IT 研修内容:chemoinformatics, molecular modelingについて...

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海外留学レポート 学籍番号 : 0930282728 氏名 : 猪股 新 所属分野名 : 京都大学薬学研究科生体分子認識学 留学先 : University of Bonn, Bonn-Aachen International Center for Information Technology B-IT 期間 : 2016/10/4 ~ 2016/11/29 研修内容:chemoinformatics, molecular modeling について学ぶ B-IT の外観 ●はじめに 10 月 4 日から 11 月 29 日までの約 2 か月間、ドイツ北西部のボンにある University of Bonn, Bonn-Aachen International Center for Information Technology B-IT の Prof. Dr. Jürgen Bajorath(以下、Prof. Jürgen) の研究室に留学いたしました。Prof. Jürgen は chemoinformatics の分野において大変高名な教授であり(生物系で言えば、iPS 研究所の山中 教授のような存在です)、ゆえにその研究内容もメンバーも chemoinformatics の最先端を走っており ました。このようなハイレベルな環境下で常に刺激的な日々を送れたことは大変有意義であり、私の一生 の財産となりました。 ●きっかけ もともとは留学経験が詰めるかもしれないというお話に興味を示したことが発端で、初めから chemoinformatics に興味があったというわけではありませんでした。しかし、Prof. Jürgen が京大に 講演でいらしていた際に実際にお会いさせていただいたところ、留学初心者でも chemoinformatics 初心者でも 1 からこちらで丁寧に教えるからと言っていただけたため、ここなら安心して留学することができ ると思い留学を決意しました。chemoinformatics の内容自体は前述の Prof. Jürgen の講演をお 聞きさせていた際に初めて知り、そこで初めて興味を持ちました。

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  • 海外留学レポート

    学籍番号 : 0930282728 氏名 : 猪股 新

    所属分野名 : 京都大学薬学研究科生体分子認識学

    留学先 : University of Bonn, Bonn-Aachen International Center for Information

    Technology B-IT

    期間 : 2016/10/4 ~ 2016/11/29

    研修内容:chemoinformatics, molecular modeling について学ぶ

    B-IT の外観

    ●はじめに

    10 月 4 日から 11 月 29 日までの約 2 か月間、ドイツ北西部のボンにある University of Bonn,

    Bonn-Aachen International Center for Information Technology B-IT の Prof. Dr.

