MSC ソフトウェアを活用した 津波サバイバルカプ …...しEddie Bernard...

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MSC Software: Case study IDEA INC. MSC ソフトウェアを活用した 津波サバイバルカプセル設計開発プログラム 概要 この論文は、津波サバイバルカプセルの設計、工学、および検証 における MSC ソフトウェアの使用を概説しています。津波は世界 中の 135 カ国の沿岸地域社会にとって絶え間ない脅威となっていま す。2004 年 12 月、インドネシアのスマトラ島西岸でマグニチュー ド 9.1 の地震が発生しました。この地震により、津波は最大 30 メー トル(98 フィート)まで上昇しました。津波はおよそ 23 万人の命 を奪いました。日本の仙台市では、2011 年 3 月、マグニチュード 9.03 の地震が発生し、40.5 メートル(133 フィート)の高さに達し た津波が発生し、およそ 2 万 5,000 人の命を奪いました。 日本気象庁による将来の東京湾南側の地震・津波事故の予測では 25 万人を超える犠牲者となっています。津波にさらされる沿岸の総 人口は 250 万人を超えています。 そのような自然災害で、このような数の人々を失うことは、医 学、深宇宙探査、ナノテクノロジ―などの科学的なブレークスルー の時代において、正当化できません。したがって、サバイバルカプ セルは、このリスクの一部を軽減し、これらの地域の人々に代替選 択肢を提供する試みです。 津波イベントは非常に危険な環境であり、大きな物体の衝撃、鋭 い物体の貫通、動的な衝撃、衝撃および熱などの荷重ケースに耐え なければならないように構造に多くの重要な厳しい要求を提示しま す。 これらの条件を正確にシミュレートするために、IDEA International はさまざまな航空宇宙関連プログラムで毎日運用して いる、MSC ソフトウェアを使用することを選択しました。カプセ ルの解析のために、NASTRAN、DYTRAN および PATRAN を利用 しました。 津波カプセル 津波カプセルは革新的な構造ではなく、高度な材料を使用してお らず、航空宇宙産業全体に見られる非常にシンプルな構造設計哲学 「軽量で強固」なことをベースにしています。カプセル設計は、航 空宇宙関連の設計、解析、認証を達成するために毎日使用する解析 手法、技術、およびテスト手法の恩恵を受けています。今回のケー スでは、PATRAN、NASTRAN、DYTRAN などの多数の MSC ソ フトウェアプログラムが使用されました。 図 2 に示すように、カプセルは、平らな円形ブランクから切り出 され、金型上で成型された 2 つの半球シェルからできています。内 部の構造フレームはアルミニウムチューブでできています。カプセ ルの床は軽量で、(床下の)湾曲領域への水分の排出を可能にする ために穴が空いています。座席は床の高さで構造物に取り付けられ ており、非常に低い重心に寄与します。 カプセルには、船舶仕様のドア、2 つの船舶仕様の窓、2 つのシ ール可能な通気孔、上下に 2 つの吊り上げ点、2 つのレース用の座 席(ヘッドレスト付き)、胴部と脚部の横方向のサポートのために 4 点の急速解放ハーネスベルトシステムが装備されています。カプセ ルの内部には、二重空気供給装置、サバイバル用品の貯蔵庫、床下 の淡水貯蔵容器、GPS システム、ビーコンが装備されています。 カプセルの機能は、(i)津波イベント中に乗員を保護するために 使用され、(ii)津波後のイベント中には、暖かさと避難場所を提供

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MSC Software: Case study – IDEA INC.

