MONOZUKURI KAKUMEI ものづくり革命 · 2014-09-18 · monozukuri kakumei...

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MONOZUKURI KAKUMEI MONOZUKURI KAKUMEI 3Dプリンタ「使いこなし」の先駆者たちと事例 3Dプリンタ「使いこなし」の先駆者たちと事例 2014 2014 ものづくり 革命 人の入れない場所を探索せよ! 異能のレスキューロボットを続々開発 東北大学 様 現場重視の点検ロボットは一品一様 3Dプリンタが果たす役割は大きい 株式会社イクシスリサーチ 様 「ほどほどでいいじゃないか」の発想で 1機わずか数億円の超小型人工衛星を開発 次世代宇宙システム技術研究組合 様 人の入れない場所を探索せよ! 異能のレスキューロボットを続々開発 東北大学 様 現場重視の点検ロボットは一品一様 3Dプリンタが果たす役割は大きい 株式会社イクシスリサーチ 様 「ほどほどでいいじゃないか」の発想で 1機わずか数億円の超小型人工衛星を開発 次世代宇宙システム技術研究組合 様 数百種類の材質と、数百通りの色を表現 マルチマテリアル、マルチカラー。 最先端の3Dプリンタ。 Objet500 Connex3™は、先進的な技術でマルチカラー3Dプリンティングを実現します。 さらに、マルチマテリアルによって数百通りの材質に対応。 モデリング、デザイン検証、プレゼンテーションモデルなど 業界を問わず、ものづくりの現場で活躍します。 最大造形サイズ 490×390×200mm(X*Y*Z) 本体筐体サイズ/重量 1400×1100×1260mm(W*D*H)/430㎏ 最小積層ピッチ 16μm(Z方向) 材料 硬質、透明、ゴムライク、ABSライク、PPライク など Objet500 Connex3™ 概要 私たちは、Stratasys社製3Dプリンタの世界トップリセラーです。20年以上の3Dプリンタ販売・サポート実績をもって、お客様へ最適な3Dプリンティングのソリューションをご提供します。 3Dプリンタでビジネスを切り開く -対企業向けビジネスから一般向けネット販売ビジネスへ- アイディー.アーツ 様 コンピュータで創る「新しい建築の形」 3Dプリンタだからできるモノとしての再現 東京大学 様 東京藝術大学 様 前代未聞の「3Dプリント焼失中子」という手法 実験に成功し、高まる販売機会の拡大への期待 巴バルブ株式会社 様 3Dプリンティングの利点をフル活用 矛盾した要望を「新しい形」で乗り越える 全日本学生フォーミュラ大会 東海大学 様 海外最新事情 FDMシステム使用材料の紹介/ Polyjetシステム使用材料の紹介 3Dプリンタでビジネスを切り開く -対企業向けビジネスから一般向けネット販売ビジネスへ- アイディー.アーツ 様 コンピュータで創る「新しい建築の形」 3Dプリンタだからできるモノとしての再現 東京大学 様 東京藝術大学 様 前代未聞の「3Dプリント焼失中子」という手法 実験に成功し、高まる販売機会の拡大への期待 巴バルブ株式会社 様 3Dプリンティングの利点をフル活用 矛盾した要望を「新しい形」で乗り越える 全日本学生フォーミュラ大会 東海大学 様 海外最新事情 FDMシステム使用材料の紹介/ Polyjetシステム使用材料の紹介 東北大学 未来科学技術共同研究センター 准教授 大野 和則 東北大学 未来科学技術共同研究センター 准教授 大野 和則 1500002312 18 2014830 3D使2014丸紅情報 3Dプリンタ

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MONOZUKURI KAKUMEIMONOZUKURI KAKUMEI3Dプリンタ「使いこなし」の先駆者たちと事例3Dプリンタ「使いこなし」の先駆者たちと事例 20142014

ものづくり革命人の入れない場所を探索せよ!異能のレスキューロボットを続々開発東北大学 様

現場重視の点検ロボットは一品一様3Dプリンタが果たす役割は大きい株式会社イクシスリサーチ 様

「ほどほどでいいじゃないか」の発想で1機わずか数億円の超小型人工衛星を開発次世代宇宙システム技術研究組合 様

人の入れない場所を探索せよ!異能のレスキューロボットを続々開発東北大学 様

現場重視の点検ロボットは一品一様3Dプリンタが果たす役割は大きい株式会社イクシスリサーチ 様

「ほどほどでいいじゃないか」の発想で1機わずか数億円の超小型人工衛星を開発次世代宇宙システム技術研究組合 様

数百種類の材質と、数百通りの色を表現マルチマテリアル、マルチカラー。 最先端の3Dプリンタ。

Objet500 Connex3™は、先進的な技術でマルチカラー3Dプリンティングを実現します。さらに、マルチマテリアルによって数百通りの材質に対応。モデリング、デザイン検証、プレゼンテーションモデルなど業界を問わず、ものづくりの現場で活躍します。

最大造形サイズ 490×390×200mm(X*Y*Z)

本体筐体サイズ/重量 1400×1100×1260mm(W*D*H)/430㎏

最小積層ピッチ 16μm(Z方向)

材料 硬質、透明、ゴムライク、ABSライク、PPライク など

Objet500 Connex3™ 概要

私たちは、Stratasys社製3Dプリンタの世界トップリセラーです。20年以上の3Dプリンタ販売・サポート実績をもって、お客様へ最適な3Dプリンティングのソリューションをご提供します。

3Dプリンタでビジネスを切り開く-対企業向けビジネスから一般向けネット販売ビジネスへ-アイディー.アーツ 様  コンピュータで創る「新しい建築の形」3Dプリンタだからできるモノとしての再現東京大学 様 東京藝術大学 様 前代未聞の「3Dプリント焼失中子」という手法実験に成功し、高まる販売機会の拡大への期待巴バルブ株式会社 様 3Dプリンティングの利点をフル活用矛盾した要望を「新しい形」で乗り越える全日本学生フォーミュラ大会 東海大学 様 海外最新事情 FDMシステム使用材料の紹介/Polyjetシステム使用材料の紹介

3Dプリンタでビジネスを切り開く-対企業向けビジネスから一般向けネット販売ビジネスへ-アイディー.アーツ 様  コンピュータで創る「新しい建築の形」3Dプリンタだからできるモノとしての再現東京大学 様 東京藝術大学 様 前代未聞の「3Dプリント焼失中子」という手法実験に成功し、高まる販売機会の拡大への期待巴バルブ株式会社 様 3Dプリンティングの利点をフル活用矛盾した要望を「新しい形」で乗り越える全日本学生フォーミュラ大会 東海大学 様 海外最新事情 FDMシステム使用材料の紹介/Polyjetシステム使用材料の紹介

東北大学未来科学技術共同研究センター准教授

大野 和則 氏

東北大学未来科学技術共同研究センター准教授

大野 和則 氏

発行:丸紅情報システムズ株式会社 〒150ー0002

東京都渋谷区渋谷3ー12ー18

渋谷南東急ビル

発行日:2014年8月30日

3Dプリンタ「使いこなし」の先駆者たちと事例

ものづくり革命–2014–

丸紅情報 3Dプリンタ

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現場重視の点検ロボットは一品一様3Dプリンタが果たす役割は大きい

ものづくり革命 C O N T E N T S 3Dプリンタ「使いこなし」の先駆者たちと事例 MONOZUKURI KAKUMEI

2014

3次元設計データから型成形や切削を使わず3Dプリンタ(積層を主とする付加製造装置)で、機能する実部品、型、治具を直接製造する工法です。

従来製造法からの単なる置き換えではなく、設計形状の自由度を広げ数量、場所、人、時間、コストを最適化し新しい少量生産を実現する装置と工法です。

1個から数十個まで必要なときに必要なだけ

作ることができます。

DDMはこのような製造用途に適しています。

治工具・型の生産• 射出成形、ブロー成形、真空成形の型• パルプモールディング型• ハイドロプレスフォーミング型• 砂型鋳造パターン• CFRP成形型の溶解コア• 3次元計測用治具• トリミングガイド、ドリルガイド治具• 塗装などロボット向けティーチング用 モデルの保持治具

• 1台~少量生産販売製品• 生産ロボットのアーム先端樹脂 部品、カバー類• カスタムメイド製品、アフターパーツ• 在庫切れ補修交換部品• 美術品・工芸品

最終製品・部品の生産• 実動機能試験用樹脂製品・部品 (耐荷重、耐熱、耐薬品)• 風洞実験模型• 市場調査用パイロット製品

研究開発用製品・部品の生産

設計する

生産する 使う

DDM(Direct Digital Manufacturing)とは…

4株式会社イクシスリサーチ 様

3Dプリンタでビジネスを切り開く-対企業向けビジネスから   一般向けネット販売ビジネスへ-

8アイディー.アーツ 様

人の入れない場所を探索せよ!異能のレスキューロボットを続々開発

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東北大学 様

コンピュータで創る「新しい建築の形」3Dプリンタだからできるモノとしての再現

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東京大学 様東京藝術大学 様

「ほどほどでいいじゃないか」の発想で1機わずか数億円の超小型人工衛星を開発

6次世代宇宙システム技術研究組合 様

前代未聞の「3Dプリント焼失中子」という手法実験に成功し、高まる販売機会の拡大への期待

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巴バルブ株式会社 様

「3DプリンティングとDDM」欧米の「いま」と日本の「これから」

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FDMシステム使用材料の紹介Polyjetシステム使用材料の紹介

