の鉄筋の突出長さ(L)は、最低、圧接器 …½žD32用 380 175 70 D35~D38用 445...

3
Vol.45No.1 12 ガス圧接継手工事においてJISZ3881に基づく技 量付加試験を行う場合があります。そのとき、曲 げ試験片の曲げられた外面に微細な割れが生じることがあ りますが、不合格となるのでしょうか? 当該JISの最新版JISZ3881:2009(鉄筋のガス圧接 技術検定における試験方法及び判定基準)には、 次のように規定されています。 「⚑⚐ 合否判定基準 b) 曲げ試験 すべての試験片の 曲げられた平行部の外面に、割れが肉眼によって認められ ない場合を合格とする。」 また、当該JISの解説では、次のように記述されていま す。 「6.6 合否判定基準(本体の箇条⚑⚐)6.6.2曲げ試験 曲 げ試験を行った結果、すべての試験片の曲げられた平行部 の外面に、割れが肉眼によって認められない場合を合格と した。ただし、この場合の割れとは、肉眼をもって観察さ れるものをいい、拡大鏡などを用いて発見できる割れをい うのではない。また、鉄筋の材質に起因する場合もあるの で、圧接面及びそのごく近傍に生じた割れ以外のものにつ いては対象としない。」 本協会では肉眼で見える割れであっても、圧接面又はそ の極近傍において円周方向に伸びた明らかな割れでなけれ ば不合格としていません。これは、次の理由によるもので す。 鋼の製造時には偏析により介在物が生じるが、鉄筋のよ うな圧延材の場合には、介在物が圧延方向に伸長します。 なお、介在物の存在状況を観察することで、鉄筋素材の変 形状態、すなわち、メタルフローを確認できます。 圧接前の鉄筋では、介在物が長手方向に伸びた状態で存 在していますが、鉄筋を圧接すると、圧接部付近の介在物 は、圧接部のふくらみに沿って変形します(写真⚒)。 したがって、圧接した試験材を当該JISに基づいて、ふ くらみ部を直径 1.1d(d:鉄筋の呼び名の数値)の平行部を 有する曲げ試験片に加工することによって、加工後の平行 部表面に介在物が現れる(図⚑)ため、曲げ試験によって 平行部が曲げを受け、この表面に現れた偏析の一部が開口 し微細な割れが生じることがあります。これは、鉄筋材質 によるもので、圧接技量に起因するものではありません。 以上の理由から、圧接面及びその極近傍に生じた割れ以 外のものについては不合格の対象としていません。また、 極近傍に生じた割れでも鉄筋材質によるものと判断される 場合には、別の鉄筋を用いて再試験を行う必要があります。 (技術委員会委員 矢部喜堂) 基礎梁の施工において、打ち継部からの鉄筋の突 出長さはどの程度にしておけば、施工可能でしょ うか。 打ち継部の鉄筋を圧接する場合の概略を下図に示 します。ガス圧接継手は鉄筋端面を加圧、加熱し て接合する工法で、加圧・加熱によって原子結合で一体と なる工法です。このため、鉄筋端面には所定の加圧力を加 えるための専用の圧接器を取り付ける必要があります。こ の圧接器は鉄筋径に応じて大きさが異なりますが、鉄筋径 毎にあるのではなく、下表に示すようにD⚒⚒~D⚓⚒用、D⚓⚕ ~D⚓⚘用、D⚔⚑用、D⚕⚑の⚔種類があります。打ち継部から 写真⚑ 曲げ試験片の平行部に生じた微細な割れ 写真⚒ 鉄筋及び圧接部のメタルフロー 図⚑ 圧接部表面における介在物の出現

Transcript of の鉄筋の突出長さ(L)は、最低、圧接器 …½žD32用 380 175 70 D35~D38用 445...

