シンボルペア通信路のための符号の構成と...

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シンボルペア通信路のための符号の構成と 復号法について 廣友雅徳 , 瀧田愼 , 森井昌克 佐賀大学 神戸大学 IT研究会 20181218

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シンボルペア通信路のための符号の構成と復号法について

廣友雅徳†, 瀧田愼‡ ,森井昌克‡

†佐賀大学 ‡神戸大学

IT研究会

2018年12月18日

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発表概要

シンボルペア通信路のための符号の構成と復号法について解説する.

• シンボルペア通信路の定義

• シンボルペア通信路上の符号の構成

• シンボルペア通信路のための復号法

2

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高密度な記録装置における読み取り

3

1 1 0 1 0 1

1 1

低密度な記録装置

高密度な記録装置

0 1 0 1

読み取りシンボル 1,1,0,1,0,1, ⋯

読み取りシンボル1,1 , 1,0 , 0,1 , 1,0 , 0,1 , 1,∗ ⋯

磁気ヘッドの読み取り面積に対して記録密度が小さい1シンボルずつ読み取るのが難しい

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ペアベクトル

4

符号語シンボルをΣとする𝑛次元ベクトルを 𝒙 𝑥 , 𝑥 , … , 𝑥とする.このとき𝒙のペアベクトル𝜋 𝒙 は次のように定義される.

𝜋 𝒙 𝑥 , 𝑥 , 𝑥 , 𝑥 … 𝑥 , 𝑥 , 𝑥 , 𝑥

𝒙 1,0,1,1,0 → 𝜋 𝒙 1,0 , 0,1 , 1,1 , 1,0 , 0,1

*最初のペアの左シンボルが最後のペアの右シンボルになる

定義1[2]

[2] Y. Cassuto and M. Blaum, “Codes for symbol‐pair read channels,” IEEETrans. Inf. Theory, vol.57, no.12, pp.8011–8020, Dec. 2011.

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次元ベクトルと 次元ペアベクトル

5

• 全ての𝑛次元ベクトル𝒙 ∈ Σ は,対応する𝑛次元ペアベクトル𝜋 𝒙 ∈ Σ, Σ を持つ.

• 全ての𝑛次元ペアベクトル�⃡� ∈ Σ, Σ が,対応する𝑛次元ベクトルΣ を持つわけではない

𝒙 ∈ Σ 𝜋 𝒙 ∈ Σ, Σ

𝒙 ∈ Σ�⃡� ∈ Σ, Σ

• 矛盾のあるペアベクトル�⃡� 1,0 , 1,1 , 1,1 , 1,0 , 0,1 → 𝒙 1, ? , 1,1,0

𝑥• 矛盾のないペアベクトル

𝜋 𝒙 1,0 , 0,1 , 1,1 , 1,0 , 0,1 → 𝒙 1,0,1,1,0

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ペア誤り

6

𝒙 𝑥 , 𝑥 , … , 𝑥 を𝑛次元空間におけるベクトルとする.

𝒙を読み読み取ったとき,

𝒖 𝑢 , , 𝑢 , , 𝑢 , , 𝑢 , , … , 𝑢 , , 𝑢 ,

を受信したとする.

このとき, 𝑢 , , 𝑢 , 𝑥 , 𝑥 となるペアが𝑡個ならば𝑡ペア誤りである.

𝒙 1,0,1,1,0 を読み取る.

ペアベクトル 𝜋 𝒙 1,0 , 0,1 , 1,1 , 1,0 , 0,1

読み取った結果(受信語) 𝒖 1,0 , 1,0 , 1,0 , 1,0 , 0,1 2ペア誤り

異なるシンボルは3個あるが,異なるペアは2個なので2ペア誤り

定義2[2]

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シンボルペア通信路のモデル

関連するモデル

• 符号間干渉

7

シンボルペア通信路

復号器

雑音

記録デバイス

受信者

符号語𝒄 ∈ Σ

受信ペアベクトル𝒖 𝜋 𝒄 �⃡�∈ Σ, Σ

推定語 𝒄 ∈ Σ

ペア誤り�⃡� ∈ Σ, Σ

受信シンボルがペアになる

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ペア距離

8

• 𝒖, �⃡�を𝑛次元空間 Σ, Σ におけるペアベクトルとする.𝒖と�⃡�のペア距離は次のように定義される.