    Jürgen Bajorath(以下、Prof. Jürgen) の研究室に留学いたしました。Prof. Jürgen

    は chemoinformatics の分野において大変高名な教授であり(生物系で言えば、iPS 研究所の山中

    教授のような存在です)、ゆえにその研究内容もメンバーも chemoinformatics の最先端を走っており

    ました。このようなハイレベルな環境下で常に刺激的な日々を送れたことは大変有意義であり、私の一生

    の財産となりました。

    ●きっかけ

    もともとは留学経験が詰めるかもしれないというお話に興味を示したことが発端で、初めから

    chemoinformatics に興味があったというわけではありませんでした。しかし、Prof. Jürgen が京大に

    講演でいらしていた際に実際にお会いさせていただいたところ、留学初心者でも chemoinformatics

    初心者でも 1 からこちらで丁寧に教えるからと言っていただけたため、ここなら安心して留学することができ

    ると思い留学を決意しました。chemoinformatics の内容自体は前述の Prof. Jürgen の講演をお

    聞きさせていた際に初めて知り、そこで初めて興味を持ちました。

  • ●英語について

    私はバイトで自由英作文の採点をしている関係上、書く方はある程度得意でありましたが話す方は

    本当に人並みレベルでした。ただ小学生のころ英会話教室に少しだけ通っていた経験があったことから

    怖がらずになんとか話出すことくらいはできるだろうと高をくくり、結局ろくに英会話の勉強もしないまま留学

    へ旅立ってしまいました。

    結局のところある程度の会話は何とかなってしまったのですが、「なんとかなる」レベルでしたら正直わざわ

    ざ英会話の勉強を1か月やその程度やってみたところで変わらないと思いました。ラボのメンバーとなにげな

    く日常会話ができて、自分の言い分や聞きたいことがある程度

    正確に伝わる状態にしようと思ったら、もっと事前に、ある程度密な英会話の練習をしなければ確実に無

    理だと思います。逆に「なんとでもできる」レベルに到達するのは数年ほど語学留学でもしていないとそれは

    それで無理です。ですから、いっそ何も勉強せずに言語の壁を味わうのも一興かもしれませんが、私は実

    際もっと英会話に慣れていればラボのメンバーと楽しくお喋りできたのに、と大変後悔しております。

    ただ一応、英語の模試を採点できるくらいには過去英語を勉強した経験がありますので、英語が苦手

    な方、そんなに勉強したことがない方向けに私ができるアドバイスをさせていただければと思います。

    英語の試験を受けて英語力を伸ばしたいと思うのであれば、TOEIC ならば speaking があるタイプ、

    TOEFL なら iBT をオススメします。また、書く方の英語を勉強したいと思うのであれば、大学受験レベル

    の英作文の参考書で結構です、自然な英語を自然に書ける感覚を養ってください(おそらく、京大生で

    も英作文の問題をほぼ完ぺきにスラスラ書ける人はほんの一握りだと思われます)。

    そして最後に、海外ドラマを見ると日本の学校教育で見られる英語とは異なった生きた英語を勉強するこ

    とができます。やはりこれは鉄板です。どのドラマに興味が湧くか分からないというのであれば、家の TV で

    BS が映る人なら誰でも無料で視聴可能な「Dlife」というチャンネルがあります。そこでは多ジャンルのドラ

    マをやっていますので単純に自分の好きなものや、自分の留学に役立ちそうな会話がでてくるものなどをピ

    ックアップしてもらって、録画して何度も見直すと良いと思います。フランクなシーンでの英作文や生きた英

    語でのイディオム(辞書引いても出てこないようなもの)を知ることができる非常に良い手段です。

    Dr.House、Gray’s anatomy、BONES とかどうでしょうか?

    ●日本であらかじめ学んでおくべきこと

    [Info 寄りの内容へのアドバイス]

    もし Prof. Jürgen の研究室で Chemoinformatics を本格的に勉強するのであれば、最低限のプ

    ログラミングの知識は必要になるかと思われます。私は Linux の授業を半期受けてからいきましたが、それ

    でもプログラミングの初心者中の初心者でしかなく、結局プログラミングの知識がほとんど必要ない

    Molecular modeling の勉強をすることになりました。授業では一部 Python を用いた内容がありまし

    たので、Python をもとにプログラミングの知識をある程度つけておくと英語で行われる授業内容が頭に

    入ってきやすいかと思われます。

  • [Chemistry 寄りの内容へのアドバイス]

