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小学校高学年を対象としたプログラミングに興味を持たせる教材の作成
~スタディーノとアーテックブロックを用いて~Creation of Teaching Materials to Bring up Children Interested in Programming
~ Using Studuino and Artec Block ~
テーマ:次世代教育・学習環境のデザイン
指導教員:松本 章代
教養学部 情報科学科
1357251 三浦 健吾
1. 研究背景現代の小学生は,男女問わずほとんどの児童がイン
ターネットで調べものをしたり,動画共有サイトの利用やネットゲームを利用している.学習ソフトを利用して勉強する児童もいる [1].一方,海外では 5~7歳の頃からのプログラミング教育の必修化が進み,幼少期からプログラミングに触れる児童が増えている [2].子どもがプログラミングを学ぶことには,論理的思考力を伸ばすことにつながるというメリットがある.日本では 2020年から小学校でプログラミング教育の必修化を検討すると決定した [3].パソコンはインターネットで調べものをしたり,動画共有サイトを利用したりするだけではなく,プログラミングのように何かを作ったり動かしたりすることのできる道具であることを児童に知ってもらいたい.そこで本研究では,ロボットプログラミングを利用
する.ロボットプログラミングはロボットを組み立て,それをプログラミングで制御することを体験することで,仕組みを考え,工夫し,完成させ,動かすことを楽しみながら学べる.中でもレゴブロックとアーテックブロックは,ブロックプログラミングの代表的な存在である.レゴブロックのマインドストームは対象年齢が高く,小学生が扱うには難しい.対しアーテックブロックとスタディーノは,手軽かつ自在に組み立てられるブロックとコンピュータ基板を使い,モノ作りの面白さ・楽しさを伝える,小学生向けのもの [4]であったので選定した.
2. 研究目的本研究で作成する教材は,ロボットの組み立て方,そ
のロボットに対するプログラムの組み立て方を動画にしたものである.1対多の授業形式の場合,小学生が周りについていけなかったり,説明を聞き逃してしまう場合がある.動画は早戻しや早送りなど個人のペースに合わせることができる.動画は動画共有サイトで閲覧するのではなく,松本研究室で開催するイベントにおいて利用することを想定している.イベントでは小学校高学年に動画を見ながらロボットの組み立てとプログラミングを体験してもらう.そしてプログラミングに対して興味を持たせることを目指す.イベント体験後は,児童にプログラミングに興味を持ったか,プログラミングをこれから学んでいきたくなったかを調査する.本研究は小学生高学年の興味を惹きつけ,イベント後もプログラミングの知識を得たいと思っても
らえる教材(動画・補足資料)を作成することが目的である.
3. プログラミング教材について3. 1 教材に利用したソフトウェア株式会社アーテックが開発した Studuino Software
というアプリケーションの中に含まれる,ブロックプログラミング環境を使用する.ブロックを組み立てる感覚でプログラミングを行う.児童が楽しくプログラミングを学べるようなシステムになっている.
3. 2 教材の概要あらかじめ設計したロボットの作成手順とプログラ
ミングを動画にする.ブロックはアーテックブロックを用いる.パソコン上で作成したプログラムを小型の基板スタディーノに転送し,モーターや LEDを動かすという仕組みである.動画作成では,動画を見ながら児童ができるだけ一人でブロックを組み立て,プログラミングできるように配慮した.動画だけでは伝わらない部分は補足資料を作成し対
応した.補足資料にはスタディーノとコードの繋げ方,プログラミングの転送の仕方やファイルの保存の仕方など動画では至らない部分を資料として作成した.さらにアーテックブロックについて知らない児童が多いと考えるので,簡単にブロックやスタディーノの説明も加えている.
3. 3 イベントで制作したロボットロボットは児童の身近にあり,良く目にするものを
選定した.教材はイベントでの使用を想定しているが,この教材によって児童がプログラミングを学びたいとプログラミングに対し向上心を持つような作品を目指し,選定した.ロボットは 6種類であり 1.動く魚 2.踏切 3.風車 4.犬小屋 5.車 6.家の 6つである. 図 1は風車のロボット,図 2は風車を動かすプログラムの例である.
4. イベント開催プログラミング体験教室を開催するために,本学泉
キャンパス近隣にある泉松陵小学校・向陽台小学校・市名坂小学校・七北田小学校の 4~6年生全児童(計 1200
名)にチラシを配布した.開催日は 1月 21日(土),1月 28日(土),2月 4日(土)で 1日 3クール(1
クール 110分 3組)行った. 20組の親子が参加した.