𝐷 𝒖,  �⃡� 𝑖: 𝑢 , , 𝑢 , 𝑣 , , 𝑣 ,

• 矛盾のないペアベクトル𝜋 𝒙 , 𝜋 𝒚 に対しては,ペア距離を次のように表記する.

𝐷 𝒙, 𝒚 𝐷 𝜋 𝒙 , 𝜋 𝒚

𝒖 1,0 , 1,0 , 1,0 , 1,0 , 0,1

�⃡� 1,1 , 1,0 , 1,0 , 0,1 , 1,0𝒖と�⃡�のペア距離は𝐷 𝒖,  �⃡� 3

定義3[2]

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最小ペア距離と誤り訂正能力

9

𝑛次元空間 Σ における符号を𝐶とする.符号𝐶の最小ペア距離d は

𝑑 min𝒙,𝒚∈ ,𝒙 𝒚

𝐷 𝒙, 𝒚

定理1 [2]符号𝐶が𝑡ペア誤りを訂正するための必要十分条件は𝑑 2𝑡 1.

𝑪

000000101010010101111111

𝑪

000000111000000111111111

𝑑 𝑪 3 → 𝑡 1 𝑑 𝑪 3 → 𝑡 1 𝑑 𝑪 6 → 𝑡 2 𝑑 𝑪 4 → 𝑡 1同じ最小ハミング距離の符号だが,訂正可能なペア誤りの数は異なる

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シンボルペア通信路上の符号の構成

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符号構成の研究動向

11

内容 文献

インターリーブ符号 2𝑛, 𝑀 𝑀 , 2𝑑 の符号を構成可能 [2], 2011

巡回符号

最小ペア距離の下界の導出 𝑑 3 [2], 2011

最小ペア距離の下界の導出 𝑑 [5], 2016

最小ペア距離の実際の値を導出 [6], 2013

MDS符号

𝑞元MDSシンボルペア符号の構成 最小ペア距離𝑑 2,3,4,5, 𝑛

[7], 2013

符号長𝑂 𝑞 の𝑞元MDSシンボルペア符号の構成 最小ペア距離が𝑑 5,6

[8], 2015

[5] E. Yaakobi, J. Bruck and P. H. Siegel, "Constructions and Decoding of Cyclic Codes Over  b ‐Symbol Read Channels," in IEEE Transactions on Information Theory, vol. 62, no. 4, pp. 1541‐1551, April 2016.[6] 杉本卓也,廣友雅徳,森井昌克,“シンボルペア符号の最小ペア距離を求める方法について, ” 第 36 回情報理論とその応用シンポジウム (SITA2013) 予稿集, pp1‐6, Nov. 2013[7] Y. M. Chee, L. Ji, H. M. Kiah, C. Wang and J. Yin, "Maximum distance separable codes for symbol‐pair read channels", IEEE Trans. Inf. Theory, vol. 59, no. 11, pp. 7259‐7267, Nov. 2013.[8] X. Kai, S. Zhu and P. Li, "A Construction of New MDS Symbol‐Pair Codes," in IEEE Trans. Inf. Theory, vol. 61, no. 11, pp. 5828‐5834, Nov. 2015.

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巡回符号

12

定理 [5]𝐶を線形な巡回符号のとき,

𝑑 𝑑 𝐶𝑑 𝐶

2

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巡回符号の最小ペア距離の評価

符号長255以下の2元原始BCH符号の最小ペア距離を求めた[6].

