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システム工学 I
第 13回Lyapunovの方法
電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 1
Small Gain Theorem (1)
• まず, 前回の講義で説明できなかった, 非線形システムへの BIBO安定性の拡張について述べる. これを与えるのが Small Gain
Theoremであり, この定理は線形系および非線形系の双方に適用可能である.
• 次ページの図のようなフィードバックシステムを考える.
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+
−
+
−
u1
u2e2
e1y1G1
G2y2
Giは線形とは限らない因果的な作用素, ui(t), ei(t),
yi(t)は信号で, dimy1+ mod (i,2) = dimui = dim ei
(i = 1, 2; mod は剰余)とする.
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Small Gain Theorem (3)
• y = G[u]により, 作用素Gの出力yが入力u
から決まることをあらわす.
• 信号w(t)の時刻 T における打ち切りを,
wT (t) :=
{
w(t), 0 ≤ t ≤ T,
0, T < tと定義する.
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Small Gain Theorem (4)
• 以前の定義と若干異なるが, ‖ ‖を有限次元のベクトルのノルムとし (どんなノルムでもよい), 信号wの Lpノルムを,
‖w‖Lp=
(∫ ∞
0
‖w(τ)‖pdτ
)1/p
と定義する
(1 ≤ p < ∞). 積分は Lebesuge積分である.
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Small Gain Theorem (5)
• wの L∞ノルムを, ‖w‖L∞= ess.sup ‖w(t)‖
により定義する. ess.supは零集合を除いた上限.
• Lebesgue可測で, Lp ノルムが有限な関数全体からなる集合 (の同値類)をLpと書く (1 ≤
p ≤ ∞).
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Small Gain Theorem (6)
• Lpは数学的には取り扱いやすいが, w(t) = t
などといった極めて簡単な関数を含まないため, 応用上は不都合である. そこで, これを拡張し,どの正の時刻Tで打ち切ってもLpに属すLebesgue可測な信号の集合を考える. これをLpeという. Lpe = {w : ∀T, ‖wT ‖Lp
< ∞}
である.
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Small Gain Theorem (7)
• 1 ≤ p ≤ ∞とする.
• Gが Lp安定であるとは, ∀u ∈ Lp, G[u] ∈ Lp
となることをいう.
• Gが Lp安定でゲイン γを持つとは, ∃γ, β ≥
0, ∀u ∈ Lp, G[u] ∈ Lp かつ ‖G[u]‖Lp≤
γ‖u‖Lp+ βとなることをいう.
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Small Gain Theorem (8)
• 先に述べたフィードバックシステムにおいて,
G1, G2がともにLp安定で, それぞれ有限ゲイン γ1, γ2を持ち, γ1γ2 < 1であれば,フィードバックシステムは Lp安定である. この事実を, Small Gain Theoremという.
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以下, 記法の簡単のため, ‖w‖Lpを ‖w‖と略記する. 仮定より, ‖yi‖ ≤
γi‖ei‖ + βiであり (i = 1, 2), さらに e1 = u1 − y2, e2 = u2 − y1だから, ‖e1‖ ≤ ‖u1‖+ γ2‖e2‖+ β2, ‖e2‖ ≤ ‖u2‖+ γ1‖e1‖+ β1 である. これらの不等式を相互に代入すると,
‖e1‖ ≤ ‖u1‖+ γ2 (‖u2‖+ γ1‖e1‖+ β1) + β2,
‖e2‖ ≤ ‖u2‖+ γ1 (‖u1‖+ γ2‖e2‖+ β2) + β1
となる. これを整理すると
(1− γ1γ2)‖e1‖ ≤ ‖u1‖+ γ2 (‖u2‖+ β1) + β2
(1− γ1γ2)‖e2‖ ≤ ‖u2‖+ γ1 (‖u1‖+ β2) + β1
となる. よって, γ1γ2 < 1なら先に述べたフィードバックシステムはLp
安定である.
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状態方程式と安定性 (1)
• 状態方程式の安定性に関する議論では,当面,
入力uを零に固定する.
• 応用上重要なのは入力として状態フィードバックや出力フィードバックを用いることにより制御システムを安定にすること (安定化)であり, 状態方程式の安定性に関する議論はそのための基礎である.
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状態方程式と安定性 (2)
• 安定性の正式な定義は後回しにするが・・・
• 制御システム x = f (x,u)に状態フィードバック u = k(x)を施すと, 入力がないシステム x = f(x,k(x))が得られる. この意味で, 入力がないシステムの安定性に関する議論はフィードバックシステムの安定性の基礎となる.
