IMCB - 東京大学...Oncostatin M(OSM)が誘導され、...

24
当研究分野では、肝臓の発生・再生のメカニズムやiPS細胞からの肝臓および膵臓細胞への分化誘導系の 開発などの研究を行っていますが、今回は肝臓の再生に関する話題を紹介します。 肝臓は体内における最大重量の実質臓器で、各種の代謝、解毒、胆汁の産生、血清タンパク質の産生など 多種多様な機能により生体の恒常性を保っています。ギリシャ神話のプロメテウスは、火を人類に与えたこ とでゼウスの怒りを買い、岩山に縛り付けられ、鷲に肝臓を喰われますが、肝臓は一夜にして再生しますの で、翌日再び鷲に肝臓を喰われるという拷問が続いたという話です。このように、肝臓の再生能は古くから 知られています。 肝機能の大部分は肝重量の約80%を占める肝細胞が担います。肝臓には小腸で吸収された栄養に富んだ血 液が門脈から流入し、肝特有の毛細血管網である類洞を経由して、中心静脈から肝臓外へと流出します(図 1)。肝細胞が産生する胆汁は肝細胞間に形成された毛細胆管を通って、胆管上皮細胞からなる肝内胆管へ と集められ、肝外胆管を経て最終的に十二指腸へと排出されます。肝細胞と類洞内皮細胞の間のディッセ腔 と呼ばれる間隙に存在する間葉系の星細胞は、障害時に失われた細胞の隙間を埋めるコラーゲンや細胞増殖 因子を分泌します。一方、過剰なコラーゲンの産生は肝線維化の原因となります。 マウスやラットの肝臓の70%を切除すると、残存組織が肥大して、1~2週間で肝臓はその重量と機能を 回復します。この部分肝切除(PHx)後の肝再生には半世紀にわたる研究があり、各肝細胞が1~2回(平 均1.6 回)分裂して肝再生を担うというモデルが長らく信じられてきました。しかし、私どもの解析から、切 除後には、まず残存肝細胞が肥大化し、その後平均0.7回の分裂により修復されることを見出しており、従来 目 次 研究分野紹介(発生・再生研究分野)……………………… 1~4 受賞者紹介…………………………………………………………… 5 転出のご挨拶(金 智慧)………………………………………… 6 着任のご挨拶(藤木克則、山角祐介)…………………………… 7 第21回分生研シンポジウム ……………………………………… 8 平成28年度高校生のためのオープンキャンパス ……………… 9 平成28年度動物慰霊祭 …………………………………………… 9 平成28年度総合防災訓練 ………………………………………… 10 平成28年度第1回分生研研究倫理セミナー ……………………… 10 所内レクリエーション報告………………………………… 11~13 研究室名物行事(発生・再生研究分野)………………………… 14 訃報…………………………………………………………………… 15 お店探訪……………………………………………………………… 16 知ってネット………………………………………………………… 16 編集後記……………………………………………………………… 16 ドクターへの道(境 太希)……………………………………… 17 留学生手記(魏 霞蔚)…………………………………………… 18 海外ウォッチング(深谷雄志)…………………………………… 19 OBの手記(河盛治彦) ……………………………………………… 20 研究紹介(阿部崇志、赤松由布子)……………………………… 21 研究最前線(分子情報研究分野、発生分化構造研究分野、 蛋白質複合体解析研究分野、ゲノム情報解析研究分野) …………………………………………………… 22~24 発生・再生研究分野 教授  宮島 篤 研究分野紹介 発生・再生研究分野 IMCB University of Tokyo 1月号(第57号)2017. 1 東京大学 分子細胞生物学研究所 広報誌

Transcript of IMCB - 東京大学...Oncostatin M(OSM)が誘導され、...

  •  当研究分野では、肝臓の発生・再生のメカニズムやiPS細胞からの肝臓および膵臓細胞への分化誘導系の開発などの研究を行っていますが、今回は肝臓の再生に関する話題を紹介します。

     肝臓は体内における最大重量の実質臓器で、各種の代謝、解毒、胆汁の産生、血清タンパク質の産生など多種多様な機能により生体の恒常性を保っています。ギリシャ神話のプロメテウスは、火を人類に与えたことでゼウスの怒りを買い、岩山に縛り付けられ、鷲に肝臓を喰われますが、肝臓は一夜にして再生しますので、翌日再び鷲に肝臓を喰われるという拷問が続いたという話です。このように、肝臓の再生能は古くから知られています。 肝機能の大部分は肝重量の約80%を占める肝細胞が担います。肝臓には小腸で吸収された栄養に富んだ血液が門脈から流入し、肝特有の毛細血管網である類洞を経由して、中心静脈から肝臓外へと流出します(図1)。肝細胞が産生する胆汁は肝細胞間に形成された毛細胆管を通って、胆管上皮細胞からなる肝内胆管へと集められ、肝外胆管を経て最終的に十二指腸へと排出されます。肝細胞と類洞内皮細胞の間のディッセ腔と呼ばれる間隙に存在する間葉系の星細胞は、障害時に失われた細胞の隙間を埋めるコラーゲンや細胞増殖因子を分泌します。一方、過剰なコラーゲンの産生は肝線維化の原因となります。 マウスやラットの肝臓の70%を切除すると、残存組織が肥大して、1~2週間で肝臓はその重量と機能を回復します。この部分肝切除(PHx)後の肝再生には半世紀にわたる研究があり、各肝細胞が1~2回(平均1.6 回)分裂して肝再生を担うというモデルが長らく信じられてきました。しかし、私どもの解析から、切除後には、まず残存肝細胞が肥大化し、その後平均0.7回の分裂により修復されることを見出しており、従来

    目 次研究分野紹介(発生・再生研究分野) ……………………… 1~4受賞者紹介…………………………………………………………… 5転出のご挨拶(金 智慧) ………………………………………… 6着任のご挨拶(藤木克則、山角祐介) …………………………… 7第21回分生研シンポジウム ……………………………………… 8平成28年度高校生のためのオープンキャンパス ……………… 9平成28年度動物慰霊祭 …………………………………………… 9平成28年度総合防災訓練 …………………………………………10平成28年度第1回分生研研究倫理セミナー ………………………10所内レクリエーション報告………………………………… 11~13研究室名物行事(発生・再生研究分野) …………………………14訃報……………………………………………………………………15

    お店探訪 ………………………………………………………………16知ってネット …………………………………………………………16編集後記 ………………………………………………………………16ドクターへの道(境 太希) ………………………………………17留学生手記(魏 霞蔚) ……………………………………………18海外ウォッチング(深谷雄志) ……………………………………19OBの手記(河盛治彦) ………………………………………………20研究紹介(阿部崇志、赤松由布子) ………………………………21研究最前線 (分子情報研究分野、発生分化構造研究分野、

    蛋白質複合体解析研究分野、ゲノム情報解析研究分野)      …………………………………………………… 22~24

    発生・再生研究分野 教授 宮島 篤

    研究分野紹介 発生・再生研究分野

    IMCBUniversity of Tokyo

    1月号(第57号)2017. 1東京大学 分子細胞生物学研究所 広報誌1

  • の再生モデルの修正を提案しています(図2 Miyaoka et al. Curr Biol 2010, Cell Division 2013)。また、この再生において肝臓の幹細胞が寄与する必要はないと考えています。

    急性肝障害からの再生 肝細胞は均一な細胞集団ではなく、門脈周囲と中心静脈周囲の肝細胞は機能的に異なります。中心静脈周囲の肝細胞は薬物代謝酵素cytochromeを発現しており、アセトアミノフェンや四塩化炭素などを代謝し、その際に産生されるラジカルにより中心静脈周囲に肝細胞死が誘導されますが、残存する肝細胞の増殖により障害部位が修復されます。私たちは、障害肝細胞から放出される因子の一つとしてSemaphorin3e(Sema3e)を同定しました。この分子は類洞内皮細胞に作用して細胞を収縮させ、それにより類洞内皮細胞と接している星細胞の活性化して、コラーゲン産生を誘導して障害部位の組織修復を促進します。一過性の障害では、Sema3e発現は速やかに低下して修復が終了しますが、Sema3eの発現が持続すると、星細胞から産生されるコラーゲンなどが蓄積し肝線維症になることを遺伝子改変マウスやSema3eの肝臓での発現系、培養系などにより示しました(Yagai et al. AJP 2014)。また、肝細胞の障害によりマクロファージが活性化されて、Oncostatin M(OSM)が誘導され、それが星細胞に直接あるいは間接的に作用して、コラーゲンの産生を促進するとともに、マトリクス分解酵素を阻害するTimp1を産生するなど、OSMが肝線維化において重要な役割を果たしていることも示しました(Matsuda et al submitted)。

    肝臓の幹・前駆細胞 肝臓内の上皮系細胞は肝細胞と胆管上皮細胞であり、これらの元となる細胞が肝臓の幹細胞あるいは前駆細胞です。私たちは以前、胎生中期の発生途上の肝臓に発現する細胞膜タンパク質の解析から、肝芽細胞マーカーを同定し、分離した肝芽細胞はin vitroで増殖して肝細胞と胆管上皮細胞へと分化することを示しました(Tanimizu et al JCS 2003, JCS 2004)。肝芽細胞は肝臓の幹細胞あるいは肝前駆細胞(liver progenitor cell; LPC)と考えられています。 成体肝臓においては、成熟した肝細胞は非常にゆっくりとターンオーバーしており、部分肝切除後には残

