フィリピン共和国農業農村開発分野における協力の方向 - …...1...

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資料-5-5 フィリピン共和国農業農村開発分野における協力の方向 1. 背 景 -------------------------------------- 1 2. 農業農村の現状と課題 ------------------------- 2 (1) 農業生産------------------------------------ 2 (2) 土地利用 --------------------------------- 4 (3) 農地改革 ---------------------------------- 5 (4) 水資源 -------------- ---------------------- 6 参考:フィリピン地域区分図------------------ 8 (5) 人的資源 --------------------------------- 9 (6) 農業・非農業間及び地域間の格差 ----------- 10 3. これまでの協力実績 --------------------------- 11 4.フィリピン国農業農村政策と我が国の国別援助計画---- 13 参考:家経済社会開発計画の経緯---------------- 14 5.農業農村開発分野の主要課題と協力の方向------------- 15 (1) 農業生産基盤強化-------------------- 15 (2) 農地改革の円滑な実施------------------ 16 (3)地域間格差・貧困緩和に対する協力------------- 17

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資料-5-5

フィリピン共和国農業農村開発分野における協力の方向

1. 背 景 -------------------------------------- 1

2. 農業農村の現状と課題 ------------------------- 2

(1) 農業生産------------------------------------ 2

(2) 土地利用 --------------------------------- 4

(3) 農地改革 ---------------------------------- 5

(4) 水資源 ------------------------------------ 6

参考:フィリピン地域区分図------------------ 8

(5) 人的資源 --------------------------------- 9

(6) 農業・非農業間及び地域間の格差 ----------- 10

3. これまでの協力実績 --------------------------- 11

4.フィリピン国農業農村政策と我が国の国別援助計画----13

参考:家経済社会開発計画の経緯--------------------14

5.農業農村開発分野の主要課題と協力の方向-------------15

(1) 農業生産基盤強化-----------------------------15

(2) 農地改革の円滑な実施-------------------------16

(3) 地域間格差・貧困緩和に対する協力--------------17

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フィリピン共和国

地図

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1

フィリピン

1.背 景

○ フィリピンでは、古くから稲作が行われ、ルソン島北部には棚

田も存在。スペイン統治時代の大土地所有制農業は、多くの土地

無し農民を出したが、新しい灌漑技術ももたらした。 ○ アメリカ統治時代の 1912 年に、「灌漑法」制定により、水利権

保障や受益者管理など事業手続きを明確化。1935 年国家入植庁を

設置し、土地無し農民を公有地へ開発入植を促進する事業を開始。

○ 第二次世界大戦後の独立期は、食糧増産と伝統的作物輸出振興政

策により、公共事業費の約 6割を当てて積極的な灌漑整備を行い、

1963 年には国家灌漑庁(NIA)を設立。また、1963 年に独立前か

らの懸案である大土地所有制農地の再配分を明記した「農地改革

法」を制定。 ○ マルコス期は、灌漑開発を国の重要施策として、世界銀行及び

アジア開発銀行等の対外借入を活用し、インフラ整備を行い、経

済成長に成功。1971 年には農地改革法を改正し、農地改革省を設

置。しかし、国際収支は危機に陥り、インフレを招き財政悪化を

招いた。

○ アキノ期は度重なるクーデター未遂等のため経済再建は進まな

かったが、経済の自由化・民主化を掲げたラモス期にアジア経済成

長と共に一時期発展。

○ 現アロヨ期は、貧困対策を重視した政策を実施。

【歴史背景と農業農村の発展の経緯】 植民地支配前 ・熱帯モンスーン気候を利用して稲作が行われる。

スペイン統治期 1521-1899

・大土地所有制度より、土地無し農民が大部分を占める。 ・石造りの灌漑施設技術がもたらされる。

アメリカ統治期 1899-1942

・大土地所有者と小作人の格差が広がる ・受益者管理を明文化した「灌漑法」制定(1912) ・公共事業局灌漑課設置により、灌漑事業開始する。 ・11 の国営灌漑事業が合計 8.6万 ha を受益面積として第2次世界