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状態方程式と安定性 (3)
• 制御システム x = Ax+Bu, y = Cx+Du
においてu = 0とすると,時刻 0に初期値x0
を出発する解は, x(t) = eAtx0となる.
• x0 = 0なら解は恒等的に零であり,このような場合は検討に値しない. そこで, x0 6= 0のとき, 解が t → ∞としたときどう動くかを考える (初期値に依存する).
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状態方程式と安定性 (4)
• 平衡点 (後述;今の状況では原点)の近傍をどのように選んでも, 初期値をうまく選べば解がその近傍から出ないようにできるとき, この平衡点はLyapunov安定であるという.
• t → ∞としたとき解が平衡点に収束するとき, この平衡点は漸近安定であるという.
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状態方程式と安定性 (5)
• 数式を使った (安定性の)定義は後述.
• 定義から, 平衡点が漸近安定であれば Lya-
punov安定である. 逆は必ずしも成立しない.
• Aの固有値がひとつでも (複素)右半平面にあれば, eAtx0は発散する初期値があるので,
平衡点 (原点)はLyapunov安定でない.
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状態方程式と安定性 (6)
• Aの固有値がすべて (開)左半平面にあれば,
eAtx0 → 0, よって平衡点 (原点)は漸近安定.
• Aの固有値がすべて閉左半平面にあり,虚軸上に重複度 1の固有値があれば eAtx0は初期値によって零に収束あるいは停留なので, 平衡点 (原点)はLyapunov安定だが漸近安定ではない.
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状態方程式と安定性 (7)
• Aの固有値がすべて閉左半平面にあり,虚軸上に重複度 2以上の固有値があれば eAtx0は初期値によって零に収束あるいは発散. よって平衡点 (原点)はLyapunov安定でない.
• 以上のように, Aの固有値をすべて求めれば,
x = Axの安定性を判定できる.
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状態方程式と安定性 (8)
• 「線形システムは非線形システムの線形近似したもの」という立場に立つと,
⊲ 線形/非線形にかかわらず, 統一的に使える「安定性」の定義は何か
⊲ 非線形システムの安定性判定は可能か
ということが問題になる.
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状態方程式と安定性 (9)
• 上述の問題に肯定的な解答を与えるのがLya-
punovの方法. これには, 線形近似による方法 (Lyapunovの第一の方法)と, 状態変数の「エネルギー」に相当する関数 (Lyapunov関数)を使って安定性を判別するLyapunovの直接法 (あるいは Lyapunovの第二の方法)
の 2種類がある.
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平衡点 (1)
• 非線形時不変微分方程式 x = f (x)を考える.
x ∈ Rn, f : Rn → R
nで, この微分方程式は解の存在と一意性の条件を満たすものとする.
• 集合 {x : f (x) = 0}の要素を, このシステムの平衡点という.
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平衡点 (2)
• 線形時不変システム x = Ax の平衡点は,
{x : Ax = 0}であり, これは原点のみ (A
が正則なとき)か, Rnの部分空間である. x0
がAx0 = 0を満たすとき, z = x − x0とおくと, z = x = Ax = Ax−Ax0 = Az であるから,システムの原点をx0だけ平行移動しても, 状態方程式は変わらない.
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平衡点 (3)
• したがって, 線形時不変システムでは, 原点におけるシステムの安定性を議論すれば, すべての平衡点について同一の結論が得られる.
• 非線形時不変システムでは, その安定性を平衡点ごとに分けて論じなければならない.
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平衡点 (4)
• 非線形時変システム x = f(x, t)では,平衡点を素直に定義すると {(x, t) : f (x, t) = 0}となるが, この集合は時間とともに変わる. 時間とともに変わる平衡点の取り扱いは繁雑なので, {x : ∀t, f (x, t) = 0}を平衡点と定義することも多い.
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平衡点 (5)
• 線形時変系 x = A(t)xでは, 少なくとも原点はつねに平衡点である. また, すべての tにおいて, A(t)において tを固定した定数行列のすべての固有値の実部が負であっても, この微分方程式の解が零に漸近することは保証されない.
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平衡点 (6)
• 以上で見てきたように, 安定性という観点から言うと, 時変系の取り扱いは繁雑である.
• この講義では, 今後は, 時変系を検討の対象外とし, 時不変系に限定して議論を進める.
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安定性の定義 (1)
• 以下の議論では, ϕ(t, 0,x0)によって, 時刻0において初期値 x0を出発した微分方程式x = f (x)の解をあらわす. なお, 解の存在と一意性を仮定する.