    Informatics の授業といっても、当然セントラルドグマの話やタンパク質の構造の話など、基礎的な生

    化学知識は授業でも出てきますので復習が必要です。私は Cell biologist でしたので分子シグナリング

    などの知識が多かったですが、こちらはほとんど使いませんでした。Chemistry、つまり薬学部で言えば有

    機系の知識と Structural biology、物理生物の知識が必要になってきます。京都大学薬学部で言え

    ば、2016 年現在で、有機の授業全般と、構造生物学(加藤先生が担当の授業)の復習をしておくこと

    が重要かと思われます。有機に関しては合成経路を覚える必要はありません。

    ●研修内容

    基本的には授業と個人ワークで形成されていました。Chemoinformatics は週に何度かある授業で、

    Molecular modeling は授業と授業外で私を担当していただいたポスドクの方からいただいた演習で勉

    強いたしました。

    [留学中の平日の生活] ※授業が全くない日のもの

    Time

    9:00 起床

    10:30~11:00 ラボ到着

    11:00~13:00 個別ワーク

    13:00~14:00 昼食

    14:00~19:00 個別ワーク

    20:00~20:30 帰宅

    大体上記のような生活を送っておりました。ラボに到着するのが遅いように思われる方もいらっしゃるかも

    しれませんが、10:00 頃にならないとラボのメンバーが誰も来ないためこの時間から出席していました。

    帰りも 19:00 ぐらいには館内に誰もいない状況になります。金曜だと 18 時くらいからほとんど人がいない

    状況になることもありました。

    [授業について]

    授業は毎日あるというわけではなく、Chemoinformatics,Bioinformatics,Structural

    Bioinformaticsの授業が週に月、火、木に数コマあるくらいでした。1コマの授業は120分~150分程

    度で、間に 10 分程度の休憩を挟みます。ちなみに Chemoinformatics の授業は Jürgen 教授に

    直々にご教示していただけました。

  • 実際の授業内容に関しては、院生向けの授業に混ぜてもらって受けていた、という感じです。京都大

    学の院生向けの授業は研究生活に支障をきたさないようにとの考慮から来るのか、ある意味「軽め」の授

    業といった印象ですが、こちらの授業は全く異なり、日本でいうと学部生向けの専門の授業のようにかなり

    みっちりと教えていただけます。

    生徒はバックグラウンドがみんな様々で、私のように Biology 専門の方もいれば、むしろ Informatics

    専門で Chemistry,Biology の内容に疎い方もいらっしゃいました。それも相まって、授業中に質問する

    生徒が非常に多かったですが、どの質問にも教授はとても丁寧に答えてくださいました。

    授業に演習の時間も組み込まれており、ある程度学習が進んだ段階で演習の時間が挟まれるので特

    別頑張って復習をしなくても内容が身に付くようになっています。もちろん授業は全て英語で行われまし

    た。

    ★授業内容の一例

    ※授業自体は 10 月半ばからスタートしたため、私は実質約 1 か月半ほどしかまともに授業を受けてお

    りません。

    〇Informaton about molecuar topology

    R. Leach 著 An introduction to Chemoinformaticsより抜粋

    左は aspirin の構造式であるがこれには物理的な構造や官能基、原子同士の結合状態など、様々

    な情報が含まれる。Chemistry としては左が重要であるが、Informatics の上では基本骨格だけが欲

    しい場合がある。このとき各原子を〇で表し(nord と呼ぶ)、結合しているということのみをーで表す(edge

    と呼ぶ)ときがある。つまり、topology のみに関してだけ注目した aspirin の情報は左の模式図に集約さ

    れる。

    〇linear notations (SMILES, InChI…)

    SMILES : CC(=O)Oc1ccccc1C(=O)O

    InChI :1S/C9H8O4/c1-6(10)13-8-5-3-2-4-7(8)9(11)12/h2-5H,1H3,(H,11,12)

