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慈恵ICU勉強会 2015/09/01 怜史

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慈恵ICU勉強会  2015/09/01  林 怜史

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初めに

•  2007年にICHに対するガイドラインがAHA/ASAにより発表された。  

•  2010年にガイドラインの改定  

•  2015年に再度ガイドラインが改定されたので根拠を含め紹介する。  

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•  非外傷性脳出血は世界中で大きな死亡率、有病率を占めている  しかし、脳梗塞、SAHと比べ、臨床試験などは遅れていた。  

•  近年多くの臨床研究が行われておりガイドラインが作られた。  

•  ガイドライン出版の目的は、2010年のガイドラインに最新の結果を加えることである  

•  脳出血の予後決定に臨床医の治療が重要であることを思い出させることと、根拠に基づく枠組みを提供することである。

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ガイドラインの内容 1.  Emergency  Diagnosis  and  Assessment  2.  Hemostasis  and  Coagulopathy,  AnDplatelet  Agents,  and  DVT  Prophylaxis  3.  Blood  Pressure  4.  General  Monitoring  and  Nursing  Care  5.  Glucose  Management  6.  Temperature  Management  7.  Seizures  and  AnDseizure  Drugs  8.  Management  of  Medical  ComplicaDons  9.  ICP  Monitoring  and  Treatment  10.  IVH  (Intraventricular  Hemorrhage)  11.  Surgical  treatment  of  ICH  12.  Outcome  PredicDon  and  Withdrawal  of  Technological  Support    13.  PrevenDon  of  Recurrent  ICH  14.  RehabilitaDon  and  Recovery

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1.Emergency  Diagnosis  and  Assessment  

脳出血患者の最初の評価として重症度スコアをつけるべきである    早期のCT、MRIは虚血性脳疾患との鑑別として推奨される  

CTAと造影CTは血腫増大のリスクを持つかの判断のために考慮してもよい  CTA、造影CT、造影MRI、MRAは臨床的、放射線的に疑わしいときに腫瘍や血管奇形を評価するのに有用かもしれない

New  recommendaDon  ClassⅠ  Level  of  Evidence  B

2010年と変化なし  ClassⅠ  Level  of  Evidence  A

2010年と変化なし  ClassⅡb  Level  of  Evidence  B

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スコアリング

•  NIHSSが脳出血のスコアリングとして有効だとする文献もあるがICH患者の方が意識レベルが低下していることが多いのでICHスコアの方が広く使われている。  これにより重症度の共通認識を持つ  

Stroke  2001;32:891–897.

Neurocrit  Care.  2004;1:53–60.

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2.Hemostasis  and  Coagulopathy,  AnDplatelet  Agents,  and  DVT  Prophylaxis  

重度の凝固因子欠乏や血小板減少は適切に補充されるべきである  

脳出血患者でワーファリンによりINRが延長している場合、ワーファリンを中止し、ビタミンK依存凝固因子を補充し、INRを正常化する。また、ビタミンKを投与する  

PCCsは合併症が少なく、FFPよりも速やかにINRを正常化するかもしれない。FFPよりも考慮してもよい  

rFⅦaは全ての凝固因子を補充するわけではなく、INRを下げるかもしれないが、生体内で凝固は戻さないかもしれない。そのため脳出血時のワーファリンのリバースとしては勧められない

2010年と変化なし  ClassⅠ  Level  of  Evidence  C

前回のガイドラインから改定  ClassⅢ  Level  of  Evidence  C

ClassⅠ  Level  of  Evidence  C

前回のガイドラインから改定  ClassⅡb  Level  of  Evidence  B

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2.Hemostasis  and  Coagulopathy,  AnDplatelet  Agents,  and  DVT  Prophylaxis  

脳出血患者で、ダビガトラン、アピキサバン、リバロキサバンを内服中の場合、個々の症例に応じて PCCs、 FEIBA、 rFⅦa を考慮してもよい  服用2時間以内であれば活性炭の使用を考慮してもよい  ダビガトランに対しては透析を考慮してもよい

