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Kobe University Repository : Kernel タイトル Title 父親の養育性・役割取得を促す教育プログラムのための観点導 (Derivation of the Viewpoints for Parenting Program Intended to Enhance Paternal Nurturance and Role-taking) 著者 Author(s) 寺見, 陽子 / , 憲治 / 松島, / 及川, 裕子 / 寺村, ゆかの / 伊藤, 掲載誌・巻号・ページ Citation 神戸大学大学院人間発達環境学研究科研究紀要,9(2):1-22 刊行日 Issue date 2016-03 資源タイプ Resource Type Departmental Bulletin Paper / 紀要論文 版区分 Resource Version publisher 権利 Rights DOI JaLCDOI 10.24546/81009447 URL http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/81009447 PDF issue: 2020-09-21

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Kobe University Repository : Kernel

タイトルTit le

父親の養育性・役割取得を促す教育プログラムのための観点導出(Derivat ion of the Viewpoints for Parent ing Program Intended toEnhance Paternal Nurturance and Role-taking)

著者Author(s) 寺見, 陽子 / 南, 憲治 / 松島, 京 / 及川, 裕子 / 寺村, ゆかの / 伊藤, 篤

掲載誌・巻号・ページCitat ion 神戸大学大学院人間発達環境学研究科研究紀要,9(2):1-22

刊行日Issue date 2016-03

資源タイプResource Type Departmental Bullet in Paper / 紀要論文

版区分Resource Version publisher

権利Rights

DOI

JaLCDOI 10.24546/81009447

URL http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/81009447

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神戸大学大学院人間発達環境学研究科 研究紀要 第9巻 第2号 2016

Bulletin of Graduate School of Human Development and Environment, Kobe University, Vol.9 No.2 2016研究論文

* 神戸松蔭女子学院大学人間科学部・教授** 京都橘大学人間発達学部・教授*** 群馬大学大学院保健学研究科・博士後期課程院生**** 近大姫路大学教育学部・准教授***** 神戸大学大学院人間発達環境学研究科・教育研究補佐員****** 神戸大学大学院人間発達環境学研究科・教授

(2015年9月30日 受付2015年10月15日 受理)

Ⅰ.問題の所在

 1980年代以後、「養育する父親」という名称で、父親役割には新

たな文化的イメージが付与されるようになった。父親は、家計維

持者、稼ぎ手という道具的役割を担うのではなく、新しい父親、

近代的父親、アンドロロジー的父親などと呼ばれるようになり、

以前と比べて、子どもの世話や教育により関与するようになって

きている。言い換えれば、父親は「家庭の大黒柱」という「権威

的な父親」から、子どもを養育する「ケアラーとしての父親」と

いう新しい文化的イメージが付与されるようになった(多賀 2006)。

しかし、こうした文化的イメージのもとで、はたして父親の育児

に対する気持ちや行動は、実際に、どのように生じ、どこまで変

化しているのだろうか。こうした課題意識に基づいて、まずは、

本研究の目的である「養育性と役割取得を促す教育プログラム」

がなぜ必要なのかを明らかにするために、これまでの父親研究を

概観し、先行研究から父親の育児参加≪注1≫を規定する諸要因

を整理した上で、父親の育児を促すための支援の現状とそのため

に必要となる枠組みを提示する。

1.父親研究のこれまで

 2011年版の『児童心理学の進歩』の第6章「養育する親として

の父親」の中で、大野・柏木(2011)は、1996年から2010年秋ま

でに『心理学研究』や『発達心理学研究』などの学会誌5誌に掲

載された父親を研究対象とした父親関連の論文数が91本であるこ

とを報告している。この数は、同じ5誌に1985年から1996年の秋

までに掲載された父親を扱った研究数27本に比して大幅な増加で

あるという。同時に、父親研究の内容においても、「モデルとして

の父親」を扱った研究から育児など「子どもとかかわる父親」を

対象とした研究へと、その関心がシフトしていることも指摘され

ている。心理学的な研究だけでなく、父親研究を社会学や福祉学

などの領域にも広げると、近年の父親の育児参加などを扱った研

究の数は相当な数になるものと思われる。これら数多くの父親研

究のうち、主に心理学的な研究として実施されたものに限り、そ

の研究テーマを整理してみると、①父親の育児参加の現状、②父

親の育児参加が子どもに与える影響、③父親の育児参加による母

親への影響(母親の育児ストレスの低減など)、④育児参加による

Summary:We have thus far proposed the importance of cultivating parental nurturance or parenting readiness in child

and youth, prospective parents or new parents. In this paper, we will focus on fathers raising babies or toddlers, and

discuss several elements indispensable to learning programs for promoting their parental nurturance or parental roles.

We took up three different programs, which had been implemented at the family drop-in centers attached to the

authors’ universities, and investigated their effects to the participant fathers through questionnaire and interview. The

indices were knowledge/skill acquirement about child rearing recognized by fathers themselves, positive change in their

view or behavior towards child rearing, and their relationship with their partners or other family members. Analyses of

the effects of these three different practices revealed that the following elements are needed to parenting programs for

fathers; promoting the participation of both fathers and mothers, giving fathers and mothers opportunity of discussing

subjects concerning child rearing, and encouraging fathers to reflect on their past and present..

Keywords: Viewpoints for Parenting Program, Paternal Nurturance and Role-taking, Child-rearing Support

父親の養育性・役割取得を促す教育プログラムのための観点導出

Derivation of the Viewpoints for Parenting Program Intended to Enhance

Paternal Nurturance and Role-taking

寺見 陽子 *  南 憲治 **  松島 京 ***  及川 裕子 ****

寺村 ゆかの ***** 伊藤 篤 ******

Yoko TERAMI* Kenji MINAMI** Kyo MATSUSHIMA*** Yuko OIKAWA****

Yukano TERAMURA***** Atushi ITO******

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父親自身の変化、⑤父親の育児参加の規定因といった5つのテー

マに分類できるように思われる。本論のテーマである「父親の養

育性・役割取得を促す教育プログラム」の開発にもっとも関係が

深いテーマは、⑤の「父親の育児参加の規定因」である。そこで

以下において、「父親の育児参加の規定因」を扱ったこれまでの研

究を概観する。

2.父親の育児参加を規定する要因

 父親の育児参加を規定する要因は多様に見られるが、ここでは

これを大きく4つの視点(①父親の仕事環境や母親の就労状況、

②父親の価値観や性役割観、③父親の成育歴、④夫婦関係)から

整理する。

(1)父母の就労状況と父親の育児参加

 このテーマの下で行われた研究では、父親が時間的に余裕のあ

る仕事についている場合や、妻の就労時間が長くて収入が多い時

には、夫が育児に参加するという結果が報告されており(福丸ら

1999、松田 2006)、アメリカ社会においても同様の結果が得られ

ている(Rockville 2000)。また、森下(2006)は、幼稚園児をも

つ父親を対象に父親の職場環境や労働時間が父親の育児関与とど

のように関連するのかについて調べた。その結果、子どもとの遊

びや世話といった直接的な子どもへのかかわりが、父親の労働時

間が短いと多くなること、そして、家庭に対する職場の理解があ

る場合、父親の子どもへの遊びや世話といった直接的な子どもへ

のかかわりが増えることを見出している。青木(2009)も、父親

の仕事環境と夫婦の育児に対する協同性との関係を調べている。

調査対象は保育園に通う幼児をもつ共働きの夫婦であり、育児が

しやすい仕事環境にある父親は、「子どもの着替え」「保育所の送

り迎え」「寝かしつけ」といった子どもの世話を妻と同等に分担し

ていることが明らかにされた。

(2)父親の価値観や性役割観と父親の育児参加

 日本の男性は仕事中心の価値観や伝統的な性役割観をもってお

り、子育てという親役割よりも職業役割を優先し、育児に参加し

ないことが示されている(青木・岩立 2005、福丸ら 1999)。逆に、

平等主義的な性役割観や親役割への肯定的態度をもっている父親

の場合は、子どもを世話するといった直接的な子どもへのかかわ

りではなく、「育児方針について夫婦で話し合う」「子育てに関す

る本や新聞記事を読む」といった「育児への関心」が高くなると

いう(森下 2006)。また、就学前の子どもをもつ父親へのインタ

ビューを行った庭野(2007)によると、「父親と子どもが2人きり

になる時間」をもつことによって、父親の性役割や仕事に対する

意識に変容がみられたという。すなわち、父親が子どもの「世話

役割」を担うなかで、性役割分業意識がよりリベラルになるとと

もに、仕事に対する意識にも変化がみられ、出世や稼ぎ手役割に

固執しなくなることが示されている。

(3)父親自身の親との関係性と父親の育児参加

 田辺(2010)は、父親自身の幼少期の体験や父親の存在、父親

とのかかわりの経験が、家事・育児行動にどのような影響を及ぼ

すかについて検討し、共に行動する父親としての体験が、自分の

子どもとのかかわりの頻度の高さと関連していることを明らかに

している。平川(2004)も、子育て中の父親自身の父子関係に焦

点を当て、その父子関係のあり方が実際の父親の育児参加とどの

ように関係するのかについてインタビューによって調べている。

それによると、父親がもつ性役割分業意識に父親自身の父子関係

が影響しており、自分の父親との関係が良好な父親は、育児に積

極的に参加し、育児を通して「多くのことを学べる」など肯定的・

積極的な認識をもっているという。

 同様に、自分の父との関係が良好な父親の育児参加の頻度が高

いことが父親への質問紙調査(寺見・南 2014a、2014b、2015)や

インタビュー調査(寺見 2015)によって明らかにされている。こ

のうち、寺見・南(2014a、2015)の調査では、父だけでなく母も

含めた親との関係が親和的な場合、父親の育児参加が多くなるこ

とも示されている。

 以上のように、同性である自分の父親との関係性が育児参加の

重要な規定因の1つであることが示唆される。自身の父親との関

係が良好な父親は、育児をよく行っているのである。自身の父親

との関係が良好な場合、自分の父親から育児をよく受けていた、

あるいは育児をよく受けていなくとも、愛情深く育てられた可能

性が高く、そのような環境下で育つと、良好な関係にある父親を

モデルとして、わが子の育児により積極的に参加するのではない

かと推測される。

(4)周産期における夫婦関係と父親の育児参加

 出産後3か月ほどは、母親は、実母など多くのサポートを受け

ながら育児を習得し、母親役割を獲得していく。この時期を過ぎ

ると、パートナーと二人で自立した育児を開始する時期と考えら

れており、この時期の夫婦関係は育児不安に影響する(牧野 1982)。

 夫婦関係に関する先行研究では、父親は母親の育児をサポート

する立場である、あるいは母親自身をサポートする立場であると

いう認識が強く、母親の精神的安定の背景要因として父親の家事

育児参加や情緒的なサポートが重要であると報告されている(及

川・小田切・久保・刀根 2006)。つまり、育児期の夫婦関係を規

定する因子として、夫の家事・育児の参加は欠かせない項目であ

るといえる。

 妊娠期から育児期にかけての夫婦関係に関する縦断研究を時系

列にたどってみると、妊娠期の夫婦関係について、倉持・中沢・

田村・及川・木村・岸田(2001)は、夫婦ともに妊娠前よりもよ

くなったと回答している割合が多かったと報告している。縦断研

究の対象者のなかから無作為に選んだ夫婦のインタビューにおい

て、夫婦共通の話題として、出産や育児のこと、子どものことな

どを語り合うことで共通の話題が妊娠によって提供され関係がよ

くなったとしていた。妊娠期は、夫婦ともに出産というゴールを

目指す時期であり目標がはっきりしていることが背景にある(倉

持ら 2001)と考えられる。

 次に、出産のエピソードが夫婦関係にどのように影響するかみ

てみる。出産に立ち会う父親の多くが「出産中はそばで妻を支え

たい」という妻への愛情を基盤として立ち会い出産を選択し、立

ち会い出産を通して今以上の妻への愛情の増大がみられる(三上・

村山・久米 2009)という。夫婦でともに出産という目標に向かう

ことから、両者の関係の深まりにつながっていると推測する。ま

た、日本特有の文化である里帰り出産については、里帰り出産を

していないケースのほうが、妻への分娩時の協力、妻の生活変化

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の理解、育児参加、父親としての実感が高くなり(木村・田村・

倉持・中澤・岸田・及川・荒牧・森田・泉 2003)、子どもに対す

る愛着も強くなり、育児に積極的(久保・岸田・及川・田村 2012)

