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Jupiter...
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2006 卒業論文
信州大学 理学部 物理科学科
高エネルギー実験研究室
Jupiterを使ったカロリメータのシミュレーション
03s2003a
井手 康裕
目次
1 はじめに 1
1.1 概要 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 1
1.2 目的 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 1
2 シミュレーションツールおよびカロリメータ 2
2.1 Jupiter . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 2
2.2 Calorimeter . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 2
3 電磁シャワー 4
3.1 電磁シャワー . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 4
3.2 エネルギー分解能 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 4
3.3 Moliere radius . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 5
4 結果 7
4.1 線形性 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 8
4.2 エネルギー分解能 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 8
4.3 Moliere radius . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 10
5 まとめ 11
6 謝辞 12
2
1 はじめに 1
1 はじめに
1.1 概要
高エネルギー物理学とは、物質の構成要素、またその間に働く相互作用を実験的に解明
することを目的とした学問である。そのため、高エネルギー物理学の発展には、より高エ
ネルギーでの衝突を可能にする加速器の開発が必要である。しかし、加速器の開発、建設
には多額の資金が必要となるため、開発には多数のシミュレーションが重要になってく
る。そのような必要性から次世代型加速器のシミュレーションソフトとして Jupiterが開
発された。
本研究では Jupiterに実装されている新型のカロリメータ CLXの性能を評価していく。
1.2 目的
Jupiterにおける電磁カロリメータの構造および性能を以下のシミュレーションを通じ
て調べる。
• 入射エネルギーとエネルギーデポジットの線型性• エネルギー分解能• Moliere radius
2 シミュレーションツールおよびカロリメータ 2
2 シミュレーションツールおよびカロリメータ
この章では本研究で使用したシミュレーションツールおよびカロリメータについて紹介
する。
2.1 Jupiter
Jupiter とは”JLC Unified Particle Interaction and Tracking EmulatoR” の略で
GEANT4 ベースのシミュレーターである。内側から Vertex Detecter,Intermediate
Tracker,Time Projection Chember,Calorimeter,Muondetecter からなっている。各検
出器は個別にスイッチを ON,OFF することで動作させることができる。本研究では
Calorimeterのみスイッチを ONにして動作させている。また、Jupiterでは Calorime-
ter は CAL と CLX の 2 種類実装されている。図 1 に Jupiter における検出器の概観を
示す。
muon detecter
time projection chember
calorimeter
intermediate tracker
vertex detecter
7.65m
8.0m
図 1 Jupiterにおける検出器の概観
2.2 Calorimeter
カロリメータの役割りは粒子のエネルギーおよび方向の測定である。そのため生成粒子
がカロリメータの内部でシャワーをおこし、そのエネルギーのほぼ全てをカロリメータ内
に落とすために十分な物質 (吸収層)を置き、そのエナジーデポジットの一部を測定する
ことで実際のエネルギーを推定できるように設計されている。実際の構造としては、物質
2 シミュレーションツールおよびカロリメータ 3
量の大きい物質で構成された吸収層とシグナル測定のための検出層が交互にサンドイッチ
されて配置されている。また、一般的に光子、電子と中性ハドロンのシャワーの違いから
内側に電磁カロリメータ (Electron-Magnetic Calorimeter,ECAL) を、外側にはハドロ
ンカロリメータ (Hadron Calorimeter,HCAL)が置かれている.
