験機器の抜去、C5/C7 の ACDF

C5/C6 C3/C4、C5/C6 の椎間孔狭窄 術後 12 か月 (術後 528 日)

C3/C4、C5/C6 の左後方椎弓切除術

C6/C7 椎間孔狭窄を伴う C6/C7 の頚椎神経根症(被験機器抜去後)

術後 12 か月 (術後 568 日)

C5/C7 の頚椎後方固定、C6/C7 の頚椎後方椎間孔拡大術

C4/C5 転落の結果生じた C4/C5、C5/C6の椎間孔の狭小化

術後 24 か月 (術後 708 日)

C5/C6、C6/C7 の左後方椎間孔拡大術

C5/C6 C6/C7 の椎間板ヘルニア、C5/C6の骨棘形成

術後 24 か月 (術後 732 日)

C5/C6 の被験機器抜去、C5/C7 椎体部分切除術及び ACDF

C6/C7 椎間孔狭窄を伴う C6/C7 の頚椎神経根症(被験機器抜去後)

術後 24 か月 (術後 896 日)

C2/C5、C7/T1 両側の内側枝神経切断術

<適応椎間別の有害事象>

術後 24 か月までの適応椎間別の有害事象については、C5/C6 を除く適応椎間にお

ける 95%信頼区間は 0 をまたぐ範囲であった。C5/C6 における 95%信頼区間は全範

囲で正の値であったが、当該区間はその他の適応椎間における 95%信頼区間の範囲

に含まれるものであった。

表 35. 治療高位別の有害事象(術後 24 か月まで)

適応椎間 PRESTIGE LP 群

(N=280)

ACDF 群

(N=265)

PRESTIGE LP 群及び ACDF群の有害事象の発現割合の差異に関する点推定値及び

95%信頼区間*

C3/C4 4/4(100%) 9/10(90.0%) 10.0%(-19.9%,39.9%)

C4/C5 20/21(95.2%) 12/15(80.0%) 15.2%(-5.6%, 36.1%)

C5/C6 135/147(91.8%) 124/149(83.2%) 8.6%(1.1%, 16.2%)

C6/C7 98/108(90.7%) 74/91(81.3%) 9.4%(-0.1%, 19.0%) *95%信頼区間は、Farrington-Manning 法を用いて算出

<X 線画像所見>

本品又は ACDF 群の Graft の弯曲、破損、脱転及び破砕について、X 線画像により

独立した放射線科医二名によって評価された。本品群では、1 例において、術後 3 か

月時の所見で、ボール部のタブの折損が認められた。画像の読影時点では報告されな

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かったが、放射線科医は、レトロスペクティブに評価すれば、手術・退院時及び術後

6 週時の画像でもその証拠を認める、とコメントした。これらの X 線画像所見は、機

器の設置の際に機器の小破片が欠け落ちたという術者の報告にあるように、有害事象

の記録からも裏付けられた。欠落した破片は回収され、機器の機能に影響はなかった。

当該症例は、全ての術後観察時期において Overall Successの判定は Successとされた。

また、別の 1 例において、術後 6 週時点で機器の弯曲が報告され、この所見は術後

24 か月まで認められた。別の放射線科医はこれに合意せず、読影した全ての所見で

も報告はなかった。また、弯曲を報告した放射線科医は、当該被験者で術後 12 か月

まで機器の脱転を報告した。別の放射線科医は同じく、この所見に合意せず、脱転の

所見はないとした。術後 24 か月時の Overall Success の判定は Success であった。術

後 24 か月時に、異常所見を報告した放射線科医による脱転の報告はなくなった。

ACDF 群では、インプラントの脱転が 3 例認められた。脱転に関連して外科的再処

置に至った例はなかった。別の 1 例における処置は、手術による血腫を排出したため、

「その他」と分類された。

また、ACDF 群では、5 例に移植骨の破損が報告された。これらの被験者のうち 3

例が、その後リビジョン(1 例)及び抜去(2 例)に分類される外科的再処置を受け

た。リビジョンは、隣接高位の固定に必要とされたために施行された。抜去の 1 例は

選択的抜去であった。残りの 1 例は、感染に関連して行われた。

3)Per-Protocol Dataset における結果

Per-Protocol Dataset(治験実施計画書からの逸脱が判明した症例を除外した解析対

象集団)の主要評価項目及びその構成評価項目の結果及びベイズ流統計解析結果は表

36 のとおりであった。Primary Dataset の解析結果同様、Per-Protocol Dataset で実施し

た全ての統計学的比較により、本品群の ACDF 群に対する非劣性が示され、神経学的

所見及び Overall Success(FSU Height を除く)では統計学的な優越性が示された。

表 36. Per-Protocol Dataset での術後 24 か月時の Success rate 及び

ベイズ流統計解析結果

項目 PRESTIGE LP 群

(N=276)

ACDF 群

(N=249)

非劣性の

事後確率

優越性の

事後確率

NDI スコア 88.0% 81.2% ~100.0% 91.9%

神経学的所見 93.2% 83.1% ~100.0% ~100.0%

FSU Height の維持 91.8% 94.8% ~100.0% 14.6%

「Failure」として分類される外科的再処置(N)

10 12 - -

機器に関連性あり又は、機器及び手術手技に関連性ありと判断された重篤な有害事象(N)

10 10 - -

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Overall success rate

(FSU Height を除く) 79.8% 66.8% ~100.0% 99.6%

Overall success rate

(FSU Height を含む) 70.7% 63.0% ~100.0% 76.7%

4)長期観察結果(84 か月)

1 椎間治験のフォローアップとして、術後 120 か月まで継続が予定されているが、本申請

においてはデータが固定されている術後 84 か月の成績が提出され、表 37 のとおりであっ

た。

ベイズ流統計解析により、術後 84 か月時の Overall Success(FSU Height を除く)につい

て、本品群の ACDF 群に対する非劣性及び優越性が示された。椎間可動域については術後

24 か月時(7.51°:平均値)と比較すると多少低下が認められたものの、術後 60 か月におい

て 7.11°(平均値)、術後 84 か月においても 6.78°(平均値)と椎間可動性を維持できている

ことが示された。トランスレーション(並進可動域)、左右側屈についても同様の傾向であ

った。その他の項目については、術後 24 か月から術後 84 か月の全観察期間をとおして概

ね安定していた。

表 37. 術後 84 か月時の Overall Success の結果

項目 PRESTIGE LP 群

(N=280)

ACDF 群

(N=265)

NDI スコア Success rate

n/N (%)

179/208

(86.1)

145/181

(80.1)

神経学的所見 Success rate

n/N (%)

192/207

(92.8)

145/182

(79.7)

FSU Height の維持 Success rate

n/N (%)

133/159

(83.6)

123/127

(96.9)

「Failure」として分類される外科的再処置

N 16 15

機器に関連性あり又は、機器及び手術手技に関連性ありと判断された重篤な有害事象

N 16 14

Overall Success(FSU Height を除く) Success rate

n/N (%)

158/211

(74.9)

115/182

(63.2)

Overall Success(FSU Height を含む)

(主要評価項目)

Success rate

n/N (%)

103/166

(62.0)

81/135

(60.0)

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表 38. 重篤かつ機器又は、機器及び手術手技に関連する有害事象

(術後 84 か月まで)

有害事象

PRESTIGE LP 群 (N=280) ACDF 群 (N=265)

件数 報告例数

(%) 件数

報告例数

(%)

全ての有害事象 48 17(6.1) 31 14(5.3)

異所性骨化 4 3(1.1) 2 1(0.4)

インプラントに関する事象 5 5(1.8) 0 0(0.0)

頚部痛又は(及び)上肢痛 8 5(1.8) 7 5(1.9)

神経系障害 7 5(1.8) 5 5(1.9)

骨癒合不全 1* 1(0.4) 9 9(3.4)

その他 0 0(0.0) 1 1(0.4)

その他の疼痛 2 2(0.7) 4 2(0.8)

脊椎に関する事象 20 10(3.6) 2 2(0.8)

外傷 1 1(0.4) 0 0(0.0)

創傷(非感染性) 0 0(0.0) 1 1(0.4)

*インプラントが椎体に固定されず、移動した事象。当該被験者の病歴に上肢の骨癒合

不全が記録されていたため、骨癒合不全がインプラントの移動の原因と考えられ、骨癒

合不全に分類された。

安全性について、有害事象は本品群で 271 例/280 例(96.8%)2774 件、ACDF 群で 232 例

/265 例(87.5%)2236 件発現し、そのうちインプラントに関する事象として本品の術中の破

損が 2 例報告された。

重篤な有害事象は本品群で 174例/280例(62.1%)762件、ACDF群で 139例/265例(52.5%)

507 件報告された。重篤かつ機器又は、機器及び手術手技に関連する有害事象は、本品群で

17 例/280 例(6.1%)48 件、ACDF 群で 14 例/265 例(5.3%)31 件報告され(表 38)、その

うち脊椎に関する事象は、インプラントの沈み込みや椎間孔狭窄等であった。

手術時から術後 84 か月までに実施された適応椎間に対する外科的再処置は、本品群で 20

件(リビジョン 1 件、抜去 14 件、補助的固定 2 件、再手術 3 件。術後 36 か月から術後 84

か月までの期間は 4 件。)であった。また、異所性骨化による再処置(適応椎間に限らない)

を実施した症例は 15 例であった。

以上より、術後 84 か月時点においても可動性を維持しており、その他項目についても、

術後 24 か月時の結果と比較し同様の傾向が認められ、本品は ACDF と同等の有効性及び安

全性を有することが示された。

(2)IDE G040086 Metal Ion 試験(Metal Ion 治験)(2005 年 11 月~2008 年 6 月)

Metal Ion 治験は、本品から体内への金属イオンの溶出を確認し、溶出が確認された

場合には溶出量を測定することを目的として、30 例を対象に 2 施設において実施さ

れた。当該試験は、Pivotal 治験(1 椎間治験)実施中に米国 FDA により提示された

人工椎間板のガイドライン5において、金属イオンデータの測定が推奨されたことを

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43

受け、Continued Access 治験に参加した被験者の一部を対象に追加実施されたもので

ある。

本 Metal Ion 治験の主な選択基準及び除外基準は 1 椎間治験と同様であったが、除

外基準に金属製のインプラントが埋植された患者、特定の併用薬若しくは栄養剤を使

用している患者、又は業務上金属粒子の曝露がある患者が追加設定された。

1)金属イオン検査

血清中のチタン濃度は、HR-ICP-MS(High resolution-inductively coupled plasma-mass

spectrometry:高分解能誘導結合プラズマ質量分析法)を用いて分析され、術後 84 か

月までのデータが収集された(表 39)。術前に比べ、術後全ての時点で有意に高かっ

たが、申請者により、文献報告されている脊椎固定術が施された患者における血清中

のチタン濃度(0.48-12.97ng/ml)を超えることはなく6、また金属イオンによると考え

られる有害事象は認められなかったと説明された。

表 39. 血清内チタンの記述統計学的結果(ng/ml)

術前 術後

3 か月 6 か月 12 か月 24 か月 36 か月 60 か月 84 か月

N 有効 29 30 30 30 30 29 29 27

なし* 1 0 0 0 0 1 1 3

平均値 0.117 1.239 1.351 1.461 1.353 1.508 1.594 1.744

標準誤差値 0.009 0.069 0.095 0.111 0.124 0.165 0.203 0.263

中央値 0.1 1.216 1.154 1.265 1.213 1.455 1.335 1.420

標準偏差値 0.051 0.379 0.520 0.608 0.682 0.889 1.092 1.366

最小値 0.1 0.563 0.528 0.602 0.544 0.547 0.517 0.522

最大値 0.305 2.19 2.784 2.656 3.61 4.326 5.603 6.259 *その時点で血液採取がされなかった件数。

また、血清中チタン濃度が極値又は外れ値に該当した被験者について、血清中バナ

ジウム及び血清中アルミニウム濃度がそれぞれ HR-ICP-MS 及び ETA-AAS

(Electrothermal atomization-atomic absorption spectroscopy: 電熱原子化原子吸光法)