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3Dプリンティングの利点をフル活用矛盾した要望を「新しい形」で乗り越える

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全日本学生フォーミュラ大会 東海大学 様

| 海 | 外 | 最 | 新 | 事 | 情 |

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株式会社イクシスリサーチ 代表取締役

山崎 文敬 氏Fuminori Yamazaki

現場重視の点検ロボットは一品一様3Dプリンタが果たす役割は大きい

ロボットビジネスの問題はリピーターがいないこと

「二足歩行ロボットはやめた。これからは点検・メンテナンスロボットでいく。そう社員に向かって宣言したのは、まさにこのテーブルでした」と、ロボット開発ベンチャー、イクシスリサーチの代表取締役、山崎文敬氏は話す。同社の大きな転換点となった会議が行われたのは7年前のことだ。ロボットの設計から製造まで一貫して手掛ける企業は、日本ではまだ数が少ない。点検・メンテナンスロボットの分野で実績を重ね、業績を伸ばしている同社だが、その道のりには紆余曲折があった。「ロボットアニメは余り見なかった」と語る山崎氏が少年時代に関心を持ったのはロボットコンテストだった。ロボットが動くことに面白さを感じていたという。大学入学後、ロボットをつくっては国内外のロボットコンテストを渡り歩く。国際的なロボットによるサッカー大会「Robo Cup」では二連覇を達成。学生だった1998年、イクシスリサーチを設立したのも当初はロボットコンテスト出場のための資金難を解決するためだった。大学院卒業後、会社事業に専念。2005年の愛知万博をきっかけに、イベントなどを案内するサービスロボットがブームとなり同社も数多く受注した。しかしブームは一過性に過ぎず仕事は急激になく

なっていった。当時もそして現在もロボットビジネスは「リピーターがいない」という問題を抱えているという。継続して利用する目的を見つけることが重要となる。

現場重視のロボット開発で点検・メンテナンス分野の道を拓く

ロボット利用の目的が明確なものにレスキュー分野がある。社会的意義が高く、やりがいも大きい。同社はレスキューロボットの開発・製造も行っているが、市場が限られておりビジネス化は難しいのが現状だ。同時期に産業用分野の点検・メンテナンスロボットの開発依頼があった。点検ロボットで使った技術がレスキューロボットとほぼ同じだったことに驚いたという。点検ロボットは継続利用するリピート率が極めて高い。またロボットを使うことで現場からあがってくる改善点に応えることで技術が向上していく。レスキューロボットの開発を求められたときも磨きぬかれた技術を活用できる。点検・メンテナンスロボットという事業の方向性は定まったが、その後も順風満帆とはいかなかった。点検・メンテナンス業界は新規参入が難しく、実績を重視する。同社は、自社の存在意義を高め競争

力をつけるためにロボット開発のコンセプトをつくった。それが、現場重視だ。「現場をよく知り、現場の需要を重視し、使えるロボットをつくる」。同社はコンセプトに基づき開発したロボットを展示会に出品するなど営業活動を続けることで少しずつ受注を重ねていった。その中で同社の命運を決めるプロジェクトと出会う。首都高の点検ロボット開発の受注とその成功は、業界の壁を越えるのに十分な実績となり依頼案件も増えていった。「ロボット業界で当社ほど数多くのロボットを開発している会社はないでしょう」と山崎氏は話す。数が多いことは豊富な実績をあらわしているが、同時にビジネス上の問題も抱えることになった。

試作だけでなく実用部品の造形に3Dプリンタを活用

点検・メンテナンスロボットは対象がそれぞれ異なるため一品一様となる。案件ごとに必要となる専任技術者や、自社で開発、製造、運用まで行う労働集約型といった事業形態は企業の成長に限界をもたらす。そこで1台のロボットを効率的に開発するために、2013年、3DプリンタのuPrintSE Plusを導入した。「構想段階で形状が成立しているかどうかをすぐに確認できるメリットは非常に大きい。またロボットの機構を検討する際、玩具ブロックを使ってシミュレーションを行っていますが、必要なパーツがすべてそろっているわけではありません。3Dプリンタを使って約1時間で不足分のパーツをつくって対応しています」。同社は現場で使えるロボットづくりを目指している。そのために、例えばスイッチの位置などにも徹底してこだわる。必要なときに必要なだけ形状や機構の確認を可能にする3Dプリンタは同社になくてはならないツールとなっている。試作だけでなく3Dプリンタで造形した部品を実用部品としても使っている。バッテリなどの電子部品を収納するバスタブ型の防水性ケースは、従来、板金や切削でつくっていた。しかし、金属の板の貼り合わせやシールの貼り方などに細心の注意が必要であり、なおかつ1ピースを金属でつくると切削加工費が高額となった。3Dプリンタでケースを造形し強度が必要な枠に金属を使うなど組み合わせることで早く安価にできる。橋梁床版裏面やプラント煙突など、高所で広範囲に目視点検をする「ワイヤ吊り下げ型目視点検ロボット」では、カメラ固定台や、横風の揺れの影響を減らすため側面に風を上下に分けるパーツを3Dプリンタで造形し実用部品として使用している。また医療系ロボット

では関節を含めてロボットの指を3Dプリンタにより一体構造で造形しそのまま納品したという。コストの抑制、効率化だけでなく、故障時の迅速な対応やメンテナンスの容易性から3Dプリンタでつくった実用部品の利用拡大への期待は大きい。「高速道路やプラントの点検では万が一、ロボットの故障で点検業務が延期されると、再度交通規制やプラントを止める必要が生じ大きな損失となります。現場で故障したらその場でなおす。部品がなかったら3Dプリンタでつくって対応するといったスピード感が求められています」。山崎氏の挑戦は止まらない。点検業務の全体最適の観点からロボットの役割を見直し次の一手を打った。点検ロボットで取得したデータをデータベース化し、自動的に報告書を作成するシステムを開発して連携する。報告書作成の効率化は大幅な省力化となる。「ロボットだけを見てはいけない。現場全体をよく見ないと」。ロボットコンテストのものづくりが山崎氏の原点だ。

株式会社イクシスリサーチ 様

側面に風を上下に分けるパーツを3Dプリンタで造形

プラント点検ロボット タンク・配管点検ロボット マグネット・吸着型点検ロボット ワイヤ吊り下げ型目視点検ロボット

カメラ固定台を3Dプリンタで造形

玩具ブロックを使って機構検討を行う際、不足パーツを3Dプリンタで造形

現場で活躍する点検・メンテナンスロボット

http://www.ixs.jp/

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「ほどほどでいいじゃないか」の発想で1機わずか数億円の超小型人工衛星を開発

衛星が安くなることでできること

ミカン箱を上下に2つ重ねたような大きさだった。3辺とも長さは約50cmほど。衛星「ほどよし」である。「それはモックアップですが、実物大なので現物と同じ大きさです」山口耕司氏。次世代宇宙システム技術研究組合の理事長だ。同組合は、大学、企業、行政の産官学連携によって、衛星の世界市場を獲得するべく2010年3月に設立された組織だ。衛星を4機打ち上げることをミッションとしている。だが、衛星市場は各国が熾烈な争いを繰り広げており、そう簡単に入り込めるものではない。そこで、組合が目をつけたのが「超小型衛星」という市場だった。衛星は一般に、何トンもある「大型衛星」、500kg以下の「小型衛星」、100kg以下の「超小型衛星」と分けられる。つまり、衛星のなかでもっとも小さい部類の衛星をつくることを目指したのだ。「それまで衛星は1機3、4トンもの重さがあり、価格も300億円前後と非常に高額で、開発期間は5~10年もかかっていました。そこで私たちは、開発期間を2年程度と短くし、価格も従来の約50分の1である1機約2~3億円を目標に掲げました」

安い超小型衛星によって、今までできなかったことが可能になるという。「衛星は地球の周りを周っていますが、同じ場所の上空を通過するのに2~3週間ほどかかってしまうので、1か所の撮影頻度も限られてしまいます。しかし、衛星の価格が安ければ数多くの衛星を打ち上げることができ、衛星が多ければ多いほど地球の状況をリアルタイムで把握できるようになる。農業であれば生育状況が把握できることで追肥や刈り取りのタイミングがわかり、漁業でも魚群の把握が可能になります」だが、いくら機体を小さくするとはいえ、1機2~3億円で衛星をつくることは本当に可能なのだろうか。組合には目算があった。

「ほどよし信頼性工学」という発想

組合が目指したのは「ほどよし信頼性工学」だった。「これは組合の中心研究者である東京大学の中須賀真一教授の研究テーマで、完璧を目指すのではなくほどほどでいいのではないか、という考え方です。この発想によって価格を下げることを考えた