    図2 部分肝切除(PHx)からの肝再生 マウス肝臓の中葉と左葉で肝臓の70%を占めるが、それらを切除すると残存肝組織が肥大して1-2週間で元の重量に戻る。70%PHx後数時間で、肝細胞の肥大が起こり、続いて肝細胞の増殖が誘導される。このように、細胞肥大が肝切除後の再生に大きく寄与する。

    図1 肝臓の構造 血液は門脈と肝動脈から流入し、肝特有の毛細血管網である類洞を経由して中心静脈から肝臓外へと流出する。類洞壁は類洞内皮細胞と肝星細胞からなる。 胆管と肝細胞の間はヘリング管と呼ばれており、ここに肝幹細胞が存在すると古くから考えられていた。肝細胞の発現する酵素はzoneにより大きく異なる。

    2

  • 存する肝細胞の肥大と増殖により再生します。また、四塩化炭素の単回投与などによる急性肝障害からの修復は、基本的に残存する肝細胞の増殖によるものです。したがって、造血幹細胞や小腸上皮の幹細胞のように定常状態で絶えず増殖性の前駆細胞を生み出す幹細胞が肝臓に存在するかどうかは疑問であり、現在も議論が活発に続いています。 肝細胞が増殖できないような重篤な肝障害により門脈周辺に胆管様構造が増加しますが、この現象は、細胆管増生、偽胆管増生や細胆管反応(ductular reaction)などとも呼ばれています。この胆管様細胞には、胎児期の肝芽細胞のようにin vitroでの増殖能と二分化能を併せ持つ細胞が含まれていることから、それらは肝障害により現れる“Facultative stem cell”であるとする考えが広まり、肝前駆細胞(LPC)とも呼ばれています。しかし、LPCの研究は組織化学的な解析がほとんどで、その実体は長らく不明でした。 マウスでLPCが誘導される肝障害モデルで、LPCの増幅に関与する因子として, 私たちはFGF7を同定しました。FGF7を肝臓で発現するだけで肝障害なしでも LPCをする誘導することを示しました。一方、FGF7欠損マウスでは、肝障害による細胆管増生が著しく減弱し生存率が顕著に低下すること、逆にFGF7を肝臓で発現させることにより肝障害は緩和されることから、LPCは肝障害の緩和・修復に寄与することを明らかにしました(Takase et al. Genes & Dev. 2013)。 また、私たちはLPCが誘導される肝障害により発現誘導される細胞膜タンパク質の解析から、部分肝切除や四塩化炭素の単回投与による肝障害では誘導されず、細胆管増生に伴い発現が誘導される細胞膜タンパク質としてEpCAMを同定しました。障害肝臓からEpCAM陽性細胞を分離して培養すると、in vitroでクローナルに増殖し、二方向性分化能を有する細胞が含まれることがわかりました。一方、EpCAMなどLPCマーカーのほとんどが正常胆管でも発現しており、正常肝臓のEpCAM陽性細胞にも、in vitroでクローナルに増殖し、二方向性分化能を有する細胞が含まれることがわかりました(Okabe et al. Development 2009)。しかし、in vitroで増殖して肝細胞や胆管上皮細胞に分化する細胞がin vivoで定常的に幹細胞として機能していることにはなりません。

    細胆管反応の実態 肝障害により増生した胆管マーカー陽性細胞のLPCは何なのか? 従来の研究では、肝臓切片の免疫染色で胆管マーカー陽性細胞をLPCと定義されていました。しかし、障害により増殖する胆管マーカー陽性細胞が胆管とどういう関係にあるのかという点は、従来の組織切片の免疫染色による解析からでは明らかではありませんでした。 そこで私たちは、総胆管からインクを注入してから肝臓切片を胆管マーカー CK19抗体で染色しました。すると、2次元の肝組織切片上のほぼ全てのCK19陽性細胞クラスターにインクが存在していたことから、障害で増幅した胆管マーカー陽性細胞は胆管の一部であることがわかりました。さらに、インクを注入した肝臓を丸ごと透明化することで胆管の詳細な樹状構造を明らかにすることに成功しました。太い胆管が門脈に並走しており、細い胆管が樹枝状になって門脈に巻きついていること、さらに肝障害により樹枝構造が著しく増幅する様子が認められました。このように、増幅した細胆管は総胆管に接続しており、胆管として機能していると考えられます。すなわち、LPCと考えられていた胆管マーカー陽性の細胞は胆管細胞そのものであるといえます(図3、Kaneko et al Hepatology 2015)。 さらに、胆管の三次元構造を正確に撮影できる実験系を構築し、それを遺伝子改変マウスによる細胞系譜追跡実験と組み合わせることで、マウス体内の単一細胞を長期間追跡し、細胞分裂の回数を測定できる実験系を構築しました。単一細胞の細胞分裂の回数を継時的に計測し、増殖細胞の分布を調べることで、胆管上皮組織中の細胞には、増殖能力の不均一性が認められました。また、増殖性の細胞は胆管の末端部分に存在していました(図4)。さらに、単一細胞由来の細胞クラスターの分布は、腸管の幹細胞ように連続的・安定的に分裂を繰り返す古典的な幹細胞の分裂様式では説明できず、増殖性細胞集団に属する細胞が、高増殖状態から静止状態へと一定の確率でランダムに遷移する確率モデルにフィットしました(Kamimoto et al eLIFE, 2016)。 生体内に肝幹細胞が存在するのか、あるいはLPCが幹細胞として機能するのかという点に関して、近年様々な細胞系譜解析が行われており、障害後に新たに生まれる肝細胞は、残存肝細胞の増殖によるという説と、胆管あるいはLPCから生まれるという説があり、現在も活発な議論が続いています。おそらく、こうし

    3

  • た相反する結果は、肝障害モデルの違いを反映している可能性があります。すなわち、正常肝細胞が残存している障害では、それが増殖することで新たな肝細胞を生み出すが、肝細胞の増殖が著しく制限された状況下では、LPCや胆管から肝細胞が供給されるのではないかと考えています(Miyajima et al Cell Stem Cell 2014)。上述の増殖性胆管細胞LPCから肝細胞が供給されるのか否かについては、現在検討を行っています。

     さらに私たちは、ヒトiPS細胞から増殖性のLPC様細胞を作製し、それがin vitroで肝細胞と胆管上皮細胞へと分化する能力を持つことを示しました(Kido et al. Stem Cell Rep. 2015)。また、肝星細胞や類洞内皮細胞への分化誘導にも成功しております(Koui et al 投稿準備中)。現在、それらを使ってiPS細胞由来の肝組織をin vitroで構築する試みも行っていますが、これについては別の機会に紹介したいと思います。

    図3 細胆管増生 慢性肝障害時には門脈の周囲に胆管上皮細胞のマーカー陽性細胞が増殖する現象が知られている。総胆管からインクを注入してから肝臓を透明化することで胆管の樹枝構造を可視化することができる。障害肝では、微細樹枝構造が増幅している様子が観察される。

    図4 胆管の単一細胞ラベルによる増殖様式の解析 胆管細胞を低頻度でラベルしてから障害による細胆管反応を誘導して増殖する細胞を検出すると、胆管の末端部に増殖性細胞が存在することが示された。

    4

  • 受賞者紹介

    受 賞 者 名:小林 武彦(ゲノム再生研究分野/教授)賞   名:2016年度日本遺伝学会 木原賞受 賞 日:平成28年9月8日受賞課題名:リボソームRNA遺伝子の維持機構とその生理作用の研究

    受 賞 者 名:秋山  徹(分子情報研究分野/教授)賞   名:2016年度日本癌学会 吉田富三賞受 賞 日:平成28年10月8日受賞課題名:細胞がん化に必須な遺伝子群の機能の解明

    受 賞 者 名:橋本 祐一(生体有機化学研究分野/教授)賞   名:Ohdang Distinguished Lectureship Award      (韓国薬学会70周年記念秋季大会)受 賞 日:平成28年10月19日受賞課題名:Structural and Functional Development of Retinoids/Steroids

    受 賞 者 名:豊島  近(膜蛋白質解析研究分野/教授)賞   名:2016年度武田医学賞受 賞 日:平成28年11月14日受賞課題名:イオンポンプの輸送・制御機構の原子構造による解明

    受 賞 者 名:泊  幸秀(RNA機能研究分野/教授)賞   名:第33回(2016年度)井上学術賞受 賞 日:平成29年2月3日予定受賞課題名:RNAサイレンシング複合体の形成とその機能の解明

    5

  • 転出のご挨拶先導的研究教育プログラム 助教 金 智慧

     分生研では、染色体動態研究分野、渡邊研究室で、博士・助教として7年間お世話になりました。私はマウスをモデル生物とした、減数分裂期キネトコアの分子構造・機能の解析を行ってきました。きっかけはソウル大学大学院修士課程在学中に哺乳動物の卵細胞を使った実験をおこなっていた経験から、減数分裂の分子メカニズムを研究したいと思うようになり、分生研渡邊研究室にお世話になることを決めました。その結果、本研究室で同定されていたマウス減数分裂期特異的に動原体に局在する新規タンパク質であるMEIKINの機能解析を行いまして、このタンパク質に欠損をもつマウスの生殖細胞では、減数第1分裂の染色体分配の過程で異常が発生して、正常な染色体数をもつ卵子および精子の産生が起きないことが判明しました。 長年お世話になった分生研生活では、分子生物学の基本や基礎研究の面白さなど、本当に多くのことを学ぶ機会をいただき大変感謝しております。力不足で至らぬことも多かったのですが、常に叱咤激励をいただいた渡邊先生、渡邊研究室の皆様には心から感謝しております。2016年の12月からは韓国の国立がんセンターの研究室にセンター長のフェローシップを受けて、ポスドクとして新たな研究に取り組んでおります。分生研で学んだこと、経験したことを少しでも生かすことができるよう、頑張っていきたいと思います。 最後になりましたが、渡邊先生をはじめ、分生研諸研究室の皆様、分生研事務の皆様には本当にお世話になりました。この場を借りて御礼申し上げますとともに、皆様の益々のご活躍・ご発展を祈念して、 転出の挨拶とさせて頂きます。ありがとうございました。

