Individual differences in category learning Memorization versus...
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Individual differences in category learning: Memorization versus rule abstraction Jeri L. Little & Mark A. McDaniel
Memory & Cognition, Vol. 43, No. 2, pp. 283-297, 2015
• カテゴリ学習における 2つのアプローチ
− 事例ベースアプローチ (exemplar-based approach)
> 各カテゴリセットの表象を獲得
> 新規事例は,蓄積された事例との類似度に基づき分類
> ルールが曖昧・事例が少ないなど,高次な構造の課題に適している
(Ashby & Ell, 2001; Smith & Minda, 1998)
− ルールベースアプローチ (rule-based approach)
> 分類を決定するルールを獲得
> 新規事例は,その獲得したルールに基づき分類
> 論理的ルールが分類を決めるなど,低次な構造の課題に適している
(e.g., Bourne, 1974; Little, Nosofsky, & Denton, 2011; Nosofsky, Palmeri, & McKinley, 1994)
• 従来のモデルアプローチでは,どちらが適用されるかは構造や刺激でのみ決定される
(e.g., Anderson & Betz, 2001; Ashby et al., 1998; Bott & Heit, 2004; Erickson & Kruschke, 1998)
Individual differences: Assessing learning orientations and underlying representations
• 一方,本研究では,少なくとも一部は個人差によって方略・表象が決定されるという前提に立つ
− 個人差の影響を示した先行研究
> スキル獲得 (Bourne, Healy, Parker, & Rickard, 1999; Bourne, Raymond, & Healy, 2010)
> 複数手がかりの判断 (e.g., Juslin, Jones, Olsson, & Winman, 2003; Juslin, Olsson, & Olsson, 2003)
> 概念学習 (McDaniel, Cahill, Robbins, & Wiener, 2014)
• 本研究では,カテゴリ学習時のルールベース方略・事例ベース方略の使用に関する個人差に着目
− 自己報告や転移項目への反応時間などの指標から,カテゴリ学習過程や表象を明らかにする
• 研究方針
− 転移項目への反応で,獲得した表象を確認
> 研究 1: 方略で期待反応が異なる曖昧転移項目 (Little & Lewandowsky, 2009)
> 研究 2: ルールベース向け・事例ベース向けの転移項目
2017/02/13 松林
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− アンケートで,方略の学習志向性 (learning orientation) を確認
> 7件法 (記憶・類似度に依存 ~ ルール抽出に依存) で自己報告
− 転移項目への反応時間で,表象と方略を確認
− 学習志向性と他の認知指標との関係を確認
> ワーキングメモリ (Turner & Engle, 1989)
> 流動性知性 (Raven’s Advanced Progressive Matrices: RAPM; Raven, Raven, & Court, 1998)
• 仮説
− ワーキングメモリと流動性知性の成績は,ルールベース方略の選択と関連する
> 仮説検証に影響するため (Ashby et al., 1998; Bourne, 1974; Trabasso & Bower, 1968)
− ワーキングメモリと流動的知性は,カテゴリ学習の個人差を生じさせない
> 本課題はルール抽出方略・記憶方略の両方とも適用可能なため
− 流動性知性は,視覚-空間に関するルールにおいてのみ,学習速度を予測する
> RAPMは視覚-空間的認知能力の指標であるため
Study 1
Method
Participants
• ワシントン大学の学生 93名
Procedure and materials
• 全体の流れ
− 図形カテゴリ課題
− 図形カテゴリ課題遂行中の志向性に関するアンケート
− ワーキングメモリ課題 (OSpan)
− フィラー課題
− RAPM課題
Shape categorization task
• 訓練フェーズで用いる 12種類の項目 (Fig. 1)
− 1項目は 2つの色付き図形で構成 (e.g., 黒い星と赤い三角) され,片方 (外側) が他方 (内側) を内包
− カテゴリは内側・外側の図形に関する特徴関係ルールで決定
> 内側・外側の図形の形または色が一致した場合 (Fig. 1右) は“blickets”,
どちらも一致しない場合 (Fig. 1左) は“daxes”