のです」「ほどよし信頼性工学」をもっとも象徴しているのが「再起動させる」という発想だ。通常は、不具合が起こったときにそれに対応できるシステムを別に構築しようとする。しかし、それでは複雑な仕組みになり、開発時間もコストもかかってしまう。そこで、「パソコンのように再起動すればいいじゃないか」と、不具合が起こったら単純に再起動させる設計にした。こうした設計の工夫のほか、もう1つ改革に着手したのが書類の簡略化だ。「宇宙業界は冗談で『原価が2割、書類が8割』ともいわれていて、品質のエビデンスをきちっと残さなければな

りませんでした。そこで、今あるルールを適用するのではなく、自分たちで簡略化したルールをゼロからつくっていくことにしました」こうして、コストと開発期間の削減を図っていったが、組合にはもう1つ大きなミッションがあった。すべて国産品でつくるということだ。「組合は衛星の世界市場の獲得を目的にしているため、海外の部品を集めてそれを海外に売っていては利益が出ません。国産でつくったものを売るからこそ意味がある。カメラ、バッテリー、太陽電池パネルなど、すべての部品を自分たちの手でつくっていくことにしました」そして山口理事長は、1つのアイデアを思いつく。

組合設立と同時に導入した3Dプリンタ

「昔、アメリカのロッキード社に行ったときに、最新のCADがズラリと並んでいて、小さい加工機を使ってスケールモデルをつくっていました。モニタ内だけでなく実際の形として触れるほうがはるかにわかりやすく、モデルがあるのはすごいことだと感じていました。やはり仮想と現実のギャップを埋めなければならない。そのために3Dプリンタが欠かせないと判断し、組合設立と同時に3Dプリンタ Dimension SST 1200esを導入しました」超小型衛星といえども部品点数は膨大で、3Dプリンタを使い試作を重ねていった。最初はあまり3Dプリンタを使っていなかった若手スタッフも、一度その便利さを知ると、山口理事長も驚くほどの勢いで一気にフル稼働状態へとなっていく。モックアップの表に見えている構成部品はすべて3Dプリンタでつくったという。組合設立から2年半ほどたった2012年10月に1号機が完成。そしてその後、2号、3号、4号が次々と完成していく。

「4機はミッションがそれぞれ異なっていますが、いずれも1機当たり2~3億円で、開発期間は2、3年でした」

さらなるコストダウンを図り「マイ衛星」へ

ほどよし1号は2013年中には打ち上げられる予定だったが、打ち上げ予定地のロシアの事情により、まだ打ち上げには至っていないが、2号機は日本のH2Aロケットで2015年中に打ち上げ予定となっており、3、4号は2014年6月19日(日本時間20日)、ついにロシアのロケットに乗って打ち上げられ、無事軌道に乗ることに成功した。「最終的に衛星を3Dプリンタでつくれないかと思っています。たとえば、ハニカムパネルは『接着』というあやふやな工程を含んでいますが、3Dプリンタなら一体成型なので強度が出る。宇宙空間では避けられない放射線や紫外線に強い素材が出るようになれば、衛星に3Dプリンタでつくった部品が実装されるようになるはずです」1機当たり数億円の超小型衛星。打ち上げによって確かな性能が確認できれば、日本発の超小型衛星が世界市場を席巻する可能性もある。「ただ1機2~3億円で満足しているわけではなく、将来的には3,000万円ほどでつくれないかと考えています。これくらいの額になれば、国に頼らなくても企業が独自で衛星をもつことができ、個人がお金を出し合って衛星をもつことも可能です。つまり『マイ衛星』に近づいていく。そうなれば、衛星はもっともっと身近なものになっていくはずです」かつて高嶺の花といわれたテレビ、自動車、パソコンなどは価格が下が

るにつれて人々の生活のなかにどんどん浸透していき、今や暮らしになくてはならないものになった。1企業1衛星、1団体1衛星、1自治体1衛星──。そんな時代は、意外と早くやってくるかもしれない。

※「日本発の『ほどよし信頼性工学』を導入した超小型衛星による新しい宇宙開発・利用パラダイムの構築」のプロジェクトは、内閣府最先端研究開発支援プログラムの助成を受けて実施されているものです。

次世代宇宙システム技術研究組合 様

次世代宇宙システム技術研究組合 理事長

山口 耕司 氏Koji Yamaguchi

http://www.nestra.jp/

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3Dプリンタでビジネスを切り開く-対企業向けビジネスから一般向けネット販売ビジネスへ-

アイデアを思いついたらすぐにかたちにして確認

3Dプリンタを使った新しいビジネスモデルづくりに奔走する米谷氏。本業は世界的ブランドの腕時計や宝飾品、建築などのデザイナーだ。1998年に設立したid .a r t s (アイディー.アーツ)はデザインはもとより3D CGデータを軸にカタログや広

告、VR(Virtual Reality)システムなど複合的な展開を図ることでビジネスを広げてきた。「3Dデータの流用を進めていく中で3Dプリンタの活用は必然の流れでした」と米谷氏は振り返る。

2011年、コストパフォーマンスに優れた3DプリンタuPlint Plus(ユープリントプラス)の発売に大きな関心を持ち、設計・製造ソリューション展の丸紅情報システムズのブースで話を聞くとすぐに購入を決断。「アイデアを思いついたらすぐにかたちにして確認できるようにしたい」というのが購入の動機だった。3Dプリンタによるモックアップで形状やサイズ感をチェックできることで作業効率は大きく向上した。また、ビジネスを切り開くために3Dプリンタは欠かせないという。「センサーを利用したオリジナル建築部材というアイデアを思いついたとき、すぐにモックアップを製作しセンサー開発メーカー、建築家、建材メーカーにプレゼンテーションを行いました。アイデアはかたちにしたほうがわかりやすい。認識の共有にも有効です」と米谷氏は話す。「ものづくり革命2013」では米谷氏が「1人メーカー」として、3Dプリンタによるモックアップ作りや電子機器の融合による新商品企画

などについて紹介をさせていただいた。その後1年で、米谷氏が対企業向けビジネスから一般向けネット販売ビジネスまで、短期間でどのようにビジネス化をされたかについて、再度ご紹介させていただくこととした。まず3Dプリンタによるビジネスの一つとして、高精度建築模型の製作を通じて実感した3Dプリンタのデザイン再現力を活かすために、米谷氏は高級家具のミニチュア模型化に着目した。

高級家具メーカーも巻き込みながらビジネス展開

3Dプリントミニチュア家具シリーズは家具の持つデザインの美しさそのものを引き出し、建築模型用途だけでなく個人のコレクション用にも新しい価値を提供する。「20世紀を代表する名作と言われるPanton ChairやEames Chairなどデザインライセンスが終了しているものに加え、知り合いの建築家を通じて高級家具メーカーを巻き込んでビジネス展開を図っています。すでにイタリア高級家具などとのコラボレーションで作品を製作しました」DDM(ダイレクトデジタルマニュファクチャリング)とECサイトを融合した仕組みの構築にもチャレンジする。3D CGでモデリングを行い、3Dプリンタで造形して研磨、塗装した後、自社サイト内で販売

する。一般的な高額ミニチュア家具は1/6スケールが多いが、1/20、1/30、1/50など建築模型にマッチするサイズを用意し、建築模型用にセットにしてレンタルで貸し出すことも検討している。米谷氏は高精度なものづくりとともに、簡単に楽しめるものづくりにも力を入れている。「3Dプリンタを家族で楽しめるものにしたい」という思いがあるからだ。

3Dプリンタを活かすコンテンツの提供や遊び方を提案

3Dプリンタでつくった造形物と安価で購入できる回路を組み合わせた3Dプリント電子工作は、親と子が一緒につくることがコンセプトだ。大切なのはつくってみたいと思わせること。例えば、電子工作ランプは行灯のように柔らかな光が魅力的だ。クラゲのような形状の不思議な物体はセンサーからの計測値に基づき頭頂部に生えた芽の部分が変化する。電子工作は自社サイトで公開し、今後、キット化する予定だ。研磨や塗装のやり方などを自社サイトで紹介するとともにワークショップの開催も検討している。またイベント用にキャラクターに触れる

と音や映像が流れる電子楽器の開発や教育教材への展開にも取り組んでいる。日常生活の中で「こうしたらいいのに」と思ったら3Dプリンタですぐに造形してしまうのも米谷流の遊び方だ。ラテアートが楽しめるテンプレート、

虫よけ剤をお洒落に変える装飾ケース、1950年代頃にアメリカで流行した木製玩具の造形品など枚挙に暇がない。子供のために購入したスマホ顕微鏡 Leye(エルアイ)ではiPhoneのインカメラとレンズの位置を合わせるのに便利なパーツをつくった。モデリングから造形まで作業時間は20分くらい。「製品の開発者の方に声をかけていただき、ワークショップにも参加しました」様々なものを製作している米谷氏だが、3Dプリンタを購入して最初につくったのはiPhoneケースだった。

