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HbA1c目標値が緩和された背景 医療法人 瑞心会 渡辺病院 副院長 診療統括部長 中村 了 第九回 日本ローカーボ食研究会学術集会 @ 安保ホール 2019年3月10日

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HbA1c目標値が緩和された背景

医療法人 瑞心会 渡辺病院

副院長 診療統括部長 中村 了

第九回 日本ローカーボ食研究会学術集会 @ 安保ホール 2019年3月10日

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糖尿病を強化療法で治療したら? (5~10年程度)

UKPDS 33/34 ACCORD ADVANCE VADT-1 Lancet 2010

(後ろ向きCohort)

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・強化療法にて細小血管合併症が減少 (RR 25%減 P=0.0099)

・全死亡や大血管合併症では 有意なリスクの差はなし

Lancet 1998

あらゆる糖尿病関連合併症

全死亡

心筋梗塞/脳卒中

細小血管合併症

Intensive blood-glucose control with sulphonylureas or insulin

compared with conventional treatment and risk of complications in patients

with type 2 diabetes (UKPDS 33). UK Prospective Diabetes Study (UKPDS) Group.

SU剤やインスリンで強化療法 vs 食事療法中心の緩やか従来療法

はたして 糖尿病(2型)の合併症は どうなるのか?

UKPDS 33

N(PY)NT=357(人年)

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①メトホルミンによる強化療法は、従来療法に比して

・あらゆる糖尿病合併症が減少(RR 32%減 p=0.0023)

・糖尿病関連死が減少(RR 42%減 p=0.017)

・全死亡も減少(RR 36%減 p=0.011)

Lancet 1998

あらゆる糖尿病合併症 メトホルミン単独強化療法 SU剤・インスリン強化療法

糖尿病関連死

全死亡

心筋梗塞

脳卒中

末梢血管障害(PAD)

細小血管障害

メトホルミン強化療法 vs 従来療法

Effect of intensive blood-glucose control with metformin on complications

in overweight patients with type 2 diabetes (UKPDS 34).

UK Prospective Diabetes Study (UKPDS) Group.

体重が多い糖尿病(2型)の人で メトホルミンを使った強化療法の合併症への効果

UKPDS 34

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②メトホルミンは、SU剤・インスリン強化療法に比して

・あらゆる糖尿病合併症が減少( p=0.0034)

・全死亡も減少(p=0.021)

・脳卒中も減少(p=0.032)

Lancet 1998

あらゆる糖尿病合併症

糖尿病関連死

全死亡

心筋梗塞

脳卒中

末梢血管障害(PAD)

細小血管障害

メトホルミン強化療法 vs SU剤・インスリン強化療法

0.73

0.70

0.52

メトホルミン単独強化療法 SU剤・インスリン強化療法

Effect of intensive blood-glucose control with metformin on complications

in overweight patients with type 2 diabetes (UKPDS 34).

UK Prospective Diabetes Study (UKPDS) Group.

体重が多い糖尿病(2型)の人で メトホルミンを使った強化療法の合併症への効果

UKPDS 34

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Effects of Intensive Glucose Lowering in Type 2 Diabetes

The Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes Study Group* (ACCORD)

・強化療法でも 標準療法に比して 心血管イベント減少せず

・強化療法では 死亡リスクが増大!!!(HR 22%増 p=0.04)

NEJM 2008

糖尿病(2型)の強化療法の効果

ACCORD 研究

非致死性心筋梗塞 非致死性脳卒中 心血管病による死亡

全死亡

強化療法 vs 標準療法

心血管病による死亡

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Intensive Blood Glucose Control and Vascular Outcomes

in Patients with Type 2 Diabetes The ADVANCE Collaborative Group*

・強化療法が標準療法に比して

複合細小血管/大血管イベントが減少(HR=0.90 p=0.01)

・大血管イベントは有意差なし(HR=0.94 p=0.32)

糖尿病(2型)の強化療法と血管合併症について

ADVANCE 研究

NEJM 2008

複合細小血管/大血管イベント 大血管イベント

標準療法

強化療法

強化療法

標準療法

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Intensive Blood Glucose Control and Vascular Outcomes

in Patients with Type 2 Diabetes The ADVANCE Collaborative Group*

・強化療法で細小血管イベントは減少(HR=0.86 p=0.01) ※とくに腎症(HR=0.79 p=0.006)

・全死亡率は有意差なし(HR=0.93 p=0.28) ※心血管死も有意差なし(HR=0.88 p=0.12)