New  recommendaDon  ClassⅡb  Level  of  Evidence  C

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2.Hemostasis  and  Coagulopathy,  AnDplatelet  Agents,  and  DVT  Prophylaxis  

急性期脳出血に対してヘパリンのリバースのためにプロタミンを投与を考慮してもよい  

抗血小板薬内服中の患者に対する血小板輸血の効果は不明である  

rFⅦaは血腫増大を防ぐかもしれないが、血栓塞栓症のリスクを増大させ、全例に良いかは明らかではないためrFⅦaは推奨されない

2010年と変化なし  ClassⅢ  Level  of  Evidence  A

前回のガイドラインから改定  ClassⅡb  Level  of  Evidence  C

New  recommendaDon  ClassⅡb  Level  of  Evidence  C

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2.Hemostasis  and  Coagulopathy,  AnDplatelet  Agents,  and  DVT  Prophylaxis  

脳出血患者はDVT予防のため入院日から間欠的空気圧迫を使用するべきである。    弾性ストッキングはDVTを減らさないだけでなく、予後も改善しないため推奨しない。  

発症1~4日後、出血コントロールがついた後  低分子ヘパリンや未分画ヘパリンを投与することは  安静患者ではDVT予防のため考慮されるかもしれない

2010年と変化なし  ClassⅡb  Level  of  Evidence  B

前回のガイドラインから改定  ClassⅢ  Level  of  Evidence  A

ClassⅠ  Level  of  Evidence  A

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2.Hemostasis  and  Coagulopathy,  AnDplatelet  Agents,  and  DVT  Prophylaxis  

全身の抗凝固やIVCフィルターの留置は症候性のPE、DVT患者において適応となる  どちらにするかは発症からの時間、血腫の安定性、出血の原因、全身状況により決定する

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新規経口抗凝固薬 • 新規経口抗凝固薬に関しては使用され始めてから数年しかたっていないため大きなエビデンスはない。  • リバースとしてはFEIBA、PCCs、rFⅦaが考慮され、FFPの有効性は不明、ビタミンKは無効である  • FEIBA、rFⅦaはダビガトランに有効  • PCCsはリバロキサバン、アピキサバンに有効と考えられている  • 経口摂取2時間以内であれば活性炭の投与  • ダビガトランに対しては透析が有効    • ダビガトランは現在拮抗薬のイダルシズマブが開発された

Am  J  Hematol.  2012;87

Best  Pract  Res  Clin  Haematol.  2013;26:191–202

N  Engl  J  Med  2015;373:511-­‐20.

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抗凝固薬のリバース •  FEIBA(factor  Ⅷ  inhibitor  bypassing  acDvity)  

–  血液凝固第Ⅷ因子又は第IX因子インヒビターを保有する患者に対し、血漿中の血液凝固活性を補いその出血傾向を抑制する。  

•  PCCs(prothrombin  complex  concentrates)  –  第Ⅸ因子欠乏を補うために開発された。  3因子含有のものはⅡ、Ⅸ、Ⅹ因子を含み、4因子になると、Ⅶも含む。  クロスマッチを必要とせず、少ないボリュームである。  VKA内服中でも速やかにINRを正常化させる。  

•  rFⅦa(Recombinant  factor  Ⅶa)  –  投与により脳出血の死亡率低下とされていたが、メタアナリシ

スにより脳出血90日後の死亡率、機能予後を改善させず、  血栓塞栓症などの有害事象を増やす傾向であった。  

Am  J  Hematol.  2008;83:137–143.