により測定され、術前と比較して大幅な濃度上昇は認められなかった。

2)有効性及び安全性

金属イオンに係る評価項目以外の有効性及び安全性評価項目は 1 椎間治験に準じ

て評価された。

<有効性>

Metal Ion 治験の有効性主要評価項目の成績は、前述の 1 椎間治験(表 8)と比較し

て同様の結果であった(表 40)。副次評価項目及びその他の評価項目についても、1

椎間治験と同等の成績が示され、特段異なる傾向は認められなかった。

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表 40. 術後 24 か月時の Overall Success の結果

項目

PRESTIGE LP 群

Metal Ion

(N=30)

NDI スコア Success rate

n/N(%)

26/30

(86.7)

神経学的所見 Success rate

n/N(%)

28/29

(96.6)

FSU Height の維持 Success rate

n/N(%)

25/26

(96.2)

「Failure」として分類される外科的再処置 N 0

機器に関連性あり又は、機器及び手術手技に関連性ありと判断された重篤な有害事象

N 0

Overall Success(FSU Height を除く) Success rate

n/N(%)

25/29

(86.2)

Overall Success(FSU Height を含む)

(主要評価項目)

Success rate

n/N(%)

22/25

(88.0)

<安全性>

安全性については、術後 84 か月時までのデータが収集され、1 椎間治験と比較して特段

傾向に大きな違いは認められなかった。神経学的所見(全般:運動、知覚及び反射を合わせ

たもの)における Success rate は術後 24 か月時で 96.6%(28 例/29 例)、84 か月時で 88.5%

(23 例/26 例)であった。重篤かつ機器又は、機器及び手術手技に関連する有害事象、並び

に Failure として分類される外科的再処置で、術後 84 か月時までに発現したものはなかっ

た。

全ての有害事象は 30 例/30 例(100%)431 件に認められ、主な事象は、頚部痛又は(及

び)上肢痛 29 例/30 例(96.7%)80 件、その他の疼痛 24 例/30 例(80.0%)60 件、脊椎に関

する事象 18 例/30 例(60.0%)49 件、神経系障害 18 例/30 例(60.0%)43 件等であった。重

篤な有害事象は、22 例/30 例(73.3%)114 件報告され、主な事象は、胃腸系障害 13 例/30 例

(43.3%)19 件、頚部痛又は(及び)上肢痛 8 例/30 例(26.7%)11 件、脊椎に関する事象

4 例/30 例(13.3%)11 件、泌尿生殖器系障害 7 例/30 例(23.3%)11 件等であった。機器又

は、機器及び手術手技に関連する有害事象は、9 例/30 例(30.0%)12 件であり、異所性骨

化及びインプラントに関する事象が各 3 例/30 例(10.0%)3 件、頚部痛又は(及び)上肢痛

が 2 例/30 例(6.7%)4 件、神経系障害及び脊椎に関する事象が各 1 例/30 例(3.3%)1 件で

あった。予測できない重篤な有害事象の報告はなかった。死亡例は 1 例あったものの、本治

験との関連性は否定された。隣接椎間を含む高位に施行された外科的再処置は、術後 36 か

月時に 1 例であった。X 線画像所見で、本品の破損、脱転等は認められなかった。

以上、術後 X 線や有害事象の詳細情報も踏まえて評価を行った結果、本治験にお

いて、残留金属に関連した局所又は全身性の有害事象であると示す十分なデータは示

されなかった。

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45

(3)IDE G040086 Continued Access 試験(Continued Access 治験)(2006 年 6 月~2009 年

10 月)

Continued Access 治験は、患者救済の目的で Pivotal 治験(1 椎間治験)に加えて 1 施設で

実施され、本品の米国承認までの期間に 24 例が組入れられた。被験者の選択基準、除外基

準、評価項目等は、1 椎間治験と同一に設定された。

主要評価項目の術後 24 か月時の Success rate は Overall Success(FSU Height を除く)が

78.3%、Overall Success(FSU Height を含む)が 77.3%であり、1 椎間治験と同様の結果であ

った。

表 41. 術後 24 か月時の Overall Success の結果

項目

PRESTIGE LP 群

Continued Access

(N=24)

NDI スコア Success rate

n/N(%)

18/23

(78.3)

神経学的所見 Success rate

n/N(%)

23/23

(100.0)

FSU Height の維持 Success rate

n/N(%)

22/22

(100.0)

「Failure」として分類される外科的再処置

N 1

機器に関連性あり又は、機器及び手術手技に関連性ありと判断された重篤な有害事象

N 0

Overall Success(FSU Height を除く) Success rate

n/N(%)

18/23

(78.3)

Overall Success(FSU Height を含む)

(主要評価項目)

Success rate

n/N(%)

17/22

(77.3)

NDI スコアの平均値は術前 67.8 に対し、術後 24 か月時 30.8 とスコアの低下が認められ、

Success rate は 78.3%(18 例/23 例)であった。FSU Height の Success rate は術後 24 か月時で

100%(22 例/22 例)であり、全ての術後観察期間を通して安定していた。

副次評価項目については、X 線画像評価(motion の維持)において、適応椎間の平均椎間

可動域は術前 7.92°、術後 24 か月時 7.17°であり、適応椎間の可動性は本品埋植後も維持さ

れていた。また、Success rate(骨梁形成を含む)は 78.3%(18 例/23 例)であった。トラン

スレーション(並進可動域)の平均値は全ての術後評価時点において、0.89mm から 1.09mm

の間であり、左右側屈の平均値は、5.95°から 6.54°の間で安定していた。全般的健康状態(SF-

36)の PCS 及び MCS はいずれも術前よりも高いスコアを示しており、QOL の改善が示さ

れた。疼痛評価については、頚部痛及び上肢痛のスコアの平均は術後全ての評価時点におい

て、術前と比較して改善しており、術後 24 か月時の Success rate はそれぞれ 100%(23 例

/23 例)及び 87%(20 例/23 例)であった。

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46

表 42. 頚部痛のスコアの推移

治療群 項目 術前 術後

6 週 3 か月 6 か月 12 か月 24 か月

PRESTIGE LP 群

Continued Access

(N=24)

例数 24 24 24 24 24 23

平均値 73.7 21.4 24.4 18.9 22.2 21.3

SD 19.6 21.8 25.7 23.9 22.6 21.2

最小値 25.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0

最大値 100.0 70.0 72.0 72.0 64.0 80.0

表 43. 上肢痛のスコアの推移

治療群 項目 術前 術後

6 週 3 か月 6 か月 12 か月 24 か月

PRESTIGE LP 群

Continued Access

(N=24)

例数 24 24 24 24 24 23

平均値 49.8 16.7 21.2 13.0 12.5 19.0

SD 32.0 25.7 25.3 21.6 18.2 27.3

最小値 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0

最大値 100.0 80.0 90.0 80.0 70.0 90.0

被験者の満足度については、3 つの質問における術後 24 か月時の Success rate(「Definitely

True」+「Mostly True」)は、それぞれ 87.0%(20 例/23 例)、82.6%(19 例/23 例)、87.0%

(20 例/23 例)であった。治験結果に対する被験者の評価の術後 24 か月時の Success rate

(「Completely Recovered」、「Much Improved」、「Slightly Recovered」と回答した症例)は 91.3%

であった。歩行評価は術前、術後ともに Normal が 100%であり、本品の埋植により悪化し

た症例はなかった。椎間孔圧迫テストでは、術前は 8.3%(2 例/24 例)で陽性であったが、

術後は全ての症例で陰性となった。

その他の評価項目について、隣接椎間の平均可動域は、術後 24 か月時において適応椎間

の上位隣接椎間で 10.53°、下位隣接椎間で 7.17°であった。隣接椎間のトランスレーション

(並進可動域)の平均値については、上位隣接椎間で 2.46mm、下位隣接椎間で 1.38mm で

あり、術後観察期間を通じ安定していた。就労状況は、術前に仕事に従事していた症例は

37.5%(9 例/24 例)、術後 24 か月時では 69.6%(16 例/23 例)であった。治験に対する医師

の評価については、術後 24 か月時で 69.6%(16 例/23 例)で「Excellent」又は「Good」と

評価された。

<安全性>

安全性については、術後 84 か月までの情報が収集された。主要評価項目のうち、神経学

的所見については、術後 84 か月時に知覚で 1 例が Failure と判定されたが、運動及び反射は

全ての観察期間を通じて Success が 100%維持されていた。重篤かつ機器又は、機器及び手

術手技に関連する有害事象の発現はなかった。Failure として分類される外科的再処置とし

て、1 例において術後 12 か月時に外傷による C7 椎体内への沈み込みを原因とする抜去が

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47

行われた。

手術時から術後 84 か月時までに発現した全ての有害事象は、23 例/24 例(95.8%)168 件

であり、主な事象は頚部痛又は(及び)上肢痛 17 例/24 例(70.8%)36 件、その他の疼痛 16

例/24 例(66.7%)46 件、脊椎に関する事象 15 例/24 例(62.5%)37 件等であった。重篤な

有害事象は、18 例/24 例(75.0%)71 件発現し、頚部痛又は(及び)上肢痛 6 例/24 例(25.0%)

11 件、その他の疼痛 12 例/24 例(50.0%)21 件、脊椎に関する事象 8 例/24 例(33.3%)22

件等であった。

表 44. 術後 84 か月時までに発現した有害事象

有害事象カテゴリー

全ての有害事象

(N=24)

重篤な有害事象

(N=24)

件数 報告例数 (%) 件数 報告例数 (%)

全ての有害事象 168 23(95.8) 71 18(75.0)

悪性腫瘍 0 0(0.0) 0 0(0.0)

心血管系障害 1 1(4.2) 1 1(4.2)

死亡 0 0(0.0) 0 0(0.0)

嚥下障害/発声困難 1 1(4.2) 0 0(0.0)

胃腸系障害 0 0(0.0) 0 0(0.0)

異所性骨化 5 5(20.8) 0 0(0.0)

インプラントに関する事象* 2 2(8.3) 1 1(4.2)

感染症 1 1(4.2) 0 0(0.0)

頚部痛又は(及び)上肢痛 36 17(70.8) 11 6(25.0)

神経系障害 13 7(29.2) 6 3(12.5)

その他 8 8(33.3) 3 3(12.5)

その他の疼痛 46 16(66.7) 21 12(50.0)

呼吸器系障害 2 2(8.3) 0 0(0.0)

脊椎に関する事象 37 15(62.5) 22 8(33.3)

外傷 13 8(33.3) 5 5(20.8)

泌尿生殖器系障害 3 1(4.2) 1 1(4.2)

血管障害 0 0(0.0) 0 0(0.0)

創傷(非感染性) 0 0(0.0) 0 0(0.0)

*インプラントの破損は認められなかった。

機器又は機器及び手術手技に関連する有害事象は 3 例/24 例(12.5%)3 件発現し、内訳

は異所性骨化 2 例/24 例(8.3%)2 件、インプラントに関する事象 1 例/24 例(4.2%)1 件で

あった。予測できない重篤な有害事象の発現、死亡症例、隣接椎間への外科的処置が施行さ

れた症例はなく、X 線画像所見により、本品の破損、脱転等は認められなかった。

当該 Continued Access 治験は医師の要望と FDA との協議により追加されたものであった

が、Pivotal 治験(1 椎間治験)と同様の結果が示されたことにより、Pivotal 治験(1 椎間治

験)の有効性及び安全性は支持された旨、申請者により説明された。

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(4)IDE G050202 試験(2 椎間治験)(2006 年 6 月~2010 年 3 月)

2 椎間治験は、頚椎椎間板変性疾患が原因で 2 椎間の外科的治療が必要な患者を対象と

し、本品による治療群(以下「本品 2 群」という。)の術後 24 か月時の Overall Success rate

が既存療法である ACDF(以下「ACDF2 群」という。)との比較において劣らないこと(非

劣性)を検証する目的で、30 施設において実施された前向き多施設共同比較試験である。

対照群である ACDF には、1 椎間治験同様、同種移植骨及び前方固定用プレート(本邦既

承認品である Atlantis(前方固定用プレート:本邦既承認品である「滅菌済 ATLANTIS スパ

イナルシステム、承認番号:21600BZY00581000、承認年月日:平成 16 年 10 月 28 日」又は

「滅菌済 ATLANTIS VISION スパイナルシステム、承認番号:21800BZY10031000、承認年

月日:平成 18 年 2 月 8 日」ii。ただし治験では未滅菌品を用時滅菌して使用。1 椎間治験の

対照群に同じ。)を用いる術式が採用されたが、本 2 椎間治験ではヒストリカルではなく、

同一治験内での比較が実施された。

主な患者選択基準は表 45 のとおりである。

表 45. 2 椎間治験における患者選択基準

選択基準 以下の選択基準の全てに合致する患者:

