抗HLA 抗体検査(FlowPRAsquare.umin.ac.jp/JSHI/qcws/file/Proc_Ab_Flow...

22
QCWS 参考プロトコル 抗 HLA 抗体検査 QCWS 参考プロトコル 抗 HLA 抗体検査(FlowPRA) 2019 年度版 作成者 日本組織適合性学会 認定制度委員会 ワーキンググループ 抗 HLA 抗体 WG

Transcript of 抗HLA 抗体検査(FlowPRAsquare.umin.ac.jp/JSHI/qcws/file/Proc_Ab_Flow...

Page 1: 抗HLA 抗体検査(FlowPRAsquare.umin.ac.jp/JSHI/qcws/file/Proc_Ab_Flow PRA.pdf抗HLA抗体の有無及び%PRA*を確認できる。Class I、Class II用キットがあり、各30種類

QCWS 参考プロトコル 抗 HLA 抗体検査

QCWS 参考プロトコル

抗 HLA 抗体検査(FlowPRA)

2019 年度版

作成者

日本組織適合性学会 認定制度委員会 ワーキンググループ

抗 HLA抗体 WG

Page 2: 抗HLA 抗体検査(FlowPRAsquare.umin.ac.jp/JSHI/qcws/file/Proc_Ab_Flow PRA.pdf抗HLA抗体の有無及び%PRA*を確認できる。Class I、Class II用キットがあり、各30種類

QCWS 参考プロトコル 抗 HLA 抗体検査

制定・改訂履歴

制 定 日 制定理由

作成

責任者 施 行 日

日本組織適合性学会が開催する QCWS での HLA 検

査を実施する際に用いる QCWS 参考プロトコルと

して制定した。

WG

改 訂 日 改訂理由 改訂内容

改訂

責任者 施 行 日

2 2019 年 9月1日

表記の統一

記載ミス

「HLA抗体」を「抗 HLA 抗

体」の表記に変更

DTT処理での回転数 WG

Page 3: 抗HLA 抗体検査(FlowPRAsquare.umin.ac.jp/JSHI/qcws/file/Proc_Ab_Flow PRA.pdf抗HLA抗体の有無及び%PRA*を確認できる。Class I、Class II用キットがあり、各30種類

QCWS 参考プロトコル 抗 HLA 抗体検査

目 次

1.FlowPRA製品概要 ............................................................ 1

1.1 FlowPRA の使用目的・原理 .............................................. 1

1.2 FlowPRA の種類 ........................................................ 2

2.検査の準備 .................................................................. 3

2.1 検査機器の準備・キット内容・検体処理 .................................. 3

2.2 検体の処理 ............................................................ 5

2.3 検査の手順 ............................................................ 6

3. FlowPRA Screening Test のフローサイトメーター条件設定 .................... 10

3.1 FSC vs. SSC .......................................................... 10

3.2 FL2 vs. FSC .......................................................... 10

3.3 FL1ヒストグラム ..................................................... 11

3.3.1 NC血清を流す意義 ................................................... 11

3.3.2 PC血清を流す意義 ................................................... 11

3.3.3 コントロールビーズを流す意義 ........................................ 11

3.4 コンペンセーションの調整(蛍光補正) ................................. 12

4. マーカー設定の考え方 ..................................................... 12

5. FlowPRA Screening Test データ例 ......................................... 13

5.1 Class I & II、コントロールビーズと NC血清を反応させた場合のヒストグラム

............................................................................. 13

5.2 Class I ビーズに対する陰性 / 陽性検体のヒストグラム .................. 14

5.3 Class II ビーズに対する陰性 / 陽性検体のヒストグラム ................. 15

6. 機器設定の重要性 ......................................................... 16

FlowPRA Screening Test ケーススタディー【1】 ................................... 16

FlowPRA Screening Test ケーススタディー【2】 ................................... 17

日本組織適合性学会 QCWS 参加施設のデータ例 .................................... 18

Page 4: 抗HLA 抗体検査(FlowPRAsquare.umin.ac.jp/JSHI/qcws/file/Proc_Ab_Flow PRA.pdf抗HLA抗体の有無及び%PRA*を確認できる。Class I、Class II用キットがあり、各30種類