Page 1: の鉄筋の突出長さ(L)は、最低、圧接器 …½žD32用 380 175 70 D35~D38用 445 200 90 D41用 495 230 100 D51用 580 260 110 14 Vol.45No.1 Q日本鉄筋継手協会規格JRJS

Vol.45No.112

QQQQQQQQQQQQQQQQQQQQQQ ガス圧接継手工事においてJIS Z 3881に基づく技量付加試験を行う場合があります。そのとき、曲

げ試験片の曲げられた外面に微細な割れが生じることがありますが、不合格となるのでしょうか?

AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA 当該JISの最新版JIS Z 3881:2009(鉄筋のガス圧接技術検定における試験方法及び判定基準)には、

次のように規定されています。「  合否判定基準 b) 曲げ試験 すべての試験片の曲げられた平行部の外面に、割れが肉眼によって認められない場合を合格とする。」また、当該JISの解説では、次のように記述されています。「6.6 合否判定基準(本体の箇条 )6.6.2 曲げ試験 曲げ試験を行った結果、すべての試験片の曲げられた平行部の外面に、割れが肉眼によって認められない場合を合格とした。ただし、この場合の割れとは、肉眼をもって観察されるものをいい、拡大鏡などを用いて発見できる割れをいうのではない。また、鉄筋の材質に起因する場合もあるので、圧接面及びそのごく近傍に生じた割れ以外のものについては対象としない。」本協会では肉眼で見える割れであっても、圧接面又はそ

の極近傍において円周方向に伸びた明らかな割れでなければ不合格としていません。これは、次の理由によるものです。鋼の製造時には偏析により介在物が生じるが、鉄筋のよ

うな圧延材の場合には、介在物が圧延方向に伸長します。なお、介在物の存在状況を観察することで、鉄筋素材の変形状態、すなわち、メタルフローを確認できます。圧接前の鉄筋では、介在物が長手方向に伸びた状態で存

在していますが、鉄筋を圧接すると、圧接部付近の介在物

は、圧接部のふくらみに沿って変形します(写真 )。したがって、圧接した試験材を当該JISに基づいて、ふ

くらみ部を直径1.1d(d:鉄筋の呼び名の数値)の平行部を有する曲げ試験片に加工することによって、加工後の平行部表面に介在物が現れる(図 )ため、曲げ試験によって平行部が曲げを受け、この表面に現れた偏析の一部が開口し微細な割れが生じることがあります。これは、鉄筋材質によるもので、圧接技量に起因するものではありません。以上の理由から、圧接面及びその極近傍に生じた割れ以外のものについては不合格の対象としていません。また、極近傍に生じた割れでも鉄筋材質によるものと判断される場合には、別の鉄筋を用いて再試験を行う必要があります。

(技術委員会委員 矢部喜堂)

QQQQQQQQQQQQQQQQQQQQQQ 基礎梁の施工において、打ち継部からの鉄筋の突出長さはどの程度にしておけば、施工可能でしょ

うか。

AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA 打ち継部の鉄筋を圧接する場合の概略を下図に示します。ガス圧接継手は鉄筋端面を加圧、加熱し

て接合する工法で、加圧・加熱によって原子結合で一体となる工法です。このため、鉄筋端面には所定の加圧力を加えるための専用の圧接器を取り付ける必要があります。この圧接器は鉄筋径に応じて大きさが異なりますが、鉄筋径毎にあるのではなく、下表に示すようにD ~D 用、D~D 用、D 用、D の 種類があります。打ち継部から

写真  曲げ試験片の平行部に生じた微細な割れ

写真  鉄筋及び圧接部のメタルフロー

図  圧接部表面における介在物の出現

Page 2: の鉄筋の突出長さ(L)は、最低、圧接器 …½žD32用 380 175 70 D35~D38用 445 200 90 D41用 495 230 100 D51用 580 260 110 14 Vol.45No.1 Q日本鉄筋継手協会規格JRJS

Vol.45No.1 13

の鉄筋の突出長さ(L)は、最低、圧接器の(c+b/ )必要です。したがって、D の場合は、( + / = mm)となり、余裕を見て、最低 mm程度確保できれば施工可能です。また、D の場合は( + / = mm)となり、余裕をみて、 mm程度であれば圧接可能です。なお、以上の条件は施工性に関する条件です。ご質問の