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• 訓練フェーズ
− 1試行の流れ
> 1項目がスクリーンに提示
> カテゴリ判断をタイピングで 8 s以内に回答
> フィードバックを 2 s提示 (e.g., “This is a blicket”)
− 12試行を 1ブロックとし,全 6ブロック実施
> 1ブロック内で同じカテゴリの項目が 3回以上続くことはないよう調整
− ルール発見を促す教示なし
• 転移フェーズ
− 旧項目 4問,新項目 8問のカテゴリを判断
> 新旧項目の判断があることは事前に教示
− 新項目への反応で,参加者の方略・表象を検証 (Fig. 2)
> 非曖昧転移項目 (unambiguous transfer items)
知覚的類似性とルールのどちらに基づいても,同一のカテゴリ判断が期待
> 曖昧転移項目 (ambiguous transfer items)
知覚的類似性とルールのどちらに基づくかで,異なるカテゴリ判断が期待
Questionnaire
• 訓練フェーズ・転移フェーズ遂行中の志向性について 7件法で回答
− 訓練フェーズ 1 (記憶のみに注力) ~ 7 (ルール発見のみに注力)
− 転移フェーズ 1 (物理的な類似性のみに着目) ~ 7 (類似性を無視し,ルールのみに着目)
• 発見した,または思いつく中で最善の分類ルールを記述
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Results
Self-reported orientation
• 訓練フェーズ・転移フェーズの志向性は,正の相関あり (r (93) = .76, p < .001)
− 学習志向性には個人差があった
• 1~3 点を付けた 34 名を記憶群 (memorizers),5~7 点を付けた 48 名をルール抽出群 (rule-abstractors) に
分類し,4点を付けた 8名を分析から除外
− ルール群のうち 24名は正しいルールを,14名は正しいルールの一部を記入
Training performance
• 訓練フェーズで 12試行中 11試行を正答できた場合を,“学習基準達成“と見なす
− ブロック 5までに達した人数 ルール群 (41名, 85%) > 記憶群 (23名, 68%)
> 到達ブロック数 ルール群 (M = 3.37, SE = 0.20) < 記憶群 (M = 4.52, SE = 0.29)
(t (62) = 3.37, p < .01)
• 両群の学習方略は質的に異なっていた
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Transfer performance
• 学習基準に達した参加者の,転移フェーズの得点 (Fig. 3)
− 訓練項目 ルール群 ≒ 記憶群 (t (62) = 0.77, p = .45)
− 非曖昧項目 ルール群 ≒ 記憶群 (t (62) = 0.28, p = .78)
− 曖昧項目 ルール群 > 記憶群 (t (62) = 5.95, p < .001)
• 類似性に従った場合とルールに従った場合で,曖昧項目のカテゴリ分類が異なった
OSpan and RAPM
• OSpanと RAPMは正の相関 (r (78) = .31, p < .01) (Kane et al., 2005; Wiley, Jarosz, Cushen, & Colflesh, 2011)
• 学習基準に達した参加者
− OSpan得点 ルール群 (n = 33, M = 30.6, SE = 1.8) ≒ 記憶群 (n = 19, M = 31.1, SE = 2.2)
(t (60)= 0.19, p = .85)
− RAPM得点 ルール群 (n = 39, M = 7.6, SE = 0.4) ≒ 記憶群 (n = 23, M = 6.9, SE = 0.6)
(t (60)= 0.94, p = .35)
> RAPM得点と曖昧項目の成績との相関は,両群間に有意差あり (p < .01)
∗ ルール群 有意 (r (39) = .42, p < .01)
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∗ 記憶群 非有意 (r (23) = -.30, p = .16)
• ルールを抽出・適用する能力の高さは,その学習者がルール志向的になるかどうかには無関係だが,もし
ルール志向的になればルール抽出を必要とする課題で学習の転移を促進する
Discussion
• 本課題では,学習志向性とその後の表象に関する個人差を捉えることができた
− ルール抽出に注力したと報告した学習者 ルールベース表象と一致する転移
− 記憶に注力したと報告した学習者 事例ベース表象と一致する転移
Study 2
• 図形カテゴリ課題では,両方略の出現が十分に統制できていなかった
− ルール・記憶という“方略の差”ではなく,特徴関係ルール・単一特徴ルールという“ルールの差”であ
った可能性を否定できない
• 研究 2では,単一特徴でルールが決定される文字列カテゴリ課題を使用
− 合わせて,転移項目に対する反応時間からも方略・表象を検証
• 仮説
− 文字列課題の方略・転移成績は,図形課題の方略・転移成績と…
> 負の相関を示す (“ルールの差”)
