JA PPWC wet market - maff.go.jp

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3-31 (2)流通実態 1)流通経路・輸送手段の現況と課題 (流通経路) シンガポールにおける日本産の野菜は生産農家から JA・卸売市場などを通し、専門の輸 入業者を経由して主に高島屋、伊勢丹、明治屋、Cold storage などの高級小売店、スーパ ーで販売される。これらの大手の高級小売店、スーパーに対する流通を担う主要サプライ ヤーは、おおむね決まっている。また、その他にもシンガポールには日本の食品を専門に 扱う中小の輸入業者が存在しており、やはり JA・卸売市場から直接仕入れ、大手の小売店 にも納品し、販売している。 また、 Pasir Panjang Wholesale Center PPWC)と呼ばれる生鮮食料品を扱う大規模卸 売市場があり、一般的な中小スーパー・コンビニ・一般小売店、露店(wet market)等の 仕入れ先となっている。 図表 日本産野菜輸入の流通システム 国内 シンガポール 最終消費者 ○富裕層 △在シンガ ポール邦 小売店 wet market:露店) 中小スーパー・コン ビニ・一般小売店 その他の大型店 (日系資本) ○高島屋 ○伊勢丹 (地元資本) Cold Strage NTUC Fair Price (外資) ○カルフール Meidi Ya (現地法人) JA 生産農家 卸売市場 売買参加者 Meidi Ya (日本本社) 海外輸出促進機関:JETRO 地方自治体現地事務所(北海道・東北3県、神奈川県、大阪府、静岡県、高知県) 国内輸出促進機関(JA全中、 JA全農) フェア、PR政府 補助事業、PR補助事業、PR生鮮食品 サプライヤー ■大手 Imei ⇒高島屋 Tanesei ⇒伊勢丹 Kirei Meidi Ya ■中小 KYOHO MARKETING PTE LTD 卸売市場 Pasir Panjang Wholesale Centre(PPWC) 社内取引 輸入業者 日本の生鮮産品を扱っている大手の輸入業者としては、ImeiTaneseiKirei があげら れ、日本資本の大型店へ納品している。また、日本本社と現地法人の間で社内取引を行っ ているケースも存在する。

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(2)流通実態

1)流通経路・輸送手段の現況と課題

(流通経路)

シンガポールにおける日本産の野菜は生産農家から JA・卸売市場などを通し、専門の輸

入業者を経由して主に高島屋、伊勢丹、明治屋、Cold storage などの高級小売店、スーパ

ーで販売される。これらの大手の高級小売店、スーパーに対する流通を担う主要サプライ

ヤーは、おおむね決まっている。また、その他にもシンガポールには日本の食品を専門に

扱う中小の輸入業者が存在しており、やはり JA・卸売市場から直接仕入れ、大手の小売店

にも納品し、販売している。 また、Pasir Panjang Wholesale Center(PPWC)と呼ばれる生鮮食料品を扱う大規模卸

売市場があり、一般的な中小スーパー・コンビニ・一般小売店、露店(wet market)等の

仕入れ先となっている。

図表 日本産野菜輸入の流通システム

国内 シンガポール

最終消費者

○富裕層

△在シンガポール邦人

小売店

(wet market:露店)

中小スーパー・コンビニ・一般小売店

その他の大型店

(日系資本)

○高島屋

○伊勢丹

(地元資本)

○Cold Strage

○NTUC Fair Price

(外資)

○カルフール 等

○Meidi Ya

(現地法人)

JA

生産農家

卸売市場

売買参加者

○Meidi Ya

(日本本社)

海外輸出促進機関:JETRO

地方自治体現地事務所(北海道・東北3県、神奈川県、大阪府、静岡県、高知県)国内輸出促進機関(JA全中、 JA全農)

フェア、PR等

政府

補助事業、PR等補助事業、PR等

生鮮食品

サプライヤー

■大手

○Imei⇒高島屋

○Tanesei⇒伊勢丹

○Kirei⇒Meidi Ya

■中小

○KYOHO MARKETING PTE LTD

卸売市場

Pasir PanjangWholesale

Centre(PPWC)

社内取引

① 輸入業者

日本の生鮮産品を扱っている大手の輸入業者としては、Imei、Tanesei、Kirei があげら

れ、日本資本の大型店へ納品している。また、日本本社と現地法人の間で社内取引を行っ

ているケースも存在する。

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このほか、多数の中小輸入業者が存在している。日本産品を扱っている中小の輸入業者

