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1896

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  • 目覚める魂と魔法使い

    秋鈴

  • 【注意事項】

     このPDFファイルは「ハーメルン」で掲載中の作品を自動的にPDF化したもので

    す。

     小説の作者、「ハーメルン」の運営者に無断でPDFファイル及び作品を引用の範囲を

    超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁じます。

      【あらすじ】

     偶然によって命を失ってしまった男がいた。

     しかし、彼の死亡理由は些細なミスによるものだった。

     そして、死んでしまった青年は力を得て転生する。

     目覚めろ、その魂!

     ※感想・評価、お待ちしております

     ※タイトル決定しました

     ※原作名変更しました(2014/9/12)

     ※原作名変更に伴い、タイトル変更しました(2014/9/15)

  •   目   次  

    第1部 転生

    ────────

     第0話 序章 

    1

    ────

     第1話 覚醒と出会い 

    11

    ────────

     第2話 世界 

    18

     閑話 設定 ※2014/9/6修正

    ───────────────

     

    26

    ──

     第3話 相棒誕生(前篇) 

    33

    ──

     第4話 相棒誕生(後篇) 

    40

    第2部 リリカルなのは─小学生編─

     設定 ステータス・リリカルなのは小

    ────────────

    学生篇 

    51

    ───────

     第5話 始まり 

    56

     第6話 会議というよりむしろ会談 

    ──────────────────────

    70

    ───

     第7話 探索と喫茶翠屋 

    76

     第8話 少女とフェレットと戦闘と 

    ──────────────────────

    86

    ─────

     第9話 事情説明会 

    97

     第10話 オリ主登場……が、即座に

    ───────────

    路線変更 

    110

     第11話 ラビリンスシティにて(前

    ─────────────

    篇) 

    123

     第12話 ラビリンスシティにて(後

    ─────────────

    篇) 

    135

    ────

     第13話 魔王の祝福 

    146

  •  第14話 出会った少女は…… 

    ──────────────────────────────────────────

    153

    ────

     第15話 エル、出現 

    160

    ─────

     第16話 地のエル 

    176

    ────

     第17話 管理局登場 

    195

    ──────

     第18話 その後 

    205

    ───

     第19話 修行開始…… 

    213

     第20話 浴場のガールズトーク 

    ──────────────────────────────────────────

    221

    ──────

     第21話 前準備 

    230

    ────

     第22話 魔王と会談 

    240

     第23話 親睦会とゲームの始まり 

    ──────────────────────────────────────────

    249

    ────

     第24話 麻雀その1 

    258

    ────

     第25話 麻雀その2 

    265

    ────

     第26話 麻雀その3 

    273

    ─────

     第27話 麻雀完結 

    282

    ──

     第28話 闇の書対策会議 

    289

    ────

     第29話 主力と対策 

    298

    ─────

     第30話 騎士と猫 

    311

    ───

     第31話 アモルファス 

    322

    ──

     第32話 助けを求める声 

    331

    ───

     第33話 関東魔法協会 

    341

    ─────

     第34話 決戦前夜 

    352

    ──

     第35話 決戦間際の妨害 

    362

     第36話 決戦、闇の書の闇!(前篇)

  • ───────────────

     

    371

     第37話 決戦、闇の書の闇!(中篇)

    ───────────────

     

    380

     第38話 決戦、闇の書の闇!(後篇)

    ───────────────

     

    389

     第39話 決戦、闇の書の闇!(完結篇

    ─────────────

    1) 

    401

     第40話 決戦、闇の書の闇!(完結篇

    ─────────────

    2) 

    411

     第41話 決戦、闇の書の闇!(完結篇

    ─────────────

    3) 

    426

     第42話 決戦、闇の書の闇!(完結篇

    ─────────────

    4) 

    437

     第43話 夜天の書とエグザミアのそ

    ─────────────

    の後 

    449

    閑章

     第44話 大規模テロと勇者王 

    ──────────────────────

    465

    ───

     第45話 誘拐現場にて 

    483

    ──

     第46話 月村と夜の一族 

    499

     第47話 普段が短編並に短いのに短

    ──────

    編集とはこれいかに 

    508

    ────

     第48話 両親の帰宅 

    526

     第49話 真祖の吸血鬼の依頼 

    ──────────────────────

    545月と貴女に花束を 編

  • ─────

     第50話 月森冬馬 

    553

    ───

     第51話 過去と御堂巽 

    568

    ────

     第52話 大学と襲撃 

    577

     第53話 兄であるという事は 

    ──────────────────────────────────────────

    595

    ─────

     第54話 満ちる月 

    610

    ─────

     第55話 二人の光 

    625

    ───

     第56話 始まりと終幕 

    643

     第57話 年度末騒動、前篇 

    654

     第58話 年度末騒動、後篇 

    671

     設定 ステータス:月と貴女に花束を

    ──────────────

    編 

    687

     第59話 夏祭りと現れた少女 

    ──────────────────────

    697

    ───

     第60話 由花(前篇) 

    709

    ───

     第61話 由花(中篇) 

    726

    ───

     第62話 由花(後篇) 

    740

    ───

     第63話 悪魔族と予知 

    754

     第64話 物量戦─アマウント・

    ────────

    ウォーフェア─ 

    764

     第65話 夜明けの巨人─マテリアル

    ──────────────

    ─ 

    784

     第66話 剣姫誕生(前篇) 

    795

     第67話 剣姫誕生(後篇) 

    810

     第68話 瘴気の竜と【影】 

    823

     第69話 魂は輝き、光は穢れを浄化

  • ─────────────

    する 

    835

     第70話 1つの終わりとうごめく陰

    ──────────────

    謀 

    847

     第71話 水銀の思惑と巨人の頼み 

    ──────────────────────────────────────────

    859 第72話 新たな仲間と新たな力 

    ──────────────────────────────────────────

    873 第73話 白狼の特訓、少女たちの団

    ──────────────

    欒 

    889

     第74話 家族の想い/新たなる力 

    ──────────────────────────────────────────

    901 第75話 偶にはタイトルでネタに

    走ってもいいかと思ってみたりする 

    ──────────────────────

    915 第76話 新たなる戦士/Ψと♦ 

    ──────────────────────

    926 第77話 不吉をもたらす怪鳥 

    ──────────────────────

    936 第78話 異世界探訪/黄金のK 

    ──────────────────────

    947 第79話 異世界探訪/白い狩人I 

    ──────────────────────

    959 第80話 異世界探訪/対談するL 

    ──────────────────────

    970 第81話 急変─Sudden ch

    ──────────

    ange─ 

    981

  • ────

     第82話 悪魔の軍団 

    995

     第83話 銀の戦士─Shadow 

    ──────────

    moon─ 

    1006

     第84話 覚醒する力─Awaken

    ───────────

    ing─ 

    1023

     第85話 氷の刃と高速のヴィジョン

    ───────────────

     

    1037

     第86話 来訪者─Patients

    ──────────────

    ─ 

    1048

    ──

     第87話 目覚める来訪者 

    1062

     第88話 GS─ghost swe

    ──────────

    eper─ 

    1075

    ───────

     第89話 蛍魔 

    1084

     第90話 地上のストライカー部隊 

    ──────────────────────

    1097

    ────────

     第91話 G 

    1111

     第92話 G上陸─Landing 

    ──────

    of the G─ 

    1124

    ─────

     第93話 NOVA 

    1139

     第94話 怪獣と機獣、そして守護獣

    ───────────────

     

    1155

    ───

     第95話 獣たちの戦場 

    1167

     第96話 超獣機と怪獣王、そして─

    ──────────────

    ─ 

    1182

    Fate/Zero編

     設定 ステータス:Fate/Zer

  • ─────────────

    o編 

    1198

     第97話 異世界の魔法使い/始まり

    ─────────────

    のZ 

    1203

     第98話 惨劇の現場/敗退するB 

    ──────────────────────────────────────────

    1218 第99話 第2魔法と間桐の末裔のそ

    ─────────────

    の後 

    1230

     第100話 「冬樹大災害? そうい

    やそんなものもあったっけ……」 

    ──────────────────────────────────────────

    1244 第101話 料理は美味いものである

    ─────────────

    べき 

    1258

     第102話 変わった現実、変わるで

    ──────────

    あろう未来 

    1272

     第103話 宴? と見抜かれていた

    ─────────────

    事実 

    1288

     第104話 世界半周と偶像 

    1300

     第105話 上陸するCの眷属 

    ──────────────────────

    1313

    ───

     第106話 魔を断つ剣 

    1326

     第107話 DEMONBANE 

    ──────────────────────

    1340

     第108話 終わりの始まり 

    1353

    ───

     第109話 間桐の終焉 

    1368

     第110話 Zeroの終わり 

    ──────────────────────

    1383

  • 管理局変遷期編

     第111話 AGITΩの帰還 

    ──────────────────────────────────────────

    1399

    ─────

     第112話 謎の卵 

    1412

     第113話 胸がでかいと見えなくな

    ─────────

    るものが多い 

    1423

     第114話 管理局のその後 

    1434

    閑章

    ────

     第115話 短編三連 

    1446

     第116話 模擬戦とデータ取り 

    ──────────────────────────────────────────

    1464 第117話 模擬戦と巨人と予知 

    ──────────────────────────────────────────

    1476

     第118話 ユーリと渡英とデート 

    ──────────────────────

    1491 第119話 強襲と進化と話し合い?