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安定性の定義 (2)
• x = f(x)の平衡点 x∗が Lyapunov安定であるとは, ∀ε > 0, ∃δ(ε) > 0, ∀x0, ‖x0−x∗‖ <
δ(ε) ⇒ ‖ϕ(t, 0,x0) − x∗‖ < ε となることをいう.
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安定性の定義 (3)
• x = f (x)の平衡点 x∗が (局所的に)漸近安定であるとは, ∃δ > 0, ∀x0, ‖x0−x∗‖ < δ ⇒
limt→∞ϕ(t, 0,x0) = x∗ となることをいう.
ただし, 暗黙のうちに極限の存在を仮定する.
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安定性の定義 (4)
• x = f (x)の平衡点 x∗が (局所的に)指数安定であるとは, ∃α, β, δ > 0, ∀x0, ‖x0−x∗‖ <
δ ⇒ ∀t, ‖ϕ(t, 0,x0)− x∗‖ ≤ α‖x0‖ exp[−βt]
となることをいう.
• 上記において, ‖x0 − x∗‖ < δなどのような条件が外せるときには, このシステムは大域的に安定, 漸近安定, 指数安定であるという.
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Lyapunovの直接法 (1)
• 非線形システムの安定性を調べるための方法の代表格がLyapunovの方法
• Lyapunovの方法には, Lyapunovの直接法(Lyapunovの第二の方法)とLyapunovの線形化法 (Lyapunovの第一の方法)がある.
電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 30
Lyapunovの直接法 (2)
• 話の順番が逆のようであるが, Lyapunovの直接法から議論を始める.
• 状態空間において座標系を並行移動すれば,
平衡点x∗を原点に移動することができる. そこで, 以下の議論では, はじめから平衡点は原点であると仮定する. また, 集合Dを, 状態空間の原点を含む開集合とする.
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Lyapunovの直接法 (3)
• Dで定義された関数 V (x)が (x = f(x)の)
Lyapunov 関数であるとは, V が 1階連続微分可能で, V (0) = 0かつ ∀x ∈ D \ {0},
V (x) > 0で, さらに ∀x ∈ D,∂V
∂xf (x) ≤ 0
となることをいう.
電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 32
Lyapunovの直接法 (4)
• V (0) = 0かつ ∀x ∈ D \ {0}, V (x) > 0という条件のみを満たす関数を Lyapunov関数候補と呼ぶことがある.
•d
dtV (ϕ(t, 0,x0)) =
∂V
∂x
∣
∣
∣
∣
x=ϕ(t,0,x0)
f(ϕ(t, 0,x0))
である (微分方程式の解に沿った微分).
電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 33
Lyapunovの直接法 (5)
• Lyapunov関数が存在すれば, x = f(x)は平衡点x∗ = 0において (局所的に)Lyapunov安定である.
• 上記に加えて, 原点以外の点で∂V
∂xf(x) < 0
となれば, x = f(x)は平衡点 x∗ = 0において (局所的に)漸近安定である.
電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 34
Lyapunovの直接法 (6)
• 上記に加えて, ∃a, b > 0, ∃p ≥ 1, ∀x, a‖x‖p ≤
V (x) ≤ b‖x‖p かつ ∃c > 0, ∀x,∂V
∂xf (x) ≤
−cV (x)であれば, x = f(x)は平衡点x∗ = 0
において (局所的に)指数安定である.
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Lyapunovの直接法 (7)
• このように V (x)によってシステムの安定性を調べる方法をLyapunovの直接法という.
• 続いて, 先に述べた定理の証明を述べる.
• 以下では, 記号 dV/dtにより, V (t)の, 微分方程式 x = f(x) の解ϕ(t, 0,x0)に沿った微分をあらわす.
電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 36
dV
dt=
d
dtV (ϕ(t, 0,x0))
=∂V
∂x
∣
∣
∣
∣
ϕ(t,0,x0)
d
dtϕ(t, 0,x0)
=∂V
∂x
∣
∣
∣
∣
ϕ(t,0,x0)
f(ϕ(t, 0,x0))
電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 37
Lyapunov関数が存在すれば, x = f(x)は平衡点x∗ = 0において局所的に Lyapunov安定:
• 平衡点がすでに原点に移されていることに注意する. B(r) = {x : ‖x‖ < r}, B(r) = {x : ‖x‖ ≤r}とおく. ∀ε > 0, ∃δ > 0, ∀x0, ‖x0‖ < δ ⇒‖ϕ(t, 0,x0)‖ < εを示したい.