もあるが、日本産品は韓国産品と比較すると高価格で補助が弱いこと等からリスクが大き

いため、数は限られているのが現状である。

② 卸売市場

Pasir Panjang Wholesale Center(PPWC)は、シンガポール西部に位置する主として

果実、野菜などを扱う大規模生鮮食品卸売市場であり、各国から輸入された果実、野菜が

取り扱われている。多くの小売店の仕入れの場であり、 近では、一般消費者、観光客等

も増えている 19。

写真 Pasir Panjang Wholesale Center(PPWC)

出所)http://www.hbiz.com.sg/HTML/IU_Showcase_PPWC.asp

③ 百貨店・大型小売店

シンガポールにおける主な農産品販売店であるスーパーマーケットには、カルフール, Cold Storage, Econ Minimart, NTUC Fair Priceなどがある 20。また、ショッピングモー

ルが多数あり、伊勢丹、高島屋、Meidiなど日系のデパートも大規模に展開している。高級

な小売店はオーチャード通りの周辺に集中しており、日系のデパートもこの近辺に集中的

に存在している。これらの日系の大型店は、日本産品の主要な販売チャネルになっており、

都道府県等の販売フェアの開催も多い。 その他、現地資本の大型小売店として、Cold Storage、NTUC Fair Price(生協)、外資

系大型小売店としてカルフールなどが立地している。高島屋に出店している Cold Storageに日本コーナーがあるほか、NTUC も Fair Price Finest 等、比較的高級な商品を扱う店舗

では日本産品を集中的に扱っている。

④ その他の小売店

中小のスーパー、コンビニ、一般小売店の他、“wet market”と呼ばれる露店が立地して

いる。スーパー、コンビニ等で日本産品が一部扱われている場合もあるが数は限られてい

19 http://www.hbiz.com.sg/HTML/IU_Showcase_PPWC.asp 20 シンガポール情報通信芸術省(Ministry of Information, Communications and the Arts (www.sg))

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る。

⑤ レストラン

シンガポールでは日本食レストランが急増しており、こうしたレストランで日本茶や日

本の食材が利用されている。在留邦人、富裕層だけでなく、中間層も含めてシンガポール

国民が日本の食材になじむきっかけとなっている場合も多いといわれている。

写真 ショッピングモールの例

写真 シンガポールの路面小売店の様子

(輸送手段)

一般的に保存期間が短いもの、傷みやすいものなどは空輸で、長期間保存可能なものは海

運で輸送されるが、空輸する場合は価格が上昇し、海運は量が少ないと利用できないため、

輸送が困難であることが多い。 あるスーパーでは、葉物の野菜は保存期間が 3 日であり、空輸でのロス率が 5 割に達する

とのことであった。生鮮食品はロスが多く、届いた時点で商品がだめになっていることも

あるため、日本食サプライヤーは生鮮食品をあまり扱わない傾向にある。

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2)日本産品の販売と差別化の方法

日本産品の販売場所としては、日系の大型小売店や高級品を扱っているスーパーマーケ

ットが中心であり、一般の小売店での扱いは少ないのが現状である。アンケート調査でも、

消費者が日本産の野菜や果実を購入する場所は、一般的チェーン・スーパーと、デパート・

ショッピングセンター等の高級スーパーが多くなっている。シンガポールでは、日本産の

野菜や果実が、一般的な八百屋や“wet market”と呼ばれる露店で販売されることは少ない。

台湾等で日本産品が露店でも売られているのと比較すると、日本産品の購入チャネルは比

較的限られた範囲にとどまっているということができる。

図表 日本産野菜を購入する場所

18.8%

5.3%

30.0%

2.3%

1.3%

8.3%

1.0%

3.6%

54.1%

0.0% 20.0% 40.0% 60.0% 80.0% 100.0%

デパート、ショッピングモール内の高級スーパー

(CitySuper,SOGOなど)

量販店(Jusco(香港)、家楽福(台湾、シンガポール))

一般的チェーン・スーパー(Wellcome,Parknshopなど)

専門の小売店(八百屋)

市場(卸市場)

市場(Wetmarket(小売))

日本から直接購入

その他

購入しない

N=303

図表 日本産果実を購入する場所

24.8%

6.6%

36.6%

6.3%

2.3%

4.3%

0.7%

2.6%

44.6%

0.0% 20.0% 40.0% 60.0% 80.0% 100.0%

デパート、ショッピングモール内の高級スーパー

(伊勢丹、高島屋など)

量販店(Carrefourなど)

一般的チェーン・スーパー(Cold Storage, FairPrice

など)