    6

  • 着任のご挨拶先導的研究教育プログラム 助教 藤木克則

     2016年7月より、ゲノム情報解析研究分野(白髭克彦教授)の先導的研究教育プログラム・助教を拝命いたしました藤木克則と申します。 分生研には2012年より在籍し、昨年度までは日本学術振興会特別研究員(PD)として白髭先生の元、研究をさせていただいておりました。 白髭研究室では、SMCタンパク質とその関連分子を中心として転写・複製制御のメカニズムを次世代シーケンサーによるゲノム学的手法を用いて解析していますが、その中において私は、単一細胞レベルでの転写や複製を観察する新たな研究手法の開発に取り組んでいます。具体的には、マイクロ流体技術によって細胞をひとつずつ微小な液滴に封入し、その液滴中で核酸に各細胞個別のバーコード配列を付加したライブラリを調整し次世代シーケンサーによって核酸配列を解読することで、様々な細胞が混在する条件下で多数の細胞の平均としてしか観察できなかったゲノム/トランスクリプトームを、1細胞の解像度で解析できるようにすることを目指しています。 まだまだ動き出したばかりのプロジェクトではありますが、分生研という素晴らしい研究環境の下、白髭先生やラボの皆さんをはじめ分生研内外の様々な先生方、あるいは工学系や情報系など分野の垣根を超えた多くの共同研究者の皆さんとともに、日々たくさんの刺激を受けながら楽しく研究をさせていただいております。研究所と白髭研究室の発展に貢献できるよう、未熟ですが精一杯努めさせていただきます。今後ともご指導ご鞭撻のほど、どうぞ宜しくお願い申し上げます。

    先導的研究教育プログラム 助教 山角祐介 2016年11月1日付で分子情報研究分野(秋山徹教授)に先導的研究教育プログラム助教として着任いたしました、山角祐介と申します。どうぞ宜しくお願い申し上げます。 私は学部時代は植物のトランスポーターの研究を行っていたのですが、大学院進学ガイダンスの際に秋山教授が説明して下さったがん発症に関わるシグナル伝達経路の研究に大変感銘を受け、分野を大きく変えて、修士課程から分子情報研究分野に進学いたしました。それから12年、秋山教授をはじめ数多くの方々に支えられながら研究を行って参りました。この度、引き続き秋山教授のもとで研究を行う機会をいただきましたこと、心より感謝申し上げます。 私は大学院とポスドクの期間を通じて、RNA結合タンパク質の研究に従事してきました。このタンパク質のノックアウトマウスは体が少し小さいことを除けば一見何の変哲もないマウスなのですが、解析を進めていくにつれて、このタンパク質が実はがん、アレルギー、老化といった様々な生命現象に深く関わっていることがわかってきました。研究対象としている生命現象が多岐に渡るため、新しい実験系を頻繁に立ち上げねばならず四苦八苦の日々ですが、何とか研究を発展させていけるように頑張っていく所存です。また、最近では企業と共同で創薬研究にも取り組んでおり、基礎研究と社会を結ぶ橋渡し的な仕事にも取り組んで参ります。 分生研のみなさまには共同研究等で大変お世話になっており、深く感謝しております。学術的な発見はもちろんのこと、新機序の薬の開発を目指して精一杯努めていきたいと考えております。今後ともご指導、ご鞭撻のほど、どうぞ宜しくお願い申し上げます。

    7

  •  平成28年12月21日(水)に東京大学弥生講堂・一条ホールにて、公益財団法人 応用微生物学・分子細胞生物学研究奨励会との共催により、恒例の分生研シンポジウムが開催されました。今回は、発生・再生研究分野(宮島研究室)当番・運営により、『発生再生のダイナミズムと細胞間相互作用』というテーマにて、この分野の最前線で活躍されている国内外の研究者に最新の研究成果を発表していただきました。年の瀬の慌ただしい時期での開催にもかかわらず、会場には学内外より110名を超える参加をいただきました。このシンポジウムのために誠心誠意準備を進めてきたことが報われたようで、主催者側として、ご参加いただいた皆さまには大変感謝しております。また、いずれのご発表においても講演後には非常に活発な質疑応答が行われ、熱気のこもったディスカッションはシンポジウム後の懇談会の場へと引き継がれました。ご講演いただいた先生方には、あらためまして厚く御礼申し上げます。 運営にあたり、私共には不行き届きの点も多々あったとは存じますが、ご協力いただいた奨励会・事務部の方々をはじめとする皆さま方のおかげをも

    ちまして、無事にシンポジウムおよび懇談会を終えることができました。この場を借りて心より感謝申し上げます。最後に、分生研および本シンポジウムの今後の益々の発展を祈念して、御礼の言葉とさせていただきます。

    《講演プログラム》 講演者名(所属)、「演題名」辻   孝 ( 理化学研究所 多細胞システム形成研

    究センター) 「上皮・間葉相互作用による外胚葉性器官の再生」川口 義弥 (京都大学 iPS細胞研究所) 「膵発生における細胞非自律的制御」 西中村隆一 (熊本大学 発生医学研究所) 「発生学をもとに腎臓を創る」 伊藤  暢 (東京大学 分子細胞生物学研究所) 「肝・胆相互連関に基づく肝臓の再生・維持機構」 Yosuke Mukoyama (National Institutes of Health) 「Building Organ-Specific Vascular Networks」 三浦 正幸 (東京大学 大学院薬学系研究科) 「発生と組織恒常性における細胞死機能の多様性」 (発表順・敬称略)

    担当:発生・再生研究分野 伊藤  暢

    第21回分生研シンポジウム

    8

  • 平成28年度動物慰霊祭

     当研究所では毎年、研究活動に尊い命を捧げてくれた動物達の御霊に感謝と追悼の意を表すため、実験動物慰霊祭を行なっています。今回で19回目となる慰霊祭は、平成28年10月12日(水)午後に、農学部附属動物医療センター奥の動物慰霊碑前において執り行われました。当日は爽やかな秋晴れの空の下で70名の参列者があり、秋山所長からの挨拶と動物実験委員長から一年間の動物実験概要の報告の後、一分間の黙祷と焼香を行いました。 分生研では多くの教職員・学生等が遺伝子改変マウスの作製やその解析、タンパク質の精製、抗体の作製などの目的で実験動物を使用しています。過去1年間の動物使用数はマウス21,069匹、ウサギ1羽という報告でした。ここ数年分生研の動物実験従事者の人数は増えていますが、動物の使用数は20,000匹前後で安定しております。今後も適切な動物実験計画に基づいた3Rの堅守をお願いする次第です。 昨年のこの記事では大村智博士のノーベル医学生理学賞受賞を例に挙げ、生命科学研究に対する社会の期待の高まりについて触れましたが、今年は本学出身の大隅良典博士が同賞を受賞されました。皆様もご存知のように、大隅博士が酵母細胞で発見されたオートファジーに関する知見はその後哺乳細胞で大きく展開され、ヒト疾患を対象とした応用研究にまで発展していますが、この過程において動物実験が果たした役割が必要不可欠であったことは言うまでもありません。動物実験で失われた尊い命を有意義な研究成果にかえられるよう、明確な研究目的をもって動物実験に取り組んでいただくことを、重ねてお願いする次第です。 また動物実験施設の円滑な運営に日々ご尽力いただいておりますJACならびに分生研事務部の皆様に、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

     平成28年8月3日(水)・4日(木)に本郷キャンパスで高校生のための東京大学オープンキャンパス2016が開催され、当所では3日(水)に模擬講義及び研究室見学を実施しました。 午後1時から生命科学総合研究棟B301会議室において、お二人の先生がそれぞれ30分、合計1時間の模擬講義を行いました。 午後3時からは45分間、神経生物学研究分野 多羽田哲也教授を案内役に、東京大学分子細胞生物学研究所―オリンパス―バイオイメージングセンターで「顕微鏡の世界―生命活動を観る」をテーマに、最新の顕微鏡を使用した観察を体験しました。 最先端の生命科学研究の一端に触れてみたいという熱意にあふれた高校生が多く集まり、模擬講義43名、研究室見学8名が参加しました。

     なお、模擬講義内容は下記のとおりです。 ・セントラルドグマって何だ!? RNA機能研究分野  泊 幸秀 教授 ・寿命はなんで決まっているの? ゲノム再生研究分野 小林武彦 教授

    平成28年度高校生のためのオープンキャンパス

    動物実験委員長 岡田由紀

    9

  •  平成28年11月21日(月)に分生研に所属しているすべての学生・研究者・教員を対象に平成28年度第1回分生研研究倫理セミナーを下記のとおり行いました。

    〈セミナー〉・「不正対策室から」  膜蛋白質解析研究分野 豊島 近 教授・「再現性、データ管理、統計」  ゲノム情報解析研究分野 須谷尚史 講師・「顕微鏡画像の取り扱い」  神経生物学研究分野 多羽田哲也 教授