1. C3 から C7 の隣接する 2 椎間に外科的治療が必要な頚椎変性疾患を有し、

難治性の神経根症、脊髄症又はその両方を有する患者

2. 各適応椎間において、症候性神経根症あるいは脊髄症を引き起こす椎間板

ヘルニアもしくは骨棘形成を有する患者

病歴にこれら症状(頚部痛、上肢痛、機能障害、神経障害等のいずれか)が記

載されており、画像診断(CT、MRI、X 線など)にて外科的処置の必要性が

示されている患者

3. 約6週間の保存療法に奏効しない患者、又は保存療法にも関わらず、進行性

の症状又は神経根及び脊髄の圧迫症状を呈した患者

4. 過去に適応椎間に外科的治療がされていない、又は術後に適応椎間や隣接

椎間で外科的治療(段階的なものを含む)が予定されていない患者

5. 手術時に 18 歳以上であり、骨格が成熟している患者

6. 術前の NDI スコアが 30 以上である患者

7. 術前の Neck and Arm Pain Questionnaire(頚部痛及び上肢痛に関する質問

表)での頚部痛のスコアが 8 以上である患者

8. 妊娠可能な女性については手術時に妊娠していない患者、授乳中でない患

者、治験期間中は妊娠しないことに同意する患者

9. 治験実施計画書に従う意思があり、同意文書に署名をする意思のある患者

2 椎間治験において、疼痛に関するスコア(選択基準 7)の基準値が同一の指標を用いて

いるにもかかわらず、1 椎間治験と比較して低値(1 椎間:30(表 3)、2 椎間:8(表 45))

である理由は、スコアの算出方法を、痛みの強さと痛みの頻度を乗算する方法から加算する

方法へ変更したことによるものである。加算法は、2003 年、腰椎固定術における検証試験

ii 医療機器・体外診断薬部会終了後に追記(又は「滅菌済 ATLANTIS VISION スパイナルシステム、承認番号

21800BZY10031000、承認年月日:平成 18 年 2 月 8 日」)

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49

に用いられて以降、FDA との合意に基づき、2003 年以降に実施された全ての IDE 試験にお

いて用いられている。2 椎間治験における算出方法の変更に際しては、1 椎間治験の成績に

2 椎間治験の算出方法を適用した解析を実施し、ACDF 群との比較結果について、従来の分

析結果と類似していることが示されている。なお、2 椎間治験と 1 椎間治験における除外基

準の違いは、外科的治療を要する椎間が 3 椎間以上か 2 椎間以上かの違いのみであった。

同意を取得した 482 例のうち、状態の悪化や選択基準に合致しない等により手術が実施

されなかった症例 59 例(本品 2 群 17 例、ACDF2 群 42 例)を除外した 397 例(本品 2 群

209 例、ACDF2 群 188 例)が本 2 椎間治験の主要解析対象集団とされた。主要な治験実施

計画書からの逸脱が判明した本品 2 群 1 例、ACDF2 群 15 例を除外した症例が治験実施計

画書に適合した解析対象集団(Per-Protocol Dataset)とされた。

2 椎間治験の患者背景について、術前の就労状況に統計学的な有意差が認められたが

(p=0.045、フィッシャーの正確確率検定:本品 2 群 69.9%、ACDF2 群 60.1%)、群間の術

前の治験エンドポイントパラメータにおいて、統計学的な有意差は認められなかったため、

臨床的には重要とみなされなかった。術前の既往・合併症は一過性脳虚血発作(p=0.049)

及び関節リウマチ(p=0.023)で統計学的有意差が認められたが、それ以外の項目において

は 2 群間で同様であり、偶発的なものであったと考えられた。医学的状態及び服薬状況につ

いては 2 群間で統計学的有意差は認められなかった。

2 椎間治験に使用された被験機器のサイズの内訳は表 46 のとおりであり、2 椎間治験よ

り高さ 5mm サイズの本品が被験機器として追加された。

表 46. 治験に使用された被験機器のサイズ(PRESTIGE2 群)

高さ 上位治療高位 下位治療高位

奥行き 症例数(%) 奥行き 症例数(%)

5 mm

12 mm 3(1.4) 12 mm 1(0.5)

14 mm 36(17.2) 14 mm 26(12.4)

16 mm 37(17.7) 16 mm 30(14.4)

6 mm

12 mm 8(3.8) 12 mm 7(3.3)

14 mm 46(22.0) 14 mm 44(21.1)

16 mm 40(19.1) 16 mm 62(29.7)

18 mm N/A 18 mm N/A

7 mm

12 mm 2(1.0) 12 mm 3(1.4)

14 mm 6(2.9) 14 mm 1(0.5)

16 mm 16(7.7) 16 mm 15(7.2)

18 mm 15(7.2) 18 mm 16(7.7)

8 mm

14 mm 0(0.0) 14 mm 2(1.0)

16 mm 0(0.0) 16 mm 1(0.5)

18 mm 0(0.0) 18 mm 1(0.5)

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1)有効性評価

有効性の評価項目として、以下の術後 24 か月時の Overall Success(以下の①~④の 4 項

目を組み合わせた評価項目)が主要評価項目とされ、以下の条件を全て満たした症例が

「Success 症例」と定義された。FSU Height は 1 椎間治験において欠測が多かったことか

ら、本 2 椎間治験においては評価項目として設定されなかった。

① 術後の NDI スコアが術前値から 15 ポイント以上改善

② 術前と比較し術後の神経学的所見(運動、知覚、反射)の維持又は改善

③ 「機器と関連性あり」又は「機器及び手術手技との関連性あり」と判定された重

篤な有害事象の発現がない

④ Failure として分類される外科的再処置(リビジョン、抜去(被験者の希望を除く)、

補助的固定)を実施していない

なお、主要評価項目のうち、②神経学的所見、③「機器と関連性あり」又は「機器及び手

術手技との関連性あり」と判定された重篤な有害事象及び④Failure として分類される外科

的再処置については、2)安全性評価において後述する。

2 椎間治験の評価は非劣性マージンを 10%と設定し、ベイズ流解析を用いて、ACDF 群に

対する非劣性が評価され、事後確率 P(p0-p1<d | Data;p0:ACDF 群の 95%最高事後密度

区間、p1:本品群の 95%最高事後密度区間)が 0.95 を上回れば非劣性があるものと評価さ

れた。また、同様に ACDF 群に対する優越性が評価され、事後確率 P(p0-p1<0 | Data)が

0.95 を上回れば優越性があるものと設定された。

<Overall Success>

本品 2 群の術後 24 か月時の Overall Success(FSU Height を含む)rate は 81.4%(162 例

/199 例)、ACDF2 群は 69.4%(111 例/160 例)であった(表 47)。ベイズ流解析を実施した

結果、術後 24 か月時における本品 2 群の ACDF2 群に対する非劣性の事後確率はほぼ 100%

であったことから、本品 2 群の ACDF2 群に対する非劣性が認められ、優越性の事後確率は

99.3%であったことから、本品 2 群の ACDF2 群に対する優越性も認められた。

表 47. 術後 24 か月時の Overall Success の結果

項目 PRESTIGE LP2 群

(N=209)

ACDF2 群

(N=188)

NDI スコア Success rate

n/N(%)

175/199

(87.9)

126/159

(79.2)

神経学的所見 Success rate

n/N(%)

182/199

(91.5)

137/159

(86.2)

「Failure」として分類される外科的再処置

N 4 12

機器に関連性あり又は、機器及び手術手技に関連性ありと判断された重篤な有害事象

N 2 11

Overall Success Success rate

n/N(%)

162/199

(81.4)

111/160

(69.4)

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51

表 48. Overall Success rate の推移

治療群 術 後 (n/N(%))

6 週 3 か月 6 か月 12 か月 24 か月

PRESTIGE LP2 群

(N=209)

127/204

(62.3)

154/203

(75.9)

169/203

(83.3)

167/202

(82.7)

162/199

(81.4)

ACDF2 群

(N=188)

91/182

(50.0)

121/178

(68.0)

126/174

(72.4)

117/166

(70.5)

111/160

(69.4)

<NDI スコア>

NDI スコアは両群ともに術前と比較し全ての術後観察期で有意に改善していた(p<

0.05:paired t-test)。NDI スコアの術前からの改善の平均は、全ての観察期で PRESTIGE

LP2 群が ACDF2 群を上回っていた。

表 49. NDI スコアの推移

治療群 項目 術前 術後

6 週 3 か月 6 か月 12 か月 24 か月

PRESTIGE LP2 群

(N=209)

例数 209 204 203 203 202 199

平均値 52.1 25.8 19.6 16.7 15.7 15.0

SD 13.4 17.0 17.6 16.2 16.8 16.6

最小値 30.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0

中央値 50.0 24.0 16.0 14.0 10.0 10.0

最大値 84.0 76.0 76.0 76.0 76.0 76.0

ACDF2 群

(N=188)

例数 188 181 178 172 165 159

平均値 53.2 33.1 24.1 22.0 20.6 20.0

SD 14.8 17.8 17.8 19.6 19.1 20.5

最小値 30.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0

中央値 53.0 32.0 20.0 18.0 14.0 12.0

最大値 94.0 88.0 84.0 84.0 84.0 84.0

表 50. NDI スコアの評価における Success rate の推移

治療群 術 後 (n/N(%))

6 週 3 か月 6 か月 12 か月 24 か月

PRESTIGE LP2 群

(N=209)

148/204

(72.5)

172/203

(84.7)

185/203

(91.1)

183/202

(90.6)

175/199

(87.9)

ACDF2 群

(N=188)

109/181

(60.2)

141/178

(79.2)

141/172

(82.0)

136/165

(82.4)

126/159

(79.2)

術後 24 か月時において NDI スコアの Success rate は、本品 2 群が 87.9%(175 例

/199 例)、ACDF2 群が 79.2%(126 例/159 例)であった。ベイズ流統計解析により

ACDF2 群に対する本品 2 群の非劣性の事後確率はほぼ 100%であり、優越性の事後

確率は 99.0%であり、統計学的に本品 2 群の ACDF2 群に対する非劣性及び優越性が

示された。

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有効性の副次評価項目として、FSU Height、全般的健康状態(SF-36)、疼痛評価(頚部

痛、上肢痛)、歩行評価(Nurick 分類)が設定された。

<FSU Height>

FSU Height は、1 椎間治験同様、術後 3 か月時以降の FSU Height が術後 6 週時と比較し

て-2mm 以上高い症例が Success 例と定義された。

FSU Height の Success rate は、術後 24 か月時で本品 2 群が 93.5%(159 例/170 例)、

ACDF2 群が 95.7%(132 例/138 例)であり、FSU Height は両群とも術後 24 か月まで

維持されていることが示された。また、ベイズ流統計解析の結果、本品 2 群の ACDF2

群に対する非劣性の事後確率は 99.7%であり、統計学的な非劣性が示された。

表 51. FSU Height の Success rate

治療群 術 後 (n/N(%))

3 か月 6 か月 12 か月 24 か月

PRESTIGE LP2 群

(N=209)

155/173

(89.6)

158/167

(94.6)

163/171

(95.3)

159/170

(93.5)

ACDF2 群

(N=188)

141/149

(94.6)

143/149

(96.0)

129/137

(94.2)

132/138

(95.7)

<全般的健康状態(SF-36)>

全般的な健康状態は SF-36 を用いて評価された。Success の定義は、それぞれ術後の PCS-

術前の PCS≧0、術後の MCS-術前の MCS≧0 と定義された。PCS 及び MCS は、本品 2 群、

ACDF2 群ともに術前より全ての術後観察期で有意に改善しており、QOL が改善しているこ

とが示された。術後 24 か月の PCS の Success rate は、本品 2 群が 90.4%(178 例/197 例)、

ACDF2 群が 87.8%(137 例/156 例)であり、MCS の Success rate は本品 2 群が 69.0%(136

例/197 例)、ACDF2 群が 72.4%(113 例/156 例)であった。

表 52. SF-36(PCS)の推移

治療群 項目 術前 術後

6 か月 12 か月 24 か月

PRESTIGE LP2 群

(N=209)