専門の小売店(果物屋)

市場(卸市場)

市場(Wet Market(小売))

日本から直接購入

その他

購入しない

N=303 また、シンガポールの場合、こうした大型小売店における、日本産品の販売は、輸入業者

が中心になって、販売を担っている場合が多い。シンガポールの大型店は、通常リスティ

ングフィーと呼ばれる棚料を徴収する形式をとっており、こうした販売に当たって、輸入

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業者は自らプロモーション費用を持つことが一般的である。 実際の日本産品のプロモーションとしては、日本コーナーを設け、季節の旬ものという

ことや、栄養価、抗酸化作用など健康への良さを売りにしてアピールし、差別化を図って

いる場合が多い。また、あわせて都道府県等の販促フェアが開催されることも多い。ただ

し、こうした地方主体の販促フェアは単発になりがちだといわれている。 近では、日本から中国、マレーシア、タイなど東南アジアへ投資し、アジアにおいて日

本の品種の野菜を生産し、シンガポールへ販売する形態が見られる。これについては、日

本から直輸入した野菜の方が、味が良いとする評価がある一方、同一品種で見れば中国産

との差別化ができなくなってきているとの意見もあった。

<大手チェーン・スーパーA 社> A 社では、日本産のきのこ、白しいたけ、じゃがいも、ピーマン、ながいも、トマトなど

を扱っている。日本産の野菜は高価格なため、全店で扱っているわけではない。例えばさ

つまいもは同一種類のベトナム産と比べて 3 倍程度の価格差があるが、日本産の方がおい

しいと評価を受けている。日本からマレーシア、タイなどの東南アジアへ投資し、現地の

農場を使って日本の種類の野菜を生産し、販売することもあるが、日本から直輸入された

ものの方がおいしい。 シンガポール人は日本へ海外旅行し、日本の果実を食べて味を知ることが多い。A 社の

高級店に日本コーナーをつくりたいと考えている。

<日本産品の輸入業者 B 社> 中国産農産品は日本直輸入の農産品とあまり品質が変わらなくなってきている。

野菜については、シンガポールの富裕層は価格を気にせず購入する。 近の中国産野菜は

安全性が懸念されるという理由で購入しなくなっている。富裕層以外のターゲットは日本

産品をあまり購入しない。野菜は調理して食べるため、果実のように本来の味が分かりや

すくなく、日本に特徴的なものも少ないため、差別化がしにくい。

<大手チェーン・スーパーC 社> 日本の野菜(トマト、きゅうり、ナスなど)をマレーシアへ移して栽培している企業が

ある。輸送費を安く抑えることができ、生産管理体制がシンガポールに近いなどのメリッ

トがあり、野菜の味は日本産品とほぼ同水準に保つことができている。日本産のものは生

産コストが高く、輸送コストも下げることができないため、価格が高いことが課題である。

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写真 シンガポールのスーパーにおける日本産生鮮品の広告例

出所)KYOHO Marketing 提供

写真 シンガポールのスーパーにおける日本産生鮮品の広告例

出所)KYOHO Marketing 提供

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3)農産物輸出に関わる制度上の条件

(関係機関と関係法令)

①商品の定義

シンガポール農食品・畜産庁では、野菜を以下のように分類している 21。

図表 シンガポールにおける生鮮野菜の分類

No HSCODE PRODUCT CODE PRODUCT DESCRIPTION

1 07095100 HVAØMRN MUSHROOM BUTTON

3 07095900 HVAØFGB JELLY FUNGUS BLACK (JEW'S EAR)

14 07095200 HVAØTF TRUFFLE

15 07031019 HVBØON ONION (EXCL SPRING ONION)

17 07031029 HVBØSA SHALLOT

18 07032090 HVBØGL GARLIC

19 07039090 HVBØCV CHIVE / CHIVE STALK (KOO CHYE/ KOO CHYE

HUAY)

26 09101000 HVBØGG GINGER

28 09103000 HVBØTM TURMERIC

29 07041010 HVCØCF CAULIFLOWER

30 07041020 HVCØBR BROCCOLI

31 07042000 HVCØBP BRUSSEL SPROUT

32 07049010 HVCØCB CABBAGE

35 07049090 HVCØKH KOHLRABI

36 07020000 HVFØTT TOMATO

39 07093000 HVFØAB AUBERGINE (BRINJAL/EGG PLANT)

40 07096010 HVFØCHG CHILLI GREEN

43 07096090 HVFØCPG CAPSICUM (PEPPER GREEN)

