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© 2018 NTT DATA INSTITUTE OF MANAGEMENT CONSULTING, Inc. ICTを活用した都市部農家・レストラン・消費者 連携システム実証調査支援業務 調査報告書 2018年3月9日 株式会社NTTデータ経営研究所

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ICTを活用した都市部農家・レストラン・消費者連携システム実証調査支援業務 調査報告書

2018年3月9日株式会社NTTデータ経営研究所

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1. 調査概要

2. 少量多品目の都市農業の生産物を、地域内レストランや消費者に届けるネットワークの現状調査

(1)国分寺市における現状の整理(2)他地域におけるネットワーク構築状況調査

3. 少量多品目の都市農業の生産物を、地域内レストランや消費者に届けるためのニーズ調査(国分寺市)

(1)既存アンケート調査等の整理(2)生産・流通・販売・消費ヒアリング調査

4. 少量多品目の都市農業の生産物を地域内レストランや消費者に届ける仕組みの検討(国分寺市)

(1)流通体制の現状整理(2)ICT機能要件の検討

5. ICTの活用と実証(1)ICTシステムの構築(2)関係者による導入(3)効果検証

6. 関係者による検討会の開催

目次・・p.2

・・p.8

・・p.27

・・p.35

・・p.46

・・p.68

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1.調査概要

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本事業の背景

都市農業においては地域内に消費地があるというメリットがあり、農家から消費者が購入する拠点として直売所や庭先販売所、スーパーでの産直コーナー等の整備は進んできている。国分寺市内にもJAの直売所や駅やスーパーに設置された産直会などが点在するほか、100以上の庭先販売所が設置されている。一方で、地域内に多く所在するレストランでの地産地消の取組に対しては、消費者だけでなくレストランからのニーズはあるものの、流通経路の課題があり、安定的な取り組みを行うのが難しい状況にあった。

この状況を打破して、魅力あるまちづくりを推進するために、市民有志が協力して市内の農家からレストランへの配送を担う活動(こくベジ便)を開始し、6戸の農家と50軒以上のレストランをつなげるネットワークが構築されている(BtoBモデル)。

一方、当初は10軒程度のレストランへの配送であったが規模の拡大に伴い、配送コスト(人的コスト、配送車両、燃料費等)の増大、メールベースでの発注管理では作業時間の増大や、エクセル表の取りまとめの際のメールからの転記ミスなどの課題が生じており、取引先の拡大ができない状況にある。今後、さらに取引先(レストラン)を増加させるためには、現在の仕組みをシステム化して、効率化させることが必要である。

そこで本事業では、国分寺市で少量多品目栽培の都市型農業を営む農家と、市内のレストランを連携し、ICTを活用した地域内の地産地消を推進する「連携システム」を確立するための検討・実証調査を実施した。

以下に、具体的な実施内容および検証結果を報告する。

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本事業の実施内容

(1)少量多品目の都市農業の生産物を、地域内レストランや消費者に届けるネットワークの現状調査

① 国分寺市における現状の整理② 他地域におけるネットワーク構築状況調査(文献、WEB調査等)

(2)少量多品目の都市農業の生産物を、地域内レストランや消費者に届けるためのニーズ調査(国分寺市)

① 既存アンケート調査等の整理② 生産・流通・販売・消費ヒアリング調査

(生産:農家1件、流通:こくベジ便、販売:レストラン7件)

(3)少量多品目の都市農業の生産物を、地域内レストランや消費者に届ける仕組みの検討(国分寺市)

① 流通体制の現状整理(BtoBモデルの意義、現状の仕組みの課題の洗い出し)

② ICT機能要件の検討• 受注側(農家)機能、管理側機能、発注側(レストラン)機能のミニマム要

件と追加希望機能• 新規開発と既存ICTサービスの活用(カスタマイズを含む)等の比較検討

(4)ICTの活用と実証 ① ICTシステムの構築② 関係者説明会の実施③ 関係者による活用(トライアル)④ 効果検証

(5)関係者による検討会の開催(全3回) ① 本事業について、調査報告、BtoBモデルの現状と課題(2017/7/24)② ICTシステムに関する要件、選定過程、実証の進め方(2017/9/11)③ ICTシステムの効果検証(2018/2/7)

(6)報告書作成 ※本報告書通り

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本事業のねらい

本調査は都市農業の小規模多品目栽培、消費地が地域内にあることという特徴を活かした農家、レストラン、消費者の連携システムを構築するための連携方策、課題、ICT活用方法等を検討する事業である。