  • コンピュータ上で様々な drug を解析していくうえで、前述 aspirin のような構造式の情報をいちいち読

    み込んでいては容量を圧迫してしまう。そのため、簡略でかつより低容量の情報に置換する必要がある。

    その記述様式がいくつかあり、代表されるものが前述の SMILES や InChI である。

    Ex) SMILES は簡潔に言えば H の表記を省略し、主となる原子の結合のみを簡略に表す方法である。

    表現にはいくつかのルールがあり、例えば環状構造は便宜的に任意の結合を1つ切り、切った証として切

    る前結合していた原子それぞれに同じ番号を振っておき、後は直鎖として扱う。また、芳香環の炭素は大

    文字ではなく小文字で表記する、など。

    〇Morgan algorithm

    R. Leach 著 An introduction to Chemoinformatics より抜粋

    1つの化合物を SMILES で表現する際、そのルール上何通りか表現が存在してしまうことが多発する。

    慣用的に 1 つに決まっている場合を除き、すべてのパターンを同一化合物と認識させることは結局容量を

    圧迫することになる。これを避けるため、構造式上の原子に番号を付け、SMILES がある一定の規則も

    つ表現となり、基本的に1つに決まるような法則が必要になる。その法則の1つが Morgan algorithm

    である。上記の番号の振り方としては試行回数を E とすると

    【スタート時】 E=1

    その原子が隣り合ういくつの原子と結合しているかの数を振る。

    【それ以降】 E≧2

    その原子に隣り合う原子群の持つ数字の和を、今回の試行によってその原子が得る数字とする。

    Ex) 図中〇で囲んだ 3→5 の変遷は 5=1(酸素)+1(酸素)+3(芳香環中炭素)

    【終点】 E=X

    各原子の持つ異なる数字の数を n とした場合、n の数の変動がこれ以上起こらなくなったときが終点。

  • 〇Descriptor-based similarity

    MOL LogP(o/w) b_rotN a_acc a_don

    M1 2.4250 2 3 2

    M2 3.4700 2 3 3

    M3 0.7090 0 2 1

    M4 2.4900 1 2 1

    ・MOL molecular

    ・logP(o/w) index of hydrophobicity

    ・b_rotN number of rotatable bonds

    ・a_acc number of hydrogen acceptors

    ・a_don number of hydrogen donors

    授業スライドより抜粋

    上記のような情報があった場合、各パラメータに対して座標軸を取るとすると、各化合物間の similarity

    を図る基本概念の一つに座標空間上の各点どうしのユークリッド距離で測るというものがある。すなわち、

    距離が短いほど similarity が高い。

    [個別ワークについて]

    「MOE」という解析ソフトを用いて Molecular modeling について学びました。MOE はチュートリアルが

    しっかりとソフトに組み込まれていることが有名なソフトで、実際かなり充実していました。使い方に慣れるこ

    とから始まり、実際に自分で構造式を書いたりしました。その後、自分で build した drug をもとに

    re-docking や cross-docking などについて学びました。

    ★個人ワークまとめの一例

    〇 Posing

    Generating a number of binding modes calculated by a placement methodology.

    〇 Scoring

    Estimating the interaction energy between the ligand and the protein.

    Diverse scoring functions can be applied.

    上記 2 つは docking において重要な概念。

  • 〇re-docking

    PDB 上にすでに挙げられて

    いる PDB ファイル上の drug

    の構造に対して、それとは別

    に作成した同じ drug の

    posing と scoring によって

    計算された構造群を

    docking すること。

    ・docking algorithm を

    評価するために行う

    ・RMSD value が 2Å

    以内で successful

    〇cross-docking

    ・re-docking の成功した

    ragaglitazar が結合してい

    たタンパクと同じタンパクに関

    し、別のリガンドが結合して

    いる PDB file を探し出し、

    行う

  • Ex) Best score の RMSD-Table

    1NYX 3U9Q 4CI5 3V9V

    Ragaglitazar 1.44 8.43 1.40 8.64

    DKA 8.52 0.52 0.85 4.43

    Y1N 5.77 9.99 1.37 9.45

    21L 5.58 9.64 10.46 0.80

    上記のように RMSD value を計算し、algorithm の選択や ligand どうしの interaction について

    評価を行う。

    ●留学中の生活について

    [出発まで]

    留学が決まってからは留学先の研究所の秘書様である Britta さんが親身に連絡を取ってくださり、ドイ

    ツでの宿舎としてボン大学の寮を予約してくださいました。今回は留学期間が3か月以内であったためビ

    ザは必要ありませんでしたが、一応ボン大学側より Innvitaion card を用意していただきました。

    ちなみに、宿舎には手続きが必要で、現地についてすぐ入れるわけではないので到着から数日間はボン

    駅周辺でホテルを取りました。ホテル並びに飛行機、現地空港から最寄り駅までの電車のチケットはラボ

    の先生方が普段出張の際に利用している業者様に用意を依頼いたしました。

    [日本から持っていくべきもの]