糖尿病(2型)の強化療法と血管合併症について

ADVANCE 研究

NEJM 2008

細小血管イベント 全死亡率

NEJM 2008

強化療法

標準療法

標準療法

強化療法

≒NNT=66.7

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Glucose Control and Vascular Complications in Veterans

with Type 2 Diabetes (Veterans Affairs Diabetes Trial (VADT)-1)

・強化療法は 標準療法に比して

心血管イベントは減少なし

(HR=0.88 p=0.14)

・心血管死も減少なし

(HR=1.32 p=0.26)

・全死亡も減少なし

(HR=1.07 p=0.62)

※強化療法において細小血管合併症も減少なし

ただし アルブミン尿悪化のみ減少(p=0.01)

※強化療法において低血糖は増加(p<0.001)

糖尿病(2型)の血糖コントロールと 血管合併症について

VADT-1 研究

心血管イベント

心血管死

全死亡

標準療法

強化療法

強化療法

標準療法

強化療法

標準療法

NEJM 2009

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Survival as a function of HbA1c in people with type 2 diabetes

: a retrospective cohort study

・Cohort 1/2ともに HbA1c=7.5%付近がもっとも長生き

・Cohort 1は HbA1c=6.4%/10.6%で死亡リスク増

・Cohort 2は HbA1c=6.4%/6.9%/7.3%/9.4%/10.6%

で死亡リスク増

Lancet 2010

糖尿病(2型)の人において HbA1cの関数としての生存率

:後向きコホート研究

HR=1.30 p=0.0072

HR=1.93 p<0.0001 HR=1.79 p<0.0001

HR=1.45 p=0.0001

HR=1.35 p=0.0007

HR=1.46 p<0.0001

HR=1.80 p<0.0001

Cohort 1 SU剤+メトホルミン Cohort 2 インスリン療法

これが確かなら 糖尿病ガイドラインに HbA1cの下限値を示す改訂が必要だろう

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ここまでのまとめ

糖尿病強化療法は・・・ UKPDS 33 UKPDS 34 ACCORD ADVANCE VADT-1 Lancet 2010

HbA1c(介入 vs コントロール) 7.0 vs 7.9 % 7.4 vs 8.0 %

NS 6.4 vs 7.5 % 6.5 vs 7.3 % 6.9 vs 8.4 % 7.5% vs その他

(後ろ向きCohort研究)

介入法(介入 vs コントロール) SU・インスリン vs 食餌 メトホルミン vs 食餌

vs SU・インスリン 6%以下 vs 7%代 目標 6.5%以下目標 vs 標準 6%以下 vs 9%以下 目標

(両群ロシグリタゾン使用)

経口糖尿病薬:Cohort 1 インスリン:Cohort 2

経過観察期間 10年以上 10.7 3.5(中断) 5 5.6 5 年齢 54 53 62 66 60 64

総死亡ハザードリスク (p値) 0.94(p=0.44) 0.64(p=0.011) 0.70(p=0.021)

1.22(p=0.04) 0.93(p=0.28) 1.07(p=0.62)

1.3~1.93(p<0.0072) HbA1c ≦6.4%(≧10.6%) 1.35~1.79(p<0.0007) HbA1c ≦7.3%(≧9.4%)

大血管障害ハザードリスク (p値)

心 0.84(p=0.052) 脳 1.11(p=0.52)

心 0.61(p=0.01) 0.77(p=0.12) 脳 0.59(p=0.13)

0.52(p=0.032)

0.90(p=0.16) 0.94(p=0.32) 心 0.88(p=0.64) -

細小血管障害ハザードリスク (p値)

0.75(p=0.0099) ※N(PY)NT=357人年

0.71(p=0.19) 0.85(p=0.39)

(microalbuminuria)

0.81 ※ACCORD2010 0.86(p=0.01) ※NNT=66.7人

(microalbuminuria)

0.66(p=0.01) -

その他

大血管障害死亡 心 0.94(p=0.63) 脳 1.17(p=0.60) 糖尿病関連合併症 0.88(p=0.029)

糖尿病関連合併症 0.68(p=0.0023) 0.73(p=0.0034) 糖尿病関連死 0.58(p=0.017) 0.73(p=0.11)

心血管病による死亡 1.35(p=0.02)

複合細小血管 & 大血管イベント 0.90(p=0.01)

心血管死 1.32(p=0.26)

-

糖尿病治療10年程度までは 強化療法によって

・細小血管合併症は 抑制できるかもしれない(その効果は さほど大きくないが・・・)

・総死亡/大血管イベント(大血管死亡を含めて)を減らすことは困難! ・SU剤/インスリンでHbA1c≦6.4%にしてしまうと 総死亡率が上昇! (HbA1cは 7%以上が無難! とくにインスリン使用では 7.5%以上の方が安心?!!)