Cochrane  Database  Syst  Rev  2009

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DVT

•  脳出血急性期ではDVTを合併しやすい。    

•  前回ガイドラインにおいては弾性ストッキングとIPC(intermicent  pneumaDc  compression)の使用が推奨されていた。  

•  しかし、今回新たに大規模研究が行われガイドラインが変更されている。    

Am  J  Phys  Med  Rehabil.2003;82:364–369

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•  対象 3ヵ国、55施設、2518人  多施設共同ランダム化比較試験  

•  方法 2518人の脳卒中で動けなくなった  患者に弾性ストッキングを使用する  ことでDVTを予防できるか調べた  

•  結果 弾性ストッキングではDVTの予防はできず、死亡率も変化がなかった。  皮膚障害は有意に増加した。

Lancet.  2009;373:1958–1965

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•  対象 UKの94施設 2876人  多施設共同ランダム化比較試験  

•  方法 2876人の脳卒中で動けない患者にIPCを使用することでDVTが減少するか、予後が変わるかを調べた。  

•  結果 DVTの発生率は有意に減り、30日後の死亡率も低下傾向であった。

Lancet.2013;382:516–524.

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IVCフィルター

•  脳出血に関するIVCフィルターの有効性をランダム化比較したものは試験自体が困難であるために現在のところない。  

•  実際にはDVTの発症からの期間、血腫の位置、血腫の安定性、IVCフィルターの取り外し能力によってフィルターの適応は決める必要がある。  

•  IVCフィルター使用のガイドラインでは出血のリスクがなくなった時点での従来の抗凝固療法を勧めているが脳出血に特異的な意見ではない

Chest.  2012;141:7S-­‐47S

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3.Blood  Pressure  

収縮期血圧150~220の患者で禁忌がなければ急速に140まで降圧するのは安全である。    また、機能予後を改善するかもしれない  

収縮期血圧220以上の患者に対しては頻回の血圧モニタリング、降圧薬の持続静注を行い積極的な降圧を考慮することが良いかもしれない

New  recommendaDon  ClassⅡb  Level  of  Evidence  C

2010年と変化なし  ClassⅡa  Level  of  Evidence  B

ClassⅠ  Level  of  Evidence  A

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ATTACH勉強会スライド

火曜勉強会スライドより

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INTERACT勉強会スライド

火曜勉強会スライドより

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INTERACT2 対象  21か国、144施設、2839人  多施設共同ランダム化比較試験  

方法  脳出血発症患者2839人を  1時間以内にSBP140以下にした群と、180以下にした群に振り分け  治療効果と安全性を比較した  

N  Engl  J  Med.  2013;368:2355–2365

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結果  死亡率、機能障害に有意差はなく、  機能上の評価では  積極的降圧群で有意に改善した。  

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4.General  Monitoring  and  Nursing  Care   脳出血患者の最初の管理はICUか脳神経疾患

急性期専門の医者、看護師のいる場所で行われるべきである

前回のガイドラインから改定  ClassⅠ  Level  of  Evidence  B

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ケア

•  カナダで行われた49病院を対象とした研究では、病院に登録された看護師の割合、医者-­‐看護師間の良好なコミュニケーションが30日死亡率を低下させた。  

•  スウェーデンの86病院の研究ではストロークユニットケアが3か月死亡率を低下させた。  

Nurs  Res.  2005;54:74–84

J  Neurol  Neurosurg  Psychiatry.  2009;80:881–887.

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5.Glucose  Management  

血糖はモニタリングされるべきであり、高血糖、低血糖を共に避けるべきである。

前回のガイドラインから改定  ClassⅠ  Level  of  Evidence  C

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6.Temperature  Management  

脳出血後の発熱の治療は合理的かもしれない     New  recommendaDon  

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発熱

•  発熱は脳障害の実験モデルで予後を悪化させる。  

•  しかしながら、熱の治療が明らかに有効だとは出なかった。

•  動物実験と、予備試験では低温治療が出血周囲の浮腫を減らすかもしれないと示唆されている。  

•  現在低体温療法については試験が進行中である。  

Stroke.  2009;40:e657–e665.

Anesthesiology.1991;75:130–136.

