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電子図書館建設と知の共有化 国立国会図書館長 長尾 OCLC メンバー評議会 アジア地域会議東京大会 201096早稲田大学小野記念講堂 1

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電子図書館建設と知の共有化

国立国会図書館長長尾 真

OCLC メンバー評議会アジア地域会議東京大会

2010年9月6日早稲田大学小野記念講堂

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インターネットの時代

• 全ての人が情報の受信者であり、また情報の発信者である。

• ほとんどあらゆる情報がネットで利用できる。

• ネット上の情報は出版社の編集者といった人のチェックを経ていないものが多く、情報の信頼性が問題となる場合がある。

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クラウドの時代

• 全ての図書館がそのコンテンツをクラウドの方に移す時代が来るだろう。

• それらのコンテンツをクラウドにおいて関連付けし、また共用できるようにする。

• 図書館の利用者はどこからでもどの図書館にもアクセス可能、また関連情報も引き出せるようになるだろう。

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国立国会図書館におけるディジタル化の現状(1)

• 国会会議録(戦後)は全て文字テキスト化し、種々の検索が可能。

• 帝国議会会議録は全ての資料がディジタル画像データとして読むことができる。

• 日本法令索引で1867年以降の全ての法律、条約等が検索できる。

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国立国会図書館におけるディジタル化の現状(2)

• 1867-1925年の当館所蔵のほぼ全ての図書の本文をディジタル画像で読める。

(約12万タイトル、17万冊)• 当館所蔵の貴重書(和漢書、錦絵、絵図、重要文化財など)がカラー画像で見ることができる。

• 「日本の記憶」というテーマの下に、ユニークな資料の画像を見ることができる。

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資料のディジタル化における問題

• 著作権者を探し出すのに時間と費用がかかる。また著作権者不明の図書が多い(孤児出版物)。

• 孤児出版物は著作権者が出て来た時に著作権料を払うことにして、ディジタル化できるようにするべきである。

• たとえば著作権者データベースを作り、そこに載っていないものについては、すぐに文化庁長官の裁定により利用可能とする。

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著作権法改正• 国立国会図書館における特例

国立国会図書館においては、図書資料保存の目的で許諾なく図書資料のディジタル化をすることができる。

この場合のディジタル化は、利害関係者との話合いでディジタルイメージまでであって、文字テキスト化ができないことになっている

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障害者のための著作権法の改正

• これまでの点字図書館から、政令で定める図書館(国立国会図書館をはじめ、公共図書館等)にまで広げて図書のディジタル化による提供が可能となる。

• 図書館間でのデータ送信、図書館から視覚障害者の方々への送信が可能となる。

• 将来、視覚障害者の範囲が発達障害者等に拡大されることが期待される。

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新しいディジタル化計画• 資料のディジタル化のために補正予算1

27億円を獲得。

• 1968年までの図書、雑誌、博士論文、官報、古典籍等約100万冊を2年間でディジタル化する予定。

• ディジタル化はイメージのレベルであるが、障害者のために文字化する検討を行っている。 9

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• メタデータとしては、書誌的事項のほかに、目次も入れており、目次検索が可能。

• ディジタル化された資料は館内の端末でのみ見ることが可能、同時に見られるのは蔵書冊数以下。

• 著作権者から許諾を得る作業も進めており、許諾の得られたものは、順次ネット上で公開してゆく。その場合、利用は自由である。 10

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(別紙)平成21年度補正予算におけるデジタル化の進捗状況 (平成22年7月12日現在)

既実施分(H20以前) 執行実施分(H21・H22) 執行予定分(H22)

1860 1870 1880 1890 1900 1960 1965 19701910 1920 1930 1940 1945 2000

江戸期以前 明治 大正 昭和戦前 昭和戦後 平成

1975 1980 1985 1990 19951950 1955

古典籍資料

貴重書等

1,000タイトル

カ 5.8万冊

その他

(1969年∼ )

国内刊行雑誌イ· オ 0.8万タイトル(∼ 2000年)

キ 1万タイトル(∼ 2000年)

図   書

明治大正期刊行図書

ア· ウ33.2万冊

(∼ 1945年)

エ31.3万冊

(1946∼ 1968年)

博士論文ク 14万冊(1991∼2001年)

官  報 ケ 0.1万冊(1883∼ 1952年)

(提供中)近代デジタルライブラリー

15.6万冊

(提供中)貴重書画像データベース

国立国会図書館のディジタル化計画

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(別紙)平成21年度補正予算における著作権処理の進捗状況 (平成22年7月12日現在)

提供済 ~H21年度著作権処理① H22年度著作権処理① H22年度著作権処理②

博士論文14万冊(1991∼2001年)

図書大正期6.3万冊

昭和前期12.8万冊

戦後期刊行図書(1945∼ 1968年)

(H23.3までデジタル化作業中)

昭和前期4.7万冊

1995 2000

資料 明治 大正 昭和戦前 昭和戦後 平成

1965 1970 1975 1980 1985 19901930 1940 1945 1950 1955 19601870 1880 1890 1900 1910 1920