に関与すると報告されている。里帰り出産は、実母の支援が得や

すいというメリットがあるものの、男性の育児を促進したいとい

う現代の風潮から考えると、父親の子どもへの愛着や子どもへの

かかわりを停滞させていくことにつながる可能性も考えられる。

 出産前後の夫婦関係の変化については、妊娠中、出産後4か月、

1年の比較によると、夫婦関係の満足度は男性も女性も下がって

いることが報告されている(田村・倉持・中澤・岸田・木村・及

川・荒牧・持田・森田 2002、中澤・倉持・田村・岸田・木村・及

川・森田・荒牧 2003)。特に母親のほうの評価が下がる傾向が強

いと報告している。育児期の母親の夫婦関係の評価の背景要因と

して、夫の家事育児の実施状況(夫の自己評価)と妻から見た実

施状況(妻の夫評価)の認識にずれがあり(田村ら2002、中澤ら

2003)、妻が期待しているほど夫の育児行動が果たせていないと、

夫婦関係満足度に影響し(田中2010)、夫が自分の育児行動を過大

評価している場合、妻の育児ストレスが高くなる(西尾2015)こ

とが明らかにされている。夫婦間の認識のずれ、特に夫自身の過

大評価が夫婦関係に影響するといえる。妻の評価による夫の家事

育児協力が高い群と低い群を比較すると、妻の評価が高い群のほ

うが夫自身の夫婦関係満足度や父親としての自身の満足度が高く

(及川2006)、妻がどのように思っているかが夫婦関係に影響して

いるといえる。これらのことから、夫が家事育児を行うことによっ

て、妻の夫への評価が高くなり、夫自身の自尊心や妻に対する愛

情が増大し、夫婦関係も良好になるという循環を生じさせるので

ないかと推測する。

 しかしながら、父親としての育児性や養育性の形成に以上で述

べた諸要因がどのように関連するのかについてはまだ十分な検討

がなされていない。母親と同じように、父親も、子どもへの愛着

を発達させて安定した父子関係を形成するとともに、父親として

の自立性や親和性を獲得しながら、父親らしくなっていくのなら、

父親の育児参加とその内的特性との関連も見逃せない。母親の愛

着研究ですでに明らかにされている事実が、父親にも同様に当て

はまるのであれば、父親の愛着パターンが子どもとの関係に及ぼ

す影響や父親の成育過程での自身の親との関係や子どもとのかか

わりの経験が、家事・育児参加に影響を及ぼすことも予想される。

3.父親の育児参加への支援

(1)ワーク・ライフ・バランスとイクメンプロジェクト

 近年、日本社会ではワーク・ライフ・バランスという観点から、

男性も積極的に育児に参加することが求められ、かつてより子育

てをする父親は増えている。しかし、育児休業取得率等を見ても、

子育て家庭の割合に比し、父親が子育てに十分にかかわれている

とはいいがたい。父親が子育ての主体となるためには、父親を対

象とした支援の仕組みづくりは重要だといえる。

 厚生労働省は、2010年の改正育児・介護休業法の施行とあわせ

て、「社会全体で、男性がもっと積極的に育児にかかわることがで

きる一大ムーブメントを巻き起こすべく」、2010年6月に「イクメ

ンプロジェクト」を開始した。『平成26年版 少子化社会対策白書

(内閣府 2014)』には、「男性の子育てへのかかわりを促進する」と

して、イクメンプロジェクトの開始だけではなく、「父親の育児休

業の取得促進」「父親の育児に関する意識改革、啓発普及」「男性

の家事・育児に関する意識形成」のために、男女ともに子育てを

しながら働き続けることのできる環境の整備とともに、「企業等へ

の出前講座や父親向けの家庭教育に関する講座の実施など、地域

が主体的に実施する家庭教育に関する取組を支援」することの必

要性も述べられている。

 近年のこのような取り組みは、少子化対策としての子育て支援

施策によるところが大きい。特に、2002年の『少子化対策プラス

ワン(厚生労働省ホームページ 2002)』において「男性も含めた

働き方の見直し」が新たな視点として提示されたこと、2004年の

『少子化社会対策大綱(厚生労働省ホームページ 2004)』において

「少子化の流れを変えるための4つの重点課題」に取り組むための

28の行動の1つとして「男性の子育て参加促進のための父親プロ

グラム等を普及する」と明記されたことは大きいだろう。

 また、国の施策として「男性も女性も仕事と生活が調和する社

会(ワーク・ライフ・バランスの実現)」を目指すこともあり、男

女共同参画の視点からの男性に対する支援も進められている。国

立女性教育会館が「男性を対象とした男女共同参画の推進を目的

とする学習プログラムの企画・実施」のための「男女共同参画と

男性」という情報提供 web サイトを2012年より開設するなど、男

性の家庭や地域への参画(主体的な参画)を促進する動きもある。

(2)Parenting Program(PE)と父親支援

 このように国の施策としては、男女ともに子育てをしながら働

き続けることのできる環境を整備するという子育ての社会化を進

める一方で、親の子育て責任も明確化するという方向性も打ち出

している(冬木 2007)。家族は多様化し、いわゆる近代家族モデ

ルに基づく家族や地域社会を形成することは容易でなくなり、「親

になること」も以前よりも簡単ではなくなってきた。だが、児童

虐待や子どもの貧困等、子どもをめぐる事柄が社会問題化する中

で、親の子育て責任は強く求められ続けている。これは、子ども

を持つことや家族を持つことが私事化・個人化したことと無関係

ではない。斎藤(2006)は、子どもを持つ意味づけが個人化して

きたからこそ、その選択を支える仕組みとしての子育て支援や、

親以外の子育てエージェントが登場する今日的契機があると指摘

する。今の社会において子どもを持つという選択をしたならば、

その人は親役割(子の養育責任)を社会から求められる。その役

割取得や遂行が難しい状況にあるならば、それを支援することが

社会に求められるし、その支援がないならば、子どもを持つこと

そのものが社会生活上の選択肢となり難い、ということである。

 親になることを支援する子育てエージェントとしては、日本に

は従来、T . ゴードンが開発したコミュニケーションプログラム

である「親業訓練」があったが、2000年代以降になると、カナダ

の Nobody's Perfect(NP)やオーストラリアの Triple P など、

海外のParenting Program(PE)が導入されるようになる。ファ

シリテーターの養成や各地でのプログラム実践などが盛んに行わ

れるようになった。これらのプログラムがこの時期に受け入れら

れたのは、子どもも親も、家族の中の一人ひとりであること(家

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族の個人化)が、日本社会でも浸透し始めたからであろう。だか

らこそ、児童虐待や DV 等の家庭内暴力も日本社会でようやく可

視化することになるのだが、それを予防するための啓発プログラ

ムとしても、海外のプログラムが紹介され導入されていくことに

なる。イギリス、アメリカ、カナダの PE は、普遍的なものだけ

ではなく、母親を対象としたもの、父親を対象としたもの、虐待

や貧困や十代の親等子どもにとってハイリスクとなるような家庭

を対象としたものと、多様なプログラムがある(斎藤 2006、中村

2010)。研究者やNPOらの紹介により導入されたこれらは、従来、

日本で行われてきた家庭教育支援プログラムには見られなかった

コンテンツであり、だからこそ重用されてきたといえる。しかし

ながら、海外の PE の導入については、改めて検討する必要があ

る。そもそも、PE にはそれが作られる背景が存在する。親とな

る人が抱える課題は、その時代、その文化、その社会がもつ課題

である。それは、現在の日本も同じである。そして、子育ては多

分に文化的なものを含む。だとするならば、普遍的な支援方策と

ともに、現代の日本社会で親となる人への個別具体的な支援方策

が示されることも必要だろう。

表1 男性に関する事業分野別実施状況と推移(単位:件数)

年次事業分野

‘98 ‘01 ‘02 ‘03 ‘04 ‘05 ‘06

(A) 6 62 147 262 289 298 349

(B) 3 41 85 151 176 204 258

(C) 1 26 47 100 103 126 136

合計(D) 8 77 185 313 362 376 471

(表1続き)

年次事業分野

‘07 ‘08 ‘09 ‘10 ‘11 2011年

(A) 286 290 331 338 379 68.5% A/D

(B) 254 262 309 351 367 66.4% B/D

(C) 119 149 149 162 193 52.6% C/B 

合計(D) 421 403 491 527 553

男性への男女共同参画意識の浸透(A)男性の生活自立(B)→ 内、意識浸透も含む(C)注1:2012年は未だすべて登録されていないため掲載しない。   全国の女性関連施設でデータベースに登録した。注2:合計は、重複を除いた数字である。

表2 講座の主な対象者、事業テーマと事業形態(2011年度データベース登録事業)

対 象 者

乳幼児、小学生、大学生、カップル、プレパパ、パパ、パパとママ、父子家庭、中高年男性、退職前の男性、退職後の男性、高齢者、障がいを持った男性

事業テーマ子育て(乳児、幼児、子ども)、孫育て、料理、家事(掃除、買い物)、介護、障がい、生き方、地域デビュー、健康、趣味・技術、防災

事業形態フェスティバル、フォーラム、シンポジウム、講演会、実技指導、ワークショップ、運動会、座談会、団体の活動場所提供、調査研究

 現在、日本では、海外のプログラムだけが実施されているわけ

ではない。また、女性/母親や両親に限らず、男性/父親を対象

としたプログラムも展開されてきている。国立女性教育会館(2013)

によると、女性センター、男女共同参画センター、公民館などの

社会教育施設において、男性を対象にした講座は1990年前後から

開催され始め、2000年以降より、男性の生活自立や家庭・育児参

画の講座が増え始めているという。これらは、男性すべてを対象

としているため、対象者も事業テーマも多岐に渡るが、それらの

実施方法も多様である(2011年度の国立女性教育会館のデータベー

スに基づく)。各自治体における具体的なプログラム事例などは、

Web サイト「男女共同参画と男性」に詳しく掲載されている(表

1・表2)。

 また、斎藤(2014)は、全国市区町村を対象とした、「父親・祖

父母等むけ公的プログラムに関する全国市区町村悉皆調査」を実

施し、その結果をまとめているが、それらは、講義形式のものと

参加・実技型形式のものといずれもがあり、その内容は子どもの

発達を学ぶもの、父親と一緒に何らかの活動を行うものであると

いう。

(3)父親になるための仕組づくりの必要性

 このように、父親の子育てを支援するプログラムは、各地で繰

り広げられている。しかしながら課題もある。斎藤(2013)は、

参加者の少なさや父親のあり方など、プログラムの企画者が意図

する参加層を取り込めていないことを指摘している。

 参加者の少なさについて、その理由としてしばしば「父親は仕

事が忙しい」ことに集約されるがそれだけではないという。斎藤

は、専業主婦家庭と共稼ぎ家庭とにわけ、その家庭的背景から考

察をしている。それによれば、専業主婦家庭は、「典型的には、夫

は子育てを妻に大部分任せていると想像される。そうした状況下

であれば、父親たちがわざわざ時間を割いてまで子育てを『学習』

しようと考えないのは無理のないこと」だという。一方、共稼ぎ

世帯の場合は、「基本的に子どもはふだん保育所などの家庭外の保

育サービスで日中を過ごすことが前提となる。そういった家庭で

は、休日家族で過ごしたいと考えるのが一般的であろう。つまり、

仕事の疲れを癒したいのもあるが、親はたまの休みに子育ての『学

習』をしたいとは思わないのでではないか」というのである。

 このことは、父親を対象としながらも実質は母親も参加してい

るプログラムが多いこととも関係する。父親の参加方法としては、

父親が自主的に参加をするよりも、母親に誘われて一緒に参加を

することが多い。そしてその場合、多くは専業主婦家庭である。

そのため、企画者にとって意図せざる結果として、「まず、子育て

はあくまで母親が主であり、父親は“脇役”であるということを、

『父親教室』という名称のサービスに母親を参加させることで、よ

り強固にしてしまっている」のである(斎藤2013)。

(4)これまでの父親研究や父親支援プログラムのあり方からの

   示唆

①父親の親との関係や子どもとのかかわりの経験

 まず、父親の養育性の形成や役割意識の形成を支援するプログ

ラムのあり方を考えるうえでは、父親の親との関係や父親の子ど

もとのかかわり経験を考慮に入れること、また、父親が子どもと

2人だけで過ごせるようになるために必要な時空間、育児に関す

る知識や技術、子どもとのかかわりにおける生活・活動・遊びの

実際とそのコミュニケーションの力を身に着けることの重要性で

ある。

 庭野(2007)の研究からも示唆されるように、わが子と触れ合

う中で、父親の仕事に対する価値観や性役割観が変容し、それを

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契機にして子どもとのかかわり方が促進される可能性がある。

②男性の社会的状況を考慮した新たな「親性」形成への支援

 もう一点考慮しなければならに事は、日本では、まだ男性が子

育ての主役になりたくてもなりきれないという社会状況があるこ

とである。多くの父親はもっと子どもと接して子育てをしたいと

思いながらも、それが困難な就労状況や家庭の内外における性別

役割分業意識が、日本の社会には厳然としてある。あるいは、当

事者である男性(父親)も女性(母親)もいずれもが、それを内

面化していることもあるだろう。支援者側が、このような社会の

中で子育てをしているということを意識しなければ、結果的に性

別役割分業を促進するようなプログラムにならざるを得ないであ

ろう。本質的には、性別に関わらず誰もが家庭内ケア役割を遂行

することが望ましいし、それにつながるようなプログラムが必要

である。しかし、そうすることが難しい社会構造を理解した上で、

新たな「親性」を支援するプログラムをつくることが必要だろう。

社会構造を大きく変えることは難しいが、男性女性問わず積極的

に家庭内ケアを誰もが行うという「これからの家族のゆくえを想

定し、その家族内ケアは、従来の母親・父親像やその役割、関係

性に回帰するのではなく、子どもを養育する者が子どもを軸とし

た関係性を構築する」という視点から考えざるを得ないであろう。

③父親の「育児への関心」を促すプログラム

 育児に参加したいと思っても、父親の労働環境から物理的に育

児ができない場合、直接的な育児が無理であっても、森下(2006)

