Interview - Yaskawa

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Interview MECHATROLINK は安川電機が 1995 年に開発したモーション フィールドネットワークです。開発当初の伝送速度は 4Mbps で、 その後モーションコマンドの整備と伝送速度を 10Mbps と高速 化し、現在の MECHATROLINK - II となりました。 2003 年には ネットワークのオープン化かつデファクトスタンダード化を目指 し、 MECHATROLINK MEMBERS CLUB (略称: MMC )が 発足し、 2005 10 月には日本発のモーションフィールドネット ワークとして MECHATROLIN Kを真にオープン化することを 目的に、 MECHATROLINK 協会(略称: MMA )へと発展改組 しました。 今回、 MECHATROLINK 協会の事務局長田中氏をお訪ねし、 MECHATROLINK の現状と展望について伺いました。 MECHATROLINK 対応製品 MECHATROLINK 製品カタログ モーションオープンネットワーク 協会を設立してからもうすぐ1年になりますが、 振り返っていかがですか? 大変多くのユーザーやベンダー企業 の方々から興味をもって頂くことができ ました。協会の会員数も160社に達し、 2006年度末には200社に届きそうです。 また最近では海外からの入会が増加して おり、ますますグローバルオープンネット ワークとして認められつつあります。 MECHATROLINK は他のオープンネットワーク と比較してどのような違いがありますか? オープンネットワークにはいろいろ あると思いますが、 MECHATROLINK は、高速の同期モーション制御を実現し、 低コストでかつ簡単に回路を実装する ことが出来ます。また、日本から出発した 唯一のモーションオープンネットワーク で、日本を中心とした機器ベンダーから 多くの対応製品が発売されており、この 動きは世界からも注目を集めてい ます。 最近の各オープンネットワーク団体 は、従来の10Mbpsクラスのネットワーク から、100MbpsクラスのEthernetを ベースにした高速ネットワークに移行 しつつあります。 MECHATROLINK ついても、来年の夏頃に100Mbpsの高速 通信である「 MECHATROLINK -IIIⅢを 発表します。会員各社からも徐々に対応 した製品が発売されると思われます。 MECHATROLINK -IIIⅢでは、業界最 速の31μsecの伝送周期を実現します。 対応製品が増えているようですが、詳しく教 えて下さい。 MECHATROLINK 対応製品は110 製品くらいになりました。中には、 一品一様に使用される協会会員企業の MECHATROLINK 対応製品も含めます が、累積出荷数は約24万台強となって おり、今年度は35万台に達成する見込み です。具体的には、サーボドライブ、イン バータ、 IO機器などがあります。今後は、 温調器、スライダや、バルブ、スリップ リング、ケーブルキットなどの対応製品 も増やしていく予定です。 7 月に、製品カタログも公開したそうですね? はい。今回 MECHATROLINK 製品 カタログを作成し、WEBに公開してい ますので、ぜひ見て下さい。現在開発中の メーカーも数多くあり、引き続きカタログ への追加が進んでいます。ユーザーの 方々がさらに選択しやすい製品ライン ナップが整いつつあります。 0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 03/Q1 02/Q4 03/Q2 03/Q3 03/Q4 04/Q1 04/Q2 04/Q3 04/Q4 05/Q1 05/Q2 05/Q3 05/Q4 06/Q1 会員数 会員数推移 本: 70 >> 107 アジア: 12 >> 20 米: 10 >> 14 州: 6 >> 23 12 22 29 42 51 58 67 82 98 109 124 136 146 164 164 MMCのメンバーを引き継ぐ 注: Q1: 13Q2: 46Q3: 79Q4: 1012コントローラと様々なスレーブ機器を MECHATROLINK て省配線でフレキシブルなシステムに組上げることができます。 MECHATROLINK の同期性確保技術により多軸補間、電子 CAM 、電子シャフトなどの制御が可能で性能を確保すること ができます。 1 つの ASIC で独立 30 軸制御や多軸多系統制御に、さらに複数 ASIC を同期させて複雑なシステムにも適用できます。 ASIC 上に通信異常検出とリトライ機能をもち、十分な信頼性 を確保しています。 2 YASKAWA NEWS No. 276 YASKAWA NEWS No. 276 3 プラスチックテープ加工機 切断機 ラベル貼り機 巻線機 MECHATROLINK 協会 事務局長田中氏が語る アプリケーションの観点からみた MECHATROLINK の特長 アプリケーション事例 広がる 繋がる 増える MECHATROLINK-II MECHATROLINK -IIIの仕様比較 伝送速度 伝送周期 伝送バイト数(byte、情報部) 最大接続局数 最大伝送距離 最小局間距離 接続形態 同期/非同期通信 メッセージ通信 リトライ機能 他局モニタ機能付きスレーブ 多軸サーボ対応 ゲートウェイ 機能仕様 100 Mbps 31.25 μsec64msec 8/16/32/48/64 最大62局間100m 制限なし カスケード/スター/Peer To Peer 同期/非同期通信 メッセージ通信可 最大62局(n回/1局) あり マルチ局アドレス対応 M-III → M-II変換ユニット MECHATROLINK-III 10 Mbps 250 μsec8msec 16/32 最大3050m 50cm バス型 同期通信 非公開 最大7局(1回/1局) なし MECHATROLINK-II マスタ SYSMAC CS/CJ シリーズ用 モーションコントロールユニット (オムロン殿製) マスタ レンジフリー コントローラ FA-M3R (横河電機殿製) スレーブ C-580 シリーズ ステッピング&サーボモータ用 コントローラ(メレック殿製) http://www.mechatrolink.org/ 「製品カタログ」Click 豊富な選択肢 詳しくは「製品カタログ」をご覧になってください MECHATROLINK協会 MECHATROLINK 協会 事務局長 田中 毅氏

