Makers:近未来のものづくり

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「数理の翼」大川セミナー2013で、数理科学が好きな高校生・中学生にお話した資料です。

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Makers: 近未来のものづくり

秋田純一(金沢大学)

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04/13/2023 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/

自己紹介 1970年、名古屋市生まれ 子供のころ:半田付け少年 高 1:フラクタルにかぶれる 高 2:数理の翼セミナー@富山に参加、衝撃を受ける 高 3:化学を志す 大学:数理の翼セミナーの仲間を求めて東京へ

セミナースタッフ、同窓会運営などがサークル活動 「三つ子の魂・・・」の通り、電子工学科へ

1995年:数理の翼の縁で、 2000年開学のデザイン・技術融合の新しい大学の策定委員に

2000年:その大学へ(公立はこだて未来大学) いろいろな分野に首をつっこむ(デザイン、福祉、都市工学、教育工学、環境問題、ロボット、人間工学)

2004年: 1期生とともに卒業して金沢へ 両者の境界・融合領域を専門に(根っからの工学部ではない)

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今日のお話の概要ここ数年、主にコンピュータ制御の工作機械やインターネット社会の進歩と普及を背景に、 18世紀の産業革命以来の産業構造の世界的な大きな変化が進行中しています。

これはMakers(メイカーズ )ムーブメントと呼ばれ、インターネット上の人々のつながりと、広い範囲の科学技術の成熟・融合がその裏付けとなり、真に人類の幸福をもたらす可能性を秘めています。

そして現在は、まさにその数百年に一度の転換点がどう進行する現場に出会える稀有なチャンスといえます。

この講義では、数理科学、工学、社会科学、経済学などの幅広い観点からこのMakersムーブメントを理解し、特に私の専門である半導体集積回路の役割やその進歩がもたらすものについて、考察を深めたいと思います。

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はじめるまえに・・・今日のお話は、「知識」を伝えるものではありませんこれを理解したからといって、すぐに何かができるものではありません

世の中、特にモノとヒトとの関わりについて、みなさんが主体的に考えるきっかけになってくれることを期待していますつまり「正解」はありません

ノートをとるなら、キーワードだけで十分ですそして、ぜひ自分自身のこととして考えてください

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Contents「半導体」のお話半導体産業と製造業製造業の転換と半導体産業近未来のものづくり

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科学と技術(科学技術)歴史的には:

科学=アテネ市民の教養(思索)→理学 (Science)

技術=奴隷の作業(具現化のテクニック)→工学 (Technology)  (経験則・ノウハウの集合)

産業革命後、工学を Scienceで裏付けることで劇的な効率化→融合

日本では:明治維新・殖産興業の時代に、同時に入ってきた

「科学技術」として区別があいまいに

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技術とデザインの接近古くは、設計と技術(具現化手段)は同一分野(レオダルド・ダ・ビンチのころ)

技術の高度化に伴い、分業化が進む設計 (design)→「デザイン」へ(本来は同じ言葉なのに)

技術は技術者しかわからない2000年ころから、再度、両者の接近の試

みデザインできるエンジニアエンジニアリングできるデザイナー

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コンピュータの歴史

(1946)

真空管 : 18,000 本

消費電力 : 140kW

サイズ : 30m×3m×1m

演算性能 : 5,000加算/s

( ENIAC:世界最初のコンピュータ)

(2007)

最小加工寸法 : 0.065μm(65nm)

素子数 : ~ 50,000,000

消費電力 : 100W ~数mW

サイズ : 10mm×10mm 程度

演算性能 : 10,000,000,000 演算 /s

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コンピュータの構成要素:集積回路黒いパッケージの中に「シリコンのチップ」が入っている

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集積回路の歴史

US Patent   No. 2 981 877 (R. Noyce)(1961)

US Patent   No. 2 138 743 (J. Kilby)(1959)