例数 209 201 200 197

平均値 31.8 46.2 47.7 47.3

SD 7.8 10.8 10.2 10.7

最小値 11.7 16.6 14.6 17.3

中央値 31.2 49.6 51.3 51.0

最大値 55.5 61.0 63.1 65.1

ACDF2 群

(N=188)

例数 188 168 161 156

平均値 30.8 43.9 45.0 45.4

SD 7.4 11.0 11.2 11.5

最小値 11.1 14.9 19.3 16.3

中央値 30.6 46.7 48.6 49.6

最大値 51.1 61.8 64.0 66.8

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表 53. SF-36(MCS)の推移

治療群 項目 術前 術後

6 か月 12 か月 24 か月

PRESTIGE LP2 群

(N=209)

例数 209 201 200 197

平均値 43.9 51.6 51.7 52.1

SD 11.8 10.1 9.5 10.8

最小値 16.7 11.1 15.5 16.5

中央値 44.1 55.1 54.7 56.3

最大値 70.6 70.2 68.9 67.1

ACDF2 群

(N=188)

例数 188 168 161 156

平均値 43.8 50.6 50.5 50.9

SD 12.2 10.6 11.0 10.5

最小値 15.9 16.8 15.3 19.0

中央値 45.3 54.7 54.0 54.8

最大値 67.1 71.2 71.0 64.4

ベイズ流統計解析による比較では、PCS の本品 2 群の ACDF2 群に対する非劣性の

事後確率はほぼ 100.0%であり、統計学的な非劣性が示された。MCS については、本

品 2 群の ACDF2 群に対する非劣性の事後確率は 94.5%であり、95.0%に達しなかっ

たが、本品 2 群の MCS のスコアの平均では、ACDF2 群に対しわずかに高かった(本

品 2 群 52.1、ACDF2 群 50.9)。

<疼痛評価(頚部痛及び上肢痛)>

頚部痛及び上肢痛の評価について、Successの定義が 1椎間治験から一部変更され、

「術前のスコア-術後のスコア> 0(スコア=痛みの強さ+痛みの頻度)」とされた。

頚部痛のスコア及び上肢痛のスコアは両群ともに術前と比較し、全ての術後観察期

で有意に改善しており、術後 24 か月の頚部痛の Success rate は、本品 2 群が 98.0%

(195 例/199 例)、ACDF2 群が 95.6%(152 例/159 例)、上肢痛の Success rate は、

本品 2 群が 88.9%(177 例/199 例)、ACDF2 群が 89.9%(143 例/159 例)であった。

ベイズ流統計解析による比較で、頚部痛については、本品 2 群の ACDF2 群に対する

非劣性の事後確率はほぼ 100.0%であり、上肢痛については 99.7%であり、いずれも

統計学的な非劣性が示された。

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表 54. 頚部痛のスコアの推移

治療群 項目 術前 術後

6 週 3 か月 6 か月 12 か月 24 か月

PRESTIGE LP2 群

(N=209)

例数 209 204 203 203 203 199

平均値 16.2 6.2 5.3 4.9 4.6 4.3

SD 2.9 4.9 5.1 4.9 4.8 4.9

最小値 8.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0

中央値 17.0 5.0 4.0 3.0 3.0 2.0

最大値 20.0 18.0 19.0 20.0 20.0 20.0

ACDF2 群

(N=188)

例数 188 181 178 172 165 159

平均値 16.3 7.3 6.7 6.1 5.8 5.9

SD 2.6 4.8 5.2 5.5 5.3 5.5

最小値 8.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0

中央値 17.0 7.0 6.0 4.0 4.0 4.0

最大値 20.0 18.0 20.0 20.0 20.0 20.0

表 55. 上肢痛のスコアの推移

治療群 項目 術前 術後

6 週 3 か月 6 か月 12 か月 24 か月

PRESTIGE LP2 群

(N=209)

例数 209 204 203 203 203 199

平均値 13.8 3.9 4.0 3.4 3.1 3.0

SD 5.6 4.8 5.2 5.0 4.2 4.8

最小値 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0

中央値 16.0 2.0 2.0 0.0 1.0 0.0

最大値 20.0 20.0 20.0 20.0 20.0 20.0

ACDF2 群

(N=188)

例数 188 181 178 172 165 159

平均値 14.4 4.6 4.4 3.8 4.3 4.0

SD 4.3 5.2 5.5 5.5 5.5 5.6

最小値 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0

中央値 15.0 3.0 2.0 2.0 2.0 0.0

最大値 20.0 19.0 20.0 19.0 19.0 20.0

<歩行評価>

歩行評価は、術前及び術後に Nurick 分類を使用して評価され、Success の定義は、

1 椎間治験同様、術前のスコア-術後のスコア≧0 とされた。

術前の歩行評価は本品 2 群の 77.0%(161 例/209 例)、ACDF2 群の 70.2%(132 例/188

例)が「Normal」であり、術後 24 か月時では本品 2 群の 99.5%(198 例/199 例)、ACDF2

群の 98.1%(156 例/159 例)が「Normal」となった。術後 24 か月時の Success rate は本品 2

群 100.0%(199 例/199 例)、ACDF2 群 98.7%(157 例/159 例)であった。ベイズ流統計解

析による比較で、本品 2 群の ACDF2 群に対する非劣性の事後確率はほぼ 100.0%であり、

統計学的な非劣性が示された。

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55

また、その他の評価項目の評価結果は以下のとおりであった。

<X 線画像評価(motion の維持)>

適応椎間の motion の維持に関し、屈曲伸展の椎間可動域、骨梁形成、トランスレ

ーション(並進可動域)及び左右側屈が X 線画像を用いて評価され、Success の定義

は Pivotal 治験(1 椎間治験)から一部変更され、下記のとおりとされた。

(本品 2 群)

a. 4°< 屈曲伸展の椎間可動域≦ 20°

b. いずれの高位についても上下椎体間で繋がった骨梁が形成されていな

い。

(ACDF2 群)

a. 屈曲伸展の椎間可動域≦ 4°

b. 繋がった骨梁が形成されていること。少なくとも側方又は前後方で、上

下椎体の連続した骨の癒合が認められること

c. いずれの高位についても上位又は下位椎体表面の 50%以上を覆う透過性

がないこと

<屈曲伸展の椎間可動域及び骨梁形成>

本品 2 群について、X 線機能撮影(屈曲、伸展)画像を用いて椎間可動域を評価し

た結果、本品 2 群の平均椎間可動域は術前が上位椎間 6.75°下位椎間 5.56°、術後 24

か月時が上位椎間 6.92°下位椎間 6.85°であり、適応椎間の可動性は被験機器の埋植後

も維持されていた。

表 56. 上位椎間可動域の推移

治療群 項目 術前 術後

6 週 3 か月 6 か月 12 か月 24 か月

PRESTIGE LP2 群

(N=209)

例数 199 201 204 203 203 198

平均値 6.75° 6.26° 6.34° 6.83° 6.89° 6.92°

SD 4.16° 3.32° 3.67° 3.86° 4.04° 3.96°

最小値 0.08° 0.30° 0.22° 0.19° 0.11° 0.21°

中央値 5.89° 5.88° 5.71° 6.39° 6.24° 6.84°

最大値 18.15° 16.93° 16.76° 19.22° 20.56° 18.89°

表 57. 下位椎間可動域の推移

治療群 項目 術前 術後

6 週 3 か月 6 か月 12 か月 24 か月

PRESTIGE LP2 群

(N=209)

例数 189 195 199 202 199 196

平均値 5.56° 6.69° 7.30° 7.34° 6.70° 6.85°

SD 3.89° 3.68° 4.11° 4.37° 4.49° 4.25°

最小値 0.37° 0.24° 0.38° 0.35° 0.20° 0.23°

中央値 4.62° 6.45° 7.04° 7.01° 5.59° 6.26°

最大値 18.20° 20.24° 20.71° 21.60° 19.39° 21.88°

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X 線画像評価における術後 24 か月の可動域の Success rate は 53.8%(106 例/197 例)

であり、術後 24 か月で骨梁形成が認められた症例は 11.1%(22 例/198 例)、総合評

価での Success rate は 51.0%(100 例/196 例)であった。なお、ACDF2 群の術後 24 か

月の骨癒合の総合評価としての Success rate は 82.1%(119 例/145 例)であった。

トランスレーション(並進可動域)は、側面伸屈の X 線画像により評価され、全て

の術後評価時点において、平均値は上位椎間で 1.06mm から 1.33mm、下位椎間で

1.02mm から 1.16mm と安定していた。

<異所性骨化>

本品2群の異所性骨化については、Mehren7らにより定義された下記のグレードに従い、

グレード0からグレードIVで評価された。

グレード 0:異所性骨化なし

グレードⅠ:異所性骨化が椎体の前方にあるが、椎間板腔にはなし

グレードⅡ:異所性骨化が椎間板腔で形成されている。機器の性能に影響を及ぼす可能性

がある

グレードⅢ:骨梁が形成されているが、機器は可動する

グレードⅣ:屈曲/伸展位での可動がなく、治療高位が完全に骨癒合している

術後24か月時では上位椎体で14.1%(28例/198例)、下位椎体で16.7%(33例/198例)が

グレードIIIの異所性骨化と評価され、上位椎体で2.0%(4例/198例)、下位椎体で3.0%(6

例/198例)がグレードIVの異所性骨化と評価された。本品2群と本品群(1椎間)の異所性

骨化確率は、それぞれ10.5%(表61)及び9.6%(表30)であり、本品2群でわずかに高い結

果であった。

本品 2 群における異所性骨化の重症度別の Overall Success rate は表 58 のとおりで

あり、重度の異所性骨化(グレード III 及び IV)の症例と軽度の異所性骨化(グレー

ド 0-II)の症例で Overall Success rate に統計学的有意差は認められなかった(p =

1.000)。

表 58. 異所性骨化の重症度別の術後 24 か月時の Overall Success rate

Non-Severe HO

(Grade 0, I, II)

(N=150)

Severe HO

(Grade III, IV)

(N=48)

p 値

NDI スコア Success

[n/N (%)] 131/150(87.3%) 44/48(91.7%) 0.605

神経学的所見 Success

[n/N (%)] 140/150(93.3%) 42/48(87.5%) 0.225

「Failure」として分類される外科的再処置 (n)

3 0 -

機器に関連性あり又は、機器及び手術手技に関連性ありと判断された重篤な有害事象 (n)

1 0 -

Overall Success [n/N (%)] 123/150(82.0%) 39/48(81.3%) 1.000

* HO:Heterotopic Ossification(異所性骨化)

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<隣接椎間の評価>

治療高位の上位椎体における可動域の術前の平均値は、本品 2 群で 9.89°、ACDF2

群で 10.02°と同様であった。治療高位の上位椎体における可動域の術後の平均値は、

ベースラインから顕著に減少し、その後徐々に増加し、術後 24 か月に本品 2 群で

11.11°、ACDF2 群で 11.16°に達した。治療高位の下位椎体における可動域の術前の平

均値は、上位椎体と比較し低く、本品 2 群で 5.02°、ACDF2 群で 4.85°であった。治療

高位の下位椎体における可動域は、それぞれ 5.14°、6.16°であり、両群ともに術後の

観察期において維持されていた。

隣接椎間のトランスレーション(並進可動域)は、治療高位の上位椎体において、上位椎

体の可動域と同様のパターンが認められ、トランスレーションの平均は、術前(本品 2 群で

2.38mm、ACDF2 群で 2.42mm)に対し術後 6 週に顕著に減少し(本品 2 群で 2.04mm、ACDF2

群で 1.92mm)、その後徐々に増加し(術後 24か月は本品 2群で 2.66mm、ACDF2群で 2.73mm)、

ベースラインから顕著に改善が見られた。下位椎体のトランスレーションの平均は、術前で

本品 2 群 1.09mm、ACDF2 群 1.04mm、術後 24 か月で本品 2 群 1.25mm、ACDF2 群 1.46mm

と 2 群間で類似しており、全観察期において一定の値を示した。以上、隣接椎間の可動域及

びトランスレーションの結果より、治療高位の隣接高位が術後観察期を通じ安定していた

ことが示された。

<被験者の満足度>

被験者の満足度は、1 椎間治験と同様に、3 つの質問を用いて評価された。術後 24 か月時

では質問 1 に対して本品 2 群 94.5%(188 例/199 例)、ACDF2 群 89.3%(142 例/159 例)の

症例が、質問 2 に対して本品 2 群 93.9%(186 例/198 例)、ACDF2 群 85.5%(136 例/159 例)