1

QCWS 参考プロトコル 抗 HLA 抗体検査

1.FlowPRA製品概要

1.1 FlowPRA の使用目的・原理

FlowPRA は、フローサイトメーターを使用して血清中の抗 HLA 抗体を検出する為の研究用試

薬で、精製した HLA 抗原がコーティングされたマイクロビーズである。高感度に抗 HLA抗体

を検出する事ができる。

FlowPRAビーズと血清を反応後、FITC標識抗ヒト IgG 抗体で染色し、フローサイトメーター

により蛍光強度を測定し、抗 HLA抗体を検出する。

※本図における「HLA抗体」とは「抗 HLA 抗体」の事を示す

Page 5: 抗HLA 抗体検査(FlowPRAsquare.umin.ac.jp/JSHI/qcws/file/Proc_Ab_Flow PRA.pdf抗HLA抗体の有無及び%PRA*を確認できる。Class I、Class II用キットがあり、各30種類

2

QCWS 参考プロトコル 抗 HLA 抗体検査

1.2 FlowPRA の種類

FlowPRAは FlowPRA Screening、FlowPRA Specific、FlowPRA Single Antigen の 3種類のキ

ットがある。FlowPRA Screening: 1ビーズに 1パネルセル由来の HLA 抗原が結合しており、

抗 HLA抗体の有無及び%PRA*を確認できる。Class I、Class II用キットがあり、各 30種類

のビーズで全 HLA 抗原を網羅している。

1. FlowPRA Specific:1 ビーズに 1 パネルセル由来の HLA 抗原が結合しており、抗 HLA

抗体の有無、%PRA とおよその特異性を確認できる。各 32 種類の抗原ビーズで全 HLA

抗原を 100%網羅している。ClassI、ClassII 用キットがあり、8 色のビーズと 1 つの

コントロールビーズが予め混合しているバイアルが 4本入っている。

2. FlowPRA Single Antigen:1ビーズに対しリコンビナント HLA抗原が 1 種類のみ結合

しており、抗 HLA 抗体の抗原特異性が分かる。

* %PRA(Panel Reactive Antibody):全パネル細胞の何%が陽性となるかの値。%PRA が高い程、様々な抗原に対

する抗体を保有している指標となる。

Page 6: 抗HLA 抗体検査(FlowPRAsquare.umin.ac.jp/JSHI/qcws/file/Proc_Ab_Flow PRA.pdf抗HLA抗体の有無及び%PRA*を確認できる。Class I、Class II用キットがあり、各30種類

3

QCWS 参考プロトコル 抗 HLA 抗体検査

2.検査の準備

2.1 検査機器の準備・キット内容・検体処理

2.1.1 検査器具・資材の準備

機器 名称

フローサイトメーター

器具・資材 1.5 mL マイクロ遠心チューブ

1.5 mL マイクロ遠心チューブ用高速遠心機 (8,000-10,000 g が出せるもの)

ボルテックスミキサー

シェーカー

P-10 マイクロピペット・チップ

P-20 マイクロピペット・チップ

P-200 マイクロピペット・チップ

P-1000 マイクロピペット・チップ

50 mL ファルコンチューブ

プラスチック製ディスポピペット(先端ができるだけ細いもの) ※参考商品 1-4654-05 ピペット E-231(アズワン)

蒸留水(または精製水)

タイマー

アルミホイル

キムタオル

FACS チューブ

Page 7: 抗HLA 抗体検査(FlowPRAsquare.umin.ac.jp/JSHI/qcws/file/Proc_Ab_Flow PRA.pdf抗HLA抗体の有無及び%PRA*を確認できる。Class I、Class II用キットがあり、各30種類