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Mooreの法則

ref: http://www.intel.com/jp/intel/museum/processor/index.htm

傾き: × 約 1.5/年

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集積回路の最小構成要素:MOSトランジスタMOS=Metal-Oxide-Semiconductor基本的には電圧制御スイッチ組み合わせて、いろいろな回路・システムをつくることができる

( http://cms.kyutech.ac.jp より)(Wikipedia より)

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MOSトランジスタからコンピュータへMOSトランジスタ=スイッチ→ 論理ゲート=ブール代数

論理積・論理和・否定→ 論理回路

この組み合わせで、コンピュータの機能を構成できる

→コンピュータ・プログラム

→ネットワークへ

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例:「加算」をする回路a b c s

0 0 0 0

0 1 0 1

1 0 0 1

1 1 1 0 {c, s} = a + bブール式表現• c = a ・ b• s = /a・ b + a・ /b

論理積 x = a・ b

論理和 x = a+b

否定 x = /a

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Mooreの法則のカラクリ:スケーリングMOSトランジスタを、より小さく作ると・・・?寸法 : 1/α不純物濃度 : α電源電圧 : 1/α

p-Si

S DG

n-Sin-Sip-Si

S DG

n-Sin-Si

L

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MOSトランジスタのスケーリングの効果結論:いいことばかり

速度↑消費電力↓集積度(機能)↑

技術が進むべき方向性が極めて明確なまれなケースメーカは、がんばって微細化する(MOSトランジスタを小さく作れるようにする)

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MOSトランジスタの微細化の歴史微細化するほどメリットがある=がんばって微細化

ref: 日経 BP Tech-On! 2009/03/30の記事

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どれぐらい小さいのか?

L=20nm(いま)

(IEEE Trans. ED, 50, n9, p1838)

L=5nm( 2020年ごろ)

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速度↑パソコンや携帯・スマホがサクサク動く

消費電力↓バッテリーが長持ち

集積度↑:2つの意味機能↑

コスト↓

スケーリング(微細化)でうれしいこと

同一面積チップで 4 倍のMOS数= 4 倍の機能

同一MOS数が 1/4の面積= 1/4のコスト

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微細化によるコスト↓の別の側面

DEC VAX(1976)1MIPS

Cray-1 (1978)100MIPS

1000MIPS

300MIPS

10MIPS

100MIPS

20MIPS

※MIPS:Million Instruction Per Second (1秒間に実行できる命令数)

(世界最初のスーパーコンピュータ)

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微細化によるコスト↓の意義コンピュータの低価格化=普及

昔は国で 1 台 → 会社に 1 台 → 一人 1 台もう 1つの意義:

「コンピュータ」が特殊なものではなくなった

コンピュータ=パソコン、にとどまらない携帯、ゲーム機、家電、おもちゃ、・・・

→ 身の回りのあらゆるものに(ユビキタス化)

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「 LEDを点滅させる回路」(1)

Ra

Rb

C

NE555

843

普通の設計方法:発振回路

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「 LEDを点滅させる回路」(2)PCを使ってもできる・・・?

可能だが、非現実的・・・か?

while(1){ a = 1; sleep(1); a = 0; sleep(1);}

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マイクロコントローラ(MCU:マイコン)マイクロコントローラ (MCU)

CPU + RAM + ROM +周辺回路を 1つのチップに

CPU: 1 ~ 100MIPSRAM: 1K ~ 10KBROM: 1K ~ 100KBCost: ~ 100 円程度製造技術は、「非常に」枯れた技術

Microchip PIC12F629

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MCUの中身小さいながらも立派なコンピュータ

性能は数MIPS =初期のスーパーコンピュータ並

Microchip PIC10F222

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「 LEDを点滅させる回路」(3)発振回路

IC(8p) + C×1 + R×2 = $2

MCUIC(8p) = $1.5多機能

点滅速度、点滅パターンなどの変更が容易(プログラム動作)

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「マイコン」のパラダイムシフト「コンピュータ」が小さく安くなった「だけ」

システム構成の概念を変える可能性(「破壊的イノベーション」)

ここまでの質的な変化が実質になるためには?設計者が意図できるか?ユーザが理解できるか?