のいう「育児への関心」を促すようなプログラム開発が求められ

る。森下は、育児関与を2つに分け、子どもと遊ぶ、あるいは世

話をするといった直接的な育児とは別に、子どもと間接的に関わ

る「育児への関心」を取り上げている。そしてこの「育児への関

心」が「家族への愛情」を促進させたり、自分の親からの育てら

れ方を振り返ったり、自分の子どもとのかかわりを想像すること

を促すなど、「育児への関心」が家族や子育てを振り返る契機にな

ることが示されており、この点から「育児への関心」を高めるよ

うなプログラムの開発が望まれる。

④父親を取り巻く家族関係の振り返り

 夫婦関係のあり方を振り返り、自分の夫婦関係を見直すような

プログラムも必要かと思われる。父親が自分の夫婦関係を振り返

るなかで、妻との関係における自分の子どもに対するかかわり方

を見直し、父親としての責任や親役割を再認識することによって、

父親の育児に対する考えや育児参加そのものが改善されることが

期待される。また、同性の親である自分の父親との関係を振り返

ることも有効であるように思われる。父親自身が、自分の父との

関係をリセットさせることはできないが、父親と自分との関係を

振り返ることによって、わが子に対するかかわり方を見直す契機

になることは十分考えられる。そして、わが子に対するかかわり

方を見直すことが、わが子に対する向き合い方をより好ましい方

向に変え、育児参加を促すことにつながるのではないかと思われ

る。

Ⅱ.本研究の目的

 本研究は、「父親の養育性と役割取得」を促す教育プログラムを

展開するにあたって必要な観点を整理した上で、これまでの筆者

らの実践等から得られた研究結果も踏まえながら、そうした観点

がどの程度妥当であるかを検討することを目的とする。

 養育性とは「nurturance」の訳語であり(陳 2007)、「相手の心

身の発達や状態の改善に必要な態度、知識と身体技術(陳2011)」

を指し、子育てを通して獲得された成熟した人格的要素という個

人的な属性と様々なレベルの養育性形成度をもつ養育者と非養育

者で構成された物理的・社会的環境(陳 2007、2011)で構成され

るものとされている。こうした相手の心身の発達や状態の改善に

必要な態度・知識と身体技術は、子どもとかかわり・子どもを世

話し・子どもとコミュニケートするために必要な能力である。具

体的には、子どもの状況や情緒的反応に気づく感受性・察知力・

認知力とともに、子どもとかかわるうえでの共感的態度・受容的

態度・子どもの世話・子どもの欲求や思いを満たすためのかかわ

りの技術などが考えられる。すなわち、養育性(小嶋は「養護性」

という語を用いている)は「相手の健全な発達を促進するために

用いられる共感性と技能(小嶋 1989)」ということもできる。

 また、Super & Harkness(1986)は、子育て(あるいは人間発

達)のシステムを支える概念として「発達のニッチ」を用いた。

「ニッチ」とは生物学用語であり、ある生物が生態系の中で占める

位置やテリトリを意味する。彼らは、子育てにおける「発達のニッ

チ」として、「子どもの暮らす物理的・社会的・歴史的に形成され

てきた社会の子育て習慣」と「特定の社会が共有する育児に関す

る養育者の持つ信念と心理」とを挙げている。この概念に従えば、

養育性とは、養育者自身の共感性や受容性といった内的特性が、

子どもとかかわり経験を通して解発され、養育者自身の「子ども

の心身の発達や状態の改善に必要な態度、知識と身体技術」を有

する行為が、子どもの生活環境・社会的慣習・養育者の意識など

といった子育てを支えるシステムとしての環境との相互的関係性

の中で醸成されていくプロセスを経て機能するようになるものと

いえるだろう。子育てにおける養育性の形成は、子育てを支える

機能的かつ有機的なシステムが必要だということである。

 そうした相互的関係性は、すでに述べたように、子どもの状況

や情緒的反応に気づく感受性・察知力・認知力とともに、子ども

とかかわるうえでの共感的態度・受容的態度・子どもの世話・子

どもの欲求や思いを満たすためのかかわりなど、「相手の健全な発

達を促進するために用いられる共感性と技能(小嶋 1989)」を要

し、そのプロセスでは、子どもや母親といった、そこにかかわる

他者から期待される役割や行動、共有された規範を内化し、他者

との関係を維持していくために、「自己」の視点と「他者」の視点

を捉え、相互にほどよく調整する能力が要求される。いわゆる、

役割取得能力が求められる。そうしたプロセスを経て、「父親であ

る」あるいは「父親になる」ことの意義と課題を克服していく支

援、すなわち父親の養育性の育成支援を促していく必要がある。

 それには、さらに、子育てという営みの中で、父親が社会から

どのように認識され(存在価値)、その存在のありようはどのよう

な現象・姿として捉えられているのか(関係)、また、その現象・

姿の中で見られる何らかの相互性や方向性は、どのような原理・

法則を予測するのか(関係の系)といった「育児・成長にかかわっ

て父と子が中心となって織りなされる関係の系」を問い直してい

く視点も、重要となる。

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-  -6

 そこで、本研究では、これまでの研究から示唆されることを踏

まえ、次のような観点から、実践を通して、父親の養育性と役割

取得の育成を促す支援のあり方を検討することにした。

【観点 A】 関係性を構築することを目的とし、父親の現実を踏ま

えて、必ずしも定型化しないプログラムのあり方を検討する。

○今日の父親の現状を踏まえ、形を求めない

○父親像は、かかわりを通した関係性の中で意識化されていくも

のである

【観点 B】父親の養育性と役割取得を促すための具体的な内容を

検討する。

○夫婦や家族間の受容的・共感的関係とその関係性の中での父親

の自己存在感

○一緒に過ごす(楽しみや感情の共有、興味・関心の共有など)

○父親と子どもが二人だけで過ごせるようになる

○父親が子育ての知識と技術を獲得する

○父親自身の振り返りと父親(母親)の内面理解

○父親(の人生)と育児生活

【観点 C】父親だけを対象とするのではなく、夫婦、家族の関係

性を検討する。

【観点 D】父親の成育経験や同性の親との関係性を検討する。

Ⅲ.本研究の方法

 すでに述べたように、父親支援プログラムには、様々なテーマ

で多彩な取り組みが行われている(表2)。本研究では、そうした

中から、先行研究においても比較的多く実践されており、本稿の

共同研究メンバーも採用・実施してきている講義形式および参加・

実技形式の教育的プログラム(PE)を取り上げ、こうしたプログ

ラムによる支援が、父親のどのような側面に変化をもたらすのか、

その効用について検討し、父親支援のこれからの取組のあり方を

考える視点を検討していく。

 対象は、3歳未満の子どもを育てている保護者を対象とした教

育的プログラム(学習プログラム)に絞った。これまでの子育て

不安等に関する研究から、もっとも母親の不安が高いのは、1~

2歳のころであり、その不安軽減にもっとも効果を上げるのが父

親のサポートにあることが明らかにされているからである。

 本研究の対象としたプログラムは、夫婦参加型プログラム(0

歳児のパパママセミナー/講義形式)、家族対話型プログラム(家

族で話そう!子育て/講義と参加の混合型)、かかわり体験型学習

プログラム(プレイ・アンド・ケア/参加・実技型)の3つであ

る。

 各プログラムの主たる担当者が、質問紙法やインタビュー法な

どを用いて、プログラムがねらっている目的を達成しているかど

うかを調査した≪注2≫。本稿では、こうした調査結果のうち、

父親の変化にかかわる箇所を中心に結果と考察を示す。

Ⅳ.結果と考察

1.夫婦参加型プログラム

(1)プログラムの目的

 2006年度より2014年度までの9年間、神戸大学大学院人間発達

環境学研究科は、神戸市灘区と連携しながら、1講座が7セッショ

ン(月1回第2土曜日・8か月間)で構成される「0歳児のパパ

ママセミナー」を実施してきた。早期からの家庭支援という目的

に加え、父親の養育性(養護性)の育成や親役割意識の醸成も視

野に入れ、プログラム名に「パパママ」と入れた。年度ごとの申

込組数のレンジは15~28(平均申込組数は20.2組)、夫婦での平均

参加率の年度推移(各年度の「総夫婦参加家庭数/総参加家庭数」)

は、46.0%、44.9%、53.2%、32.2%、47.6%、38.7%、38.1%、53.5%、

56.0% である。このプログラムには「夫婦での参加」「早期(0歳

児)からの支援」「子どもの成長・発達に応じた講座内容」「長期

にわたる継続性」という特徴があるが、本稿では「夫婦での参加」

の影響・効果を考察する。

 育児不安感などをベースとして生じるストレサーは、時間の経

緯に伴って蓄積していき、ストレス状態やストレス症状に結びつ

きやすくなるため、こうした不安・心配・焦りなどへの何らかの

介入や支援の提供は、出産後早期であればあるほど効果をもつと

予想される。また、親として子どもにどう対応するかに関心を持

てるような精神的余裕ができる時期を待たなくては、セミナーそ

のものの効果は望めない。こうした前提のもと、このプログラム

では、「子どもが0歳代という早期(ただし、生後5か月以降)か

ら、月齢に応じた乳児の発育・発達に関する理解を深めるととも

に、乳児への対応方法・技能を高める」「子どもに一義的責任を持

つ親としての自覚や自信を夫婦(男・女)ともに高める」を目的

としている。

(2)プログラムの概要

<受講家庭の募集>

 大学サテライトの運営は神戸市との連携プロジェクトであるた

め、受講家庭の募集にあたっては灘区保健福祉部(当時の組織名)

の協力を得た。毎年3月末に保健福祉部が灘区内の前年12月生まれ

の子どものいる家庭に4か月健康診査の案内状を郵送する封筒に、

この「0歳児のパパママセミナー」のチラシと申込書を同封する

よう依頼した。チラシには、セミナー期間が5月から12月までで

あること、8月を除く毎月第2土曜の午前中にセミナーを7セッ

ション開催すること、極力夫婦で参加すること、0歳児同伴が望

ましいこと、セミナー時間内に小・中・高校生とのふれあい体験

が組まれていることが、セミナー7セッション分の予定表(日付・

時間帯・テーマを含む)とともに記載されていた。希望者は、4

月末日までにファックスで大学サテライトに直接申し込む形式を

採用した。

<セミナーの概要>

 セミナー7回分のテーマとその内容(2009年度~2011年度に共

通)を表3に示す。各回のテーマは、乳児の月齢(12月生まれな

ので、開催月が子どもの満月齢に対応する)に応じた発育・発達

を踏まえて決定し、その内容は親が子どもの発育・発達的変化に

応じて知っておくべき知識・対応方法の習得が中心であるが、テー

マに応じて自分なりに子どもへの対応のあり方を考えることも含

めた構成に心がけている。このセミナーは、いずれの年度も、5

月~12月まで(8月を除く)の第2土曜日10:30~12:00、大学

サテライト内の1室(多目的室)で実施された。室内には、フロ

アーマット・バスタオル・玩具を用意した。親子は一緒に入室し,

親は靴を脱いで座り,かたわらで乳児を寝かせてセミナーを受講

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する形式を取った。筆者のうち一人(臨床発達心理士)が一貫し

て講師を務めた。なお、このセミナーは、同じサテライトの次世

代育成プログラム「青少年の赤ちゃんふれあい体験学習」と連動

したプログラムであり、10:30~11:10の40分間にセミナー(親

講座)が、11:15~11:45の30分間にふれあい体験学習(親子は

ふれあいに協力)が、11:45~12:00の15分間にまとめ・質疑応

答がおこなわれた。

(3)結果と考察

 ここでは、「0歳児のパパママセミナー」の成果を検討するため

に実施した2つの質問紙調査の結果を示し、考察を加える。

表3 「0歳児のパパママセミナー」各回のテーマおよび概要

回開催月

テーマ

内 容

1回5月

赤ちゃんの生活空間の広がりと心身の発達

生活リズムの大切さ、毎日のあやしかけ・言葉かけの大切さ、子どもの育ちを他者と比較せず各自のペースでとらえようとする姿勢の大切さを知る。

2回6月

視界の広がり / うつぶせになって遊ぶ

うつぶせになって遊ぶことで視界が広がり意思が強くなること、腹軸運動からハイハイに移行していく時期のさまざまなふれあい遊びの方法を知る。

3回7月

人見知り / 睡眠と夜泣き

見知り・新しい場所の意味を理解し適応を急がないことの大切さ、赤ちゃんと大人の睡眠のメカニズムの違いを理解し夜泣きを長引かせない方法を知る。

4回9月

後追い / 目の前のこと・向こう側のこと

後追いの意味を理解し知りそれへの適切な対応方法を知る。目の前のことと向こう側のことに関する認識の発達(対象物の永続性)を理解する。

5回10月

赤ちゃんの好奇心と探究心

行動範囲の広がりと好奇心に対し、見守りと制限の範囲・その対応を知る。三項関係の成立と人へのかかわりの関連を理解し、家事・仕事とのバランスを考える。

6回10月

遊びの広がりと安全への配慮

乳児の目線からの安全確認、危険を取り除く環境整備、探索行動の大切さを知る。成長の個人差とそのペース(個々の育ち)を見守ることの大切さを知る

7回12月

幼児期の生活に向けて

子どもの行動は,時には親には不都合なこともあるが,それらを問題行動ではなく、重要な成長過程としてとらえた上で、幼児期に向けた子どもの生活を考える。

① 調査 A:2009~2011年度の事後調査結果

 8か月間・7回にわたるセミナーの受講が終了した時点で、参

加家庭の母親と父親にこの親講座に対する評価を依頼した。具体

的には、約8か月間の受講経験を振り返り、以下の3つの質問に

対し、率直な感想・意見などを自由に記述するよう求めた。

①セミナーを受けて印象に残っていること

②子育てや家庭生活において変化したこと

③子育てに関して後輩パパ・後輩ママに伝えたいこと

 回収数は、2009年度が15組(回収率約70% 内訳:母親のみ記

入12件、夫婦ともに記入3組6件、計18件)、2010年度が15組(回

収率約62% 内訳:母親のみ記入10件、夫婦ともに記入5組10件、

計20件)、2011年度が17組(回収率約73%、内訳:母親のみ記入15

件、夫婦ともに記入2組4件、計19件)であった。3年間の総回収

数は57件となった。

 以下では、本稿の目的である「夫婦間の関係性や父親の変容」

にかかわる記述のみを抜き出して提示する。

①-11 子どもに向き合うことの大切さを夫と共に考えることが

できた。

②-7 妻が子育てでしんどくないか,仕事中も気にかけるよう

になった。

②-8 妻が意外と積極的にママ友と交流できている。

②-9 子育てを楽しんで夫婦仲良くなっている。

②-15 夫と共に学んだことを共に実践することで、息を合わせ

て育児がしやすくなった。

②-16 夫はセミナーに参加できなかったが、回を増すごとに内

容に興味を持ってきた。

②-17 学んだことを夫に伝えて共有することで、夫も子育てに

向き合ってくれた。

②-18 夫も一緒に参加していたので「このときは、こうだった

ね」と子育ての会話が増えた。

②-19 夫は子育てに興味がなかったが、参加して知識を共有し

子育てを手伝うようになった。

②-20 今はこういう時期だからと夫婦で話しながら、一緒に家

族で成長していく感覚を持てるようになった。

 ①-11の記述は、男女の協同性が促進されていることを示す内

容になっており、この「夫と共に考える」姿勢への変容は、本講

座のねらいが反映された回答である。

 妻の記述のみに限定されるが、「育児に対する夫の関心やかかわ

りの高まり」を示す記述が見られる(②-16、②-17、②-19)。

 これらのうち、②-16と②-17は、講座には参加していない夫

でも、妻が講座の内容を家庭で伝えることで、育児に興味を持っ

たり・育児に向き合う姿勢を高めたりしている。また、②-19で

は、育児に関心のなかった夫が育児に参加するという変化が示さ

れている。

 これとは逆に、夫の記述に限定されるが、「妻への気遣い・気づ

き」が増えたとする記述(②-7、②-8)が見られる。具体的

には、仕事中でも育児負担を案ずるようになった、セミナーでの

妻の積極性への気づきなどである。

 こうした、妻の認識する夫の変化、夫から妻への関心の高まり

が(育児をめぐる)夫婦関係のあり方にむすびついていくと期待

されるが、実際に「夫婦関係の望ましい変化やそれによるポジティ

ブな効果」に相当する記述(②-9、②-15、②-18、②-20)

が見られている。すなわち、育児を夫婦仲良く楽しむ、共に学ん

だことを共に実践して育児がしやすくなる、講座の内容を思いだ

し夫婦の会話増える、夫婦(子どもも)が家族として一緒に成長

していることを実感するなどである。

 以上から、「夫婦の参加」という形式を採用したことの効果が、

主に質問②「子育てや家庭生活での変化」への回答に表れている。

ここでは、男女ともに、認識レベルにおいても行動レベルにおい

ても自らの変容を実感しており、それがパートナーへの関心の高

まりと相俟って、育児をめぐる望ましい夫婦関係につながってい

た。回答の内容には、男性は受講していないが「家庭で妻が夫に

講座内容を伝える」「夫が講座内容に関心を徐々に高めていく」な

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ど、「パパママセミナー」と命名し、出来る限り夫婦でと家庭に働

きかけることによって、家庭における育児への男女の協同性が自

発的に促進されている姿も確認できる。

② 調査 B : 2014年度の事後調査結果

 8か月間・7回にわたるセミナーの受講が終了後1週間後に、

郵送によって、参加した17組の家庭(母親または父親が回答する)