コラボレーションでビジネスの可能性を広げる

映画や漫画のヒーローをテーマにしたiPhoneケースは「3Dプリンタでここまでできるのか」と見た者に驚きをもたらす。その実力はマンガ雑誌の主人公をモチーフとしたキャンペーン用スマートフォンケースの製作につながったことでもわかる。完成度の高い作品づくりには3Dモデリング技術とプリンタの特性を理解した上での造形技術が必要になる。例えば、ミニチュア家具のように細部や滑らかなフォルムを再現したい場合、光造形方式3Dプリンタや高精度インクジェット3DプリンタObjetシリーズなどで造形している。uPlint PlusなどFDM(熱溶解積層法)方式は、実材料のABS樹脂が壊れにくい上、熱に強く、なおかつコストパフォーマンスも高いことからモックアップをはじめ様々なシーンで利用している。また、研磨などの仕上げが前提となるため造形後の積層跡を消すコート剤の使用など造形技術に関する研究にも余念がない。現在、3Dプリンタを使ったフィギュア、CGアーティストとのコラボレーション、マンガ喫茶に3Dプリンタを設置したときの楽しみ方の提案など新しいプロジェクトが進行中だ。映画のワンシーンを3Dプリンタで再現するジオラマの製作も開始する。企業や分野の垣根を越え、様々なコラボレーションを行いながら3Dプリンタとビジネスの可能性を広げていく。米谷氏のチャレンジは続く。

アイディー.アーツ 様

Objet シリーズで造形。1/30スケールでソファに塗装&マットコートを施す

id.arts

米谷 芳彦 氏Yoshihiko Yonetani

3Dプリンタによる高精度建築模型

Objetシリーズで造形。Eames DSRシリーズ1/10スケール

高級家具ブランドのミニチュア家具作品 イタリアの高級家具メーカーのミニチュア家具作品

「Panton Chair」右(ホワイト):FDM造形後、パテ処理~研磨塗装を行った1/10スケール品左(イエロー):Stratasys Objetシリーズで造形した1/20スケール品

電子工作ランプ

センサーの計測値に基づき芽の部分が変化

虫よけ剤をおしゃれに変える装飾ケース

スマホ顕微鏡 Leye(エルアイ)用の位置合わせパーツ

http://www.idarts.co.jp/

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人の入れない場所を探索せよ!異能のレスキューロボットを続々開発

きっかけは阪神・淡路大震災

大野和則准教授は神戸大学などを経て、2005年に田所諭教授とともに東北大学へと移ってきた。田所研究室の研究テーマの柱の1つがレスキューロボットだ。「この研究室ができたのは1995年の阪神・淡路大震災がきっかけでした。ロボット大国なのに被災者救出のためにロボットがまったく使われていないことにショックを受けた田所教授がレスキューロボットの研究を始めました」大野准教授は活動に賛同して研究室のメンバーとなり、さまざまなロボットを開発していくが、そのなかで代表的なものが「Quince(クインス)」である。

QuinceはNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の支援を受けて、東北大学のほか、千葉工業大学、国際レスキューシステム研究機構なども参加して研究が行われる。「地下で起こった火災などは、人が奥に入ると巻き込まれる可能性があります。そこで人の代わりに奥に行けるロボットをつくろうと開発されたのがQuinceでした」形は独特だ。戦車のように全身にクローラー(一般にキャタピラー

と呼ばれる)を身にまとい、四つの角には手足のようなものが付いており、大きな段差があるときに四つの足を使って段差を乗り越えるという設計だ。カメラによって周囲の状況を確認し、無線で遠隔操作をして動かしていく。そして、7年間のプロジェクトがあと数週間で終わろうかというまさにそのとき、事故が起こる。福島第一原発。

抜群の走行性能を発揮

「私たち研究者は、日本で福島第一原発に投入できるのはQuinceしかないだろうというという考えで一致していました」

しかしQuinceには問題が2つあった。1つは遠隔通信。Quinceは無線で遠隔操作を行う設計だったが、原子炉建屋内は放射線を遮るために分厚い壁になっている。そのため有線で対応せざるを得なかった。もう1つの問題は耐放射線特性。放射線の影響によって電子部品が故障したり誤作動を起こす可能性があったが、検証実験の結果、問題がないことがわかった。原発仕様のQuinceは有線式となったため光ファイバリールのほか、放射線測定器、汚染水調査のための水位計なども付いた。2011年6月

24日、2号機建屋内に投入。その後も断続的に投入される。「走行性能の高いQuinceは急こう配の階段も上り、5階まで探索し放射線量を測定しました。放射線量がわかったことで、作業員を入れる計画が立てられるようになったことが一番大きな成果だったと思います」そしてこの経験が、のちのロボット研究に生きていくことになる。

続々開発される新たなロボット

Quinceは決してすべてが順風満帆だったわけではない。瓦礫の山の前でどうしても進むことができず引き返したこともあった。そこで開発を始めたのがヘリコプター型ロボットの研究だった。これは、Quinceにヘリコプター型ロボットを乗せて行けるところまで行き、それ以上進めなくなったときにヘリコプター型ロボットを飛ばして探索するというものだ。マニュアル操縦をせずに済むよう、米国カーネギーメロン大学の研究者らとともに、センシングによる自己位置推定などによって、自動で飛んで探索して戻ってくる自律性を獲得。さらに、電動式ヘリコプターに吸着機構を取り入れ、天井などに吸着して、そこからクモのように下にすーっと下がることで、プロペラ駆動なしで目的の場所に留まることができ、通常10分間しかない現場計測時間を30分に延ばすことに成功する。「今、犬の機動力に着目して、レスキューロボドッグの研究もしています。ただし、犬が集中できるのは1、2時間で、それ以上だと疲れてしまって反応がにぶくなる。でもここに人がいるんじゃないかとかすかに反応していることがある。その『声なき声』を可視化することができれば、被災者の救助につながるのではと研究をしています」以前から研究していたもののなかにはすでに商品化されたものもあり、瓦礫のなかのごく狭い場所を探査するために使われる「能動スコープカメラ」はメーカーからすでに発売されている。そしてQuinceもその後、原発用にさらに開発され、現在、重工業系のメーカーが販売している。怒涛の勢いで次々とさまざまな研究成果を上げていく田所研究室。大野准教授はスピード化の陰にはある立役者がいるという。「3Dプリンタです」

人に役立つ工学を

「周りの研究者から、『3Dプリンタを導入するとものづくりが変わるよ』と何度か言われていました。私は機械系なのですが、機械加工はものすごく時間がかかりもっと簡単にできないかとずっと思っていました。そこで2009年にuPrintを導入しました」大野准教授は、仲間の研究者の言葉の意味をすぐに悟る。「データを流すだけでいいので、『明日までにつくっておいて』と簡単に頼める。センサや計測器を固定するために治具など多くものをつくっていますが、どれもすぐにできてしまいます。開発のスピード感は圧倒的でした」もう1つ大きな変化は「オリジナルの形」ができることだ。たとえば、先に紹介したレスキューロボドッグの場合、犬の背中に機械を乗せるが、それまでは市販の箱を使っていた。しかしそれでは収まりが悪く、大野准教授曰く「犬に歩くことを拒まれた」ほどの出来だった。そこでCADで設計して3Dプリンタで形状を確認、何度か調整を重ねた結果、犬の身体に密着するようにすっきりと収まり、以前と同じ重量にもかかわらず機敏に動いてくれるようになったという。「将来的には金属など強度があるもの、さらにゴム系の柔軟性のある素材も使えるようになったら、手を使ってコツコツものをつくることは一切なくなり、データを流すだけでものがつくれるようになると思います」2012年には『次世代移動体システム研究会』多賀城実証拠点(みやぎ復興パーク内)において『Fortus400mc』も導入。田所研究室も共同利用し、ワークサイズが大きくなり、さらにいろいろなものがつくれるよう

になった。また、地元の中小企業にも格安で使ってもらっており、地域活性化につなげようとしている。大野准教授は「人に役立つ工学」をモットーとして掲げている。阪神・淡路大震災を教訓にして生まれたQuinceは福島第一原発で役立ち、商品化にたどり着き、さらに世界中で役に立とうとしている。未曾有の災害だった東日本大震災。その教訓を糧にし、大野准教授らはまた新たな夢を人々に届けようとしている。

東北大学 様

ヘリコプター型ロボット

東北大学 未来科学技術共同研究センター 准教授

大野 和則 氏Kazunori Ohno

レスキューロボット Quince(クインス)

レスキューロボットドッグ

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コンピュータで創る「新しい建築の形」3Dプリンタだからできるモノとしての再現

目指せ「デジタル」と「人の手」の融合

「建築物」というと、垂直水平を基本にし、四角い建物のイメージがあるが、そうした従来の建築とはまったく違った角度からアプローチしているのが、東京大学の小渕祐介氏の研究室と、東京藝術大学の金田充弘氏の研究室だ。「私はロンドンで建築デザインと教育に関わったあと、2010年に東京大学に移りました。そこで感じたのは、欧米と違い、日本はものづくりの文化が豊かなことです。職人文化とコンピューティングなどの情報文化の融合することで新しい発想が生まれるのではないか。また、素材に対する知恵に情報が加わることで持続可能性のある建築ができるのではと考えました。『デジタル』と『人間だからできること』の関係性、『技術』と『感性』の関係性などを研究テーマにしています」と小渕氏。東京藝大でも、金田氏が「数学的アルゴリズムにより3次元データを生成し、構造解析を行っています」と語ると、砂山太一氏は「コンピュータやアルゴリズムを使うとしても、人の手で作る意味はこれまでと変わりません。モダニズムデザインが産業革命以降長い年月をかけて、その工業化における美意識を確立していったように、情報技術に関しても、その生産性と一体となった新しい美学的意識の探求が重要になります。そういった意味で使い手が技術をその手に習熟させることは必要不可欠です。」とコンピュータと人の手の融

