Jpn. J. Ornithol. 59(2): 148-160 (2010)

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はじめに イヌワシ Aquila chrysaetos は,北米,ユーラシ ア大陸,北アフリカなど,北半球の開けた環境に 分布する大型の猛禽類である (Thiolly 1994).本種 6 亜種からなり,日本にはそのうち最も小型の 亜種 Aquila chrysaetos japonica(以下,ニホンイヌ ワシとする)が,北海道,本州,四国,および九 州の低山帯から高山帯にかけて分布している(森 岡ら 1995).現在,ニホンイヌワシの生息数は幼 鳥と若鳥を加えると総数 650 羽程度と推定されて いるが(日本鳥類保護連盟 2004),その希少性は 日本鳥学会誌 59(2): 148–160 ―原 著 論 文 ― * E-mail: [email protected] doi:10.3838/jjo.59.148 JOI: JST.JSTAGE/jjo/59.148 落葉樹の展葉に伴うイヌワシ Aquila chrysaetos の給餌様式の 変化 布野隆之 1, * ・関島恒夫 1 ・阿部 學 2 1 新潟大学大学院自然科学研究科 〒 950–2181 新潟県新潟市西区五十嵐 2 の町 8050 2 日本猛禽類研究機構 〒 102–0083 東京都千代田区麹町 4–5 7 麹町ビル 45 号室 2009 5 18 日受付; 2010 4 29 日受理) キーワード:イヌワシ,希少猛禽類,給餌生態,森林空間構造,落葉広葉樹林. Takayuki Funo 1, * , Tsuneo Sekijima 1 , Manabu Abe 2 . 2010. Changes in feeding pattern of Golden Eagle Aquila chrysaetos with leafing of deciduous trees. Jpn. J. Ornithol. 59: 148– 160. Abstract. Golden Eagles Aquila chrysaetos typically inhabit environments with few trees, such as steppes or mountainous areas above the tree line. The Japanese Golden Eagle Aquila chrysaetos japonica, is an exception to this rule as it occurs in montane deciduous broadleaf forest. Seasonal changes in the spatial structure of deciduous broad- leaved trees may exert a considerable influence on the prey selection of the Japanese Golden Eagle, which may in turn influence its breeding success. In order to evaluate the effects of leafing on changes in feeding patterns and nestling growth of the Japanese Golden Eagle, we assessed the proportion of prey items taken, the delivery frequency and delivery amount to the nest by means of a video recording system. During spring and summer, Japanese Golden Eagles feed principally on Japanese Hares Lepus brachyurus and various species of snakes (Rhabdophis and Elaphe spp.); the total proportion of both prey items attained 98.3 percent (in frequency). Before leafing was terminated hares were delivered more frequently to the nest than snakes, but after leafing, more snakes than hares were delivered. The total amount of food tended to fall rapidly as this switch was made from hares to snakes. In nests where this change in feeding was noted, the total body length of chicks was smaller than in the nests of pairs that did not switch prey during the nestling period. When Japanese Golden Eagles change to specialized feeding on snakes as the leafing period advances, it seems that the reduction in food quantity affects the growth of their chicks. Key words: Golden Eagle, Endangered raptor, Feeding ecology, Forest spatial structure, Deciduous broad-leaf forest. 1 Graduate School of Science and Technology, Niigata University, Ikarashi 2-no-cho 8050, Nishi-ku, Niigata 950–2181, Japan 2 Raptor Japan, Koujimachi 4–5, Chiyoda-ku, Tokyo 102–0083, Japan Japanese Journal of Ornithology © The Ornithological Society of Japan 2010 日本鳥学会誌

Transcript of Jpn. J. Ornithol. 59(2): 148-160 (2010)

は じ め に

イヌワシ Aquila chrysaetosは,北米,ユーラシア大陸,北アフリカなど,北半球の開けた環境に

分布する大型の猛禽類である (Thiolly 1994).本種は 6亜種からなり,日本にはそのうち最も小型の亜種 Aquila chrysaetos japonica(以下,ニホンイヌワシとする)が,北海道,本州,四国,および九州の低山帯から高山帯にかけて分布している(森岡ら 1995).現在,ニホンイヌワシの生息数は幼鳥と若鳥を加えると総数 650羽程度と推定されているが(日本鳥類保護連盟 2004),その希少性は

日本鳥学会誌59(2): 148–160

―原 著 論 文 ―

* E-mail: [email protected]

doi:10.3838/jjo.59.148

JOI: JST.JSTAGE/jjo/59.148

落葉樹の展葉に伴うイヌワシAquila chrysaetos の給餌様式の変化

布野隆之 1,*・関島恒夫 1・阿部 學 2

1 新潟大学大学院自然科学研究科 〒 950–2181 新潟県新潟市西区五十嵐 2の町 80502 日本猛禽類研究機構 〒 102–0083 東京都千代田区麹町 4–5 第 7麹町ビル 45号室

(2009年 5月 18日受付; 2010年 4月 29日受理)

キーワード:イヌワシ,希少猛禽類,給餌生態,森林空間構造,落葉広葉樹林.

Takayuki Funo1,*, Tsuneo Sekijima1, Manabu Abe2. 2010. Changes in feeding pattern ofGolden Eagle Aquila chrysaetos with leafing of deciduous trees. Jpn. J. Ornithol. 59: 148–160.

Abstract. Golden Eagles Aquila chrysaetos typically inhabit environments with fewtrees, such as steppes or mountainous areas above the tree line. The Japanese GoldenEagle Aquila chrysaetos japonica, is an exception to this rule as it occurs in montane deciduous broadleaf forest. Seasonal changes in the spatial structure of deciduous broad-leaved trees may exert a considerable influence on the prey selection of the JapaneseGolden Eagle, which may in turn influence its breeding success. In order to evaluate theeffects of leafing on changes in feeding patterns and nestling growth of the JapaneseGolden Eagle, we assessed the proportion of prey items taken, the delivery frequency anddelivery amount to the nest by means of a video recording system. During spring andsummer, Japanese Golden Eagles feed principally on Japanese Hares Lepus brachyurusand various species of snakes (Rhabdophis and Elaphe spp.); the total proportion of bothprey items attained 98.3 percent (in frequency). Before leafing was terminated hares weredelivered more frequently to the nest than snakes, but after leafing, more snakes than hareswere delivered. The total amount of food tended to fall rapidly as this switch was madefrom hares to snakes. In nests where this change in feeding was noted, the total bodylength of chicks was smaller than in the nests of pairs that did not switch prey during thenestling period. When Japanese Golden Eagles change to specialized feeding on snakes asthe leafing period advances, it seems that the reduction in food quantity affects the growthof their chicks.

