MAMMOMAT Revelationを導入─ 診療放射線技師の乳腺診断 ......MAMMOMAT...

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MAMMOMAT Revelation を導入─ 診療放射線技師の乳腺診断検査への取り組み 藤森病院はMAMMOMAT Revelation を導入され、トモシンセシスを積極的に運用されている御施設です。今回は診療放射線 技師の視点からトモシンセシスの必要性、運用性といったリアルな現場についてお聞きしました。 Q: 藤森病院様は松本駅から徒歩圏内という立地もあるからでしょ うか、いつも多くの患者さんがいらっしゃいますね。 A: 藤森病院は病床数100床未満の 病院ですが、内科、外科など主要な 診療科がそろい、地域のかかりつ け医として患者さんには通院しや すい病院だと思います。乳腺に関 しては外科医が診察を行っており、 乳腺専門医も外部より診察に来ら れます。 Q: 今回トモシンセシスを導入いた だきましたが、当初よりトモシンセシスの導入はご検討されてい たのですか? A: 装置の更新にあたり、トモシンセシスの導入についてはとても 悩みました。話で聞いていても未知の検査でしたので、「トモシン セシスの追加撮影で検査時間が増え、今までよりワークフローが 悪くなってしまうのではないか」「被ばくが増え、基準値内で撮影 できないのではないか」と心配もありました。 Q: その心配の中、トモシンセシスの導入に踏みきれた理由は何だっ たのでしょう? A: 画像デモで色々な症例を見ていくと2D 画像でははっきりしない けれどトモシンセシスなら病変がわかりやすく診断しやすい症例や、 FAD の所見が乳腺の重なりだとわかる症例などに出会い、やはり トモシンセシスは必要だと考えるようになりました。乳腺エコーを 行っているのは私たち技師なので、この点は強く実感しています。 特に乳腺の多い方については、マンモグラフィでは認識できなかっ た乳がんが、エコーでは見つかったというケースもあります。そこ がマンモグラフィの弱点だと思うのですが、トモシンセシスを追加 することにより、見つけられる可能性がとても高くなると感じました。 Q: エコー所見との比較も普段から行われている分、トモシンセシ スの診断能力向上への可能性を感じていただけたのですね。 A: そうですね。被ばくの点が心配でしたが、今までの Mo/Mo Mo/Rh ではなくW/Rh で撮影できるので抑えられますし、更に MAMMOMAT Revelation には、より被ばく線量が抑えられるグリッ ドレス撮影の PRIME 機能も搭載されているので、患者さんに優し い装置だと感じました。この機能を紹介された時点で健診で使用 するイメージがわきました。 Q: ワークフローについてはいかがでしたか? A:2D 撮影だけに比べると、撮影が増えるので検査時間は長くなり ます。そこで患者さんの動線を考えてみました。当院では健診(胸 部単純撮影+マンモグラフィ撮影)の割合が多く、また二次精査で 元の画像がないケース、経過観察を行うケースなどマンモグラフィ と超音波検査の両方を行うことが多くあります。そこで、マンモグ ラフィ室に一般撮影(胸部)と超音波診断装置を同室に設置し、患 者さんの着替えの時間、検査ごとの部屋の移動時間を削減、全体 的な時間の短縮が図れるよう考えました。とはいっても限られた スペースですので、一部屋に効率的に収まるよう何度も配置を考 えました。 Q: 一部屋で複数の検査が完了する、また同じ技師さんが担当して くださるというのは患者さんの身体的、心理的負担の軽減にも繋 がりそうですね。実際どのような流れで検査されているのでしょうか。 A: 外来患者さんは全件、トモシンセシスを撮影しています。健診 の方はオプションでトモシンセシスを選択できるようになっていま すが、だいたい半数の方がトモシンセシスを選択されます。一人 当たりの検査時間は「左右2方向トモシンセシス有り」で10分かか らない程度です。マンモグラフィと超音波の両方の検査がある方 はそのまま続けて超音波検査という流れですが、合わせて検査が できるのでラクだと喜んでくださいます。マンモグラフィで待って、 超音波で待って、ということがないので待ち時間が短くなり、これ は患者さんにとって大きなメリットだと思います。 Q:トモシンセシスの検査数が多そうですね。実際にトモシンセシ スを行われてみた感想をお聞かせください。 