合の重要性を強調する。砂山氏は「マテリアライジング展」と題した先端技術を応用した表現の可能性を探る展覧会を企画し、小渕研究室所属の木内氏および吉田氏も出展作家として参加している。また金田氏が小渕研の講評会に参加するなど、両研究室は大学を超えてつながりが深い。これら2つの研究室で共通することは「情報技術によって建築の新しいカタチを創る」を精力的に研究実践していることだ。

新しい建築デザインを探りたい

そもそもコンピュータで設計することで何が得られるのか。「コンピュータによるものづくりによって複雑な形をより合理的につくることが可能になります。それにより、国際的に飽和しつつある建築デザインは変わりつつあります。ものづくりの中で培われてきた人の手による高度な作業に『情報』が加わることで、より複雑なものをより簡単につくれるようになるわけです」と木内俊克氏。人の手のみでは難しかった複雑な形を作ることができるコンピュータ。それは建築業界に新しい息吹を与えることにもつながっている。例えば、吉田博則氏が目指す建築は、まさにコンピュータなしでは決して作ることができないものだ「小さい要素素材を積み上げて建築構造物を作ることを研究しています。実験しているのは、砂粒を自然に落としていくと重力や摩擦

のバランスで砂山が積みあがる原理で、爪楊枝や割り箸をコンピュータ制御の機械で最適な位置に積み上げることで、建物の構造体を作ります。これを基にして、実際の建築物の大きさにしていくための素材や工法を求めていきます」デジタルファブリケーションが普及しはじめた近年に至るまでは、コンピュータによって複雑な形を作図できても、複雑であればあるほど、生産過程は非常に煩雑になり仮設資材も大量になってしまう。模型を作ることも容易ではないはずだ。「1990年代後半以降、少しずつ3次元的な曲線・曲面を基調とした建築への取り組みが増えていきましたが、煩雑な生産過程や、特に経済的な理由もありそれほど広がってこなかったのが現状です」と木内氏は語る。そうしたなか、小渕研究室、金田研究室ともあるものに目をつける。3Dプリンタである。

3Dプリンタだから複雑な形も簡単に「モノ」に

東京藝大の金田研究室は2011年11月から、東京大学の小渕研究室は2012年10月から3Dプリンタを使用している。使っているのはともに「uPrint SE Plus」だ。金田研究室はコンピュータで設計した複雑な形状の模型製作に3Dプリンタを使っている。網かごのような形、木の年輪のように何重にも重なっているもの、複雑に波打っているものなど、3Dプリンタがなければ決して作れなかったであろう模型が並ぶ。また機能部品として、木製板部材を立体的につなぎ合わせるジョイント部材の試作品なども作っている。なかには実用品として使っているものもある。断熱材を複雑な曲面で切断するために、コンピュータで制御するロボットアームの先端にヒートワイヤを付ける接続部品が必要だったが、それは3Dプリンタで作ったという。「3DプリンタによるABS樹脂製部品のよいところは、タッピングなどの追加工をしても、割れたりせず、容易にかつ正確に加工できることです」と永田康祐氏は指摘する。

3Dプリンタで広がる夢の数々

一方、小渕研究室は主に2つの使い方をした。1つは模型だ。具体的には、複雑な幾何学形状の構造物が、実際に物質として成立しているかどうかの確認と、プレゼンテーションとしての利用だ。作られた模型は自由曲面形状のものばかりで、その斬新さは目を見張るものがある。「型取りを行ったり、レーザーカット部材などから組み立てたりする方法と比べると、3Dプリンタのほうが作業が簡単で、完成度の面でも高いと感じました」(小渕氏)もう1つは建築部材としての利用。パビリオン建設のカスタム接合部分ピースのモックアップの形状・機能確認として3Dプリンタが使われた。小渕氏は今後、修士論文研究では3Dプリンタの活用を定常化させ、より規模の拡大を図りたいと考えている。「3Dプリンタ以外の成形方法と組み合わせることで、より多様な使用用途が見いだせる可能性があり、積極的に3Dプリンタを推奨していこうと思っています。また、3Dプリンタは強度の面から建築躯体部材そのものに使うことに限度があるのは事実ですが、逆に建築物のあらゆる部材をプラスチックにするなど超軽量にして、建築全体に要求される仕様そのものを軽量化するということも考えています」と意欲を燃やす。金田氏は「建物の正面であるファサードを構成する部材に3Dプリンタで作ったものが使える可能性があります。また、3Dプリンタで作った部材にICチップを組み込み、部品識別情報や立体空間座標位置情報などを部品にもたせることで、設計図の代わりにしたり、施工管理に利用したりすることも考えられます」と夢を膨らませる。建築業界に着実に浸透しつつあるコンピュータと3Dプリンタ。新たな形を次々と生み出す源泉となっているだけでなく、現場の効率化、施工管理そのものを変える可能性を秘めている。

東京大学 様 東京藝術大学 様

東京大学大学院工学系研究科建築学専攻特任准教授小渕 祐介 氏同コースアシスタント兼 木内俊克建築計画事務所 主宰木内 俊克 氏同コースアシスタント吉田 博則 氏

■東京大学 東京藝術大学美術学部建築科准教授金田 充弘氏同教育研究助手鈴木 芳典氏同後期博士課程在籍兼 京都市立芸術大学美術学部総合芸術学科 特任講師砂山 太一氏同大学芸術情報センター非常勤講師兼 東京大学工学系研究科建築学専攻コースアシスタント永田 康祐氏

■東京藝術大学

東京大学 Digital Fabrication Lab Pavilion 2013 Ⓒ若林勇人/Hayato Wakabayashi

東京大学小渕研究室 修士課題作品の模型 Ⓒ東京大学小渕研究室 Ⓒgh/e(砂山太一、永田康祐、御幸朋寿) Ⓒマテリアライジング展/Micheal Hansmeyer Ⓒマテリアライジング展 / 土岐謙次 Ⓒ東京芸術大学金田研究室

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前代未聞の「3Dプリント焼失中子」という手法実験に成功し、高まる販売機会の拡大への期待

役員の一言で始まった3Dプリンタを使った改革

「3Dプリンタでこんなこともできるのか──」そんな驚きがあるのが巴バルブの取り組みだ。世界でもごくわずか、日本では巴バルブしか取り組んでいないかもしれないという、極めて新しい使い方だ。それも、うまくいけば企業の業績を大きく変える可能性のある壮大な取り組みでもある。話を聞いたのは谷川健氏と田中友一朗氏だ。巴バルブは「バタフライバルブ」と呼ばれる流体制御用の商品を製造している。管の中に入れ、開けたり閉じたりすることで流量を調節するものだ。大きいものは1m以上もある。3Dプリンタを検討し始めるきっかけは、役員の指示だった。「3Dプリンタで何ができるのかを検討するようにと言われました。最初はCADで設計したものを3Dプリンタで造形するという『試作』で使う方法を考えていましたが、それ以外の使い道を模索し、思いついたのがワックス型をABSで3Dプリンタにより直接生産(DDM:Direct Digital Manufacturing)することでした」。相談した先は丸紅情報システムズ(MSYS)だ。

巴バルブは自社のバルブ新製品開発において設計のみをしており、試作鋳造はすべて外注している。その流れは「ワックス成形用型加工→ワックス成形→ロストワックス鋳造→切削仕上げ」だ。このなかの最初の工程であるワックス用金型を、ABSの素材を使って3Dプリンタでつくれないかと考えたのだ。MSYSは強度面、表面の粗さによりハードルが高いと判断。その代わり、新たな取り組みとして進言したのが、アメリカで事例があった「焼失中子」。これこそ日本でほとんど例のない新しい取り組みだった。

前代未聞の「焼失中子」、難航する実験先

セラミック鋳造は、金属型で成形したワックスの周りにセラミックをコーティング、高温で焼いて中のワックスを溶かして空洞をつくり、そこに金属を流し込み、冷却後セラミックを壊して製品を取り出していく。このワックスを3DプリンタによるABS製の焼失中子に置き換え、セラミック焼成と同時にABSを焼失させることで、同じように空洞ができて金属が流し込めるというわけだ。「さっそく鋳造実験を行うためにメーカーに相談しました。ところが、

日本国内でそうした取り組みをしたことのあるメーカーは見当たらず、すべて断られました。複数各国の外国鋳造メーカーにも当たってみましたが結果は同じでした」それでもあきらめなかった谷川氏による熱心な説得の末、とある外国鋳造メーカーが実験を引き受けてくれることになる。実験するに当たり、ABS焼失の際に出る発生ガスについて調査した結果、鋳造工場の環境では問題ないことがわかったという。