    Google で「留学の際に持っていくとよいもの」などと検索するといくつか出てきますので、そちらを一度自

    分で確認していくことをオススメします。具体的にはティッシュ、マスク、簡単な日本食、薬類、コンセントの

    変換プラグ…などなどでしょうか。ちなみにドイツにはマスクという文化がありませんので、現地では手に入り

    ません。

    加えて、無線ルーターを持っていくことを強くオススメいたします。宿舎で使えると大変便利です。現地で

    買ってもいいですが、ドイツは電化製品の価格が高いですし日本のようなコンパクトな形をしていないもの

    も多いので、持参が良いと思います。

    また、もし出国前にスマートフォンを機種変更する予定があるのであれば、Sim-free のスマートフォンに

    できればしておくと大変現地で楽です。ヨーロッパではプリペイド Sim が浸透していますので、手持ちのスマ

    ートフォンが何気なく利用できて大変便利ですよ。

    [日本出国からドイツ入国までについて]

    私は関西国際空港からフランクフルト空港へルフトハンザを利用しました。ドイツ入国の際には高価な品

    物(パソコンなど)を持っていっている場合申告する必要があるような記述が旅行書などにありますのでご注

  • 意ください。ちなみに私は空港にて申告アリのゲートをわざわざ通ったらむしろ変な顔されました…ちゃんと

    英語で事情を説明したらパスポート見せただけで終わりましたので申告ナシゲートを通っても良かったのか

    もしれません…

    [入寮まで]

    学生センターのようなものがボン駅から歩いて行けるところにあり、そこで手続きを行いました。ちなみに学

    食もそこに存在しています。手続は平日の限られた時間帯にしかできず、しかもおそらく英語が堪能でもな

    い限り一人で色々行うのはかなり大変だと思われます。私は留学先のラボの方に事前に連絡をとって手

    伝っていただきました。

    このとき寮の代金 1 月分 240€とデポジット約 400€を支払いました。ちなみに毎月支払いに行く必要

    があります(デポジットはもちろん初回のみ)。

    [ボンの気候について]

    10 月でも京都の真冬並みの気温ということを聞いていたので重装備していきましたが、到着時は正直

    そこまで寒くなかったです…ただし、11 月前半からはしっかり真冬の気候になりましたので持っていく服は少

    し薄手から厚着まである程度幅があるとよいかと思います。旅行先によっては、京都では信じられないよう

    な気温である-6℃などもあり得ますのでご注意ください(霧が凍って身にまとわりつくような天気になったりし

    ます。よって体感温度は-6℃よりももっと寒いです。本気です。ナメないでください…)

    天気は基本的に雨なので、折りたたみ傘を持っていくことをオススメいたします。

    [学生寮について]

    私が用意していただいた学生寮の部屋はラボから電車を乗り継いで 20~30 分ほどかかる位置にありま

    したが、寮の本当に目の前に電車(トラム)の駅がありましたので(ラボから最寄りの駅もさほど遠くはないで

    す)あまりストレスには感じませんでした。

    部屋自体は 7~8 畳程の部屋で、キッチン(2口)、シャワールーム、冷蔵庫、ベッド及びベッドマット、イ

    ンターネット完備のなかなか快適な部屋でありました。家賃は 1 月 240€と破格でした。日本から持ってい

    くべきものでも触れましたが、無線ルーターがあると部屋の中でスマートフォンとパソコンを両方使うことがで

    きて楽です。

    [通学について]