    ───────────────

     

    1504

     第120話 迫りくる恐怖、都心部の

    ────────────

    地下水 

    1516

     第121話 会議と準備、そして──

    ───────────────

     

    1525

     第122話 紗世の過去生、探索と推

    ──────────────

    測 

    1540

     第123話 大国の短慮とその報い 

    ──────────────────────

    1550

     第124話 VSメガギラス 

    1561

  • GS世界編

     第125話 帰還不能の英雄 

    1573

     第126話 選ばれる戦士達 

    1584

     第127話 英雄不在の世界 

    1596

     第128話 根源─Akaschic

    ──────

     Records─ 

    1611

     第129話 古代の巨人─Tiga─

    ───────────────

     

    1623

    ────

     第130話 闇の胎動 

    1637

     第131話 光の巨人《ダイナ》と闇の

    ───

    巨人《ファウスト》 前編 

    1651

     第132話 光の巨人と闇の巨人 後

    ──────────────

    編 

    1665

     第133話 東京の怒れる龍 

    1683

    ────

     第134話 闇の人形 

    1700

    ──

     第135話 月面防衛戦線 

    1713

    ─────

     第136話 人形師 

    1725

     第137話 ノスフェル、ガルベロス

     ─Doll masters─ 

    ──────────────────────

    1734 第138話 デスフェイサー ─Li

    ─────

    mit Break─ 

    1742

     第139話 光 ─Hope─ 

    ──────────────────────

    1752 第140話 第2あるいは第7の適能

    ──────────────

    者 

    1761

  •  第141話 特訓という名の地獄 

    ──────────────────────────────────────────

    1768

    ──────

     第142話 再戦 

    1776

    ──────

     第143話 群体 

    1784

     第144話 女王の出現/S市の危機

    ───────────────

     

    1794

     第145話 閉ざされる東京 

    1801

     第146話 広がる闇、始まる絶望 

    ──────────────────────────────────────────

    1813

    ──────

     第147話 邪神 

    1823

     第148話 さらなる絶望、人類の反

    ────────

    撃。そして…… 

    1832

     第149話 絶望に立ち向かうは希望

    ────────────

    の輝き 

    1848

    ───────

     第150話 光 

    1858

    ──────

     第151話 真実 

    1876

  • 第1部 転生

    第0話 序章

      side 青年

    「沢木、バイトの連中はもう上がらせていいぞ」

    「店長、いいんですか? まだ営業時間ですけど」

    「明日ぐらいから学校始まるだろ? さすがに準備もできてないのはまずいからな」

    「わかりました。次の交代から上がらせます」

    「よろしく」

     とはいうものの、どうしたもんか……。

     とりあえず、ボードに書いておくか?

    「沢木さん、休憩入ります」

    「お、ちょうどいい。明日ぐらいから学校始まるんだって? 疲れた状態で行くのもな

    んだし、もう上がっていいってさ」

    「そうなんですか? じゃ、お先に失礼します」

    「ああ、お疲れさん。気をつけてな」

    1

  •  さて、とりあえず徐々に上がらせていくか。

     ──2時間後

    「店長、フロアの掃除と片付け終わりました」

    「わかった。あとはキッチンだけだから、お前も上がっていいぞ」

    「わかりました。それじゃ、失礼します」

    「おぅ、気を付けて帰れよ」

     さて、今日の仕事も終わったし、かえって酒でも飲むか。

     side out

     沢木と呼ばれた青年が、【スタッフ専用】と書かれた駐輪場にあるバイクにまたがり、

    エンジンを回した。

     それはちょうど、店長が忘れ物らしきものを持って駐輪場の方へ来た瞬間だった。

     ──ゆえに、目撃者にして第一発見者は店長となった。

      side other

    「ニュースの時間です。今日、午前1時過ぎ、E県M市でバイクが爆発、男性が1名死亡

    しました。調べによりますと、男性は飲食店で働く……」

    「いや、もう驚くしかなかったですよ。あいつがライター忘れてたんで渡そうと思って

    2 第0話 序章

  • 外に出てみたら、いきなり大きな音がしたんですから。

     んで、あわてて音の方見てみたら、駐輪場に火のついたものがあって、何かが横に倒

    れたんですよ。

     急いで消火栓で消してみたら、うちのフロアリーダーが倒れてまして……」

    「先日のバイクが爆発した事件で、爆弾を仕掛けたという青年が自首したという情報が

    入りました。

     警察の発表によりますと『好きだった女性を寝取られ、その報復に爆弾を仕掛けたが、

    ターゲットと同じ車種とカラーリングのバイクだったため間違えた』ということらしく

    ……」

     side out

      Ω?Ω?Ω

      side 沢木

    「……ん? ここは? 俺は確かバイクのエンジンをかけただけのはずなんだが……」

     気が付けば、見たこともない場所に立っていた。

     しかも、そこそこ大きい企業の応接室のような場所など、覚えている状況からだとそ

    3

  • うそう入れないはずだが。

     ふと、何かを持っているようなので見てみると、2という数字が書かれたカードを

    持っていた。

    「2? ……状況とかから見て、番号札かなんかだよな? とりあえず座ってれば呼ば

    れるか?」

     状況はよくわからないが、立っているよりは建設的だろう。

     何かないかと見渡せば本棚があり、よく読んでいる小説が置いてあるではないか。

    「……誰かの私物だろうけど、あとで謝ればいいか」

     気楽に考え、本棚から取り出して読んでいることにした。

     ──しばし後

    「──。──ですか? あの、ちょっといいですか!?」

    「……ん? どうしました?」

     気が付くと、対面に誰かが座っているようだった。

     本を閉じて目を向けると、女性が座っていた。

     ……ただし、某闘士に出てくる女神のごとく扇情的な格好をしているが。

    「すみません、これはあなた方でいう礼装にあたるものなので、できれば言及しないで頂

    けると……」

    4 第0話 序章

  • 「あぁ、これはすみません……って、口に出しましたっけ?」

     そういう癖はなかったと思うんだが。

     あったらあったで、少なくとも親に言われてるだろうし……。

    「会う人の多くがそう言いましたし、私自身そう思いますので」

     自覚はあったのか……。

    「えぇ、まぁ。それはひとまずおいておいて、そろそろ話をさせていただいても?」

    「わかりました。とりあえず、俺は沢木哲也といいます」

    「これはご丁寧に。私はサーシャ、ギリシャ神話の処女神、アテナの部下という立場にあ

    ります」

     ん? 待て、アテナでサーシャ?

     ……LC?

    「はい、あなたたちが住む世界では漫画という形で伝わっているようですね。ですが、私

    は間違いなくあなたが知る物語を生き抜いた本人です」

    「……マジですか。つまり、あの漫画はいわゆるパラレルワールドの情報を含んでいる

    と? んで、私が住んでいた世界はその情報を受け取っていた? 