( C.クリステンセン「イノベーションのジレンマ—技術革新が巨大企業を滅ぼすとき」 ( 翔泳社(2001))

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「マイコン」における料理人

「マイコン」の「調理例」を示す「料理人」雑誌記事、電子工作キット、・・・

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新しいパラダイムでの「料理人」の重要性

2000年頃から店頭に→食べ方???料理番組・雑誌等での調理例→定番キノコに

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「マイコン」の別の可能性電子回路→コンピュータの継続性

本来はつながっている知識学問体系・・・全体を通して理解している人がいるか?

超えられない壁?

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似た現象?:化学〜生物学・医学化学〜生物学・医学の学問体系

脳・知能生物(多細胞生物)細胞タンパク質・ DNA分子・原子

化学と生物学をつなごうとする試み:分子生物学、生物物理学、・・・まだ成功はしていない

超えられない壁?

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学問体系が断絶した世界で発生する問題例:ガン細胞

分子レベルからの発生メカニズムは完全には未解明

対処療法:外科手術、化学療法など

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学問体系が断絶した世界で発生する問題例:ガン化したトランジスタ・・・?

コンピュータ=決定論的システム=構成要素の完全動作が前提

微細化の進展→量子効果等による動作の不確実性↑現状では、製造技術や設計技術で、なんとか抑え込む

・・・いつまでも可能なのか?「ハード屋」の言い分:ソフトウエアでなんとかしてくれ「ソフト屋」の言い分:ハードウエアがしっかりしてくれ

例:組込みシステムトレイ開閉ボタンを押してから 45 秒後にトレイが開くBlu-ray レコーダ(実話)「ソフト屋」の言い分:「 CPUがもっと速くなってくれ」「ハード屋」の言い分:ソフトウエアをもっと効率化してくれ

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マイコン:これらをつなぐ媒体?ぎりぎり、命令実行ステップ〜高級言語がつながる規模

入出力のための電子回路と親和性・関連性が高い

マイコン+電子工作

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Mooreの法則の負の側面あまりにも明確な技術進歩の方向性その結果、「なぜ」「何を」作るか、を考えなくなってしまった

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実例: 4MbDRAMの立ち上がり

1Mb→ 4 Mbの交代はビット単価では説明できない 不景気説は × DRAM大口ユーザの PCの OS

(Win3.1→Win95)の世代交代? (直野「転換期の半導体・液晶産業」 (日経BP,1996))

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実例:テレビ市場動向をどうとらえるか?

公共事業で「市場を作る」ことは長期的に得策か?(オリンピック、エコポイント、・・・)

学生にテレビを持っているか聞くと10%程度PC(動画)と競合すべき?(時間の使い方として)

http://www.garbagenews.net/archives/1935926.html http://www.nissay.co.jp/enjoy/keizai/32.html

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ものづくり・製造業のあるべき姿ものづくり = Why x What x How

Why : なぜそれを作るのか?What : 何を作るのか?How : どうやって作るのか?

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産業としての製造業の形態の分類製造業の形態の分類( P.F. ドラッカー「現代の経営 [上 ]」 ( ダイヤモンド社 ,2006))

個別生産 : 船舶のような一点物の生産旧型の大量生産 : 均一な製品の大量生産

「黒である限り何色の自動車でも手に入る」 (H.フォード )

新型の大量生産 : 均一な部品の組み合わせによる多様な製品の大量生産

プロセス生産 : 製品が製造工程に強く依存する生産 (石油精製など )