13

𝒏, 𝒌 符号 最小距離𝒅𝑯 最小ペア距離𝒅𝒑 𝒅𝒑の下界[4]7,4 3 5 5

⋮ 𝟑𝟏, 𝟐𝟏 𝟓 𝟗 𝟖

⋮ 𝟏𝟐𝟕, 𝟓𝟎 𝟐𝟕 𝟒𝟑 𝟒𝟏𝟏𝟐𝟕, 𝟓𝟕 𝟐𝟑 𝟑𝟕 𝟑𝟓𝟏𝟐𝟕, 𝟔𝟒 𝟐𝟏 𝟑𝟒 𝟑𝟐𝟏𝟐𝟕, 𝟕𝟏 𝟏𝟗 𝟑𝟎 𝟐𝟗

⋮ 𝟏𝟐𝟕, 𝟖𝟓 𝟏𝟑 𝟐𝟐 𝟐𝟎𝟏𝟐𝟕, 𝟗𝟐 𝟏𝟏 𝟏𝟖 𝟏𝟕𝟏𝟐𝟕, 𝟗𝟗 𝟗 𝟏𝟓 𝟏𝟒

⋮ 𝟐𝟓𝟓, 𝟐𝟏𝟓 𝟏𝟏 𝟏𝟖 𝟏𝟕𝟐𝟓𝟓, 𝟐𝟐𝟑 𝟗 𝟏𝟓 𝟏𝟒

⋮255,247 3 5 5

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MDSシンボルペア符号

14

• CheeらがMDSシンボルペア符号の構成法を与えた[7].– 従来のMDS符号がMDSシンボルペア符号かどうか

– MDS符号をインターリーブしたMDSシンボルペア符号

• KaiらがConstacyclic codeを用いたMDSシンボルペア符号の構成法を与えた[8].

• MDS 𝑛, 𝑑 符号

符号長𝑛, 最小ハミング距離𝑑 , 符号語数𝑞 の𝑞元符号

• MDS 𝑛, 𝑑 シンボルペア符号

符号長𝑛, 最小ペア距離𝑑 , 符号語数𝑞 の𝑞元符号

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MDS符号とMDSシンボルペア符号

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命題 [7]

MDS 𝑛, 𝑑 符号はMDS 𝑛, 𝑑 1 シンボルペア符号である

MDS符号 MDSシンボルペア符号

𝑛, 𝑑 条件 𝑛, 𝑑 条件

𝑛, 𝑛 2 𝑞 2 , 𝑚 1, 𝑛 𝑞 2 𝑛, 𝑛 1 𝑞 2 , 𝑚 1, 𝑛 𝑞 2

𝑛, 4 𝑛 2 , 𝑚 1, 𝑛 𝑞 2 𝑛, 5 𝑛 2 , 𝑚 1, 𝑛 𝑞 2

𝑛, 𝑑 𝑞: prime power,3 𝑑 𝑛 1, 𝑛 𝑞 1

𝑛, 𝑑 𝑞: prime power,4 𝑑 𝑛, 𝑛 𝑞 1

𝑛, 2 𝑛 2, 𝑞 2 𝑛, 3 𝑛 2, 𝑞 2

MDS符号 MDSシンボルペア符号

𝑛, 𝑑 条件 𝑛, 𝑑 条件

𝑛, 𝑑 𝑞: sufficiently large2 𝑑 𝑛 1

𝑛, 𝑑 𝑞: sufficiently large3 𝑑 𝑛

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インターリーブによるMDSシンボルペア符号の構成

16

系 [7]

MDS 𝑛, 𝑑 符号が存在すれば,MDS 2𝑛, 2𝑑 シンボルペア符号が存在する.