に、この親講座に対する評価を依頼した。具体的には、約8か月

間の受講経験を振り返り、①開催日時・セミナーの時間・資料の

内容の適切さの判断、②各回(セッション)の内容に関する評価、

③当該セミナーで扱ってほしかったテーマの自由記述、④当該セ

ミナーに関する感想・意見の自由記述を求めた。16組(すべて母

親が回答)から返送があった。ここでは、②・③・④に関する結

果のうち、夫婦間の関係性や父親の変容のみに着目したところ、

以下の6つの記述が見られた。

・夫と参加することで、夫が育児について学ぼうとする姿勢を示

すようになった

・「パパとダイナミックに遊ぼう!」のようなプログラム

・父親が、同じ月齢の子どもがいる家族(特に父親)と交流でき

て良かった

・父親も自己紹介をしたことが良かった

・父親も自宅外の施設で子どもと遊ぶという経験ができて良かっ

・家でもパパが子どもと遊んでくれるようになった

③ 考察

 調査 B では、2009年度~2011年度の時ほど、記述してほしい内

容を特定化しておらず、今回焦点を当てた「夫婦間の関係性や父

親の変容」のうち、父親に関する記述が若干見られるにとどまっ

た。いずれも「妻」の記述であり、夫妻でのセミナー参加によっ

て、(1)「夫」の育児を学ぶ姿勢や子どもと実際に遊ぶという行動

に結びついていること、(2)「夫」が地域とかかわりを持てたこと

(自己紹介をする・他の父親と交流する・地域の施設で子どもと遊

ぶ)を「妻」が肯定的に評価すること、(3) 今後、父親が中心とな

るプログラムを「妻」が求めるようになること、が示唆された。

 以上2つの調査から、「父親の育児意識は変化してきているが、

実際の行動はあまり変化しない」とされる傾向が指摘されること

もあるが、少なくとも長期間の夫婦がともに参加し・学ぶセミナー

は、夫の意識レベルと行動レベルにおける育児参加を促進する可

能性があることが示唆されたと言えよう。

2.家族対話型プログラム

 神戸大学大学院のサテライト施設「のびやかスペース あーち

(地域子育て支援拠点)」で、2014年10月より開始された家族対話

プログラムの名称は、「家族で話そう!子育て」である。本プログ

ラムの参加対象者は、1歳から3歳未満の子を育てている家族で

ある。この試行的実践は、3セッション(月1回第2土曜日・3

か月)で構成され、各セッションは、①講師によるセミナー(保

育士による幼児の躾、管理栄養士による食育、教育心理学者によ

る家族関係)②家族内での話し合いの時間、③家族間での話し合

いの時間で構成される。特定のテーマを契機として家族内と家族

間のコミュニケーションを促進することを通して、家族全員が課

題解決に向けてどのように協力していくのかに合意すること、子

育ての多様性や柔軟性を理解することが目的である。このうち主

に「夫婦での参加」による効果を結果の箇所で考察する。

(1)プログラムの目的

 乳児期後半から幼児期前半頃の「自我の芽生え」や「イヤイヤ

期」等に見られるように、子どもの発達に伴い乳児の頃とは質の

異なった「子育てのしにくさ」を感じる養育者も少なくない。こ

うした困難さの理由は、単に養育者の子どもの発達に関する知識・

理解の不足によって生じるものなのか、家族(おもに夫・妻)間

での子育てに対する価値観の相違やコミュニケーション不足等に

よってももたらされるのか、または他の要因(子どもの障がい・

家庭の経済状況など)が複雑に絡み合って生ずるものかは、家庭

それぞれによって異なるであろう。本試行実践では、特定のテー

マを契機として、子育ての多様性を理解しながら、家族内と家族

間のコミュニケーションを促進することを通して、家族全員が各

自の状況を踏まえた上で、課題解決に向けてどのように協力して

いくのかに合意することを目的とした。

(2)プログラムの概要

<受講家庭の募集>

 受講家庭の募集にあたっては、神戸大学大学院サテライト施設

で実施された「2012・2013年度0歳児のパパママセミナー」に参

加した家庭23組に、チラシと申込書を同封したものを送付すると

同時に、サテライト施設内にもチラシを配架し随時申し込みを受

け付けた。チラシには、セミナー回数が10月から12月までである

こと、各月第2土曜の午後にセミナーを開催すること、夫妻や家

族(祖父母含む)で参加することが望ましいこと、託児があるこ

と等を明記した。

<プログラムの概要>

 本プログラム3回分のテーマとその内容を表4に示す。プログ

ラム参加対象者は、1歳から3歳未満の子を育てている家族であ

り、3セッション(月1回第2土曜日・3か月)で構成され、各

セッションは、①講師によるセミナー(保育士による幼児の躾、

管理栄養士と保育士による食育、教育心理学者による家族関係)、

②家族内での話し合いの時間、③家族間での話し合いの時間で構

成されていた。

表4 「家族で話そう!子育て」各回のテーマおよび概要

回開催月

テーマ/講師

内 容

1回10月

幼児のしつけ/保育士

・子どもの認知・情緒面の発達について ・子どもに対する接し方・遊び方

2回11月

食育/管理栄養士グループと保育士

・子どもにとっての食事  ・家族で食育・保育所での食事

3回12月

家族の関係/教育心理学者

・エリクソンの発達段階・発達課題から親の役割・祖父母の役割を考える

 開催時期は10~12月の第2土曜日13:30~15:00で、大学サテ

ライト内の1室(多目的室)で実施された。室内には、フロアー

マット・玩具を用意した。親子は一緒に入室し靴を脱いで座り、

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かたわらで幼児を遊ばせながらセミナーを受講する形式を取った。

必要に応じて、託児スタッフ(おもに子育て経験のある社会人院

生)が子どもと遊んだり家族が話しやすいような雰囲気づくりに

努めたりした。毎回のファシリテーターは大学の教育研究補佐員

である筆者らのひとりが務めた。セミナー開始前に、事前アンケー

ト(男性用・女性用)を参加者全員に記入してもらった。また、

セミナー終了後の事後アンケートは、自宅あてに質問紙を郵送し、

返送を依頼した。

<参加者数> 

 合計8組の家族(おとな12名・子ども9名 内、きょうだい1組)

が参加した。父親4名(正規雇用4名)と母親8名(専業主婦4

名 育児休業中4名<正規雇用1名>)が参加したが、夫妻と子

どもでの参加は4組(全回参加:1組 2回参加:2組 1回参

加:1組)、母親と子どもでの参加は4組(全回参加:0組 2回

参加:1組 1回参加:3組)であり、祖父母等が参加した家族

は一組もなかった。

(3) 結果と考察

 ここでは、2014年度に実施した「家族で話そう!子育て」とい

う試行実践の効果を検証するために実施した事前アンケート(調

査A)と事後アンケート(調査B)の結果を提示し、考察を加え

る。

① 調査A:事前アンケート結果(一部抜粋)

 プログラムの開始前に、参加者に記入を求めた。回答者数は12

名であった。以下、参加理由とプログラムへの期待に関する結果

を掲載する。

<プログラムへの参加理由(複数選択可)>

 「プログラムの目的」に合致する回答には下線を、それらのう

ち「夫妻」に関する回答には破線をつけている。

 テーマに興味・関心がある 10人/講師からの話を参考にしたい

8人/他の家族の考え方を知りたい 5人/育児について家族で話

し合うよい機会である 5人/父親・母親としての役割を考えたい

3人(父親2人 母親1人)/「あーち」に慣れていて気軽に参

加できる 3人/昨年のパパママセミナーが有効だった 2人/育

児で困っていることがある 2人/夫・妻(パートナー)に親とし

ての役割を考えてほしい 1人(母親1人)

<プログラムへの期待など(自由記述)> 

 「夫妻間の関係」に関するものには破線をつけている。

 他の家族と家族ぐるみで親しくなりたい/他の家庭ではお子さ

んをどのように世話しているのか知りたい/夫ともっと協力・共

感し合える子育てのヒントを見つけたい/日中の悩みを夫に普段

話してはいるが、この機会に、詳細まで共感してもらい、夫婦間

の協力を発展させたい/育児のヒント/いろんな例を知りたい/

こうしたら良い・こんな方法があるなど/第2子が生まれた場合

の上の子どもとの接し方/専門家の話を具体的に聞きたい

② 調査B:事後アンケート結果(一部抜粋) 

 プログラムの終了後1か月経過した頃、参加者の家庭に質問紙

を郵送した。郵送数は8組分で、12通(父親4名・母親8名)を

送付した。返信数5組・7通(父親2名・母親5名)であった。

<プログラムの内容(テーマ)がもたらした効果>

・参加後、受けたテーマについて、家庭内でもパートナーや他の

家族と話し合いをした: 7人全員

・参加後、各テーマの内容において、家庭での生活や日常行動に

変化があった: 7人中4人

<家庭での話し合いの内容や行動の変化>

「夫妻の行動面の変化」に関する回答には破線を、「子どもなどの

行動面の変化」に関する回答には下線をつけている。

 ○幼児のしつけについて

・父親は叱る、母親は許すといった役割分担をするのではなく、

子どもには一貫したしつけをおこなうことが大切だと思い、そ

れを夫婦で実践している(父親 A 夫妻で参加)

・目前の子どもの世話に追われて「しつけ」ということをこれま

で考える機会がなかった どういうことを大切にしてどういう

ことをきちんと教えていきたいか夫婦で意思統一を図り、子ど

もに対する態度を同じものにすること(夫婦で矛盾のないしつ

け)を約束しあい、現在は、それを行動に移して夫婦で一貫し

た態度や姿勢で子どもに向き合うようになった(母親A 夫妻

で参加)

・親が子どもを信頼していれば、叱らないでも楽しくしつけがで

きることや子どもの気持ちを大切にすることが重要だというこ

とを話し合った(母親D 母親のみ参加)

・セミナーの内容や参加している人たちの様子を夫に伝えた(母

親E 母親のみ参加)

○食育について

・子どもの食事作りは妻がしていたが、そこまで手をかけなくて

もと思うくらい細やかにしてくれていた 子どもにアレルギー

があるためではあるが、栄養に偏りがないようにという妻の思

いからであった そのことが話し合いで分かったので、自分も

積極的に食事づくりにかかわろうと思い、行動するようになっ

た(父親A 夫妻で参加)

・今までおもに私が食事作りを担当しており、それに対して夫は

どのように感じていたのかを聞くことができた 子どもはアレ

ルギーがあるので、私がどのように感じどういう思いで作って

いたのかを伝えることができた 私が心がけている食事づくり

を理解してもらえたのでその思いを大切にして、同じ考えで行

動してくれるようになった(母親A 夫妻で参加)

・夫に食事をしながらテレビを観ることは控えてほしいことを話

し合い、今はそれを実践してもらっている 以前は子どもに言

われるままに食前にフルーツを与えていたが、それを止めると

ご飯をよく食べるようになった(母親B 夫妻で参加)

・週末しか家族がそろわないので、週末の食事は必ず全員でご飯

を食べることを話し合い、それを実行している 食事を家族み

んなでとることは「楽しいね!幸せだね!」と夫と娘に思って

もらえるように楽しく笑顔で食事タイムを過ごすと、娘も夫も

笑顔が増え、楽しそうに食べるようになった ( 母親C 母親の

み参加)

・手作りの良さや家族そろって食事をすることの大切さを話し合っ

た 食のありがたみを大切にしていこうと思った(母親D 母

親のみ参加)

○家族関係について

・妻の母親が近所に住んでおり、色々と手伝ってくれることに対

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する感謝を話し合った 日頃から、夫妻で感謝しており、いつ

か恩返しをしようと言っていたが、セミナーに参加してその思

いを強くすることができた まだ行動には移してはいない(父

親A 夫妻で参加)

・いつも実母に子どもの世話を助けてもらっているので、祖父母

が近くにいるメリット・デメリットについて夫妻で話し合った 

また祖父母や子ども自身についても、お互いにどのような関係

性がもたらされているのかを話し合い、それぞれのメリットを

再認識した 実母に対して感謝を伝えるきっかけになった お

互いの関係性のメリットを意識しながら、さらに良い効果をも

たらしあえるような関係をつくることを意識しながら行動する

ようになった 自分自身の発達課題を知ることができたので、

新たな気持ちで子育てを頑張ろうという気持ちになったし、色々

なことにチャレンジしたいと思うようになった また、子ども

はセミナーが開催されるまでは母親べったりで困っていたが、

次第に父親にも慣れるようになってきて、父親とふたりきりで

も過ごせるようになってきた 母親としては「あんなに甘えて

いたのに、もう私でなくてもいいのか」と少し淋しい気持ちも

ある反面、子どもと離れることで気持ちも楽になってきた 不

思議である(母親A 夫妻で参加)

③考察

 3回とも参加した家族(1組)には、夫妻(父親A・母親A)

と子どもの行動面に大きな変容が見られ(これについては、0歳

児のパパママセミナー受講との相乗効果の可能性があるが)、ま

た、他の2組(母親B・母親C)の家庭においても、夫または夫

妻の行動面の変化が子どもの変化にもつながっていた(ご飯をよ

く食べるようになった・食事中の笑顔が増えた等)。対象者が少な

いので、結果から明確な一般化をおこなうことは難しいが、参加

者らは、参加した回の内容(テーマ)について、それぞれ家族内

でも話し合う傾向にあり、「家族内のコミュニケーションを促進す

る」という本プログラムの目的はほぼ達成できたと思われる。ま

た、夫妻Aの結果から、セミナーに複数回参加することを通して、

夫妻で話し合う機会を多く持てばもつほど、父親の養育性を高め

る効果が高くなる可能性が示唆される。夫の休みが取れないこと

などの理由で母親のみ参加した家庭でも、セミナーの内容につい

て夫に伝えたり家庭内で話し合ったりする機会を設けている。こ

れらの中には、行動面での変化がもたらされた家庭もあるので、

単独(母親のみ)の参加であっても、父親の育児参加(養育性を

高めること)に関して一定の効果はあると思われる。

3.かかわり体験型学習プログラムの試み

 本プログラムでは、父親の養育性の形成を促すプログラム構成

の試案と妥当性を検討することを目的とした。

(1)プログラムの目的

 本プログラムは、神戸松蔭女子学院大学において、2014年度に

実施された父親講座「プレイ・アンド・ケア-お父さんと遊ぼう」

である。本プログラムの目的は、父親が、子どもとのかかわり方

を体験的に学ぶとともに、子育てに必要な知識や方法を学習する

ことである。この実践は、試行的取組であり、ここでは、この実

践を通して、父親の養育性形成を促すプログラムのあり方を検討

する。

(2)方法

① 対象

 大学の公開講座(5日・5回)として、大学の広報を通して参

加者の募集を行った。募集に際しては、父親だけでなく家族の参

加を促す呼びかけを行った。募集による父親の参加者は2名であっ

たため、大学が所有する子育て支援ルーム利用者の当日参加も受

け入れた。しかし、研究対象としては、参加を申し込んできた父

親2名(A氏・B氏とする)に特定して分析した。A氏は(32歳・

女児1歳)は、1~3回目は妻とともに、4回目以降は子どもと

2人での参加であった。B氏(41歳、女児1歳6か月)は、子ど

もと2人だけで全講座に参加した。本研究への協力については、

参加者からの承諾は得ている。

② 参加者カードの作成

 初回に「参加者カード」を配布し、子どもの生育状況や保護者

の状況、子育てに対する気持ちや講座への希望等の記入を求めた。

③ プログラムの流れと内容

 プログラムは5回のセッションで構成され、午前10時30分から

13時まで実施された、本講座で実施したプログラムの内容は、表

5に示した通りである。講座の内容は、親子遊びでのかかわりと

遊びの実際(技術)と子育てに関連した知識や困り感の解消に視

点を置いた。

 親子遊びについては、乳幼児期に相応しい遊びの紹介にとどま

らず、そうした活動を通して、どのようなコミュニケーションや

かかわりのあり様が重要なのかを伝えるために、「身体的ふれあ

い」「視線の共有」「モノの共有」といったコミュニケーションの

基本的行為を中心とした活動、やり取りにおける動きの「同型性

(同じことをする)」「異型性(相手の動きに関連した異なった動き

をする活動)」を体験する活動、「相互性(相互に応答しあう)」「補

完性(相手の動きを補完して応答しあう)」ことを体験する活動に

視点を置いて、遊びを編成した。そして、遊び活動を通して、そ

うした視点の重要性について言葉かけするようにした。

 ワークショップでは、参加者が自由に話す井戸端会議と子育て

に関連する話題提供をした後、参加者同士の話し合いを展開する

形を併用した。話題に出た内容は、本人、または記録者が付箋に

書き、それを模造紙に張りながら整理して課題の明確化を図り、

それに基づいてコメントしていくようにした。その後、担当者に

よる「子育てミニ講義」を実施した。

 この講座では、参加者に毎回弁当を持参してもらい、三々五々

おしゃべりをしながら食事することを通して、参加者の相互交流

を図るとともに、その場でおしゃべりする内容も重視した。担当

者も、弁当を持参し、参加者と一緒に食べながら、傾聴するよう

にした。

 実際の実践の場では、参加者が少なかったため、必ずしも毎回

上述のような流れで展開できたわけではないが、担当者はおおむ

ねそうした流れを踏襲するようにした。講座には学生が補助者と

して参加し、親子遊びの補助と講座中の子どもの保育を担当した。

④ ワークブックの作成(試案)