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製造業における半導体「旧型の大量生産」

同じ製品を大量につくる汎用 Tr・汎用ロジック・汎用アナログ・メ

モリ・・・「新型の大量生産」

「均一な部品=汎用半導体」の組み合わせ

半導体の位置づけそれ自体が「旧型の大量生産」の対象「新型の大量生産」による「電子情報機器」生産のための部品・素材

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「新型の大量生産」における部品部品の規格化による高い効率化黎明期の半導体における「セカンドソース」「真の汎用品」741、 555、 74 シリーズ、・・・主に供給安定化が目的電子情報機器の設計・製造に与えたメリットは、はかりしれない

(Wikipedia より )

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「真の汎用半導体」の転換半導体性能↑と電子情報機器の性能↑部品である半導体製品への性能要求↑「真の汎用品」の意義の薄れ

汎用品=性能もそれなり特定用途では性能が不足

半導体製品が用途ごとに多様化=半導体産業の本質の転換大量少品種→少量多品種(→ SoC)

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ムーアの法則のもたらすもの半導体性能↑&電子情報機器の性能↑

→半導体製品の少量多品種化→ SoC半導体固有の事情:イニシャルコスト↑↑

↑一企業の身の丈にあった投資額を超えているイニシャルコスト↓技術( EB 直描、設計自動化

等)大量生産しないと回収できない

=ヒット製品への強い依存例: iPhoneに搭載されると業績回復産業構造として健全か?

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半導体のあるべき姿(1)「集積回路向き」の応用分野の開拓

社会的要請実現のため必要微細加工された SoCが必要十分な出荷数を期待できるスマート家電、スマートグリッド、ロボットビ

ジョン・・・

ユーザの機能飢餓を無視した「余計なお世話」 ?「市場創出」 ?( TV?3D?4K?LTE?)

補助金・公共投資に依存する自立できない産業に未来はない( cf. 歌舞伎vs 文楽)

(経済産業省 低炭素電力供給システム報告書より)

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半導体のあるべき姿(2)「枯れた技術の集積」マイコンのような実例は?十分枯れた製造技術回路構成やアーキテクチャも学術的興味は薄い

ムーアの法則がもつ「低価格化」が産業構造、

世の中そのものを変える可能性「持続的 Innovation」を駆逐する「破壊的

Innovation」十分に減価償却が済んだ製造装置だから可能なコストも含めて実現可能なアプリケーション

「人類の幸福に貢献する」という産業の本来の目的には適うのではないか?

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MAKERSムーブメントと半導体製造業をとりまく近年の動向

FabLabフィジカル・コンピューティングロングテールメイカー企業

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「モノは買うもの」という時代?ほしいものを、「買う」以外の方法は?「作る」?

夏休みの工作レベルのおもちゃ:○PCのソフトウエア:多くは ×、場合よっては○PCやスマホ:たぶん ×(無理)

これらを「作ることができるようようなった」ら?古来、「必要なものは自分で作る」もの産業革命後、生産者と消費者が分離製品が複雑化・専門化し、ますます分離

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MAKERSの背景: FabLab「(ほぼ)なんでも作る方法」(MITでの演習)上流から下流まで一通りをすべて体験する

「作りたいもの」を「具現化する」プロセス

http://fab.cba.mit.edu/classes/MIT/863.08/

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MAKERSの背景: FabLab加工機をコアにしたものづくりコミュニ

ティレーザーカッター、3Dプリンタ等DIYから Do It With Others (DIWO)へ現在、日本では鎌倉とつくば他「製造技術の民主化」

→市民が「製品は買うものではなく作るもの」へ

カフェ併設などの派生型も

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MAKERSの背景:フィジカルコンピューティングPC内にとどまらず、

物理現象を扱うコンピューティング使いやすくまとめたマイコンボード+開発環境センサ・アクチュエータの接続・情報処理が容

易「たいしたことないもの」に見える

ただのマイコンボード?マイコンボードの民主化

ArduinoUno

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フィジカルコンピューティングを支えるコミュニティハードウエアの Open Source化