大戦まで実施された。 ・国家入植庁を設立し、土地無し農民を公有地へ開発入植を促進

(1935) 日本統治期 1942-1946

・ケソンにおいて、ハラクンドング灌漑事業で 270haを灌漑 ・ヌニュエバシハにおいて、リサール灌漑事業で 1,000haを灌漑

独立期 1946-1965

・国家灌漑庁設立(1963)、大規模灌漑開発可能 ・農地改革法制定(1963)による地主所有地の農民への再配分

マルコス期 1965-1986 社会経済変革・ 国益優先

・農地改革法改正及び農地改革省設置(1971) ・マーシャル法成立により、灌漑事業が円滑化 ・緑の革命、肥料・農薬等の投入、灌漑開発による結果、米の自給達成

・戒厳令の布告(1972) →財政赤字と対外債務の顕在化

アキノ期 1986-1992 政治安定・ 経済再建

・総合農地改革(CARP)を制定(1988)し、総合農地改革計画(CARP)開始。

・地方自治法制定(1991) →度重なるクーデター未遂のため、経済再建は進まず

ラモス/ エストラーダ期 1992-2001 経済の自由化・民

主化/貧困対策

・農地改革コミュニティ(ARC)を全国展開 ・CARP 期間延長及び資金倍増(1998) →好調なアジア経済の中、経済成長を遂げるが、通貨危機及び異常気象の影響を受ける

アロヨ 2001-現在 貧困撲滅・国民融和等

・貧困撲滅、政治倫理の確立、治安改善、国民融和等を重点政策として就任

・貧困緩和を目標に灌漑開発及び農地改革を重点施策とする →国際競争力のある農林水産業の育成のために近代化を推進

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2.農業農村における現状と課題

(1) 農業生産

○ GDP に占める農業生産のシェアは、近年減少しており、1998年には異常気象の影響もあり、17.4%にまで落ち込む。しかし、依

然として重要な産業。 ○ 農業人口は 1961年の 1,755 万人から1999年には 2,946 万人ま

で増加しているが、総人口の増加により農業人口割合は相対的に

40%まで落ち込んでいる。 ○ 1965 年からのマルコス政権前半 10 年間は、国内消費向け作物

重視政策が取られ、米・トウモロコシの増産が図られた。1972 年

の戒厳令を境にココナッツなどの輸出向換金作物が重視され、外

国資本等を活用した灌漑施設等のインフラ整備を盛んに実施。

【フィリピンにおける農業の占める割合】

出典:FAOSTAT/ World Development Indicator

【主要農産物の生産量】

出典:FAOSTAT

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

1961 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 1996 1997 1998 1999 年

農業

の割

農業GDP割合

農業人口割合

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1961 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 年

その

他10

0万トン

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

サトウ

キビ1

00万

トン

バナナココナッツトウロモロコシ

パイナップル米

サトウキビ

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○ 1960年に国際稲研究所(IRRI)がフィリピンに設立され、その成

果の「緑の革命」により、1970 年代には一時期米の自給を達成。

1980 年代は国際経済不況の影響を受けてサトウキビ・ココナッツ

の生産量が低下するも米の生産量は増加。 ○ 1993-98 年中期計画(ラモス政権)では、米・トウモロコシの

増産目標を設定し農業発展を目指す。しかし、アジア金融危機

(1997)及びエルニーニョ現象(1998 年)による干害被害を受け、

目標は達成できなかった。 (米の単収目標:5.0t/ha→結果 3.40t/ha(フィリピン政府発表))

○ 1997年に農業生産性及び競争力の向上を目指した「農漁業近代化

法」を制定したが、灌漑開発及び農地改革等の重点分野に十分な予

算配分が行われずに近代化は停滞し、米の自給は達成していない。

【米の需給状況】

出典:FAOSTAT

【米の生産状況】

出典:FAOSTAT

2000

3000

4000

5000

6000

7000

8000

9000

10000

1961 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000

1000t

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

70,000

80,000

1000人

生産量(1000t)