 本講座の5回のセッションで実施する内容は、ワークブックに

して配布した。ワークブックは、4段階評定による子育て振り返

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(11)

-  -11

りシート7枚、過去の自分、今の自分、未来の自分を見つめるシー

ト5枚、遊びの実際に関するシート3枚、計15枚で構成された(表

6)。また、図1には、寺見・南(2014)による研究結果を基に検

討した育児ストレスコーピング方略の基本的視点であり、これも

本プログラム構成の参考とした。

 さらに、Sheet 1から Sheet 7の内容は、寺見・別府・西垣・

山田・水野・金田・南(2008)が行った親の育児を規定する要因

の構造に関する研究の結果を基に、考案した。また、Sheet 8は、

内観法(三木・三木1998)、Sheet 9 ~Sheet 10は、兵庫県が開発

した親学習プログラム(兵庫県家庭教育調査検討委員会・兵庫県

立嬉野台生涯教育センター 2007)、Sheet 11 は家族療法(亀口・

飯島 2004)、Sheet 12 は東大式エゴグラム(東京大学医学部心療

内科 1995)を採用して作成した。このワークブックの詳細につい

ては、本論文末の【付録】も参照されたい。

6 ワークブックの内容

番 号 内 容

Sheet 1 あなたの子育て生活を振り返ってみましょう

Sheet 2あなたにとって子どもはどんな存在ですかまた、どのように育ってほしいですか

Sheet 3 子どもが生まれるまでを振り返ってみましょう

Sheet 4 子どもが生まれた時のことを振り返ってみましょう

Sheet 5 今のあなた自身のことを振り返ってみましょう

Sheet 6 あなたの子どもの頃のことを振り返ってみましょう

Sheet 7 子育てのサポートを誰から得ていますか

Sheet 8 内観ワーク①:自分の幼少期を思い出す

Sheet 9 内観ワーク②:今の私と未来の私

Sheet 10 内観ワーク③:子どものエゴマップを作ろう

Sheet 11 内観ワーク④:自分の家族を描いてみよう

Sheet 12 内観ワーク⑤:自分の特性を診断してみよう

Sheet 13 親子遊び①:親子のふれあい遊び

Sheet 14 親子遊び②:手遊び・歌遊び

Sheet 15 親子遊び③:身近なもので遊ぼう

【注】①~⑤:ワークシート

表5 かかわり体験型学習プログラム ―「プレイ・アンド・ケア」の各回の内容

親 子 活 動(10:30~10:50)

コミュニケーションスキルを磨く

ワークショップ(10:50~11:40)

子どものとかかわりを考える

子育てミニ教室(11:40~12:00)子育ての知恵を学ぶ

12:00~

13:00視点 活動の流れ テーマ(話題提供)10分 グループワーク40分 テーマ

1・触れ合い・視線の共有

・ごあいさつ・ふれあい遊び・絵本を読む

1 私の子育て生活 ・あなたにとって子育てとは ・子育ちの悩み、喜び、辛さ ・子育てと仕事・家事、分担 ・どんな子育てをしたいか

・気づきを付箋に書く・模造紙に張る・ディスカッション

・親の子育て心理*振り返りシート記入

ランチタイム(弁当持参)

2 ・モノの共有

・ごあいさつ・手遊びをする・ハンカチで遊ぶ ハンカチ取り・絵本を読む

2 子どもについて ・子ども観 ・育ちで気になること ・しつけ ・かかわり ・しつけ

・気づきを付箋に書く・模造紙に張る・ディスカッション

・子どもの発達とかかわり・子供の生活―健康と遊び*振り返りシート記入

3・同型性・異型性

・ごあいさつ・まねっこ遊び・追いかけっこ・絵本を読む

3 親として ・父親とは ・母親とは ・夫婦関係とは ・親像

・気づきを付箋に書く・模造紙に張る・ディスカッション

・子どもとの愛着形成・親子関係*振り返りシート記入

4・相互性・補完性

・ごあいさつ・やり取り遊び・歌遊び・絵本と読む

4 自分の生育経験 ・自分の親とのかかわり ・どのように育てられたか ・幼児期体験 ・印象に残っていること

・気づきを付箋に書く・模造紙に張る・ディスカッション

・夫婦関係・父親の役割・母親の役割*振り返りシート記入

5 ・サーキット

・ごあいさつ・サーキット遊び・絵本を読む

4 子育てサポート ・子育てサポート ・してほしいことは

・気づきを付箋に書く・模造紙に張る・ディスカッション

・子育てサポート

*振り返りシート記入

11

表5 かかわり体験型学習プログラム ―「プレイ・アンド・ケア」の各回の内容

親 子 活 動

(10:30~10:50) コミュニケーションスキルを磨く

ワークショップ

(10:50~11:40) 子どものとかかわりを考える

子育てミニ講座

(11:40~12:00) 子育ての知恵を学ぶ

12:00~

13:00視点 活動の流れ テーマ(話題提供)10分 グループワーク40分 テーマ

1 ・触れ合い

・視線の共有

・ごあいさつ

・ふれあい遊び

・絵本を読む

1 私の子育て生活

・あなたにとって子育てとは

・子育ちの悩み、喜び、辛さ

・子育てと仕事・家事、分担

・どんな子育てをしたいか

・気づきを付箋に書く

・模造紙に張る

・ディスカッション

・親の子育て心理

*振り返りシート記入

2 ・モノの共有

・ごあいさつ

・手遊びをする

・ハンカチで遊ぶ

ハンカチ取り

・絵本を読む

2 子どもについて

・子ども観

・育ちで気になること

・しつけ

・かかわり

・就学(将来)

・気づきを付箋に書く

・模造紙に張る

・ディスカッション

・子どもの発達と

かかわり

・子どもの生活

―健康と遊び

*振り返りシート記入

3 ・同型性

・異型性

・ごあいさつ

・まねっこ遊び

・追いかけっこ

・絵本を読む

3 親として

・父親とは

・母親とは

・夫婦関係とは

・親像

・気づきを付箋に書く

・模造紙に張る

・ディスカッション

・夫婦関係

・父親の役割、

・母親の役割

*振り返りシート記入

4 ・相互性

・補完性

・ごあいさつ

・やり取り遊び

・歌遊び

・絵本と読む

4 自分の生育経験

・自分の親とのかかわり

・どのように育てられたか

・幼児期体験

・印象に残っていること

・気づきを付箋に書く

・模造紙に張る

・ディスカッション

・子どもとの愛着形成

・親子関係

*振り返りシート記入

5 ・サーキット

・ごあいさつ

・サーキット遊び

・絵本を読む

5 子育てサポート

・子育てのサポート源

・してほしい支援とは

・気づきを付箋に書く

・模造紙に張る

・ディスカッション

・子育てサポート

*振り返りシート記入

非 受 容 → 子どもの世話 過去への介入

過去のイメージ転換

回 避

親密性の獲得

育児拘束感 育児当惑感 現在への介入

コーピング

親学習

安定した育児生活と親子関係の形成 未来の創造に向けた開発的介入

過去のイメージ転換

親密性の獲得

過去・現在・未来の統合

内観的アプローチ

開発的アプローチ

図5 育児ストレスコーピング方略の視点

・多世代交流経験・内観、回想・ピアカン、ナラティブ

親イメージの転換

・ピアレンティングワーク・プレイプロラム等

親密性の獲得

表6 ワークブックの内容 番号 内容

Sheet 1 あなたの子育て生活を振り返ってみましょう

Sheet 2 あなたにとって子どもはどんな存在ですか

また、どのように育ってほしいですか

Sheet 3 子どもが生まれるまでを振り返ってみましょう

Sheet 4 子どもが生まれた時のことを振り返ってみましょう

Sheet 5 今のあなた自身のことを振り返ってみましょう

Sheet 6 あなたの子どもの頃のことを振り返ってみましょう

Sheet 7 子育てのサポートを誰から得ていますか

Sheet 8 内観ワーク①:自分の幼少期を思い出す

Sheet 9 内観ワーク②:今の私と未来の私

Sheet 10 内観ワーク③:子どものエゴマップを作ろう

Sheet 11 内観ワーク:④自分の家族を描いてみよう

Sheet 12 内観ワーク:⑤自分の特性を診断してみよう

Sheet 13 親子遊び①:親子のふれあい遊び

Sheet 14 親子遊び②:手遊び・歌遊び

Sheet 15 親子遊び③:身近なもので遊ぼう

【注】①~⑤:ワークシート

ランチ・タイム(弁当持参)

図1

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(12)

-  -12

⑤ 振り返りシートの作成

 参加者の変化を把握するために、表7のような振り返りシート

を作成した。

 振り返りシートの目的は、父親が子どもとのようなかかわり方

やコミュニケーションの仕方をしているか、どのように世話行動

をとったかを見つめ直すために実施した。振り返りシートの項目

は、父親自身の自己評価チェックリストと自由記述を求める内容

で構成された。父親の自己評価チェックリストは、子どもとの視

線の共有、喜びの共有、タッチングといったノン・バーバル・コ

ミュニケーションと応答、ことばかけ、はけまし等のバーバル・

コミュニケーションに関する項目と父親自身の感情体験に関する

項目で構成された。

表7 振り返りシート

項     目 1 2 3 4 5

1 子どもと一緒に活動することは楽しかった

2 子どもの興味がどこにあるのか理解できた

3 子どもの興味に応じて動くことができた

4 子どもがすることと同じ動きをした

5 子どもと向き合って、目線を合わせた

6 親の気持ちを伝えた

7 子どもの動きを誘導した

8 子どもにモデルをして見せた

9 子どもにしてほしいことを声掛けした

10 子どもの話すことに応じた

11 子どもと一緒に親子遊びを最後まですることができた

12 子どもの機嫌はよかった

13 子どもがぐずって困った

14 子どもを見守りながら視線で追った

15 日頃の子どもとのかかわりの参考になった

16 子どもを理解する参考になった

17 父親として考えさせられることがあった

18 子育てに関する知識や技術を得ることができた

19 子どものコミュニケーションの仕方が変化した

20<本日の感想>

(3)結果と考察

 本プログラムに参加した父親は2名と少なく、欠席した日もあっ

たため、分析するのに十分な資料を得ることは難しかった。今後、

プログラムの妥当性を検討するために、さらなるデータが必要で

あるが、ここでは、今回得られた資料を解釈的に分析し、課題を

明らかにすることを目的として考察をする。

 ① 父親のニーズ

 講座の初回に、参加者カードを配布し、子どもの生育状況や保

護者の状況、子育てに対する気持ちや講座への希望等を記入して

もらった。その中の「なぜ講座参加を希望したか」について、A

氏は、「妻が第2子を妊娠中であり、子どもを連れて出ることで妻

の気持ちを楽にしたいということと、日頃から子どもとはよく一

緒に過ごしているので、もっとかかわり方を学びたい、子どもの

発達を知りたい」と回答した。B氏は、「初めての子どもで、まっ

たくかかわり方や遊び方がわからない。子どもとの関わりや遊び

を教えてほしい」とのことであった。

② かかわりの体験―親子遊びの観察

 講座のなかでの親子遊びや親子体操では、一緒にする・遊ぶ意

識よりも、目で追い、後ろから行動を見守る姿が多く見られた。

子どもがぐずり始めると、子どもの気持ちを切り替えたり、何か

に興味を持つように仕向けたりするかかわりはあまり見られなかっ

た。それは、父親の特性なのか、個人の特性なのか、単にかかわ

り方がわからないだけなのか、今回の講座を通してだけではわか

らない。しかし、母親にはない父親としてのかかわりや役割とは

何か、何がよいか(あるべき姿)という視点からではなく、より

安定した、ともに満足感の持てる関係という視点から一考する必

要があるように思われた。そのためにも、父親だけでなく、夫婦

あるいは家族とともに子どもとかかわる姿を通して、その夫婦、

その家族という、個別的な関係性の中で考える必要があるのでは

ないかと思われる。

③ 振り返りシートの結果と考察

 振り返りシートの項目で、「どちらともいえない」「あまり思わ

ない」にチェックされた項目は、同じ動きをする、向き合って目

線を合わせる、親の気持ちを伝える、遊びを最後まで一緒にする、

子どもの機嫌はよかった、ぐずって困った、であった。人数が少

ないため、統計的な結果を出すことはできないが、楽しみを共有

したり、モデルを見せたりしてほしいことを伝えたりすることが

活動を通して意識されていた。しかし、同じ動きをするや視線を

合わせるといった、子どもの視点に立つことが少なかったようで

ある。短い活動の中で、また、短期間の講座の中での記述であり、

一般化することができないが、父親にとって、子どもと同じ目線

に立って動いたり、遊びを楽しんだりすることが、案外できにく

いという特性があるのかもしれない。

④ 自由記述の分析

 講座終了後の自由記述は、以下のように整理できる。

<A氏>

・絵本の選び方が参考になった

・普段聞けない教育の先生の話が聞け、また、理論が聞けて参考

になった

・年齢別の教育方法の違いが聞けて良かった

・自分の子どもが学生と楽しそうに遊んでいる姿に驚いた

・講座の最終日に、両手をだして、自分に抱き着いてきてくれた

ことが本当にうれしかった いままで、こんなことがなかった

ので

・育児の情報は、本で入手することが多かった この情報は参考に

なるのか、本当なのか不安だったが、大学の専門的な人から直

接聞けて良かった

・他のお父さんと話せてよかった

・地域情報や遊び方が参考になった

・娘と二人で初めてお出かけできた 2人でお出かけしやすい環

境で良かった

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<B氏>

・他の人といろいろ話ができ、大変勉強になった

・発達段階で見た乳幼児や保護者の課題も、表で体系的にみるこ

とで、自分の子どもに対して、どう接すればよいか、何に気を

付ければよいのかの大まかな指針がはっきりとするので、具体

的な行動根元部分を固められそうで、勉強になった

・他の方の体験や考え、先生のお話を聞いて、子どもに対する理

解や視野が広がった気がする

・妻以外とは子育てについてあまり突っ込んで話をする機会がな

いので、とても勉強になった

・家族のイメージの作成は、改めて、自分と子どもや妻だけでな

く、妻と子ども、子どもと祖父母の関係などのつながりを客観

的に考えることができて新鮮だった(図2)