Key words: Golden Eagle, Endangered raptor, Feeding ecology, Forest spatial structure,Deciduous broad-leaf forest.

1 Graduate School of Science and Technology, Niigata University, Ikarashi 2-no-cho8050, Nishi-ku, Niigata 950–2181, Japan2 Raptor Japan, Koujimachi 4–5, Chiyoda-ku, Tokyo 102–0083, Japan

Japanese Journal of Ornithology

© The Ornithological Society of Japan 2010

日本鳥学会誌

1960年代から憂慮されており,1965年には文化庁により国の天然記念物に指定された.さらに,1980年代に入り,ニホンイヌワシの生息数や繁殖成績の現状を把握するために,日本イヌワシ研究会が国内の生息分布や繁殖成功率に関する生態調査を全国的に実施し,本亜種のおかれた危機的状況が明らかにされた.日本イヌワシ研究会 (1986)

によれば,1981年�1985年の 5年間におけるつがいあたり平均巣立ちヒナ数は 0.47羽であり,この値は,北米に分布するアメリカイヌワシ A. c.

canadensisの 1.5羽 (Ritchie & Curatolo 1982),地中海周辺地域に分布するスペインイヌワシ A. c.

homeryiの 0.75羽 (Fernández 1987),ヨーロッパ中央部からシベリアにかけて分布するヨーロッパイヌワシ A. c. chrysaetosの 1.1羽 (Ivanovsky 1990) に比べて著しく低い.さらに,その後実施された調査により,1991年�1995年のつがいあたり平均巣立ちヒナ数が 0.27羽にまで低下していることが明らかとなり(日本イヌワシ研究会 2001),1998年に環境省によって絶滅危惧種 IB類に区分された.上述したように,ニホンイヌワシの繁殖成功率は他の亜種に比べて著しく低いため,本亜種の繁殖成否に関わる要因を明らかにすることは,ニホンイヌワシ個体群の持続的な保全指針を築く上で不可欠な情報といえる.一般に,イヌワシの繁殖成績は餌や気象条件

(Steenhof et al.1997) に加え,生息地内の森林環境特性に強く影響を受けることが知られている.例えば,スコットランドに分布するヨーロッパイヌワシの場合,1970年代に始まった大規模植林により同地域に生息する 4つがいのうち 3つがいにおいて繁殖成功率が低下したこと (Marquiss

et al.1985) や,行動圏内において林齢 10年以上の人工林の面積が広いつがいほど巣立ちヒナ数が少なくなること (Watson 1992) が報告されている.また,北米のアパラチア地方では,森林を広域に皆伐したことでアメリカイヌワシが定着したものの,その後の樹木成長に伴う森林の回復により,現在ではイヌワシが殆ど生息しなくなった事例も報告されており (Watson 1997),生息地内における森林面積の変化がイヌワシの生息数あるいは定着性に多大な影響を及ぼすことが明らかとなっている.このように,開けた環境を選好するイヌワシにとって,餌動物の探索の障害となる森林の存在は,繁殖成功や生息密度の制約要因になっていることが伺える.日本におけるニホンイヌワシの生息環境は主に

山地帯であり,他のイヌワシ亜種の生息環境と異なり,その行動圏内は森林に広く覆われている(e.g. 上馬ら 1989,秋田県生活環境部 1993).特に,主要なイヌワシ繁殖地域として知られる北陸地方は,世界的にも有数の多雪地域であり,大規模な針葉樹植林を免れたブナを主体とした落葉広葉樹に広く覆われているのが特徴である.上述した海外の事例から考えると,そのような森林地帯はイヌワシの生息に不適と推察されるが,生息地内における落葉広葉樹林の占有がニホンイヌワシの繁殖成功率にもたらす影響は具体的には明らかにされていない.落葉広葉樹林の大きな特徴として,初春に生じる展葉および晩秋の落葉によって季節的に樹冠閉鎖率が著しく変化することがあげられる(丸山 1979,川村ら 2001による例).樹冠閉鎖率の季節的変化は,樹冠内部の視界の変化と密接に関連するため,上空から地上の餌動物を探索するイヌワシにとって,採餌条件が季節的に大きく変化することにつながると考えられる.その場合,展葉や落葉の前後において,イヌワシの利用する餌種やその利用頻度が大きく変化する可能性が高い.さらに,イヌワシの育雛期間は,ヒナが孵化する 2�3月から,ヒナが巣立つ 5�7月まで続くため(環境庁自然保護局野生生物課 1996),上述した落葉広葉樹林のフェノロジーのうち,4�5月に生じる展葉はヒナの成長期間中に起きることになる.このため,展葉に伴う樹冠閉鎖率の変化を通して本種の餌利用パターンが変化した場合,その変化はヒナへの給餌量を介して,ヒナの成長や生存に影響を及ぼす可能性がある.そこで本研究は,落葉広葉樹の展葉前後における給餌動物種の変化とその変化が搬入量にもたらす影響を調べ,これらの結果から,ヒナの成長への影響について考察した.