MSC ソフトウェアを活用した

津波サバイバルカプセル設計開発プログラム

概要

この論文は、津波サバイバルカプセルの設計、工学、および検証

における MSCソフトウェアの使用を概説しています。津波は世界

中の 135 カ国の沿岸地域社会にとって絶え間ない脅威となっていま

す。2004 年 12 月、インドネシアのスマトラ島西岸でマグニチュー

ド 9.1 の地震が発生しました。この地震により、津波は最大 30メー

トル(98 フィート)まで上昇しました。津波はおよそ 23万人の命

を奪いました。日本の仙台市では、2011 年 3 月、マグニチュード

9.03 の地震が発生し、40.5 メートル(133 フィート)の高さに達し

た津波が発生し、およそ 2万 5,000 人の命を奪いました。

日本気象庁による将来の東京湾南側の地震・津波事故の予測では

25 万人を超える犠牲者となっています。津波にさらされる沿岸の総

人口は 250万人を超えています。

そのような自然災害で、このような数の人々を失うことは、医

学、深宇宙探査、ナノテクノロジ―などの科学的なブレークスルー

の時代において、正当化できません。したがって、サバイバルカプ

セルは、このリスクの一部を軽減し、これらの地域の人々に代替選

択肢を提供する試みです。

津波イベントは非常に危険な環境であり、大きな物体の衝撃、鋭

い物体の貫通、動的な衝撃、衝撃および熱などの荷重ケースに耐え

なければならないように構造に多くの重要な厳しい要求を提示しま

す。

これらの条件を正確にシミュレートするために、IDEA

International はさまざまな航空宇宙関連プログラムで毎日運用して

いる、MSC ソフトウェアを使用することを選択しました。カプセ

ルの解析のために、NASTRAN、DYTRAN および PATRAN を利用

しました。

津波カプセル

津波カプセルは革新的な構造ではなく、高度な材料を使用してお

らず、航空宇宙産業全体に見られる非常にシンプルな構造設計哲学

「軽量で強固」なことをベースにしています。カプセル設計は、航

空宇宙関連の設計、解析、認証を達成するために毎日使用する解析

手法、技術、およびテスト手法の恩恵を受けています。今回のケー

スでは、PATRAN、NASTRAN、DYTRAN などの多数のMSC ソ

フトウェアプログラムが使用されました。

図 2に示すように、カプセルは、平らな円形ブランクから切り出

され、金型上で成型された 2つの半球シェルからできています。内

部の構造フレームはアルミニウムチューブでできています。カプセ

ルの床は軽量で、(床下の)湾曲領域への水分の排出を可能にする

ために穴が空いています。座席は床の高さで構造物に取り付けられ

ており、非常に低い重心に寄与します。

カプセルには、船舶仕様のドア、2 つの船舶仕様の窓、2 つのシ

ール可能な通気孔、上下に 2つの吊り上げ点、2 つのレース用の座

席(ヘッドレスト付き)、胴部と脚部の横方向のサポートのために 4

点の急速解放ハーネスベルトシステムが装備されています。カプセ

ルの内部には、二重空気供給装置、サバイバル用品の貯蔵庫、床下

の淡水貯蔵容器、GPS システム、ビーコンが装備されています。

カプセルの機能は、(i)津波イベント中に乗員を保護するために

使用され、(ii)津波後のイベント中には、暖かさと避難場所を提供

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することです。カプセルは、瓦礫が火災を起こすことを念頭に置い

て熱暴露で設計されていたので、内表面はむき出しのまま(塗料無

し)であり、内面は断熱ブランケット材で裏打ちされています。こ

れは、乗員を瓦礫火災に曝さないように保護するのに役立ち、内部

表面保護がないことは、排出ガスの発生を抑制します。したがっ

て、断熱材は、熱に直面している間に低い内部温度を維持し、津波

後の生存期間中に内部温度を維持するのに役立ちます。図 3 は、カ

プセルが設計されている熱事象のタイプを示します。

カプセルドアは、乗員が開閉できるように設計されており、国際

標準の船舶ドアキーを使用して外部からアクセスすることもできま

す。ドアヒンジはクイックリリースピンで設計されているため、カ

プセルの外側に障害物があると、ドアを簡単に取り外すことができ

ます。カプセルの据え付けには、カプセルをウインチと 150 フィー

トのケーブルにつなぐオプションが含まれています。ケーブルは、

カプセルの構造強度のすぐ下で破損するように設計されたヒューズ

ピンを経由してカプセルに取り付けられます。また、カプセルに

は、内部から手動で作動する放出機構が搭載されています。

現実的な負荷の検討

津波イベントの非常に危険な環境から乗員を本格的に守るという

困難な仕事をしている個人安全システムを開発するための最初の大

きな困難は、構造仕様と寸法を定める荷重ケース包絡面を導出する

ことです。どのような種類の荷重ケースがそのような事象で発生す

るのか、また、これらの荷重ケースをどのように評価し、どのよう

に特徴づけるのでしょうか?私たちは専門家の助けを借りることに

し Eddie Bernard 博士の協力を得ました。

調査と協議に基づいて、以下の一連の試験荷重ケースがまとまり

ました。(Table 1)

次の課題は、これらの負荷ケースを定量化し、次のような質問に

答えることです。

1.津波速度は?

2.速度伝達損失は?