Stroke.  2010;41:1684–1689

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•  対象 19の急性期 acute  Stroke  Unit  1696人、シングルブラインドクラスターランダム化比較試験  

•  方法 48時間以内に発症した脳梗塞、脳出血患者を626人の介入群と500人の非介入群に振り分け比較    介入内容は体温、血糖  医療者教育、嚥下評価

Lancet.2011;378:1699–1706.

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•  結果 介入群で死亡率、機能予後が改善した  

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7.Seizures  and  AnDseizure  Drugs  

臨床的な痙攣は抗痙攣薬で治療すべきである  

意識に変化があり、脳波上痙攣が認められる患者は抗痙攣薬で治療すべきである。  

持続脳波モニタリングは脳損傷の程度と釣り合いが取れない意識レベル低下の患者に対して使用するべきである  

予防的な抗痙攣薬は推奨されない

前回のガイドラインから改定  ClassⅡa  Level  of  Evidence  C

2010年と変化なし  ClassⅢ  Level  of  Evidence  B

2010年と変化なし  ClassⅠ  Level  of  Evidence  C

2010年と変化なし  ClassⅠ  Level  of  Evidence  A

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8.Management  of  Medical  ComplicaDons  

肺炎のリスクを減らすために経口摂取前に  嚥下の評価を行うべきである  

心筋虚血や梗塞のスクリーニングのためにECGを行うこと、心筋逸脱酵素を測定することは合理的である

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嚥下評価

•  脳梗塞急性期の合併症として肺炎 (5.6%)、 誤嚥 (2.6%)、  嚥下障害 (2%)、 PE  (1.3%)、sepsis  (1.7%)があげられる  

 •  北アメリカの15施設で行われた研究では、一連の嚥下評価

を行った場合、肺炎の発生率は5.3%から2.4%まで下がった。

Stroke.  2005;36:1972–1976

Stroke.2007;38:2262–2269.

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9.ICP  Monitoring  and  Treatment  

特に意識レベルが低下している患者において水頭症の治療として脳室ドレナージを行うことは合理的である    

GCSが8点以下で臨床上テントヘルニアの徴候がある、もしくは脳室内出血、もしくは水頭症の場合、ICPモニタリングを考慮してもよいかもしれない  

脳潅流圧を50~70にすることは脳の自動調節能を維持するのに合理的かもしれない      

ステロイドはICPが高い場合の治療として投与すべきではない  

2010年と変化なし  ClassⅡb  Level  of  Evidence  C

前回のガイドラインから改定  ClassⅡa  Level  of  Evidence  B

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ICPとステロイド

•  脳出血患者にICPを低下させる目的でデキサメタゾンを使用したが、死亡率は変わらず、合併症のみ増加したために試験が途中で終了となっている。

N  Engl  J  Med.1987;316:1229–1233.

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10.IVH(Intraventricular  Hemorrhage)  

IVH患者に対して脳室内にrtPAの投与を投与することは、合併症が少ないが有効性と安全性は不確かである  

IVHの内視鏡的処置の有効性は不確かである New  recommendaDon  

ClassⅡb  Level  of  Evidence  B

前回のガイドラインから改定  ClassⅡb  Level  of  Evidence  B

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11.Surgical  treatment  of  ICH  

脳室の閉塞によりもしくは脳幹の圧迫により神経学的に悪化している小脳出血は可及的速やかに外科的に血腫を除去するべきである  

初回治療としての脳室ドレナージは外科的除去と比べて勧めない  

テント上の出血に対して外科的治療の有効性は確立されていない  

前回のガイドラインから改定  ClassⅡb  Level  of  Evidence  A

2010年と変化なし  ClassⅢ  Level  of  Evidence  C

ClassⅠ  Level  of  Evidence  B

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11.Surgical  treatment  of  ICH  

早めの血腫除去は状態が悪化した時に血腫除去をすることと比べ有益性は明らかではない  

状態が悪化したテント状血腫の患者の血腫除去は救命としては考慮してよいかもしれない  

大きな血腫でミッドラインシフトがある、もしくは内科的治療抵抗性のICP上昇があり、昏睡状態のテント上出血の場合、DC(Decompressive  Crainectomy)ありでもなしでも血腫除去は死亡率を下げるかもしれない  