     ついでに、さっきから思考を読み取ってるっぽいのはいわゆる神通力か何かで?」

    「はい。私が知っているものとは多少違ったりしますが、それは可能性の差でもありま

    5

  • す。実際、私のいた世界ではレグルスは生き残りました。

     そして、あなたの思考を読み取っているというのは当たりです。何せ、いあっまで

    あった人によっては無理やり押し倒そうという人もいましたので、アテナ様から与えら

    れました」

     ……うん、前にどこかのSSで読んだことが本当なのは理解した。

    「……まぁ、ちょっと混乱しましたけど、理解しました。それでサーシャさん、俺がここ

    にいる理由を聞いても?」

    「そうですね。……ちょっと記憶を覗かせてもらいましたが、バイクにまたがって、エン

    ジンをかけたのは覚えているようですね。

     実は、あなたのバイクと同じ色と種類を持っている人につけるはずだった爆弾が取り

    付けられ、あなたが死んでしまった、というわけなんです。

     ですが、これは本来この世界では起きないはずだったんです」

    「……起きないはずだった? つまり、これは何らかの介入によるものだと?」

    「はい。そのために、まず私たち神とその部下の仕事について説明させていただきます。

     簡単に言うと、担当する世界を見守り、守護するというものです。そして、あなたの

    世界を担当しているのが私です。

     ですが、私が少し目を離していた間にエラーが発生し、気づいた時にはもう……」

    6 第0話 序章

  •  ……なんというか、割とよくある話ではある。

     しかし、守護者が目を離すって……。

    「……その、世界側からは見えないとはいえ、男性の前ではできませんし、そういう趣味

    もないですし……」

     男性の前でできない? そういう趣味? ついでに羞恥に染まってる感じの雰囲気

    ? ……あ。

    「……その、わかってもらえました?」

    「……すみません」

     ──数分後

    「は、話を戻しますね。私のような理由も含め、本来なら死なない人が死んだり、世界か

    らはじかれてしまった場合、転生という形で担当者の造る新しい世界に行ってもらうん

    です」

    「まぁ、元の世界に戻すのは難しいですよね。私の場合は特に」

    「はい。詳しく言うのはちょっと無理ですが、即死でしたし、蘇生も不可能な状態ですの

    で……」

    「わかりました。その話、お受けします」

    7

  •  まぁ、死んでしまったものは仕方ないしね。

     side out

    「それでは、これからあなたの転生に関する手続きを行います。まず、こちらが転生に係

    る注意事項となります」

     渡されたのはA4サイズの本である。ただし厚さは某有名鈍器小説並だが。

    「……重いですね、さすがに」

     沢木が注意事項に目を通しているうちに、サーシャは書類のようなものを書き上げて

    いく。

    「えっと、死亡するまでがこっちの書類で、身体能力が……よし。あとは転生先について

    ……」

     時折、沢木が質問しつつおよそ1時間30分。

    「……読み終わりました。しかし、なんでこんなに分厚いんです?」

    「以前、ハーデス様の部下が転生させたときに、転生者に世界が壊されたことがありまし

    て。それ以降、こういったものを用意することになったんです。

     ちなみに、その時はその部下の方の持つ世界すべてが壊れ、その転生者は完全に消滅

    してしまいました」

    「……俺も気を付けます」

    8 第0話 序章

  • 「お願いしますね。では、転生する世界について説明します。モデルとなった世界は【魔

    法少女リリカルなのは】です。

     ですが、注意事項にもあった通り、他の作品の要素を含んでいることもあります。こ

    の世界の場合は【とらいあんぐるハート】が含まれている可能性が高いです」

    「元祖リリなのなんて呼ばれたりしてますしね」

    「次に、転生特典です。どうします?」

    「……アギト。仮面ライダーアギトでお願いします。バイクの方も、原作と同じでお願

    いしたいんですが」

    「ちょっと待ってください。……はい、問題ないそうです。

     ただし、アギトとしての力なんですが、グランドフォーム・ストームフォーム・フレ

    イムフォームの3種類はともかく、バーニングフォーム・シャイニングフォームは確実

    に発現できるとは限りません」

    「まぁ、あれは主人公だからこそのフォームでしょうしね。俺は俺のフォームを見つけ

    てみせます」

    「……たのもしいですね。あとは承認や手続き関連ですし、読書に戻っていただいて構

    いません。準備ができたら声をかけますね」

     ──数分後

    9

  • 「……はい、完了しました。沢木さん、よろしいですか?」

    「はい、大丈夫です」

    「それでは、あなたを送ります。どうかいい人生を」

     沢木の体が光り、徐々に透けていく。

    「サーシャさん、ありがとうございました」

     そして、沢木は消え、ここに物語は始まった。

    10 第0話 序章

  • 第1話 覚醒と出会い

      side 翔一

     ジリリリリリリリ……ヴェッ

    「……朝か」

     相変わらずの奇妙な停止音とともに目覚ましを止め、起き上がる。

     転生から5年。

     俺は津上翔一という名を得て誕生した。。

     生まれた時にはすでに前世の記憶があり、意識もあったために、幼児期は羞恥の時間

    を過ごし続けた。

    「……いかん、思い出してても仕方ない。とりあえずランニングにでも……」

     ジャージに着替え、部屋を出る。

     俺以外が動いてるような気配もない以上、両親はまだ寝ているのだろう。

     書置きをして、外に出る。

    「ん〜……今日も晴れそうだなぁ」

     空を見て適当に予想しつつ、体をほぐす。

    11

  •  ある程度体を温め、ランニングを開始する。

     ペースはそこらのオッチャンとかが走ってるのより少し遅いくらいで、2km先の公

    園に行く。

    「……よし、到着。大分息が切れなくなってきたな〜」

     実際、走り始めたころは今より走るスピードも遅く、時間もかかっていた。

     もっとも、今では40分くらいで着くようになったが。

     とりあえず、息を整えてからトレーニングをする。

     とはいっても、できるのは筋トレぐらいのものだが。

     side out

      いつも通りに懸垂をしようとしていた翔一。

     しかし、今日ばかりは運がなかったのだろう。

     突如、風景が赤く染まる。

     何の兆候もなしに代わった風景に、思わず周囲を見渡す翔一。

    赤い月

    ・・・

     ふと、見上げると。空には

    赤い月が浮かんでいる。

    「な、なんだよこれ……!」

     魔方陣が幾つも地面に浮かび、そこから生まれる魔物たち。

    12 第1話 覚醒と出会い

  • 「くそっ、まだ変身は試してなかったのに。……いいぜ、やってやる! ここで生き残れ

    ないなら、何のために転生したってんだ!」

     両手を左腰に添え、右手を前に突き出し、右肩に引き付け、右手を再び前にゆっくり

    と出す。

     そして、腰にベルト──否、オルタリングが浮かび上がる。

    「……変身!」

     両手を一瞬交差させ、両腰のスイッチを叩く。

     光が走り、姿が見えなくなる。

     光が消えたとき、そこにいたのは、金色の体と角、赤い複眼をもつ存在。

     およそ2mほどの体躯を持つ、ある意味異形の戦士。

     ──その名は AGITΩ

    「……どうにか、自分の意思はあるか。長くはもたないだろうし、急がないとな」

     そして、魔物たちに立ち向かおうとしたときに、彼らはやってきた。

    「そこの、左に飛べ!」

      ──天空に赤い月が昇るとき

     

    13

  •  男の声。そして、感覚が捉えた銃弾らしきもの。

     とっさに避けながら振り返る。

      ──闇の眷属、エミュレイター達が人の世界へと侵攻してくる

      複眼──コンパウンドアイズが捉えたのは、見たこともない大きさの弾と、青いブレ

    ザーを着た高校生らしいの男が剣を構えて走ってきている光景。

      ──彼らには、科学という常識で生み出された力は一切通用しない

      自分の横を通り過ぎた弾丸が、先頭にいる化け物の足元に着弾し、爆発を起こす。

     魔物の1体が、持っている剣を振り回して煙を掃う。

     そして、剣を持った男性がそこに躍り掛かり、一太刀で切り伏せる。

      ──闇に対抗しうる唯一の力

     「……って、見てるだけでいられるか! 俺だって、仮面ライダーなんだ!」

    14 第1話 覚醒と出会い

  •  思わぬ事態に突っ立っていたが、それどころではないと魔物に立ち向かうアギト。

    「って、おい!? 力はあるとしてもこいつらは……」

    「ハァ!」

     突き出される、光を纏った拳。

     拳にあたった魔物は、バラバラになりながら周囲を巻き込み吹き飛んでいく。

     追い打ちをかけるように、銃弾が飛んでいく。

      ──人々が遠き過去に忘れ去った魔法を駆使して闘う者たち

     「……まぁ、闘えるならいいか。やばそうなら下がれ……よ!」

    「わかってます! セイ!」

      ──彼らの名は、夜闇の魔法使い

     ──ナイトウィザード

      ?Ω?Ω?Ω

     