3.破片対象物体の質量は?

4.尖っている対象物体の投影面積は?

5.熱の温度は?

この一連の適用される試験荷重のケースに収束させるために、い

くつかの控えめな仮定がなされました。これらの控えめな仮定は、

津波専門家 Eddie Bernard 博士によってレビューされ承認されまし

た。(Table 2)

解析による津波サバイバルカプセルの健全性評価

カプセルは、NASTRAN と DYTRAN の組み合わせで解析的に評

価されました。プリポストプロセッサは、PATRANが選択されま

した。モデルの構築は、プレート要素とバー要素の組み合わせの非

常に基本的なものでした。外殻を表すためにプレートが使用され、

管状フレームを表すために棒要素が使用されました。カプセル形状

(球形)の特質のために、TRIA3要素が選択されました。

図4を見てください。

乗員の質量は、それぞれの重心に位置する CMASS 要素によって

表され、RBE3 要素を用いて位置決めされました。特性カードの密

度パラメータを利用して、構造と構成要素の質量を表しました。

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SCL002 壁面衝突

このロードケースは、約 25mph(マイル時)で流れている流れの

中を動く、最大積載状態のカプセルをシミュレートするように設計

されています。カプセル形状に関連する流れの損失は、17.3mph

(7.73m/s)の速度を失速させました。所定の速度でコンクリート

壁に衝突する球の非常に控えめな仮定は、10フィートの高さからカ

プセルを落下させることによって実験室でシミュレートされまし

た。解析方法は DYTRAN を使用しました。

選択されたカプセル材料は Alum Sht 5052-T0、QQ-A-250/8 で

す。カプセルの最大の塑性降伏たわみは、以下のように計算されま

した。

δx= 25.42 mm

たわんだモデル形状の描写については、図 5 を参照してください。

図 6 および図 7 は、荷重時のたわみを示すのにも役立ちます。

解析と試験の相関

壁面衝突の相関について

剛体壁とサバイバルカプセルとの衝突を、DYTRAN を用いてシ

ミュレートしました。カプセルは、全占有重量で 17.3mph の初期速

度に設定されました。シミュレートされた変形が 21.59×17.78cm

平らな領域によって図 8 に示されています。

サバイバルカプセルを試験するために、10フィートから落下させ

て、コンクリート床に 17.3mph で衝突させました。この落下は、図

8 に示すように、19.5×22.5cmの恒久的に変形した平らな領域を生

じさせました。

恒久的に変形した領域の面積は、シミュレーションモデルと比較

した場合、試験品で 14.2%大きくなりました。この差異は許容範囲

内ではありますが、DYTRAN モデルにドアをモデル化することに

よって、より密接な相関が得られた可能性があります。ドアがなく

ても、ドアの切開部は自由に圧縮でき、カプセルの永久変形を軽減

することができます。

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貫通の相関について

短い剛体棒に衝突するカプセルをシミュレートするために、重い

剛体棒を固定された平板に突き刺さるように発射しました。棒は、

運動量伝達が固定棒に当たる可動カプセルと同等であるように、カ

プセルと同じ質量を有するようにモデル化されました。DYTRAN

で実施されたシミュレーションによれば、カプセルは、5mph で剛

体棒に直撃した後で、深さ 22.4mm の衝撃窪みを残します。図 10

に変形を示します。

さらに、シミュレーションでは、剛体棒に 15mph 以上の速度で

衝突すると、カプセルが貫通することが示されています。テスト結

果は、これらのシミュレーションが控えめであることを示していま

す。図 11は、16.29cm からの落下試験(4mphに相当)の結果を示

し、7.38mm の永久変形を生じました。

テストとシミュレーションの違いは、いくつかの要因によるもの

です。第 1 に、カプセルを所望の衝撃ゾーンに正確に落とすことが

難しい課題でした。したがって、すべての衝撃試験は、パネルのた

わみを減少させる硬いフレームの近くで発生しました。また、カプ

セルシェルは湾曲しており、シミュレーションモデルが移動する棒

エネルギーのすべてを吸収するところで、剛体棒がかすめることを

可能にします。さらに、シミュレートされたプレートは、半球が加

工されひずみ硬化し延性が低下したにもかかわらず、理想的な材料

条件を使用します。シミュレーションとテストとの間の相関が低い

にもかかわらず、シミュレーション貫通法は控えめであり、将来の

設計の繰り返しに使用できることが確認されています。