消費量(1000t)

人口(1000人)

0.50

1.00

1.50

2.00

2.50

3.00

1961 1964 1967 1970 1973 1976 1979 1982 1985 1988 1991 1994 1997 2000

米 の 単 位 収 量(ton/Ha)米 の 自 給 率

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(2) 土地利用

○ 大小約 7,100 の島々から構成され、最大は北部のルソン島、ミ

ンダナオでこの 2島で国土面積の 67%、主要11島で 90%を占

める。1960年代初頭に農地面積は、国土面積の 25%(771 万 ha)を占めていたが、2000 年には 37%(1,118 万 ha)を占める。

○ 1960 年代初頭に 57%(1,715 万 ha)であった森林率は、火災、

焼畑農業、違法占拠等の多様な要因で、1995 年時点で 45%(1,360万 ha)に減少している。

○ 2000 年の農地に占める主要作物毎作付面積は、米が 36.3%、

大土地所有制によるココナッツが 28.0%、トウモロコシが

22.6%、以下サトウキビ、バナナ、パイナップルと続き、これ

ら6品で9割を占めている。

【主要農産物作付け面積の推移】

出典:FAOSTAT

出典:National Mapping and Resource Information Authority(2000)

出典:社団法人農業土木機械化協会「農業水利システムの管理」(2000)

【フィリピンの土地利用の変遷】

出典:FAOSTAT

【フィリピン国土と主要島面積】

0

5000

10000

15000

20000

25000

30000

35000

1961 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 年

1000ha

  その他

  森林・林地

  農地面積

0

2000

4000

6000

8000

10000

12000

1961 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000年

作付

面積

(100

0ha)

バナナ

サトウキビ

トウロモロコシ

ココナッツ

島名 面積(km2) 割合

 ルソン 104 , 688 34 .9%

 ミンダナオ 94,630 31 .5%

 サマール 13,080 4.4%

 ネグロス 12,705 4.2%

 パラワン 11,785 3.9%

 パナイ 11,515 3.8%

 ミンドロ 9,735 3.2%

 レイテ 7,214 2.4%

 セブ 4,422 1.5%

 ボホール 3,865 1.3%

 マスバテ 3,287 1.1%

その他 26,361 8.8%

合計 300,000 100.0%

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(3)農地改革

○ フィリピン農村社会の特徴の一つとして、スペイン統治時代か

らの大土地所有制に起因する土地無し農業労働者と少数の大

地主が発生し、この土地問題が、フィリピンにおいての農業停滞と農村貧困の基本要因となっており、農地改革が国家の重要

課題となっている。

スペイン統治:大土地所有制度より、土地無し農民が大部分を占める 1935年 :国家入植庁を設立、土地無し農民を公有地へ開発入植促進

1963年 :農地改革法制定による地主所有地の農民への再配分 1971年 :農地改革法改正及び農地改革省(DAR)設置

1988年 :アキノ政権、総合農地改革計画(CARP) を策定

1993 年 :総合農民支援を行う農地改革コミュニティ(ARC)を全国展開 1998 年 :CARPは期間を2008 年まで10年間延長、資金を倍増 ~現在 :農地改革を貧困緩和の重点施策と位置づけ