    寮からラボまでは電車及びトラムを使いました。ドイツは電車の切符の買い方が日本とは全く異なります

    し、そもそも地域によっても料金体系が異なりますのでご注意ください。ボン市内においては寮とラボが

    preisstufe 1b という範囲に両方収まっていたため、その範囲内の電車やトラム、バスが使い放題になる

    Monthry ticketを購入していました。90€くらいでした。ちなみに通学用に決まった時間帯でのみ有効に

    なる Monthry ticket もあり、こちらは 60€くらいでしたが私は前者を購入いたしました(土日も使いたか

    ったので)。

  • [食事について]

    普段自炊しようと思っていたため、フライパンやまな板、包丁など一通りの調理器具を買い揃えました。ド

    イツの調理器具はしっかりしているものが多く有名ですし、日本で買うより安いので持ち帰れるものは良い

    ものを買うのも手だと思います。

    朝食・夕食を基本自炊し、昼食は学食やそれ以外の場所で済ませたりしました。学食は 4€前後で食

    べることができました。ただし、味は正直良くないです。笑 ドイツはパンのチェーン店が非常に多く、その

    様々な店でサンドイッチを買うことができますのでそれを通学時に買って、昼ご飯としていたりもしました。

    色々なサンドイッチの食べ比べも楽しいですよ。美味しいものも多いですしね。

    自炊は苦手…という方も是非してみてください。夕食を外食で済ませようとするとかなり食費が高くつきま

    すが、果物、野菜、肉、乳製品が日本よりも安く手に入るので(ただし魚はメチャ高いです…)自炊すれば

    ちゃんと安く済みます。クノール製品のバリエーションが大変多いため、そういったソースを使えば料理も簡単

    にできます。野菜、果物は基本スーパーでも測り売り(kg 単位)です。たまには市場にいって買ってみるの

    も楽しいですよ。

    チーズ、ハム、ソーセージも種類豊富で量り売り、なのでビール片手に晩酌しまくるのも一興かと思います。

    ビールは中瓶で 0.29~1.00€くらいと破格の安さでした。ドイツはワインも有名で安いのでそちらもお試しく

    ださい。

    また、スーパーでの買い物も日本と全然違う文化があります(コンベアとかカートとか)のでご注意ください。

    青、黄、黒のごみの分別もドイツは大変ですが、頑張りましょう。

    ボン市内の HARIBO ストアでグミを買う猪股

  • [洗濯について]

    ドイツでは基本部屋干しです。部屋干し用の器具(物干し竿的なもの)が売っており、それを購入して使

    っていました。洗濯機は寮の共用のものを使いました。使用には学生カードのようなものが必要であり、入

    寮の際に手続きを行った場所で入手できました。

    [普段買い物をしていたお店など]

    ご参考までに。

    Penny,REWE : どちらも有名なスーパーです。REWE の方が品揃えは豊富だった印象があります。

    Media Markt,Saturn : 基本この2つしか家電量販店はありません。日本より基本なんでも高いの

    で、気になる方は Amazon.de の利用もお考えください。

    DM,Rossman, Müller : どれも有名なドラッグストアです。良いものが日本よりかなり安く買えますよ。

    ただしここで薬は買えません。ご注意ください。

    Apotheke : こちらが薬局です。ドイツでは薬局でしか薬は買えません。

    TK Maxx : ブランド物やそれ以外のものなんでもディスカウントして売っています。かなり破格の値段で

    色々買えますので大変便利です。

    GALERIA KAUFhOF, KARSTADT :

    どちらもデパートです。といってもブランドものも確かにありますが、日本ほど高級志向とかではありませんでし

    た。色々一度に揃いますし、結構利用すると思いますよ。

    [週末の過ごし方/電車移動の注意事項]