    15

  •  ──戦闘終了後

    「うぅ……けほっけほっ。結局最後まで持たなかったなぁ」

     赤く染まった景色が元に戻った空間で地面に座り込み、乱れた息を懸命に整えようと

    している翔一。

     そこに、先ほど剣を持っていた青年が近づく。

    「おい、大丈夫か? ……っていうか、さっき闘ってたのって本当にお前か?」

    「はぁ……はぁ……。えぇ、その通りです。とはいっても、力があるのは理解してました

    けど、実際に使ったのは初めてですが」

     その言葉に呆れたようになる青年。

    「おいおい、ぶっつけかよ。そんなんでよく15分も戦えたな」

     実際、年齢から見れば3分。アギトの力があっても10分くらい闘えればいい方だろ

    う。

     ……比較的無茶なトレーニング法をやっていたのが、多少なりとも功を奏したのだろ

    うか。

    「えぇと……おほめに預かり光栄です?」

    「あほか」

     軽く翔一の頭を叩く青年。

    16 第1話 覚醒と出会い

  •  そこに、赤い髪の少女が近づいてくる。

    「……柊蓮司。そろそろこの子を返さないといけないと思う。」

     そういわれ、時計を見てみると確かにそろそろ朝食の時間である。

    「ほんとだ。あ、でもさっきのことについてなんですけど……」

     翔一が言うと、二人は目を合わせてから一つうなづき、青年が口を開く。

    「とりあえず、詳しい説明をするから、9時ごろにここに来てくれるか?」

    「わかりました。母さんたちは一緒の方がいいですか?」

    「いや、一人で来い。この話に関しちゃ、あまりおおっぴらにできないことなんでな」

     実際、先ほどのことをどれだけの人が信じるだろう。

     ニュースで聞く退魔師という人たちですら、疑うようなことであろう。

    「……わかりました。ご飯を食べたらまた来ます」

     ──これが、のちに『神殺しの龍』として名をはせる津上翔一と

     ──『下がる男』『裏切りのワイヴァーン』という異名を持つ柊蓮司

     ──この二人のファーストコンタクトであった

    17

  • 第2話 世界

      ──午前8時50分

     指定された時間の10分前に、翔一は公園に到着した。

     公園内を見渡しても、先ほどの青年たちの姿はない。

     朝食を食べに帰っていると考えたのか、公園内のベンチで座って待つことにしたよう

    だ。

     5分後、公園の外にリムジンらしきものが停車する。

     何事かとみると、車から赤い制服らしきものを着て、仮面をつけた男性が降り、こち

    らに向かってくる。

    「あなたが、柊様のおっしゃった少年ですね?」

    「えっと、その柊さんが茶髪で青いブレザーの制服の人なら、たぶん俺だと思いますけど

    ……」

    「そうですか。ここで説明するのは機密保持の面からみても危ないので、御同行願えま

    すか?」

     そういって、リムジンの方を手で示す仮面男。

    18 第2話 世界

  • 「……わかりました」

     多少の逡巡はあったものの、ついていくことにした翔一。

     リムジンのそばに来ると、仮面の人がドアを開けてくれたので、そのまま乗り込む。

     扉が閉まり、しばらくするとなぜか浮遊感に襲われる。

     窓の外を見てみれば、何故かリムジンの後方に道路や公園を上から見た感じになって

    いる。

    「……え、リムジンって飛ぶ物だっけ!? いや、落ちつけ、落ち着くんだ。あの空間だっ

    て常識で考えられないことだったんだ。そうだ、素数、素数を数えるんだ」

     若干混乱している様子はあるものの、無理やり飛び降りたりしないあたり、冷静では

    あるようだ。

      ΩΩΩ

      ──数分後

     リムジンが止まり、降りるように促される。

     素直に従い降りると、またしても目を疑うような光景があった。

     最低でも50mは下の方には広大な湖。

    19

  •  そこから水晶のようなものがでており、今立っている白く巨大な城を支えている。

     また、水面には地球のようなものすら映っている。

    「……どこだここ。そして常識はどこ行った。んでもってあれ地球なのか……?」

     ……ここまで常識に喧嘩を売ったような光景は、確かにないだろう。

     地球が見えるということは宇宙にいるといことだが、宇宙にこんなものがあるとは聞

    いたことがない。

     下の湖は水が凍っている様子もないことから、宇宙でもない。

     しかし、月内部に作られた都市だとしても、着くまでに時間が足りなさすぎる。

    「……もういいや。常識は消え去ったってことでいいや」

    「おいおい、まだ本題にすら入ってないってのに、なに黄昏てんだ?」

     そこに、制服の青年がやってくる。

    「いや、ここまで常識にケンカ売ってるありえない光景見たら、ふつうはこうなるもん

    じゃないです?」

    「あぁ。まぁ、わからなくはないけどな。とりあえず、こっち来てくれ」

     そういって歩き出す青年。

     ついていくと、丸いテーブルと、それを囲むように置かれている5つの椅子。

     そのうちの3つの椅子には座っている人がいた。

    20 第2話 世界

  •  一人は赤い髪と赤い瞳を持つ、柊とともに翔一を助けた女性。

     一人は日本人特有の特徴を持つ女性で、何故か巫女服を着ている。

     最後の一人は銀色の髪に白い肌と青い瞳を持ち、ゴシック系のドレスを着た、自分と

    同じくらいの年齢の外見を持った少女だった。

    「ま、座れよ」

     そういって、巫女服の人とゴシック系ドレスを着た人の間の席に座る青年。

     必然的に、空いている赤い髪の女性の隣に座る翔一。

     椅子に座ると、ゴシック系のドレスの人がカップを置き、翔一の方を向いて口を開く。

      side 翔一

    「津上翔一さん。我が宮殿にようこそ。私はアンゼロット、世界を守護するものです」

     世界を守護するもの?

     どういうことだ?

    「……とりあえずなんで俺の名前知ってるの? とか、これ宮殿で個人所有なのかよと

    か思いましたけど、世界の守護って?」

    「そうですね、まずはこの世界の状況を知ってもらいましょう」

     ……状況?

    21

  • 「この世界は2つの面があります。あなたがすごしている日常の世界、表界。そして」

     朝、公園で戦った時の映像が出される。

    「撮影してたのかよ」

    「盗撮とかで訴えたら勝てますかね? というか、まさかのホロウィンドウですか」

    「こほん。この映像の魔物たちが住む世界、裏界と呼ばれる世界です。そして、裏界の住

    人は常にこちらの世界への侵略の機会をうかがっているのです。

     つまり、世界は彼らに狙われている」

    「……侵略とは、また物騒な。んで、その裏界の住人ってのがこいつらですか」

     視線で、ホロウィンドウらしきものに移る魔物を指摘する。

    「えぇ。伝説上に存在するドラゴンやミノタウロス、メデューサやノスフェラトゥ、鬼と

    いった存在。

     それらはすべて、裏界からの侵略者『エミュレイター』なのです」

    「侵略者、エミュレイター。……てことは、あの赤い景色は奴らが進行してきたことを現

    す現象か何かで?」

    「その通りです。そして、彼らには『科学という常識』が生み出した力は一切通用しませ

    ん。彼らに対抗しうる力を持った者たち。

     それが『ウィザード』です」

    22 第2話 世界

  • 「ウィザード……魔術師、もしくは魔法使いって意味でしたっけ?」

    「博識ですね。……そして、あなたもウィザードなんですよ、翔一さん」

     ……いや、確かに何体か倒せたけど。

     かといって魔法使いって……。

    「……魔法使いにしては、近接戦が多くないですか、えっと……」

    「ん? そういや自己紹介してなかったな。俺は柊蓮司、よろしくな」

    「……緋室灯」

    「あたしは赤羽くれは。よろしくね」

    「あ、どうも。津上翔一です。っと、話を戻しまして。魔法使いにしては、武器使ってま

    せんでした?」

     どうにも引っかかる。

     いや、この世界のもとになったらしいリリなのだって、デバイスなんてものがあるけ

    ども。

    「その辺は本人の資質によるものですね。柊さんは近接戦に特化していますし、灯さん

    は射撃戦に優れています。一般的に想像する魔法使いにいちばん近いのは、くれはさん

    でしょう」

    「そうなんですか。そういや、柊さんが持ってた剣ってどこにあるんです? あの時は

    23

  • 気にする余裕がなかったんですけど、隠すにしても場所がなかったよ

     うな……」

    「あ〜、それね。ちょっと見ててね〜」

     そういって、巫女服の女性──くれはさんが右手をこちらに見せる。

     なんだろうと思ってみていると、空中から扇子を取り出して見せた……ってはい!?