また、他地域での取り組み事例等の調査を実施し、国分寺市におけるモデルの先導性、汎用性を明らかにするものである。

本調査では、現在開始されている市民有志による地産地消を推進する取組(BtoBモデル)が、ICTの活用により持続可能な連携システムとして継続していくことに寄与するか、受発注のICT化の実証を通じて検討する。

ICTは使いやすく簡素な仕組みにすることで、次年度以降、導入農家・レストランの拡大および他地域への展開も実現可能なものとする。

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現状の取組体制・手順

現状は週2回メールで受発注を受け付け、エクセルでとりまとめて配送を行っている。当初は毎回10軒程度のレストランへの配送にとどまっていたが、現在は50軒を超えるレストランが参加し、農作物の取り扱い規模が拡大している。配達箇所の増加や、取扱いレストランの増加に向けては、現在の手作業による受注管理では限界があり、ICTの活用による効率化が望まれている。

現在の受注管理フロー

農家(6戸)

こくベジ便

レストラン(51軒)

①出荷予定野菜の問合せ(週2回、メール)

②出荷予定野菜の連絡(週2回、メール)

③出荷予定野菜の連絡・注文依頼(週2回、メール)

④注文(週2回、メール)

⑤注文内容とりまとめ(週2回、エクセル)

⑥農家別発注内容連絡(週2回、メール)

⑦注文内容承諾の連絡(週2回、メール)

⑧注文内容承諾の連絡(週2回、メール)

⑨集荷(週2回)

⑩レストランごとに分包

(週2回、人)

⑪配送(週2回)

⑫請求額、支払額のとりまとめ(月1回、エクセル)

⑬利用金額請求

(月1回、メール)

⑮支払(月1回)

⑯支払(月1回)

⑭支払額連絡

(月1回、メール)

情報の流れ物・金の流れ

人手による管理は限界・・。レストラ

ンを増やせない・・。

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本事業において目指す姿

本事業で受発注取りまとめ業務の一部をICT化することで、持続可能な連携システムとしてBtoBモデルが継続していくことに寄与するか等の効果を検証した。

本事業で導入を想定した受発注管理フロー

農家(6戸)

こくベジ便

レストラン(51軒+α)

①出荷予定野菜の問合せ(週2回、ICT)

②出荷予定野菜の連絡(週2回、ICT)

③出荷予定野菜の連絡・注文依頼(週2回、ICT)

④注文(週2回、ICT)

⑤注文内容とりまとめ(週2回、ICT)

⑥農家別発注内容連絡(週2回、ICT)

⑦注文内容承諾の連絡(週2回、ICT)

⑧注文内容承諾の連絡(週2回、ICT)

⑨集荷(週2回)

⑩レストランごとに分包

(週2回、人)

⑪配送(週2回)

⑫請求額、支払額のとりまとめ(月1回、エクセ

ル)

⑬利用金額請求

(月1回、ICT)

⑮支払(月1回)

⑯支払(月1回)

⑭支払額連絡

(月1回、ICT)

情報の流れ物・金の流れ

どうしても人手が必要な配送業務に集中でき、ミスも減らせる。

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2.少量多品目の都市農業の生産物を、地域内レストランや消費者に届けるネットワークの現状調査

(1)国分寺市における現状の整理(2)他地域におけるネットワーク構築状況調査

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(1)国分寺市における現状の整理

①国分寺市におけるこれまでの取組

「国分寺市都市と農業が共生するまちづくりモデルプラン」(2009年3月)

市内全域を対象エリアとして、農業者、市民、行政担当者、学識経験者からなるモデルプラン策定委員会を設置し、国分寺市の農業の特徴や、抱える問題点、今後の農業・農地保全のあり方や農地と町が共生するための具体策についての検討を行い、都市と農業が共生するまちづくりに対する市民の意識が高まった。

出典)「国分寺市都市と農業が共生するまちづくりモデルプラン」(国分寺市、2009年3月)

まちづくりプランにおける基本方針

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(1)国分寺市における現状の整理

②国分寺市におけるこれまでの取組

「第三次国分寺市農業振興計画」(2016年3月)

市内農業者と市民へのアンケート調査や農業関連団体等へのヒアリング、市民説明会による意見収集等、様々な市民参加の機会を設けて計画を策定した。

特に2015年施行の都市農業振興基本法の基本理念に則り掲げた施策の一つとして、「地産地消を中心とした生産・流通・販売・消費のネットワークの確立」が挙げられている。