 

 本プログラムでの父親の変化は、子どもの発達とかかわりに関

する知識や技術の習得に関する事柄が中心であった。講座のなか

でのグループワークにおいても、「理論が知りたい」という意向が

強く出された。また、他の父親や家族との出会いや話し合い、子

どもに対する理解や視野の広がり、子どもと学生とのかかわりを

通して普段と異なる子どもの姿の発見等、非日常性が子どもと父

親の変化を引き起こしたのではないかと思われた。また、専門家

がいること、子どもの面倒を見てくれる学生がいること、安心し

て過ごせる場であったことが安心感につながり、気持ちを開きや

すかったことがあげられよう。特に、A氏は、これまで一度も子

どもと2人で外出したことがなく、講座に来るのも不安で仕方な

く、講座に行けば専門家がいるから何とかしてくれるという思い

が、出かける勇気につながったそうである。A氏の場合、講座へ

の参加は、電車で来なければならず、途中で何かあったらどうか

かわってよいかわからない不安に襲われたそうである。しかし、

行き先が安心できる場だったからで出かけられたが、買い物など

には、とても2人では出かけられないと語った。講座の最後に、

「この子がこんな風に自分から手を広げて自分に抱かれてくること

はなかった。とても嬉しい」とも語った。

 しかし、自由記述の中で、親子遊びに関する記述はほとんどな

く、遊びを一緒に楽しんだという印象が乏しいのではないかと思

われた。それは、子どもの年齢が低かったことに起因するが、そ

れだけではなく、子どもを世話する意識が強く、講座では遊びを

「教えてもらった」のであって、その中で一緒に気持ちを共有して

楽しむことや同じ目線で興味や関心を共有するといった行動はあ

まり見られなかった。おそらく普段でも、そうした意味での子ど

もとの距離が遠いのではないかと思われた。

⑤ ワークブックの効用

A . 4段階評定による子育て振り返りシート

 ワークブックは、講座内ですべて実施したわけではなく、

Sheet 1から Sheet 7は、部分的に講座でした後、家で家族とと

もに振り返り、話し合いをしてもらうようにし、後日にインタ

ビューする形をとった。しかしながら、そうした形では、必ずし

も協力を得られるとは限らず、講座内で実施できるように簡略な

内容に修正したほうがよいように思われる。また、結果が何を意

味するのかという目的を明確化し、自分で図式化できるようにす

るなどして、結果の可視化を図ることで、より振り返りやすくな

るのではないかとも思われた。こうした点が、今後の課題である。

B.過去の自分・今の自分・未来の自分を見つめるシート

 Sheet 8から Sheet 12のワークシートは、いずれも活動内で行

い、参加者同士のディスカッションのテーマ設定に用いる編成に

なっている。今回は参加者が少なかったため、十分に活用するこ

とができなかった。しかし、Sheet11 の家族イメージについては、

B氏が自由記述で書いていたように、普段、そうしたことを考え

ることがあまりなく、改めて見直してみると、家族関係がみえて

きて、興味深かったという感想が聞かれた。このシートの本来の

目的は、家族における子育てのパートナーシップのあり方や親子

関係を考えることであったが、そこまでの深まった論議の展開に

はつながらなかった。

図2 B氏の家族イメージ

 また、Sheet 12 のエゴグラムは、自分自身の振り返りには効果

であった。これを実施したとき、妻とともに参加していたA氏は、

夫婦で話し合い、夫婦関係の見直しにつながったようであった。

また、B氏は、普段の自分の生活や仕事における自分自身を見つ

めなおしたようであった。両氏ともに、自分自身の特性に気づき

をもち、これからの生活の中での自分自身のあり様をともに、考

え直したようであった。

(4)まとめと今後の課題

 ここでの目的は、試行的に取り組まれた父親講座の実践を通し

て、父親の養育性と役割取得を促すプログラムの観点を導出する

ことであった。養育性とは、すでに小嶋(1989)や陳(2011)ら

が定義しているように、子育てに関する知識・技術・態度の習得

と育ちゆく者への受容性・共感性といった人格的な能力を身に着

けることとすれば、今回のような講座は、少ない参加ではあった

が、参加者の個別的な変容から有効なのではないかと思われる。

しかしながら、いくつかの問題が指摘できる。今回の取り組みを

通して、父親の養育性形成支援プログラムの開発にあたって、次

のような観点が重要であると思われる。

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-  -14

① プログラム内容やその展開を固定化しない非定型プログラムの必

要性

 今回の講座では、父親の参加が少なかった。その理由は様々に

考えられよう。講座自体のあり方はもちろん、仕事、時間や場の

条件等が父親の参加をしにくくし、なかなか出てきにくい状況が

あるのではないかと思われる、さらには、父親だけで子どもを連

れて出ることや子どもと長時間一緒にいることの限界、そうした

場に父親が出向く抵抗感や緊張感、不慣れさなどがあげられよう。

その意味で、父子でだけで参加する、あるいは連続で講座に参加

する、といったような仕組みではなく、来ることができるときに、

家族とともに参加できるようなプログラム展開を考えるとともに、

たとえ連続講座であろうとも、読みきり方式を取り入れた内容編

成を工夫する必要があろう。

② 父親の子育て意識の変容と子育ての知識 ・ 技術の学び

 今回の講座では、養育性の形成に向けた講座の意義として、父

親の子育てへの気づきと子育てに関する知識や技術の習得に、他

の父親との出会いや子どもとのかかわり体験学習が有効なのでは

ないかと思われる。しかしながら、日頃子どもとの関わりに時間

的な制約のある父親にとって、講座での他者との出会いや学びの

内容が、父子だけの参加であると広がりが生まれにくい。したがっ

て、夫婦や家族の存在を有効に活用する展開のあり方を考える必

要がある。

③ プログラム内容について

 すでに自由記述のところで触れたように、講座内容の工夫が必

要である。かかわりや遊び体験では、子どもと同調する、ともに

感情や出来事を共有する体験の積み重ねが必要である。また、グ

ループワークでは井戸端会議的な話し合いもよいが、講座内で実

施でき、結果が何を意味するのかという目的が明確化された材料

が重要である。自分で図式化できるようにして、結果が可視化さ

れる材料や自己を対象化することのできる材料を工夫し、有効に

活用する必要がある。そうすることで、振り返りがよりしやすく

なり、参加者同士の話し合いの深まりが得られるのではないかと

思われる。

 講座の内容については、今回、対象となった父親以外の父親か

らも、子育てを理論的に説明してほしいという声が多く聞かれ、

情緒的な側面だけを強調するのではなく、子育て上の出来事の根

拠が明確になるような内容の編成が必要であると思われる。

④今後の課題

 今後、今回の試行的取組で明らかになった課題を見直し、ワー

クブックの再編成と講座の展開の方法を再考したいと考えている。

そのために、今回参加した父親へのインタビュー調査を実施する

とともに、さらに多くの父親への実践を通して、本プログラムの

成果の般化を図りたい。

Ⅴ.総合考察

 本研究の目的は、父親とその親性に関する先行研究および筆者

らの実践結果を踏まえ、父親の養育性形成と役割取得・獲得とい

う視点から、父親の育児参加を促す学習プログラムに求められる

「観点」を抽出することであった。仮説的に、次の4点にわたる観

点を想定した:育児に関して家庭内で役割を持つことの少ない孤

立しがちな父親にとって、育児というテーマをめぐって(プログ

ラムの形式にはこだわらず)まずは、家族との関係性を構築する

(観点A)/父親が自らの養育性を高められた・役割が取得できた

と実感できるような学び・アクティビティをプログラム内に位置

づける(観点B)/観点Aを実現するために、父親だけではなく、

母親や家族もプログラムの参加対象者とする(観点C)/最後に、

観点Bのうち特に養育性を促すために必要な「命の継承」ないし

は「価値の世代間伝達」にかかわる意識形成を図るため、同性の

親との関係性も含んだ父親自身の成育歴という時間軸に沿った振

り返りを試みる(観点D)。

 本研究で取り上げた3つのプログラムのち、1つ目の夫婦参加

型と2つ目の家族対話型は、当初から父親の養育性や役割取得だ

けを目指した実践ではないが、父親の参加を促すという意図が明

確であった点では、本研究の趣旨に沿うものである。ただし、本

稿であらかじめ設定した4つの観点をプログラム構想の時点から

考慮していたわけではないという点では、事後解釈というそしり

は免れない。

 しかしながら、主に乳児の発達に対する親としての対応を軸に

したテーマのもと、夫婦でセミナーを受講するというプログラム

や、幼児期になると気になってくる育児上のテーマをきっかけに

して、夫婦に限らず幼児をケアする家族や親族が参加し、家庭で

はなかなか実現しないじっくり時間をかけた対話を通して、各自

の役割をコミットメントし合うというプログラム(いずれも観点

Aと観点Cが導入されている)が、父親の育児にかかわる意識レ

ベルや行動レベルの変容に結びついていることが明らかにされた。

 3つ目のかかわり体験型は、当初から、父親の養育性形成と役

割取得を促すことを目指した学習プログラム(試行的実践)であっ

た。1回につき3種のセッション(親子遊び、ワークショップ=

対話・議論、セミナー)を、15のワークシートで構成されるワー

クブックに沿って体験するという体系化されたプログラムである。

もちろん、観点A~観点Dが埋め込まれたプログラムであるが、

自由記述やインタビュー等を通して、実際にわが子との遊びを通

してふれあうことで、父親の役割取得が意識される(観点B)こ

とと、自分の過去と現在とを振り返り・未来を展望するというワー

クショップを通して養育性の形成の契機を父親に与えうる(観点

D)可能性とが示唆されている。分析対象者が2名であったため、

明確な結論の一般化はできないが、以下に述べるような(今回の

研究で導出した)4つの観点の再検討(後述する)と対応させな

がら、より効果的な学習プログラムに改善し、効果検証を重ねて

いく必要がある。

 最後に、本稿で提起した4つの観点は、その指し示すレベルが

相互に異なっている。例えば、観点Aは、学習する内容ではなく、

いわば受講時の準備状況を表しているのに対し、観点Bは、プロ

グラムの内容を示している。さらに、観点Cは参加者の範囲を示

すものであり、観点Dは観点Bの一部を心理学的側面から具体的

に取り上げている。したがって、今後は、こうした4つの観点そ

のものも、論理的に整合性の高い構造となるよう、再検討が必要

である。

01 寺見陽子④.indd 14 2016/03/17 12:59:49

(15)

-  -15

≪注1≫「父親の育児参加」という用語は、母親(女性)が中心

的に育児役割を果たし、それに側面的に父親(男性)が加わる・

手伝うという不均衡な役割分担を肯定するという意味で、使うべ

きではないという議論もある。しかし、この用語は「父親の家事

参加」とともに広く一般に使用されている表現、さらに、内閣府

等の公的機関の調査においても使用されている表現であるという

理由から、本稿ではこの用語を採用している。もちろん、父親(男

性)が側面的にではなく、親として主体的に育児にかかわること

が重要であることは言うまでもない。

≪注2≫本研究は「人を対象とする研究」であるが、倫理審査を

受けてはいない。しかし、倫理面の配慮として、参加申込時に参

加者に対し、「大学が実施するプログラムであるため、質問紙など

を通して回答した内容、観察された内容は、個人名を出すことな

く公表されること」を十分に説明し、参加者全員(乳幼児は除く)

から口頭で了承を得ている。

謝辞

 本研究の学習プログラムに参加し、各種の調査にご協力いただ

いたプログラム受講者の男性・女性・乳幼児のみなさまに深謝す

る。

引用文献

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れにかかわる要因:育児の計画における連携・調整と育児行

動の分担に着目して 発達心理学研究 20(4) 382-392

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-  -16

ン 11(2)89-96

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田村 毅・倉持清美・中澤智恵・岸田泰子・木村恭子・及川裕子・

荒牧美佐子・持田恭子・森田千恵(2002)出産・子育て体験

が親の成長と夫婦関係に与える影響(1)出産前後の面接調

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集 546

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関する質的研究-家事・育児参加に関するインタビュー調査

から-日本教育心理学会第57回総会発表論文集 182

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に関する研究(1)-父親の生活状況と父親の特性との関連

- 日本発達心理学会第26回大会発表論文集 P 1-092

東京大学医学部心療内科編著(1995)エゴグラム・パターン TEG

(東大式エゴグラム)第2版による性格分析 金子書房

引用ウェブページ

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http://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/09/h0920-1.html

厚生労働省ホームページ(2004)少子化社会対策大綱(2015年8

月18日取得)http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/

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http://ikumen-project.jp/

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http://www.gakusyu-program-nwec.jp/

01 寺見陽子④.indd 16 2016/03/17 12:59:49

(17)