    〈研究交流会〉各研究室の学生やポスドク等によるポスター発表(フラッシュトーク1分を含む)を実施

     平成28年10月26日(水)、暑さが戻り強い日差しの下、農学部と合同で総合防災訓練が実施されました。今回の訓練は震度6弱の強い地震が発生したという想定で行われ、分生研の教職員・学生、本館に入居する他部局の教職員など、164名が参加しました。 12時15分に全学放送システムによる緊急地震速報が流れ、避難指示の館内放送が入ると、参加者が建物内から整然と避難を開始し、一時避難場所である本館前に速やかに集合しました。点呼終了後、二次避難場所である農学部グラウンドへの避難を行いました。最後に本郷消防署からの防災・防火に対する心構えなどの講評をいただき、訓練は無事終了しました。多くの方に参加していただき、防災意識を高めるよい機会となりました。

    二次避難場所に集合する参加者

    平成28年度総合防災訓練

    平成28年度 第1回分生研研究倫理セミナー

    10

  • 11

     10/28に本年度の分生研バドミントン大会が行われました。事務の方々の御協力のもと、スムーズに会が始まり、無事に終了

    することが出来ました。ご参加の先生はじめ学生の皆様が、コートの準備や片づけ、試合の進行に積極的にお手伝いくださっ

    たおかげで滞りなくゲームが進み、笑い声の響く、楽しい大会となりました。ゲノム再生の朝倉さんには、事務的な連絡や大

    会の表の作成など運営に欠かせないお手数をおかけしました。皆様、ありがとうございました。入賞者の方々のコメントをい

    ただきましたのでお知らせします。

    優勝 生体有機化学研究分野 境・千葉ペア

     分生研バドミントン大会には三回目の出場となりましたが、博士課程最後の年に優勝することができてとても嬉しいです。

    久々のバドミントンでしたが、日々の実験やデスクワークで凝り固まった体をリフレッシュすることができました。翌日の実

    験はものすごく捗りました。これからも継続してこの大会が開催されることを期待しております。この度は、大会を企画して

    くださった皆様に心より感謝いたします。(生体有機 境)

     二度目の参戦にして初優勝を果たせて嬉しいです。境さんの圧倒的な肉体から繰り出されるスマッシュのおかげで、全くや

    ることがありませんでした(笑)。本大会を企画・運営していただいた方々には心より感謝しています。楽しい企画をありがと

    うございました。 (生体有機 千葉)

    2位 生体有機化学研究分野 雨宮・梶田ペア

     久々に気持ち良く汗を流す事ができ、とても楽しかったです!!あと一歩優勝まで届かなかったので、この悔しさをバネにバ

    ドミントンの練習に励みたいと思います。運営してくださった皆様ありがとうございました。(生体有機 雨宮)

     毎年参加させていただいていますが、今回初の入賞で大変嬉しく思っています。優勝を逃してしまったのは悔しいですが、

    ペアの雨宮さんにとっての最後の大会で表彰台に立たせてあげることができて良かったです。今回運営してくださった皆様、

    本当にありがとうございました。(生体有機 梶田)

    3位 RNA機能研究分野 木村・劉ペア

     楽しかった大会翌日の全身筋肉痛を乗り越え、普段から体を動かすことの大切さを理解しました。幹事の朝倉さん・首藤さ

    所内レクリエーション報告分生研親睦会バドミントン大会担当 脳神経回路研究分野 首藤里美

  • 12

     去る11月7日(月)午後12時より農学部グラウンドにて分生研ソフトドッジボール大会が開催されました。ソフトドッジボー

    ルは昨年度まで開催されていたソフトボールに代わって本年度より新たに加わった競技です。皆様御存知だとは思いますが、

    ドッジボールは複数人(例えば10人)から構成される2チームが、二分された長方形のコートそれぞれを陣地(内野)として、

    敵にボールをぶつけ合うゲームです。ボールをキャッチすれば攻守が交代しますが、ボールを当てられた人は敵陣の周囲(外野)

    に出なければなりません。外野に出た人は敵にボールを当てることで再び内野に戻る事ができます。試合終了時に内野に残っ

    た人数が多いチームが勝ちとなります。今回は危険回避のためにとても軽いボールを用いました。参加者は22名で2チームに

    分かれ、小林先生率いるゲノム再生研究分野・総務黒元さんチーム対RNA機能・事務部・染色体動態の混成チームで競いました。

    結果は1対2で混成チームの勝ちとなりましたがかなりの僅差だったように思います。小学生以来のドッジボールはかなり体

    力を消耗しましたが、雲一つない秋晴れのグラウンドで爽やかな汗を流すことができました。

     どのようなルールで競技を行うか、試合は室内で行うかグラウンドで行うか、何人集まると開催可能なのかなど、決めなけ

    ればならない事が山積しておりましたが、幹事を務めていただきました分子情報研究分野の武田さん、中村さん、そして総務

    黒元さんのおかげで無事に終えることができました。この場を借りて御礼申し上げます。また初開催種目にも関わらず参加し

    て頂きました皆様に感謝いたします。どうもありがとうございました。

    分生研親睦会ソフトドッジボール大会担当 RNA機能研究分野 岩川弘宙

    ん、写真を撮ってくださった黒元さんをはじめとする大会の企画運営をしていただいた皆様、本当にありがとうございました。

    (RNA機能 木村)

     今回、分生研のバドミントン大会に参加できて本当に楽しかったです。初めての参加で、三位入賞するとは思わなかったで

    す。“勝ちとか負けとかどうでもいい、重要なことは参加すること”と初めは思っていましたが、参加者のやる気満々の姿を見

    て、自分の闘志も湧き上がってきて、結局、試合に勝ちたい一心でプレイしていました(笑)。決勝戦は見事で、観戦していた

    僕もとても興奮しました。こんな素晴らしい大会に来年も参加したいと心より思っています。(RNA機能 劉)

     来年の優勝を目指している方々、リフレッシュしたい方々など、バドミントンをやりたい!と思ったら、御殿下へ~「分生

    研親睦会」として運動会に登録してあります。羽根も事務で保管していますので、ご活用下さい。

     時間の都合で、ご参加くださった方で写真に写ってない方もいらっしゃいますが、入賞者の方々の晴れやかな表情をご覧下

    さい。

  • 13

     去る11月14日(月)午後7時より、東京ドームボウリングセンターにて分生研ボウリング大会が開催されました。今年度は

    27名の方々にご参加頂きました。昨年同様、5レーンの予約となり、1レーンあたり5~6人でのゲームになりましたが、皆

    様のご協力により2ゲームを無事時間内に終えることができました。大会後、各参加者のベストスコアをもとに、男女別の1

    位から3位、またブービー賞を決定し、表彰させて頂きました。

    男子1位   境   太 希 (生体有機化学)

    男子2位   千 葉 幸 介 (生体有機化学)

    男子3位   梶 田 大 資 (生体有機化学)

    男子ブービー賞 塩 井 隆 太 (生体有機化学)

    女子1位   永 吉 里 江 (染色体動態)

    女子2位   粕 谷 真理子 (染色体動態)

    女子3位   高 田 益 子 (事務部)

    女子ブービー賞  林   あかね (分子情報)

    (敬称略)

     今年は、各レーンに2研究分野が配置する形をとりましたが、いかがだったでしょうか。他の研究分野の方々とも楽しく交

    流できていたならば幸いです。進行をお手伝い下さいました事務部の黒元さん、円滑な進行にご協力頂きました参加者の皆様

    には大変感謝しております。本当にありがとうございました。

    分生研親睦会ボウリング大会担当 生体有機化学研究分野 山口卓男染色体動態研究分野 粕谷真理子

  •  この度研究室名物行事を執筆するという貴重な機会を頂きありがとうございます。修士一年から宮島研で研究させていただいて一年半ほどが経ちその中で私は宮島研は教授を始めスタッフの方々と学生の距離感が近い研究室だという印象を持ちました。突発的に開かれる飲み会などにも皆さんが積極的に参加されており、とてもアットホームな雰囲気だと思います。そんな宮島研の名物行事ですが、夏と冬に開催されるものから一つずつ紹介させていただきます。

    夏のイベント ・バーベキュー・ 宮島研では毎年夏季一斉休業期間中にバーベキューをしております(今年度は台風が東京を直撃した日が予定日であり、場所も葛西臨海公園であったので泣く泣く中止となってしまいました)。研究室から近場のキャンプ場を借りて肉を焼き昼間からではありますがお酒も飲むといったとても魅力的なイベントです。都合のつくほとんどの方が参加されるので20人近くで楽しくバーベキューをしています。修士・博士は学生らしく他の人の迷惑にならない程度にはしゃいでおりますし、スタッフの方々とも世間話で盛り上がっています。また企画は修士一年が担当し初めての仕事となるわけですが、肉と酒の準備やキャンプ場の手配などを協力して行うことは学祭の準備の様で少し懐かしくも感じました。私はこのイベントを通し先輩方を始めスタッフの方々とも日常で会話する機会が増えていったので、修士一年が宮島研に馴染むきっかけにもなる楽しいイベントであると思います。

    冬のイベント ・クリスマス会・ 冬のイベントと言えばクリスマスだと思います。宮島研でも12月24日に近い金曜日の夕方から有志の方々でクリスマス会が開催されています。花金ということもありこちらも多くの方々が参加されています。クリスマス会ではもちろんプレゼント交換を行

    います。当日までに前もってプレゼントを渡す相手をくじ引きで決め予算1,000円程度でプレゼントを用意します。このプレゼント交換で面白いところは、受け取ったプレゼントを誰が用意した物かが分からない、というようになっている点です。そのため交換が終わりプレゼントをお披露目した後、誰が渡したものかという話題を肴にお酒がさらに進むというできた制度であると勝手に感心していました。また中には予算の1,000円を大きく超えたプレゼントを用意されている方もいらっしゃいます。どんなプレゼントを皆さんが用意しているのかを見ていくのもまたこのイベントの面白さの1つだと思います。