場合の鉄筋の本数が分かりませんが、鉄筋が複数本の場合には、同一断面での全数継手となる可能性があります。継手位置及び、同一断面での全数継手の可否については監理・責任技術者とご相談のうえ、監理・責任技術者の指示に従ってください。

(技術委員会委員 吉野次彦)

QQQQQQQQQQQQQQQQQQQQQQ 異メーカー間の鉄筋のガス圧接継手は可能でしょうか。

AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA 最近の鉄筋コンクリート用棒鋼(JIS 3112)は、そのほとんどが電炉メーカーで製造されています。

また、同じメーカーでも、各地に工場を有しており、工場毎に、製造方法、化学成分等が多少異なります。しかし、圧接できる材料はJIS G 3112(鉄筋コンクリー

ト用棒鋼)の規格品で、鉄筋径は mm以上(異形鉄筋の場合はD 以上)と規定されています。種類はSD A,BからSD まで圧接が可能で、この規定に適合する鉄筋であれば、異なるメーカー同士でも圧接は可能です。なお、種類の異なる鉄筋は、 鋼種違いまで、また、鉄筋径に関しては、 mm差までの鉄筋であれば圧接可能です。しか

し、径違いの鉄筋が圧接できる工法は手動ガス圧接の場合のみで、自動ガス圧接の場合は装置の関係で径違いは圧接できません。

日本鉄筋継手協会(旧: 日本圧接協会)では、「メーカーの異なる鉄筋の圧接性に関する試験研究」を昭和 年( 年)に行っており、メーカーの異なる鉄筋の組み合わせでも圧接性に問題のないことを確認しています。また、異メーカー間の試験研究報告書が必要な場合は、当協会にお問い合わせください。 (技術委員会委員 吉野次彦)

QQQQQQQQQQQQQQQQQQQQQQ 鉄筋継手に関して、溶接継手を検討しています。設計図書に継手工法を指定したいと思いますが、

「突合せアーク溶接継手」(エンクローズ溶接継手)に対する図面上の表示(記号)について教えてください。鋼材の突合せ溶接の場合は、∥ もしくは レ 又は K など、開先形状の指定をしますが、鉄筋の「突合せアーク溶接継手」はどのように表示するのですか?

AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA 鉄筋継手の場合は、ガス圧接継手、溶接継手、機械式継手などの工法及び継手位置等を設計図書の

特記仕様書に表示しますが、いずれの工法も、工法としての記号はありません。設計図書で指定する場合は、ガス圧接継手、溶接継手、機械式継手など、継手の工法と継手位置を指定するのみです。鋼材の溶接に関しては、設計条件によって、すみ肉溶接、突合せ溶接などがあり、又、突合せ溶接でも、設計条件によって開先形状も異なるため、設計図書に開先形状を∥ もしくは レ 又は K と指定しますが、鉄筋継手の場合は、工法によって性能が異なることはなく、すべて母材強度を保証する継手です。したがって、工法による記号はありません。鉄筋の溶接継手には、裏当て材の材質、形状によって何種類かの工法がありますが、すべての工法が、横向き(柱筋)、下向き(梁筋)とも、鉄筋軸方向に直角に切断して、所定のルートギャップを確保した状態を保持し、この隙間に溶接棒を挿入して溶融金属と鉄筋母材を溶融する工法です。ルートギャップは工法によって異なりますが、一般的に mm~ mm程度です。したがって、設計図書にルートギャップの指定をする必要はありません。なお、下向きと横向きでは溶接技術が異なり、溶接工の資格にも、下向きのみ施工できる資格者と横向き、下向きの両方が出きる資格者がありますので、施工前に溶接技量者の資格証を確認してください。 (技術委員会委員 吉野次彦)

圧接器の寸法(mm) a b cD22~D32用 380 175 70D35~D38用 445 200 90D41用 495 230 100D51用 580 260 110