の症例が、質問 3 に対して本品 2 群で 93.4%(185 例/198 例)、ACDF2 群で 88.7%(141 例

/159 例)の症例が手術結果に満足している(「Definitely True」又は「Mostly True」)と回答し

ており、本品 2 群は ACDF2 群に比較して被験者の満足度が高いことが示された。

<治療結果に対する被験者の評価>

治療結果に対する被験者の評価について、術後 24 か月時の Success rate は本品 2 群

97.0%(193 例/199 例)、ACDF2 群 93.7%(149 例/159 例)であり、2 群間で同様の

結果であった。

<椎間孔圧迫テスト>

神経根の圧迫の有無を、1 椎間治験同様、術前及び術後に椎間孔圧迫テストにより

評価された。術前は本品 2 群で 39.2%(82 例/209 例)、ACDF2 群で 36.2%(68 例

/188 例)が Negative(陰性)であった。術後 6 週時で両群ともに改善が認められ、

Negative(陰性)であった症例は本品 2 群で 98.0%(201 例/205 例)、ACDF2 群で

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96.7%(176 例/182 例)、Success rate は本品 2 群で 99.5%(204 例/205 例)、ACDF2

群で 100.0%(182 例/182 例)であり、術後 24 か月時まで当該傾向は維持された。

<就労状況>

就労状況は、術前では本品 2 群で 146 例/209 例(69.9%)、ACDF2 群で 60.1%(113

例/188 例)の被験者が就労していると回答し、術後 24 か月時では本品 2 群で 72.9%

(145 例/199 例)、ACDF2 群で 71.1%(113 例/159 例)の被験者が就労していると回

答した。術後仕事に復帰するまでの日数の中央値は、本品 2 群で 49 日、ACDF2 群で

55 日であった。

<治療結果に対する医師の評価>

治療結果に対する医師の評価の Success rate(「Excellent」+「Good」)は、全ての

術後観察期で本品 2 群の Success rate は ACDF2 群のそれと比較し高く、術後 24 か月

で本品 2 群 97.0%(193 例/199 例)、ACDF2 群 84.3%(134 例/159 例)であり、本品

による治療結果に満足度が高いことが示された。

2)安全性評価

<神経学的所見>

神経学的所見については、1 椎間治験と同様、術前の状態と比較して術後の状態が

維持又は改善していることが Success と定義された。術後 24 か月時の Success rate は

本品 2 群で 91.5%(182 例/199 例)、ACDF2 群で 86.2%(137 例/159 例)であり、全

ての術後観察期において本品 2 群が ACDF2 群よりも高い結果となった。また、ベイ

ズ流統計解析により、本品 2 群の ACDF2 群に対する非劣性が示された。

<重篤かつ機器又は、機器及び手術手技に関連する有害事象>

術後 24 か月時までに発現した重篤かつ機器又は、機器及び手術手技に関連する有

害事象は、本品 2 群で 4 例/209 例(1.9%)8 件、ACDF2 群で 11 例/188 例(5.9%)

28 件であった。

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表 59. 重篤かつ機器又は、機器及び手術手技に関連する有害事象

有害事象

PRESTIGE LP2 群 (N=209) ACDF2 群 (N=188)

件数 報告例数

(%) 件数 報告例数(%)

全ての有害事象 8 4(1.9) 28 11(5.9)

嚥下障害/発声困難 0 0(0.0) 0 0(0.0)

異所性骨化 0 0(0.0) 3 3(1.6)

インプラントに関する事象 2 2(1.0) 4 3(1.6)

頚部痛又は(及び)上肢痛 0 0(0.0) 2 2(1.1)

神経系障害 0 0(0.0) 1 1(0.5)

骨癒合不全 0 0(0.0) 8 8(4.3)

その他 1 1(0.5) 0 0(0.0)

脊椎に関する事象 4 3(1.4) 8 5(2.7)

外傷 0 0(0.0) 1 1(0.5)

血管障害 1 1(0.5) 0 0(0.0)

創傷(非感染性) 0 0(0.0) 1 1(0.5)

本品 2 群の当該有害事象の内訳は下表 60 に示すとおりであり、いずれもグレード 3 であ

った。

表 60. 重篤かつ機器又は、機器及び手術手技に関連する有害事象

(PRESTIGE LP 2 群)

FDA Hybrid MedDRA LLT

重症度 グレード

関連性 処置 転帰

その他

術後合併症

3 機器/手術手技に関連性あり

外科的再処置 (抜去、術後 486

日) 回復

脊椎に関する事象

術後の後弯

血管障害

術後の出血

脊椎に関する事象

椎間孔狭窄症 3

機器/手術手技に関連性あり

外科的再処置(抜去、術後 40 日)、外科的再処置(再手術、椎間孔拡大術、

椎弓切除術)

後遺症あり

インプラントに関する事象

インプラントの脱転

3 機器/手術手技に関連性あり

外科的再処置 (抜去、術後 929

日) 回復

脊椎に関する事象

頚椎圧迫

脊椎に関する事象

頚椎狭窄症(脊柱管狭窄)

インプラントに関する事象 インプラントの移動

(沈み込み) 3

機器/手術手技に関連性あり

外科的再処置 (抜去、術後 1641

日) 回復

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<Failure として分類される外科的再処置>

治療高位の外科的再処置を受けた症例は、術後 24 か月までに本品 2 群で 5 例/209

例(2.4%)6 件、ACDF2 群で 15 例/188 例(8.0%)17 件であった。リビジョンを受

けた症例は本品 2 群でなし、ACDF2 群で 1 例/188 例(0.5%)1 件、抜去(non-elective)

を受けた症例は本品 2 群で 3 例/209 例(1.4%)3 件、ACDF2 群で 6 例/188 例(3.2%)

6 件、抜去(elective)を受けた症例は本品 2 群でなし、ACDF2 群で 2 例/188 例(1.1%)

2 件、補助的固定を受けた被験者は本品 2 群で 1 例/209 例(0.5%)、ACDF2 群で 3

例/188 例(1.6%)3 件(体外骨成長刺激装置のみの使用は含まない)、再手術を受け

た症例は本品 2 群で 2 例/209 例(1.0%)、ACDF2 群で 4 例/188 例(2.1%)5 件であ

った。

<有害事象>

手術時から術後 24 か月までに発現した全ての有害事象は、本品 2 群で 195 例/209

例(93.3%)1477 件、ACDF2 群で 173 例/188 例(92.0%)1593 件であった。そのう

ち重篤な有害事象は、本品 2 群で 72 例/209 例(34.4%)293 件、ACDF2 群で 90 例

/188 例(47.9%)430 件であり、発現した事象の傾向は両群で同様であった。

表 61. 全ての有害事象(術後 24 か月まで)

有害事象カテゴリー

PRESTIGE LP2 群

(N=209)

ACDF2 群

(N=188)

PRESTIGE LP2 群

– ACDF2 群

件数 報告例数

(%) 件数

報告例数

(%)

事後平均の差

(95% HPD)

全ての有害事象 1477 195(93.3) 1593 173(92.0) 1.3%

(-3.9%, 6.6%)

悪性腫瘍 0 0(0.0) 3 3(1.6) -1.6%

(-4.0%, 0.4%)

心血管系障害 28 18(8.6) 18 16(8.5) 0.1%

(-5.5%, 5.7%)

死亡 0 0(0.0) 1 1(0.5) -0.6%

(-2.5%, 1.1%)

嚥下障害/発声困難 14 14(6.7) 27 21(11.2) -4.5%

(-10.2%, 1.2%)

胃腸系障害 101 43(20.6) 79 38(20.2) 0.3%

(-7.6%, 8.2%)

異所性骨化 27 22(10.5) 24 21(11.2) -0.7%

(-6.9%, 5.5%)

インプラントに関す

る事象 15 13(6.2) 12 10(5.3)

0.8%

(-3.9%, 5.6%)

感染症 48 36(17.2) 41 32(17.0) 0.2%

(-7.3%, 7.6%)

elective:抜去(elective)は ACDF 群にのみ該当。再手術を容易にするため(固定範囲の延長)等の抜去

を抜去(elective)とする。

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有害事象カテゴリー

PRESTIGE LP2 群

(N=209)

ACDF2 群

(N=188)

PRESTIGE LP2 群

– ACDF2 群

件数 報告例数

(%) 件数

報告例数

(%)

事後平均の差

(95% HPD)

頚部痛又は(及び)

上肢痛 294 127(60.8) 293 114(60.6)

0.1%

(-9.3%, 9.8%)

神経系障害 199 89(42.6) 192 85(45.2) -2.6%

(-12.3%, 7.1%)

骨癒合不全 0 0(0.0) 18 18(9.6) -9.5%

(-14.0%, -5.4%)

その他 195 97(46.4) 216 87(46.3) 0.1%

(-9.6%, 9.9%)

その他の疼痛 259 125(59.8) 295 113(60.1) -0.3%

(-9.9%, 9.3%)

呼吸器系障害 47 29(13.9) 52 34(18.1) -4.2%

(-11.5%, 3.0%)

脊椎に関する事象 149 74(35.4) 197 80(42.6) -7.1%

(-16.5%, 2.5%)

外傷 45 37(17.7) 60 39(20.7) -3.0%

(-10.8%, 4.7%)

泌尿生殖器系障害 31 25(12.0) 36 19(10.1) 1.8%

(-4.4%, 8.0%)

血管障害 6 5(2.4) 14 8(4.3) -1.9%

(-5.7%, 1.9%)

創傷(非感染性) 19 15(7.2) 15 11(5.9) 1.3%

(-3.8%, 6.2%)

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表 62. 重篤な有害事象(術後 24 か月まで)

有害事象カテゴリー

PRESTIGE LP2 群 (N=209) ACDF2 群 (N=188)

件数 報告例数

(%) 件数

報告例数

(%)

全ての有害事象 293 72(34.4) 430 90(47.9)

悪性腫瘍 0 0(0.0) 2 2(1.1)

心血管系障害 8 5(2.4) 7 6(3.2)

死亡 0 0(0.0) 1 1(0.5)

嚥下障害/発声困難 2 2(1.0) 1 1(0.5)

胃腸系障害 34 15(7.2) 26 16(8.5)

異所性骨化 7 6(2.9) 12 11(5.9)

インプラントに関する事象 3 3(1.4) 7 6(3.2)

感染症 12 9(4.3) 16 13(6.9)

頚部痛又は(及び)上肢痛 23 15(7.2) 49 25(13.3)

神経系障害 24 20(9.6) 31 18(9.6)

骨癒合不全 0 0(0.0) 10 10(5.3)

その他 38 17(8.1) 59 33(17.6)

その他の疼痛 46 28(13.4) 57 29(15.4)

呼吸器系障害 7 6(2.9) 17 13(6.9)

脊椎に関する事象 59 25(12.0) 88 38(20.2)

外傷 14 12(5.7) 23 19(10.1)

泌尿生殖器系障害 7 6(2.9) 12 6(3.2)

血管障害 4 3(1.4) 9 3(1.6)

創傷(非感染性) 5 4(1.9) 3 2(1.1)

機器又は、機器及び手術手技に関連する有害事象は、本品 2 群で 33 例/209 例(15.8%)