4

QCWS 参考プロトコル 抗 HLA 抗体検査

2.1.2 キット内容と保存方法

未開封のキットは、-65℃以下で有効期限まで保存できる。一度解凍したあとの保存方法と

有効期限は下記のとおりである。

商品コー

ド キット内容 保存と有効期限

1検体あたりのビーズ使用

FL1-30

FlowPRA Class I ビー

10×Wash buffer

100×FITC anti-human

IgG

受領後、キットの箱を開封せずに使

用時まで-80℃~-65℃のフリーザー

に保管。製品は、この状態で保存期

間内は安定である(箱に記載された

有効期限を参照)。初回使用後およ

び/または製品の解凍後は、試薬を

2℃~5℃に保管する。一度解凍した

FlowPRA ビ ー ズ ま た は FITC

conjugated F(ab')2 anti-human IgG

は再凍結しない。解凍したビーズは、

3 ヵ月、または有効期限が 3 ヵ月以

内の場合はその有効期限まで 2℃~

5℃に保管する。Wash Buffer または

FITC conjugated F(ab')2 anti-

human IgG は、12ヵ月、または有効

期限が 12 ヵ月以内の場合はその有

効期限まで 2℃~5℃に保管する。

5 µL

FL2-30

FlowPRA Class II ビー

10×Wash buffer

100×FITC anti-human

IgG

5 µL

FL12-60

FlowPRA Class I ビー

FlowPRA Class II ビー

10×Wash buffer

100×FITC anti-human

IgG

5 µL + 5

µL

2.1.3 他に必要な試薬

商品コード 商品名 梱包単位 1検体あたりの血

清使用量

FL1-PC FlowPRAクラス IPC血清 10 tests 20 µL

FL2-PC FlowPRAクラス IIPC 血清 10 tests 20 µL

FL-NC FlowPRA クラス I & クラス IINC血

10 tests 20 µL

FLCNTBD FlowPRA コントロールビーズ 10 tests 1 µL

製品コード 品名 容量 1検体の使用量

LS-NC FlowPRA negative control serum 400 uL(20test) 20 uL

LS-AB2 FITC conjugatedgoat anti human

IgG

0.5 mg

(約 1000test)

×100 Stock を

1 uL

― PBS - -

Page 8: 抗HLA 抗体検査(FlowPRAsquare.umin.ac.jp/JSHI/qcws/file/Proc_Ab_Flow PRA.pdf抗HLA抗体の有無及び%PRA*を確認できる。Class I、Class II用キットがあり、各30種類

5

QCWS 参考プロトコル 抗 HLA 抗体検査

2.2 検体の処理

2.2.1 検体前処理(必須)

1. 血清は必ず凍結融解する。融解後は、しっかり転倒混和を行ってから遠心を行う。(8,000

~10,000 g、10分間以上)。不純物が多い検体は遠心速度、時間を増やす。バックグラウ

ンドが高くなるため、血漿の使用は推奨しない。

2. 遠心後、上層、下層および壁面に凝固物が存在する可能性があるので、慎重に中間層か

ら検体を回収して使用する。

2.2.2 再検査の為の検体処理(QCWS部会推奨)

1. 非特異シフトが見られる場合:非特異物質の吸着操作

使用する試薬:AdsorbOut(製品コード:ADSORB、One Lambda)

AdsorbOut処理プロトコル(メーカープロトコル)

① (1テストあたり)血清 30 uLに対して Adsorb Out ビーズを 3 uL加え、ボルテックス

する。

② 室温で 30 分間、振とうしながら反応させ、15,000 rpmで 5分間遠心する。

③ 上清を、ビーズを吸わないように慎重に新しい別の 1.5 mLチューブに移す。

④ もし検体に Adsorb Out ビーズが混入した場合には、再度超遠心し、上清を移す。

2. ピークの波形がギザギザで、シフトしていない場合: DTT処理による IgM 抗体の除去

使用する試薬:DTT (dithiothreitol、メーカー不問)

DTT処理プロトコル(第 4回 アメリカ組織適合性学会 ASHI推奨プロトコル)

① DTT溶液(0.05 M) 10 uLに対して血清を 90 uL加える。(DTTの終濃度は 0.005 M)

② よく混ぜた後、37℃で 30-45分間反応させる。8,000-10,000 gで 10 分間遠心し上清を

使用する。

Page 9: 抗HLA 抗体検査(FlowPRAsquare.umin.ac.jp/JSHI/qcws/file/Proc_Ab_Flow PRA.pdf抗HLA抗体の有無及び%PRA*を確認できる。Class I、Class II用キットがあり、各30種類

6

QCWS 参考プロトコル 抗 HLA 抗体検査

2.3 検査の手順

2.3.1 操作の流れ

•血清を凍結融解、転倒混和(血漿は不可)

•8,000~10,000gで10分間、遠心前処理

•NC血清、PC血清、サンプル血清とビーズを混合

•遮光、室温(20-25℃)、振とうで30分間反応反応

•洗浄バッファー1mL、遠心(9,000xg、2分間)

•上清除去、ドライボルテックス洗浄(3回)