-  -17

付録

ワークブック(Sheet)1

★あなたの子育て生活を振り返ってみましょう。

 次の各項目にあなたはどの程度あてはまりますか。記号を○で

囲んでください。1は「とてもよくあてはまる」、2は「よくあて

はまる」、3は「あまりあてはまらない」、4は「まったくあては

まらない」です。

子育てをしていると幸せな気持ちになる 1 2 3 4

子どもといると充実して楽しい 1 2 3 4

子どもといると穏やかな気持ちになれる 1 2 3 4

子どもの世話をしていると気持ちが暖かくなる 1 2 3 4

子育てに生きがいを感じる 1 2 3 4

ひとりでのんびりする時間がほしい 1 2 3 4

子どもがいると自分の行動が制限されストレスを感じる

1 2 3 4

子育てで自分の時間がとられてしまう 1 2 3 4

子育てをしているとイライラすることがある 1 2 3 4

子どもの世話と自分のしたいこととの間で葛藤することがある

1 2 3 4

子どもの世話の仕方がわからない 1 2 3 4

子どもとの接し方や遊び方がわからない 1 2 3 4

子どもとのかかわり方がわからないことがある 1 2 3 4

しつけの仕方がわからなくて戸惑うことがある 1 2 3 4

親として自分は不適格だと思う 1 2 3 4

妻と私の子育て方針は異なる 1 2 3 4

子育てについて妻から理解が得られていない 1 2 3 4

子育てに関して妻とけんかになることがある 1 2 3 4

妻は私にもっと子育てに参加してほしいと思っている

1 2 3 4

<気づいたこと>

ワークブック (Sheet) 2 

★あなたにとって子どもはどんな存在ですか。 また、 どのように育って

ほしいですか。

 次の各項目にあなたはどの程度あてはまりますか。記号を○で

囲んでください。1は「とてもよくあてはまる」、2は「よくあて

はまる」、3は「あまりあてはまらない」、4は「まったくあては

まらない」です。

子どもは私をいやしてくれる 1 2 3 4

子どもは自分を成長させてくれる存在である 1 2 3 4

元気な子に育ってほしい 1 2 3 4

何でも自分でする自立した子に育ってほしい 1 2 3 4

やさしく思いやりのある子に育ってほしい 1 2 3 4

楽しい、おもしろい子に育ってほしい 1 2 3 4

素直で誠実な子に育ってほしい 1 2 3 4

自分の趣味を持った子どもに育ってほしい 1 2 3 4

何か得意なものを持った子どもに育ってほしい 1 2 3 4

子どもは自分の分身である 1 2 3 4

賢い子に育ってほしい 1 2 3 4

子どもはなくてはならない存在である 1 2 3 4

子どもあっての私だと思う 1 2 3 4

子どもがいるから頑張ることができる 1 2 3 4

子どもはおもしろい 1 2 3 4

子どもは悩みの種である 1 2 3 4

子どもは私の邪魔をする存在である 1 2 3 4

子どもは苦手である 1 2 3 4

子どもとは私と異なった人格を持つ存在である 1 2 3 4

<気づいたこと>

ワークブック(Sheet)3 

★子どもが生まれるまでを振り返ってみましょう。

 次の各項目にあなたはどの程度あてはまりますか。記号を○で

囲んでください。1は「とてもよくあてはまる」、2は「よくあて

はまる」、3は「あまりあてはまらない」、4は「まったくあては

まらない」です。

妻の妊娠がわかった時、私はうれしかった 1 2 3 4

妻の妊娠がわかった時、私は産んでほしくないと思った

1 2 3 4

妻の妊娠がわかった時、私は戸惑った 1 2 3 4

妻の妊娠は順調だった 1 2 3 4

妻が妊娠して、自分の思い通りにならないことが多くなりイライラした

1 2 3 4

妻の妊娠中、私はしんどかった 1 2 3 4

妻の妊娠中、私は夫として妻に親身に協力した 1 2 3 4

生まれてくる子どもに対する私の期待感は大きかった

1 2 3 4

妻のお腹がだんだん大きくなってくることに私は喜びを感じた

1 2 3 4

妻が妊娠したことで、私は自分の親への感謝の気持ちが湧いた

1 2 3 4

妻の妊娠中、私は不安定だった 1 2 3 4

妻の妊娠中、援助してくれる親族がいた 1 2 3 4

妻の妊娠中、援助してくれる近所の人がいた 1 2 3 4

<気づいたこと>

01 寺見陽子④.indd 17 2016/03/17 12:59:49

(18)

-  -18

ワークブック(Sheet)4 

★子どもが生まれる時のことを振り返ってみましょう。

 次の各項目にあなたはどの程度あてはまりますか。記号を○で

囲んでください。1は「とてもよくあてはまる」、2は「よくあて

はまる」、3は「あまりあてはまらない」、4は「まったくあては

まらない」です。最後の質問には、「はい」「いいえ」のどちらか

を○で囲んでください。

妻の出産は順調だった 1 2 3 4

妻の出産する時、私はパニックになった 1 2 3 4

妻の出産時、援助をしてくれる近所の人がいた 1 2 3 4

妻の出産は、私にとってしんどいものだった 1 2 3 4

妻の出産直前、私は不安だった 1 2 3 4

私は、生まれてきた子どもを見たとき嬉しかった 1 2 3 4

妻の出産時、私は妻に親身に協力した 1 2 3 4

生まれた子どもを抱いたとき、子どもに対する私のイメージが変わった

1 2 3 4

私に子どもが生まれたことを、周りの人はみんな喜んでくれた

1 2 3 4

妻の出産時、援助をしてくれる親族がいた 1 2 3 4

産後の回復は順調だった 1 2 3 4

私は妻の出産に立ち会った 1 2 3 4

<気づいたこと>

ワークブック(Sheet)5 

★今のあなた自身のことを振り返ってみましょう。

 次の各項目にあなたはどの程度あてはまりますか。記号を○で

囲んでください。1は「とてもよくあてはまる」、2は「よくあて

はまる」、3は「あまりあてはまらない」、4は「まったくあては

まらない」です。

私は人よりも知り合いができやすいほうだ 1 2 3 4

私はわりとたやすく人と親しくなれるほうだ 1 2 3 4

私は人に好かれやすい性格だ 1 2 3 4

私は気軽に人に頼ったり・人から頼られたりすることができるほうだ

1 2 3 4

私は人づきあいが良いほうだ 1 2 3 4

たいていの人は私を好いていてくれると思う 1 2 3 4

私は楽天的で、物事をくよくよ考えない 1 2 3 4

私は体調が良くないと感じることがある 1 2 3 4

私はひどく疲れやすい 1 2 3 4

私は不安感や恐怖感に襲われることがある 1 2 3 4

私は理由なく気が滅入ることがある 1 2 3 4

私は心配性で、いつも物事を気にするほうである 1 2 3 4

私は理由なくいつもイライラしている 1 2 3 4

私はじっとしていられないほど落ち着かなくなることがある

1 2 3 4

私は何と寂しい気持ちに襲われることがある 1 2 3 4

気分の良くない時、私は気難しくなる 1 2 3 4

私はいつもだいたい幸せな気分で過ごしている 1 2 3 4

私は自分自身を信用できないことがある 1 2 3 4

私は自分の友だちが本当は私を好いてくれていないのではないか・私と一緒にいたくないのではないかと時々思う

1 2 3 4

私は自分の知り合いが本当はイヤイヤながら私と親しくしてくれているのではないかと思うときがある

1 2 3 4

私は人と親しくなるのがあまり好きではない 1 2 3 4

私は、人からあまりにも親しくされたり、自分が望む以上に親しくなることを人から求められたりすると、イライラするときがある

1 2 3 4

私は人に頼らなくても自分一人で十分にうまくやっていくことができる

1 2 3 4

私は人は全面的に信用できないと思う 1 2 3 4

私は人に頼るのはすくではない 1 2 3 4

<気づいたこと>

ワークブック(Sheet)6

★あなたの子どもの頃のことを振り返ってみましょう。

 次の各項目に、あなたはどの程度あてはまりますか。記号を○

で囲んでください。1は「とてもよくあてはまる」、2は「よくあ

てはまる」、3は「あまりあてはまらない」、4は「まったくあて

はまらない」です。

親は私に対して拒否的だった 1 2 3 4

私は親から無視されていた 1 2 3 4

子どもの頃、母親の存在は薄かった 1 2 3 4

親は私のことを理解してくれなかった 1 2 3 4

父も母も忙しく、私はかまってもらえなかった 1 2 3 4

私は親から愛されて育った 1 2 3 4

親はなにかと私の行動を制限した 1 2 3 4

親は、私がいつもきちんとするよう、厳しく私をしつけた

1 2 3 4

私は親の顔色をうかがいながら育った 1 2 3 4

親は私に対して高圧的だった 1 2 3 4

親は私に対して干渉的だった 1 2 3 4

親は私の意見を尊重し、なんでも私の好きなようにやらせてくれた

1 2 3 4

私は母親と相性が良かった 1 2 3 4

私にとって親は友達のような存在だった 1 2 3 4

親はいつも私に対してやさしく接してくれた 1 2 3 4

子どもの頃、家族団らんの時間があり楽しかった 1 2 3 4

私は父親と相性が良かった 1 2 3 4

子どもの頃、父親の存在は薄かった 1 2 3 4

子どもの頃、私は親のことが大好きだった 1 2 3 4

子どもの頃、きょうだいや近所の子どもと一誌に遊んだり、その世話をしたりした

1 2 3 4

子どもの頃、赤ちゃんと遊んだり赤ちゃんをあやしたりしたことがある

1 2 3 4

子どもの頃、親戚やきょうだい、近所のひとなど、大勢の人の中で育った

1 2 3 4

親は、私に対して過保護だった 1 2 3 4

親は早くから私のことを大人扱いした 1 2 3 4

子どもの頃、自分の好きなことをやり始めると、それにのめり込むタイプだった

1 2 3 4

中学・高校時代に、熱中したこと・ものがある 1 2 3 4

中学・高校時代には、時間を忘れて友だちとしゃべったものだった

1 2 3 4

<気づいたこと>

01 寺見陽子④.indd 18 2016/03/17 12:59:49

(19)

-  -19

ワークブック(Sheet)7 

★子育てのサポートは誰から得ていますか。

 次の各項目にあなたはどの程度あてはまりますか。記号を○で

囲んでください。1は「とてもよくあてはまる」、2は「よくあて

はまる」、3は「あまりあてはまらない」、4    は「まった

くあてはまらない」です。

私は妻からの子育てに関する相談にのっている 1 2 3 4

妻は私のことを理解してくれている 1 2 3 4

私は子育てに協力している 1 2 3 4

私の励ましや言葉かけによって、妻の気持ちは楽になっている

1 2 3 4

私はほとんど子どもにはかかわらない 1 2 3 4

子育ての相談は、保健師にする 1 2 3 4

子育ての相談は、児童相談所や家庭児童相談室にする

1 2 3 4

子育ての相談は、地域の育児サークルや講座などでする

1 2 3 4

子育ての相談は、医療機関でする 1 2 3 4

私は子どもと遊ぶことが中心で、子どもの生活については妻がほとんどしている

1 2 3 4

私が子どもとかかわるのは休日が多い 1 2 3 4

自分の生活(仕事など)の都合で、私は子育てにあまりかかわることができない

1 2 3 4

子育てのサポートは、私の親から受けている 1 2 3 4

子育ての相談は自分の親にする 1 2 3 4

子育ての相談は妻の親にする 1 2 3 4

子育てのサポートは、妻の親あるいはきょうだいから受けている 1 2 3 4

子育てのサポートは、近所の人から受けている 1 2 3 4

子育ての相談は、近所の人にする 1 2 3 4

立話ができる近所の人が2~3人いる 1 2 3 4

子どもの頃、きょうだいや近所の子どもと一誌に遊んだり、その世話をしたりした

1 2 3 4

子どもの頃、赤ちゃんと遊んだり赤ちゃんをあやしたりしたことがある

1 2 3 4

<気づいたこと>

ワークブック(Sheet)8 

★自分の幼少期を思い出してみよう。

 文章を読んで、あなたが0歳から小学校3年生だった頃を思い

出しながら、あなたが親に「世話になったこと」、親に「して返し

たこと」、親に「迷惑をかけたこと」を思いだし、別の用紙に書い

てみましょう。自由に記述してください(三木善彦・三木潤子

(1988)『内観ワーク-心の不安を癒して幸せになる-』二見書房

164~166ページから抜粋)。

それでは、あなたが0歳から小学校3年生までのことを内観

します。

とてもなつかしい時代です。

 いきなり思い出すのは大変ですから、少しずつ記憶の端々

を引っ張り出せるような話をしていきますので、あなたの内

観の助けとしてください。

 さあ、それでは始めましょう。

 あなたが物心ついたころから、幼稚園や保育園に通ってい

たころ、小学校に入学したころ、そして低学年までの期間を

思い出してください。

 小さいころ、どんなところに住んでいましたか。

 家のまわりにはどんな風景が広がっていましたか。

 工場ですか、田んぼや畑ですか、農村ですか、漁村ですか。 

 あるいは住宅街ですか。

 近所にはどんな人たちがいましたか。

 隣のおじさんやおばさんは、どんな人たちでしたか。

 あなたに優しくしてくれましたか。

 さあ、あなたの家を思い出してください。

 あなたの家はどんな家でしたか。

 屋根は何色でしたか。

 庭はありましたか。

 玄関はどんな玄関でしたか。

 玄関を開けて入ってみましょう。

 玄関に入って、すぐ目に飛び込んできたのは何ですか。

 あなたが幼稚園や小学校から帰ってきて、最初にどこに

 行きましたか。

大きな声で「ただいま!」と言っていましたか。

お母さんの「お帰り」という声は聞こえてきましたか。

お母さんはいつも何をしていましたか。

お母さんに、あなたは何を話しかけていましたか。

ゆっくりゆっくり思い出してください。

ケンカをして泣いて帰ってきたことはありませんか。

そんなとき、お母さんは、どんな対応をしてくれましたか。

優しかったですか。厳しかったですか。ひざの上で泣いた

 ことはありませんでしたか。

お腹を空かして帰ってきたら、いつも「ご飯、まだ?」と

 言っていませんでしたか。

どんな料理を出してくれましたか。何がおいしかった

 ですか。あなたは何が好きでしたか。

夜、誰と寝ていましたか。

お母さんといっしょでしたか。

オネショをしたことはありませんでしたか。

さあ、ゆっくりと思い出してください。どんなに小さなこと

でもいいですから、たくさん思い出してください。

01 寺見陽子④.indd 19 2016/03/17 12:59:49

(20)

-  -20

あなたの0歳から小学校3年生のころ、親とのかかわりで思い出

したことを書いてくだい。

親に<世話になったこと>

親に<して返したこと>

親に<迷惑をかけたこと>

ワークブック(Sheet)9  

★今の私と未来の私を考える

 あなたのあこがれや将来の夢を楕円の中に書きましょう。そう

なるために今できることを△の中にたくさん書いてみましょう(家

庭教育調査検討会・兵庫県立嬉野台生涯教育センター(2001)『ひょ

うご親学習プログラム ゆっくりゆったり親育ち』 兵庫県家庭教

育力活性化支援協議会 36ページ)。

- 19 -

観ワーク-心の不安を癒して幸せになる-』二見書房 164~166 ペ

ージから抜粋)。 それでは、あなたが0歳から小学校3年生までのことを内観

します。 とてもなつかしい時代です。

いきなり思い出すのは大変ですから、少しずつ記憶の端々を

引っ張り出せるような話をしていきますので、あなたの内観の

助けとしてください。 さあ、それでは始めましょう。 あなたが物心ついたころから、幼稚園や保育園に通っていた

ころ、小学校に入学したころ、そして低学年までの期間を思い

出してください。 小さいころ、どんなところに住んでいましたか。 家のまわりにはどんな風景が広がっていましたか。 工場ですか、田んぼや畑ですか、農村ですか、漁村ですか。