Transcript of Interview - Yaskawa

Page 1: Interview - Yaskawa

Interview

MECHATROLINKは安川電機が1995年に開発したモーション

フィールドネットワークです。開発当初の伝送速度は4Mbpsで、

その後モーションコマンドの整備と伝送速度を10Mbpsと高速

化し、現在のMECHATROLINK-IIとなりました。2003年には

ネットワークのオープン化かつデファクトスタンダード化を目指

し、MECHATROLINK MEMBERS CLUB(略称:MMC)が

発足し、2005年10月には日本発のモーションフィールドネット

ワークとしてMECHATROLINKを真にオープン化することを

目的に、MECHATROLINK協会(略称:MMA)へと発展改組

しました。

今回、MECHATROLINK協会の事務局長田中氏をお訪ねし、

MECHATROLINKの現状と展望について伺いました。

MECHATROLINK対応製品

MECHATROLINK製品カタログ

モーションオープンネットワーク

協会を設立してからもうすぐ1年になりますが、

振り返っていかがですか?

 大変多くのユーザーやベンダー企業

の方々から興味をもって頂くことができ

ました。協会の会員数も160社に達し、

2006年度末には200社に届きそうです。

また最近では海外からの入会が増加して

おり、ますますグローバルなオープンネット

ワークとして認められつつあります。

MECHATROLINKは他のオープンネットワークと比較してどのような違いがありますか?

 オープンネットワークにはいろいろ

あると思いますが、MECHATROLINK

は、高速の同期モーション制御を実現し、

低コストでかつ簡単に回路を実装する

ことが出来ます。また、日本から出発した

唯一のモーションオープンネットワーク

で、日本を中心とした機器ベンダーから

多くの対応製品が発売されており、この

動きは世界からも注目を集めてい

ます。

 最近の各オープンネットワーク団体

は、従来の10Mbpsクラスのネットワーク

から、100MbpsクラスのEthernetを

ベースにした高速ネットワークに移行

しつつあります。MECHATROLINKに

ついても、来年の夏頃に100Mbpsの高速

通信である「MECHATROLINK-IIIⅢを

発表します。会員各社からも徐々に対応

した製品が発売されると思われます。

「MECHATROLINK-IIIⅢでは、業界最

速の31μsecの伝送周期を実現します。

対応製品が増えているようですが、詳しく教

えて下さい。

 MECHATROLINK対応製品は110

製品くらいになりました。中には、

一品一様に使用される協会会員企業の

MECHATROLINK対応製品も含めます

が、累積出荷数は約24万台強となって

おり、今年度は35万台に達成する見込み

です。具体的には、サーボドライブ、イン

バータ、IO機器などがあります。今後は、

温調器、スライダや、バルブ、スリップ

リング、ケーブルキットなどの対応製品

も増やしていく予定です。

7月に、製品カタログも公開したそうですね?