○ 1960 年においては、全農家戸数の 62%を占める経営規模 3ha

未満の農家群が全経営面積の25%において農業経営。一方、全

農家戸数の6%しか満たない経営規模10ha以上の農家群が全経

営面積の 33%を占めていた。 ○ その後、農地改革が促進された結果、1991年においては、3ha

未満の農家群は、戸数の 79%、経営面積の 38%。10ha 以上の

農家群は戸数の 2%、経営面積の23%となり、戸当たりの経営面

積は平均化される傾向。 ○ 独立以降の各政権において、農地改革を重点政策に位置付け

ており、アキノ政権時に総合農地改革計画(1988 年)を策定し、

大規模農地806 万 ha(目標値)を 2008年(ラモス政権時に延

長)までに再配分する計画。しかし、長期間取り組んでいる割

には、財政不足等により進捗率は 69%と上がっていない。

【経営規模別農地面積】

出典:フィリピン農業省統計局

【経営規模別農家戸数】

出典:フィリピン農業省統計局

【農地改革の進捗状況(2001 年 9月時点)】

農地改革省

環境天然資源省

私有農地

政府所有地

計画対象面積万ha 429 377 300 506 806配分面積 万ha 315 248 169 394 563(達成率)% 73.4% 65.8% 56.3% 77.9% 69.9%(農家数)万人 177 144 - - 321残面積 万ha 114 129 131 112 243

実施省庁別 所有者別合計

出典:農地改革省 JICA 専門家報告(2001)

3.64

79%2.36

69%1.44

61%1.35

62%

0.84

18%

0.95

28%

0.80

34%0.69

32%

0.1

2%

0.12

3%

0.12

5%0.12

6%

0

1

2

3

4

5

1960 1971 1980 1991 年

百万

 10ha以上

 3ha以上10ha未満

 3ha未満

3.8

38%2.9

30%2.1

24%1.9

25%

3.9

39%4.3

70%3.6

42%3.3

42%

2.3

23%2.5

26%2.9

34%2.6

33%

0.0

2.5

5.0

7.5

10.0

12.5

1960 1971 1980 1991 年

百万

ha

 10ha以上

 3ha以上10ha未満

 3ha未満

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(4)水資源 ○ 年間降雨量は平均 2,500mm 程度であるが、地形の多様性から

必ずしも一様でなく、大別すれば北半分の諸島では7~10 月の

雨期と 12月~5月の乾期に大きく分けられるが、南半分の諸島

は雨季と乾季は明瞭ではない。 また、年平均 16個の台風が発生し、農業生産に大きな影響を与

えている。 ○ フィリピンには 114の主要な河川と 59の自然湖が存在し、水

資源量は 479 億 km3(日本:423 億 km3)と豊富である。 ○ 全農地面積 1,113 万 ha の 28%の 312.6 万 ha が灌漑可能面積

で、そのうち 1999 年時点で、灌漑可能面積の 43%に相当する

133.9 万 ha が灌漑済みである。

ス ペ イ ン 統 治:石造りの灌漑施設技術がもたらされる。 1908 年:公共事業局灌漑課設置により、灌漑事業開始 1912 年:「灌漑法」制定 1963 年:国家灌漑庁(NIA)設立 1972 年:公共事業省灌漑課、NIAに移管 1988 年:総合農地改革計画で、NIAが灌漑事業を実施 1997 年:農漁業近代化法制定(流域荒廃防止、既存灌漑施設改修促進)

○ これらの灌漑開発を、直営及び地方自治体等への間接支援を

通じて国家灌漑庁(NIA)が総括している。

○ 灌漑システムは以下の3つに区分される。 1)国営灌漑システム(NIS)概ね1000ha以上

NIAによって建設管理され、受益者は水利費を支払う必要がある。 2)共同灌漑システム(CIS)概ね1000ha未満 受益者は建設費用償還とシステム管理を行う必要がある。 3)ポンプ灌漑システム(PIS) 小規模な揚水灌漑で、個々農民あるいはグループで建設、運営・管理

【フィリピンの気候】 【フィリピンの降水分布】

出典:社団法人 農業土木機械化協会「農業水利システムの管理」(2000)

【灌漑可能面積とシステム別灌漑面積:1999年】

出典:NIA CORPLAN(1999).