•100倍希釈した二次抗体を100 uLずつ添加

•遮光、室温(20-25℃)、振とうで30分間反応FITC標識

•洗浄バッファー1 mL、遠心(9,000xg、2分間)

•上清除去、ドライボルテックス洗浄(2回)

Page 10: 抗HLA 抗体検査(FlowPRAsquare.umin.ac.jp/JSHI/qcws/file/Proc_Ab_Flow PRA.pdf抗HLA抗体の有無及び%PRA*を確認できる。Class I、Class II用キットがあり、各30種類

7

QCWS 参考プロトコル 抗 HLA 抗体検査

2.3.2 標準プロトコル

注意

FlowPRA Screening Test で Class I と Class II を同時にスクリーニングする場合は、1

検体あたり Class I、Class II ビーズを各 5 µL、コントロールビーズ 1 µL をあらかじ

め必要検体数分混合しておき、混合したビーズを 1 テストあたり 11 µL 使用する。

操作

1. FlowPRAビーズを使用前によくボルテックスする。各 1.5 mL チューブに NC 血清、PC 血

清(Class I & II)、サンプル血清 20 µL を分注する。

2. 下記の量のビーズを入れてピペッティングで混合する。ビーズをチューブから取る際、

不均一になるのを防ぐために、ピペッティングしながら一定の動作で取る。検体の入っ

たチューブに血清を加える際にもピペッティングし混合する。

Class I ビーズ量 Class II ビーズ

コントロールビー

ズ量

Class Iのみ 5 µL - 1 µL

Class IIのみ - 5 µL 1 µL

Class I + Class

II

5 µL 5 µL 1 µL

Page 11: 抗HLA 抗体検査(FlowPRAsquare.umin.ac.jp/JSHI/qcws/file/Proc_Ab_Flow PRA.pdf抗HLA抗体の有無及び%PRA*を確認できる。Class I、Class II用キットがあり、各30種類

8

QCWS 参考プロトコル 抗 HLA 抗体検査

3. シェーカーでゆっくりシェイクしながら暗所 20 - 25℃で 30 分間反応する。シェーカー

がない場合は、反応の間に数回軽くボルテックスする。

4. 10x Wash buffer を蒸留水(または精製水)で希釈し、1× Wash buffer を調製する。

5. 各チューブに 1x Wash buffer を 1,000 µL 加えてボルテックスし、9,000 gで 2分間遠

心後、先の細いピペットで上清をしっかり除去する。 ビーズを吸わないように注意する。

≪洗浄 1 回目≫

6. 上清を除いたペレットをほぐすために、2 秒~5 秒程度ボルテックスする。(ドライボル

テックスは、長くかけすぎ無い様に注意する。以下同様。)各チューブに 1x Wash buffer

を 1,000 µL 加えてボルテックスし、9,000 g で 2分間遠心後、先の細いピペットで上清

をしっかり除去する。 ≪洗浄 2回目≫

Page 12: 抗HLA 抗体検査(FlowPRAsquare.umin.ac.jp/JSHI/qcws/file/Proc_Ab_Flow PRA.pdf抗HLA抗体の有無及び%PRA*を確認できる。Class I、Class II用キットがあり、各30種類

9

QCWS 参考プロトコル 抗 HLA 抗体検査

7. 上清を除いたペレットをほぐすために、ドライボルテックスする。

8. 各チューブに 1x Wash buffer を 1,000 µL 加えてボルテックスし、9,000 g で 2分間遠

心後、先の細いピペットで上清をしっかり除去する。 ビーズを吸わないように注意する。

≪洗浄 3 回目≫

9. 上清を除いたペレットをほぐすために、ボルテックスする。(ドライボルテックス)

10. 洗浄 3回目の遠心時に、1テストあたり 100x FITC anti-human IgG 1 µL を Wash buffer

99 µL で希釈し、1×FITC anti-human IgG を調製する。

11. 1x FITC anti-human IgG 100 µL をビーズに加えてボルテックスし、シェーカーでゆっ

くりシェイクしながら暗所、20-25℃で 30 分間反応する。シェーカーがない場合はイン

キュベーションの間に 1 回軽くボルテックスする。

12. 各チューブに 1x Wash buffer を 1,000 µL 加えてボルテックスし、9,000 g で 2分間遠

心後、先の細いピペットで上清をしっかり除去する。 ビーズを吸わないように注意する。

≪洗浄 1 回目≫

13. 上清を除いたペレットをほぐすために、ボルテックスする。(ドライボルテックス)