・メトホルミンだけは 総死亡率/糖尿病関連死(合併症)を減少させる!!

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糖尿病の強化療法やめた後は?

(10~20年程度)

UKPDS 80 VADT-2

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10-Year Follow-up of Intensive Glucose Control

in Type 2 Diabetes

・過去の強化療法で

糖尿病関連イベント/全死亡リスクが減少

糖尿病(2型)を強化療法後に さらに10年間フォローアップしたら?

UKPDS 80

NEJM 2008

あらゆる糖尿病関連合併症 (SU剤・インスリン)

あらゆる糖尿病関連合併症 (メトホルミン)

細小血管合併症 (SU剤・インスリン)

細小血管合併症 (メトホルミン)

心筋梗塞 (SU剤・インスリン)

心筋梗塞 (メトホルミン)

全死亡 (SU剤・インスリン)

全死亡 (メトホルミン)

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10-Year Follow-up of Intensive Glucose Control

in Type 2 Diabetes

・Legacy effect(遺産効果)

糖尿病(2型)を強化療法後に さらに10年間フォローアップしたら?

UKPDS 80

NEJM 2008

SU剤・インスリン使用

あらゆる糖尿病関連合併症 糖尿病関連死 全死亡 心筋梗塞 脳卒中 末梢血管障害(PAD) 細小血管障害

あらゆる糖尿病関連合併症 糖尿病関連死 全死亡 心筋梗塞 脳卒中 末梢血管障害(PAD) 細小血管障害

メトホルミン使用 N(PY)NT=313(人年)

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Follow-up of Glycemic Control and Cardiovascular Outcomes

in Type 2 Diabetes

Diabetes (Veterans Affairs Diabetes Trial (VADT)-2)

強化療法と標準療法の血糖コントロール状況の推移

NEJM 2015

糖尿病(2型)の血糖コントロールと 血管合併症について

VADT-2 研究

標準療法 8.4%

強化療法 6.9%

8.3%

7.8%

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Follow-up of Glycemic Control and Cardiovascular Outcomes

in Type 2 Diabetes

Diabetes (Veterans Affairs Diabetes Trial (VADT)-2)

・強化療法は 標準療法に比して 複合心血管イベント発症が減少 (HR=0.83 p=0.04)

※116人年あたり1イベント減少 (11.6人を5年間強化療法して その後5年間治療継続できれば 1名の心血管イベント予防できる)

・心血管死は減少なし (HR=0.88 p=0.42) ・総死亡も減少なし (HR=1.05 p=0.54)

NEJM 2015

糖尿病(2型)の血糖コントロールと 血管合併症について

VADT-2 研究

標準療法

強化療法

強化療法

標準療法

標準療法

強化療法

複合心血管イベント

心血管死

総死亡

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ここまでのまとめ

糖尿病強化療法は・・・ UKPDS 80 VADT-2 HbA1c (介入 vs コントロール) NS(8.0%前後) 7.8 vs 8.3 %

介入法 (介入 vs コントロール) メトホルミン強化療法後(8.4%) vs 食餌(8.9%)

SU・インスリン強化療法後(7.9%) vs 食餌(8.5%)

強化療法後(6.9%) vs 標準療法後(8.4%) ロシグリタゾン+BMI=27を境にSU剤かBG剤 目標値達成できれなければインスリン追加

経過観察期間 20年以上 10年程度 年齢 63 61

総死亡ハザードリスク(p値) 0.73(p=0.002) 0.87(p=0.007)

1.05(p=0.54)

大血管障害ハザードリスク(p値)

心 0.67(p=0.005) 脳 0.80(p=0.35) 心 0.85(p=0.01) 脳 0.91(p=0.39)

0.83(p=0.04)

細小血管障害ハザードリスク(p値) 0.84(p=0.31) 0.76(p=0.001)

-

その他

糖尿病関連合併症 0.79(p=0.01) 0.91(p=0.04) 糖尿病関連死 0.70(p=0.01) 0.83(p=0.01)

心血管死 0.88(p=0.42)

強化療法開始から10~20年ほどすると (強化療法 ⇒ HbA1c<8% × 5~10年間の治療歴)

・細小血管合併症抑制効果は維持される! ・10年経過すると 大血管イベント(心血管)を抑制できそうだ! ・20年経過すると 総死亡/糖尿病関連死を抑制できそうだ! ・メトホルミンの総死亡/糖尿病関連死/心血管イベント減少効果も維持!! Legacy effect!

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これらのデータを世界はどう考えたか?