A:MAMMOMAT Revelation 2D +トモシンセシスで30秒ほどかかり ますが、特に患者さんに長いと言われたことはありません。圧迫圧は 100N 以下を目安にしており 80N 前後が多いと思います。圧迫が強 すぎると痛みの原因になり、圧迫が弱すぎると動きによるボケや被 ばくが増えてしまうので必要以上の圧迫は避け、なおかつ圧迫不足 による被ばくの増加を避ける圧迫圧がこのくらいかなと思っています。 実際、 「前より痛くないです」という方が多くいらっしゃいます。圧迫板 が柔らかくしなることや撮影中の辛い息止めをしなくてよいことが検 査の負担を感じにくくしているのではないかと思っています。 Q: リラックスして検査をうけていただけているということですね。 A: はい。そういえば先日、撮影中に「あっ!動いちゃったかも」と言 う方がいらっしゃり焦りました。緊張してというのではなく、余裕の 関山 史織 技師 ある中での言葉でした。検査中に話しかけられたのも驚いたので すが、画像を確認するとボケもなく、話せるくらいの余裕の中でボ ケの無いしっかりとした画像が撮れるのだと思ったことを覚えてい ます。 導入当初は患者さんが動いてしまわないか心配でしたが、実際動 いてしまって再撮影したことも今のところありませんね。 Q: 声をかけられたのは驚きましたね。患者さんに対して色々な工 夫をトモシンセシスの中に取りいれられていることわかりました。 技師としての使い勝手はいかがですか。 A: デジタル装置になるとパネル自体は今までの CR 装置のときよ り大きくなるため、ポジショニングが今までと変わってしまって操 作しづらいという噂を聞いていました。しかしそんなことはなく、 私自身は今までとほぼ変わらない感覚で最初からポジショニング ができています。圧迫板もCR 装置の時と同じ大きさの物でトモシ ンセシスも撮影できるので違和感はないですね。 またデジタルの場合、モニタの操作が煩雑だと、撮影時に手間取っ てしまうと思ったのですが、簡潔でわかりやすく使いやすい点も良 いです。 Q: 気に入っていただけているようでこちらもうれしいです。当初 のご期待いただいていた診断能という点ではいかがでしょうか。 A: 当院では必ず担当技師がコメントを付けたレポートを作成して います。病変が疑われる場合にはレポートに所見があるスライス 画像を添付し矢印などでその位置がわかるようにして医師へ送り ます。読影時間は2D のみの場合と比べるとトモシンセシス有りの 方が枚数が増える分少しかかりますが、逆にこれは FAD なのか? 腫瘤なのか?乳腺の重なりなのか?など2D のみでは迷う所見もト モシンセシスを見れば一目瞭然で迷う時間が減りました。トモシ ンセシスの画像は見慣れるまでは戸惑うかもしれませんが、慣れ た今では導入当初よりも読影時間も短くなっていると思います。ト モシンセシスの画像で腫瘤などの位置とだいたいの深さがわかる ので超音波検査もスムーズに行うことができます。超音波でわか りにくい所見の場合迷うこともありますが2D のみではわからない 深さの情報があるので見逃しにくくなるのではないかと思います。 Q:トモシンセシスを導入されても、検査数が伸びないといった他 施設の悩みを耳にすることがあります。 A: 診療報酬点数が設定されていないという問題はあると思います 20206月時点)。ですが、導入して約一年、トモシンセシスを撮 影しなければ見逃していた乳がんを目の当たりにし、トモシンセ シスの有用性は確実に感じています。また精密検査をすると結局 何もないのだけれど、毎年マンモグラフィ検査で引っかかると不 安がられている方にも有用なものだと感じています。だからこそ、 健診ではトモシンセシスのパンフレットを作成して配布するなど 啓発活動を積極的に行っています。 各ご施設の事情も色々あるかと思いますが、運用可能な状況であ るなら是非前向きにとらえていただきたいと思います。 以上、藤森病院関山様にお話を伺いました。 単純に「装置を使う」ということにとどまらず、院内でメリットのあ る運用を色々考えられているのが印象的でした。 マンモグラフィと超音波の両方を行うからこそ見えるトモシンセシ スの有用性も聞かせていただくことができました。 関山様、長時間のインタビューにご対応いただきありがとうござ いました。 ©Siemens Healthcare K.K. 超音波検査 マンモグラフィ検査 胸部X 線撮影 (左から)放射線科 田中技師、関山技師、加藤技師 医療法人藤森医療財団 藤森病院 所在地 : 長野県松本市中央2-9-8 お話をおうかがいした先生 放射線科 関山 史織 技師 2020427日取材