(OSHW: Open Source Hardware)改良・派生を促す共通ベースを使って、ユーザごとの付加価値(「作りたいもの」を素早く具現化する道具)

Arduino用シールド(拡張ボード)の例

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OSHWコミュニティで大事なことは・・?情報共有コミュニティ

リアル/ネット経由のアクセス「生き字引」の活用「言語」となる共通ハードウエア

ユーザの「居場所」たぶん個々には「アツい気持ち」がある学校などでは周りに「理解者」がいない?・・・萎える

「発表」の機会自慢したい、よね。

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金沢大・秋田研の実践例マイコンブ(研究室内サークル)マイコンペ(コンペ)

→各種イベントで展示ノウハウ共有いずれも学生の発案

http://combu.ifdl.jp/

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MAKERSの背景:ロングテール(昔)少数のヒット商品

→(今)多数のニッチ商品ニッチも多数なので総和は大きい例:音楽販売では、

25,000位以下で売上の 40%「一部のヒット商品」がなくなる

音楽業界:△ 25%(’ 01 〜’ 07)ヒットアルバム:△ 60%(’ 01 〜’ 07)

( C. アンダーソン「ロングテール」 ,早川書房 (2009))

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「ロングテール」の背景と意義嗜好の多様化←メディアの多様化

昔はテレビ(地上波だけ)しかない「8時だよ全員集合!」はピーク時平均視聴率 50%「他に見るものがないから」という要因も大きい

今:テレビ持ってますか?(学生だと 10% 程度)リコメンデーション等の「出会いの手段」の進歩(マイナーなものを知る機会)

在庫コスト:大幅↓(オンライン・ストア)=多様な商品が、消費者の選択の対象に限られた製品数=生産者・流通業の都合( CDストアの棚の制限)

ユーザの嗜好を満たす=産業の使命の実現へ

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MAKERSムーブメント「 21世紀の産業革命」とも呼ばれる

産業全体: 130兆ドルIT産業 (bit産業 ): 20兆ドル (15%)残り (85%): atom産業(モノが関わる)「 IT産業革命」は限定的→本命は atom産業

ものづくりの「ロングテール」を支える技術革新3D プリンタ等によるプロトタイピングクラウド・ファンディング(市場調査・資金調達)サプライチェーン活用による

量産手段の民主化「モノへの愛着」の重要性(熱心なファン)

C. アンダーソン「MAKERS」(NHK出版 ,2012)

三木・宇都宮「マイクロモノづくりを始めよう」( テンブックス ,2013)

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SFの中のMAKERS ?例:野尻抱介「南極点のピアピア動画」

日本の次期月探査計画に関わっていた大学院生・蓮見省一の夢は、彗星が月面に衝突した瞬間に潰え、恋人の奈美までが彼のもとを去った。省一はただ、奈美への愛をボーカロイドの小隅レイに歌わせ、ピアピア動画にアップロードするしかなかった。しかし、月からの放出物が地球に双極ジェットを形成することが判明、ピアピア技術部による“宇宙男プロジェクト”が開始される・・・・・・ネットと宇宙開発の未来を描く4篇収録の連作集 ・・・・??? 野尻「南極点のピアピア動

画」(早川書房 , 2012)

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要約(ネタバレ)と「示唆」ニコニコ技術部でロケットつくって宇宙に行ったり、潜水艦でクジラと会話する、というお話

この小説の示唆・・・?(私の解釈)個々人の才能は尖っている(レベルが高い)

=潜在的な生産者・技術の存在皆で力をあわせると、すごいことができる

=潜在的な共同起業の可能性現在は、皆が「趣味」の範囲でやっているもしかしたら産業になる・・・?