     上記のように名物行事として二つのイベントを紹介させていただきました。これらイベントやちょくちょく開催されている小さな飲み会は研究室のメンバー間のコミュニケーションに一役買っているように感じます。私自身これらのイベントを通して他の班の先輩方とも仲良くして頂けているように思いますし、その結果実験の相談がしやすくなったと感じる時もあります。これらのイベントは宮島研のアットホームな雰囲気の一因であり、研究生活を豊かにするものであると思います。今後開催されるであろうイベントにも積極的に参加して少しでも研究室の活気に貢献できればと考えています。

    発生・再生研究分野  太田誠広

    研究室名物行事

    14

  •  本学名誉教授 宮地重遠先生は、平成28年6月10日にご逝去されました。享年86歳でした。 先生は、昭和5年5月6日に東京都にお生まれになり、昭和28年3月東京大学理学部を卒業され、昭和28年4月に東京大学大学院理学系研究科に入学、昭和31年10月東京大学助手、昭和44年8月助教授を経て昭和55年7月に東京大学教授、昭和62年4月に東京大学応用微生物研究所長(平成2年6月30日まで)、平成元年5月に同微生物微細藻類研究センター長に就任(併任)され、平成2年6月30日に東京大学を退官されるまで植物生理学・光合成分野の教育・研究に努め、生理科学研究連絡委員会委員(日本学術会議)、日米科学協力事業委員会専門委員(日本学術振興会)、微生物学研究連絡委員会委員(日本学術会議)、大学設置審議会専門委員(文部科学省大学設置分科会)、理学視学委員(文部科学省高等教育局)等の委員を歴任し、平成3年5月に東京大学名誉教授の称号を付与されました。 先生は東京大学退官後、平成2年4月に株式会社海洋バイオテクノロジー研究所所長に就任され、平成3年3月より東海大学海洋学部非常勤教授を勤め、平成9年に株式会社海洋バイオテクノロジー研究所特別顧問に就任されました。また、平成18年にNPO法人地域振興支援センタークリーンアース研究所所長に就任し、幅広く教育・研究に貢献されました。 先生は、植物生理学、特に光合成分野の教育・研究においては、植物生理学およびマリンバイオテクノロジー分野において学問の発展に寄与する基礎的研究成果とその成果に基づく新規産業の創成に貢献し、多くの研究者・技術者の育成に献身し、数多くの著作を通した啓発も行い、優れた功績を挙げた世界を代表する著名な学者でした。特に、(1)微細藻類を用いた光合成のエネルギー代謝と炭素代謝の研究において、多くの新規性の高い研究成果を挙げ、世界をリードしたこと、(2) 日本光合成

    研究会を立ち上げて、我が国における光合成研究者を組織化し、光合成分野における日米共同研究事業等の国際協力事業を実施したこと、(3)新規学問分野マリンバイオテクノロジーを創設し研究業績を挙げると共に、応用・産業創成にも貢献し、国際展開を主導したこと、(4)国際・国内学会の創設者及び会長として学問分野を主導する功績を挙げたことにより、国内外で学術賞を受賞する程の優れた業績の基に多くの研究者や教育者、技術者の育成に貢献されました。 また、東京大学応用微生物研究所所長としては、平成元年に微生物微細藻類研究センターを新設し、センター長を併任すると共に、我が国を代表する微生物微細藻類保存施設の整備により、国内外の研究を支える研究基盤を構築しました。海洋バイオテクノロジー研究所所長としては、マリンバイオテクノロジー研究分野を創成し、国内外の研究や技術開発を主導する大きな功績を挙げられました。 このような功績に基づき、平成7年フンボルト・リサーチ・アワード(ドイツ・フンボルト財団)、同14年国際応用藻類学会功労者メダル、同23年日本植物生理学会功績賞、同25年みどりの学術賞を受賞し、その国内外で高く評価される研究業績と一般向けの啓蒙書も出版し、当該学問分野の重要性の理解や普及に努めました。 以上のように、先生は、植物生理学・光合成研究分野の発展とマリンバイオテクノロジー分野の創成と世界初のマリンバイオテクノロジー研究所の創設に力を尽くしたものであり、その功績は誠に顕著であります。 先生は学問に対して厳しい面を持つ反面、おおらかな一面も併せて持ち、多くの人々がその魅力あるお人柄に接したことと思います。 そのすばらしいご功績を偲びつつ、ここに謹んで先生のご冥福をお祈り申し上げます。

    訃 報

    宮地重遠 名誉教授

    15

  • 教職員の異動等について 以下のとおり異動等がありましたのでお知らせします。

    ○平成28年6月19日付〈退 職〉泉  幸佑 助教(創造的研究教育プログラム)

    ○平成28年7月1日付〈採 用〉藤木 克則 助教(先導的研究教育プログラム)〈異 動〉守  幸代 総務チーム主任     :国立情報学研究所へ

         高田 益子 財務会計チーム専門職員     :医学部附属病院より     高橋 秀二 総務チーム係長     :人事部より

    ○平成28年10月1日付〈採 用〉加藤 順子 総務チーム一般職員

    ○平成28年10月31日付〈退 職〉竹内  純 准教授(心循環器再生研究分野)

    ○平成28年11月1日付〈採 用〉山角 祐介 助教(先導的研究教育プログラム)

    ○平成28年11月30日付〈退 職〉金  智慧 助教(先導的研究教育プログラム)

    安堵しております。今後ともよろしくお願いいたします。

    (事務部 渡邉清美)

     今号より、はじめて分生研ニュースの編集委員を担当させて頂くことになりました。不慣れな部分もありましたが、快くご寄稿頂きました先生方々には深く感謝致しております。今回、改めて過去の分生研ニュースを拝見しましたが、ホットな研究内容から微笑ましい手記まで、本当に幅広く分生研を知ることができる良い広報誌だと感心しました。これからも、分生研の様子を楽しく伝えていければと思います。どうかご協力のほどよろしくお願い申し上げます。

    (生体有機化学研究分野 山口卓男)

     皆様には年末年始のお忙しい中、原稿作成・校正にご協力いただきありがとうございました。今回も予定どおり無事発行できそうで

    分生研ニュース第57号2017年1月号発行 東京大学分子細胞生物学研究所編集  分生研ニュース編集委員会(小川治夫、赤松由布子、岩川弘宙、

    山口卓男、前山有子、渡邉清美)お問い合わせ先 編集委員長 小川治夫電話 03-5841-7813電子メール [email protected]

    編 集 後 記

     今回、私が紹介するお店「釜竹」は都内で有名な釜揚げうどん専門店です。 谷根千界隈には古民家を活かしたお店が多数存在しますが、このお店の建物も明治時代の蔵が利用され趣がありました。店内はたくさんのお客さんで大変賑わっており、見渡すとガラス越しに綺麗な日本庭園を見ることができました。私のおすすめのメニューはもちろん「釜揚げうどん」です。麺が大変モチモチして噛みごたえがあり、つけ汁は程よい熱さで味はしょっぱく麺との相性は抜群でした。また、一緒に提供されてくる薬味をメニューに書いてある順番で加えると更に味の変化も楽しむこともできました。ちなみにお値段は850円と大変リーズナブルでした。他にもこのお店のメニューの特徴として日本酒と酒肴の種類が豊富であることから、お酒を注文しているお客さんも多かったです。 美味しい物を食べたい、散歩がてらに根津で外食したい、実験帰りにお洒落な店で仲間と一杯ひっかけたいと思った時にぜひ、ここのお店に足を運んで、落ち着いた雰囲気の中で料理を堪能してみて下さい。※ただし、お店に行く際、大変混んで並ぶ時があるそうなので、時間に余裕をもって行くことをお勧めします。

    113‒0031東京都文京区根津2-14-18TEL:03‒5815‒4675 東京メトロ千代田線 根津駅 1番出口 徒歩5分日曜日の夜、月曜日定休

    【火~土】11時半~14時半(ラストオーダー 14時)/ 17時半~21時(ラストオーダー 20時半)【日】11時半~14時半(ラストオーダー 14時) ★夜は休み【祝】(日・月の場合には、各曜日の営業内容となります)11時半~14時半(ラストオーダー14時)/ 17時半~ラストオーダー 20時

    ● ●ゲノム再生研究分野 横山 正明

    釜竹

    16

  •  このコラムを誰に読んで頂けるかは分からないが、博士進学に迷っている学生や、未来の研究者を少しでも勇気づけられたら、という気持ちで筆を進めた。そのために今回のコラムでは、私が何故薬学研究者を目指したか、薬学の分野で学部~博士課程を経て、どのように感じたか、そして今は何を目指しているのかについて書かせていただきたい。 私、境 太希は福岡県で元気な男の子として生まれ、大好きな野球をやりながらすくすくと育っていた(この頃はプロ野球選手になりたかった)。しかし、ある日を境に、身体中に発疹が現れるようになってしまった。原因は不明で、医者からは慢性蕁麻疹との診断を受けた。ひどい痒みで、幼い私は体を掻くのを我慢できず、発疹は腕から腰からほぼ全身に広がる程であった(まるでもののけ姫のアシタカ状態)。そんな中、医者からアレロック®(オロパタジン塩酸塩)という医薬品を処方された。それを一錠飲んでみると、体中の赤い発疹がするすると消えていった。「くすりって凄い」とその時初めて感じた。小学校時代の文集にて将来の夢について問われた私(11)は、「将来は万能薬をつくってノーベル賞をとる‼」とかなんとか書いていた。また、父が某製薬企業の研究員であったことも薬学研究者になりたいと志した理由の一つである。進路を父に相談すると、研究所での生活を楽しげに話してくれた。研究所では、数人が一組のチームとなって、医薬開発の為に協力する。良いデータ、悪いデータすべて仲間と共有しあって、みんなで一つの医薬を開発していくと聞いた。なんて楽しそうなのだろう。この話を聞き、薬学進学への決意が固まった。 さて時は過ぎ、私は無事私立薬科大学に入学した。医薬に関連した様々な授業はどれも楽しかった。特に、くすりが体、細胞のどこに作用し、治療効果を発揮するのかを詳しく学ぶことができた薬理学は最も好きな科目の一つであった。同大学にて、医薬、天然物の有機合成を主題とする研究室に入り合成のノウハウを学んだ後に、修士課程より分子細胞生物学研究所 生体有機化学研究室(橋本研)に進学した。橋本研は、医薬候補化合物を自ら合成、さらにその化合物の生物活性を評価できるラボであり、薬理学が好きな私にとっては絶好の環境だと感じた。修士一年として入った私だったが、橋本研は前大学と比較して博士課程の学生が多く、まず周りのレベルの高さに驚愕した。研究の進め方、実験スキル、セミナーでの発言等どれをとっても桁違いだと感じた。「あれ、俺ここでやっていけるのかな」。このような劣等感をひしひしと感じていたが、悩んでいても仕方ないので