第三次国分寺市農業振興計画における施策体系

出典)「第三次国分寺市農業振興計画」(国分寺市、2016年3月)

国分寺市における農地の分布

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(1)国分寺市における現状の整理

③国分寺市におけるこれまでの取組

「国分寺三百年野菜 こくベジ プロジェクト」(2015年度~)

江戸時代に新田開発を進め、循環型農業を実施してきた国分寺の農業を「国分寺三百年野菜こくベジ」としてブランド化し、国分寺の農業と野菜の魅力を地域内外にPRするとともに、市内のレストランが地場野菜を使ったオリジナルメニューを考案して提供したり、スタンプラリーやイベントでレストランが連携したりすることにより消費拡大を狙う事業を実施している。(地方創生加速化交付金等による実施)

一方で、市内の農家が生産した農作物を市内のレストランに届ける活動は、当初「地場野菜deグルメ」という毎年恒例イベントで行われておりレストラン、消費者ともに好評であったが一過性の取組にとどまっていた。こくベジプロジェクト開始に伴い、2016年に市民有志(こくベジ便)がこくべじの生産農家と市内レストランの間の定期配送を開始。流通を担うこくベジ便によりこくベジが生産者から消費者に届く地産地消モデルがスタートした(BtoBモデル)。

こくベジの取組

出典)「こくベジ」WEBサイト(http://www.kokuvege.jp/)

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(1)国分寺市における現状の整理

④地産地消の取組推進に向けた関係者のニーズ・課題認識およびこくベジの位置づけ

国分寺農業の課題・ニーズを踏まえると、BtoBモデルは地産地消のネットワーク確立に向けた取組みの一つとして位置づけられる。

出典)第三次国分寺市農業振興計画(国分寺市、2016年3月)に基づいて作成

《国分寺市の農家の主なニーズ・課題》•販売価格が低水準(個人直売所等)•少量多品目生産(直売所への出荷等)•特色ある農産物の生産•珍しい作物や品種の生産•出荷弱者の存在

《国分寺市の消費者の主なニーズ》•こくベジ(※)の認知度のばらつき(畑が少ないエリア等)•こくベジを意識的に購入したい•質の高さ、生産者・生産地が見えること、農業振興への貢献を価格よりも重視

•農業体験・学習よりは、購入により支えたい•農地の存在は新鮮な農産物の購入、景観の点で評価

注:「こくベジ」は、国分寺市が地産地消の促進を目的として国分寺産の野菜の愛称として採用している。上記では国分寺産の野菜の略称として使用している。

地産地消を中心とした生産・流通・

販売・消費のネットワークの確立

1. 国分寺農業らしいブランド化とPRの促進⇒こくベジ

2. 消費者のニーズ・現状を捉えた流通・販売の展開(宅配等)⇒BtoBモデルにより間接的

に寄与

3. 市内商業者等と連携した市内農畜産物の販売促進⇒BtoBモデル

<計画で掲げられている主要施策>農家や消費者のニーズに対応する国分寺市の計画

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(1)国分寺市における現状の整理

⑤BtoBモデルの概要

項目 内容

参加農家 6軒、若手の生産者中心

取扱商品 地場で生産された青果中心

配送者 市民有志(NPOのメンバー4名中心)

発注方法レストランよりメールにて注文を受け農家に発注(在庫は持たない)

集荷・配送頻度 週2回

マージン農家:売値x15%レストラン:注文金額x10%

こくベジ参加店舗(65)

こくベジ参加店舗の構成

初期からの参加店舗(21)初期からの参加店舗(21)

こくベジ便の利用店舗(49)

(カフェ、和洋中ほか各種飲食店、居酒屋、洋菓子店等)

こくベジ便の利用店舗(49)

(カフェ、和洋中ほか各種飲食店、居酒屋、洋菓子店等)

※2018年1月末時点

チェーン店や新規出店店舗等、ビジネスの観点から参加する店舗

が増えている

チェーン店や新規出店店舗等、ビジネスの観点から参加する店舗

が増えている

こくベジ便の概要

国分寺の生産農家とレストランを週2回の配送でつなぎ、地場野菜の地産地消を実現している。 当初は地場野菜を使用するレストランでイベント等で関係構築されていたレストランが参加していた

が、チェーン店や新規出店店舗等の参加が増えている。

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(1)国分寺市における現状の整理

⑥こくベジ便の1回の受注状況

1回の発注額(7月25日の例)