JAMA 2015/2016(総説) 日本(日本糖尿病学会・日本老年医学会 2017) アメリカ合衆国(米国内科学会 2018)

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Diabetes Advances in Diagnosis and Treatment

JAMA 2015 MACE, major atherosclerotic cardiovascular events, including myocardial infarctions and stroke and cardiovascular deaths

糖尿病 その診断と治療における進歩

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Diabetes Advances in Diagnosis and Treatment

・糖尿病(2型)治療の第一選択はメトホルミン (時にαGIも) (血糖降下作用、低血糖なし、体重増加なし、忍容性に優れる、長期使用経験、副作用が少ない、など)

・糖尿病(2型)治療の第二選択に適切な薬剤ははっきりせず

JAMA 2015

糖尿病 その診断と治療における進歩

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Polypharmacy in the Aging Patient:

A Review of Glycemic Control in Older Adults

With Type 2 Diabetes

重要性—高齢者(65歳以上)の糖尿病における

適切な血糖コントロール目標値は不明

観察—大規模なRCTでは 高齢者に強化療法をしても

・10年間は大血管合併症を抑制することができない

・8年間は細小血管合併症を抑制することもできない

・その上 重度低血糖は1.5~3倍に増加

・HbA1cが7.5%以下でも9.0%以上でも 害が益を上回る ※治療負担と低血糖リスクの低い治療⇒より低い目標値

※注射や頻回血糖測定を避けたい希望⇒インスリン注射不要な高めの目標値

結論と妥当性—高齢者の適切なHbA1c値は

7.5~9.0%が最大の益・最小の害 ※ただし、HbA1c目標値は、患者と相談して決めるのがよい。

JAMA 2016

高齢者における多剤服用: 高齢者の糖尿病(2型)おける 血糖コントロールに関するレヴュー

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日本糖尿病学会 と 日本老年医学会 の 合同委員会 声明

2016.5.20

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声明1: 糖尿病(2型)の血糖管理目標を個別化すべき (薬物療法の利益と害 患者の希望 患者の全身状態や生命予後

治療の負担 療養にかかる費用)

声明2:ほとんどの糖尿病(2型)のHbA1cの管理目標を

7%以上 8%未満 とすべき

声明3: HbA1c 6.5%未満では減薬を検討すべき

声明4:生命予後が10年未満と思われる患者は

治療による利益よりも害が上回る (①80歳以上 ②介護施設入所者 ③認知症、がん、末期腎不全、

重症慢性閉塞性肺疾患、うっ血性心不全などの慢性疾患)

高血糖に関連する症状が最小限になるように治療 (HbA1cの目標を あえて設定しない!)

ACP (American College of Physicians) 声明

Ann Intern Med 2018.3.6

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これらのデータを私はどう感じたか?

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HbA1cの目標値

理想的目標値

(本音の目標値)

①食事療法など

 生活指導のみ②メトホルミン

③低血糖を

  起こしにくい薬剤    (メトホルミン以外) ※GLP-1製剤、DPP-4阻害剤、

      チアゾリジン系、α-GI、

         SGLT-2阻害剤)

④低血糖を

起こしうる薬剤  (SU剤、グリニド系)

⑤インスリン製剤

若年者 男性65歳未満 女性70歳未満

~6.2%(~7.5%)

~6.2%(~7.5%)

~7.5%(~8.0%)

6.5~7.5%(7.0~8.0%)

6.5~7.5%(7.0~8.0%)

高齢者 男性65歳以上 女性70歳以上

~7.5%(~7.5%)

~7.5%(~7.5%)

~8.0%(~9.0%)

7.0~8.0%(7.0~9.0%)

7.0~8.0%(7.5%~9.0%)

超高齢者 (余命10年未満と予測)

~9.0%(目標値なし)

~9.0%(8.0%~)

使用しない(使用しない)

7.0%~9.0%(8.0%~)

7.5%~9.0%(8.0%~)

★余命10年以下では、(HbA1c=8.0~9.0%へ) ・高血糖による症状抑制・脱水予防を唯一の目的とする(HbA1c≦9.0%) ・多剤併用は避ける(HbA1cは必要最低限の改善で可)