MDS符号 MDSシンボルペア符号

𝑛, 𝑑 条件 𝑛, 𝑑 条件

𝑛, 𝑛 2 𝑞 2 , 𝑚 1, 𝑛 𝑞 2 2𝑛, 2𝑛 4 𝑞 2 , 𝑚 1, 𝑛 𝑞 2

𝑛, 4 𝑛 2 , 𝑚 1, 𝑛 𝑞 2 2𝑛, 8 𝑛 2 , 𝑚 1, 𝑛 𝑞 2

𝑛, 𝑑 𝑞: prime power,3 𝑑 𝑛 1, 𝑛 𝑞 1

2𝑛, 2𝑑 𝑞: prime power,4 𝑑 𝑛, 𝑛 𝑞 1

𝑛, 2 𝑛 2, 𝑞 2 2𝑛, 4 𝑛 2, 𝑞 2

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Constacyclic codeを用いた構成[8]

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• Constacyclic codeを用いて,最小ペア距離が5,6の𝑞元MDS符号を構成.• 従来の𝑞元MDSシンボルペア符号との違いは,符号長が𝑂 𝑞 である.

𝑛, 𝑑 条件 定理,系

𝑞 1,5 𝑞: prime power

[8] Corollary 82 𝑞 1 , 5 𝑞: prime power, 𝑞 3

2 𝑞 1 , 𝑑 𝑞: prime

𝑞 1,6 𝑞: prime power [8] Theorem 12

𝑞 12 , 6 𝑞: odd prime power [8] Theorem 13

𝑞 𝑞 1,5 𝑞: prime power [8] Theorem 16

𝑞 𝑞 13 , 5 𝑞: prime power, 𝑞 ≡ 1 mod 3 [8] Theorem 19

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シンボルペア通信路のための復号法

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復号法の研究動向

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符号 特徴 文献

Cussutoらの復号法 線形符号 矛盾する位置を消失として扱う [2], 2011

シンドローム復号法 線形符号 シンドロームを定義し,訂正可能な誤りパターンとの対応表を利用した復号

[9], 2015

Yaakobiらの復号法 巡回符号 巡回符号の復号器を利用 [5], 2016

巡回符号の復号器を利用した復号法

巡回符号 ペアベクトルが矛盾する特徴を生かし,Yaakobiらよりも多くのペア誤り訂正可能

[10], 2015

代数的な復号法 BCH符号 シンドロームから代数的な演算のみで2ペア,3ペア誤りを訂正可能

[11], 2016

誤りトラップ復号法 巡回符号 トラップ復号器をシンボルペア通信路に拡張

[12], 2017

LP復号法 線形符号,LDPC符号

線形計画法による最尤復号法 [13], 2016

反復復号法 LDPC符号 シンボルタプル通信路におけるLDPC符号の反復復号

[14], 2016

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シンボルペア検査行列

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• シンドロームを求めるためには検査行列が必要

• 検査行列 → シンボルペア検査行列

各行をペアベクトルに変換

(3,2)単一パリティ検査符号の検査行列H

𝐇

𝒉𝒉⋮

𝒉

𝜋 𝐇

𝜋 𝒉𝜋 𝒉

⋮𝜋 𝒉

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シンボルペアシンドローム

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• シンボルペア検査行列を用いてシンドロームを計算

– ペアの左と右を別々に計算

– 𝒔 𝒖・𝜋 𝐇

(3,2)単一パリティ検査符号

𝒖 0,1 , 1,0 , 1,0𝜋 𝐇 1,1 1,1 1,1

0,1 , 1,0 , 1,0 ⋅ 1,1 1,1 1,10 ⋅ 1 ⊕ 1 ⋅ 1 ⊕ 1 ⋅ 1, 1 ⋅ 1 ⊕ 0 ⋅ 1 ⊕ 0 ⋅ 1

0,1

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隣接シンボルシンドローム

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• 矛盾する位置の情報を表す方法として

隣接シンボルシンドローム を定義する

– 矛盾していれば… 1– 矛盾していなければ… 0

ペアベクトル 隣接シンボルシンドローム

𝑺 0010       0 1

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定理4 [9]

23

シンボルペア通信路上の2元線形ブロック符号において,

シンドローム(シンボルペアシンドロームと隣接シンボルシンドローム)と訂正能力の範囲内の誤りパターンは一対一対応する.