2.2.1 CLX
本研究では 2種類あるカロリメータのうち CLXを用いてシミュレーションをおこなっ
た。CLXの構造は図 2のようになっている。CLXは 12角形をしており、内側に ECAL、
外側に HCALが位置している。それぞれビームパイプを取り巻く Barrel部分とビームパ
イプに垂直な Endcap部分からなっている。
ECAL には吸収層にタングステン 3mm、検出層にシンチレータ 2mm、空気 1mm の
33層。HCALには吸収層に鉄 20mm、検出層にシンチレータ 5mm、空気 1mmの 46層
になっている。また ECAL、HCALの検出層は 10mm× 10mmのタイル状になってい
る。
425cm
280cm
370cm
210cm
40cm
図 2 CLX概観
青色の部分が ECAL、赤色の部分が HCALになっている。
2.2.2 CAL
今回は使用しなかった CALの構造を以下に説明する。ECALは吸収層に鉛 4mm、検
出層にシンチレータ 1mm の 44 層。検出層は 40mm × 40mm のタイルが 3 × 3 枚に
なっている。HCALは吸収層に鉛 8mm、検出層にシンチレータ 2mmの 130 層。検出層
は 120mm× 120mmのタイル 1枚になっている。
3 電磁シャワー 4
図 3 CAL概観
3 電磁シャワー
3.1 電磁シャワー
高エネルギーの光子、および電子が物質中を通過すると制動放射および電子対生成が
次々おこることでシャワーが生じる。このシャワーのことを電磁シャワーと言う。4にこ
の様子を示す。このシャワーは電子のエネルギーが臨界エネルギー Ec に達するまで続
く。Ec は一般に陽子数 Zの物質に対して次のように表される。
Ec =800
Z + 1.2[MeV ] (1)
入射電子はカロリメータ内の吸収層に入ると制動放射により光子を出し、シャワーを作っ
ていく。一方光子はまず電子対生成を起こしシャワーを作っていく。赤線は電子、黄線は
光子、青線が陽電子を表している。
また、電磁シャワーの縦方向の発達と物質とを関連づけるものとして radiation length
があり,陽子数 Z、原子量 Aを用いて
X0 =716.4A
Z(Z + 1)ln(287/√
Z)[g/cm2] (2)
と表せる。式 (1)(2)はともに信州大学の長副やよい氏 [5] の論文による。
3.2 エネルギー分解能
エネルギー分解能とは、エネルギーを測定する際の精度を表す指標として用いられる。
あるエネルギーを持つ放射線が測定器中に全エネルギーを落としたとき原理的には線スペ
クトルになるのだが、実際は測定器の性質等によりある幅を持ったスペクトルになってし
3 電磁シャワー 5
図 4 電磁シャワー
���������
�����
���
�
� ���
����
����
��� ����������� ��� !"$#&%('�!�)�"+*
まう。この幅が小さい程より多くのスペクトルを見分けることが可能になる。幅が大きい
と (分解能が悪いと)それぞれのピークが他の山に隠れてしまい見分けがつかなくなる。
通常、幅 ∆E にはガウス分布でフィットした際の σ が使われるが、それを Emean で
わった σ/Emean が使われることもある。本研究ではエネルギー分解能に後者を使って
いる。
3.3 Moliere radius
エナジーデポジット (入射粒子が検出器中に落とすエネルギー)の 90%を拾う半径 RM
の円柱を考える時、RM をMoriere radiusと言う。(図 5)
Rm
図 5 moliere radius のイメージ
3 電磁シャワー 6
東北大学の藤川智暁氏の修士論文 [3]によればMoliere radiusは wj の重量比をもつ混合
物質中では次の式で表すことができる。
1RM
=1
Es
n∑
j=1
wjEcj
X0j(3)
それぞれ Ecj は各臨界エネルギー、X0j は radiation length、Es は Es =√
4π/α mec2
でおおよそ 21MeV。また 3.5RM で 99 %のエネルギーが収まる。Moliere radius は式
(3)からもわかる通り入射エネルギーによらない。
4 結果 7
4 結果
本研究では Jupiterに実装されている CLXを使用して実験をおこなった。x、y、z方
向は図 4のようになっている。各シミュレーションでは入射粒子、入射エネルギーを変え
ているが入射方向はどれも y方向に統一している。
y�
x�z
�
y�
x�
図 6 検出器中の座標軸
4 結果 8
4.1 線形性
まず、電子を 500個入射させ、その検出層でのエナジーデポジットの和を測定した。入
射電子のエネルギーは 1GeV,5GeVである。
Entries
図 7 入射エネルギーが 1GeV の
電子を入射したときのエナジーデ
ポジットの分布
Entries
図 8 入射エネルギーが 5GeV の
電子を入射したときのエナジーデ
ポジットの分布
図 7,図 8から入射エネルギーが大きくなるとエナジーデポジットも大きくなっていく事
がわかる。(ヒストグラムをシミュレーション結果から作り、それをガウスフィットした