    ドイツは日曜日基本的にお店が閉まっている(観光地自体や、美術館などは日曜も開いています)ため、

    せっかく観光に行っても楽しさが半減してしまいがちです。ということで、私は土曜日に詰め込んで旅行して

    夜遅くに帰宅し、日曜日は家でゆっくりしたり美術館に行ったりしました。ドイツは鉄道網が発達しているた

    め、大抵どこでも電車で行くことができます。1日指定州内乗り放題のチケットや早割などのチケットを駆

    使するとかなり安く移動できるため、積極的に利用していました。

    ★電車利用の注意事項

    ・複数人で移動する場合、普通に人数分の目的地までのチケットを買うより 1 日指定州乗り放題チケッ

    ト(州チケ)を買った方が格段に安かったりします。

    Ex) 目的地まで 50€/人 ⇔ 州チケ 24€,2 人以上で利用の場合、+5€/人

    ・日本のように改札がないため、チケットを買わずに電車にのることもバレなければ確かに可能になってしま

    いますが、そもそもドイツのみなさんはきちんと買っています。また長距離移動していると駅員に必ずチケット

    の確認を迫られます。罰金がありますので、ちゃんと買うべきです。

    ・S bahn /U bahn の違いや、DB,IC,ICE の違いもちゃんと把握しておくべきです。基本、IC,ICE は新

    幹線みたいなものなので特別料金がかかります。州チケなどを持っている際に誤って乗らないようにしてくだ

    さい。

    ・スマートフォンのアプリでチケットを買うとスムーズです。こちらでしか買えない安いチケットもあるようです。

  • ・Bahn card といって、有効期限内なら常に 25%off などでチケットが買えるサービスもあります。

    観光は一緒に留学に行った方や現地で知り合った日本人ご夫婦と様々な場所に行きました。ケルン、

    デュッセルドルフ、ブレーメン、ハンブルク、フランクフルト、ニュルンベルク、リューデスハイム、ドルトムント…ど

    の土地も本当に感動する風景やイベントに溢れていました。クリスマスマーケットが開催されてからは、色々

    な土地へ行ってグリューワインのグラスを集めたり、多種多様な店構えを写真に収めたりするのもとても「ら

    しい」体験ができて素敵でした。ボンのクリスマスマーケットもなかなかでしたよ。ドイツから出て別の国には

    行っておりませんが、旅行で来たくらいでは絶対に行かないような場所へと観光に赴けるのも留学ならでは

    だと思います。ぜひ、旅してまわってあちこちのドイツの風を胸いっぱいに吸い込んでほしいなと思います(私

    ももちろんそうしました)。

    リューデスハイムにて

    ブレーメンにて ドルトムントの有名なツリー

  • [治安について]

    正直、ボンは非常に治安が良いです。京都よりいいかもしれません(物乞いなどはいますが)。ドイツ自体、

    EU 圏内の他国に比べると治安は良い方だと聞きますが、ベルリンやフランクフルトはそれでも治安は良くな

    いです。難民の受け入れに反対する過激なデモなども行われていたようですし、ピエロマスクを被った人物

    による謎の障害事件があちこちで多発していたりもしました。ボンから近く、大都市でもあるケルン(電車で

    30 分くらいなので多分、何回も行くことになると思いますが)でもこれらの報告がありました。ボンは確かに

    安全ですが、旅先では常にアンテナを高くし、自分の身は自分で守れる体制を作っておくべきと思います。

    ●感想

    [研究生活]

    薬学部で Wet である Cell biology の分野しか学んでこなかった私が、たった 2 か月という短い期間の

    中で留学させていただいたラボに貢献できたことは正直無いに等しいと思います。そんな私にも常に声をか

    けてくださったラボのメンバー並びに Jürgen 教授には本当に感謝しております。全く関係のなかった分野を

    学びに行くことに正直最初は抵抗があった今回の留学でしたが、終えてみれば自分の研究テーマから研

    究者としての在り方までその全てを多角的に見つめ直す素晴らしい機会であったとしみじみ感じます。その

    場の成果は生み出せずとも、この経験が今後の人生のふとしたひと時に芽吹くことと確信しております。こ

    のような時間をもっと多くの日本の学生研究者が持てる未来が来ることを願ってやみません。

    [英語]