国土面積: 3,000 万ha

農地面積: 1,133 万ha

灌漑可能面積(312.6万 ha)

灌漑面積(133.9万 ha)

NIS (67.9万)

CIS(48.6 万) PIS (17.4万)

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○ 1973~1999年までの26年間で38.6万haを灌漑開発し、1970年代は外国援助借款の大幅増加と政府の強力な政策支援により

開発のピーク。 緑の革命等より米の需要事情が緩和したこと等から開発の

ペースは停滞。

○ 灌漑面積は灌漑可能面積の 42.8%を開発したに過ぎず、特に

ミンダナオ島は灌漑可能面積の 25.7%と低い。それに対して、

マニラ首都圏を有するルソン島は 56.8%と高い。 ○ 毎年、1万 ha 程度であった灌漑施設改修面積が、1997 年よ

り大幅に伸びており、近年、灌漑施設の老朽化・機能低下への対

応が重要な施策となってきている。

出典:NIA CORPLAN(1999)*1994 年の大幅な CIS の減少は、ピナツボ火山噴火等の天

災により、焼失面積、不適切な水管理により、耕作放棄地となっている面積である。

出典:NIA CORPLAN(1999) 【新規灌漑開発と改修実積】

出典:NIA,Corporate Plan 1993-2002/NIA Corporate Planning Staff Office

国 営 及 び 共 同 灌 漑 シ ス テ ム の 開 発 状 況

0 . 0

200 .0

400 .0

600 .0

800 .0

1 , 0 0 0 . 0

1 , 2 0 0 . 0

1 , 4 0 0 . 0

1 , 6 0 0 . 0

1973

1975

1977

1979

1981

1983

1985

1987

1989

1991

1993

1995

1997

1999

[1000ha] CIS

NIS 増 加 率

0

100000

200000

300000

400000

500000

コル

ディレ

ラ自

治区

イロ

コス

地域

カガ

ヤン

渓谷

地域

中部

ルソ

ン地

南部

タガ

ログ

地域

ビコ

ール

地域

西部

ビサ

ヤ地

中部

ビサ

ヤ地

東部

ビサ

ヤ地

西部

ミン

ダナ

オ地

北部

ミン

ダナ

オ地

南部

ミン

ダナ

オ地

中部

ミン

ダナ

オ地

カラ

ガ地

(地域)

(ha)

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8PIS

CIS

NIS

灌漑達成率

ミンダナ島ルソン島

灌漑可能面積

【地域別灌漑状況】

0

50,000

100,000

150,000

1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 年

ha

新規開発

改修

【国営及び共同灌漑システムの開発状況】

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参考:フィリピン地域区分図 【民族・人種構成】 ビサヤ人 (40%) タガログ人(20%) イロカノ人(10%) その他スペイン人・アメリカ人との混血、中国系(30%) 【公用語】 タガログ語を母体とするピリピーノ語であるが、英語が共通語、

教育用として広く使用されており、この他数十の言語・方言が存在

する。 【宗教】 全人口の 93%強がキリスト教徒で、うちカトリック教徒が 91%を占める。次に多いのがイスラム教徒で、全人口の 4%強を占め、

ミンダナオ島及びスル諸島に集まっている。

【フィリピン国地方行政区分図】

出典:社団法人国際農林業協会「農林水産業国別協力方針策定のためのフォローアッ

プ調査」 報告書(2002)

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(5)人的資源 ○ フィリピンにおける識字率は平均で 93%と比較的高く、農村

部においても 90%を越えており、男女による違いは顕著には現

れていない。ミンダナオの一部では 70%台を割る地域も存在す

る。 ○ 初等教育は、全国的に 89%と高く、基礎的な教育水準は高い

ものの、最終学年までの到達率は 66%と低く、高等教育は2%

台に留まっている。 ○ ミンダナオ島のイスラム自治区では、初等教育は 79%である

が、中等教育は 15%と他に比べて極端に低い。 (ジェンダー関係) ○ アメリカ統治時代の影響により、都市部では女性に教育の機

会が与えられ、社会的に女性の活躍が目覚ましい。しかし、農

村部では、スペイン統治時代のカトリックの影響が残っており、

農村女性は、農作業の大半、小売業、家事を行っているが、社

会参加は少ない。 ○ フィリピンの女性は、置かれた環境により、高学歴を持つ女性

の進出は目覚ましいが、全体的には男性中心の社会となっている。

【フィリピン国における教育水準】 (単位%)