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ペアベクトル空間における標準配列

24

(3,2)単一パリティ検査符号 {000,011,101,110} (1ペア誤り訂正可能)

シンボルペアシンドローム

隣接シンボルシンドローム

誤りパターン/↓コセットリーダー

(0,0) 000 (0,0)(0,0)(0,0) (0,1)(1,1)(1,0) (1,0)(0,1)(1,1) (1,1)(1,0)(0,1)(1,0) 100 (1,0)(0,0)(0,0) (1,1)(1,1)(1,0) (0,0)(0,1)(1,1) (0,1)(1,0)(0,1)(0,1) 010 (0,1)(0,0)(0,0) (0,0)(1,1)(1,0) (1,1)(0,1)(1,1) (1,0)(1,0)(0,1)(1,1) 110 (1,1)(0,0)(0,0) (1,0)(1,1)(1,0) (0,1)(0,1)(1,1) (0,0)(1,0)(0,1)(1,0) 010 (0,0)(1,0)(0,0) (0,1)(0,1)(1,0) (1,0)(1,1)(1,1) (1,1)(0,0)(0,1)(0,1) 001 (0,0)(0,1)(0,0) (0,1)(1,0)(1,0) (1,0)(0,0)(11) (1,1)(1,1)(0,1)(1,1) 011 (0,0)(1,1)(0,0) (0,1)(0,0)(10) (1,0)(1,0)(1,1) (1,1)(0,1)(0,1)(1,0) 001 (0,0)(0,0)(1,0) (0,1)(1,1)(0,0) (10)(0,1)(0,1) (1,1)(1,0)(1,1)(0,1) 100 (0,0)(0,0)(0,1) (0,1)(1,1)(1,1) (1,0)(0,1)(1,0) (1,1)(1,0)(0,0)(1,1) 101 (0,0)(0,0)(1,1) (0,1)(1,1)(0,1) (1,0)(0,1)(0,0) (1,1)(1,0)(1,0)

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シンドローム復号法

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復号器は,シンボルペアシンドローム𝒔 ,隣接シンボルシンド

ローム𝒔 と誤りパターンの対応表,シンボルペア検査行列を持っておく.

Step1: 受信語 𝒖 から 𝒔 , 𝒔 を計算

Step2: 対応表を参照し誤りパターン�⃡�を推定

Step3: 𝒖と�⃡�の排他的論理和を計算し誤りを訂正

Step4: 訂正されたペアベクトル𝒘を𝑛次元ベクトル𝒘に変換

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巡回符号の復号法

隣接シンボルシンドロームと巡回符号の復号法による復号結果を用いてペア誤りを訂正する復号法

• ペア誤りパターンと隣接シンボルシンドロームの関係性

• 受信ペアベクトルの左シンボルと右シンボルを巡回符号の復号法を用いて別々に復号する方法を提案する

どちらか片側のシンボルの誤りが 𝑡 個以下であれば訂正可能

両方のシンボルの誤りが𝑡 1個以上であれば検出し,追加処理によって訂正可能.

26

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ペア誤りパターンの分類例

27

2元(7,4)巡回ハミング符号から構成されるシンボルペア符号

誤り訂正能力:𝑡 1 ペア誤り訂正能力:𝑡 2

誤りの数(左シンボル,右シンボル) ペア誤りパターン例

Case1 (𝑡 個以下,𝑡 個以下) [(0,1),(1,0),(0,0),(0,0),(0,0),(0,0),(0,0)]

Case2 (𝑡 個以下,𝑡 1個以上) [(0,1),(1,1),(0,0),(0,0),(0,0),(0,0),(0,0)]