• 必要なら, B(ε)がDに含まれるように εを小さく取り直し, α = max{x:‖x‖=ε} V (x)とする.
電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 38
• 0 < β < αとし, C(β)を {x ∈ D : V (x) ≤ β}の原点を含む極大連結集合とする.
• dV/dt ≤ 0であったから, C(β)の点を初期値とする x = f(x)の解は t ≥ 0において C(β)から出ない.
• β < αであったから, C(β) ⊂ B(ε)である.
• C(β)は原点を内点として含むから, B(δ) ⊂ C(β)となるよう δを取れば主張が示される.
電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 39
さらに平衡点以外で dV/dt < 0であれば x = f(x)は平衡点 x∗ = 0において局所的に漸近安定:
• Lyapunov安定の条件を満たす εと δがすでに取られているものとする. 原点以外で dV/dt < 0となるとき V (ϕ(t, 0,x0)) → 0 (t → ∞)となることを示したい.
• 有限の時刻 T で ϕ(T, 0,x0) = 0となった場合には, 原点は平衡点なので, 証明すべきことは何もない. よって, ∀t > 0, ϕ(t, 0,x0) 6= 0の場合を考える.
電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 40
• V (ϕ(t, 0,x0))は tの関数として非負で, 単調減少だから, あるL ≥ 0に収束する. よって, L = 0であることが示せればよい. 背理法でこれを示す.
• L > 0と仮定する. x0 ∈ B(δ/2)とし, R = {x ∈B(0, ε/2) : L ≤ V (x)}とする. Rはコンパクトで, 原点を含まない. ∂V
∂xf(x)はRにおいて負の連続関数だから, Rにおいて負の最大値 −µを取る. よって, dV/dt ≤ −µだから, V (ϕ(t, 0,x0))−V (x0) ≤ −µtとなり, 有限時間で V (ϕ(t, 0,x0))が零になるので矛盾.
電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 41
指数安定性について
• 上述の仮定が満たされるとき, dV/dt ≤ −cV だから, 1
VdVdt ≤ −cで,これを積分すると, lnV (ϕ(t, 0,x0))
lnV (x0) ≤ −ct. よってV (ϕ(t, 0, x0)) ≤ e−ctV (x0).
• a‖ϕ(t, 0,x0)‖p ≤ V (ϕ(t, 0,x0)) ≤ e−ctV (x0) ≤
e−ctb‖x0‖pだから, ‖ϕ(t, 0,x0)‖ ≤
(
ba
)1/pe−c t
p ‖x0‖.よって指数安定.
電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 42
線形時不変システムでは (1)
• 線形時不変システム x = Axが漸近安定であるということは, Aのすべての固有値の実部が負であるということであった. (Lyapunov
安定ではないので注意).
• 線形時不変システムの場合は,この条件は,状態の 2次形式の形のLyapunov関数が存在することと等価であることが示せる.
電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 43
線形時不変システムでは (2)
• 正確に述べると: 線形時不変システム x =
Ax が漸近安定であるための必要十分条件は, 任意の正定対称行列Qに対し, ある正定対称行列P が存在し, PA+ATP = −Q となることである.
• 上記の条件が満たされるとき, xTPxがLya-
punov関数となる.
電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 44
∀Q > 0, ∃P > 0, PA+ATP = −Qのとき
• P > 0は, 行列 P が正定対称行列という意味
• V (x) = xTPxとおくと, dV/dt = xT (PA +ATP )x = −xTQx.
• P > 0, Q > 0より, これらの固有値は正の実数
• P の最大固有値を λP , Qの最小固有値を λQ とする
電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 45
dV
dt= −xTQx ≤ −λQ|x|
2
≤ −λQ
λPxTPx = −
λQ
λPV (x)
• よって, 初期値 x0をどのように取っても,V (ϕ(t, 0,x0))は零に収束する.
• したがって, Aのすべての固有値の実部は負でなければならない.
電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 46
Aのすべての固有値の実部が負であるとき
• Q > 0をひとつ定める.
• P =∫∞0 eA
T tQeAtdtと定義する.
• PA+ATP
=∫∞0 eA
T tQeAtAdt+∫∞0 AT eA
T tQeAtAdt
=∫∞0
ddt
(
eAT tQeAt
)
dt = eAT tQeAt
∣
∣
∣
∞
0= −Q
(Aのすべての固有値の実部が負だから)
電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 47
線形時不変システムでは (6)
• 次に, Aの固有値の実部がすべて正である場合を考える. τ = −tとすると, dx
dτ= dx
dtdtdτ
=
−Axである.