あるいは住宅街ですか。 近所にはどんな人たちがいましたか。 隣のおじさんやおばさんは、どんな人たちでしたか。 あなたに優しくしてくれましたか。 さあ、あなたの家を思い出してください。 あなたの家はどんな家でしたか。 屋根は何色でしたか。 庭はありましたか。 玄関はどんな玄関でしたか。 玄関を開けて入ってみましょう。 玄関に入って、すぐ目に飛び込んできたのは何ですか。 あなたが幼稚園や小学校から帰ってきて、最初にどこに

行きましたか。 大きな声で「ただいま!」と言っていましたか。 お母さんの「お帰り」という声は聞こえてきましたか。 お母さんはいつも何をしていましたか。 お母さんに、あなたは何を話しかけていましたか。 ゆっくりゆっくり思い出してください。 ケンカをして泣いて帰ってきたことはありませんか。 そんなとき、お母さんは、どんな対応をしてくれましたか。

優しかったですか。厳しかったですか。ひざの上で泣いた ことはありませんでしたか。 お腹を空かして帰ってきたら、いつも「ご飯、まだ?」と 言っていませんでしたか。 どんな料理を出してくれましたか。何がおいしかった ですか。あなたは何が好きでしたか。 夜、誰と寝ていましたか。 お母さんといっしょでしたか。 オネショをしたことはありませんでしたか。 さあ、ゆっくりと思い出してください。どんなに小さなこと

でもいいですから、たくさん思い出してください。

あなたの0歳から小学校3年生のころ、親とのかかわりで思い出し

たことを書いてくだい。 親に<世話になったこと> 親に<して返したこと> 親に<迷惑をかけたこと>

ワークブック(Sheet)9 ★今の私と未来の私を考える あなたのあこがれや将来の夢を楕円の中に書きましょう。そうなる

ために今できることを△の中にたくさん書いてみましょう(家庭教

育調査検討会・兵庫県立嬉野台生涯教育センター(2001)『ひょう

ご親学習プログラム ゆっくりゆったり親育ち』 兵庫県家庭教育力

活性化支援協議会 36ページ)。

ワークブック(Sheet)10 ★子どものエコゴマップを作ろう あなたのお子さんの周りの人間関係を図にしてみましょう。距離と

つながりの深さを線の長さと太さで表してください。その他、保育ワークブック(Sheet)10 

★子どものエコゴマップを作ろう

 あなたのお子さんの周りの人間関係を図にしてみましょう。距

離とつながりの深さを線の長さと太さで表してください。その他、

保育所・幼稚園・児童館・子育てサークルなど、社会的な機関や

施設と繋がりがあれば、それらも記入してください。

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所・幼稚園・児童館・子育てサークルなど、社会的な機関や施設と

繋がりがあれば、それらも記入してください。 (例) 妻 ポチ(犬) 私 〇〇ちゃん おじいちゃん 隣のおばちゃん おばあちゃん おばちゃん いとこ おじちゃん ワークブック(Sheet)11 ★自分の家族を描いてみよう(家族図作成)。 あなたの家族関係を振り返って、家族図を作ってみましょう(亀

口憲治・飯島晶子(2004)『FIT を用いた家族療法-家族内のコミ

ュニケーション こころを運ぶことばの力-』金子書房 128-141 ペ

ージの一部を寺見陽子が本講座用に改変して使用)。 <教示> 【手順 1】家族のシールを選びます。家族メンバーそれぞれに 1 色

ずつ選んでください。 【手順 2】シールを選んだら、<別紙>の枠内に貼ります。そのと

き、シールについている印は、家族の人がよく向いている方向に向

けて描いてください。枠内であれば、どの位置に貼ってもかまいま

せん。 【手順 3】貼り終えたら、そのシールが家族の誰か(自分、妻、子

ども、自分の母、妻の父など)をシールの中に記入してください。 【手順4】 記入が終わったら、家族内の2人(たとえば、自分-妻、あなた

-子どもなど)の関係性の程度を、シールとシールの間に下記の線

を書き加えることによって、表してください。 強い結びつきがある: 結びつきがある : 分からない :

【手順5】 さて、あなたの家族はどんな形になりましたか。ひと言、あなた

の感想を<別紙>の所定の欄に書いてみてください。 <別紙> あなたの氏名 (イニシャル可) 家族メンバーのうちあなたは誰ですか。 あなたの年齢と性別 歳 ( 男 ・ 女 ) 家族構成 家族図作成年月日 年 月 日

家族図欄

感想欄 ワークブック(Sheet)12 ★自己の特性を診断してみよう(エゴグラム) 以下の 50 の質問に「はい」の時は○、「どちらでもない」時は△、

「いいえ」の時は×を、空欄にいれてみてください。

CP

人の言葉をさえぎって自分の考えを述べることは

ありますか

他人を厳しく批判する方ですか 待ち合わせ時間を厳守しますか 理想を持ち、その実現に努力しますか 社会の規則・倫理・道徳等を重視しますか 責任感を強く人に求めますか 小さな不正でもうやむやにしないほうですか 子どもや部下を厳しく教育しますか 権利を主張する前に義務を果しますか 「…すべきである」「…ねばならない」という言い

方をよくしますか

NP

他人に対して思いやりの気持ちが強いほうですか

義理と人情を重視しますか 相手の長所に良く気がつくほうですか 他人から頼まれたらイヤとは言えないほうですか

子どもや他人の世話をするのが好きですか 融通がきくほうですか 子どもや部下の失敗に寛大ですか 相手の話に耳を傾け、共感するほうですか 料理・洗濯・掃除などが好きなほうですか 社会奉仕的な仕事に参加することが好きですか

A

自分の損得を考えて行動するほうですか 合

会話で感情的になることは少ないですか 分析的によく考えてから物事を決めますか 他人の意見は賛否両論を聞き、参考にしますか 何事も事実に基づいて判断しますか 情緒的というより、むしろ理論的なほうですか

ワークブック(Sheet)11 

★自分の家族を描いてみよう (家族図作成)。

 あなたの家族関係を振り返って、家族図を作ってみましょう(亀

口憲治・飯島晶子(2004)『FIT を用いた家族療法-家族内のコ

ミュニケーション こころを運ぶことばの力-』金子書房128-141

ページの一部を寺見陽子が本講座用に改変して使用)。

<教示>

【手順1】家族のシールを選びます。家族メンバーそれぞれに1色

ずつ選んでください。

【手順2】シールを選んだら、<別紙>の枠内に貼ります。その

とき、シールについている印は、家族の人がよく向いている方向

に向けて描いてください。枠内であれば、どの位置に貼ってもか

まいません。

【手順3】貼り終えたら、そのシールが家族の誰か(自分、妻、

子ども、自分の母、妻の父など)をシールの中に記入してくださ

い。

【手順4】

記入が終わったら、家族内の2人(たとえば、自分-妻、あなた-

子どもなど)の関係性の程度を、シールとシールの間に下記の線

を書き加えることによって、表してください。

強い結びつきがある:       

結びつきがある  :       

分からない    : 

【手順5】

 さて、あなたの家族はどんな形になりましたか。ひと言、あな

たの感想を<別紙>の所定の欄に書いてみてください。

<別紙>

あなたの氏名                (イニシャル可)

家族メンバーのうちあなたは誰ですか。           

あなたの年齢と性別         歳  ( 男 ・ 女 )

家族構成                          

家族図作成年月日         年     月    日

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家族図欄

感想欄                          

                             

                             

                             

ワークブック(Sheet)12 

★自己の特性を診断してみよう (エゴグラム)

 以下の50の質問に「はい」の時は○、「どちらでもない」時は

△、「いいえ」の時は×を、空欄にいれてみてください。

C P

人の言葉をさえぎって自分の考えを述べることはありますか

計    点

他人を厳しく批判する方ですか

待ち合わせ時間を厳守しますか

理想を持ち、その実現に努力しますか

社会の規則・倫理・道徳等を重視しますか

責任感を強く人に求めますか

小さな不正でもうやむやにしないほうですか

子どもや部下を厳しく教育しますか

権利を主張する前に義務を果しますか

「…すべきである」「…ねばならない」という言い方をよくしますか

N P

他人に対して思いやりの気持ちが強いほうですか

計    点

義理と人情を重視しますか

相手の長所に良く気がつくほうですか

他人から頼まれたらイヤとは言えないほうですか

子どもや他人の世話をするのが好きですか

融通がきくほうですか

子どもや部下の失敗に寛大ですか

相手の話に耳を傾け、共感するほうですか

料理・洗濯・掃除などが好きなほうですか

社会奉仕的な仕事に参加することが好きですか

自分の損得を考えて行動するほうですか

計    点

会話で感情的になることは少ないですか

分析的によく考えてから物事を決めますか

他人の意見は賛否両論を聞き、参考にしますか

何事も事実に基づいて判断しますか

情緒的というより、むしろ理論的なほうですか

物事の決断は、苦労せずにすばやくできますか

能率的にテキパキと仕事を片付けるほうですか

先(将来)の事を冷静に予測して行動しますか

身体の調子の悪い時は自重して無理を避けますか

F C

自分をわがままだと思いますか

計    点

好奇心が強いほうですか

娯楽・食べ物などを満足するまで求めますか

言いたい事は遠慮なく言ってしまうほうですか

欲しいものは、手に入れないと気が済まないほうですか

「わあ」「すごい」「へえー」など感嘆詞をよく使いますか

物事を直感で判断するほうですか

興に乗ると度を越して、はめをはずしてしまいますか

怒りっぽいほうですか

涙もろいほうですか

A P

思っていることを口に出せない性質ですか

計    点

人から気に入られたいと思いますか

遠慮がちで消極的なほうですか

自分の考えを通すより、妥協することのほうが多いですか

他人の顔色や言うことが気にかかりますか

つらい時でも我慢してしまうほうですか

他人の期待に沿うよう過激な努力をしますか

自分の感情を抑えてしまうほうですか

劣等感が強いほうですか

現在「自分らしい自分」「本当の自分」から離れているように思えますか

では、以下の「エゴグラム採点表」を使って自己診断をしてみま

しょう。

得 点  20  16  12  8  4  0

厳格支配的

思いやり世話好き

合理的能率的

のびのび行動的

良い子的自己抑制

CP 得点 NP 得点 A 得点 FC 得点 A 得点

  点   点   点   点   点

無批判友好的

冷淡淋しがり屋

無計画非合理性

消極的閉鎖的

がんこ意地っ張り

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(22)

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ワークブック(Sheet)13 

親子のふれあい遊び-おとうさんと遊ぼう 

 ふれあい遊びを通して、子どもの心をはぐくみましょう。

★ふれあいを楽しもう:くっつきむし/ももやももや/おすわり

やす/飛行機ぶんぶん/あんよは上手/ここまでおいで/山のぼ

り/たかいたかい

★やりとりを楽しもう:いない、いない、ばあ/かいぐり/ちょ

ち、ちょち、あわわ/おつむてんてん/ああがりめ さがりめ/

ふたあつ

★手遊びを楽しもう:おせんべやけたかな/一本橋こちょこちょ

/ニギニギパー/いちがさした/おさらにタマゴ/おなべふ

★身近なモノを使って楽しもう

材料:新聞紙・布・紙袋(買い物用のマチのある紙袋、頭からか

ぶれるもの)/ダンボール(子どもが入れるぐらいのもの同じサ

イズのもの)/ボール(幼児用のボール直径10~15センチぐらい)

/ビニール袋(一番安い小さいものでよい)とストロー/ティッ

シュの空き箱・海苔かお茶の空き缶・ペットボトルの空(丸いも

の)/ビー玉・おはじき・おてだま等

ふれあい遊びの例

★1、2、3、おててをねいち、にの、さん、おててをね、ふってふってふってふってぶら

ぶらぶらぶらパッ!

いち、にの、さん、あんよをね、ふってふってふってふってとん

とんとんとんパッ!

いち、にの、さん、おくびをね、ふってふってふってふってぐる

ぐるぐるぐるパッ!

いち、にも、さん、おしりをね、ふってふってふってふってぐる

ぐるぐるぐるパッ!

★あたま、かた、ひざ、ポン

あたま、かた、ひざ、ポン   ひざ ポン ひざ ポン

あたま かた ひざ ポン  め みみ はな くち

★アブラハムの子

アブラハムには7人の子  1人はのっぽであとはちび

みんななかよくくらしてる さあおどりましょ みぎて…

(歌を繰り返し左手、右足、左足、頭、おしりと増やしていく)

★わらべうた体操おさるのブランコー上がり目下がり目 一匁の伊助さん なべなべそこ

ぬけ ぎっこんばったんゆうやけこやけ なかなか ホイ ひらいたひら

いた

★動物体操①ウサギさんの体操は ぴょーんぴょーんぴょんぴょんぴょん

ウサギさんの体操は ぴょーんぴょーんぴょんぴょんぴょん

前にぴょんぴょんぴょん 後ろにぴょんぴょんぴょん

そろって1,2,3 元気に1,2,3

②ぞうさんの体操は…

③へびさんの体操は…、

④あひるさんの体操は…、

⑤ごりらさんの体操は…、

★親子体操電車ごっこ→遊覧船→さるの親子→トンネルくぐり→山登り→お

馬パカパカ→木登り→肩車→山滑り→ブランコ→飛行機→トンネ

ルくぐり

ワークブック(Sheet)14 

手遊び ・ 歌遊び

★一匹のカエル1匹のカエル ぴょんぴょんダンスして ケロケロケロケロ

歌ってる お池のなかに チャッポーン スイスイスイ

2匹のカエル・・・  

3匹のカエル・・・

4匹のカエル・・・  

5匹のカエル・・・

★ピクニック(十人のインディアンの歌で)1(右手)と5(左手)でたこ焼き食べて

2と5で焼きそば食べて   

3と5でスパゲッティ食べて  

4と5でケーキをたべて

5と5でおにぎりつくって ピクニック!

(たべちゃった!パクン)

★かなづちトントン①かなづちトントン1本でトントン かなづちトントン 

つぎは2本

②・・・つぎは3本、③・・・つぎは4本、④・・・つぎは5本

⑤かなづちトントン 5本でトントン

かなづちトントン これでおしまい

★頭の上でパン頭の上でパン   お顔の横でパン 

お腹の前でパン  お尻の後ろでパン

パンパンパンパン パンパンパンパン パパンパ パンパンパン

ワークブック(Sheet)15 

身近なもので遊ぼう

★ビニール袋で遊ぼうビニールおばけ/空気あつめ/ボールたたき

★新聞紙で遊ぼうイナイイナイバー、ケンパ/ポンポン作ろう/変身してダンス/

新聞雪合戦/ボール遊び

★ハンカチ(布)で遊ぼう・ハンカチとり、しっぽとり

・ハンカチ落とし

・ハンカチで歌遊び

 「バナナ」をどうぞ   南の国からやってきた おいしいバナナをさあどうぞ

 「小さな庭」    小さな庭をよく耕して 小さな種をまきました

   ズンズン伸びて春になって 小さな花が咲きましたポッ

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