方   法

1) 調査地の概要

調査地は,新潟県と福島県の県境付近 (37°N,139°E) に位置する標高 1,500�2,000 mの山岳地帯に設定された.なお,調査地の詳細はニホンイヌワシの保全を鑑み,明記しないこととした.調査地一帯は樹齢 120年以上の自然林が広がり,その代表的な高木はブナ Fagus crenata,ミズナラQuercus mongolica,コナラ Q. serrata,ホオノキMagnolia obovata,ダケカンバ Betula ermaniiなどの落葉広葉樹であり,林床にはリョウブ Clethra

149イヌワシの給餌生態

barbinervis,ムシカリ Viburnum furcatum,クロモジ Lindera umbellataなどの落葉性低木が繁茂していた.落葉広葉樹以外の植生は極めて少なく,尾根沿いにクロベ Thuja standishiiおよびゴヨウマツPinus parvifloraなどの常緑針葉樹が局在していた.調査地一帯は,本研究を行うための予備調査により,5つがいのニホンイヌワシが繁殖していることが判明している.発見されたイヌワシ営巣地の多くは,地形特性上,本種の繁殖活動を観察するための記録カメラの設置が困難であったが,そのうち OkudaiとMaruyamaと名付けた 2つがいに関しては,カメラによる繁殖活動の観察が可能であったことから,これらを調査対象とした.各つがいの行動圏データ(電源開発株式会社 1996)を基に,行動圏内の環境構成比を航空写真より算出したところ,Maruyama は,落葉広葉樹林が95.3%,常緑針葉樹林が 1.6%,ササやススキなどの草地環境が 0.7%,その他の環境として河川や造成地が 2.4%であり,Okudaiは,落葉広葉樹林が87.9%,常緑針葉樹林が 3.8%,ササやススキなどの草地環境が 3.6%,その他の環境が 4.7%であった.両つがいの行動圏とも,落葉広葉樹林の占有率が高いのが特徴である.

2) 給餌動物の同定と重量の推定

OkudaiおよびMaruyama の営巣地となっていた峡谷の崖の対岸にカメラを設置し,育雛期間中に巣内に搬入された給餌動物を撮影した.カメラの設置地点は営巣地から 150 m以上離れており,また,カメラの設置は調査つがいの繁殖活動に与える影響を最小にするため,非繁殖期の 10 月に行った.巣内の撮影は,Okudai が 1997 年 10

月�2003 年 2 月に,Maruyama は 1995 年 10

月�2004年 7月に行われた.調査期間中,撮影は終日行い,育雛期間中に巣内に搬入されたほぼ全ての給餌動物を記録した.撮影が開始された後,Okudaiでは 1998年と 2003年の 2回,Maruyama

では 2000年,2002年,および 2004年の 3回にわ

たりヒナが 1羽ずつ巣立ち,それ以外の年は,抱卵中や孵化直後に失敗するか,あるいは造巣活動が殆ど見られず繁殖活動自体が行われなかった.本研究では,落葉広葉樹の展葉に伴う給餌動物種と搬入量の変化を調べるために,Okudai とMaruyamaの繁殖記録のうち,ヒナが巣立った 5

例の繁殖記録(合計 5,362時間)について,給餌された動物種の同定とそれらの重量について推定した.以後,繁殖年とつがい名を併記することで,1998年と 2003年に繁殖成功した Okudaiをそれぞれ 98Okudaiおよび 03Okudaiとし,2000年,2002

年,および 2004年に繁殖成功したMaruyamaを,それぞれ 00Maruyama,02Maruyama,および04Maruyamaとした.各調査年の撮影終了後,記録映像をビデオデッキで再生し,給餌動物の映っている映像を選定した後,ビデオキャプチャボードを介してパーソナルコンピューターに取り込んだ.その後,画像編集ソフト (Photoshop 6.0, Adobe) を用いて餌画像の拡大や明るさ補正などを適時施し,給餌動物の同定と餌サイズの長径および短径を計測した.餌サイズは,映像に映し出された特定の岩を基準とし,この岩の長径との比率によって推定した.ここで,基準として用いた岩の長径の計測は,繁殖活動に対する影響を最小限にとどめるために,イヌワシの非繁殖期にあたる 2004年の 10月に実施した.映像解析により同定された給餌動物は,ノウサギ Lepus brachyurus,テンMartes melampus,ヤマドリ Phasianus soemmerringii,ハシボソガラスCorvus corone,およびヘビ類であった.各給餌動物の重量は,以下の手順により推定した.はじめに,ノウサギの重量を推定するために,調査地周辺でノウサギを 13頭(雄 4頭,雌 9頭)捕獲し,全長,胴長,体高,および重量を測定した(表 1).次に,ノウサギの骨,体毛,腸,および胃はイヌワシに摂食されないという報告があることから (Brown & Watson 1964),これらの非食部の割合を算出するため,13頭のノウサギのうち 4

150 布野隆之・関島恒夫・阿部 學

表 1.調査地周辺で捕獲されたノウサギの形態特性.Table 1. Body characteristics of Japanese Hares captured near the study site.

性別標本数

平均全長 (cm) 平均胴長 (cm) 平均体高 (cm) 平均重量 (g) Sex

Sample Mean total length(cm)�SE Mean body length(cm)�SE Mean withers height(cm)�SE Mean body mass(g)�SE

size

雄Male 4 48.1�2.3 37.6�2.3 12.6�0.5 2320.3�134.3 雌 Female 9 49.9�1.5 38.9�1.5 14.8�0.5 2649.2�40.2 全体 Total 13 49.3�1.2 38.5�1.2 14.1�0.4 2521.1�62.7

頭を解体した(表 2).これらの計測値に基づき,ノウサギがイヌワシ営巣地に全身のまま搬入された場合は,ノウサギの平均重量(表 1)に全身の可食部割合(表 2)を乗じた値をノウサギ可食部重量とし,それ以外を非食部とした.また,解体された状態で搬入された場合は,以下の推定式によりノウサギの可食部重量を算出した.