14. 各チューブに 1×Wash buffer を 1,000 µL 加えてボルテックスし、9,000 g で 2分間遠

心後、先の細いピペットで上清をしっかり除去する。ビーズを吸わないように注意する。

≪洗浄 2 回目≫

15. 上清を除いたペレットをほぐすために、ボルテックスする。(ドライボルテックス)

16. 1×Wash buffer 500 µL をチューブに加え、スポイトでフローサイトメーター用のチュ

ーブに移す。

17. すぐに測定する。あるいは遮光して 2-5℃で 24 時間までは保存可能。

初期設定時などゆっくり長く流したい時は、この最終液量は 500 µL 程度まではフレキシブ

ルに変更可能(また、機種によっても最低液量が異なることがあるので注意)。

翌日読む場合は Fixing solution: PBS with 0.5% formaldehyde (add 1.35 mL 37%

formaldehyde to 100 mL PBS)を使用すると良い。

Page 13: 抗HLA 抗体検査(FlowPRAsquare.umin.ac.jp/JSHI/qcws/file/Proc_Ab_Flow PRA.pdf抗HLA抗体の有無及び%PRA*を確認できる。Class I、Class II用キットがあり、各30種類

10

QCWS 参考プロトコル 抗 HLA 抗体検査

3. FlowPRA Screening Test のフローサイトメーター条件設定

FlowPRA の測定では正しいデータをとるために、最初にフローサイトメーターの条件設定を

正しく行うことが非常に重要。この設定を保存し、以降呼び出して使用すれば、基本的には

微調整のみで測定できる。

FlowPRA Screening Test を読み取るためには、陰性コントロール血清、Class I 陽性コント

ロール血清、Class II 陽性コントロール血清、コントロールビーズを検体血清と同時に流す

必要がある。

3.1 FSC vs. SSC

3.2 FL2 vs. FSC

Class II ビーズ

Class I ビーズ

コントロールビーズ

Class I ビーズ

Class II ビーズ

コントロールビーズ

FlowPRA Screening Test Class

I、Class II、コントロールビーズ

の FSC vs. SSC ドットプロット

ビーズの半径は約 2 ~4 µm のた

め、「リンパ球向けのモード」で解

析している場合は感度を上げる。

FlowPRA Screening Test Class

I、Class II、コントロールビーズ

の FL2 vs. FSC ドットプロット

Class II ビーズおよびコントロ

ールビーズにはビーズに色素が

含まれているため、PEの蛍光強度

により領域を分けることができ

る。

Page 14: 抗HLA 抗体検査(FlowPRAsquare.umin.ac.jp/JSHI/qcws/file/Proc_Ab_Flow PRA.pdf抗HLA抗体の有無及び%PRA*を確認できる。Class I、Class II用キットがあり、各30種類

11

QCWS 参考プロトコル 抗 HLA 抗体検査

3.3 FL1ヒストグラム

3.3.1 NC血清を流す意義 NC 血清を検体と同時に流す目的は、陰性血清を基準に陽性領域と陰性領域を決めるため。

Class I Class II

3.3.2 PC血清を流す意義

PC 血清を検体と同時に流す目的は、二次抗体が働いているかを確認するため。

Class I Class II

3.3.3 コントロールビーズを流す意義

コントロール

ビーズ

Class II ビーズ

Class I ビーズ

陰性コントロール血清に

Class I 、Class II とコン

トロールビーズを反応させ

た際の FL1 ヒストグラム

コントロールビーズを他の

ビーズと混合して流す目的

は、血清中の非特異反応の有

無を確認するため。抗 HLA抗

体陰性の検体にも関わらず

非特異反応によりヒストグ

ラムが右側にシフトする場

合があり、コントロールビー

ズのヒストグラムを基に非

特異か陽性反応かを判断す

る。

Page 15: 抗HLA 抗体検査(FlowPRAsquare.umin.ac.jp/JSHI/qcws/file/Proc_Ab_Flow PRA.pdf抗HLA抗体の有無及び%PRA*を確認できる。Class I、Class II用キットがあり、各30種類

12

QCWS 参考プロトコル 抗 HLA 抗体検査

3.4 コンペンセーションの調整(蛍光補正)