    とりあえず一心不乱に頑張ることにした。幸運なことに、興味のあったがん治療薬の開発研究に携わることができ、やりがいを感じながら医薬候補化合物をひたすらに合成した。化合物を合成、その後生物活性を評価し、その結果を基に化合物を再設計し活性を高めていく。幼い頃に夢見た創薬の現場で研究できている、これまでの人生で得た事のない充実感を感じた。帰宅時間が日をまたぐこともしばしばだったが、全く苦に感じることはなかった。努力が実ってか、無事(?)修士課程を修了し、その後博士課程に進学、新しいテーマの元で研究を開始した。修士課程を経て、一つの研究をまとめあげると、なんとなく研究の進め方が分かってきたような気がした。修士時代では考える余裕がなかったが、研究の意義や一つ一つの実験の意味などをより深く考えることができるようになっていた。さらに、博士課程で研究していくにつれ基礎研究の楽しさをより感じられるようになり、アカデミアの世界で創薬研究をしたいという新たな夢もできた。不安定な茨の道ではあると思うが、自分の夢に向き合い、ポスドクという進路に決めた。 就職活動が未だ厳しいと言われる昨今であり、博士進学にためらう学生も相当数いると思う。しかし、博士進学で得られることも大きいとD3の今私は感じている。上記エピソードで書いたが、私は学部教育、修士、博士課程を通じて、研究の面白さ、進め方のコツなどに気づく事ができた。特に修士、博士課程での経験は大きかったと思う。日々の実験→研究スキル、論文紹介などのゼミ→論文調査や課題発見能力、学振などの申請書→研究費獲得能力、論文執筆→研究をまとめる能力が身に付く。と、よくよく考えれば、一端の研究者になるためのカリキュラムが日本の大学院教育には組み込まれている。最後に博士進学に対して迷いがある方に、このコラムを通して言いたい事は、早いうちから才能がないと諦めるのは勿体ないということである。時期は人それぞれかもしれないが、必死に頑張っていれば研究者として成長できるチャンスはきっと巡ってくると思う。研究が好き、博士課程の先にやりたいことがあるのであれば、とりあえずがむしゃらに頑張ってみるというのも一つの選択肢としてアリなのではないだろうか。

    ドクターへの道

    境 太希 生体有機化学研究分野 博士課程3年

    17

  •  この度、分生研ニュースに留学生手記を書かせていただくことになりました、魏と申します。中国から豊島研に来て、早半年が経ち、充実な毎日を送っています。これまで蛋白質を扱う仕事の経験が無く不安もありましたが、今は研究も、日常生活にもだいぶ慣れたので、この半年間の生活を振り返り、自分なりの感想を話したいと思います。 私は4歳の頃、父が京都大学の博士課程に進む事になり、京都で4年間暮らしました。その頃の記憶はぼんやりとしか覚えていないのですが、振り返って見ると純粋に毎日を楽しんで日々を過ごしていたと思います。小学校三年生になってから中国へ戻りましたが、時々蘇る記憶は大文字山の送り火、または正月の餅つき大会ぐらいのことで、次第に日本は私にとって近くて遠い存在になりました。けれども、子供の頃の思い出はあまりにも楽しかったのでしょうか、大人になってから、また日本で暮らしたいという気持ちが高まってきました。「日本の文化や社会をもっと深く知りたい、日本の研究生活も知りたい」と言う好奇心を抱き、今年4月から初めての海外の一人暮らしを始めました。 日本に来てからは、毎日が発見と新鮮の連続でした。東京に来たとき、観光スポットを調べたのですが、「東京観光のおすすめスポット70カ所完全まとめ」という記事を見て呆然としました。「何十か所の見どころって多すぎない?」と思ったのですが、今ではそれを理解できるようになり、私は完全に東京に魅了されました。世界トップ3の大都市として、東京は多様な顔を持っています。都内でも様々な特徴のある街があり、例えば商業活動が盛んな新宿、ファッションの発信地となっている原宿・表参道・青山、伝統のある商業地である銀座。そして、文化と文化のぶつかり合いも東京ではよく感じられ、一番分かりやすい食文化で例えると「赤坂は中華料理屋の激戦区で、本格な韓国料理は新大久保にある」と聞きます。それは、東京がグローバルな大都市で、多国の人々がそれぞれの地域で集まり、その地域と共生し、それぞれの個性と多様性を生み出した結果だと思います。そして、様々な人と出会い、異なる文化に触れる事も、東京での留学生活の一部だとわかりました。その結果、今まで自分の考えていた東京感が、非常に限定的で特殊なものだったことを思い知らされました。

     日常生活だけではなく、半年間の研究生活でも視野が広がりました。東京大学は有名な先生が多く、研究は最先端で、環境も素晴らしかったので非常に魅力的に感じました。私がいる豊島研は、蛋白質の原子構造に基づいた機能の理解を目指していて、これまで非常に重要で画期的な研究結果を発表してきて、私の最も憧れの研究室でした。豊島研での研究生活は当初の想定をはるかに超える非常に貴重な経験となりました。以前の研究レベルとの差を身を以て知りました。それは装置の性能などといった環境的要因というよりは、研究の気風の違いと、研究に対する熱心さの差なのではないかと思います。構造研究は時間のかかる分野で、素晴らしい研究結果を生み出すには、多くの工夫と努力の重なりが必要なのだと思い知らされました。また、緻密な仕事が要求されますし、異なる背景知識も必要となるということも理解しました。しかし、本当に難しいと感じたことは、解いた構造を目当たりにし、蛋白質がどのようにして働いているかを理解することです。ですが、物事を深く理解したいという気持ちを持って、本当に理解ができようになれば、満足感を得られるのではないかと思い、日夜研究に励んでいます。「サイエンスはテクノロジーだけではない、サイエンスは感動を生み出すものだ」という教授の言葉が私に一番響きました。それが何よりも貴重な、この研究室で見たサイエンスのやり方です。 今は東京大学で少しでも多くのことを吸収したいと思っています。自分の常識と異なる文化や考え方に触れ、インスパイアされる機会を持てたことを、ありがたく思っています。そして、自分も更に努力を積み重ねなければならないと動機づけられました。最後にこの場をお借りして、分生研の先生方、そして、豊島研の全ての方々にお礼を申し上げます。本当にありがとうございます。

    留学生手記

    膜蛋白質解析研究分野 中国医学研究者(四川大学・華西臨床医学院華西医院)  魏 霞蔚

    魏(執筆者)と父(右)。東京大学正門前で。

    18

  •  修士課程から博士号取得までの5年間(2009年-2014年)、泊研究室に所属していた深谷雄志と申します。2014年4月からUniversity of California BerkeleyのMichael Levine labでポスドクとして働き始めましたが、研究室の引越しに伴い2015年7月にPrinceton Universityへと異動になりました。

     全米で最もリベラルな街と呼ばれているように、Berkeleyには人々の多様性がごく自然なものとして受け入れられる寛容な雰囲気があります。大学の南門を抜けた先にある、Telegraph Avenueと呼ばれるヒッピー文化の影響を色濃く残した通りには、小さな店が数多く立ち並び人々の活気で賑わっています。一方、Princetonはニュージャージー州にある人口およそ1万5千人程度の小さな田舎街で、New YorkとPhiladelphiaのちょうど中間に位置しています。大都市へのアクセスの良さからか、大塚製薬や協和発酵キリンなど日系製薬企業がオフィスを構えています。気候は、一年を通して温暖なBerkeleyとは対照的に、はっきりとした季節の移り変わりがあり、秋には紅葉が美しく、冬には雪が降り積もります。夜でも安心して出歩くことが出来るほど治安が良く、街にはゆったりとした雰囲気が流れています。

     研究室があるCarl Icahn laboratoryは、東京国際フォーラムやHHMI Janelia Research Campusのデザインでも有名なRafael Viñolyによって設計された建造物で、Developmental BiologyからPopulation Genetic、Biophysicsに至るまでの幅広い研究が展開されている学際的な環境です。Princeton Universityはショウジョウバエ研究の一大拠点でもあり、1995年のノーベル生理学・医学賞を受賞したEric Wieschausや、insulatorを発見したPaul Schedl、生殖細胞分化に必須であるnanos mRNAの制御で有名なEizabeth Gavisらがいます。所属するMichael Levine labはショウジョウバエ初期胚をモデルとして、enhancerと呼ばれる非コードDNAが