∗ 文字列課題では,特徴関係の探索に固執すると学習が遅れるため (e.g., Levine, 1975)
> 相関しない (直前の経験に依存する“方略の差”)
∗ 汎用的なルール抽出の経験として転移し,文字列課題では大半がルール志向に移行
> 正の相関を示す (個人差に依存する“方略の差”)
∗ ルール抽出方略・記憶方略のどちらに依存するかは個人差
Method
Participants
• ワシントン大学の学生 110名
Procedure and materials
• セッション 1
− 図形カテゴリ課題
− ワーキングメモリ課題 (OSpan・文字-数字系列課題)
− RAPM課題
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• セッション 2 (セッション 1から 1週間後)
− フィラー課題
− 文字列カテゴリ課題
− 課題遂行中の方略に関するアンケート・一般的な学習に関するアンケート
Shape categorization task
• 以下の変更点を除き,研究 1と同様
− 6ブロックから 8ブロックに変更
− 後の文字列課題への影響を懸念し,学習志向性の自己報告を削除
Letter-string categorization task
• 図形課題から以下の点を変更
− “単語学習課題”と教示
− 文字列から,植物か動物をカテゴリ判断
> 最後の文字 (“k” or “t”) によりカテゴリが決定
− 転移フェーズの新項目として,以下の 3種類を 4問ずつ設定 (Fig. 4)
> 曖昧項目 訓練項目から最後の文字だけを入れ替え (“k” ⇔ “t”)
記憶群・ルール群の反応時間には差がないことを期待
> ルール向け項目 訓練項目と語感は異なるが,最後の文字が“k” or “t”
ルール群に比べ,記憶群は反応時間が長くなることを期待
> 事例向け項目 訓練項目と語感が似ているが,最後の文字が新規 (i.e., “g”)
記憶群に比べ,ルール群は反応時間が長くなることを期待
Letter-string questionnaire
• 以下の追加設問を除き,研究 1と同様
− “単語学習課題から以前の課題を思い浮かべたか”
− “以前の課題が単語学習課題の方略に影響したか”
Results and discussion
• 以下では文字列課題の結果を,研究 1とほぼ同じ分析方法で示す
− セッション 2に戻ってこなかった 3名の参加者を除外
Self-reported orientation
• 訓練フェーズと転移フェーズの志向性は,正の相関 (r (107)= .76, p < .001)
• 自己報告の点数から,ルール群 53名と記憶群 49名に群分けし,5名を除外
2017/02/13 松林
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− 自己報告はルール志向だったが,その内容が語呂合わせだった 4名は記憶群と見なした
− ルール群 53名中,23名が正しいルールを,18名が正しいルールの一部を記述した
Training performance
• 学習基準に達した人数 ルール群 (47名, 89%) ≒ 記憶群 (40名, 82%)
− 到達ブロック数 ルール群 (M = 3.40, SE = 0.29) ≦ 記憶群 (M = 4.05, SE = 0.25)
(t (85) = 1.65, p < .10)
Transfer performance
• 訓練項目の得点
− ルール群 (M = 3.98, SE = 0.02) ≒ 記憶群 (M = 3.85, SE = 0.08)
• 曖昧項目・ルール向け項目
− ルールカテゴリ得点 (Fig. 5)
> 曖昧項目 ルール群 > 記憶群 (t (77) = 8.32, p < .001)
> ルール向け項目 ルール群 > 記憶群 (t (85) = 4.46, p < .001)
− 反応時間
> 曖昧項目 ルール群 (M = 1,678, SE = 84.0) ≒ 記憶群 (M = 1,593, SE = 108)
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(t (84)= 0.60, p = .55)
> ルール向け項目 ルール群 (M = 1,403, SE = 123) < 記憶群 (M = 2,459, SE = 159)
(t (84) = 5.32, p < .001)
> 記憶群 曖昧項目 (M = 1,593, SE = 108) < ルール向け項目 (M = 2,459, SE = 159)
(t (39) = 4.38, p < .001)
• ルール向け項目では,記憶群はそれまでの類似度に基づく分類手法を使えずに混乱していた
• 曖昧項目・事例向け項目
− 事例カテゴリ得点 (Fig. 6)
> 事例向け項目 ルール群 < 記憶群 (t (84) = 5.22, p < .001)
− 反応時間
> 事例向け項目 ルール群 (M = 2,328, SE = 204) > 記憶群 (M = 1,784, SE = 102)
(t (66) = 2.39, p = .02)
> 記憶群 曖昧項目 (M = 1,593, SE = 108) ≒ 事例向け項目 (M = 1,784, SE = 102)
(t (39) = 1.21, p = .24)