低侵襲の血腫除去の効果は不明である 血栓溶解の有無に関わらず、内視鏡、定位的に関わらず

前回のガイドラインから改定  ClassⅡb  Level  of  Evidence  B

New  recommendaDon  ClassⅡb  Level  of  Evidence  C

New  recommendaDon  ClassⅡb  Level  of  Evidence  C

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•  対象 27か国、107施設、  1033人、ランダム化比較試験  

•  方法 発症後72時間以内の特発性脳出血患者、脳神経外科医が有効性の判断を確定できない、  血腫2cm以上、GCS5点以上の患者を手術群503人と保存的治療群530人に振り分け  

•  評価 6か月後までの死亡、身体機能低下(GOS)を評価  

Lancet.2005  ;365:387–397.

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•  結果 脳出血患者への早期手術療法は有効性を認めなかった。  しかし、サブグループ解析で脳表から1cm以内の血腫では予後良好な傾向が見られた。

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•  対象 27ヵ国、78施設、601人、ランダム化比較試験    

•  方法 発症48時間以内、血腫量10~100mlの  脳表から1cm以内の出血患者を  307人の手術群と294人の非手術群に振り分け    

•  評価 発症時の予後を基準として6か月後のGOSE、mRS、死亡率を評価  

Lancet.  2013;382:397–408.

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結果 早期手術群で有意差はないものの機能予後、死亡率ともに改善傾向があった。  

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12.Outcome  PredicDon  and  Withdrawal  of  Technological  Support    

発症からの積極的な治療とDNARを入院後二日間まで延期するのは勧められる  

以前から存在するDNARの場合はこの限りではない  

現在の脳出血早期の予後は、早期のDNARと治療中止により偏っている  

DNARがはっきり示されていない場合、適切な医療を制限してはならない

前回のガイドラインから改定  ClassⅢ  Level  of  Evidence  C

ClassⅡa  Level  of  Evidence  B

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予後予測

•  様々な予後の予測が行われているが、DNARとするだけの予後予測因子はない。  

•  早期にDNARとした群は予後が悪いが、治療が限定されるからかもしれない。

Neurology.  2010;75:626–633.

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13.PrevenDon  of  Recurrent  ICH  

患者の再発リスクを段階化することが管理に影響を与える時、脳出血再発の危険因子を考慮することは合理的である。  リスクとしては、出血部位、高齢、MRI上の微小出血の存在と数、抗凝固、アポリポタンパクEε2、ε4の対立遺伝子の存在がある  

 血圧は全ての脳出血患者でコントロールするべきである。        脳出血発症時から血圧のコントロールをするべきである        血圧の長期目標はSBP<130mmHg、DBP<80mmHgである  

前回のガイドラインから改定  ClassⅡa  Level  of  Evidence  B

前回のガイドラインから改定  ClassⅡa  Level  of  Evidence  B

前回のガイドラインから改定  ClassⅠ  Level  of  Evidence  A

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13.PrevenDon  of  Recurrent  ICH  

生活習慣の改善は有効である。  1日2杯以上のアルコール、タバコ、違法薬物、を避けること、OSASの治療をすること  

ワーファリンに関連して脳出血を起こした場合、再発リスクが高いため非弁膜症の心房細動の治療としてワーファリン長期使用の回避は勧められる。  

抗凝固療法、抗血小板薬単剤使用は強く適応があるならば勧められるかもしれない

前回のガイドラインから改定  ClassⅡa  Level  of  Evidence  B

2010年と変化なし  ClassⅡa  Level  of  Evidence  B

前回のガイドラインから改定  ClassⅡb  Level  of  Evidence  B

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13.PrevenDon  of  Recurrent  ICH   抗凝固薬関連の脳出血で経口抗凝固薬再開のタイミングは不明