Case3 (𝑡 1個以上,𝑡 個以下) [(1,1),(1,0),(0,0),(0,0),(0,0),(0,0),(0,0)]

Case4 (𝑡 1個以上,𝑡 1個以上) [(1,1),(1,1),(0,0),(0,0),(0,0),(0,0),(0,0)]

各Caseについて𝑡 重誤り訂正可能な復号器𝐷 を用いて復号した結果を考察

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提案復号法の手順

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開始

隣接シンボルシンドロームの計算

左の受信語を用いてペア誤りの推定

𝑤 �⃡� 𝑡

右の受信語を用いてペア誤りの推定

𝑤 �⃡� 𝑡

左と右の受信語のXORを用いて誤りの推定

𝑤 𝒆 𝑡

No

No

誤り検出

No

誤り訂正

Yes

Yes

Yes

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提案復号法の誤り訂正能力

29

最小距離 最小ペア 誤り訂正能力 ペア誤り Yaakobiらの 提案復号法の

(𝑛, 𝑘) 𝑑 距離 𝑑 𝑡 訂正能力𝑡 復号法の訂正能力𝑡 訂正能力𝑡

(31,21) 5 9 2 4 3 4(127,64) 21 34 10 16 15 16(127,85) 13 22 6 10 9 10(127,99) 9 15 4 7 6 7(255,223) 9 15 4 7 6 7

Yaakobiらの復号法はハミング距離のみで比較をしていた提案復号法ではペア距離での比較をしているため訂正能力が向上した

提案復号法

𝑡 min𝑑 1

2 ,3𝑡 2

2

Yaakobiらの復号法

𝑡3𝑡 1

2

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BCH符号の代数的復号法

• 単一誤り訂正可能なBCH符号を用いて,2ペア誤りを代数的に訂正する方法

• 2重誤り訂正可能なBCH符号を用いて,3ペア誤りを代数的に訂正する方法

多項式表現におけるシンボルペアシンドローム

誤り位置多項式と矛盾位置多項式の定義

多項式間の関係式の導出

関係式を解く復号法を提案

30

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誤り位置多項式

31

左シンボルの誤りの位置を表す誤り位置多項式

𝜎 𝑥 1 𝛼 𝑥

,

右シンボルの誤りの位置を表す誤り位置多項式

𝜎 𝑥 1 𝜶𝒊 𝟏𝑥

,

𝑝0 𝑛 1𝑝1位置 𝑝1 2 𝑝 1 𝑝 1 𝑝 1 0

𝑒 , 𝑒 , 𝑒 , 𝑒 , 𝑒 , 𝑒 ,

�⃡� 0,0 , 0,0 , 0,1 , 0,0 , 1,0 , 0,0 , … , 0,0 , 1,1 , 0,0 , 0,0

左シンボルに対し,1ビット進んでいる

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矛盾位置多項式

32

𝑝0 𝑛 1𝑝1位置 𝑝1 2 𝑝 1 𝑝 1 𝑝 1 0

�⃡� 0,0 , 0,0 , 0,1 , 0,0 , 1,0 , 0,0 , … , 0,0 , 1,1 , 0,0 , 0,0𝒔 0 0 0 1 1 0 … 1 1 0

この位置に誤りがある

隣接シンボルシンドローム

𝑠 𝑥 𝑢 𝑥 ⊕ 𝑥𝑢 𝑥 mod 𝑥 1

矛盾位置多項式

𝜏 𝑥 1 𝛼 𝑥𝟏が立っている位置を表す

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代数的復号法

• シンボルペアシンドローム,誤り位置多項式,矛盾位置多項式の関係性を導出.

• 関係式を代数的な演算のみで解く.

– 単一誤り訂正可能なBCH符号を用いて,2ペア誤りを代数的に訂正する方法

– 2重誤り訂正可能なBCH符号を用いて,3ペア誤りを代数的に訂正する方法

課題

• さらに多くのペア誤りを訂正するには?