ABS中子の完全焼失に成功

さっそくバルブ本体のCADデータをFDM Fortus250mcで造形。この際、内部をハッチ状に粗くしたFDM独自の「スパース構造」で造形した。これにより強度を保ちながら焼失もしやすくなるからだ。ABSで造形した中子を、最終「ツリー」形状にして、セラミックコートを行った。「予備実験の際、ABSと周りのセラミックの熱膨張に差があったために、セラミックが割れてしまったことがありました。そこで、セラミックの層を増やしたり乾燥工程を工夫したりするなど職人的な経験を加えることで、強度のあるセラミック型にしていきました」あとは高温で焼いて中のABS中子が完全に燃えて無くなれば「焼失中子」は成功したといえる。焼成は少しずつ温度を上げていき、最終的には約1000度まで加熱する。ワックスであれば脱ろう工程で1時間ほどで完全に溶けるが、実験の結果、前工程までの条件によっても異なるが、ある時間を掛けることによってABSがきれいに焼失することがわかった。セラミック焼成後に金属を流し込む。セラミック型は割れることなく鋳造できた。この結果を受け、巴バルブは3Dプリンタ「Fortus360mc」の導入を決定する。ただ、鋳造品に従来と異なる寸法誤差があったことから、Fortus360mc導入後に実験を重ねて原因と対策を探っていく予定だ。

開発期間7割削減で新製品開発も可能に

「焼失中子」によって巴バルブはどう変わる可能性があるのだろうか。「実は、バタフライバルブというのは長い歴史があり、いろんなサイズの標準品がありますが、新製品は年に数品しか開発していません。その理由は、ワックス用の金型をつくるのに1ヶ月かかり、それを何回か修正改造するので、形状を決めるのに1年以上もかかってしまうからです。また、金型など開発にかかるコストも膨大で、それも新開発が少ない原因の1つでした」谷川氏らは、ABSによる「焼失中子」を使った場合の開発期間を試算する。結果は驚くべきものだった。「開発期間は現状から7割減って3割になることが予想されたのです。開発コストも大きく下がり、そうなれば今より頻繁に新製品を開発できるようになる。今まであまり手掛けていなかった特注品も受注でき、売り上げが増える可能性があります」「焼失中子」の実験成功を受け、巴バルブでは試作や量産に使う砂型鋳造への応用も考え始めている。砂型鋳造とは、合成木材などで製作した木型を砂の中に入れて押し固め、型を取り出した空洞に溶けた金属を流し、固まったら砂を壊して取り出すというやり方だ。巴バルブでは、最初の工程の木型の部分を、3Dプリンタでできないかというアイデアが出

ており、今後、砂型鋳造でも実験を開始し、さらなる改革、効率化を図っていく予定だ。「我々も役員もABS焼失中子の実験成功に驚いており、Fortus360mcの可能性に非常に期待が高まっています」と谷川氏と田中氏。3Dプリンタという新しい武器を手に、巴バルブは新たなステージに突入しようとしている。

巴バルブ株式会社 様

巴バルブ株式会社IQCグループ

谷川 健 氏Takeshi Tanigawa

グローバル開発

田中 友一朗 氏Yuichiro Tanaka

http://www.tomoevalve.com/

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3Dプリンティングの利点をフル活用矛盾した要望を「新しい形」で乗り越える

テーマは「斬新さと正確性の究極の両立」

日本の自動車産業の発展のために学生に「ものづくり育成の場 」を 与 えるべく2003年にスタートした全日本学生フォーミュラ大会は、今年で12回目を迎える。ガ

ソリンエンジンクラスには国内のほか、中国、タイ、インドなどアジア各国からも集まり、実に88チームが参加した。丸紅情報システムズのMSYS生産による協賛は今年で4年目を迎え、これまでに2校を支援し、設計支援から3Dプリンタによるプリントを行ってきたが、今回は3校を加えて計5校を支援。そのなかの1つが東海大学である。今回の東海大学の車両開発のテーマは「斬新さと正確性の究極の両立」。注目した部品は、複数の気筒に空気を均等に供給する吸気用サージタンクと、ガソリンを吸入空気に霧状に噴射するインジェクターパイプである。これら2つのパーツの実現を後押ししたのが「V型2気筒エンジン縦置きレイアウト」。これにより車両中央に重量を集中化、チェーンからシャフトドライブ化が可能になり、エンジンも高出力ながらフラットトルク(回転の安定化)を目指した。毎年のように縦置きレイアウトに挑戦するが、様々な技術的な障害で断念せざるを得なかった。だが今年はついに実現させる。そのため東海大学にとって、MSYS生産の支援はまさに渡りに船だった。

3Dプリンタだからできた「自由な形」

まず、吸気用サージタンクに取りかかる。学生フォーミュラには車両規定があり、ある一定のサイズ内につくることが義務付けられている。そのため、サージタンクの設置空間も限られている。その一方で、予備実験で求められた最適容量の8リッターは確保したい。そこで3Dプリンタで造形することを前提に、従来の手加工によるCFRPでは出来なかった自由な形で設計したところ、矛盾する2つのことを両立できる形にたどり着く。「スペースの節約と十分な長さを両立させるために、サージタンクの中にディフューザーを内蔵し、カールファンネル(通風筒)と一体化させました」と木田将寛氏。また、流体力学シミュレーションも行っており、内部空気の流れを最適化。今年はリアウイングを付けることになったことから、サージタンクが空気の流れを妨げないように流線形にデザインしている。ガソリンを噴霧するインジェクターパイプは、タンクとエンジンのレイアウトの関係で曲がった管にする必要があり、3Dプリンタの利点である、加工に制限されない、高い設計の自由度を生かして3次元的に曲がったパイプで設計された。なお、インジェクターパイプは黒い色の「ナイロン12」という新素材を使用。これは、柔軟性があって衝撃的な強度に強い素材で、すぐれた耐薬品性ももっている。金属部品のネジを入れたり、ガソリンが中を通ることからこの素材が使われた。

今年はカーボンモノコックボディとフロント・リアウイングを初採用。東海大学で初の日本大会総合優勝を目指す。

全日本学生フォーミュラ大会 東海大学 様

東海大学 Tokai Formula Club 2014年度参戦プロジェクトプロジェクトリーダー

奈良 祥太朗 氏Shotaro Nara

吸気担当

木田 将寛 氏Masahiro Kida

奈良祥太朗氏と木田将寛氏

インジェクターパイプ吸気用サージタンク

URL http://www.marubeni-sys.com/de/3d_modeling/

• 射出成形、ブロー成形、真空成形の型 • パルプモールディング型• ハイドロプレスフォーミング型 • 砂型鋳造パターン• CFRP成形型の溶解コア • 3次元計測用治具• トリミングガイド、ドリルガイド治具• 塗装などロボット向けティーチング用モデルの保持治具

• 1台~少量生産販売製品• 生産ロボットのアーム先端樹脂部品、カバー類• カスタムメイド製品、アフターパーツ

• 在庫切れ補修交換部品• 美術品・工芸品

• 実動機能試験用樹脂製品・部品(耐荷重、耐熱、耐薬品)• 風洞実験模型     • 市場調査用パイロット製品

治工具・型の生産

最終製品・部品の生産

研究開発用製品・部品の生産

主なサービス利用用途

3Dプリンタ「FORTUS」による造形出力サービス長年の業界経験とトップリセラーとしての知見から、

お客様の業務に応じた「設計コンサルティング」を提供します。

「1個だけの製品・治工具・型を作りたい」「教育・研究用に1個だけ樹脂パーツがほしい」「カスタムメイド製品を作って販売したい」など、お客様のご要望にお応えします。

汎用ABS

ABS(生体適合)

ABS(半透明)

ABS(帯電防止)

PC-ABS PC(ポリカーボネート)

PC(生体適合)

ULTEM*9085

NYLON12

PPSF/PPSU(ポリフェニルサルフォン)

汎用ABS

ABS(生体適合)

ABS(半透明)

ABS(帯電防止)

PC-ABS PC(ポリカーボネート)

PC(生体適合)

ULTEM*9085

NYLON12

PPSF/PPSU(ポリフェニルサルフォン)

製造業・学校などのお客様

MSYSオンデマンド生産サービス

小ロット部品がほしい!

生産に適した設計コンサルティングも提供

部品を

納品

CADデータを入稿

*ULTEM SABICイノベーティブプラスチック社(SABIC Innovative Plastics IP BV)の商標です。

丸紅情報 3Dプリンタ

そのようなお客様もご相談下さい!MSYSオンデマンド生産サービスは

「解決力」が違います!!

3Dプリンタで実用品や治工具をすぐに作りたい!