 はい。今回MECHATROLINK製品

カタログを作成し、WEBに公開してい

ますので、ぜひ見て下さい。現在開発中の

メーカーも数多くあり、引き続きカタログ

への追加が進んでいます。ユーザーの

方々がさらに選択しやすい製品ライン

ナップが整いつつあります。 

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

03年/Q102年/Q4 03年/Q2 03年/Q3 03年/Q4 04年/Q1 04年/Q2 04年/Q3 04年/Q4 05年/Q1 05年/Q2 05年/Q3 05年/Q4 06年/Q1

会員数

会員数推移

日 本: 70 >> 107 社 アジア: 12 >> 20 社 北 米: 10 >> 14 社 欧 州: 6 >> 23 社

1222

2942

5158

6782

98109

124136

146

164164

MMCのメンバーを引き継ぐ

注: Q1: 1月~3月 Q2: 4月~6月 Q3: 7月~9月 Q4: 10月~12月

・コントローラと様々なスレーブ機器をMECHATROLINKに

て省配線でフレキシブルなシステムに組上げることができます。

・MECHATROLINKの同期性確保技術により多軸補間、電子

CAM、電子シャフトなどの制御が可能で性能を確保すること

ができます。 ・1つのASICで独立30軸制御や多軸多系統制御に、さらに複数

のASICを同期させて複雑なシステムにも適用できます。

・ASIC上に通信異常検出とリトライ機能をもち、十分な信頼性

を確保しています。

2 YASKAWA NEWS No. 276 YASKAWA NEWS No. 276  3

プラスチックテープ加工機

切断機

ラベル貼り機

巻線機

MECHATROLINK協会 事務局長田中氏が語る

アプリケーションの観点からみたMECHATROLINKの特長

アプリケーション

事例

広がる

繋がる

増える

MECHATROLINK-II と MECHATROLINK-IIIの仕様比較

伝送速度

伝送周期

伝送バイト数(byte、

情報部)

最大接続局数

最大伝送距離

最小局間距離

接続形態

同期/非同期通信

メッセージ通信

リトライ機能

他局モニタ機能付きス

レーブ

多軸サーボ対応

ゲートウェイ

機能仕様

100 Mbps

31.25μsec~ 64msec

8/16/32/48/64

最大62局

局間100m

制限なし

カスケード/スター/

Peer To Peer

同期/非同期通信

メッセージ通信可

最大62局(n回/1局)

あり

マルチ局アドレス

対応

M-III → M-II変換

ユニット

MECHATROLINK-III

10 Mbps

250μsec~ 8msec

16/32

最大30局

50m

50cm

バス型

同期通信

非公開

最大7局(1回/1局)

なし

MECHATROLINK-II

マスタ SYSMAC CS/CJシリーズ用 モーションコントロールユニット (オムロン殿製)

マスタ レンジフリー コントローラ FA-M3R (横河電機殿製)

スレーブ C-580シリーズ ステッピング&サーボモータ用 コントローラ(メレック殿製)

http://www.mechatrolink.org/「製品カタログ」をClick!

豊富な選択肢 詳しくは「製品カタログ」をご覧になってください

MECHATROLINK協会

MECHATROLINK協会 事務局長 田中 毅氏

Page 2: Interview - Yaskawa

MMA Germany

MMA Korea

Interview

MECHATROLINK協会 事務局 TEL: 04-2962-7920 FAX: 04-2962-5913

本特集に関するお問い合せ先

4 YASKAWA NEWS No. 276 YASKAWA NEWS No. 276  5

MECHATROLINKの明日

MECHATROLINKの著しい発展は、協会の様々な活動の成果だと思います。とく

に、昨年11月のSCF2005では、協会として初めてのブースを展示されたそうですが、い

かがでしたか?

 4日間で約1200名の方に協会ブースへ

ご来場いただきました。初めての出展に

しては成功だったと思います。特に最終

日の朝一番で、会場全てのブースにあい

さつをして回ったのが忘れられません。

今年2月に協会ホームページをリニューアルされましたが、反響はいかがですか?