95 件、ACDF2 群で 39 例/188 例(20.7%)115 件であった。術後 24 か月までで機器及

び手術手技に関連する頚部痛又は(及び)上肢痛を呈した症例は、本品 2 群で 12 例

/209 例(5.7%)30 件、ACDF2 群で 19 例/188 例(10.1%)31 件であり、本品 2 群は

ACDF2 群に比較し発現率が低かった。

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表 63. 機器又は、機器及び手術手技に関連する有害事象(術後 24 か月まで)

有害事象カテゴリー

PRESTIGE LP2 群 (N=209) ACDF2 群 (N=188)

件数 報告例数

(%) 件数

報告例数

(%)

全ての有害事象 95 33(15.8) 115 39(20.7)

嚥下障害/発声困難 0 0(0.0) 0 0(0.0)

異所性骨化 10 9(4.3) 5 4(2.1)

インプラントに関する事象 12 11(5.3) 8 6(3.2)

頚部痛又は(及び)上肢痛 30 12(5.7) 31 19(10.1)

神経系障害 20 13(6.2) 21 12(6.4)

骨癒合不全 0 0(0.0) 14 14(7.4)

その他 2 2(1.0) 1 1(0.5)

その他の疼痛 7 5(2.4) 5 5(2.7)

脊椎に関する事象 13 12(5.7) 28 13(6.9)

外傷 0 0(0.0) 1 1(0.5)

血管障害 1 1(0.5) 0 0(0.0)

創傷(非感染性) 0 0(0.0) 1 1(0.5)

予測できない重篤な有害事象の発現はなく、死亡例は本品 2 群で 1 例、ACDF2 群

で 2 例認められたが交通事故等によるものであり、いずれも本治験との関連性は否定

された。術後 24 か月時までに隣接椎間に外科的処置を受けた症例は、本品 2 群で 10

例、ACDF2 群で 13 例であった。X 線画像所見による評価においては、術後 24 か月

まででは、ACDF2 群で術後 12 か月時に脱転が 1 件認められた。

その他の重篤な有害事象として、術後 24 か月時までに ACDF2 群で 3 件の悪性腫

瘍が報告され、いずれも本治験との関連性は否定された。

以上の結果を踏まえ、申請者により、本治験における安全性結果は、2 椎間の難治

性の頚部神経根症又は脊髄症の患者における本品による治療が既存の ACDF による

治療と同様の安全性を有することが示されたと説明された。

<長期観察結果について>

本品の 2 椎間使用における長期観察結果として、最終的には 120 か月までフォロー

アップされる予定であるが、データが固定されている 60 か月までの結果は以下のと

おりであった。

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表 64. 術後 60 か月時の Overall Success の結果

項目 PRESTIGE LP2 群

(N=209)

ACDF2 群

(N=188)

NDI スコア Success rate

n/N(%)

148/166

(89.2)

105/135

(77.8)

神経学的所見 Success rate

n/N(%)

150/166

(90.4)

119/136

(87.5)

「Failure」として分類される外科的再処置

N 7 15

機器に関連性あり又は、機器及び手術手技に関連性ありと判断された重篤な有害事象

N 4 12

Overall Success

(主要評価項目)

Success rate

n/N(%)

132/166

(79.5)

91/138

(65.9)

術後 60 か月までに発現した全ての有害事象は、本品 2 群で 202 例/209 例(96.7%)

2029 件、ACDF2 群で 177 例/188 例(94.1%)2004 件であり、そのうち重篤な有害事

象は、本品 2 群で 96 例/209 例(45.9%)412 件、ACDF2 群で 102 例/188 例(54.3%)

548 件であった。重篤かつ機器又は、機器及び手術手技に関連する有害事象は、本品

2 群で 4 例/209 例(1.9%)8 件、ACDF2 群で 12 例/188 例(6.4%)30 件であり、術

後 24 か月までの当該有害事象と同様であった。

<総合機構における審査の概要>

総合機構は、以下に述べる点を中心に専門協議の議論を踏まえ、審査を行った。

(1)本邦における臨床的位置づけについて

(2)本品の 1 椎間使用における使用目的又は効果について

(3)海外臨床試験の外挿性について

1)1 椎間治験の国内成績への外挿性について

2)高さ 5mm サイズの本邦におけるニーズ及び 2 椎間治験成績を 1 椎間の成績の評

価に利用する適切性について

(4)有効性及び安全性について

1)本品の 1 椎間使用における有効性について

2)本品の 1 椎間使用における安全性について

3)治療高位による有効性及び安全性への影響について

(5)製造販売後安全対策について

1)血中金属イオン濃度の測定の必要性について

2)実施医及び実施施設の要件について

3)講習会について

4)添付文書について

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(1)本邦における臨床的位置づけについて

本邦における頚部脊髄症に対する主な手術療法として、後方からの脊柱管拡大術(椎弓形

成術)及び ACDF、頚椎神経根症に対する主な手術療法として、ACDF や後方からの椎間孔

拡大術が選択されていることを踏まえ、総合機構は本邦に本品が導入された場合の臨床的

位置づけについて申請者に説明を求めた。

申請者は、以下のように説明した。

現在、手術療法として ACDF があるが、当該術式は除圧と同時に病変部を固定するため、

隣接椎間障害の発現リスクがある。また、若年の椎間板ヘルニア患者等では疼痛が高度であ

っても椎間可動性が奪われることを敬遠し、保存療法が選択、継続されるケースが少なくな

いが、保存療法の長期化には疼痛の慢性化等のリスクがある。そのため、ACDF の代替療法

として、可動性を維持することが適当又は維持を希望する患者群が本品の適応となり得る

と考えられる。

総合機構は、以下のように考える。

1 椎間治験において、術後 24 か月時点までに隣接椎間に外科的処置を受けた症例は、本

品群で 7 例/280 例(2.5%)9 件、ACDF 群で 11 例/265 例(4.2%)14 件と本品群の方が少な

かったものの(表 33)、有意差は示せていないことから、本来の頚椎人工椎間板の開発コン

セプトの一つである隣接椎間障害の発生頻度を低減できるかについては提出されたデータ

からは明らかにされていない。しかしながら、椎間の可動域については、適応椎間の平均可

動域は術後 24 か月時で 7.51°(表 15)、術後 84 か月時点で 6.78°((1)IDE G040086 Pivotal

試験、4)長期観察結果(84 か月))(術前 5.67°)と一定程度維持されていることから、本品

を用いた頚椎人工椎間板置換術を、従来固定術が対象となっていた症例に対する新たな治

療法の選択肢の一つとして、本邦に導入する臨床的意義はあると考えられる。また、本邦で

は海外と異なり、容易に他家骨を利用できる環境にないため、ACDF を施行する際は自家骨

(腸骨等)を採取することがあるが、頚椎人工椎間板置換術では採骨が不要であることから、

採骨に伴う採骨部痛や感染等の合併症発現リスクを回避できることはメリットの一つにな

りうる。

一方で、本治験において、ACDF 群と比較して、本品群において有害事象として疼痛(頚

部痛、上肢痛)で高い発現率が認められたことは((1)IDE G040086 Pivotal 試験、2)安全

性評価<有害事象>、表 31)、本品のコンセプトとして可動性を維持すること(すなわち神

経障害や疼痛の原因となり得る動的因子の残存)によるデメリットが示されたとも考えら

れる。したがって、動的因子の残存に対するリスク・ベネフィットを勘案して適切に患者を

選択する必要性があると考えられる。また、評価(試験デザイン)の観点からも、ACDF は

頚椎の神経根症及び脊髄症の治療方法として確立しており、国内外において一定の成績が

報告されていること等も踏まえると、本品を用いた頚椎人工椎間板置換術の有効性及び安

全性について ACDF と同等の成績であること(非劣性)を検証することで差し支えないと

考えられ、1 椎間治験及び 2 椎間治験において本品群の ACDF 群に対する非劣性が検証で

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きたことから、本邦における頚椎の神経根症又は脊髄症の治療法の選択肢の一つとして、臨

床現場に加える意義はあると判断した。

(2)本品の 1 椎間使用における使用目的又は効果について

本邦では、脊髄症の患者に対しては、上下肢の麻痺が生じ、重篤な機能障害を残す可能性

があることから、積極的に手術療法が選択されている。一方、神経根症の患者に対しては、

疼痛のみで麻痺等の神経障害を認めない場合にはより長期間、安静、カラー固定、薬物治療

等の保存療法が選択され、保存療法が奏効せず、進行性の神経障害や筋力低下、ADL 障害

の強い(耐え難い)疼痛が持続する場合に手術療法が選択されている。米国においては、本

品の適応に 6 週間以上保存療法が奏効しなかった神経根症又は脊髄症を適応に含めている

ものの、米国の 1 椎間治験で組入れられた症例の 60%以上が症状を発症してから 6 か月以

上経過していること及び本邦における治療実態を踏まえ、総合機構は、本邦における使用目

的は、保存療法に奏効しない期間を 3 か月以上(ただし進行性の神経障害がある場合は、早

期手術適応となるため、例外として 3 か月未満でも使用可)とすることが適切であり、申請

時の使用目的又は効果で差し支えないと判断した。

(3)海外臨床試験の外挿性について

1)米国 IDE 試験(1 椎間治験及び 2 椎間治験)成績の国内成績への外挿性について

総合機構は、前述のような米国と本邦における手術適応の違い等、頚部脊髄症及び頚椎神

経根症に対する既存療法や医療環境等の違いを踏まえても、米国で実施された臨床試験成

績を本邦における本品の成績として外挿可能と考える妥当性について、申請者に説明を求

めた。

申請者は、下記の理由から米国 IDE 試験の成績を外挿することに問題ないと考えると説

明した。

・人種差:米国 IDE 試験の被験者の平均身長及び平均体重と日本人の平均身長及び平均

体重を比較すると体格差はあるものの、日本人にも多く用いられると考えら

れる高さ 5mm サイズ、6mm サイズ及び 7mm サイズの成績が多く含まれてい

ること。また、文献報告8を踏まえると高さ 7mm 及び 8mm サイズが適合する

患者も本邦に存在すると考えられること。

・保存療法の期間:米国 IDE 試験において、症状が出てから手術に至るまでの時間とし

て、半数以上の症例(173 例/280 例)が 6 か月以上であり、短期間での施術例

は少なく、現在、本邦において保存療法が選択されている又は手術適応となっ

ている患者で、本品が上市された場合には頚椎人工椎間板置換術の適応にな

り得るような患者が多く含まれていると考えられること。

・術者:米国 IDE 試験では脳神経外科医の方が整形外科医よりも多かったものの、術者

の所属する診療科による影響よりも頚椎前方手術に習熟しているかどうかの

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方がより成績に影響すると考えられること。

・入院期間:米国 IDE 試験では約 1 日で退院させているが、本邦の方が入院期間が長く、

より慎重に術後管理がなされると考えられること。

・患者年齢:頚椎人工椎間板置換術の一般的な適応は、椎間板ヘルニア等の頚椎変性疾患

に伴う神経障害と考えられ、国内外において対象患者の選択基準や年齢層が

大きく異なることはないと考えられること。

また、本邦における ACDF の文献情報9,10,11,12も踏まえ、申請者より、1 椎間治験におけ

る VAS や機能スコアの改善率が本邦における ACDF の成績と同等である旨が説明され

た。総合機構は、用いられたスコアが同一でないため直接比較はできないものの、ACDF

は確立した術式であり、国内外で成績に大きな差はなく、傾向が類似していることも踏ま

え、上記説明は受入れ可能と判断した。

総合機構は、以上の説明も踏まえ、1椎間治験及び 2椎間治験のデータを評価した結果、

当該米国 IDE 試験成績を本邦における成績として外挿することは可能と判断した。

2)高さ 5mm サイズの本邦におけるニーズ及び 2 椎間治験成績を 1 椎間の成績の評価に

利用する適切性について

総合機構は、1)で説明されたとおり、国内外で体格差があると考えられたことから、

本邦への高さ 5mm サイズの導入の必要性について、申請者に説明を求めた。

申請者は、文献 8,13を踏まえると、本邦では高さ 5~6mm サイズの本品が適応となる患

者が多いと考えられること、また、中国等、アジア諸国においても 5mm サイズが多く使

用されていることから、本邦において高さ 5mm サイズのニーズはあり、また、大きすぎ

るインプラントを設置した場合、沈み込みが懸念され、適切なサイズ選択を行う必要があ

ることから、1 椎間使用から本邦へ導入する必要性があると説明した。

総合機構は、高さ 5mm サイズの本品は、1 椎間治験実施後に追加されたため、1 椎間治

験の成績に当該サイズが含まれていないことから、2 椎間治験の成績を外挿することの妥

当性について、申請者に説明を求めた。

申請者は、高さ 5mm サイズの本品の 1 椎間使用のための評価資料として、2 椎間治験

の成績を使用することの根拠について、以下のように説明した。

・2 椎間治験において、上位椎体で 76 例/209 例(36.4%)、下位椎体で 57 例/209 例(27.3%)