W�60.3�h�162.5�fl�35.0�h�470.4�(l/L) (1)

ここで,Wは搬入されたノウサギの可食部重量(g),各係数は部位別の可食部重量 (g)(表 2),h

は頭部の有無(有 �1,無 �0),flは前足の本数(係数 162.5は前足 2本分の可食部重量であるため,前足が 2 本の場合は f l =1, 1 本の場合はfl =0.5,0本の場合は fl =0とする),hlは後足の本数(代入する値は前足本数と同様の方法に準拠する),Lはノウサギの平均胴長 (cm)(表 1),lは営巣地に搬入されたノウサギの胴長 (cm) をそれぞれ示す.なお,ノウサギの捕獲は,ノウサギ有害鳥獣駆除を兼ね,2005年 3月に調査地域周辺において行われた.次に,ヘビ類の重量を全長との相対成長式から推定するため,2000年から 2004年の 5月から 7

月に調査対象つがいの行動圏内でヘビ類の捕獲を行った.捕獲されたヘビ類は合計 50個体であり,その内訳は,ヤマカガシ Rhabdophis tigrinus21個体,シマヘビ Elaphe quadrivirgata13個体,アオダイショウ E. climacophora10個体,およびジムグリE. conspicillata6個体であった.映像解析において,ヘビ類の種名を特定することができなかったため,ヘビ類の重量は上述した 4種類 50個体の全長と重量の近似式(図 1)に基づき,以下の式

により重量を推定した.W�0.0006�x2.6773 (2)

ここで,Wは搬入されたヘビ類の重量 (g), xは搬入されたヘビ類の全長 (cm) を表す.ヘビ類については,得られた記録映像において,ヒナが丸飲みしている様子が観察されたことから,すべての部位を可食部とした.テン,ヤマドリ,およびハシボソガラスについては調査地内での捕獲が困難であったため,ノウサギと同様の方法では重量を算出することができなかった.そこで,既往の報告に基づく重量を餌重量として代用することとした.文献情報による重量を餌重量として代用することは,イヌワシが摂食しない非食部の重量分を,餌重量として評価する点で問題が残るものの,これらの給餌動物の搬入頻度がいずれも非常に少なかったことから,給餌動物の搬入量の評価に大きく影響しないと仮定した.各給餌動物の重量は,報告されている値のレンジの中央値で代表させ,テンが 1頭あたり1,350 g(織田・鑪 1996),ヤマドリが 1羽あたり1,048 g(中村ら 1997a),ハシボソガラスが 1羽あたり 503 g(中村ら 1997b)とした.上述した給餌動物に加え,種名が判別できなかった餌は,総搬入頻度の 30.5%であった(表3).種名が判別できなかった原因は,イヌワシによって解体され,いずれも楕円状の肉塊となって巣に搬入されたことに帰因した.しかし,いずれの肉塊も哺乳類様の表皮が付着していたこと,さらに,肉塊の平均サイズが約 20 cm程度であったことから,中型以上の哺乳類と推察できた.映像解析を行った全 407事例の餌画像中,大型哺乳類

151イヌワシの給餌生態

表 2.調査地周辺で捕獲されたノウサギにおける各部位の可食部と非食部の平均重量およびその割合.値は,雄 2頭および雌 2頭の検体より算出した.Table 2. Mean weight and proportion considered available, or not available, as food for each body part of JapaneseHare captured near the study site. Values were calculated from two males and two females.

頭部 前足 後足 胴体 全身Head Foreleg Hindleg Body Whole body

可食部 非食部 可食部 非食部 可食部 非食部 可食部 非食部 可食部 非食部Available Not Available Not Available Not Available Not Available Not

available available available available available

平均重量(g)Mean weight (g) 60.3 166.1 162.5 116.5 352.0 196.0 470.4 990.1 1045.5 1468.7

(SE) (4.4) (6.2) (10.5) (12.5) (20.8) (12.0) (52.6) (52.8) (65.9) (46.1)

平均割合(%) 26.6 73.4 58.5 41.5 64.2 35.8 32.0 68.0 41.4 58.6Mean proportion (%) (1.4) (1.4) (1.2) (1.2) (1.5) (1.5) (2.5) (2.5) (21.2) (1.2)

(SE)

と判別された画像は 1事例もないことに加え,判別された中型哺乳類のうち 99.1%がノウサギであったことから,観察された肉塊はイヌワシによって解体されたノウサギと仮定した.上述したノウサギ肉塊の重量推定には,部位ごとの可食部重量に基づく式 (1) を適用することができないことから,以下の式により算出した.

(3)

ここで,Wは搬入された楕円状のノウサギ肉塊の可食部重量 (g),1043.7はノウサギの平均重量(g)(表 1)に全身の可食部割合 (%)(表 2)を乗じた値,695.1はノウサギの平均全長 (cm)(表 1)に平均体高 (cm)(表 1)を乗じた値,maaは肉塊の長径 (cm),miaは肉塊の短径 (cm) を表す.給餌動物ごとの搬入頻度および重量を 1日単位

で集計した後,移動平均を用いて育雛期間における餌の搬入頻度の推移を解析した.移動平均を用いるにあたり,本研究で使用した 5例の繁殖記録において,営巣地への給餌動物の搬入間隔は最長で 5日であり,移動平均を 11日間より短くした場合,餌を全く搬入しない日が連続的に生じることで移動平均の推移が読み取りにくくなる傾向があった.このため,移動平均の算出は 11日間で行った.その後,展葉前後における給餌動物種の変化を明らかにするために,後述する手順で展葉完了日を求めた後,主要な給餌動物種であったノウサギとヘビ類について,展葉前と展葉後における構成比の差異を Fisherの正確確率検定で検定した.また,展葉前後における給餌動物種の変化が

巣内への餌の搬入量にもたらす影響を評価するために,結果で述べる給餌動物の切り替わり前と切り替わり後において給餌動物ごとに 1日あたり重量を算出し,切り替わり前後で 1日あたり重量が変化するかどうかを Aspin–Welchの不等分散 t-検定を用いて調べた.

3) ヒナの巣立ち日齢および巣立ち時の全長

本研究では,ヒナが営巣棚から飛び去った日を巣立ち日齢とした.巣立ち日齢に達したヒナの全長を計測するために,巣立ち時のヒナの全身が映っている映像をパーソナルコンピューターに取り込んだ後,餌サイズの計測と同様の手順でその全長を計測した.また,30日齢以前の映像では産座から出現したヒナを確認することが殆どできなかったため,30日齢以前のヒナ数は不明であったが,30日齢以後では,すべての繁殖記録においてヒナは 1羽であった.

