Linux で SD-WiFi Card を使う

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Linux SD-WiFi Card を使う KenichiroMATOHARA http://matoken.org/ SD-Wifi card? ここでは Eye-Fi をはじめとする無線 LAN 機能の内蔵された SD Card のことを呼んでいま す。SD-IO 規格の SD 無線 LAN Card ではありません。 これでどういったことができるかというと、撮影した写真を無線 LAN 経由で自動的にアッ プロードしたり、特定の写真を取り込んで Twitter に登録したり、周りの Wifi 環境から位置情 報を写真に書き込んだり、Card 同士で写真の交換をしたりといったことができます。 Card の種類 以前は Eye-Fi のみでしたが、ここ数年で製品が増えました。以下は私の把握している Card の一覧です。 SD 容量 SD 速度 無線規格 同時接続台数 Eye-Fi 4,8,16GB Class 6 or 10 b/g/n(~12Mbps) - Flucard 8,16GB Class 6 b/g/n(~65Mbps) 5 FlashAir 8GB Class 6 b/g/n(~72.2Mbps) 可能 1 AirCard 4~32GB 2 Class10 3 b/g/n 3 動作として大きく 2 種類に分かれています。Eye-Fi は撮影や写真を基本的に全てアップ ロードします。他の製品はスマートフォンや PC などから選択したものだけを SD Card からコ ピーして利用します。(全て DL することも可能です。) 最近の一眼レフで RAW+JPEG 撮影などをすると 1 ショット数十 MB となるので Eye-Fi は転送速度が足りなくなってしまいました。最近は古めのコンパクトデジカメでメモを取るとき などに使っています。 他の Card では撮影してすぐにスマートフォンで写真を取り込み、SNS へ投稿するといった 利用をしています。私の Google+の写真はこれでアップロードしたものが多いです。(Google+ は長辺 2048pix に縮小されるのでスマートフォン上で一旦縮小してからアップロードしていま す。) 1 実用同時接続数は 4 台程度とのこと。 2 利用カードに依存。 3 利用カードに依存。microSD 単体より少し速度が落ちる。 23

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comicmarket83 の小江戸らぐLinuxUser に寄稿した記事

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Linuxで SD-WiFi Card を使うKenichiroMATOHARA

http://matoken.org/

SD-Wifi card?ここでは Eye-Fi をはじめとする無線 LAN 機能の内蔵された SD Card のことを呼んでいま

す。SD-IO 規格の SD 無線 LAN Card ではありません。

これでどういったことができるかというと、撮影した写真を無線 LAN 経由で自動的にアッ

プロードしたり、特定の写真を取り込んで Twitter に登録したり、周りの Wifi 環境から位置情

報を写真に書き込んだり、Card 同士で写真の交換をしたりといったことができます。

Card の種類以前は Eye-Fi のみでしたが、ここ数年で製品が増えました。以下は私の把握している Card

の一覧です。

SD 容量 SD 速度 無線規格 同時接続台数

Eye-Fi 4,8,16GB Class 6 or 10 b/g/n(~12Mbps) -

Flucard 8,16GB Class 6 b/g/n(~65Mbps) 5

FlashAir 8GB Class 6 b/g/n(~72.2Mbps) 可能1

AirCard 4~32GB2Class10 迄3 b/g/n 3

動作として大きく 2 種類に分かれています。Eye-Fi は撮影や写真を基本的に全てアップ

ロードします。他の製品はスマートフォンや PC などから選択したものだけを SD Card からコ

ピーして利用します。(全て DL することも可能です。)

最近の一眼レフで RAW+JPEG 撮影などをすると 1 ショット数十 MB となるので Eye-Fi で

は転送速度が足りなくなってしまいました。最近は古めのコンパクトデジカメでメモを取るとき

などに使っています。

他の Card では撮影してすぐにスマートフォンで写真を取り込み、SNS へ投稿するといった

利用をしています。私の Google+の写真はこれでアップロードしたものが多いです。(Google+

は長辺 2048pix に縮小されるのでスマートフォン上で一旦縮小してからアップロードしていま

す。)

1 実用同時接続数は 4 台程度とのこと。

2 利用カードに依存。

3 利用カードに依存。microSD 単体より少し速度が落ちる。

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利用機材にもよると思いますが、一番安定しているのは Eye-Fi で続いて