    標的遺伝子の転写活性を制御する基礎的な仕組みの理解に長年取り組んでいます。近年は特に、転写活性をリアルタイムで可視化するライブイメージング技術を駆使することで、その時空間的制御を定量的に理解することを目指しています。泊研究室では実験デザインから細かな条件検討に至るまでを丁寧に議論するのに対し、現在のボスであるMikeは細かな点は個人の裁量に委ねつつ、大局的に捉えた時に何が生物学的に重要な問いであるかを重視しながら研究を進めていきます。挑戦的な研究課題に取り組みながら、上手くいかない場合でも悲観的にならず前向きな雰囲気があるのは、二つの研究室に共通した点に感じます。

     海外留学は必然的に異文化に触れることでもあり、そこには自ずと戸惑いや、新たな環境へ適応する苦労を伴います。母国語の外で不利を感じる場面も少なくありません。海外生活は二年半を越えましたが、留学という経験が研究者としてのその後にどのように作用するかについては、現時点では分かりません。おそらく留学そのものに意味があるのではなく、それが国内であれ海外であれ、与えられた場所で精一杯、誰よりも泥臭く、粘り強く働くことがその人の成長を支えてくれるように思います。

    Princeton University, Lewis-Sigler Institute for Integrative Genomics深谷雄志

    海外ウォッチング

    19

  •  この度分生研ニュースのOBの手記執筆の機会を頂きました大醤株式会社の河盛と申します。私の進路は本研究所の多くのOB方々とは一風変わったものではないかと思いますが、以下のように紹介させていただきます。

    【分生研時代】 私は本研究所の当時形態形成研究分野(現神経生物学研究分野・多羽田哲也教授)に、2005年より大学院修士課程から博士研究員まで6年半余り所属しました。私は学部時代には有機化学の研究室に所属していましたが、異なる研究分野から進学してきた私を受け入れてくださり、ご指導いただきました多羽田先生に大変感謝しております。 多羽田研究室ではショウジョウバエ幼虫の脳の神経発生の制御因子に関する研究に従事していました。その後自分の研究を説明しますと、しばしば何故後述の実家の家業とかけ離れた研究分野に進んだのかと尋ねられますが、食品・医薬品開発などの応用分野における課題を解決するためには、生命科学の基礎研究の理解とその進歩が重要であると当時考えていたからです。

    【東京農大で修行】 分生研でお世話になったのち、実家の家業である醤油醸造業継承のための修行として東京農業大学・醸造学科の舘博先生の研究室に入りました。醸造学科は日本の大学の中で「醸造」の名前を持つ唯一の学科で、全国の醤油・味噌・日本酒メーカーの後継者達が数多く醸造学を学ぶ大変珍しい学科です。さらに、舘先生はその中で醤油醸造学を専門とする

    「しょうゆの博士」として醤油業界にその名を知られている方です。 舘研究室において、はじめは研究生として、その後助手として2年余り勤務しました。まさに、醸造学・微生物学について自ら教えながら学ぶという大変貴重な2年間でした。その間醤油醸造で重要な麹菌消化酵素の研究、醤油乳酸菌に関する研究、新規発酵調味料の開発に関する研究等に従事しました。また、東京農大OBの方をはじめ、多くの醸造関係の方と知り合うことができました。

    【大醤】 東京農大での勤務の後、私は2014年より実家に戻り、現在大阪府・堺市にある大醤株式会社に勤めています。当社は江戸時代、寛政12年(1800年)創業の醤油製造会社です。堺といえば、中世の自由都市、鉄砲、包丁、自転車などが有名ですが、実は江戸時代には醤油や酒造といった醸造業の一大産地でした。現在は醤油業者の多くが姿を消し、当社が堺、そして大阪府を代表する醤油メーカーとなっています。 醤油醸造では、麹菌をはじめ、乳酸菌・酵母など

    の微生物の発酵管理が醤油の品質づくりに重要であり、私は現在、これらの微生物の優良菌株の選抜や新たな発酵制御方法の検討により醤油の品質向上に取り組んでいます。さらに味覚センサやバイオセンサなどの最新鋭の分析機器を導入して、科学的な観点から醤油をはじめさまざまな調味料の試験研究を進めています。食品の「おいしさ」には個々の消費者の嗜好が関わってくるため、絶対的な正解がないという難しさがありますが、逆に多様な需要に応えられるよう色々なことに挑戦できるという面白さがあると感じています。

    【しょうゆもの知り博士】 また、会社の業務に加えて日本醤油協会のしょうゆ食育プロジェクトの一環である「しょうゆもの知り博士の出前授業」という醤油の普及活動にも参加しています。この活動は日本醤油協会より派遣された「しょうゆもの知り博士」が全国の小学校を訪問して、醤油の製造方法やその特長について授業をし、小学生に醤油への理解を深めていただく、というものです。私と当社の数名の社員が「もの知り博士」となって大阪府全域の小学校を訪問しています。授業の依頼数が多くて大変ですが、授業の感想やお礼の言葉をいただいた時にやりがいを感じます。 近年、日本人の和食離れや減塩志向などから日本における醤油の出荷量は漸減傾向にありますが、この活動を通して醤油の素晴らしさについて正しく理解してもらうことで、醤油の消費量向上に少しでも貢献できればと考えています。

    OBの手記 大醤株式会社 企画室長

    河盛 治彦

    大醤株式会社工場外観。写真左上にあるのは当社自慢の醤油「王醤」。

    筆者が「もの知り博士」を務める「しょうゆもの知り博士の出前授業」の授業風景。「体験的に学ぶ」ことをモットーとしている。

    20

  • ショウジョウバエ嗅覚記憶中枢キノコ体神経の出力領域における匂い応答の網羅的Ca2+イメージング

    先導的研究教育プログラム(神経生物学研究分野) 助教 阿部崇志

     ショウジョウバエの嗅覚系3次神経であるキノコ体神経は、匂い刺激と忌避/誘引性刺激の連合学習による記憶形成の場であると考えられています。約2,000個の細胞からなるキノコ体神経群は3つのサブタイプに分類され、記憶の獲得や固定、想起の段階で個別の機能を有することが行動遺伝学的に示されてきまし

    た。しかし近年、より細胞特異性が高いGAL4発現系統が公開されたことでサブタイプをさらに7種に細分化して区別可能になり、しかも各々の軸索領域は、出力先の4次神経であるMBON神経と対応して区画化されていることが明らかになりました。また、MBON神経は細胞数が34個と少なく、網羅的に神経活動を解析した報告が昨年なされ、可塑性を持つことが示されました。 一方で、プレシナプス側であるキノコ体神経にも可塑性があるのかどうかは依然不明瞭なままです。というのも、サブタイプが細分化されたキノコ体神経の軸索領域において、条件付け前の匂い刺激の受容時にどのような神経活動が起こっているのかについて、高い時空間解像度での記載的な報告は未だなされておらず、細胞数が多いキノコ体神経においては

    学習前後の可塑性の検証が困難になっているためと考えられます。 本研究室では、匂い刺激を呈示中のハエの脳のライブイメージングが可能な2光子顕微鏡システムが構築されています。種々の匂い刺激を与え、サブタイプを区別したキノコ体神経群の軸索束領域を網羅的にイメージングすることで、匂い刺激への応答強度や速度、分離度の違いや、回路内での情報の遷移様式を明らかにし、条件付け学習後の応答変化の検出の指標となりうるようなプロファイルを得ることを目指しています(図)。それらをもとに、キノコ体神経における可塑性を検証し、ドーパミン作動性神経との関連も含め、嗅覚記憶回路の可塑性機構を包括的に理解することを目標としています。

    ヒトribosomal RNA遺伝子に存在するreplication fork barrierの機能解析

    ゲノム再生研究分野 助教 赤松由布子

     転写とDNA複製は、どちらも同じゲノムDNAを鋳型として、それぞれ新生RNA鎖と新生DNA鎖を合成します。遺伝子上でこれらの装置が衝突したとき、DNAが損傷しゲノム不安定性の原因になると考えられていますが、細胞周期S期において転写の活発な遺伝子では、どのように正常な複製が保障されているのでしょ

    うか。私は細胞内で非常に転写活性が高いリボソームRNA遺伝子(rDNA)に着目してこの問題に取り組んでいます。 ヒト細胞ではゲノム中に数百コピーのrDNAが存在し、アクロセントリック染色体短腕上にタンデムリピートからなるクラスターを形成しています。これらの遺伝子の45S pre-rRNAコーディング領域の3’ 側には、下流から転写領域に侵入するDNA複製フォークの進行を阻害するDNA複製阻害点(Replication fork barrier: RFB)が存在し、RNA polymerase Iの転写とDNA複製の正面衝突を回避すると考

    えられています。これまでに私はこの機構について解析を行いRFBの実体はTTF1タンパク質が結合したTerminator element T1, T4/5であり、RNA polymerase Iの転写を終結する機能に加えてDNA複製の進行を阻害することを明らかにしました。また、この活性は数百コピーのrDNAのうち転写の活発なrDNAのみに検出され同じDNA配列を持つ高度にCpGメチル化されたサイレントなrDNAコピーではDNA複製阻害が起こらないこと、すなわちRFBの活性がエピジェネティクスにより制御されていることを明らかにしました。 興味深い事に、ある種のがん組織ではrDNAコピー間の組換えが上昇するゲノム不安定性が報告されています。このメカニズムは明らかになっていませんが、RFBにおけるDNA複製阻害が寄与している可能性を考え研究を行っています。