こくベジ便の収支(2017年4月~6月)

農産物集金 飲食店 338,250 農産物仕入れ代金 生産者 264,143運営費支度金 0 販売手数料 レストランa 2,378

人件費・車両代支払 50,000338,250 316,521

農産物集金 飲食店 327,569 農産物仕入れ代金 生産者 258,649運営費支度金 0 販売手数料 レストランa 3,813

調整金額 レストランb 562人件費・車両代支払 40,000

327,569 303,024

農産物集金 飲食店 431,882 農産物仕入れ代金 生産者 339,192運営費支度金 0 販売手数料 レストランa 4,615

人件費・車両代支払 40,000431,882 383,807

4月分

5月分

6月分

収入 支出

7月25日配送分を例にとると、この回に発注したレストランは23社であった。最低発注料金は352円、最高発注料金は4,290円であり、平均額は1,964円、受注合計金額は45,177円であった。8社は1000円未満の発注額であった。

4月~6月分のこくベジ配送における収支を見ると、1ヶ月の収入は30~40万円であり、原価率(売上における仕入れ代金の割合)は約8割と、非常に高い割合で農家への還元を行っていることが分かる。一方で、配送にかかる人件費・車両代支払いが4~5万円であり、月8~9回の配送に対して1回5,000円程度の人件費+車両代支払いを行っているが、受注管理に関する人件費等コストの支払いが想定されていない。今後もこのシステムを持続可能なものにしていくためには、システム導入や人件費等の支払いを行うことが必要であるが、現状では大きな余裕はない状況が伺える。

レストランA 352

レストランB 550

レストランC 660

レストランD 660

レストランE 704

レストランF 770

レストランG 880

レストランH 880

レストランI 1,210

レストランJ 1,265

レストランK 1,353

レストランL 1,562

レストランM 1,892

レストランN 2,134

レストランO 2,189

レストランP 2,244

レストランQ 2,970

レストランR 3,366

レストランS 3,564

レストランT 3,817

レストランU 3,905

レストランV 3,960

レストランW 4,290

合計 45,177平均 1,964

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(1)国分寺市における現状の整理

⑦こくベジ便の取組状況

こくベジ配送の取組を1年以上実施してきた経験から、季節ごとにどのような農作物が販売可能であるかをリスト化している。

これによりレストラン側は年間のメニュー計画を立てることができると好評である。

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(2)他地域におけるネットワーク構築状況調査

(前提)地産地消の分類と課題

「地産地消」の取組を分類すると、「販売活動」、「普及・広報活動」、「交流活動」に分けられる。販売活動の対象となる売り先は、主に地域住民が直接購入する場を設置するもの(直売所、庭先販売等)と、主に地域内施設が購入するもの(学校給食、飲食店等)に分けられる。

地域住民向けの販売拠点は着実に増加しており、消費者のニーズが満たされている一方で、地域内施設が地産地消を行うには配送や出荷量などの面での障壁が残されている。

出典)「地産地消推進検討会中間取りまとめ」(農林水産省、2005年8月)http://www.maff.go.jp/j/study/other/renkei/pdf/10_3.pdfを参考にNTTデータ経営研究所作成

地産地消

交流活動

販売活動

普及・広報活動

直売所

量販店・スーパー

学校給食

福祉施設等

飲食店

ホテル・旅館

加工業・6次産業

庭先販売

CSA

その他

【BtoC】主に地域住民が直接購入。販売拠点は着実に増加しており、ニーズが満たされつつある状況。

【BtoBtoC】主に地域内施設が購入。まとまった量の仕入れと配送が必要となるため、地産地消ネットワークを構築するのが難しいケースが多い。⇒都市農業地域や観光地等で

ニーズは高いものの、配送が障壁となっている。

地産地消の分類と特性

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(2)他地域におけるネットワーク構築状況調査

①【学校給食】今治市食と農のまちづくり委員会 今治では、JAの有機農業研究会の生産者からの提案で学校給食に地域内で生産されている有機野菜を導入が始まった。

農家と学校の間をJAがつないでいるが、配送は農家が担当制で実施しており、JAの手数料は通常の農産物の3〜5%よりも大幅に低い0.6%に抑えている。

学校給食では、機械導入・効率化のために規格化された野菜への需要が高いが、JAと農家が連携した体制、栄養士の各校設置、自治体の条例など地域が一体となった取組により、地産地消ネットワークが構築されている。