FlashAir、Flucard/AirCard は同じくらいの安定度に感じます。

Eye-Fi は先行だけあって安定度や対応カメラが多いです。手元のカメラでは全て動作して

います。モデルが幾つか有り、JPEG しか転送できない、RAW 転送対応、ジオタグ付与対応な

どがモデルにより変わります。古いだけあって容量や速度がいまいちでしたが(Class6 8GB

迄)、先日新型の 16GB Class10 のモデルが出ました。

FlashAir は東芝の製品です。ストレージには定評があるので安心感があります。使い勝手

は安定していますがあまり面白みはありません。良くも悪くも日本ぽいです。

Flucard は Trek2000 が出している製品です。ブザーが内蔵されていて他の製品と違い音

で状況が確認できるのが便利です。(切ることもできます)ただ、2 世代目(Gen2)までは不安

定でした。これから購入する場合は 3 世代目(Gen3)以降を購入するのをお勧めします。日本

では 1 世代目は未発売。2 世代目は PLANEX から 4GB と 8GB が発売されました。3 世代目

は見た目は 2 世代目と同じですが、8GB/16GB が製造元の Trek2000 から Amazon や楽天経

由で直販されています。こちらの直販を利用するか、16GB であれば確実に 3 世代目以降で

す。

Amazon 8GB http://www.amazon.co.jp/gp/product/B005VMQU06Amazon 16GB http://www.amazon.co.jp/gp/product/B009JVSORW

楽天 8GB http://item.rakuten.co.jp/trek/10000001?scid=we_twt_upc60

楽天 16GB http://item.rakuten.co.jp/trek/10000008/

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AirCard も特徴的な製品です。microSD Card Reader として動作します。挿入する microSD

により容量や速度が変わります。写真を大量に撮影する人は microSD を交換することで SD-

Wifi Card を使えるのでコスト的に助かるでしょう。

Linuxで使う場合例によって Linux サポートを謳っている製品はありません。

Eye-Fi

ファームウェアアップデートや設定も専用アプリ(Windows or Mac OS X)でないと利用でき

ませんが、Open Eye-Fi Configuration Tool4 を利用することにより Wifi AP の登録や削除、な

どができるようになります。(このコマンドの操作については LinuxUSER2011 年夏号か、次の

ページを参照下さい。 http://hpv.cc/~maty/pukiwiki1/index.php?Linux%2FEye-Fi )また、ス

マートフォンやブラウザ経由で登録済みのアップロード先の切り替えも可能です。

なので、Linux 単体でできないのは、ファームウェアアップデート及びアップロード先の登録

になります。前もって設定しておけば運用可能かと思います。

Flucard/AirCard

この 2 つはほぼ同じ動作をします。(どうも AirCard がコピーしたよう?)

全機能が Linux からも問題なく利用できます。というのも設定などはブラウザ上で行います

し、ファームウェアアップデートも SD Card 内にデータを展開して起動するだけでアップデート

されるので SD Card と無線 LAN へのアクセスさえできれば環境を問いません。

※AirCard は今のところファームウェアアップデートがないのですが、同様の仕組みがある

ので恐らく Flucard と同様に SD Card にファイルを展開して通電するだけになると思います。

確実に Linux で完結させたい場合は Flucard を選択したほうが良いかもしれません。

FlashAir

FlashAir は設定はブラウザ経由でできるのですが、ファームウェアアップデートについては

専用アプリケーション(Windows/Mac OS X)が必要です。通常運用だけであれば Linux 環境

だけでも OK です。

実はこのカードは telnetd/ftpd が起動しています。用途によっては ftp 経由で写真のやり取

りをすると便利です。

4 http://sr71.net/projects/eyefi/

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Flucard の APIを触ってみるFlucard は少なくとも日本発売当初から以下のページで API を公開しています。(更新はさ

れていないのでちょっと悲しいですが)これを少し叩いてみます。http://www.flu-card.com/developer.html

写真一覧のリスト取得

http://www.flu-card.com/developer_photolist.html

Flucard の IP アドレスが 192.168.1.1 の時 http://192.168.1.1/cgi-bin/photolist を開くと

HTML形式で写真の一覧の URL が表示されます。同時に以下の URL でプレーンテキスト

の一覧ファイルが生成されます。 http://192.168.1.1/photolist.txt プレーンテキストの方が利用

しやすいですが、w3m などのコマンドで html をパースするとプレーンテキスト形式のリストと

同等のものが取得できますし、2回URL を叩く必要もないのでプレーンテキストの方は利用

していません。

これを利用して、写真を一括ダウンロードするには以下のようなコマンドで可能です。$ w3m -dump http://192.168.1.1/cgi-bin/photolist|wget -i -

その他最新の写真 1枚を取得する場合は$ w3m -dump http://192.168.1.1/cgi-bin/photolist|tail -1|wget -i -

RAW+JPEG などで撮影していて最新の JPEG ファイルだけが必要な場合は$ w3m -dump http://192.168.1.1/cgi-bin/photolist|grep -i \.jpg | tail -1|wget -i -