    「……手品、じゃないんですよね?」

    月衣かぐや

    「そうだよ〜。これは一種の個人用の結界、

    って言ってね。常識を遮断する力が

    あって、いろいろと物をしまっておけるんだよ」

    「あ〜、それで剣を」

     なるほど、納得である。

    「では、話を元に戻しましょう。今年、特に4月ごろから、エミュレイターの出現がかつ

    てない頻度で起こるようになりました。

     長きにわたる人類の歴史の中でも、極めて異常な事態です」

    「俺なんざ、昨日だけでも5回は呼び出しくらったからな」

    「……荒事なんですよね? それで5回って……」

    「理解していただけたと思います。そして、戦況は悪くなる一方。一般人はまだ気づい

    ていませんが、世界は今、破滅の危機を迎えています」

    24 第2話 世界

  • 「……話は分かりました。それで、こんなガキにどうしろと?」

     危機的状況なのはわかった。

     しかし、現状まともな戦闘もできない俺に何をやれというのだろうか?

    「闘ってほしい、とは言いません。ですが、エミュレイターが侵略してくる理由は表界の

    生物が持つ『プラーナ』というエネルギーを求めてのことが多いで

     す。そして、ウィザードはこのプラーナを多く持っています。せめて、自衛できる力

    を持つまで誰かしらの庇護下にあった方が賢明です」

     ……これは、アレか。

    「そこで、これからするわたくしのお願いに、はいかイエスでお答えください」

    「……拒否権無いじゃないですか」

     これはひどいな。

     や、言いたいことはなんとなくわかるけどさぁ。

    「あなたの身を守り、訓練を行う環境を整えるので、あなたの力を貸していただけません

    か?」

    「……拒否権はないみたいですし、魅力ある提案ですし。お受けさせてもらいます」

     ……ほんとに、どうしてこうなった。

     side out

    25

  • 閑話 設定 ※2014/9/6修正

      主人公

     名前:津上翔一 (転生前:沢木哲也)

     性別:男

     特典:仮面ライダーアギト

       使用可能フォーム:グランドフォーム・ストームフォーム・フレイムフォーム

    基本スペック・専用武器に変化はないが、外見が少し原作アギトと異なる。

    具体的には両手首にベルトの左右にあるスイッチと同じデザインのブレスレットが

    白銀の竜珠

    ドラゴンズアイ

    存在し、ベルト上部には

    が埋めこまれている。

       マシントルネイダー:スライダーフォーム

     所属:世界魔術教会

      人物紹介:

     いろいろな要素がかみ合った末に死亡した元飲食店フロアチーフ。

     享年29歳。

    26 閑話 設定 ※2014/9/6修正

  •  一人暮らしだったため、家事は一通りこなせる。

     基本的には純米系の日本酒を飲むが、時々焼酎にも手を出していた。

     いわゆるヲタクだが、よく見ていたのは特撮関連。

     リリなのに関しては、友人から聞いた話である程度知っている程度。

     とはいうものの、ある程度の概要は覚えているようなので、問題はないと思われる。

     転生後は、某闘士達よりはゆるいものの、結構厳しいトレーニングを自分なりにやっ

    ている。

    (足首を鉄棒に引っ掛けて腹筋とか)

     学年としては原作組の1個上だが、生まれが3月のため年齢で見れば同じである。

    輝明きめい

     通学するのは【私立

    学園】である。

     5歳のころ、赤い月が昇る奇妙な空間に閉じ込められる。

     出現した魔物に対抗するため、ぶっつけ本番で変身を敢行。

     変身は成功し、グランドフォームで15分の戦闘を行うことができた。

     が、数が多かったため、調査に来ていた柊蓮司と緋室灯の助力で危機を脱出した。

    拒否権の存在しない勧誘という名の何か

     その後、

    を渋々ながら受諾。

     結果、訓練に最適な場所と施設、トレーナーを入手。

     その代わり、何かにつけて協力させられることに。

    27

  • (基本的には雑務。手が足りない時に実戦配備される形)

      組織他   

     私立輝明学園:

     日本全国に分校を置いている超マンモス校。

     最低でも県庁・都庁・府庁・同庁所在地に分校が存在する。

     小中高一貫の学校で、学費も私立にしては安い方である。

     どの分校にも共通しているが、屋上に神社が設置されている。

     公認部活動に巫女クラブが存在し、制服として巫女服も承認されている。

     制服が指定されているものの、服装規定はとてもゆるい。

     改造しているのはよくあること。

     私服で通学しているものもいれば、奇抜な格好や髪形もいる。

      世界魔術教会:

     アンゼロットが設立した組織。

     世界各国の上層部とつながっており、集まってくる情報を様々な形で処理するのが基

    本業務。

    28 閑話 設定 ※2014/9/6修正

  •  その情報をもとに【超時空多次元機甲特務武装黄金天翼神聖魔法騎士団】を始めとす

    るウィザードを派遣する。

      超時空多次元機甲特務武装黄金天翼神聖魔法騎士団:

     通称ロンギヌス。

     基本的に正式名称でよばれることはない。

     正式名称でよんでも、間違えることが結構多い。

     なお、男性は基本的に仮面をつけている。

    【ロンギヌス服務規程】

     一、アンゼロット様の為なら死ねる。

     一、地球の平和を守りぬく。

     一、エミュレイター、カッコ悪い。

     一、決して仲間を見捨てない。

     一、あとは適当に。

     以上のこと、背く者はロンギヌス道不覚悟につき軍法会議。

      用語

    29

  •  ウィザード:

     世界を守るために日々闘う魔法使い。

     戦闘スタイルは個人によって違う。

    (剣を使った近接戦や銃を使った射撃戦など)

      エミュレイター:

     世界の外側、異界からの侵略者。

     侵入と同時に『月匣』を張ることにより足がかりとする。

     中でも、力の強い者たちは『魔王』と呼称される。

     月衣かぐや

     ウィザードならだれもが纏っている個人用結界。

     展開されている限り、たとえトラックがぶつかろうと、人工衛星が落ちようと、ゴ○

    ラの熱戦を受けようと無傷である。

     また、剣や箒といった武装をしまっておくことも可能である。

     月匣げっこう

    30 閑話 設定 ※2014/9/6修正

  •  ウィザードもエミュレイターも張れる空間隔離用の結界。

     エミュレイターが展開したものは赤い月が浮かび、ウィザードが展開したものは青い

    月が浮かぶ。

     また、非展開者が月匣の解除を行うには、展開したものを倒すかコアとなっているも

    のを砕く必要がある。

     月匣内部は展開するものによって変わるが、基本的には戦闘用の空間である。

      魔王:

     エミュレイターの中でも一定以上の力を持つ者たちの呼称。

     大規模侵略の際には必ず存在している。

     なお、美少女が多く、男性型はめったに確認されない。

     有名所;

    【金色の魔王 ルー=サイファー】≪裏界のカリスマ≫≪裏界1位≫(西洋系のドレスを

    着たスタイル抜群の超絶美人)

    【蠅の女王 ベール=ゼファー】≪混沌を愛でる大公≫≪裏界2位≫(本体はスタイルが

    いいが、現身は……)

    【秘密侯爵 リオン=グンタ】≪秘密の貯蔵庫≫≪ベール=ゼファーと仲がいい≫(ゆっ

    31

  • たりとした服を好むスタイルのいい文学系)

    【荒廃の魔王 アゼル=イヴリス】≪孤独な最終兵器≫≪全裸に黒いリボン≫(スタイル

    がいいため、正直目の保養になる)

    【風雷神 フール=ムール】≪静かなる支配者≫≪ギリシャ神話とかの服装スタイル≫

    (服装抜きにしても目が引かれるほどのスタイル)

    【温泉女王 クロウ=セイル】≪水も滴る大魔王≫≪温泉ある所ならば何処にでも出没

    する≫(全裸にバスタオルがデフォ)

    【東方王国の王女 パール=クール】≪超公(自称)≫≪裏界3位≫(巫女服っていいよ

    ね、貧相でも映え(以降は血で読めません))