4) 落葉広葉樹林の展葉率

イヌワシ行動圏内における落葉広葉樹の展葉の推移を評価するために,各つがいの行動圏内の景観写真を撮影した.撮影にはデジタルカメラ(COOLPIX990,Nikon) を用い,各つがいの行動圏の最外郭に定めた 4ヶ所の撮影地点から営巣地方向に向かいパノラマ状に撮影した.パノラマ写真の両端には,尾根上の樹木や崖などの特定の目標物を写し込み,これらの目標物によって撮影範囲を常に一定に保った.撮影はイヌワシの繁殖記録と対応させるため,イヌワシが繁殖に成功した2000 年,2002 年,2003 年,および 2004 年の

Wmaa mia

� ��

1043 7695 1

..

⎝⎜⎞

⎠⎟

152 布野隆之・関島恒夫・阿部 學

図 1.ヘビ類の全長と重量の関係.曲線は全長と重量の累積近似を示す.Fig. 1. Relationship between total length and body mass in snakes. The curve describes power approximation between totallength and body mass.

153イヌワシの給餌生態

表3.育雛期間中に巣内に搬入された餌動物の頻度.

Tabl

e3.

Freq

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繁殖記録

搬入頻度

搬入率

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搬入頻度

搬入率

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(%) 搬入頻度

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0.0

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i 14

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27.5

合計搬入頻度

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l fre

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f 11

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166

124

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iver

ed

総搬入率

(%)

Tota

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.0

0.2

1.2

0.2

40.8

30

.5

each

pre

y de

liver

ed

3�6月に行い,この期間中に 5日間隔で撮影を実施した.撮影終了後,写真をパーソナルコンピューターに取り込み,画像編集ソフト (Photoshop 6.0,

Adobe) を用いて写真内の展葉率を算出した.パノラマ写真において,展葉していない落葉広葉樹の樹冠は茶色として,展葉した樹冠は緑色として写るため,写真内の緑色のピクセル数をカウントし,その値を展葉の指標とした.その後,以下の式によってイヌワシ行動圏内の平均展葉率が 95%以上になった日付を求め,その日付を落葉広葉樹の展葉完了日と定義した(図 2).

(4)

ここで,Sijはつがい iの撮影日 jにおける平均展葉率,aijはつがい iの撮影日 jにおける撮影地点 aの緑色のピクセル数,Aiはつがい iの撮影地点 aの展葉完了日における緑色のピクセル数を表す.以下,bijから dijおよび Biから Diは上述の表記にしたがう.なお,1998年の Okudaiについては,上述した写真撮影ができなかったため,同年については,代替手段として積算温度により落葉広葉樹の展葉が完了した日を推定した.ここで,中田・中山

(1995) がブナの葉の開芽日と温度条件との対応関係を 1月 1日以降の 5℃以上の積算温度によって検討していたことから,落葉広葉樹の展葉完了日の推定に用いる発育限界温度を 5°C,起算日を 1

月 1日とした.5°C以上の積算温度と写真による展葉の完了日との対応関係を明らかにするために,2003年の Okudaiにおいて,1月 1日から展葉完了日までの 5°C以上の積算温度を算出したところ,展葉完了日の積算温度は 7,236.5であった.そこで,2003年の Okudaiにおける積算値を参考に,1998年の Okudaiにおいて 1月 1日からの積算値が 7244.6に達した 5月 1日を展葉完了日とした.なお,5°C以上の積算温度を基に推定した展葉完了日と写真を基に推定した展葉完了日は,同一ペアの行動圏内で推定を試みた場合であれば,4

日以内の範囲で一致した.

結   果

1) イヌワシの給餌動物

育雛期間中にイヌワシが給餌動物として巣内に搬入した餌動物は,先述したようにノウサギ,テン,ヤマドリ,ハシボソガラス,およびヘビ類であった.これらの給餌動物のうち最も搬入頻度が高かった餌動物はヘビ類であり,育雛期間中の平

Sijaij

Ai

bij

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Ci

dij

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1

4

⎝⎜⎞

⎠⎟

154 布野隆之・関島恒夫・阿部 學

図 2.イヌワシ行動圏における落葉広葉樹林の展葉率の推移.図中の点線は展葉率 95%を示しており,展葉率 95%に達した日付を落葉広葉樹の展葉が完了した日と定義した.00M, 02M, 04M,および 03Oは,それぞれ 00Maruyama,02Maruyama, 04Maruyama,および 03Okudaiの行動圏における展葉完了日を表し,その日付を括弧内に示した.エラーバーは標準誤差を示す.Fig. 2. Variation in the percentage of deciduous-leaved forest within eagle’s home range. The dotted line indicates 95 percentof leafing, defined as leafing termination in deciduous broad-leaf forest. 00M, 02M, 04M, and 03O indicate the date of leafingtermination within the home range of 00Maruyama, 02Maruyama, 04Maruyama, 03Okudai, respectively with dates of leafingtermination shown in parentheses. All error bars indicate standard errors.

均搬入率は 40.8%であった(表 3).次に搬入頻度が高かった種は,ノウサギの 27.0%であり,両種を合計すると,その搬入頻度は 67.8%に達した.一方,テン,ヤマドリ,およびハシボソガラスの搬入頻度は極めて低く,育雛期間における平均搬入率は,それぞれ 0.2%, 1.2%, 0.2%であった.種の判別ができなかった肉塊の平均搬入率は 30.5%であった.本研究では,先述したように不明の種を解体されたノウサギと仮定すると,ヘビ類,ノウサギ,および解体されたノウサギの肉塊を合計した搬入率

は,総搬入頻度の 98.3%に達した.