    21

    キノコ体神経の軸索束断面における異なる匂い刺激へのCa2+応答の違い

    Gal4/LexAシステムの併用によるサブタイプを区別したCa2+イメージング

    図  ヒトrDNAの構造とPoll転写とDNA複製の衝突回避メカニズム

  • 大腸がん発症の鍵を握る仕組みの解明

    Kawasaki Y, Komiya M, Matsumura K, Negishi L, Suda S, Okuno M, Yokota N, Osada T, Nagashima T, Hiyoshi M, Okada-Hatakeyama M, Kitayama J, Shirahige K and Akiyama T.MYU, a target lncRNA for Wnt/c-Myc signaling, mediates induction of CDK6 to promote cell cycle progression Cell Reports 16, 2554‒2564 (2016)

     大多数の大腸癌ではWntシグナル経路が異常に活性化しており、たくさんの遺伝子の異常発現を引き起こしていますが、中でもがん遺伝子c-Mycの異常発現は細胞の癌化にきわめて重要な役割を果たしていると考えられています。今回、私たちは、Wnt/c-Myc経路がタンパク質をコードしない新規非コードRNA “MYU” の発現を直接誘導していることを明らかにしました。さらに、MYUはほとんどのヒト大腸がんで多量に発現していること、および大腸がんの発症に必須の役割を果たしていることを見出しました。 では、腫瘍をつくる過程でMYUはどのような役割を担っているのでしょうか。まず最初に、私たちはMYUがRNA結合タンパク質hnRNP-Kと結合していることを見出しました。さらに、MYU/hnRNP-KはmiR-16の機能を妨げることで細胞周期を進める機能をもつCDK6の発現上昇を引き起こしていることを突き止めました。そして、MYUによって発現の増えたCDK6が大腸がん細胞の増殖に重要であることが分か

    りました。 c-Mycは様々なシグナル経路を制御する重要なタンパク質であるため、c-Mycを直接阻害する薬剤は大きな副作用があると予想されます。今回の結果は、c-Mycが誘発するがんに対してはMYU、hnRNP-K、CDK6による情報伝達の仕組みががんの分子標的薬を創製する上で重要な標的となることを示唆しています。本研究の成果により、今後、この仕組みを標的とした薬剤が開発され、大腸がんの治療に貢献することが期待されます。

    長鎖ノンコーディングRNAが制御する新たな大腸がん化のメカニズム

    Taniue K, Kurimoto A, Takeda Y, Nagashima T, Okada-Hatakeyama M, Kato Y, Shirahige K and Akiyama T.The ASBEL-TCF3 complex i s requ i red fo r the tumorigenicity of colorectal cancer cells Proc Natl Acad Sci U S A. 2016 Oct 21. pii: 201605938 (2016)

     最近になって長鎖非コードRNA(long non-coding RNA; lncRNA)が転写、翻訳、スプライシングの制御に関わり、細胞の増殖・分化・がん化・胚発生・神経発生・幹細胞性の維持などに重要な役割を果たしていることが明らかになってきました。今回、私たちは、大腸がんにおいてlncRNA ASBEL 及び転写制御因子TCF3の発現がβ-cateninによって誘導されていることを見出しました。さらに、ASBELはTCF3と結合し、TCF3をがん抑制因子ATF3の遺伝子座に誘導し、ATF3の発現を抑制すること、大腸がんの増殖や腫瘍形成に重要な役割を果たしていることを明らかにしました。 これらの結果により、Wnt/β-catenin経路によって直接発

    現の制御を受け、さらに腫瘍形成能に関わるlncRNA-転写制御因子複合体が存在していることが明らかになりました。また、lncRNA ASBELがTCF3に結合し、TCF3をゲノム上の特定の遺伝子座へリクルートすることが大腸がんの造腫瘍性に非常に重要であることが示唆されました。今後、ASBEL-TCF3経路を標的とした分子標的薬を創出することによって、大腸がんの治療法の開発に一歩前進することが可能であると考えられます。

    新しく見つかった大腸がん発症の仕組み大腸がんではWnt/c-Myc経路が異常に活性化しているためにタンパク質をコードしない新規のRNA “MYU”が多量につくられます。MYUはCDK6の発現亢進を引き起こしてがん細胞の増殖を促進します。

    ASBEL-TCF複合体はATF3遺伝子の発現を抑制することにより大腸がん細胞の増殖を引き起こします。

    22

  • 気管支喘息を制御する新しい分子機構を解明

    Yamazumi Y, Sasaki O, Imamura M, Oda T, Ohno Y, Shiozaki-Sato Y, Nagai S, Suyama S, Kamoshida Y, Funato K, Yasui T, Kikutani H, Yamamoto K, Dohi M, Koyasu S and Akiyama T.The RNA binding protein Mex-3B is required for IL-33 induction in the development of allergic airway inflammationCell Reports 16, 1‒16 (2016)

     私たちは、RNA結合タンパク質をコードするMex-3B遺伝子を欠損したマウスを作出し、Mex-3Bの生理機能を解析しています。その一環として、気管支喘息マウスモデルを用いた解析を行ったところ、Mex-3B欠損マウスでは気道炎症が顕著に抑制されていることがわかりました(図a)。さらに私たちは、Mex-3B欠損マウスでは気道炎症に伴うIL-33タンパク質量の増加が抑制されており、これが気道炎症の抑制につながっていることを突き止めました。 そこで、Mex-3BによるIL-33の制御機構を解析したところ、Mex-3BはIL-33 mRNAに 結 合 し てmiR-487b-3pとIL-33 mRNAの結合を阻害することによりIL-33の発現を促進していることが明らかになりました。また、このmiRNAの機能をあらかじめ阻害しておくと、Mex-3B欠損マウスでも野生型マウスと同程度の気道炎症が起こることがわかりました。 さらに、Mex-3Bを標的としたアンチセンス核酸を新たに開発し、マウスに噴霧・吸入させると、気道炎症が顕著に軽減することがわかりました(図b)。 以上の結果は、Mex-3Bを標的とした薬剤が気管支喘息の新機序の治療薬となりうることを示唆しています。また、

    Mex-3B欠損マウスは正常に発育し、成体でも異常が認められないことから、Mex-3Bを標的とした薬剤は副作用の少ない治療薬となりうることが期待されます。また、Mex-3Bの標的遺伝子であるIL-33は、ステロイド耐性の重症喘息、リウマチや大腸癌の発症にも重要な働きを担っていることが知られています。したがって、Mex-3Bは気管支喘息だけでなく、これらの疾患においても創薬の標的となる可能性があると考えられます。

    分子進化の新しい解析法の発見により数十億年前から現在に至る遺伝子制御システムの進化を明らかにした

    Naruhiko Adachi, Toshiya Senda and Masami HorikoshiUncovering ancient transcription systems with a novel evolutionary indicatorSci. Rep., 6, 27922 (2016) doi: 10.1038/srep27922

     分子レベルで生命現象を捉える研究が進み、進化学でも遺伝子DNAや蛋白質の解析に基づく分子進化学という研究分野がポーリングらにより約55年前に生まれた。DNAが化石として残ることは殆どないため、化石から得られる情報を基に太古の分子進化を探ることは不可能である。したがって、分子進化と言っても、太古に存在した生物の遺伝子(祖先遺伝子)から現存生物の遺伝子(現存遺伝子)までの進化距離を直接計算することはできず、現存生物の遺伝子を主に解析している。また、現存遺伝子を用いて、1つの遺伝子グループの進化をたどろうとしても、その一部を外部標準として除外する必要があり、グループ全体の進化系統を一度に知ることはほぼ不可能だった。 今回、 遺伝子内に含まれる繰り返し配列に着目し、外部標

    準を必要とせず、祖先遺伝子と現存遺伝子の間の進化距離を直接算出できる新しい解析法を考案した。この解析法により、解析が不可能とされていたi)1つの細胞内に存在する2種類の因子の誕生順序を明らかにすることに成功し、その上でⅱ) 約30億年前に起こった生物システムの進化の一端を、遺伝情報を取り出す「転写システム」に着目し、現存のシステムとは異なるシステムが作動していたことを明らかにした。今後、細胞の増殖・分化を支えるさまざまな生命システムがどのように進化してきたかをより幅広く詳細に解析するだけでなく、精巧な生物システムの進化の仕組みの変遷から、人工知能や精密機械の「進化」においても応用可能な情報が得られることが期待される。

    Mex-3B欠損マウスでは気管支喘息モデルに伴う気道の肥厚、炎症系の免疫細胞の増加が抑制されています。

    23

  • 離れた細胞間の物質輸送やシグナル伝達を担う脂質膜ナノチューブの形成を誘導する仕組み

    Shunsuke Kimura,*Masami Yamashita, Megumi Yamakami-Kimura,*Yusuke Sato,*Atsushi Yamagata, Yoshihiro Kobashigawa, Fuyuhiko Inagaki, Takako Amada, Koji Hase, Toshihiko Iwanaga, Hiroshi Ohno and *Shuya Fukai(*放射光連携研究機構/蛋白質複合体解析研究分野)Distinct Roles for the N- and C-terminal Regions of M-Sec in Plasma Membrane Deformation during Tunneling Nanotube FormationSci. Rep . 6, 33548 (2016)

     脂質膜ナノチューブ(Tunneling nanotube; TNT)は、直径数百ナノメートルの極細の膜構造で、その長さは数十マイクロメートルに及び、遠距離の細胞同士をつないで細胞間コミュニケーションを仲介する新たな細胞構造であると考えられています。免疫系や神経系などの多くの細胞でその存在が報告されています。また、エイズウイルス(HIV-1)などはTNTを利用して細胞から細胞へと感染することで、免疫系を逃れて感染が拡大することも知られています。共同研究者の大野博司グループディレクター(理研)と木村俊介助教(北

    大・医)らは、マクロファージや樹状細胞、神経系のミクログリアといった細