…でも、良い形状や材料の選び方がわからない……。

造形事例:インジェクターパイプ

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 アメリカで見て感じた「3DプリンティングとDDM」の 定着とさらなる拡大 日本でも製造産業のみならず、医療から建築、教育や個人消費者分野まで「ブーム」とも言える急速な発展と拡大をしている3Dプリンティング。一方、「欧米が進んでいて日本は遅れている」「このままでは日本は取り残される」という声を聞くことも多い。筆者は国内で3DプリンティングとDDM(Direct Digital Manufacturing、3Dデータから3Dプリンタを使い機能部品の直接生産)の新規用途開発を行っている立場から、欧米の「いま」を知るためにアメリカに行き、見て感じたことを通じて、日本の「これから」について考えてみたい。 2014年4月6~10日、アメリカ アリゾナ州ツーソンにてAdditive Manufacturing Users Group, Inc.が主催する展示講演会「AMUG2014」が開催され、筆者も参加した。AMUGの母体組織は20年以上の歴史があり、全てのAdditive Manufacturing装置所有者と利用者に対し、業界をけん引する方々による最新のアイデアと投資対効果の高いソリューションを提供することを目的に毎年1回AMUGを開催している。今回はアメリカだけでなく、欧州、アジア含め総勢約600名の参加(内初回参加275名)と昨年の倍近くになり、世界的な3Dプリンティングの成長を反映して大変盛況であった。まず感じたことは、最新動向として「過熱ブーム」は既に終わり、America Makes(前NAMII)に見られるような具体的DDM活用研究実践が本格化し、それに必要な工業規格の制定も着実に進めており、3Dプリンティングの普及拡大が明確となっていた。同時に3Dプリンタや材料だけでなく、前工程のデータ作成に従来のCAD以外の解析最適化手法、CG、3Dスキャニングの活用、後工程のサポート除去、2次加工の新技術、材料が活発に開発され、金属系、樹脂系3Dプリンティングの用途が拡大していた。また、DDM活用用途は、新しいものを探すというより、成立したものを拡大深化させる傾向が見られた。これらについては、筆者の知る範囲ではドイツを中心とした欧州でもほぼ同じ傾向である。

 「使えるか?」ではなく「使うためにどうするか」 創造こそが産業の源 現地で講演を聞いたり、個別に参加者と話したりして感じたことは、欧米先進国は製造産業の空洞化、雇用の減少、鉱物資源や環境保護への対策など抱えている問題は日本と大きく違わないが、それらを解決するのは、効率改善やコストダウンより、「人のアイデアや創造」であるというシンプルな「共通認識」のようなものがあり、それが「産官学」で協力し、新たなものづくりの主導権を握ろうとする流れにつながっているのではないかということである。その「創造」を「モノ」にしたり、ビジネスにしたりする「道具」や「きっかけ」の1つとして3Dプリンティングが「使えるか?」ということより、「使うためにどうするか」という考えを基に、研究開発や技術改善を進めているとみられる。つまり、現状使える3Dプリンタや材料には、利点もあるがすぐに解決しない品質、時間、コストの欠点もあることを理解した上で、利点を活かし、欠点は他の工法で補えば良いという、合理的で現実的な方向に進んでいるとも言えるのではないだろうか。例えば、無線操縦による小型飛行体(UAV)の機体は、FDM(樹脂熱溶融積層法)の3Dプリンタで作ることにより、中空リブ構造などの構造体が短時間ででき、加えてコンピュータによる解析で最適な形状と重量の機体を作り、これまでにないUAVを「創造」していた。また、金属の配管部品や熱交換器でも、従来では製造がほぼ不可能な複雑3次元形状をコンピュータで最適化し、そのまま3Dプリンタで生産、使用する例が見られた。アメリカ大手航空機エンジンメーカーは新型エンジンに、従来20部品の組み立てで構成されていた燃料噴射ノズルを軽量1ピースの3Dプリンティング部品に置き換えるため、その材料から仕上げ加工、品質管理までを自社で研究開発している事例が発表されていた。このように、3Dプリンタと材料を適材適所で使いこなすだけでなく、研磨、塗装、メッキなどの2次加工を組み合わせる「技術」を自社で開発し、その強みをビジネスに活かす動きも多く見られた。工場見学をさせていただいたSolid Concept社では、人が行けない湖の深部の動画を撮影するための遠隔操縦小型潜水艇を、胴体

はFDMによるABS部品に研磨塗装したもの、透明部は光造形をマスターにしたウレタン注型、羽は樹脂粉末焼結、電子部品のケースは耐熱性や難燃性に優れたFDM ULTEM9085※で作っていた。このような使い方は他でも多く見られ、映画などの特殊効果やコスチュームを専門にデザイン製造するLegacy Effect社も多種の3Dプリンタと、3Dスキャナ、CGソフトウエアを駆使し、さらに塗装、縫製などの「人の手」をうまく組み合わせることで、従来にない短期間で、見た目に優れ、かつ実際に動いたり、人が着たりできる装置を多数生み出し、これがアメリカの映画、TV産業に大きく貢献しているとのことであった。このような部品だけでなく、「情報伝達」のためのモノも多く見られた。たとえばPolyjet(光硬化性樹脂インクジェット法)プリンタの最新機種であるStratasys Objet500 Connex3が今年初めに発売となったが、これは最多3種類の異なる性質や色のアクリル系光硬化性樹脂を掛け合わせて多色のモデルを1回で作ることが出来る。その利点を早速利用した例として、人体のCTやMRI画像からつくられる骨や内臓の内部形状の3次元CGから、構造がわかりやすいように筋肉や腱を別の色にして、足の人体構造をより正しく伝えられる模型や、複雑な血管まで再現した触れる心臓模型を作った例の展示があった。また、多数のタービンで構成されるジェットエンジンの仕組みを立体的に見せることが出来る縮尺実動模型をFDMで作ったものが注目を集めていた。ここで特筆すべき点は、このようなモノを作るために、まず適切な3次元データを作れるITツール(スキャナやソフトウエア)と技能に加え、表面を平滑透明にしたり、スムースに動かしたりするために必要な仕上げの技術と技能も重要ということである。最後に、「ものづくりのための道具」を作るDDMも進化拡大していた。複雑曲面形状の製品に正確な位置と向きにドリル加工するための治具をFDMの新樹脂材料NYLON12(ナイロン12)の耐衝撃性、柔軟性を活かして作った例、または試作や少量成形用として、樹脂射出成形、ブロー成形の簡易型をPolyjetのデジタルABSライク樹脂で作った例などが見られた。

 日本の「これから」 2014年2月に、経済産業省のウエブサイトで、3Dプリンタが生み出す付加価値と、今後のものづくりの方向性を考察した「新ものづくり研究会」の報告書が公開され、ダウンロードできるようになった。3Dプリンティングに関する世界の概況から日本の現状、これからの方向性や課題などが簡潔にまとめられており、大変参考になる資料である。その中で、全世界での3Dプリンティングがもたらす経済波及効果は2020年で約21.8兆円と試算され、大きな可能性があり、特に日本においては、最適3次元経路冷却水管をもつ樹脂射出成形金型などのものづくりプロセスの革新、航空機や人工骨など複雑形状の少量プロダクトの革新、個人を含めた幅広いものづくりツールへの発展などが示され、国産の鋳造砂型と金属の3Dプリンタ開発を目的とした「技術研究組合次世代3D積層造形技術総合開発機構(TRAFAM)」が設立された。当然3Dプリンタや材料の開発が必要なのは言うまでもないが、日本には既に優れた人材、コンピューティング技術、光学技術、化学技術、ロボット技術、そして何よりも切削や塗装などの高い技術や技能があり、それらを産官学が連携して3Dプリンティングと組み合わせることで、国内産業だけではなく、世界の3Dプリンティング産業の発展に寄与し、経済効果を生むことにつながるのではないだろうか。つまり「使えるか?」ではなく「使うためにどうするか」への転換が日本でも必要であると考える。同時に異業種からの参入や新たな才能や発想を持った方々、子供から高齢者まで幅広く「創造とものづくりに関わる人」を増やすことは、3Dプリンティングの重要な役割の一つである。本誌「ものづくり革命」でご紹介した国内の3Dプリンティング、DDM活用事例はごく一部であり、多くの方々が既にビジネスや教育に活用されており、欧米に遅れているとは一概に言えないが、足りない部分が多いのも事実である。筆者もこれまで以上に欧米の動向を入手、参考にしながら、「ものづくり革命」に微力ながら貢献できるよう、お客様やご協力いただける皆様と共に3DプリンティングとDDMの用途・技術開発に努めていく所存である。

※ULTEM9085は、SABIC Innovative Plastics IP BVの商標です。

「3DプリンティングとDDM」欧米の「いま」と日本の 「これから」|海 |外 |最 |新 |事 |情 |

FDMによるマルチコプター    FDMによる中空リブ構造主翼     金属3Dプリンタによる複雑配管部品    3Dプリンティングによる小型潜水艇  Connex3による脚の可視化模型     Connex3による触れる心臓模型   FDMによる実動ジェットエンジン模型   FDM NYLON12によるドリルガイド

丸紅情報システムズ株式会社 製造ソリューション事業本部モデリングソリューション技術部 DDM推進課長

丸岡 浩幸

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Page 11: MONOZUKURI KAKUMEI ものづくり革命 · 2014-09-18 · monozukuri kakumei 3dプリンタ「使いこなし」の先駆者たちと事例 2014 ものづくり革命 人の入れない場所を探索せよ!