• Aの固有値の実部がすべて正であるための必要十分条件は, −Axの固有値の実部がすべて負であること.
電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 48
線形時不変システムでは (7)
• −Axの固有値の実部がすべて負であるための必要十分条件は, ∀Q > 0, ∃P > 0, P (−A)+
(−A)TP = −Q.
• まとめると, Aの固有値の実部がすべて正であるための必要十分条件は, ∀Q > 0, ∃P > 0,
PA+ATP = Q.
電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 49
Chetaevの不安定性判定法 (1)
• Lyapunov関数の存在は非線形システムが安定であるための十分条件なのだが, これを変形して, 非線形システムが不安定であるための十分条件を導くことができる (Chetaev).
• 先と同様に, 平衡点はすでに座標系の並行移動によって原点に移されているものと仮定する.
電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 50
Chetaevの不安定性判定法 (2)
• D を原点を含む開集合, V (x) : D → RをV (0) = 0を満たす C1級関数とし, U(r) =
B(r) ∩D ∩ {x : V (x) > 0}とおく.
• あるrに対し, U(r) 6= ∅で, U(r)上で ∂V∂xf (x) >
0で, ∀ε > 0, ∃x ∈ B(ε) \ {0}, V (x) > 0であれば, 原点は Lyapunov安定な平衡点ではない (Chetaev).
電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 51
先の事実の証明は次の通り.
• 先の仮定から Lyapunov 安定の否定: ∃ε > 0,∀δ > 0, ∃x0 ∈ B(δ), {ϕ(t, 0,x0) : t ≥ 0} 6⊂ B(ǫ)を導けばよい.
• ε ≤ r を, B(ε) ⊂ D であるように取る. 所与の δ に対し, δ0 = min{δ, ε}とし, x0 ∈ B(δ0) ∩U(ε)とする. x0 は U(ε)の内点で, U(ε)内ではddtV (ϕ(t, 0,x0)) > 0だから, V (ϕ(t, 0,x0))は tに関して単調増加で, V (ϕ(0, 0,x0)) > 0である.
電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 52
• ϕ(t, 0,x0) ⊂ U(ε)と仮定して矛盾を導く. W (ε) =U(ε) ∩ {x : V (x) ≥ V (x0)} とおくと, W (ε)はコンパクトで, d
dtV (ϕ(t, 0,x0)) > 0 だから,
ϕ(t, 0,x0)) ⊂ W (ε)である. W (ε)で, ∂V∂xf(x)
は連続で, その値は正だから, 正の最小値 µを取る. したがって, d
dtV (ϕ(t, 0,x0)) ≥ µ であり,よって V (ϕ(t, 0,x0))は無限大に発散する. 一方で, W (ε)はコンパクトだから, V (x)はW (ε)において有限の最大値を取る. これは矛盾である.よって ϕ(t, 0,x0) 6⊂ U(ε).
電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 53
• 次に, ϕ(t, 0,x0) 6⊂ B(ε)であることを背理法により示す. ϕ(t, 0,x0) ⊂ B(ε) と仮定し, T =sup{t ≥ 0 : ∀τ ≤ t,ϕ(t, 0,x0) ⊂ U(ε)} とおく. x0 が U(ε) の内点だから, T > 0 であり,ϕ(t, 0,x0) 6⊂ U(ε)だから, T < ∞である. さて,0 ≤ t < Tならϕ(t, 0,x0) ⊂ U(ε)で, V (ϕ(t, 0,x0)) ≥V (x0), ϕ は連続関数だから, V (ϕ(T, 0,x0)) ≥V (x0). 一方, ν > T なら, ∃τ ≤ ν, ϕ(t, 0,x0) 6⊂U(ε)}だから, V (ϕ(ν, 0,x0)) ≤ 0, よって, 再びϕの連続性から, V (ϕ(T, 0,x0)) ≤ 0 (矛盾)
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Lyapunovの線形化法 (1)
• Lyapunovの線形化法は, システムの平衡点における線形近似を使ってその安定性を判定する方法.
• 議論の簡単のために, 平衡点を原点に移す座標変換がすでに施され, これから原点におけるシステムの安定性を判定したい, という状況を考える.
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Lyapunovの線形化法 (2)
• 微分方程式 x = f (x)の安定性を判定したい.
原点が平衡点であると仮定したから, f (0) =
0である.