等色々と応用が効きそうです。

サムネイル画像の取得

http://www.flu-card.com/developer_thumbnail.html

サムネイル画像一覧の取得という機能はないため、一旦上の写真一覧のリスト取得を行い、

それを元のこの API でサムネイル画像を取得する必要があります。Flucard の IP アドレスが

192.168.1.1 で、写真のパスが DCIM/100PENTX/IMGP0001.JPG の場合以下のようにしてサ

ムネイルが取得できます。wget http://192.168.1.1/cgi-bin/thumbNail?fn=/100PENTX/IMGP0001.JPG

上の写真一覧のリスト取得と組み合わせると以下のようにしてサムネイルの一括取得も可

能です。$ w3m -dump http://192.168.1.1/cgi-bin/photolist|grep -i \.JPG|tail -1| cut -f6-7 -d'/'| perl -e '$i=<STDIN>;chomp $i;$j=$i;$j=~s/\//_/o;print`wget http://192.168.1.1/cgi-bin/thumbNail?fn=/$i -O $j`

同様に、最新の 1枚のサムネイルを取得する場合は以下のようにして取得できます。$ w3m -dump http://192.168.1.1/cgi-bin/photolist|grep -i \.JPG|tail -1| cut -f6-7 -d'/'| xargs -I{} wget http://192.168.1.1/cgi-bin/thumbNail?fn=/{} -O thumbNail.jpg

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SD Card へのファイルアップロードhttp://www.flu-card.com/developer_upload_to_sd.html

SD Card 内の写真取得だけでなく、逆に PC などから写真に限らずファイルのアップロード

も可能です。 Flucard の IP アドレスが 192.168.1.1 で、アップロード先のディレクトリが

DCIM/100PENTX/、アップロードするファイルが UpLoad.pdf の場合以下のようにしてアップ

ロードできます。$ curl --form file=UpLoad.pdf http://192.168.1.1/cgi-bin/upload_to_sd?fd=/DCIM/100PENTX

その他の API

ブザーの操作(電子オルガンのようなことも可能)、フォルダ生成/削除、ファイル/フォルダの

改名、時間取得/設定、一部 EXIF の操作が書かれています。

Wifi の off や電波強度変更も項目はあるのですが、Coming Soon となったままで公開され

ていません。この機能は利用しがいが有りそうなのですが。

Linuxとして遊ぶFlucard は旧ファームウェアでは Telnetd/ftpd が有効になっていたり、現行のファームウェア

イメージを少し変更するだけで Telnetd/ftpd を有効にすることも可能です。AirCard は現在も

Telnetd/ftpd が有効になっています。Telnetd 経由で Linux端末としても利用できます。

中にはクロスコンパイルして色々なアプリケーションを導入して遊んでいる人も居ます。

TipsCard の Network に接続すると GW や DNS

サーバも設定されてしまうので、設定しないよ

うにしておくと便利です。

カメラの自動スリープ時間は長めにとって

置いたほうが良いです。何度か操作を試して

転送時間を確認しておきましょう。

自動スリープ時間を長くしておきカメラをキ

ビから下げて歩いたりしていると設定が変

わってしまっていることがあるので撮影時注

意しましょう。

バッテリの減りはやはり悪くなります。私の

場合は倍近くバッテリの減りが早くなりました。

写真を転送しないときはこまめに電源を落とし

たり呼びバッテリを多めに持ちましょう。

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カードリーダーによっては無線 LAN 機能が不安定になります。うまく行かない場合は別の

カードリーダーを試してみるとうまく行くかもしれません。

おわりにということで現在 Linux で使う分には Flucard Gen3 か AirCard を利用するのが安心です。

値段で行くと AirCard が優勢でしょうか。ただ、コピーされているのが本当であれば心情的に

Flucard の方を使いたいところです。

電池の持ちを考えると Wifi より Bluetooth の方が良さそうなのですが、恐らく速度面やライ

センスがネックなのかなと思っています。 速度については現在普及している 2.n+EDR で

1.3Mbps 程度で少し辛そうですが 3.n+HS では 24Mbps 出るようなのでこれなら実用になりそ

うに思います。でも 3.n が採用されているデバイスは少なそうなので製品化は難しいのでしょ

うね。でもどこかが出してくれないかなと期待しています。(OLYMPUS が自社製品向けのオ

プションで PENPAL PP-15というカメラのストロボ部に取り付けて Bluetooth で画像を転送す

る製品を出していますが、縮小済みの画像しか転送できないようです。これもやはり速度が

ネックになっていそうです。)

5 http://olympus-imaging.jp/product/dslr/accessory/others/pp1/index.html

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