と、十分な数の 5mm サイズが使用されていること

・2 椎間治験において、高さ 5mm サイズの成績と高さ 6mm、7mm 及び 8mm サイズの成

績を「高さ 5mm サイズを 1 椎間のみに使用」、「高さ 5mm サイズを 2 椎間に使用」、「高

さ 6mm、7mm 及び 8mm サイズを使用」の 3 群に分け、主要評価項目、副次評価項目

(SF-36 PCS、頚部痛、上肢痛)及び有害事象について比較した結果、有効性及び安全

性について各群に大きな差がないことが示されたこと

・高さ 6mm、7mm 及び 8mm サイズの 1 椎間の成績と 2 椎間の成績を主要評価項目、副

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次評価項目(SF-36 PCS、頚部痛、上肢痛)及び有害事象について比較した結果、有効

性及び安全性について、使用椎間数の間で大きな差がないことが示されたこと

総合機構は、以上の申請者の説明も踏まえ、1 椎間治験及び 2 椎間治験の成績を評価した

結果、1 椎間と 2 椎間で特段成績に大きな差がなく、かつ高さ 5mm とそれ以上の高さのサ

イズの製品の間にも成績に大きな差が認められないことが確認できたことから、高さ 5mm

の製品の有効性及び安全性の評価に際し、2 椎間の成績を利用することは可能と判断した。

(4)有効性及び安全性について

1)本品の 1 椎間使用における有効性について

本品群の術後 24 か月時の Overall Success(FSU Height を含む)の Success rate は 70.4%、

ACDF 群は 63.2%、Overall Success(FSU Height を除く)の Success rate は 79.3%、ACDF

群は 66.8%であり、Overall Success の定義にかかわらず、本品群の Overall Success rate は

ACDF 群と比較して高いポイントを示し、統計学的に非劣性であることが示された。また、

術後 24 か月時の Overall Success(FSU Height を除く)については、本品群の ACDF 群に

対する優越性も認められた。

長期成績については、本品の術後 84 か月時の Overall Success(FSU Height を含む)の

Success rate は 62.0%、ACDF 群は 60.0%、Overall Success(FSU Height を除く)の Success

rate は 74.9%、ACDF 群は 63.2%であり、いずれも本品群の方が高いポイントを示し、

Overall Success(FSU Height を除く)については、本品群の ACDF 群に対する非劣性が示

された。Overall Success(FSU Height を含む)については、本品群の FSU Height の Success

rate の低下により、本品群の ACDF 群に対する非劣性を示すことができなかったが、申請

者は、当該 Success rate の低下の要因を、Success の基準が 2mm 以内と厳しかったことに

起因すると推察した。総合機構は、FSU Height の Success rate は低下傾向を示したものの、

NDI スコア、可動域は術後 84 か月時においても維持されていること等を踏まえ、本品群

の有効性は長期にわたって ACDF 群と同等と認められると判断した。

2)本品の 1 椎間使用における安全性について

i)有害事象

本品の可動性に影響する可能性のある異所性骨化について、1 椎間治験では術後 84 か

月までに脊椎部分に発現した異所性骨化は 37 例 43 件あったが、2 椎間治験の成績も加味

すると、発現した異所性骨化のグレードと必ずしも可動域や主要評価項目が関連してい

ないと考えられたため、開発コンセプトである可動性の維持等に対し、特段大きな懸念は

ないと推察された。また、前述のとおり、ACDF 群と比較して本品群での発現率の高かっ

た頚部痛及び上肢痛について、申請者にその内訳を確認した結果、本品群と ACDF 群に

おいて発現した有害事象のカテゴリーには同様の傾向が認められ、特段本品群特異的に

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発現したと考えられる事象は認められなかった。なお、本品群において当該有害事象の発

現率が高かった理由として、可動性が維持されること(動的因子)による圧迫等が考えら

れた。また、脊椎に関する事象(頚椎脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニア等)の発現率が ACDF

群に対し本品群で高く、重篤かつ機器又は、機器及び手術手技に関連する有害事象につい

ては、本品群で 2.5%(7 例/280 例)12 件、ACDF 群で 0.4%(1 例/265 例)1 件であった

が、本品は可動性を有することから、若年者等に対するベネフィットが高いこと等も踏ま

えると、2.5%程度の発現率は許容可能であり、さらに、関連学会により策定された適正

使用指針により、適切な患者選択が行われ、実施医及び実施施設が遵守されることにより、

適切な手術手技がなされれば、当該事象の低減化を図ることができるものと判断した。

ii)不具合について

1 椎間治験において、術後 84 か月までに、術中のインプラントの破損が 2 件報告され、

1 件はインストゥルメントの把持部の破損であった。1 件は詳細不明であるが術中に新し

いインプラントと交換され、いずれの患者においても外科的再処置を要しなかった。また、

治験以外で報告されている不具合については、インサーターによるものがほとんどであ

ったことから、改良が施され、本邦導入時には改良後のインサーターが導入される予定で

ある。総合機構は、適切な手術器具を用いて適切な手技で手術を行うことにより、上記の

ような不具合は回避できると考え、現時点で本品自体の改良が必要な点はないと判断し

た。

総合機構は、以上の安全性について提出された全ての米国治験において発現した有害

事象の種類や頻度、外科的再処置の内容や件数、神経学的所見、不具合等の状況を踏まえ

ると、本品群は ACDF 群と同等と、本邦での臨床使用を許容できないほど大きなリスク

はないと判断した。

3)治療高位による有効性及び安全性への影響について

本品の適用高位によってはインプラント設置等、手術の難易度や骨質が変わりうるこ

と等が考えられたため、総合機構は、適用高位が成績へ影響を及ぼす可能性がないか、申

請者に治療高位ごとの成績について説明を求めた。

申請者から提示された資料の概要は以下のとおりである。

治療高位別の Overall Success rate については、C3/C4、C4/C5 の症例数は少ないものの、

傾向に特段大きな差は認められず、当該データから適応椎間による Overall Success rate へ

の影響は示されなかった(表 65)。ACDF 群との比較においては、C3/C4 の Overall Success

(FSU Height を含む)を除き、本品群で概ね高い Success rate を示した(表 66)。

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表 65. 術後 24 か月時の Overall Success の結果

(IDE G040086 Pivotal 試験(1 椎間治験)(治療高位別)

項目

PRESTIGE LP 群

(N=280)

C3/4

(N=4)

C4/5

(N=21)

C5/6

(N=147)

C6/7

(N=108) p 値*

NDI スコア

Success rate

n/N(%)

4/4

(100.0)

16/19

(84.2)

120/140

(85.7)

97/107

(90.7) 0.552

神経学的所見

Success rate

n/N(%)

4/4

(100.0)

19/19

(100.0)

128/140

(91.4)

101/107

(94.4) 0.568

FSU Height の維持

Success rate

n/N(%)

3/3

(100.0)

14/17

(82.4)

123/134

(91.8)

65/70

(92.9) 0.502

「Failure」として分類される外科的再処置

N 1 3 4 4 -

機器に関連性あり又は、機器及び手術手技に関連性ありと判断された重篤な有害事象

N 0 3 5 4 -

Overall Success(FSU Height を除く)

Success rate

n/N(%)

3/4

(75.0)

16/20

(80.0)

106/140

(75.7)

90/107

(84.1) 0.370

Overall Success(FSU Height を含む)

(主要評価項目)

Success rate

n/N(%)

2/3

(66.7)

12/19

(63.2)

93/133

(69.9)

52/71

(73.2) 0.805

*フィッシャーの正確確率検定により算出

表 66. 椎間別の術後 24 か月時の Overall Success rate

(1 椎間治験)(治療高位別)

PRESTIGE LP 群

(N=280)

ACDF 群

(N=265)

PRESTIGE LP 群及びACDF 群の Success rateの差異に関する点推定値及び 95%信頼区間*

Overall Success (FSU Height を除く)

C3/C4

C4/C5

C5/C6

C6/C7

3/4(75.0%)

16/20(80.0%)

106/140(75.7%)

90/107(84.1%)

4/8(50.0%)

6/11(54.5%)

84/125(67.2%)

53/76(69.7%)

25.0%(-34.2%, 84.2%)

25.5%(-7.9%, 58.9%)

8.5%(-2.4%, 19.4%)

14.4%(2.2%, 26.5%)

Overall Success (FSU Height を含む)

C3/C4

C4/C5

C5/C6

C6/C7

2/3(66.7%)

12/19(63.2%)

93/133(69.9%)

52/71(73.2%)

4/5(80.0%)

5/10(50.0%)

72/115(62.6%)

27/41(65.9%)

-13.3%(-75.3%, 48.6%)

13.2%(-24.6%, 50.9%)

7.3%(-4.5%, 19.1%)

7.3%(-10.1%, 24.9%) *95%信頼区間は、Farrington-Manning 法を用いて算出

安全性については、C3/C4 及び C4/C5 の症例は症例数が少なく、ばらつきは認められる

ものの(表 67)、治療高位特異的に高率に発現している有害事象は認められなかった。

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以上、総合機構は、提示された資料を確認した結果、術後 24 か月時の成績から、治療

高位による成績への影響は特段大きくなく、術後 84 か月時の成績についても、術後 24 か

月時と同様の傾向であることが確認できたことから、C3~C7 の適応範囲においては、概

ね同等の成績が得られると判断した。

また、上記の成績に加え、添付文書において、C3/4 椎間への使用について、展開やイン

プラント設置が困難である場合があり、慎重に適応を検討する必要がある旨、注意喚起が

なされていることから、総合機構は、申請時からの適応椎間(C3~C7)を変更する必要は

ないと判断した。

表 67. 重篤かつ機器又は、機器及び手術手技に関連する有害事象(術後 24 か月まで)

(1 椎間治験)(治療高位別)

有害事象

PRESTIGE LP 群 (N=280)

C3/4

(N=4)

C4/5

(N=21)

C5/6

(N=147)

C6/7

(N=108)

p 値*

件数 報告例数

(%) 件数

報告例数

(%) 件数

報告例数

(%) 件数

報告例数

(%)

全ての有害事象 0 0(0.0) 6 3(14.3) 17 7(4.8) 10 4(3.7) 0.230

異所性骨化 0 0(0.0) 0 0(0.0) 1 1(0.7) 0 0(0.0) 1.000

インプラントに関する事象

0 0(0.0) 1 1(4.8) 3 3(2.0) 0 0(0.0) 0.167

頚部痛又は(及び)上肢痛

0 0(0.0) 1 1(4.8) 5 3(2.0) 1 1(0.9) 0.385

神経系障害 0 0(0.0) 1 1(4.8) 1 1(0.7) 3 3(2.8) 0.243

その他の疼痛 0 0(0.0) 0 0(0.0) 2 2(1.4) 1 1(0.9) 1.000

脊椎に関する事象 0 0(0.0) 2 2(9.5) 5 3(2.0) 5 2(1.9) 0.229

外傷 0 0(0.0) 1 1(4.8) 0 0(0.0) 0 0(0.0) 0.089 *フィッシャーの正確確率検定により算出

(5) 製造販売後安全対策について

1)血中金属イオン濃度の測定の必要性について

本品の摺動面はメタルオンメタル構造であることから、人工関節における議論も踏ま

え、本品の使用成績調査において、血中金属イオン濃度等、金属摩耗粉による影響につい

て評価するための調査項目を設定する必要性について検討した。IDE G040086 Metal Ion 治

験において、血中金属イオン濃度の経時的な上昇は認められたものの、文献で報告されて

いる範囲内であり、摩耗粉に関する生物学的安全性試験の成績からも許容できないリス

クはないと考えられた。また、1 椎間治験及び 2 椎間治験において抜去された検体の組織

学的検査の結果、摩耗粉に起因する骨融解は見られず、周辺組織への影響は一般的な金属

インプラントで認められる内容であると考えられた。

申請者は、金属摩耗粉に起因すると考えられる所見が認められた場合には、個別に適切

な検査を行い、適切な対応を取ると説明していることから、総合機構は、金属摩耗粉に関

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する調査項目を使用成績調査の必須項目として設定する必要性はないと判断した。