2) 展葉前後における給餌動物種の変化

育雛期間中の主要な給餌動物となっていたノウサギとヘビ類について,その搬入頻度の推移と落葉広葉樹の展葉完了日を図 3 に示した. 0 0

Maruyamaでは,育雛開始直後からノウサギが搬入された.育雛開始直後におけるノウサギの搬入頻度はヘビ類に比べて高かったが,その後,ヒナが 59日齢時にノウサギとヘビ類の搬入頻度が等し

155イヌワシの給餌生態

図 3.ノウサギおよびヘビ類の搬入頻度の推移.搬入頻度の推移は 11日間の移動平均によって表されている.00Maruyama,02Maruyama,04Maruyama,および 03Okudaiにおける落葉広葉樹の展葉完了日は,それぞれの繁殖年に撮影したイヌワシ行動圏内における展葉の進行状況の写真より求めた.98 Okudaiにおける展葉完了日は,5°C以上の積算温度により推定した.括弧内の数字はヒナが巣立った日齢を表す.Fig. 3. Changes in delivery frequency of Japanese Hare and snakes to Golden Eagle nests. Delivery frequency ofeach prey is represented as a moving average over eleven days. Termination of leafing in 00Maruyama,02Maruyama, 04Maruyama and 03Okudai was determined by analysis of photographs. Termination of leafing in98 Okudai was estimated based on the cumulative temperature above 5°C. Numbers in parentheses show the age ofnestlings (in days) when they fledged.

くなり,65日齢には両種の搬入頻度が逆転した(以下,ノウサギとヘビ類の搬入頻度が等しくなり,その後,逆転する一連の現象を給餌動物の切り替わりとよぶ).給餌動物の切り替わりは,02Maruyama, 98Okudai,および 03Okudaiにおいても観察され,それぞれヒナが 50日齢,35日齢,および 40日齢に達した時に始まり,50日齢,51

日齢,および 43日齢時に完了した.00Maruyama,

02Maruyama,98Okudai,および 03Okudaiにおいて観察された給餌動物の切り替わりは,いずれも展葉完了日を境として 5日以内に開始された.展葉完了日を境として,主要な給餌動物であったノウサギとヘビ類の構成比を展葉前後において比較したところ,1%水準で有意に異なることが認められた(Fisherの正確確率検定,00Maruyama: P�

0.01, 02Maruyama: P�0.01, 98Okudai: P�0.01, 03

Okudai: P�0.01).一方,育雛期間内に展葉が完了しなかった 04Maruyamaでは,給餌動物の切り替わりは観察されず,育雛期間を通してノウサギの利用頻度が高かった.

3) 給餌動物種の変化が巣内への餌搬入量にもたらす影響

主要な給餌動物であったノウサギとヘビ類の搬入量とともに,巣内に搬入された全ての給餌動物種の重量を合計した総搬入量について,給餌動物の切り替わり前と切り替わり後における 1日あたり搬入量の変化を表 4に示した.ここで,図 3に示したノウサギとヘビ類の搬入頻度の推移において,育雛開始直後からノウサギとヘビ類の搬入頻度が等しくなるまでの期間を給餌動物の切り替わり前とし,それ以降を切り替わり後として解析した.給餌動物の切り替わりが生じた 4例の繁殖記録(00Maruyama, 02Maruyama, 98Okudai,および03Okudai)では,ノウサギの 1日あたり搬入量は,いずれも給餌動物の切り替わり前から切り替わり後に減少する傾向が認められ,その傾向は00Maruyamaを除く 02Maruyama, 98Okudai,および 03Okudai において有意であった(Aspin–Welch

の不等分散 t-検定,00Maruyama: t�0.974, df�79,

ns, 02Maruyama: t�3.121, df�58, P�0.01, 98Oku-

dai: t�2.196, df�67, P�0.05, 03Okudai: t�3.829,

df�57, P�0.01).一方,ヘビ類の 1日あたり搬入量は,ノウサギとは逆に給餌動物の切り替わり前から切り替わり後に増加する傾向があり,その傾向は 98Okudaiを除く 00Maruyama,02Maruyama,および 03Okudaiにおいて有意であった(Aspin–

156 布野隆之・関島恒夫・阿部 學

表4.給餌動物の切り替わり前と切り替わり後における

1日あたり搬入量の変化.数値は平均値

�S

E を示す.

Tabl

e4.

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(g/日

) ヘビ類搬入量

(g/日

) 総搬入量

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Tota

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y)

繁殖記録

1)

Pair

切り替わり前

切り替わり後

変化量

2)切り替わり前

切り替わり後

変化量

1)切り替わり前

切り替わり後

変化量

1)

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28.9

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Mar

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03O

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i 53

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13

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318.

2**

1)04

Mar

uyam

aは,給餌動物の切り替わりが生じなかったため各値の算出を行わなかった.

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4Mar

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2)変化量は,給餌動物の切り替わり前の平均餌搬入量から切り替わり後の平均餌搬入量を差し引くことで算出した.

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アスタリスクは

t-検定の結果を示す,

*P

�0.

05, *

*P�

0.01

t-te

st.

Welchの不等分散 t-検定,00Maruyama: t��3.116,

df�20, P�0.01, 02Maruyama: t��3.129, df�27, P�

0.01, 98Okudai: t��1.615, df�61, ns, 03Okudai:

t��3.562, df�48, P�0.01).ノウサギとヘビ類の相反する搬入量の推移により,いずれの繁殖記録においても給餌動物の総搬入量は給餌動物の切り替わり後に減少する傾向が認められ,その減少は特に 02Maruyamaと 03Okudaiにおいて著しく,それぞれ 5%水準と 1%水準で有意であった(Aspin–

Welchの不等分散 t-検定,00Maruyama: t�0.263,

df�79, ns, 02Maruyama: t�2.432, df�56, P�0.05,

98Okudai: t�1.266, df�76, ns, 03Okudai: t�3.012,

df�57, P�0.01).

4) ヒナの巣立ち日齢および巣立ち時の全長

ヒナの成長に対する給餌動物の切り替わりの影響を評価するために,5例の繁殖記録について,ヒナの巣立ち日齢および巣立ち時におけるヒナの全長を明らかにした(表 5).給餌動物の切り替わりが生じた 00Maruyama, 02Maruyama, 98Okudai,および 03Okudaiのヒナの巣立ち日齢は,給餌動物の切り替わりが生じなかった 04Maruyamaの巣立ち日齢(68日齢)に比べて,いずれも 6日から 16

日齢遅かった.また,給餌動物の切り替わりが生じた 4例の繁殖記録では,巣立ち日齢におけるヒナの全長が,給餌動物の切り替わりが観察されなかった 04Maruyamaの全長 (80 cm) に比べていずれも 6 cmから 19 cm小さかった.すべての繁殖記録において,ヒナはいずれも巣立ちに成功したものの,巣立ち日齢が最も遅く,巣立ち時の体長も最も小さかった 98Okudaiのヒナは,巣立ち直後に死亡が確認された.