    32 閑話 設定 ※2014/9/6修正

  • 第3話 相棒誕生(前篇)

     「んじゃ、これで帰りのHRを終わる。号令」

    『さようなら』という声が教室に響き、教師が教室から出ていく。

     ランドセルを背負いながら走って教室を出るもの、教室で友人と話すもの。

     その中で、津上翔一はランドセルを背負いながら教室の外に出る。

     人の波に乗って外に出て、高等部の方に足を向ける。

     ──冥刻王メイオルティスとの決戦から1年。

     世界には、平穏な日々が流れていた。

     世界結界は弱体化したものの、冥魔はこの世界から放逐された。

     もちろん、裏界から侵魔が来るのが止まったわけではない。

     今日もどこかで、ウィザードとエミュレイターの戦いが起こっているだろう。

     ならば、いつ戦いに行くことになってもいいように準備を怠らないようにする。

     ……もっとも、今日はようやく完成した相棒を受け取りに行くだけだが。

      ΩΩΩ

    33

  •   高等部に設置されたゲートを通り、アンゼロット宮殿に出る。

     ランドセルはすでに月衣の中にしまわれている。

     時々ロンギヌスの人とすれ違いながらしばらく歩き、『整備室』のプレートがかかって

    いる部屋につく。

     特にノックなんかもせずに扉を開くと、ちょっとした騒音が廊下に流れ出す。

     中に入って扉を閉める。

     すると、扉の開閉に気付いたらしい小麦色の肌の壮年男性が声をかける。

    「ん? おぉ、来たな」

    「あ、おやっさん」

     彼の名は立花藤兵衛。

     この宮殿の中でも凄腕の箒整備技師の一人で、専門はバイクや車のような乗り物型の

    箒だ。

     通称、おやっさん。

    「相当厄介だったが、注文通りに仕上げておいたぞ。こっちだ」

     先導するおやっさんについていく翔一。

     案内された先には、白い布がかけられた何かがあった。

    34 第3話 相棒誕生(前篇)

  •  おやっさんが掛けられている布を外す。

     現れたのはシルバーのバイクだった

    「こいつが、俺の箒ですか。やっぱりバイクはいいですよねぇ……」

    「ふん、嬉しいことを言うじゃねぇか。とりあえず、これがスペックだ」

     手渡されたファイルを開く。

     基本的には元となった箒──光の翼と同じだ。

     それをもとに、翔一の使用する力に合わせたカスタマイズが施されている。

    「おやっさん、これって……」

    「お前さんのウィザードとしての力や例の能力を考えての仕様書だったんだろうが、変

    更せざるを得なかった部分がある。

     フライトシステムは月衣フローターからフェイズダイブシステムに変更、前に出ると

    きにトラップを避けるなんて考えなくてもよくなっている。

     車体の方も強化してあるから、敵にぶつかろうが傷一つ掴んだろう。つまり、お前さ

    んが例の力で戦う時に前に出やすくなったわけだ。

     それと、こいつに乗ってる時でも通信できるように無線機も取り付けてある。車体後

    部の宝石球は回復能力を増強する機能を持っているやつだ。

    Iris

     それから、本来なら考えてもなかったんだが、最近開発された

    の新しい設定

    35

  • も載せてある」

    「Irisの?」

    「あぁ。何でも、今までのとは違い、音声会話が可能らしいが……」

    「らしいが? 喋らなかったんです?」

    「いや、こういうのは持ち主になるお前さんが最初に起動するべきと思って、まだセット

    しただけだ。

     それと、こいつは試験型らしい。つまり、お前さん含めた何名かがテスターとなって

    評価をすることになる。

     評価内容によっちゃ、音声会話型の本格生産も考えられている」

    「……あとで評価表とかの書き方教えてもらってもいいです? さすがにまだやったこ

    とないんで」

    「まぁ、その手の書類も見たことないだろうしな。……それじゃ、そろそろ起動するぞ。

    ほれ」

     投げ渡されたのは、箒にケーブルがつながっているスイッチだった。

     ……怪獣系の特撮なんかでよくある、威力の高い武器の発射スイッチと同じデザイン

    なのはなぜだろうか。

    「それじゃ、行きます……」

    36 第3話 相棒誕生(前篇)

  •  スイッチが押され、主機に火が入る。

     ……同時に、翔一から金色の光──プラーナが少量漏れ出し、箒に流れる。

     ──プラーナは、人の持つ存在の力である。

     これを失うと一般人──イノセントにとって、その人物は最初からいなかったと認識

    される。

     そして、遺体も残さず、消えてゆくことになる。

     もちろん、早急に適切な手当てをすればその限りではない。

     現に、ある有名なウィザードがプラーナを奪われたが、その場にいたほかのウィザー

    ドによって救助され、生き延びたという事例がある。

     そして、プラーナは個人個人によってその質、波形といってもいいかもしれないモノ

    が異なる。

    一品物

     そのため、こういった

    にはプラーナによる登録がされることもある。

    「『──システムチェック開始。パワーフロー良好、エネルギー伝達経路異常なし……

    チェック終了、システムオールグリーン。

     起動します』」

     機械音声が流れ、AIによるチェックも終了したらしい。翔一は自分のものとなる箒

    に近づき、手を触れる。

    37

  •  ──瞬間、箒の外見やデザインが変わり、元に戻る。

    「……おい、今のは……」

    「いえ、俺にもさっぱり……」

    「な、なんです!? 今一瞬何かが入り込んできましたよ!?」

    3つの声

    ・・・・

     突然の事態に上がる

    女性の声

    ・・・・

     うち二つは男性のものだったが、この場にいないはずの

    が上がった。

    「……おやっさん、だれかここに隠してます?」

    「そんなわけがないだろう! 確か、入り込んできたって言ってたが……まさか」

     そして、目線が向けられた先には……。

    「いったい、なんだったんでしょう……。? どうかしましたか?」

     一機の箒しかない……はずだった。

     確かに箒はあるが……その上に、15㎝くらいの何かがいる。

     いわゆるところの巫女服だが、肩の部分を露出させている。

     ダークグレーでロングストレートの髪、金色に光る髪飾りをつけている。

    「……おやっさん、俺は夢でも見てるんですかね?」

    「……それなら俺も見てることになるな」

    「あの、どうかされましたか?」

    38 第3話 相棒誕生(前篇)

  •  翔一が月衣からハリセンを二つ取り出し、一つをおやっさんに渡す。

     おもむろに振りかぶり、同時に互いを叩く。

    「「痛い!」」

    「ちょ、ちょっと何やってるんですか!?」

    「……夢じゃないみたいですね」

    「そうだな……」

     受け取るはずだった箒に起こった異変。

     はたして、これについて説明できるものはいるのだろうか……。

    39

  • 第4話 相棒誕生(後篇)

      ……さて、いきなりだがメタな発言を失礼する。

     作者がどうやら設定の報復としてパール=クールに連行されたらしいので、今回は俺

    の視点だけで行かせてもらう。

    「……とりあえず、アンゼロットさんに報告した方がいいですよね?」

    「そうだな。ついでに、アストナージやウリバタケとかも呼んで軽く調べてみる」

    「お願いします」

     聞き手によっては不安を煽られる会話だったのか、人形サイズ少女がふわふわと飛ん

    で俺の方に向かってくる。

    「……あの〜、調べるのはいいですけど、あまり乱暴にしないでくださいね?」

    「まぁ、俺も自分が手掛けた箒をばらすつもりはないからな。その辺は安心しろ。とり

    あえずあいつら呼び出すか……」

    「んじゃ、俺はアンゼロットさんのところに行ってきますね。」

     そういって、外に出る。

     とりあえずテラスに向かってみるか……。

    40 第4話 相棒誕生(後篇)