    英会話が満足にできないということが、自分の触れる世界をいかに縮めていることか痛感いたしました。

    詳しくは前述の英語についての項で触れていますが、文化が違うからこそ大切なコミュニケーションを自ら否

    定しているようなものであるのですから。この 2 か月でも英語だけで数々の失敗をいたしました。この傷を無

    神経に癒すことなく教訓として胸に刻み、英語力向上を尽力したいと思います。

    [海外の文化に触れて]

    ドイツではスーパーでペットボトルを換金できるシステムがあるのですが、その機械の前で使い方に迷って

    いたとき、すっと知らない女性の方が声をかけてくれました。ドイツはみんながみんな英語ができるというわけ

    ではなく、その女性もその一例で、英語はカタコトでした。それでも、困っている私に声をかけてくださり、一

    生懸命教えてくれようとするのです。

    日本でこの逆が起きえましょうか。ほとんどないのではないでしょうか。

    こういったふとした日常の何気ない優しさを、ドイツでたくさん感じることができました。

    これに感化され、帰国直前には私も駅の券売機で迷う観光客にカタコトの英語で話しかけることができ

    るようになりました。

    就活に使えるとか、とりあえず海外にいってみたいとか、理由はなんでもいいです。とにかく海外にでて、日

    本とは違う文化にゆっくり浸かることは絶対にその人に何か変化をもたらせてくれると思います。

    もちろん、研究者という立場にも。

  • ●謝辞

    最後に。自分の将来を考える中で、研究者という立場を異なる環境化で考えたいという思いから今回

    の留学を決意いたしましたが、想像をはるかに超える経験と自己の変化を会得することができ大変有意

    義な 2 か月間でした。

    紹介してくださった美幸先生、実際に金額の面での援助やJürgen教授との仲介を密に頂いた武田先

    生、書類面などで大変気にかけてくださった秘書の野原さん、能勢さん、留学に際し Linux について多々

    ご教示くださった J.B.Brown 先生、私を暖かく迎えてくださった Jürgen 教授、身の回りのお世話をいた

    だいた秘書の Britta さん、ずっと molecular modeling について親身に教えてくださった Dr.Andrew、

    またその他ラボのメンバーのみなさん、一緒に苦楽を共にした同じ留学生の堀江さん、相談にのってくれた

    友人や家族、そのすべての方々の多大なるご厚情に感謝の意を示し、ここに活動報告を終わらせていた

    だきます。ありがとうございました。

    (上)ラボのメンバーと (左下)Dr. Andrew と (右下)高名かつ人格者である Prof. Jürgen

  • ●参考:生活にかかった諸々の費用

    2か月の生活期間の中でかかった費用の概算を以下に記載させていただきます。

    ※今回の留学では一部大学側(先生)に負担していただきました。

    内容 金額 備考

    航空券(往復) 203,430 円 ルフトハンザ使用

    関空⇔フランクフルト空港

    ※業者委託

    電車代(往復) 8,000 円 フランクフルト空港⇔ボン

    ICE 使用

    ※業者委託

    ホテル代 約 42,000 円 到着時2泊、出発時1泊

    全て 4★ホテル

    ※業者委託

    寮費 約 240~270€/月 月によって価格変動

    光熱費や水道代など全て込み

    海外保険料 約 1,5000 円 生協の保険を使用

    金額はプランによる

    通学定期代 約 90€/月 プランにもよる

    スマートフォン通信料 約 80€ プリペイド sim 代

    生活用品代 約 350~€ 調理器具、バスタオル、電気ケト

    ル、ドライヤー、物干し竿など

    食費 約 250€/月 基本自炊。外食代含まず

    旅行費 約 1,800€

    (各自により大きく変動します)

    毎週土曜日に遠出していました

    正直ドイツ国内をかなり旅行しま

    したが、旅行先で豪遊とかはして

    いません。またその際宿泊はして

    いません。食事代,お土産代等

    含みます。参考までに。