受発注は、月に1回まとめて実施している。

今治の学校給食における配送体制

農家 JA学校(23校)

※各校に栄養士

作付情報作付情報(月末に翌々月情報)

出荷

作付情報とりまとめ

メニュー作成

発注受注出荷調整会議

収穫 分荷・検品(場所提供のみ)

担当が配送

配送配送(毎日)

入金

入金受け取り

金額分ける

消費

注文(月1回)(毎月25日までに翌月分をまとめる)

出典)「愛媛県今治市における地産地消の展開と有機農業」(淑徳大学研究紀要、2011年)http://ci.nii.ac.jp/els/contentscinii_20170915101758.pdf?id=ART0009690642を参考にNTTデータ経営研究所作成

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(2)他地域におけるネットワーク構築状況調査

②【学校給食】長野県中野市学校給食センター 2000年にJA中野市が「いきがい農業者の会」を立ち上げた。

タマネギ、じゃがいもはJA中野市が倉庫で保管し、必要に応じて品質を確認しながら納入。それ以外の野菜・果物は生産状況を見ながら注文している。トラブル(納入量等)があった場合は、JA中野市が対応。

配送はJAが担っている。

中野市の学校給食における配送体制

農家(いきがい農業者の会) JA中野市中野市内

学校給食センター

作付情報作付情報

注文

出荷

作付情報とりまとめ

メニュー作成

発注受注内容注文割り当て

収穫

分荷・検品(場所提供のみ) 配送(毎日)

入金

入金受け取り

金額分ける

消費

出典)長野県教育委員会ホームページhttps://www.pref.nagano.lg.jp/kyoiku/hokenko/hoken/kyushoku/shokuiku/jokyo/documents/tisan.pdfを参考にNTTデータ経営研究所作成

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(2)他地域におけるネットワーク構築状況調査

③【学校給食】長野県宮田村宮田学校給食を育てる会

村農業委員会長、女性農業委員、PTA役員が発起人となり「宮田学校給食を育てる会」を設立。

学校給食を育てる会(事務局)では、生産者の作付け予定と、収穫時期・量、学校給食での必要品目・量等をあらかじめ把握し、生産者と学校給食との調整を行っている。

食材の提供は、毎月提供可能な品目、数量を事務局から各学校に連絡し、それを基に発注されたものを各生産者に振り分けて納入している。配送は農家が実施している。

宮田村の学校給食における配送体制

農家(育てる会会員13名) 学校給食を育てる会宮宮田小・中学校(1,000食)

保育園(380食)

作付情報作付情報

注文

作付情報とりまとめ

メニュー作成

発注受注内容注文割り当て

収穫(一部JA直売所の野菜)

配送

入金

入金受け取り

個別精算・支払い

消費

出典)長野県教育委員会ホームページhttps://www.pref.nagano.lg.jp/kyoiku/hokenko/hoken/kyushoku/shokuiku/jokyo/documents/tisan.pdfを参考にNTTデータ経営研究所作成

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(2)他地域におけるネットワーク構築状況調査

④【民間企業】株式会社坂ノ途中

坂ノ途中の取組内容

出典)「坂ノ途中」WEBサイトhttp://www.on-the-slope.com/

坂ノ途中の主たる取組

①営農相談(無農薬・無化学肥料)

②農作物買取(自社集荷も一部実施)

(配送費270円税込)

③店舗・個人への地域内配送(定期宅配・Web注文)

(配送費270円税込)

④地域外配送(定期宅配・Web注文)(配送費519円+クール259円)

⑤自社店舗販売

⑦ )⑦その他(海外での有機農業普及活動)

⑥自社農場

「未来からの前借り、やめましょう。坂ノ途中は持続可能な農業の普及のために活動しています」とWEBサイト冒頭に掲げる株式会社坂ノ途中は、化学肥料や農薬に頼らない農業を推進し、新規就農者を中心とした150軒以上の農家と提携をしている。

「持続可能な農業」をコンセプトとしており、これに共感する消費者・飲食店の支持を受けて、事業を拡大し続けている。

自社農場の運営や海外での有機農業普及、直営店舗の運営を通じて、共感する顧客層を増やしている。

農林水産省の補助事業を活用し、農家と小売店や飲食店をマッチングさせる「Farm0(ファーモ)」(配送の仕組みはなし)も構築している。

出典)「Farm0」WEBサイトhttps://www.farm-o.net/