である。機械弁でない患者に対して4週間以上避けることが脳出血再発のリスクを減らすかもしれない。  

 

もし、適応があればアスピリン単剤は脳出血の次の日に再開できるかもしれないが、タイミングは不明である。  

脳出血後、心房細動の患者において、ダビガトラン、アピキサバン、リバロキサバンが再発の危険性を減らすかどうかは不明である。  

脳出血患者にスタチンを制限するように推薦するほどのデータはない。

2010年と変化なし  ClassⅡb  Level  of  Evidence  C

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再発予防

•  脳出血を起こした患者はの再発率は高く、年間1~5%である。特に発症後最初の1年で高い  

•  リスクの中で血圧と抗凝固療法については修正可能であるため、注目されている。

Stroke.  2006;37:1497–1502

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再発予防:血圧 •  脳梗塞後の患者においてSBPを130以下にするこ

とで脳出血のリスクを減らした  

•  特に、糖尿病、心不全、CKDの患者ではSBP130以下、DBP80以下が推奨されている  

•  これらに加え、INTERACT2試験で脳出血発症早期からSBPを140以下にすることの安全性が確認された。  

   血圧は早期からコントロールし、最終目標はSBP130、DBP80以下を推奨とした。  

Am  J  Hypertens.  2013;26:1114–1122

JAMA.2003;289:2560–2572

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再発予防:抗凝固

•  脳出血患者の抗凝固薬再開の最適なタイミングに関しては、ランダム化比較試験がなく、いくつかの観察研究があるのみであり、不明確である。  

•  抗血小板薬は出血を広げるリスクが少ないため脳出血後安全に使えるかもしれない。  

•  ダビガトラン、リバロキサバン、アピキサバンは心房細動に関わる脳出血のリスクが少ないとされるが、まだ不確かである。  

Neurology.2006;66:206–209.

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14.RehabilitaDon  and  Recovery

潜在的に重症で複雑な障害の進行と有効性のエビデンスを増やすため、多くの専門的なリハビリを受けるよう推奨される  

可能な限り早期に開始、退院を促進、回復を促すための在宅治療を一連として継続できるときリハビリテーションは有効である。

2010年と変化なし  ClassⅡa  Level  of  Evidence  B

前回のガイドラインから改定  ClassⅠ  Level  of  Evidence  A

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今回のclass1エビデンスまとめ

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今後の展望

•  INTERECT2で血圧を安全に下げられると考えられているが、さらにATACH2が有効性を確実にするために行われている。  

•  早期手術の有効性は確立されていないが、有効なサブグループを探し続けている。  

•  低侵襲手術の有効性  •  血腫からの有害物質による周囲の神経保護  •  新規の経口抗凝固薬に関して  

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日本のガイドライン

•  日本でも2015年に脳卒中ガイドラインが発表された。  

•  日本のガイドラインでも  血圧に関するINTERACT2試験  外科的介入に関するSTICH2試験の内容を  重んじたものとなっている。  

•  また、日本の研究で脳出血急性期のSBP160以下の安全性とサブ解析によるSBP135以下の有効性の可能性が示されている。 j  hypertens  2012;30:2357-­‐2364  

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•  対象 日本、多施設、  211人、前向き観察研究   •  方法 211人の脳出血発症後3時間以内の患者を対象に

SBP160以下まで降圧して安全性を確かめた。  •  結果 神経学的悪化や有害事象は許容範囲内であった

j  hypertens  2012;30:2357-­‐2364  

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私見

•  今回のガイドラインは脳出血に対するものであるが、欧米では脳出血より脳梗塞の方が発症率が高いために、根拠とされる脳卒中の研究において、脳出血患者の割合が少ないと感じた。  

•  今後も可能であれば脳出血に対する研究が進めばさらにガイドラインが改定されると考えられる  

•  今回のガイドライン改定の中には現在既に当ICUで行われていることも含まれており、最新の文献を自施設に適応させることの重要性を再確認できた。