49 07099000 HVFØLF LADY FINGER (OKRA)

53 07099000 HVGØCO CORN YOUNG

55 07099000 HVHØCT CACTUS

67 12119099 HVHØAV ALOE VERA

84 09104000 HVHØTY THYME

85 07049090 HVLØKL KALE (KAILAN)

86 07051100 HVLØLTG LETTUCE GARDEN (CHINESE LETTUCE)

88 07051900 HVLØLTA LETTUCE ASPARAGUS (WO JU)

95 07052100 HVLØCC CHICORY (WITLOOF CHICORY)

21 輸入の際の商品リストより、HS コードのあるものを抜粋

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No HSCODE PRODUCT CODE PRODUCT DESCRIPTION

96 07094000 HVLØCLE CELERY STALK

98 07097000 HVLØSNB BAYAM (SPINACH CHINESE)

101 07099000 HVLØBC BAICAI

115 07081000 HVNØPAW PEA SWEET (PISUM SATIVUM)

116 07082000 HVNØBNC BEAN CLUSTER

123 07089000 HVNØAS ALFALFA SPROUT

132 07099000 HVNØBSA BEAN SPROUT ALCAME

137 07141090 HVRØTC TAPIOCA (MANIOC)

138 07142000 HVRØSP SWEET POTATO

139 07149090 HVRØAH ARROWHEAD (CI GU)

146 07019000 HVRØPO POTATO (EXCL SWEET POTATO)

147 07061010 HVRØCT CARROT

148 07061020 HVRØTN TURNIP

149 07069000 HVRØACC ARTICHOKE CHINESE

160 12112090 HVRØGS GINSENG

161 07091000 HVSØACG ARTICHOKE GLOBE

162 07092000 HVSØAG ASPARAGUS

163 07099000 HVSØBB BAMBOO SHOOT

167 07070000 HVUØCU CUCUMBER

171 07099000 HVUØGDA ANGLED LOOFAH (ANGLED GOURD)

②関係法令

シンガポールに対する生鮮食品の輸入に際しては、「植物管理法(Control of Plants Act)」及び関連法令の規制を受ける(所轄は農食品・畜産庁(AVA)食品畜産物管理局 輸出入課)。

生鮮果実及び野菜は AVA の輸出許可のもとで、どの国からも輸入できる。 また、国内で食物を販売する際には「食品販売法(Sale of Foods Act)」および「環境保

健法(Environmental Public Health Act)」の「環境保健(食品衛生)規定(Environmental Public Health (Food Hygiene) Regulations)」の規制を受ける。

③関係機関 農食品・畜産庁(AVA)食品畜産物管理局 輸出入課

(Import and Export Division, Agri-Food & Veterinary Authority of Singapore) 5 Maxwell Road, #02-03, Tower Block, MND Complex Singapore 069110 Fax: 63257648 Miss Lily Ling (Tel: 63257620), Miss Teo Yen Ling (Tel: 63257285)

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(輸入、販売手続き)