  • 「マスター少しいいですか?」

    「ん? 俺か?」

    「はい、私に登録されているプラーナは間違いなくマスターのものですよ?」

    「……そうか。それで、お前の名前は?」

    「まだないですよ? だから、マスターがつけてください!」

     そういわれてもな……。

    「ん〜……。榛名、榛名はどうだ?」

    「榛名……ですか?」

    「そう、榛名。昔日本で造られた戦艦で戦争終了まで生き残った艦の名前で、名前のもと

    になったのが群馬県の榛名湖っていう場所なんだ」

    「そうなんですね……。はい、登録しました。榛名です、よろしくお願いしますね、マス

    ター!」

     うん、喜んでもらえているようで何より。

     ……まぁ、人形サイズで元がバイク型箒とはいえ、戦艦の名前付けるのは正直どうか

    と思ったが、湖の方が元だしまぁいいだろ。

     すると、正面からロンギヌスが……って、金髪であの髪型なら。

    「コイズミさん、今大丈夫です?」

    41

  •  この人はロンギヌス・コイズミさん。

     印象的には、アンゼロットさんの補佐筆頭。

     俺も本名は知らないけど、3年前の戦いの時にアンゼロットさんがコイズミと呼んで

    いた。

     たぶん他の人にも個別名称があるんだろうけど、聞いたことがないからなぁ……。

     それに、柊さんに憧れている。

     まぁ、3年前は単身最強の魔王(シャイマール)に向かって行ったし、2年前はたっ

    た一人で他の世界の救援に向かったようなもんだったからなぁ。

    「ん? 翔一君か。どうしたんだ?」

    「少し、アンゼロットさんに報告したいことがあるんですが……」

    「アンゼロット様に? それならテラスの方に行くといい。先ほど、ウィザードたちに

    指令を言い渡していたから、まだいらっしゃるだろう」

    「ありがとうございます。行ってみます」

     礼を言い、テラスの方に向かう。

     しかし、今日も大量の書類抱えてたなぁ、コイズミさん。

      ΩΩΩ

    42 第4話 相棒誕生(後篇)

  •   しばらく歩き、テラスにつく。

     テーブルが置いてある場所につくと、アンゼロットさんが紅茶を飲んでいた。

    「あら、津上さん。今日完成した箒を受け取りに来るとは聞いていましたが、そちらは

    ?」

    「まぁ、そのことも含めてちょっと報告が。順を追って話しますと……」

     と、今日宮殿に来てから起こったことを話す。

     そして、現在バイクを整備班上位陣が解析していることも。

    「そうですか。それで、そちらが榛名さんですね」

    「はい、その通りです」

     さすがに、榛名に合う大きさのカップはなかったらしい。

     そのせいか俺たちの分は緑茶で、榛名の方は御猪口に淹れられている。

     ……洋風のこの城に、御猪口なんて置いてるとは思わなかった。

    「とりあえず、解析が終わるまではこちらにいてもらってもいいでしょうか?」

    「大丈夫です。うちの親は海外出張中ですし。……夜中に両親の寝室から甲高い声が聞

    こえてくることがなくて、よく眠れますよ」

    「それは……災難でしたね」

    43

  •  えぇ、本当に。

     朝食の時に弟か妹がほしくないかと聞かれたときには頭抱えたくなりましたよ。

     前に宮殿で手伝いしてて夜になって帰るときにくれはさんや灯さんが送ってくれた

    時には彼女云々で盛り上がるし……。

     あの二人には彼氏いるってのに。

    「お〜い、翔一。解析が終わったぞ〜」

     頭の中で両親の愚痴をぶちまけていたら、おやっさんが来た。

     解析が終わったみたいだけど、さてどうなったのやら。

    「藤兵衛さん、わたくしにも聞かせていただけますか?」

    「わかりました。まず箒本体についてだな。性能とかに変化はないんだが、機能に制限

    がかかっている。

     ついでにIrisが全く反応しないことから、AIとしての機能が急激な自己進化を

    果たし、形をとった結果がその子だろう。

     一種の付喪神化だな。このことから、箒の力を発揮するためにはその子が必要となる

    ことがわかった」

    「急激な自己進化に付喪神化。つまり、例の力……アギトの力が作用した結果でしょう

    ね」

    44 第4話 相棒誕生(後篇)

  • 「おそらくは。それと例の変化した状態だが、おそらく変身した状態で触れればあの姿

    になると思われる、ってのがウリバタケの結論だ。

     つまりウィザードとして使う時は俺の用意した車体の外見で、変身して使う時は一瞬

    だけ見えたあの外見になるんだろう。

     それと、アストナージが言うにはナノマシンのようなものが備わっているそうだ。

     小破程度なら1時間、中破しても24時間使わなければほぼ元通りになるらしい。

    まぁ、自己修復が終わってからでも持ってきて整備するのが一番いいんだがな」

    「まぁ、できるだけこまめに持ってくることにします」

    「あぁ、そうしてくれ。んじゃ、こいつにサインを頼む」

     そういって書類──受領確認書を渡される。

     目を通して問題がない事を確認し、サインをする。

    「うし、これでようやくあいつはお前さんのもんだ。可愛がってやれよ?」

    「もちろんです。そういえば、アンゼロットさんにお願いしたいんですけど……」

    「あら、翔一さんがお願いしてくるとは、珍しいですね。なんでしょう?」

    「榛名に合わせた家具とかって用意できませんかね? うちは子供が俺だけなんで、

    ドールハウス的なものもありませんし……」

    「なるほど、確かに問題ですね。なら、お洋服も一緒に用意した方がいいですね。榛名さ

    45

  • ん、少しいいですか?」

    「ごくん。はい、なんでしょう?」

     食べていたものを飲み込み、返事をする榛名。

     ……が、口の端にクッキーのかけらがついている。

    「榛名、ちょっとこっち向いて」

    「マスター?」

     顔をこちらに向けたので、口の端についているクッキーのかけらをとり、そのまま自

    分で食べる。

    「食べるのはいいけど、ちゃんと気をつけろよ?」

    「は、はい……」

     ? なぜ顔を伏せる……? あ、耳が赤い。

    「あらあら、津上さんったら……。榛名さん、あなたのお洋服を作るために寸法を測りた

    いので、こちらに来ていただけますか?」

    「は、はい! そ、それじゃマスター。ちょ、ちょっと行ってきますね!」

    「あぁ、行って来い」

     あんなにあわてて、大丈夫だろうか?

    「翔一、お前意外と女たらしだな……」

    46 第4話 相棒誕生(後篇)

  • 「何処がです?」

     全く失礼な。

    (……なるほど、天然か。これは将来、苦労しそうだなぁ)

     ……なんだろう、失礼なことを考えられている気がする。

      ΩΩΩ

      榛名とアンゼロットさんが寸法を測りに行った後、おやっさんも他に抱えてる箒の整

    備のために整備室に向かった。

     しばらく一人でお茶を飲んでいると、アンゼロットさんが榛名を肩に乗せて戻ってき

    た。

    「お待たせしました。測った寸法をもとに3Dモデルでデザインを相談していたら思っ

    たよりはかどってしまいました」

    「マスター、今戻りました〜」

     アンゼロットさんの肩からこっちに飛んでくる榛名。

    「お帰り。気に入ったデザインはあったか?」

    「はい! 2・3日でできるそうです!」

    47

  • 「嬉しそうで何より。アンゼロットさん、ありがとうございます」

    「そういえば、津上さん。榛名さんの体なんですが……」

    「榛名の? 何かありました?」

    「えぇ。簡単に言うと、今体を形作っているプラーナが消えても、また箒を経由してプ

    ラーナを注ぐことで復帰できるようです」

    「……つまり、箒が本体で今見えているのはインターフェースか何か、ってことですか」

    「その通りです。それと、こちらを」

     すると、アンゼロットさんは自分の月衣から小さいドールハウスを……って、マジで

    !?「……なにか?」

    「いえ、アンゼロットさんも持ってるんだな〜、って。

     柊さんから『異世界出身の女神で、生まれたときから大人だったらしい』と聞いてい

    たので……」

    「……柊さんとは今度お話しなければならないようですね」

     ……すいません柊さん、なんかやらかしちゃったみたいです。

     お詫びに、今度有名な喫茶店のお菓子持っていきます。

    「こほん。それでこのドールハウスなんですが、内部にごく小さい月匣を展開してあり

    48 第4話 相棒誕生(後篇)

  • ます。

     家具なんかは榛名さんに合うサイズですが、それだと置く場所に困ると思いましたの

    で」

    「ありがとうございます。確かに榛名に合わせたサイズの家具一式だと、置く場所がな

    かったですし……」

     このサイズなら、勉強机のサイドデスクを引っ張り出せば事足りるだろ。

    「それはよかったです。……あら、もうこんな時間。さすがにこれ以上こちらにいると、

    近所の方に心配されますね」

     言われて0─Phone(ウィザードならだれでも持っている携帯。支給されること

    もある)の時間を見てみると、もうすぐ19時になるところだった。

    「もうこんな時間ですか。それじゃ、お暇させていただきますね」

    「アンゼロットさん、さようなら」

    「はい、またお会いしましょう」

     アンゼロットさんと別れ、整備室に行く。

     おやっさんに声をかけてから箒を月衣にしまい、ゲートを通って輝明学園に戻る。

     部活帰りの高等部の人たちに混じって学校を出て帰路に就く。

     道中、榛名は肩に乗っているが、一部を除いて気にしている人はいないようだ。

    49

  •  このことから、どうやらイノセントには見えていないらしい。

     学校の時間帯は月衣にでも入っていてもらおうかと思ったが、問題なさそうで一安心

    だ。

    50 第4話 相棒誕生(後篇)