 アクセス数は急激に増加しましたね。

新着情報や、技術資料の更新などにより、

非常に活発な協会であることを皆様に

ご理解していただけたと思います。それ

に加えてメルマガを発信し、会員各社へ

積極的に情報を提供しています。

2006年度の活動内容をお聞かせ下さい。

 2006年度は次のような活動を考えて

います。まずは、7月から米国、欧州、韓国

においてMECHATROLINK協会の支部

を設立し活動を開始しました。これに

より、海外の会員各社に対して、その国

の言葉で技術サポートを実施することが

でき、より近くで対応することが可能

になります。

 それから、半導体・液晶製造装置の

アプリケーションにおいて、さらに

MECHATROLINKを使い易くするため

に、SEMI規格E54を取得します。会員

企業から構成されるタスクフォースを

SEMIジャパン内部に設置し、規格化の

活動を本格化しています。

 また、開発セミナーを各地で開催し、

MECHATROLINKの採用を検討して

いる方や、開発を行う予定の方に、トレー

ニングを実施する予定です。また、必要

に応じて個別セミナーなども準備して

います。

今後の展示会予定を教えていただけますか?

 日本では、12月に開催されるSEMICON

JAPAN 2006に協会ブースを出展しま

す。今回は協会で行う全体展示でより

多くの製品の接続性をアピールし、会員

各社からの個別展示では13社程の対応

製品展示を予定しています。また、SEMI

規格取得が順調に進めば、期間中の

セミナーでMECHATROLINKのSEMI

規格対応についても発表したいと思って

います。

 それから、11月に横浜で開催される

MOF2006(Manufacturing Open Forum

2006)にも出展します。

 海外では、11月にドイツで開催される

SPS/IPC/Drivesに出展を予定してい

ます。これは欧州での始めての展示会

参加になりますので期待しています。

いよいよヨーロッパでデビューします。

最後になりますが、将来に向けての展望を

お聞かせください。

 そうですね、まずは装置メーカーに

対しては、省配線によるメリットを出し

ながら最高性能と使い易さを提供し

たいですね。使いたい機器が各社から

発売されていて、入手したらすぐ動く。

それがオープンネットワークである

ことによる利点だと思います。

 一方で、機器ベンダー企業に対して

は、「MECHATROLINKに対応したら

製品が売れる」というようにしたいで

すね。小さな1製品でも、連携すること

で非常に大きな力を発揮します。企業

は連携することが重要です。

 MECHATROLINKをその一つのツール

として使ってもらいながら、お互いに

連携して成長していきたいと思います。

MECHATROLINKを世界に通用する

モーションのオープンネットワーク

に育てていくつもりです。

MECHATROLINKの展望

MMA Japan

MMA Office

MMA US

米国支部

ドイツ支部 韓国支部 e-mail: [email protected]

e-mail: [email protected]

e-mail: [email protected]

日本本部 e-mail: [email protected]

   2005年度

実行する    2006年度

MMA本部と支部の分布図

2006年協会総会懇親会

2005年展示会会場風景

2006年協会セミナ風景

振り返る

展望する

メモ: SEMI規格とは

世界中の半導体・液晶製造装置において広く利用されている装置、材料業界の自主基準です。12分野700超の規格が整備されています。その中、センサーバスの規格としてセンサーアクチュエータネットワーク(SAN)「E54」があり、CDM、SDM、NCSからなります。 DeviceNet、 LonWorks、Profibus、Ethernet/IP、Modbus/tcp などが規格化され利用されています。

http://www.mechatrolink.org/

会員専用ページ 一般公開ページ

MMA協会ホームページ

コラム: 業界の動向

 一般的には、M&C業界では精度やスピードの向上

とともにパルス制御、速度制御からデジタル量で表現

して速やかに指令するモーションフィールドネットワーク

の採用が日増しに増えてきております。サーボのネット

ワーク化は30%とも40%ともいわれています。この

傾向は、高速高精度、省スペース、省配線化などの要求

により、ますます顕著になると思われます。制御要素

の多様化もありその制御に必要なコントロールデータ

を一度にスレーブ機器へ渡せる為、アクチュエータの

能力を高め、かつ先端の機械システムを構築できる

こととなります。  フィールドネットワークに対しては、高速化、高精度

化はもとより、データ長の増大、メッセージの拡大等が

求められています。このためEthernet等を媒体とする

高速なネットワークへの切り替えがさらに加速するで

しょう。MECHATROLINKにおいてもEthernet対応

のM-IIIの開発を進めており、世界最速のフィールド

ネットワークの提供を目指しています。また、よりオー

プンにするためにIEC、SEMIなどの規格対応や安全

性を考慮したネットワークがますます要求され、対応

が望まれます。M-IIIをはじめ各ネットワーク陣営は

これらの要求にこたえるべく凌ぎを削っていくことに

なるでしょう。