①輸入手続き

輸入者は農食品・畜産庁(AVA)に対し、輸入許可申請を行う必要がある。申請に際して

はトレードネットというシステムからオンラインで行う。申請者はインボイスや航空料金

の領収書など附属書類を提示する。AVA は輸入に際し、サンプリング調査・分析を行う可

能性がある。 輸入者はまずトレードネットシステムから貨物ごとに輸入許可申請を行う。

図表 輸出申請の流れ

②輸入申告

・ 輸出入業者は生鮮果実・野菜を輸入、積替えするためのライセンスを申請する必要があ

る。2006 年 10 月から、新規申請に対しては 21.50 シンガポール・ドル(1,649 円)の

申請費を設定している。オンラインで申請できる。農食品・畜産庁(AVA)による輸入

許可は生鮮果実・野菜のすべての貨物に必要である。 ・ 輸入に当たっては生鮮果実・野菜は農食品・畜産庁(AVA)による書類や物理的検査の

対象となりうる。サンプリングテストが必要になることもあり、テストの結果が出るま

トレードネットシステムにより、農食品・畜産庁(AVA)輸

入許可申請を行う

申請者は積荷証券、貨物運送状、インボイスなどの附属書類

を提出する

輸入者は貨物通関許可証(CCP)をプリントアウトし、通関

時に持参する。

輸入者は貨物通関許可証上のコードを確認する。特定の商品

の場合は、貨物は PPWC(Pasir Panjang Wholesale Center)で義務検査を受ける。

検査に際し、申請者は CCP、インボイス、輸入する野菜を農

食品・畜産庁(AVA)に提示し、検査を受ける。

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で「テストの待機」の状態になることもある。

③販売・表示

・ 輸入表示:生鮮果実・野菜のコンテナは輸入時に下記の通りラベルが必要である。 ⅰ.氏名、住所、生産者 ⅱ.産品の説明 ⅲ.輸出/梱包の日付

・ 販売表示(食品一般):食品販売法では、食用に販売される食品全般で、パッカーや販

売業者等に対し、表示規制を設けている。但し、生鮮果実等包装されずにばら売りされ

るものについては、個々の果実への表示義務はない。

表示事項

・名称または品種

・原産国

・輸入業者、販売業者名と住所

・内容量(数量、正味重量等)

・ 販売表示(加工品):食品販売法では、乾燥果実・野菜を含む加工食品全般で、販売前

に包装された食品は、飲料も含め、適切な表示を行うことが義務付けられている。同規

定では、以下の基本情報を英語で表記することを義務付けている。

・名称または品種

・原産国

・輸入業者、販売業者名と住所

・内容量(数量、正味重量等)

・重量の降順による成分一覧表

・食品の賞味期限

④サンプル品の輸入に関する規定

サンプル輸出については総額が 400 シンガポール・ドル(30,684 円)を超えない範囲で

あれば、輸入許可を取得することなく、かつ消費税を支払うことなく、輸入することがで

きる。但し、あくまでサンプルであるので国内での販売に供することはできない。インボ

イスおよび船荷証券(B/L または AWB)は通常の貨物と同様に通関の際に必要となる。

また、展示会出展用に一時的に輸入する場合は、一時的輸入制度(Temporary

ImportScheme:TIS)を利用することができる。この制度を利用すると、展示会開催日の 3週

間前までに貨物を輸入することができ、展示会終了後 3 週間以内に再輸出しなければなら

ない。税関へのTIS 申請にあたっては現地のフレイト・フォワーダーを任命し、インボイ

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スおよび船荷証券(B/L またはAWB)、展示会への参加者リストを提示しなければならない 22。

(関税、手数料)

①関税

シンガポールは日本産の野菜に関して関税を撤廃している。

②手数料

・ 輸出入業者は生鮮果実・野菜を輸入、積替えするためのライセンスを申請する必要があ

り、2006 年 10 月から、新規申請に対しては 21.50 シンガポール・ドル(1,649 円)の

申請費を設定している。 ・ 生鮮果実・野菜の輸入に際しては貨物ごとに 3 シンガポール・ドル(230 円)の手数料

が発生する。

③その他特有の制度上の制約

・ 輸入される生鮮果実・野菜は、禁止されている農薬を含んだり、残留農薬や残留有毒化

学物質の水準が食品規定附表第 10 または FAO/WHO 共同国際食品規格委員会の提言

において特定されている水準を越えたりしてはならない。 ・ 南アメリカ地域の国から生鮮果実・野菜を輸入する場合には植物検疫証明書が必要であ

る。

(商慣行から見た制約)

Cold Storage、NTUC Fair Price など、大手スーパーでは、リスティングフィー(棚料)

をとるシステムが採用されており、農産品は輸出入業者が棚料を負担して、自らのリスク

のもとで販促活動を行って販売している。そのため、米国や韓国等では現地サプライヤー

を対象とする補助制度を運用している例もある。 例えば、大手スーパーマーケットであるCold storage, NTUC Fair Priceの場合、下記の

手数料が課されている 23。

Cold Storage (25 outlets under the Cold Storage name)

New Product (Vendor Listing Fee) S$2500(191,775 円)

First Product S$80/store(6,137 円/店)

Product Variant S$30/store(2,301 円/店)

Processing Fee S$200(15,342 円)

NTUC Fair Price

22 農林水産省資料(http://www.maff.go.jp/yusyutsu/db/singapore.pdf) 23“Agriculture and agri-food of CANADA, “Food and Beverage Retail Report – Singapore February 2003””( http://ats-sea.agr.gc.ca/asean/3646_e.htm)

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Processing Fee:

Per product S$300(2,301 円)

Per additional variant S$30(2,301 円)

Per festival product S$80(6,137 円)(exclusive of 4% GST)

Listing Fee:

Per product S$85/store(6,520 円/店)

Per additional variant S$10/store(767 円/店)

リスティングフィーと呼ばれる棚料を支払う仕組みがあるため、リスクを負担して販促

活動を行う必要があるサプライヤーの負担が大きい。