2)実施医及び実施施設の要件について

総合機構は、本品使用時の有効性及び安全性を担保するために、医師の専門性や施設の

基準、本品に関する講習を含む適正使用基準等の整備等について、関連学会の協力が得ら

れることが望ましいと判断し、関連学会へ適正使用基準の策定を依頼した。

総合機構は、日本脊椎脊髄病学会及び日本脊髄外科学会により策定された指針の内容

を確認した結果、実施医基準及び実施施設基準が遵守される必要があると判断し、申請者

に対し、添付文書上に明記することを求め、申請者により適切に対応された。なお、「医

薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(昭和 35 年 8 月 10

日法律第 145 号)第 79 条第 2 項の観点から、本品の適応及び関連学会と協力して作成さ

れた適正使用指針の実施医及び実施施設要件が遵守され、頚椎前方進入手術に対する十

分な知識・経験を有する医師により、本品が適切に用いられるよう医師及び施設の要件の

承認条件としての付与は必要と考える。

3)講習会について

総合機構は、治験において認められた本品の不具合・有害事象等を踏まえると、本品の

使用者は、本品の特徴を理解して使用する必要があると考え、本品のトレーニングの必要

性について、申請者に説明を求めた。

申請者は、以下のように説明した。

本品を使用する医師については、日本脊椎脊髄病学会又は日本脊髄外科学会が認定し

た講習会の受講が義務づけられる。講習会については、講義の受講、模擬手術講習による

トレーニングに加え、使用成績調査施設等における手術見学の実施が予定されている。

総合機構は、関連学会との連携を図るとの申請者の説明を踏まえ、申請者の対応に特段

問題はないと判断した。

4)添付文書について

添付文書の記載内容については、専門協議におけるの議論を踏まえ、申請者により、禁

忌・禁止欄、使用上の注意欄等の整備がなされ、必要な注意喚起が行われることから、現

時点において特段の問題はないと判断した。

ト.医療機器の製造販売後の調査及び試験の実施の基準に関する省令第 2 条第 1 項に規定

する製造販売後調査等の計画に関する資料

総合機構は、本邦における本品の使用経験がなく、本邦において類似製品が製造販売され

ていないことから、本邦での使用実態下における安全性及び有効性を確認する必要がある

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と判断した。

申請者から提出された使用成績調査実施計画書(案)の概要を表 68 に示す。

表 68. 使用成績調査実施計画書(案)

目的

実臨床使用実態下で、画像所見により確認された椎間板ヘルニア又は骨棘

を伴う 1 椎間レベルの神経根症又は脊髄症に対する本品の安全性及び有効

性を評価すること

予定症例数 67 症例

調査期間 5 年(登録期間:承認日から 年(準備期間含む、観察期間:2 年、解析期

間:k 年)

調査項目

【重点調査項目】

・不具合・有害事象のうち、再手術及びインプラントに関する事象(インプ

ラントの沈み込み、移動等)

【調査項目】

[手術時]

<被験者、手技情報>

・患者背景(年齢、性別、身長、体重)、術前の患者情報(既往・合併症の

種類、手術歴、保存療法の種類及び期間、治療高位及び可動域)

・本品の使用情報

・術中及び術直後の不具合・有害事象の発生

[本品埋植後 6 週、6 か月、12 か月、24 か月]

<安全性>

・不具合及び有害事象

<有効性>

・JOA スコア

・JOA CMEQ

・NDI

・疼痛評価(頚部痛、上肢痛)

・治療高位の可動域

・画像所見(X 線)

・画像所見(CT:術前・術後・24 か月)

申請者は、使用成績調査について、以下のように説明した。

本品は、本邦で初の頚椎人工椎間板であり、本品の安全性及び有効性を適切に調査するた

め、調査実施施設において全症例を調査対象とすることとした。なお、本品の予想患者数は

5 人/年/施設と考えられる。

ogawam5
長方形
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長方形
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また、対象症例数については、米国で実施した 1 椎間治験(IDE G040086 Pivotal 試験、本

品群 280 例)において、不具合・有害事象のうち、インプラントに関する事象(脱転、移動

等)の発現率は 5.7%、外科的再処置の発現率は 5.0%であった。これらのことから、再手術

が必要となる有害事象の発生率を約 5.0%と推測すると、統計学的に 5.0%の事象を少なく

とも 1 例、95%の検出確率で検出できる症例数は 60 例となる。これに中止・脱落率を 10%

と推定すると、必要症例数は 67 例となることから、対象症例数を 67 例とした。

総合機構は、米国治験期間中の不具合・有害事象の発現状況及び有効性の推移を考慮する

と、2 年時まで追跡することで概ねその後の成績は予測可能と考えることから、症例追跡期

間についての申請者の考えに問題はないと判断した。

対象症例数については、本邦で本品の適応と想定される症例数は全国で年間 80 例~100

例程度と推測されているが、調査実施施設が学会基準に定める実施施設要件を満たす施設

に限定されることを踏まえると、さらに対象症例数は減少すると考えられる。ついては、上

記の申請者の説明のとおり、調査実施施設において全例調査が実施されることを前提に、総

合機構は設定された症例数で受入れ可能と判断した。

以上より、総合機構は、申請者の計画を受け入れ可能と判断した。

4. 総合機構による承認申請書に添付すべき資料に係る適合性調査結果及び総合機構の判断

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律の規定に基づき承認

申請書に添付すべき資料に対して書面による調査を実施した。その結果、提出された承認申

請資料に基づいて審査を行うことについて支障はないものと総合機構は判断した。

5. 総合評価

本品は、頚椎の適応椎間の椎間板を本品に置換することで、椎間板ヘルニアや骨棘等の圧

迫因子の除去後に適応椎間の可動性を維持することを目的とした頚椎人工椎間板である。

本品の臨床評価として、頚椎椎間板変性疾患が原因で外科的治療が必要な患者を対象とし、

本品の 1 椎間使用及び 2 椎間使用の有効性及び安全性を評価する目的で実施された臨床試

験に関する資料が提出された。本品の審査における主な論点は、(1)臨床的位置づけ、(2)

使用目的又は効果、(3)海外臨床試験成績の外挿性、(4)有効性及び安全性、(5)使用成績

調査、(6)製造販売後安全対策についてであり、専門協議の議論を踏まえた総合機構の判断

は以下のとおりである。

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(1) 臨床的位置づけ

本来の頚椎人工椎間板の開発コンセプトである隣接椎間障害の発生頻度の低減について

は、本品の開発において達成しなければならないコンセプトとして位置づけなかったこと

から、米国 IDE 試験において当該発生頻度の低減を評価するデータは収集されておらず、

本品を用いた頚椎人工椎間板置換術が ACDF と比較して隣接椎間障害を低減できるかにつ

いては提出されたデータからは明らかにされなかったが、椎間の可動域については、一部、

異所性骨化等により可動域が低下・損失した症例もあるものの、適応椎間の平均可動域は術

後 24 か月時点で 7.51°、術後 84 か月時点で 6.78°(術前 5.67°)と一定程度維持されてい

た。一方で、ACDF と比較して疼痛が多く発現していたことは、可動性の維持が一つの要因

と考えられたことから、可動性を維持することがより適切と考えられる患者を選択するこ

とにより、本品を用いた頚椎人工椎間板置換術を、固定術を施行する前の新たな選択肢の一

つとして、本邦に導入する臨床的意義はあると判断した。

(2) 使用目的又は効果

本邦における頚部脊髄症及び頚椎神経根症に対する現在の治療法を踏まえると、本品の

使用目的を、保存療法に奏効しない期間を原則として最低 3 か月(ただし進行性の神経症状

がある場合は、早期手術適応となるため、例外として 3 か月未満でも使用可)とすることで

問題ないと判断した。また、画像評価により椎間板ヘルニア又は骨棘を伴うことを規定する

ことにより、頚部痛のみの症例にむやみに本品が使用されることを防げると考えられるこ

とから、本品を用いた頚椎人工椎間板置換術が有用な患者を適切に選択できると判断した。

(3) 海外臨床試験成績の外挿性

本品の臨床試験に関する資料として、米国で実施された IDE 治験成績が提出された。米

国と本邦における、本品の適応(使用目的)となる頚部脊髄症及び頚椎神経根症に対する既

存療法や手術適応、医療環境、人種差の違い等を踏まえて検討した結果、当該治験成績を本

邦における本品の成績として外挿可能と判断した。一方で、後述のとおり、本邦における臨

床成績を確認するためには、使用成績調査を付すことが必要と考える。

(4) 有効性及び安全性

本品の有効性については、米国 IDE 試験(1 椎間)成績から、ACDF 群に対し非劣性が示

された。また、2 椎間治験の成績から 1 椎間と 2 椎間で特段大きな差がなく、かつ高さ 5mm

とそれ以上の高さのサイズの製品の間にも成績に大きな差が認められないことから、高さ

5mm の本品の有効性及び安全性の評価に際し、2 椎間の成績を利用することは可能と考え

られた。本品の安全性については、認められた不具合・有害事象の内容や程度、発生頻度か

ら、本邦での臨床使用を許容できないほど大きなリスクは認められなかった。

以上を踏まえ、本品の使用目的における有効性及び安全性は認められると判断した。

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(5) 使用成績調査

本品は、米国をはじめとした諸外国において臨床使用されているが、本邦においては使用

経験がなく、本邦において類似する頚椎人工椎間板も製造販売されていないことから、本邦

での使用実態下における本品の安全性及び有効性を確認する必要があると判断した。米国

においては術後 7 年までのデータが収集され、引き続き術後 10 年までのデータ収集が予定

されているが、米国治験のデータも踏まえると、術後 2 年時までの成績を評価することで、

その後の経過が推測できるものと考えられた。そのため、本品の使用成績調査における症例

追跡期間は 2 年とし、販売準備、登録期間、解析期間を含めて 5 年することが妥当と判断し

た。

(6) 製造販売後安全対策

本邦では、頚椎人工椎間板は使用されていないことも踏まえ、本品承認後に本品の特性及

び頚椎前方手術に伴うリスクについて十分理解しない医師により安易に使用されることを

防ぐため、十分な知識を得た上で本品が使用されるよう、本品に係る講習会の受講を義務づ

ける必要があると判断した。また、関連学会により策定された適正使用に係る指針に基づき、

実施者及び実施施設基準を遵守させることが必要と判断し、承認条件として付与すること

が適当と判断した。

総合機構は、以上の結果を踏まえ、本品の承認条件を以下のとおり付与した上で、使用目

的又は効果を以下のように整備し、承認して差し支えないと判断した。

使用目的

本品は、頚椎の椎間板を置換するために用いられる頚椎人工椎間板である。

適応部位

頚椎(C3~C7)の 1 椎間

適応疾患

本品の適応疾患は、画像所見(CT、MRI、X 線等)により確認された次のいずれかを伴

う 1 椎間レベルの神経根症又は脊髄症である。

1. 椎間板ヘルニア

2. 骨棘

なお、本品は最低 3 か月の保存療法が奏効しなかった患者に用いられる。ただし、進行性

の神経障害が確認された場合は、その限りではない。

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承認条件

椎間板ヘルニア又は骨棘を主因とした頚椎の神経根症や脊髄症の治療及び頚椎前方手術

に対する十分な知識・経験を有する医師が、関連学会と協力して作成された適正使用指針を

遵守し、講習の受講により本品を用いた治療に関する技術を得る等、本品が適切に用いられ

るよう、必要な措置を講じること。

本品は、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと考える。また、使

用成績評価の対象として指定し、使用成績評価期間は 5 年とすることが妥当と判断した。

本件は、医療機器・体外診断薬部会において審議されることが妥当であると判断する。

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引用文献

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