  • 第2部 リリカルなのは─小学生編─

    設定 ステータス・リリカルなのは小学生篇

      津上翔一

     総合レベル:31 スタイルクラス:ヒーラー13 ウィザードクラス:使徒8 ク

    ラス履歴:陰陽師10

     属性:天/水 

     プラーナ

     内包値:8 解放値:3

     ライフパス

     出自:死亡

     生活:波乱万丈

     コネクション:緋室灯

     特殊能力:《蘇生の光》《治癒力UP》《代償軽減:治癒魔法》《代償軽減:付与魔法》《ヒー

    ルエクステンド》《レスキューフォース》《アンリミテッドエイド》《ワイドフォロー》《メ

    ンタルリカバー》《アラウンドサポート》《完全治癒》《巫術》《生命符》《式神壱式》《式

    51

  • 打ち》《裏占事略決》《御霊符》《結界符》《飛空結界》《告死の使徒》《消滅の黒翼》《蒼穹

    の戦天使》

    《空駆ける御使い》《癒しの翼》《光翼》《福音の光》《慈愛の羽根》《闘気の才》

    《伝家の宝刀》《伝家の術式》《伝家の宝刀Ⅱ》《メモリ領域》《呪法弓》《呪法連冊》

     魔法:《マスターヒール》《ヴァニシング》《ディフェンスアップ》《プリズムアップ》

    《レインボウフィールド》《アイオブゴッデス》《ディヴァインコロナ・ザ・ランス》

     武器・魔装:《オプティマムバブル》《サージングブースター》《黒き知の鍵》

    《オリハルコンブレード》《トゥルーレイ》《ディヴァインコロナ》

     破魔弓、光の翼(カスタマイズ)、神木の箒(カスタマイズ)、ワンオブサウザンド、

     黒のコート(御門式巫女服相当、背中にアギトの紋章(金色))、ARMS─Phon

    e、

     ヘルメット(デザインは津上翔一の物)、普通の服、レザージャケット(筑波洋のベス

    ト風)

     EX月衣:《結界師》《慈愛者》《ワイドサポーター》《バリアマスター》

     AGITΩ覚醒状況

     超能力:予知、サイコキネシス、テレパシー、パイロキネシス、共有、感知

     変身:グランドフォーム、ストームフォーム、フレイムフォーム、ヘイルフォーム、

    52 設定 ステータス・リリカルなのは小学生篇

  •  クァドラプルフォーム、ドラゴネットフォーム

      アリサ・ローウェル

     総合レベル:10 スタイルクラス:アタッカー6 ウィザードクラス:転生者4

     属性:火/冥

     プラーナ

     内包値:8 解放値:2

     ライフパス

     出自:天涯孤独

     生活:エリート

     コネクション:ベール=ゼファー

     特殊能力:《物理攻撃力UP》《ツーハンドグリップ》《ツーハンドウェポン》《機会攻

    撃》

    《武器両手化》《ウェポンフォーカス》《技巧の極み》《遺産所持》《遺産進化》《刻まれし

    業》

    《遺産の声》《英霊特性》《フォトンコート》《幾億の旅路》《伝家の宝刀》

    《出力リミッターカット》

    53

  •  魔法:《マジックブレード》《アタックブースター》《ヒートシフト》

     武器・魔装:《ミラージュウォール》

     黒の剣、B─K蓮鶴(カスタマイズ)、輝明学園改造制服

     AGITΩ覚醒状況

     超能力:感知、テレパシー

     変身:現在無

      長谷川千雨

     総合レベル:5 スタイルクラス:キャスター2 ウィザードクラス:同調者3

     属性:水/虚

     プラーナ

     内包値:8 解放力:2

     ライフパス

     出自:普通の家庭

     生活:平凡

     コネクション:赤羽くれは

     特殊能力:《魔法攻撃力UP》《代償軽減:攻撃魔法》《マジックマスタリー:虚》

    54 設定 ステータス・リリカルなのは小学生篇

  • 《マジックマスタリーⅡ》《ファストキャスト》《マジックコントロール》《メディウム発

    現》

    《魔法詠唱型》《メディウム進化》《アナザースキル》《伝家の宝刀》《伝家の術式》

    《魔法力UP》《魔法力UP2》《闘気の才》

     魔法:《リフレクトブースタ》

     武器・魔装:《ヴァーディゴ》《サンクチュアルリバー》

     ストライカーズワンド、輝明学園改造制服、魔力水晶弾

     AGITΩ覚醒状況

     超能力:テレパシー

     変身:現在無

    55

  • 第5話 始まり

     

    俺主人公

     どうも。今回も

    視点で行くことになったらしい。

     今は相棒(箒)を受け取った次の日の昼休みで、弁当を榛名と食べている。

    こっちの事情

    ・・・・・・

     別に

    を知っている友達がいないわけじゃないが、今日くらいは榛名と二

    人きりで食べようと思った。

    「で、お味はどうよ?」

    自分のお弁当

    ・・・・・・

    「お、おいしいです。でもマスター、

    から私に渡してますけど、足りるんで

    すか?」

    「問題ない。いつも使ってるのより大きいのを用意してきたからな」

    「そ、そうですか。それと、なんで私が食べるときは『はい、あーん』をやるんでしょう

    ?」

    「決まっている、お前に合わせた箸が用意できなかったからだ」

     なぜわかりきったことを聞くのだろうか?

    (うぅ、私は生まれたばかりって言っても、一般常識や人並の羞恥心はあるんですよ? 

     それに、私は小さいけど女性に対する接し方として、これはどうなんですか……。そ

    56 第5話 始まり

  • れに、一切照れてないっていうのは、女性としてショックです……)

    「女性に対する接し方といわれても、友人男ばっかだけど? それと、うちの両親見てた

    ら、この程度で照れるわけがない」

    「……サトリの怪か何かですか?」

    「いや、アギトの持つ超能力の応用。サイコメトリーだな」

    「それ、なんてチートです?」

     チートねぇ……。意外とそうでもなかったり。

    「防ぐ人は余裕で防ぐよ? ベール=ゼファーとかルー=サイファーなら素でレジスト

    するし。

     パール=クールから侯爵級までは精神防壁張ってくるし、そもそも読む暇がないし。

     今の俺で通用するとしたら、伯爵級以下かな? それでも魔王級なら断片しか読めな

    いし」

    「いえ、十分チートですよ」

     ……まぁ、言われてみれば確かに。

    「まぁともかく。落ち込んでそうだったから使ってみたが、この程度は気にしてたら負

    けだぞ? 

     それと、俺は身内以外にこういうことする気はない」

    57

  •  ……あ〜、さすがに恥ずかしい。

    (あ、マスターの顔がちょっと赤い……)

      ΩΩΩ

      放課後、受け取った箒の慣らしのために地下迷宮──スクールメイズに潜る。

     とはいっても、エネミーが出てこないサーキットのような場所を用意してもらったけ

    ど。

    青い水筒

    ・・・・

     そして、箒を出した後に

    を取り出す。

    「さて、飲むか」

     コップ1杯分飲むと、青い光に包まれ、体が成長する。

     鏡がないから正確にはわからないが、180㎝くらいに成長しているようだ。

    「……マスター、ですよね? なんでいきなり大人に?」

    「ん? これ」

     水筒に張られているラベルを見せる。

    『上がるお茶(限定版)

     年齢、身長、体重などを成人男性くらいにまで成長させます。

    58 第5話 始まり

  •  ただし、効果中の容姿は現状維持でエミュレートした場合です』

     などと書かれている。

    「なんです、この胡散臭いの?」

    「胡散臭いって、これアンゼロットさんが作ったやつだぞ? あとで今の体で乗ってみ

    るが、まずはこっちで体に覚えさせる方がいいだろ」