• t ペア誤りを訂正するための統一的なアルゴリズム?

33

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誤りトラップ復号法

モチベーション

• ハードウェアでの誤り訂正に適した復号法及び回路の設計

• 巡回符号に焦点を当て,誤りトラップ復号法の適用

提案

• ペア誤りをトラップする条件の導出

• 従来通信路での誤りトラップ復号と同様に訂正可能な誤りパターンに制限を置くことで,誤りトラップ復号法を提案

• 誤りトラップ復号法を実現する回路を設計

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定理6 [12]

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受信多項式 𝑢 𝑥 に生じているペア誤りが 𝑡 個以下,かつその

誤りが連続する 𝑛 𝑘 ペアに含まれるならば,その誤りは次の条件を満たすときに限り,シンボルペアシンドロームに現れる.

条件 1. シンボルペアシンドロームのペア重みが 𝑡 以下である.

条件 2. 受信多項式の隣接シンボルペアシンドロームとシンボルペアシンドロームの隣接シンボルシンドロームと一致する.

• ハミングメトリック通信路上の誤りトラップ復号では,シンドロームのハミング重みが t 以下であることで誤りを検出する.

• シンボルペア通信路上の誤りトラップ復号では,上記の2つの条件によって誤りを検出する.

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誤りトラップ復号器

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Neighbor‐symbol syndrome calculation circuit

Neighbor‐symbol syndrome

Symbol‐pair  syndrome calculation circuit

Threshold gate 1・・・

Threshold gate 2

𝑢 𝑥𝑢 𝑥

OutputInput

• Threshold gate 1 examines Condition 1.• Threshold gate 2 examines Condition 2.

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(7,4)ハミング符号の誤りトラップ復号器

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シンボルペア通信路の拡張

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‐symbol Read Channels

• 一度に𝑏個のシンボルを読みだす通信路に拡張

• ハミング距離と𝑏‐シンボル距離の関係 [5]𝑤 𝒙 𝑏 1 𝑤 𝒙 𝑏 ⋅ 𝑤 𝒙

• 最小ハミング距離と,最小𝑏‐シンボル距離の関係 [5]𝑑 𝐶 𝑏 1 𝑑 𝐶 𝑏 ⋅ 𝑑 𝐶

• 𝑏‐symbol Read ChannelsにおけるGilbert‐Varshamov限界について考察 [15]

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[5] E. Yaakobi, J. Bruck and P. H. Siegel, "Constructions and Decoding of Cyclic Codes Over  b ‐Symbol Read Channels," in IEEE Transactions on Information Theory, vol. 62, no. 4, pp. 1541‐1551, April 2016.[15] S. Song and T. Fujiwara, “Sphere packing bound and Gilbert‐Varshamov bound for b‐symbol read channels,” IEICE Trans. Fundamentals, vol.E101‐A, no.11, pp.1915‐1924, Nov. 2018.

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シンボルタプル誤り通信路[14]

• 一度に𝐷個のシンボルを読みだす通信路に拡張

• 確率的な通信路モデルを定義

• シンボルペアの制約をもとに,シンボルタプル通信路におけるタナーグラフを定義

• 𝐷シンボルタプル誤り通信路におけるLDCP符号の反復復号法を提案

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[14] K. Kasai, M. Hirotomo, and M. Morii, “LDPC codes and iterative decoding over symbol‐tuple error channels,” Proc. Int. Symp. Turbo Codes and Iterative Information Processing, Brest, France, pp.276‐279, Oct. 2016.

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まとめ

シンボルペア通信路のための符号の構成と復号法について解説した.

符号の構成

• 巡回符号の最小ペア距離

• MDSシンボルペア符号

復号法

• シンドローム復号法

• 巡回符号の復号器を用いた復号法

• BCH符号の代数的復号法

• 誤りトラップ復号法

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