• f (x)が原点において線形近似可能であると
仮定し, A =∂f∂x
∣
∣
∣
x=0とする.
電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 56
Lyapunovの線形化法 (3)
• 線形近似可能であることと原点が平衡点であることを組み合わせると, ある g(x)に対し,
f (x) = Ax + g(x)で, lim‖x‖→0‖g(x)‖
‖x‖= 0
となる.
電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 57
Lyapunovの線形化法 (4)
• 以下の事実が成り立つ.
⊲ Aのすべての固有値の実部が負なら, 原点は Lyapunov安定な平衡点である.
⊲ Aがひとつでも実部が正の固有値を持てば, 原点は Lyapunov安定な平衡点でない.
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Lyapunovの線形化法 (5)
• 非線形システムの安定性を線形近似の固有値から判定する方法を, Lyapunovの線形化法という.
電 347, 電 397 システム工学 I (2016) 琉球大学工学部電気電子工学科 担当:半塲 59
Aのすべての固有値の実部が負のときPA + ATP =
−I を満たす P > 0を取り, V (x) = xTPxとおくと,∂V∂xf(x) = xTP (Ax+g(x))であるが, xTPAxはスカ
ラーゆえ転置しても不変だから, xTPAx = xTATPx
でもあり, よって xTPAx = 12x
TPAx+ 12x
TPAx =12x
TPAx+ 12x
TATPx = −12‖x‖
2. ゆえに, ∂V∂xf(x) ≤
−12‖x‖
2 + ‖P ‖‖x‖‖g(x)‖. よって, ‖x‖が十分小さけ
れば ∂V∂xf(x) ≤ 0となるから, Lyapunovの直接法より,
平衡点は安定.
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Aが実部が正の固有値を持つとき
• まず, Lyapunovの方法は, 転置を共役転置に,対称行列をHermite
行列に置き換えれば,複素ベクトル空間で定義された線形システムにも適用できることに注意する. そこで, はじめから複素ベクトル空間を前提にして議論を進める.
• Aの固有値のうち実部が正でその値が最小のものを λmとし, ε =12Reλmとすると, A− εIは虚軸上に零点を持たない.
• T−1 (A− εI)T = diag(Λ1,Λ2)がA−εIのJordan標準形で, Λ1
とΛ2はそれぞれ実部が正および負の固有値に対応する Jordanブロックを集めたものとする. このとき, T −1AT = diag(Λ1 +
εI,Λ2 + εI)である.
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• P 1および P 2を, P 1(Λ1 + εI) + (Λ1 + εI)∗P 1 = I, P 2(Λ2 +
εI) + (Λ2 + εI)∗P 2 = −Iを満たすHermite行列とする.
• z = T−1x とし, これを diag(Λ1,Λ2) に適合する形で (z1, z2)
のように分割する. この座標系では, もとの微分方程式は z =
T−1f (Tz)に変わるが, この右辺を λ(z)と書き, さらに (z1, z2)
に適合する形で (λ1(z),λ2(z))と書き直す.
• h(z) = T−1g(Tx) とすると, z = T −1ATz + h(z) で,
lim‖z‖→0‖h(z)‖‖z‖
= 0である.
• V (z) = z∗1P 1z1−z∗
2P 2z2とおき, U(r) = B(r)∩D∩{z : V (z) >
0}とする. z ∈ U(r)なら z∗1P 1z1 > z∗
2P 2z2である.
• P = diag(P 1,P 2)とおく.
• z ∈ U(r)なら・・・
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∂V
∂zλ(z) = ‖z‖21 + 2εz∗
1P 1z∗1 + ‖z‖22 − 2εz∗
2P 2z∗2
+ 2z∗1P 1h1(z)− 2z∗
2P 2h2(z)
≥ ‖z‖21 + ‖z‖22 + 2z∗1P 1h1(z)− 2z∗
2P 2h2(z)
よって
∂V
∂zh(z) ≥ ‖z‖2 − ‖P ‖‖z‖‖h(z)‖ = ‖z‖2
(
1− ‖P ‖‖h(z)‖
‖z‖
)
• lim‖z‖→0‖h(z)‖‖z‖
= 0だったから, rが十分小さいとき, U(r)において ∂V
∂zλ(z) > 0となる. よって, Chetaevの不安定性判別法により, このシステムは不安定.
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参考文献
• W. M. Haddad and V. Chellaboina, Nonliner Dynamical Systems
and Control, Princeton University Press, 2008
• 前田, 線形システム, 朝倉書店, 2001
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