近代デジタルライブラリー公開中

明治期· 大正期15.6万冊

(うち大正期 2.7万冊)

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インターネット上の情報

• born-digital 情報の存在。• 国の文化財として収集・保存・活用すべ

きもの。• Webサイトはどんどん開設されるととも

に、消えていくものも多い。• 安定的に開設されているWebサイトも内容は常に変化している。

• これらを常に追跡して保存することが大切。

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WEBサイトの収集

· 国立国会図書館法の改正国、地方公共団体、国公立大学、独立行政

法人等のwebサイトを許諾なく収集できる

·深層 webで収集のできない部分については送ってもらう

・収集したwebサイトの情報は、許諾を得てインターネット上に公開する

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我々のなすべきこと• 自国の知的資産は自国で守り、積極的に発信する。

• これは永続性が最も大切であり、公的機関がなすべきものである。

• フランスはグーグルに対抗して、フランスの文化財のディジタル化にぼう大な予算を投入すると表明。

• ドイツ連邦政府もドイツディジタル図書館設立のために基金を拠出すると共に、その後年間の維持費を継続して出すと表明。

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電子出版物の収集・保存・利用

• 出版物を中心とする日本の文化創造活動は収集、保存され、新しい創造のために利用されるべきである。

• 日本の出版物は納本制度により国立国会図書館で収集され、利用に供されている。

• 電子出版物についても電子納本、保存され、利用に供されるべきであり、電子納本制度を確立すべく現在作業中である。

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電子図書館の大切さ

• 国立国会図書館は来館者だけでなく、全ての国民に同等のサービスを提供することが理想である。

• そのためには図書館資料を全て電子化して利用者に送信できることが必要である。

• 図書・資料を電子化すれば、冊子体での図書館サービスよりもはるかに優れた知的で柔軟なサービスを実現できる。

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Japan Book Search -ありうる姿-

• 国立国会図書館において全国の図書館の総合目録をより充実したものにする。

• 国立国会図書館にアクセスすれば日本中の(電子)出版物の所在が分かるようにする。

• 検索結果の資料が国立国会図書館のディジタルアーカイブにあれば、利用できるようにする。 18

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OCLCへの参加

• 2010年の夏に国立国会図書館の500万点以上のOPACデータをOCLCに提供。

• OCLC World Catを通じて国立国会図書館の検索ができるようになった。

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多様な検索の可能性

• より満足度の高い検索を実現するために、書誌情報をより豊富なものにすべきである。

• コンテンツの全文検索、スニペット表示などで書物の立ち読みにあたることが出来て、欲しい書物を入手できる。

• 目次や索引などを利用することによって種々の検索が可能となり、冊子単位だけでなく、冊子の中の章、節、項や頁、パラグラフ、文や図など、種々の単位で取り出せる

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書物の解体と再構成• 学術図書、学術論文などの場合は、過去

の多くの成果の上に新しい成果が得られている。

• 過去の成果の必要なところを切り取って編集し、その上に新しい成果を付けくわえることが必要である。

• これは書物を解体し、必要な所を取り出し新しい観点から再構成することである。

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知識社会の時代

• 物の時代から情報の時代へ

• 量から質の時代へ

• 知識が富を生み出す

• 製造から、設計、世界標準、知的所有権へ

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知識インフラの必要性

• 知識の拡大再生産のためには、知識の創造と集積·流通·活用の サイクルの構築が必要。

• 課題解決型の研究には様々な学問分野がかかわるシステム的アプローチが必要。

• 課題を設定するためには、その課題についてこれまでどのような研究がなされて来たか、何が未解決か、イノベーションをおこせる可能性があるか、社会に対するインパクトはどうなりそうか等を調べねばならない

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知の共有化

• 多くの分野がかかわるシステム的課題の場合、理工系の研究者だけでなく、政策立案 者、人文社会系の研究者や市民もが調査してアセスメントができる環境を作る必要がある。

• あらゆる学問の成果は当然のこと、企業社会、人間社会、自然社会等の知識・情報を収集整理し、自由に利用できるようにしなければならない。

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知識インフラの構造

• 知識は関連するものが有機的に結合され、ネットワーク的に統合化されたもの(単に情報を集めたものではない)である。

• 日本中にある人文社会科学を含んだあらゆる学問・研究のコンテンツ、数値データ、研究データ、研究ツール、社会状況データ等が知識の形に組織化される必要がある。

• 諸外国の同様なシステムとリンクがとれる必要がある。 25

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機械翻訳を通じた電子図書館連携

• 日中韓、3国の国立図書館の横断検索による連携

• 日本語検索キー ⇒ 中国語検索キー ⇒中国国家図書館検索 ⇒ 検索結果(書誌事項、一次情報)の機械翻訳と提示

• 中国語検索キーから出発して日本語テキストを機械翻訳を通じて中国に提供する。

• 日韓の間でも同様のことを検討中。26

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知識はわれらを豊かにする

Through knowledge we prosper

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