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─MAMMOMAT Revelationを導入─診療放射線技師の乳腺診断検査への取り組み

藤森病院はMAMMOMAT Revelation を導入され、トモシンセシスを積極的に運用されている御施設です。今回は診療放射線技師の視点からトモシンセシスの必要性、運用性といったリアルな現場についてお聞きしました。

Q:藤森病院様は松本駅から徒歩圏内という立地もあるからでしょ

うか、いつも多くの患者さんがいらっしゃいますね。

A:藤森病院は病床数100床未満の

病院ですが、内科、外科など主要な

診療科がそろい、地域のかかりつ

け医として患者さんには通院しや

すい病院だと思います。乳腺に関

しては外科医が診察を行っており、

乳腺専門医も外部より診察に来ら

れます。

Q:今回トモシンセシスを導入いた

だきましたが、当初よりトモシンセシスの導入はご検討されてい

たのですか?

A:装置の更新にあたり、トモシンセシスの導入についてはとても

悩みました。話で聞いていても未知の検査でしたので、「トモシン

セシスの追加撮影で検査時間が増え、今までよりワークフローが

悪くなってしまうのではないか」「被ばくが増え、基準値内で撮影

できないのではないか」と心配もありました。

Q:その心配の中、トモシンセシスの導入に踏みきれた理由は何だっ

たのでしょう?

A:画像デモで色々な症例を見ていくと2D画像でははっきりしない

けれどトモシンセシスなら病変がわかりやすく診断しやすい症例や、

FADの所見が乳腺の重なりだとわかる症例などに出会い、やはり

トモシンセシスは必要だと考えるようになりました。乳腺エコーを

行っているのは私たち技師なので、この点は強く実感しています。

特に乳腺の多い方については、マンモグラフィでは認識できなかっ

た乳がんが、エコーでは見つかったというケースもあります。そこ

がマンモグラフィの弱点だと思うのですが、トモシンセシスを追加

することにより、見つけられる可能性がとても高くなると感じました。

Q:エコー所見との比較も普段から行われている分、トモシンセシ

スの診断能力向上への可能性を感じていただけたのですね。

A:そうですね。被ばくの点が心配でしたが、今までのMo/Moや

Mo/RhではなくW/Rhで撮影できるので抑えられますし、更に

MAMMOMAT Revelationには、より被ばく線量が抑えられるグリッ

ドレス撮影のPRIME機能も搭載されているので、患者さんに優し

い装置だと感じました。この機能を紹介された時点で健診で使用

するイメージがわきました。

Q:ワークフローについてはいかがでしたか?