ストラタシス社製 3Dプリンタ充実のラインナップ 世界トップリセラーの丸紅情報システムズが提供します。

3Dプリンタの製品情報はこちら http://www.marubeni-sys.com/de/3d_modeling/

※1 出典 : Wohlers Report 2013 ※2 ULTEM9085は、SABICイノベーティブプラスチック社(SABIC Innovative Plastics IP BV)の商標です。

FORTUS900mc

FORTUS360mc-S

FORTUS360mc-L

FORTUS400mc-S

FORTUS400mc-L

FORTUS250mc

DimensionBST 1200es

DimensionSST 1200es

DimensionElite uPrint SEuPrint SE Plus Mojo

ABS Plus

ABS-M30PCPPSFPC-ABS

ULTEM※29085ABS-ESD7NYLON12

ABS-M30PCPC-ABSNYLON12

機種

ワークサイズ

材料

914×609×914 406×355×406 355×254×254 406×355×406 355×254×254 254×254×305 254×254×305 254×254×305 203×203×305 203×203×152 203×152×152 127×127×127

機種

ワークサイズ

材料

1000×800×500 490×390×200 342×342×200 255×252×200 340×340×200 255×252×200 294×192×148.6 234×192.6×148.6

Objet24Objet30ProObjet Eden260VObjet Eden350VObjet260Connex

Objet350Connex

Objet500Connex3

Objet500Connex2

Objet500Connex1Objet1000

Veroシリーズ(硬質樹脂)DurusWhite(PPライク)RGD525(高耐熱樹脂)Tangoシリーズ(ラバーライク)

RGD5160DM(ABSライク)デジタルマテリアル(複合樹脂)Fullcure720(硬質 半透明)med610(医療認可樹脂)

Veroシリーズ(硬質樹脂)DurusWhite(PPライク)RGD525(高耐熱樹脂)

Tangoシリーズ(ラバーライク)Endur(PPライク)

RGD5160DM(ABSライク)Fullcure720(硬質 半透明)med610(医療認可樹脂)Endur(PPライク)

Veroシリーズ(硬質樹脂)DurusWhite(PPライク)RGD525(高耐熱樹脂)※Objet24はVeroWhitePlusのみ

F DM樹脂 P o l y j e t 樹脂

FDMFDM

PolyjetPolyjet ストラタシス社は、3Dプリンタの世界No.1シェア※1を誇るメーカーです。

そのストラタシス社から丸紅情報システムズは世界トップリセラーに認められました。

耐久性や耐熱性などの特性に優れたリアル・プラスチックで造形が可能なFDMシリーズと、

高精細な造形が可能なPolyjetシリーズで、現場の多様なニーズにお応えしています。

丸紅情報システムズは、あなたのものづくりを強力にサポートする、最適な3Dプリンティングソリューションを提供します。

FORTUSシリーズ

Objet1000Objet1000 Connexシリーズ Edenシリーズ Desktop

Dimensionシリーズ uPrintシリーズ Mojo

丸紅情報 3Dプリンタ

※記載の製品名称等は、各メーカーの商標またはそれに準ずる登録を受けています。 ※記載の機能・仕様等は、改良のため予告なく変更することがございます。

※Connex1はデジタルマテリアルには対応しません

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Polyjetシステムは、透明・PPライク・ラバーライク・ABSライクなど多様な物性や色の異なる材料を混合させることで、数百種類以上の複合材料を造形材料に使用できます。また、マルチカラ―対応のシステムでは、数百通りの色彩表現が可能です。高精細でより完成品に近い質感のモデルを造形することができます。

Polyjetシステム使用材料の紹介FDMシステムは、耐久性・耐熱性など強度のある熱可塑性の樹脂やエンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチックを造形材料に使用できます。試作などの概念モデル・機能テストの作成だけではなく、治工具・検具・簡易型といった生産設備や実製品の製造など、幅広い用途で活用できます。

記載の数値はASTM試験による結果です。JIS試験については一部実施しておりますので、別途お問い合せ下さい。※ ULTEM9085は、SABICイノベーティブプラスチック社(SABIC Innovative Plastics IP BV)の商標です。 ※ 数値はASTM試験による結果です。

FDMシステム使用材料の紹介PC-ABS

特長 : 高衝撃強度材料カラー : ●引張強さ : 41MPa 曲げ強さ : 68MPa アイゾット衝撃〔ノッチ付〕 : 196J/m耐熱性(低0.45MPa) : 110℃

ULTEM※ 9085

特長 : 耐熱、難燃(米連邦航空局認証)材料カラー : ●●引張強さ : 71.64MPa 曲げ強さ : 115.1MPa アイゾット衝撃〔ノッチ付〕 : 106J/m耐熱性(低0.45MPa) : 153℃

PPSF/PPSU(ポリフェニルサルフォン)

特長 : 耐熱、耐化学薬品材料カラー : ●引張強さ : 55MPa 曲げ強さ : 110MPa アイゾット衝撃〔ノッチ付〕 : 58.73J/m耐熱性(低0.45MPa) : 189℃

ABSPlus

特長 : 汎用ABS材料材料カラー : ●●●●●●●●●引張強さ : 36MPa曲げ強さ : 52MPaアイゾット衝撃〔ノッチ付〕 : 96J/m耐熱性(低0.45MPa) : 96℃

ABSi

特長 : 半透明材料材料カラー : ●●●引張強さ : 37MPa 曲げ強さ : 62MPa アイゾット衝撃〔ノッチ付〕 : 96J/m耐熱性(低0.45MPa) : 87℃

PC(ポリカーボネート)

特長 : 高引張り強度材料カラー : ●引張強さ : 68MPa 曲げ強さ : 104MPa アイゾット衝撃〔ノッチ付〕 : 53J/m耐熱性(低0.45MPa) : 138℃

ABS-ESD7

特長 : 静電気帯電防止材料材料カラー : ●引張強さ : 36MPa 曲げ強さ : 61MPa アイゾット衝撃〔ノッチ付〕 : 111J/m耐熱性(低0.45MPa) : 96℃

ABS-M30i

特長 : 生体適合材料(ISO-10993)材料カラー : ●引張強さ : 36MPa 曲げ強さ : 61MPa アイゾット衝撃〔ノッチ付〕 : 139J/m耐熱性(低0.45MPa) : 96℃

PC-ISO

特長 : 生体適合材料(ISO-10993)材料カラー : ●●引張強さ : 57MPa 曲げ強さ : 90MPa アイゾット衝撃〔ノッチ付〕 : 86J/m耐熱性(低0.45MPa) : 133℃

ABS-M30

特長 : 汎用ABS材料材料カラー : ●●●●●●引張強さ : 36MPa 曲げ強さ : 61MPa アイゾット衝撃〔ノッチ付〕 : 139J/m耐熱性(低0.45MPa) : 96℃

Vero White Plus(白)Vero Gray(グレー)Vero Black(黒)

Endur(白)Vero Blue(青) Durus White(白)High Temperature(白)

特長

モデルの写真

対応機種Objet24

Objet30Pro

EDENシリーズ

Conenexシリーズ

引張り強さ曲げ強さ

アイゾット衝撃(ノッチ付)ショア硬度引裂強さ圧縮永久歪

積層厚(mm)

0.028

0.016

0.028

HQモード:0.016HSモード:0.030

HQモード:0.016HSモード:0.030DMモード:0.030(材料混合モード)

ポリプロピレン(PP)ライク樹脂色付き硬性樹脂 耐熱樹脂

耐熱性※

低 0.45MPa

65Mpa110Mpa

50℃

50℃

30J/mScale D86

ーー

60Mpa70Mpa

50℃

50℃

30J/mScale D86

ーー

30Mpa40Mpa

42℃

34℃

50J/mScale D78

ーー

45Mpa59Mpa

54℃

50℃

35J/mScale D84

ーー

80Mpa130Mpa

67℃熱処理硬化後の耐熱性:80

57℃

16J/mScale D88

ーー

高 1.82MPa

Vero Whiteのみ

Tango Black Plus(黒)Tango Plus(半透明) Tango Black(黒) Tango Gray(グレー) RGD5160-DM(緑)

(RGD515 & RGD535)

特長

モデルの写真

対応機種Objet24

Objet30Pro

EDENシリーズ

Conenexシリーズ

引張り強さ曲げ強さ

アイゾット衝撃(ノッチ付)ショア硬度引裂強さ圧縮永久歪

積層厚(mm)

0.028

0.016

0.028

HQモード:0.016HSモード:0.030

HQモード:0.016HSモード:0.030DMモード:0.030(材料混合モード)

ABSライクデジタルマテリアルラバーライク樹脂

耐熱性※

低 0.45MPa

1.5Mpaー

ーScale A284Kg/cm5%

2.4Mpaー

ーScale A625Kg/cm1.5%

5Mpaー

ーScale A7712Kg/cm1.5%

66Mpa75Mpa

68℃熱処理硬化後の耐熱性:80

68℃熱処理硬化後の耐熱性:80

80J/mScale D87

ーー

高 1.82MPa

0.030のみ○

0.030のみ ○

○ ○

0.030のみ

VeroClear(透明)MED610

(医用認可 透明)FullCure720

(硬質 黄半透明)

透明系樹脂

65Mpa110Mpa

50℃

50℃

30J/mScale D86

ーー

65Mpa110Mpa

50℃

50℃

30J/mScale D86

ーー

上記は2014年8月現在の情報です。最新情報は、当社WEBサイトでご確認いただけます   ■3Dプリンタ製品サイト http://www.marubeni-sys.com/de/3d_modeling/ 「材料一覧」のコーナーをご覧ください

NYLON12

特長 : 高衝撃強度、高疲労耐性材料カラー : ●引張強さ : 48MPa 曲げ強さ : 69MPa アイゾット衝撃〔ノッチ付〕 : 200J/m耐熱性(低0.45MPa) : 97℃