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メイカー企業小規模製造業

数万個ロット高い技術力熱心なユーザ・ファン価格勝負でないユニークな製品「製造業におけるロングテールの具現化」

均一・大量生産製品:平均満足度は高いが、満足度maxではない

http://www.bsize.com/

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Makersムーブメントが示唆すること「技術の民主化」がもたらすもの

昔は、技術はエンジニアの特権だったそれが民主化されて、趣味で使う人が出てきた

しょうもないものも、たくさんあるすごいものも、たくさんあるモノ・ヒトの多様性(とそれをつなぐコミュ

ニティ)

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「多様性」の実践例: NT金沢2013もともとは、ニコ動のニコニコ技術部のオフ会

「技術の民主化が生んだ多様性」を集めてみる

それらがどう相互作用するか?・・・実験中

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「集積回路」の民主化?「集積回路」が民主化するとどうなるか?

「集積回路」を民主化するには、どうしたらいいか?

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集積回路が民主化されるためには?原料( Si ウエハ)価格はあまり上昇していない

$1.14/inch2→$1.17/inch2( 2004, SEMI統計)初期コスト

マスク価格: 45nmは 180nmの 10 倍電子線( EB)直描:低スループットだが多品種向け

設計コスト高機能は高価な専用 CAD(米国メーカー独占)汎用品レベルは汎用(含フリー) CADでも設計ツール (CAD)の民主化は・・・?

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「汎用 /専用部品」になる集積回路(1) System on Chip (SoC/ システム LSI)

システム一式をワンチップ化必然的に特定用途=少量多品種(大量生産品は iPhoneの CPUなどごく少数)

「製造初期コスト(マスク)が高価」という矛盾設計の複雑度が極めて高い

設計方法が異常に複雑化・高度化 System in Package (SiP)

システム一式( CPU・メモリ等)をワンパッケージ化(ただし若干低速度)

必然的に特定用途=少量多品種各チップは汎用品:量産効果「ロングテール」向き?

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04/13/2023 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/

「汎用 /専用部品」になる集積回路(2) Configurableなデバイス

FPGA, MCU, PSoC, スマートアナログ , …デバイスそのものは「汎用部品」(機能をカスタムに設定できる)

微細化によって「それなりの性能」になってきた(昔は性能がイマイチだったが)

設計ツールの民主化により、かなり有望か? LSI 試作サービス

小ロット製品向けも例:仏 CMP(€1,200/[email protected], €650/[email protected],

€12,000/mm2@28nm)「そこそこの性能」ならかなり安くなってきた

設計ツールの民主化が普及のキーか?

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集積回路の民主化のためのキー技術(1)「カスタム LSIが作れるとうれしい用途」

高度・高速信号処理、高機能センサ、などなど「それまでは考えてもいなかった分野」は、けっこうある

例:(高価な)3次元計測デバイスは昔からあったがイマイチ普及しなかった→ Kinectで一気に普及し、基盤技術になった

「やろうと思えばできること」を見据えた考え方例:実装技術(「やろうと思えばできること」)を知らなければ

Kinectやそれを使ったアプリは考えられない例:高速カメラ+画像処理を知らなければ、高速ビジョンは考えられない

プロトタイプでもいいので「動くものを見せられる」のも重要

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集積回路の民主化のためのキー技術(2)実装インフラの整備

これは FPGAや LSI 試作サービスが整ってきている設計ツールの民主化

現状では民主化されているとは言い難い↑のようなケースが出てこれば改善が進む・・・??

または Arduinoや RaspberryPiのようなブレイクスルーをおこすものを作る人が現れる・・・?

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まとめ:みなさんへのメッセージ無条件の「科学技術の進歩=人類の幸福」は昔の話

科学コミュニケーションが大切です同様に、技術コミュニケーションも大切

「誰かがやってくれる」「誰かが作ってくれる」という考えでは、もったいない&危ない「放射能が危険」は本当ですか?

テレビで言ってるだけ、という姿勢ではありませんか?

持っているケータイに満足ですか?「欲しいもの・必要なものは自分でも作れる」という主体的な視点を持ちましょう

そしてそのために科学技術を勉強し、他への科学的な説明に使いましょう