考   察

育雛期間におけるニホンイヌワシの給餌動物は,哺乳類,鳥類,および爬虫類からなる 22種が確認されており,そのうち,ノウサギ,ヤマドリ,およびヘビ類の利用頻度が特に高いことから,これら 3種類が本亜種の主要な餌動物と考えられている(日本イヌワシ研究会 1984).上記の餌動物の中で,ニホンイヌワシによるヘビ類の利用割合は,記録された全 1026例の 26.5%であり(日本イヌワシ研究会 1984),この値は,北米に生息するアメリカイヌワシの 0.4% (McGahan 1968),スペインに生息するスペインイヌワシの 2 . 9 %

(Fernández 1987),フィンランドに生息するヨーロッパイヌワシの 0.2% (Sulkava et al. 1984) に比べて著しく高い.さらに,Steenhof & Kochert (1988)

が明らかにしたアメリカイヌワシの餌選好性では,ヘビ類が忌避される傾向にあることから,本研究で確認されたヘビ類の頻繁な利用は本亜種特異的な行動といえる.また,本研究において,ニホンイヌワシの餌利用と落葉広葉樹のフェノロジーとの関連を調べたところ,上述した特異的な餌利用は,展葉の完了を境に主要な餌がノウサギからヘビ類に切り替わることで生じること(図 3),さらに,ヘビ類への切り替わり以降,巣内への餌の総搬入量が減少する傾向が認められた(表 4).本研究で確認されたニホンイヌワシの給餌生態に関する第一の特徴は,落葉広葉樹の展葉完了を境に給餌動物がノウサギからヘビ類に切り替わることであった.一般に落葉広葉樹林では,展葉の前後において樹冠開空率が大きく変化することが知られており,本調査地では,展葉前の開空率64.8% から,展葉後 4.1% まで低下した(布野2001).これは,展葉後の落葉広葉樹林が著しく

157イヌワシの給餌生態

表 5.ヒナの巣立ち日齢および巣立ち時におけるヒナの全長.Table 5. Age in days, and total length of Golden Eagle nestlings, when fledged.

巣立ち日齢巣立ち日齢における

繁殖記録 給餌動物の切り替わり1) ヒナの全長 (cm)Pair Switching of prey

Age in days at Total length of

fledgingnestling at fledging (cm)

00 Maruyama Switched 80 74 02 Maruyama Switched 77 70 04 Maruyama Not Switched 68 80 98 Okudai Switched 84 61 03 Okudai Switched 74 64

1)給餌動物の切り替わりとは,給餌動物がノウサギからヘビ類へと切り替わる現象を指す.Switching of prey indicates the phase that prey switched from hare to snake.

うっ閉した森林となっていることを意味しており,上空から地上の餌動物を探索するニホンイヌワシにとって,地上への視界が妨げられることにつながる.さらに,ニホンイヌワシの翼開長が約 2 m

に達することを考慮すると,たとえ地上の餌動物を発見したとしても,本亜種が餌動物を捕獲するために,うっ閉した樹冠下に入ることは物理的に困難と考えられる.そのため,倒木による林内のギャップ,崩壊地,林道,伐採地といった開放的環境を選択的に利用する動物種が,ニホンイヌワシにとって利用可能な給餌対象動物となる可能性が高い.本調査地において,展葉完了後の 7�9月におけるノウサギとヘビ類が選好する環境特性を調べた先行研究では,ノウサギは樹木の密集した閉鎖環境を,ヘビ類は林内ギャップや草地などの開放的環境を選好することが明らかとなっている(布野ら 2005).このことから,落葉広葉樹の展葉以降,閉鎖環境を選好するノウサギはニホンイヌワシにより利用されることは困難であり,開放的な環境を選好するヘビ類は餌として利用される可能性が高くなると推察された.ヘビ類が開放的環境を好む理由としては,餌の摂食後に消化効率を高めるために体温を上昇させることに加え,この体温調整が林内に比べて林縁などの開放的な環境においてより効果的であることなどがあげられている (Blouin-Demers & Weatherhead 2001).また,本調査地では,直射日光のあたる樹冠上において,ヤマカガシ Rhabdophis tigrinusやジムグリ Elaphe

conspicillataがしばしば確認されており(布野隆之未発表),近隣のつがいでは,樹冠上で活動するヘビ類をニホンイヌワシが給餌動物として捕獲する行動も観察されている(中野 晋 私信).このように,展葉の完了に伴いニホンイヌワシによって採餌可能な開放的環境が減少する状況下で,樹冠環境が餌動物であるヘビ類を提供する重要な採餌場所となったことも,給餌動物の切り替わりに寄与している可能性が高い.一方,Steenhof &

Kochert (1988) は,北米に生息するアメリカイヌワシにおいて,オグロジャックウサギ Lepus californi-

cusの生息密度が減少したときに限り,ジリスや鳥類など他の餌を選択することを明らかにしている.したがって,本研究で観察されたノウサギからヘビ類への給餌動物の切り替わりが生じた原因として,生息地域内におけるノウサギの季節的な生息密度の低下もあげられる.しかしながら,00Maruyama, 02Maruyama,および 03Okudaiの育雛期間において,各つがいの行動圏内におけるノ