コンペンセーションとは、2 種類以上の蛍光の測定において、それぞれの蛍光の波長が重な

り合う場合(例:FITC と PE)、互いの検出器にいわゆる「光漏れ」が起きるため、電気的に

補正するもの。

1:Class I ビーズ + NC 血清(FL-NC)、2:Class I ビーズ + Class I PC 血清(FL1-PC)、

3:Class IIビーズ + PBS を混合したビーズをフローサイトメーターに流し、集団の位置を

調整する。

集団 2 は上にずれる傾向なので、下に寄せて集団 1 と 2 が X 軸と並行な位置に来る

ように調整(FL2-%FL1 の値を上げる)

集団 3 は右にずれる傾向なので、左に寄せて集団 1 と 3 が Y 軸と並行な位置に来る

ように調整(FL1-%FL2 の値を上げる)

4. マーカー設定の考え方

Class I ビーズ・ Class II ビーズ・コントロールビーズと血清を反応させた場合の

Class I ヒストグラム

検体血清が図のようにネガティブピークがはっきり分かる形状の場合、NC 血清で設定し

た M1 をそのまま用いるのではなく、ネガティブピークのすぐ横のピーク谷間に合わせ

て M2 を再設定して%PRA を求める。

凡例

集団 1: Class I ビーズ + FL-NC (1)

集団 2: Class I ビーズ + FL1-PC (2)

集団 3: Class II ビーズ + PBS (3)

ネガティブ

コントロール血清

被検血清

Page 16: 抗HLA 抗体検査(FlowPRAsquare.umin.ac.jp/JSHI/qcws/file/Proc_Ab_Flow PRA.pdf抗HLA抗体の有無及び%PRA*を確認できる。Class I、Class II用キットがあり、各30種類

13

QCWS 参考プロトコル 抗 HLA 抗体検査

5. FlowPRA Screening Test データ例

5.1 Class I & II、コントロールビーズと NC 血清を反応させた場合のヒストグラム

NC Class I

NC Class II

Cont.

Page 17: 抗HLA 抗体検査(FlowPRAsquare.umin.ac.jp/JSHI/qcws/file/Proc_Ab_Flow PRA.pdf抗HLA抗体の有無及び%PRA*を確認できる。Class I、Class II用キットがあり、各30種類

14

QCWS 参考プロトコル 抗 HLA 抗体検査

5.2 Class I ビーズに対する陰性 / 陽性検体のヒストグラム

Class I抗体 陽性検体のヒストグラム例

①、②、③は波形が右側にシフトしており、明らかに多峰性を示している。

②は一番左側のピークの横に新たなライン(―線)を引き直し、%PRA を変更する。

④は小さい山が右側にシフトしており、弱陽性の抗 HLA 抗体があると思われる。

98.4%

0.9%

陰性検体

陽性検体

Class I の NC 血清(P14)のヒ

ストグラムと比較して、波形が

ほぼ同一の位置にあり、形状も

同一。

Class I の NC 血清(P14)のヒ

ストグラムと比較して、波形が

右側へシフトしており、多峰性

を示している。

① ②

③ ④

Page 18: 抗HLA 抗体検査(FlowPRAsquare.umin.ac.jp/JSHI/qcws/file/Proc_Ab_Flow PRA.pdf抗HLA抗体の有無及び%PRA*を確認できる。Class I、Class II用キットがあり、各30種類

15

QCWS 参考プロトコル 抗 HLA 抗体検査

5.3 Class II ビーズに対する陰性 / 陽性検体のヒストグラム

Class II 抗体 陽性検体のヒストグラム例

①は波形が右側にシフトしており、明らかに多峰性を示している。

②は小さい山が右側に見える。また、ピークの右側の部分が少し膨らんでいる。

99.8%

0.3%

陰性検体

陽性検体

Class II の NC 血清(P14)の

ヒストグラムと比較して、波形

がほぼ同一の位置にあり、形状

も同一。

Class II の NC 血清(P14)の

ヒストグラムと比較して、波形

が右側へシフトしており、多峰

性を示している。

① ②

Page 19: 抗HLA 抗体検査(FlowPRAsquare.umin.ac.jp/JSHI/qcws/file/Proc_Ab_Flow PRA.pdf抗HLA抗体の有無及び%PRA*を確認できる。Class I、Class II用キットがあり、各30種類