ものが実線で書かれている)
次に入射エネルギーを 1.11GeV,1.33GeV,2GeV,3GeV,4GeV,7GeV,10GeV でも同様に
おこない、入射エネルギーとガウスフィットして得られたエナジーデポジットの平均値と
の間の関係性を調べた。図 9のエラーバーはエナジーデポジットをガウスフィットした際
の σ である。
図 9よりこのカロリメータには線形性があると言える。また、y = ax + bでフィッティ
ングしたところこの直線の aが 42.0±0.2 [MeV/GeV ] であり、bが-2.6±0.8であること
がわかった。そのためこの直線を使ってエナジーデポジットから入射エネルギーを推測す
る事ができる。
4.2 エネルギー分解能
次に 10に 1/√
EMean を横軸に、σ/E を縦軸にグラフを作成し、エネルギー分解能を
計算した。エラーバーは EMean と σ のエラーから誤差の伝搬式を使って求めたものを
使用している。この図 10 を見ると低エネルギーでは直線から離れているが、高エネル
ギーになるほど直線に近くなっている。これは高エネルギーになるほど分解能が安定して
4 結果 9
�����������[GeV]
��� �������� ���[MeV]
図 9 入射エネルギーとエナジーデポジットの関係
1/�
E [GeV]
sigma/E
図 10 エネルギー分解能
いくことを意味している。また、y = ax + bでフィッティングすると aが 0.195±0.010、
bが-0.017±0.007となった。このことから CLX のエネルギー分解能は 19.5%/√
E 程度
であることがわかった。
4 結果 10
4.3 Moliere radius
次に光子を 50個入射させ、そのMoliere radiusを測定した。計算方法は、次の通り。
各 hit 毎に y 軸からの距離を計算し、距離が小さい順にエネルギーをたしあげて行き、
1eventのエネルギーの 90%に達したら、たしあげをやめる。そして、その時点での距離
をMoliereradius とした。
次に理論値を求める。まずは式 (3) から CLX 中での Moliere radius をもとめる。光子
は ECAL内でシャワーを完全に発達させるので、ECALのみで考える。タングステンの
XO = 6.76mm,EC = 8.11MeV、シンチの XO = 26mm,EC = 31.4MeV、空気はタン
グステン、シンチに比べ圧倒的に重量が小さいため無視する。このように考えて計算する
とMoliere radius は 17.6mmとなった。
一方、シミュレーション結果は
Energy 1GeV 10GeV 100GeVMoliereradius 32.0mm 35.2mm 35.6mm
σ 5.9mm 7.4mm 5.2mm
となった。3つの結果は平均 34mm近辺で一定である。しかし、理論値とシミュレーショ
ンの値には約 1.9倍のずれがある。このずれの原因としては図 11、図 12にあるように、
粒子を y 方向に飛ばしてもシャワーは y 軸を中心に広がらずにいくらかのずれが生じて
しまう。今回は y軸からの距離を使っているためこの影響が出ているものと考えられる。
y����������
[mm]
Events
図 11 シャワーの y軸からの距離
Z[mm]
X[mm]
図 12 1eventでの x-z平面の hitの様子
5 まとめ 11
5 まとめ
今回のシミュレーションの結果は以下のようになった。
• CLXにおける入射エネルギーとエナジーデポジットの間に線形性があることがわ
かった。
• CLXのエネルギー分解能は 19.5%程度であることがわかった。
• Moliere radius はシミュレーション結果はほぼ一定になったが理論値とのずれが
1.9倍ほどある。
この結果から課題として
• Moliere radiusを各 event毎に中心値を求めて計算する。
• CLXの性能をより詳しく調べる。
等をおこなっていく必要がある。
6 謝辞 12
6 謝辞
本研究を進めるにあたり、多くの方の御指導、御協力をいただきました。この場をお借
りして深く感謝します。
まず第一に竹下徹先生、長谷川庸司先生には基礎知識、研究の指導、助言など数多くいた
だきました。魚住聖氏には毎週のミーティングで多くの助言をいただきました。また河
上陽介氏、里山典彦氏には Jupiterやプログラミングなどで数多くの助言をいただきまし
た。
ここに再度みなさまに心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
参考文献 13
参考文献
[1] http://ilcphys.kek.jp/gld/
[2] http://www.hep.sc.niigata-u.ac.jp/
[3] 藤川智暁 「修士論文 リニアコライダーに於けるクオークエネルギー再構成の研究」
(2005)
[4] 川上陽介 「平成 18年度修士学位論文 PFAに最適化した中性ハドロンの同定の研究」
(2006)
[5] 長副やよい 「Geant4によるカロリメータシミュレーション」(2004)