A:2D撮影だけに比べると、撮影が増えるので検査時間は長くなり

ます。そこで患者さんの動線を考えてみました。当院では健診(胸

部単純撮影+マンモグラフィ撮影)の割合が多く、また二次精査で

元の画像がないケース、経過観察を行うケースなどマンモグラフィ

と超音波検査の両方を行うことが多くあります。そこで、マンモグ

ラフィ室に一般撮影(胸部)と超音波診断装置を同室に設置し、患

者さんの着替えの時間、検査ごとの部屋の移動時間を削減、全体

的な時間の短縮が図れるよう考えました。とはいっても限られた

スペースですので、一部屋に効率的に収まるよう何度も配置を考

えました。

Q:一部屋で複数の検査が完了する、また同じ技師さんが担当して

くださるというのは患者さんの身体的、心理的負担の軽減にも繋

がりそうですね。実際どのような流れで検査されているのでしょうか。

A:外来患者さんは全件、トモシンセシスを撮影しています。健診

の方はオプションでトモシンセシスを選択できるようになっていま

すが、だいたい半数の方がトモシンセシスを選択されます。一人

当たりの検査時間は「左右2方向トモシンセシス有り」で10分かか

らない程度です。マンモグラフィと超音波の両方の検査がある方

はそのまま続けて超音波検査という流れですが、合わせて検査が

できるのでラクだと喜んでくださいます。マンモグラフィで待って、

超音波で待って、ということがないので待ち時間が短くなり、これ

は患者さんにとって大きなメリットだと思います。

Q:トモシンセシスの検査数が多そうですね。実際にトモシンセシ

スを行われてみた感想をお聞かせください。

A:MAMMOMAT Revelationは2D+トモシンセシスで30秒ほどかかり

ますが、特に患者さんに長いと言われたことはありません。圧迫圧は

100N以下を目安にしており80N前後が多いと思います。圧迫が強

すぎると痛みの原因になり、圧迫が弱すぎると動きによるボケや被

ばくが増えてしまうので必要以上の圧迫は避け、なおかつ圧迫不足

による被ばくの増加を避ける圧迫圧がこのくらいかなと思っています。

実際、「前より痛くないです」という方が多くいらっしゃいます。圧迫板

が柔らかくしなることや撮影中の辛い息止めをしなくてよいことが検

査の負担を感じにくくしているのではないかと思っています。

Q:リラックスして検査をうけていただけているということですね。

A:はい。そういえば先日、撮影中に「あっ!動いちゃったかも」と言

う方がいらっしゃり焦りました。緊張してというのではなく、余裕の

関山 史織 技師

ある中での言葉でした。検査中に話しかけられたのも驚いたので

すが、画像を確認するとボケもなく、話せるくらいの余裕の中でボ

ケの無いしっかりとした画像が撮れるのだと思ったことを覚えてい

ます。

導入当初は患者さんが動いてしまわないか心配でしたが、実際動

いてしまって再撮影したことも今のところありませんね。

Q:声をかけられたのは驚きましたね。患者さんに対して色々な工

夫をトモシンセシスの中に取りいれられていることわかりました。

技師としての使い勝手はいかがですか。

A:デジタル装置になるとパネル自体は今までのCR装置のときよ

り大きくなるため、ポジショニングが今までと変わってしまって操

作しづらいという噂を聞いていました。しかしそんなことはなく、

私自身は今までとほぼ変わらない感覚で最初からポジショニング

ができています。圧迫板もCR装置の時と同じ大きさの物でトモシ

ンセシスも撮影できるので違和感はないですね。

またデジタルの場合、モニタの操作が煩雑だと、撮影時に手間取っ

てしまうと思ったのですが、簡潔でわかりやすく使いやすい点も良

いです。

Q:気に入っていただけているようでこちらもうれしいです。当初

のご期待いただいていた診断能という点ではいかがでしょうか。

A:当院では必ず担当技師がコメントを付けたレポートを作成して

います。病変が疑われる場合にはレポートに所見があるスライス

画像を添付し矢印などでその位置がわかるようにして医師へ送り

ます。読影時間は2Dのみの場合と比べるとトモシンセシス有りの

方が枚数が増える分少しかかりますが、逆にこれはFADなのか?

腫瘤なのか?乳腺の重なりなのか?など2Dのみでは迷う所見もト

モシンセシスを見れば一目瞭然で迷う時間が減りました。トモシ

ンセシスの画像は見慣れるまでは戸惑うかもしれませんが、慣れ

た今では導入当初よりも読影時間も短くなっていると思います。ト

モシンセシスの画像で腫瘤などの位置とだいたいの深さがわかる

ので超音波検査もスムーズに行うことができます。超音波でわか

りにくい所見の場合迷うこともありますが2Dのみではわからない

深さの情報があるので見逃しにくくなるのではないかと思います。

Q:トモシンセシスを導入されても、検査数が伸びないといった他

施設の悩みを耳にすることがあります。

A:診療報酬点数が設定されていないという問題はあると思います

(2020年6月時点)。ですが、導入して約一年、トモシンセシスを撮

影しなければ見逃していた乳がんを目の当たりにし、トモシンセ

シスの有用性は確実に感じています。また精密検査をすると結局

何もないのだけれど、毎年マンモグラフィ検査で引っかかると不

安がられている方にも有用なものだと感じています。だからこそ、

健診ではトモシンセシスのパンフレットを作成して配布するなど

啓発活動を積極的に行っています。

各ご施設の事情も色々あるかと思いますが、運用可能な状況であ

るなら是非前向きにとらえていただきたいと思います。

以上、藤森病院関山様にお話を伺いました。

単純に「装置を使う」ということにとどまらず、院内でメリットのあ

る運用を色々考えられているのが印象的でした。

マンモグラフィと超音波の両方を行うからこそ見えるトモシンセシ

スの有用性も聞かせていただくことができました。

関山様、長時間のインタビューにご対応いただきありがとうござ

いました。

©Siemens Healthcare K.K.

超音波検査 マンモグラフィ検査 胸部X線撮影

(左から)放射線科 田中技師、関山技師、加藤技師

医療法人藤森医療財団 藤森病院所在地 :長野県松本市中央2-9-8

お話をおうかがいした先生放射線科 関山 史織 技師

2020年4月27日取材