★低血糖を起こしうる薬剤を使用する際は、(HbA1c=7.0~8.0%へ ただし余命20年以上の場合は低血糖に留意してHbA1c=6.5~7.5%でも可) ・予命10年以上20年未満においては、大・小血管障害の予防を(死亡リスクを上げないように安全にするにはHbA1c≦8.0%) (おおよそのデータは、8以上のコントロールと8未満の強化療法 ※ADVANCE、UKPDS 33 以外は) ・余命10年以上20年未満においては、死亡リスクを上昇させてないような配慮を(SU剤はHbA1c≧7.0% インスリン製剤はHbA1c≧7.5%が望ましい) ・余命20年以上においては、死亡リスク抑制を含めて各種合併症の抑制を(HbA1c≦7.5%) ・余命20年以上においては、死亡リスクを上昇させてないような配慮を(SU剤+インスリン製剤は、注意深くHbA1c≧6.5%が絶対条件)

★メトホルミンと食餌療法においては、(HbA1c≦7.5%へ) ・メトホルミンを使用する際は、死亡率を含めて各種合併症の抑制を(HbA1c≦7.5%) ・境界型糖尿病においても、大血管合併症の進行、発がん率の上昇が指摘されているので、若年層においては、可能であればHbA1c≦6.2%としたい。

・食餌療法とメトホルミン使用において、下限値は不要

★メトホルミン以外の低血糖を起こしにくい薬剤を使用する際は、(SU剤・インスリン製剤を追加する前の橋渡し的薬剤) ・余命10年以上20年未満においては、多剤併用にならない範囲で大・小血管障害の予防を(HbA1c≦8.0%) ・余命20年以上においては、死亡率を含めたすべての糖尿病性合併症リスク抑制を目標とする(HbA1c≦7.5%)

私の考えでのHbA1c目標

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症 例 (2例)

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症例 1 84歳男性 HbA1c=7.7% (他院より紹介 明らかな合併症なし)

併存疾患:アルツハイマー病(MMSE=12点)

その他: 奥様(軽度認知機能障害の疑い)と二人暮らし

移動は室内は杖・手すり 室外は車イス 排泄はオムツ対応

糖尿病治療:ライゾデグ 10-4単位(朝-夕食前)

メトホルミン250㎎×2

HbA1c目標値:8.0~9.0% (減薬が望ましい)

経過:

初診時 インスリン注射の打ち忘れがある(インスリンが過剰に余る)と

判断されたため、インスリン中止。グリメピリド 1mg×1に変更。

2か月後 HbA1c=9.3%まで増悪あり、グリメピリド2㎎×1に増量。

以後、HbA1c=8.5%前後にて安定。

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症例 2 78歳女性 HbA1c=6.3% (糖質制限食指導希望で転院)

併存疾患:アルツハイマー病(MMSE=21点) 脂質異常症

その他: 尿Alb(+) ADL自立 娘と同居 糖尿病改善への熱意強い

糖尿病治療: ボグリボース 0.2㎎×3 (α-GI)

シタグリプチン 100mg×1 (DPP-4阻害剤)

HbA1c目標値:~8.0% ⇒ 減薬中止で~7.5%目標へ?

経過:

初診時 2CARD相当の食事内容。

糖尿病悪化の不安があったようだったが 1CARDに緩める。

2か月後 HbA1c=6.4%。ほぼ悪化なし。徐々に強化療法のメリットが

少ないことを理解。α-GI・DPP-4阻害剤を順次中止。

1年後 HbA1c=7.0~7.2%程度で維持。そのまま経過観察中。

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HbA1cの目標値

理想的目標値

(本音の目標値)

①食事療法など

 生活指導のみ②メトホルミン

③低血糖を

  起こしにくい薬剤    (メトホルミン以外) ※GLP-1製剤、DPP-4阻害剤、

      チアゾリジン系、α-GI、

         SGLT-2阻害剤)

④低血糖を

起こしうる薬剤  (SU剤、グリニド系)

⑤インスリン製剤

若年者 男性65歳未満 女性70歳未満

~6.2%(~7.5%)

~6.2%(~7.5%)

~7.5%(~8.0%)

6.5~7.5%(7.0~8.0%)

6.5~7.5%(7.0~8.0%)

高齢者 男性65歳以上 女性70歳以上

~7.5%(~7.5%)

~7.5%(~7.5%)

~8.0%(~9.0%)

7.0~8.0%(7.0~9.0%)

7.0~8.0%(7.5%~9.0%)

超高齢者 (余命10年未満と予測)

~9.0%(目標値なし)

~9.0%(8.0%~)

使用しない(使用しない)

7.0%~9.0%(8.0%~)

7.5%~9.0%(8.0%~)

日本ローカーボ食研究会は、中京長寿医療研究推進財団から助成いただいております。

総 ま と め

HbA1c≦7.5% HbA1c=7.0~8.0%

HbA1c=8.0~9.0%

ご清聴ありがとうございました 医療法人 瑞心会 渡辺病院

副院長 診療統括部長 中村 了