図 1. 風車のロボットの例
図 2. 風車を動かすプログラムの例
5. アンケート結果イベントに参加した児童 20名を対象にアンケート
を行った.アンケート結果を表 1に記す.表 1の Q1
は『ブロックの組み立ては楽しめたか』,Q2は『アーテックブロックに興味を持ったか』,Q3は『動画を見てスムーズに組み立てられたか』,Q4は『今後,アーテックブロックを更に利用してみたいか』,Q5は『プログラミングをして,ロボットを動かすことは楽しめたか』,Q6は『プログラミングに興味を持ったか』,Q7は『動画を見てスムーズにプログラミングできたか』,Q8は『今後プログラミングをさらにやってみたいと思ったか』である.評価は aは『はい』,bは『どちらかといえばはい』,cは『どちらでもない』,dは『どちらかといえばいいえ』,eは『いいえ』である.表 2のQ1~Q4までがブロックの組み立てのアンケー
トで,Q5~Q8までがプログラミングのアンケート結果になる.
6. 考察この結果を見ると,Q1とQ5から児童がイベントを
楽しんだことが分かる.Q6のプログラミングに興味を持ったかという質問に対して,『はい』『どちらかというとはい』と回答した児童が 20名いる.プログラミ
表 1. アンケート結果
単位:人
a b c d e a b c d e
Q1 20 0 0 0 0 Q5 20 0 0 0 0
Q2 19 1 0 0 0 Q6 19 1 0 0 0
Q3 11 8 1 0 0 Q7 12 7 1 0 0
Q4 16 3 1 0 0 Q8 19 1 0 0 0
ングを体験する前にプログラム・プログラミングについて知っている,または聞いたことがあるか聞いてみたところプログラムという言葉を聞いたことある児童は 20名中 8名,プログラミングという言葉を聞いたことある児童は 20名中 4名であった.プログラミングを知らなかったイベント前と比べ,イベント後は全員がプログラミングを知り,興味を持ってくれた.さらに Q8の今後もプログラミングをしてみたいという質問に 20名全員が『はい』『どちらかといえばはい』と回答した.この回答からの児童がプログラミングに対して意欲を持ったことがわかる.Q3とQ7の動画を見てスムーズにブロックを組み立
てられた,プログラミングできたという質問に対し,『はい』『どちらかといえばはい』と回答した児童が 19名いる.Q1~Q8の他にQ9『動画を見ながら自分のペースで進めることは,学校の授業のようにみんなと同じペースで進めていくのと比べてどちらが良いか』という質問をしたところ 20名中 18名が『動画を見ながら自分のペースでする方』と回答し,2名は『どちらでもない』と回答した.『どちらでもない』と回答した 2
名の児童は『どっちもどっちだから』『みんなとやると教え合ったりできるし,自分のペースでやると焦ることなく進むから』と回答した.『動画を見ながら自分のペースでする方』と回答した 18名の理由としては,多くの児童が『動画は自分のペースでできて,急がなくていいから』と回答した.20名中 18名が『自分のペースでやった方が良い』と回答した結果から,児童にとって自分のペースで進められる動画教材は使用しやすいと考えられる.
7. まとめ本研究では児童がプログラミングに興味を持つよう
な教材(動画・補足資料)を作成した.イベントを開催し,実際にこの教材を利用して 20組の親子がプログラミングを体験した.このイベントによりプログラミングを知らなかった児童がプログラミングを知り,興味を持つという結果が得られた.さらに作り方の動画を提供したことは,自分のペースで作業を進めることができると好評であった.
参考文献[1] ベネッセ教育総合研究所:子どもの ICT利用実態調査 ,http://berd.benesse.jp/berd/center/
open/report/ict_riyou/hon/hon2_1.html
(2008)[2] Up to you:子供のプログラミング教育が人気,
http://up-to-you.me/article/141 (2014)[3] 文 部 科 学 省:小 学 校 段 階 に お け る プロ グ ラ ミ ン グ 教 育 の 在 り 方 に つ い て ,http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/
chousa/shotou/122/attach/1372525.htm
(2016)[4] 宇野泰正,塩野禎隆:スタディーノではじめるうきうきロボットプログラミング,日経BP(2014)