• 事例向け項目では,ルール群はそれまでのルールに基づく分類手法が使えずに混乱していた
Working memory and RAPM
• OSpanと文字-数字系列課題は正の相関 (r (109) = .41, p < .01)
• それぞれを z得点化した後に平均した統合 zWMCは,RAPMと正の相関 (r (109) = .36, p < .001)
• zWMC・RAPMそれぞれにおいて,群間で有意差なし (t (84) = 1.54, p = .13; t (85) = 0.14, p = .89)
2017/02/13 松林
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• 文字列課題では方略に関係なく,認知能力が高いほど学習が速かった
− 学習基準到達ブロック数は,zWMC・RAPMそれぞれと負の相関
(r (90) = -.29, p < .01; r (91) = -.21, p < .05)
• ただしルール群に限ると,学習基準到達ブロック数と RAPMに相関なし (r (47) = .12, p = .44)
− 図形課題と異なり,文字列課題には視覚-空間的要素がないため
Shape categorization task
• 図形課題で生じた群間の差は,特徴関係ルール・単一特徴ルールという“ルールの差”ではなかった
− 図形課題・文字列課題の転移得点 相関なし (r (78) = .10, p = .36)
• また,ルール抽出の経験が後続の課題に転移することもなかった
− 文字列課題で,ルールベース方略を取る参加者が大半を占めることはなかった
Strategy persistence and change
• 文字列課題遂行時に,図形課題との関連に気づいた参加者は少なかった
− 図形課題でルールベース表象を形成した142名中,17名 (40%)
− 図形課題で事例ベース表象を形成した231名中,13名 (42%)
• 両課題の関連への気づきの有無は,文字列課題の学習速度に影響していた (F (1, 69) = 4.23, p = .04)
− 学習基準到達ブロック数
> 図形課題でルールベース表象を形成した参加者
気づきあり (M = 2.6, SE = 0.34) < 気づきなし (M = 4.4, SE = 0.38) (t (40) = 3.15, p < .001)
> 図形課題で事例ベース表象を形成した参加者
気づきあり (M = 4.2, SE = 0.42) ≒ 気づきなし (M = 4.2, SE = 0.43) (t (29) = 0.02, p = .98)
• 特徴関係ルールを使用した記憶への気づきは,単一特徴ルールの抽出を抑制せずむしろ促進する
General discussion
• 本研究では,2 つの課題 (図形・文字列),2 つのルール (特徴関係・単一特徴) を用いることで,ルール
ベース表象・事例ベース表象への依存には個人差があることを示した
− 参加者が自己報告した方略から,その人のカテゴリ分類・反応時間を予測できた
• 方略の選択に認知能力 (ワーキングメモリ・流動性知性) は無関係だった
− ただ,RAPMは,視覚-空間的課題におけるルール群の転移成績のみ関連が見られた (研究 1)
− また,zWMC・RAPMは,文字列課題の学習速度と関連が見られた (研究 2)
1 図形課題で 75%以上の曖昧項目をルールで分類した参加者を,“ルールベース表象形成”と見なした 2 図形課題で 75%以上の曖昧項目を事例で分類した参加者を,“事例ベース表象形成”と見なした
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• 本課題はルール抽出を行う学習者だけでなく,事例表象を蓄積する学習者にも適していた
− これにより,個人差の影響をより明確に示すことができた
• また,学習者が自己報告した方略で転移成績をうまく予測できた点は,新たな知見である
• 今回の結果は高次認知の知見とも一致している
− 刺激がうまく分類できるようになった後,分類ルールの適用に依存する人もいれば,記憶からの再
生に依存する人もいる (Bourne et al., 2010)
− 機能学習課題では,入出力の記憶に依存する人もいれば,機能の抽象化に依存する人もいる
(McDaniel et al., 2014)
Other measures of individual differences
• 先行研究と異なり,図形課題では OSpanから学習速度を予測できなかった
(Craig & Lewandowsky, 2012; DeCaro, Thomas, & Beilock, 2008)
− ワーキングメモリが必要になるのは,1次元のカテゴリ構造に限定されるため (Lewandowsky, 2011)
• OSpan単独では学習速度を十分予測できないことから,個人差の検証には統合的なワーキングメモリ指標
を用いる必要性も示唆された
Conclusion
• カテゴリ学習課題における,顕在的な方略使用に関する質的な個人差を検討した
− 自己報告の方略・転移項目の分類成績・反応時間から,2つの方略の質的な違いを明らかにした
− これらの方略は認知能力とは分離できるものもあった
− 今後はこれらの方略の質的な差をもたらす兆候を明らかにすることが必要