16

QCWS 参考プロトコル 抗 HLA 抗体検査

6. 機器設定の重要性

添付文書と同じプロットが描けているか、確認する。

添付文書より

FSC vs. SSC FSC vs. FL-2

機器の設定が出来ていない例

FSC vs. SSC FSC vs. FL2

(日本組織適合性学会 HP 第 12 回 QCWS 報告書データ 引用)

Class I

Class II

Control

Page 20: 抗HLA 抗体検査(FlowPRAsquare.umin.ac.jp/JSHI/qcws/file/Proc_Ab_Flow PRA.pdf抗HLA抗体の有無及び%PRA*を確認できる。Class I、Class II用キットがあり、各30種類

17

QCWS 参考プロトコル 抗 HLA 抗体検査

FlowPRA Screening Test ケーススタディー【1】

同一検体(HLA Class I 抗体陰性の検体)を、FlowPRA Screening Test Class I で測定した

もの。異なる施設およびフローサイトメーターで測定した例を下図に示す。

説明:

ヒストグラムのパターンが大きく 2パターンに分かれた。すなわち、ネガティブコントロー

ルと同じ位置に検体血清のピークが出た施設、ネガティブコントロールよりも右側にシフト

した施設があった。さらに検体血清が右側にシフトした場合、陰性と判定した施設や陽性と

判定した施設があった。検体血清のヒストグラムは右側にシフトしているが、波形がシン

グルピークで、かつ NC 血清とほぼ同形のため陰性と判断する。検体血清が右側にシフトし

た原因として、①コンペンセーション調整が合っていない、②洗浄が悪い、③機器の差な

どが考えられる。

(日本組織適合性学会 HP 第 12 回 QCWS 報告書データ 引用)

陰性と判定した施設 陽性と判定した施設 ヒストグラムは 右側へシフトしているが 陰性と判定した施設

Page 21: 抗HLA 抗体検査(FlowPRAsquare.umin.ac.jp/JSHI/qcws/file/Proc_Ab_Flow PRA.pdf抗HLA抗体の有無及び%PRA*を確認できる。Class I、Class II用キットがあり、各30種類

18

QCWS 参考プロトコル 抗 HLA 抗体検査

FlowPRA Screening Test ケーススタディー【2】

同一検体(HLA Class II 抗体弱陽性の検体)を、FlowPRA Screening Test Class II で測定

したもの。

異なる施設およびフローサイトメーターで測定した例を下図に示す。

説明:

陰性と判定とした 2施設について、「施設 I」は機器の適切なコンペンセーション調整が出

来ていない。「施設 II」はシングルピークのため陰性と判断している。「施設 II」はサンプ

ル調製の手技に問題があると考えられる。使用する血清をよく遠心し、ビーズと血清との反

応を行った後、洗浄や二次抗体のラベリングを正確に行うことをおすすめする。

保留と判定した「施設 III」、「施設 IV」、「施設 VI」は、右側に見られる小さなピークを陽

性と判断して構わない。

「施設 V」は多施設と比べてほとんど右側のピークがほぼ見えず、二次抗体のラベリングが

出来ていない可能性がある。洗浄時(特に二次抗体の添加前)は、上清をしっかり除去す

る。再度検査することをおすすめする。

(日本組織適合性学会 HP 第 12 回 QCWS 報告書データ 引用)

陰性と判定した施設 (2 施設) 正しいヒストグラム

陽性と判定した施設 (5 施

設)

保留と判定した施設 (4 施設)

施設 II 施設 I

施設 III 施設 IV 施設 V 施設 VI

Page 22: 抗HLA 抗体検査(FlowPRAsquare.umin.ac.jp/JSHI/qcws/file/Proc_Ab_Flow PRA.pdf抗HLA抗体の有無及び%PRA*を確認できる。Class I、Class II用キットがあり、各30種類

19

QCWS 参考プロトコル 抗 HLA 抗体検査

日本組織適合性学会 QCWS 参加施設のデータ例

同一検体を用いて FlowPRA Screening Test Class I を行った際の、QCWS 参加施設のヒスト

グラム(raw data)。同一の血清を用いたにもかかわらず、様々なヒストグラムが得られ

る。

各施設の機器においてピークの出方や波形の傾向を把握することによって、弱陽性の抗 HLA

抗体反応や非特異反応を見つけることができ、検査の精度を上げることができる。

(日本組織適合性学会 HP 第 12 回 QCWS 報告書データ 引用)