ウサギの生息密度の推移を調べたところ,03Oku-

daiについては育雛期中期以降にノウサギの生息密度が低下する傾向が認められたものの,00Maru-

yamaおよび 02Maruyamaでは逆に増加したことから(布野隆之 未発表),ノウサギの生息密度が給餌動物の切り替わりの原因となる可能性は低いと推察された.本研究で観察されたニホンイヌワシの給餌生態に関するもう一つの特徴は,ノウサギからヘビ類への切り替わり以降,巣内への餌の総搬入量が減少する傾向が解析した全ての繁殖記録(4例)において認められたことであった(表 4).育雛期間における餌の総搬入量の減少は,本調査地以外にも,秋田県,岩手県,および長野県のつがいにおいて確認されていることから(竹内 2003),ニホンイヌワシの給餌生態の特徴と考えられる.しかしながら,既往の報告では,育雛期間に餌の総搬入量が減少する傾向は報告されてきたものの,その発生メカニズムについては明らかにされていなかった.本研究によれば,育雛期間における餌の総搬入量の減少は,給餌動物の切り替わり前後に生じるノウサギとヘビ類の相反した搬入量の推移(表 4)により,ノウサギの減少量をヘビ類で補償できなかったことに起因していると考えられた.ノウサギの減少量をヘビ類で補償できない理由としては,給餌動物の切り替わり後,ヘビ類の搬入回数が切り替わり前のノウサギに比べて高い傾向が認められたにも拘わらず(図 3),巣内に搬入されたヘビ類 1 個体の重量( 平均値 � S E ;

119.8�12.0, N�166)がノウサギ 1個体(平均値�SE; 520.5�20.8, N�234)の 23.0%相当と軽量だったことにあり,結果として,ヘビ類ではノウサギの減少分を補うことができなかったことが大きいと考えられる.上述したノウサギの減少量をヘビ類の搬入量で補償できない傾向は全ての繁殖記録において認められ,特に 02Maruyama と03Okudaiについては,その傾向がより顕著であった.このように本研究では,落葉広葉樹林帯に生息するニホンイヌワシにおいて,展葉の完了以降に生じるノウサギからヘビ類への切り替わりが,結果として,巣内への餌の総搬入量を減少させることが示唆された.さらに,このような育雛期間における餌の総搬入量の減少は,ヒナの成長に影響すると推察され,それが給餌動物の切り替わりが生じたヒナ(00Maruyama,02Maruyama,98Oku-

dai,および 03Okudai)と給餌動物の切り替わり

158 布野隆之・関島恒夫・阿部 學

が生じなかったヒナ (04Maruyama) の全長の相違(表 5)をもたらした可能性が高いと思われる.また,鳥類のヒナでは,体重などの体サイズに関わる値が小さい場合,それらの値が大きいヒナに比べて巣内や巣立ち後の生存率が低くなること(クロウタドリ Turdus merula: Magrath 1991,ハシボソガラス Corvus cornix: Loman 1977,ヨーロッパカヤクグリ Prunella modularis: Davis 1986,シジュウカラ Parus major: Smith et al. 1989)を考慮すると,給餌動物の切り替わりは,ヒナの成長に影響するだけでなく,ヒナの生存も左右する可能性がある.実際,本研究において,体サイズの最も小さかった 98Okudaiのヒナが巣立ち直後に死亡したことは,上述した体サイズ依存的な生存率を反映した結果と解釈することもできる.このため,今後は,展葉に伴う給餌動物の切り替わりがニホンイヌワシの巣内ヒナの成長や生存に与える影響を詳細に評価するために,落葉広葉樹の展葉前後におけるニホンイヌワシの給餌動物種とその搬入量の変化を調べ,さらに,ヒナの成長や生存に関する情報も合わせて収集する必要がある.

本研究を行うにあたり,電源開発株式会社よりニホンイヌワシの繁殖活動を記録した貴重な映像および気象情報を提供して頂いた.また,新潟大学大学院自然科学研究科の大石麻美博士,武山智博博士,および元新潟大学大学院自然科学研究科の関谷義男博士には,終始有益なご助言,ご指導を頂いた.調査を行うにあたり,奥只見観光株式会社の根本 理氏,星野幸一氏,および元電源開発株式会社の本田智明氏,さらに両機関の職員の皆様には調査を円滑に進められるよう多大な便宜を図って頂いた.社団法人新潟県猟友会の方々には,ノウサギの捕獲にご尽力を頂いた.ここに深く感謝の意を表する.なお,本研究は,公益信託乾太助記念動物科学研究助成基金(2000年),および日本猛禽類研究フォーラム(2000年�2004年)の助成を受けて行われた.

摘   要

イヌワシ Aquila chrysaetosの生息環境は,一般的に,ステップあるいは森林限界を越えた山岳地帯などの樹木の少ない環境とされるが,その亜種ニホンイヌワシ Aquila chrysaetos japonicaは,例外的に,ブナ Fagus crenataに代表される落葉広葉樹林帯に分布している.落葉広葉樹の展葉および落葉による森林空間構造の変化は,ニホンイヌワシの餌選択に大きく影響する可能性があり,それは本亜種の繁殖成功にも影響を与える可能性がある.そこで,本研究では展葉の完了前後における

ニホンイヌワシの給餌様式を明らかにし,それがヒナの成長に与える影響を検討するために,イヌワシ営巣地の対岸にカメラを設置し,給餌動物の種構成,搬入頻度,搬入量を評価した.その結果,ニホンイヌワシの主要な給餌動物はノウサギLepus brachyurusとヘビ類であり,両種を合わせて,全給餌動物の 98.3%を占めていた.ノウサギおよびヘビ類の搬入頻度は落葉広葉樹の展葉前後で逆転し,展葉の完了を境に,ヘビ類の値がノウサギを上回った.給餌動物の総搬入量は,ノウサギからヘビ類に切り替わることで減少する傾向があった.観察したつがいの中で,給餌動物の切り替わりが育雛期間中に生じたヒナの全長は,餌の切り替わりが生じなかったヒナに比べ小さかった.以上の結果より,ニホンイヌワシは展葉の進行に伴ってヘビ類に特化した餌利用に切り替わるが,総給餌量が減少することにより,それがヒナの成長に影響を及ぼしたことが示唆された.

引 用 文 献

秋田県生活環境部 (1993) 秋田県田沢湖町におけるイヌワシ生息調査報告書.秋田県生活環境部,秋田.

Blouin-Demers G & Weatherhead PJ (2001) An experimen-tal test of the link between foraging, habitat selection andthermoregulation in black rat snakes Elaphe obsolete obsoleta. J. Anim. Ecol. 70: 1006–1013.

Brown LH & Watson A (1964) The Golden Eagle in relationto its food supply. Ibis 106: 78–100.

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