Page 3: の鉄筋の突出長さ(L)は、最低、圧接器 …½žD32用 380 175 70 D35~D38用 445 200 90 D41用 495 230 100 D51用 580 260 110 14 Vol.45No.1 Q日本鉄筋継手協会規格JRJS

Vol.45No.114

QQQQQQQQQQQQQQQQQQQQQQ 日本鉄筋継手協会規格JRJS 0005(鉄筋コンクリート用異形棒鋼溶接部の超音波探傷試験方法及

び判定基準(案))において、「・・・相対するリブ上に送受信探触子を配置し、K走査基準線に対して送受信探触子の距離がほぼ等間隔となるように連動させながら前後走査する。・・・」とありますが、JIS Z 3062(鉄筋コンクリート用棒鋼ガス圧接部の超音波探傷試験方法及び判定基準)とは、走査方法が変わるのでしょうか?

AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA 施工条件の設定や技能者の技量が適正でなかったりした場合は、鉄筋のガス圧接部及びガスシール

ドアーク半自動溶接部に、許容できない不具合や欠陥が発生することがあります。このため、施工後の超音波探傷検査を行い、要求性能を満足する品質が得られているか否かを確認いたします。この場合、ガス圧接部の超音波探傷検査方法は、JIS Z 3062(鉄筋コンクリート用棒鋼ガス圧接部の超音波探傷試験方法及び判定基準)に基づいて行われ、また、溶接部はJRJS 0005(鉄筋コンクリート用異形棒鋼溶接部の超音波探傷試験方法及び判定基準(案))に基づいて行われています。何れもどの位置にどのような大きさの内部欠陥があるか

は不明ですので、接合部又は溶接部の全断面を隈なく探傷する必要があります。そのために、両基準ともに探触子の走査方法及び走査範囲を規定しています。その主目的は、探触子から発信された超音波が欠陥に入射・反射され、相対するリブ上に配置された別の探触子で適正に受信されて、内部欠陥が検出されますので、送信用探触子と受信探触子の適正な配置関係を保持するためです。このことをJIS Z 3062の解説では、次のように解説しています。

探触子の走査は,基本的には想定される圧接面に対して解説図 のような走査が理想的である。すなわち,鉄筋のリブの上において,一方の探触子(A)を圧接部のふくらみに接近した位置( )に置き,他方の探触子(B)を次の式のY で示される位置( )近辺に置き前後走査する。Y1+Y2=Dtanθここに,Y :圧接面から一方の探触子(A)の入射点まで

の距離Y :圧接面から一方の探触子(B)の入射点まで

の距離θ:屈折角さらに,探触子(B)で細かい前後走査を繰り返しな

がら,圧接部のふくらみに接近した位置まで走査する。

このとき,探触子(A)は細かい前後走査を繰り返しながら,探触子(B)の走査に対応して常に上の式が成立するように走査する。この走査を圧接部のふくらみの両側において行う。前後走査するのは,圧接面が想定した位置(圧接部の中心)にない場合の欠陥の見落しを防ぐためである。しかし,この走査は理想的ではあるが,探傷作業に習熟する必要があるので,圧接部探傷に十分であると考えられる本体に示す走査方法とした。すなわち,一方の探触子を圧接部のふくらみに接近した位置,圧接面からほぼ1.4Dの位置(1/2Dtanθ),及び圧接面からの Dの位置(2/3Dtanθ)に順次固定し,各々の位置において,もう一方の探触子を圧接部のふくらみに接近する位置から圧接面より D(2/3Dtanθ)の位置まで前後走査する方法とした。

上記から明らかなように、JIS Z 3062とJRJS 0005との走査方法及び走査範囲に関する表現は若干変わりますが、相違するものではありません。特に、面積の小さい欠陥を検出対象としている溶接部の探傷では、探触子の適正配置を確保して、欠陥の見落としを軽減し、また、妨害エコーの識別精度を向上させるために、JIS Z 3062にはない、K走査基準線やタンデム基準線を、溶接継手部のリブ上にマークすることを規定しています。 (技術委員会委員 倉持 貢)

解説図  走査法