出典:National Statistics Office、Department of Education, Culture and Sports

【フィリピン国の教育水準】

1,997 1,998 1,999 2,000 2,001

総人口 71,265 72,722 74,184 75,653 77,131

1,816 2,722 1,701 1,993 1,795高等教育 (総人口比率) (2.5%) (3.7%) (2.3%) (2.6%) (2.3%)

1,331 1,626 2,157 2,252 3,085専門技術/ 職業教育

(総人口比率) (1.9%) (2.2%) (2.9%) (3.0%) (4.0%)出典: Department of Budget and Management(2001)

参加率最終学年到達度

参加率最終学年到達度

全体 全体 男性 女性 1995-96 1994-95 1995-96 1994-95

89.8 93.9 93.7 94 89.2 66.5 62.3 75.8

95.4 96.5 96.6 96.5 - - - -

86.2 91.2 91.1 91.3 - - - -

NCR 国家首都地域 98.1 98.8 98.9 98.8 91.6 85.5 93.8 83.4

CAR コルディレラ自治区 86.4 88.8 89.9 87.5 90.8 60.1 66.8 76.1

1 イロコス地方 90.6 95.5 96.1 94.8 92.5 79.7 77.1 81.12 カガヤン渓谷地方 88.4 93.3 93.7 92.8 89.2 69.2 67.2 77.13 中部ルソン地方 93.7 96.3 96.5 96.1 92.4 77.5 68.9 76.74 南部タガログ地方 93.2 96.4 96.8 96.0 90.8 75.6 69.7 78.65 ビコール地方 87.3 96.9 94.8 95.0 90.5 69.9 57.1 72.36 西部ビサヤ地方 87.7 91.9 90.8 93.0 90.1 63.6 61.9 79.57 中部ビサヤ地方 88.0 93.1 93.4 92.8 85.2 66.3 51.9 72.68 東部ビサヤ地方 81.7 90.9 89.2 92.7 86.1 58 49.6 71.79 西部ミンダナオ地方 80.4 89.7 89.1 90.1 83.5 50.6 45.8 65.110 北部ミンダナオ地方 90.5 94.6 93.8 95.5 87.3 59.7 77.5 70.311 南部ミンダナオ地方 90.5 92.0 91.6 92.4 88.3 61.1 52.8 70.812 中部ミンダナオ地方 78.3 90.8 90.3 91.4 86.8 49 65.5 65.8

ARMM イスラム教・ミンダナオ自治区 - 73.5 75.6 71.4 79.8 29.7 15.7 57.1

都市

農村

国全体

地域

初等教育 中等教育1989 1994

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(6)農業・非農業間及び地域間の格差 ○ 国民 1人当たりGDPは、アセアンにおいてはマレーシア、

タイに次いで3番目である。農業人口 1 人当たりのGDPは

1985~1999年間に 1.6 倍に増加しているものの、非農業人口1人当たりとは、依然、3倍近い格差がある。

○ 1991年を境に農村部の貧困家族数・率は増加しており、2000

年時点では、貧困全体の 70%が農村部に集中している。 1997 年に国全体の貧困率は改善されたものの、アジア金融

危機の影響もあり、2000年には悪化している。 ○ 地域別では、マニラ首都圏の貧困率は低いが、その他の地域

では 40%を越える。特に、ミンダナオ島では 47%、農村におい

ては 55%まで悪化している。 ○ ミンダナオ島では、貧困率と同様に灌漑開発、教育水準等も

他地域と比べて低い。

【農業・非農業1人当りGDP】

出典:World Development Indicators2002, FAOSTAT

【貧困家族数と貧困水準】 出典:社団法人国際農林業協会「農林水産業国別協力方針策定のためのフォロー アップ 調査」報告書(2002)

【島別貧困率】 (単位:%)

出典:TWG on Income Statistics, NSCB(2000)

島 名 地 域 1994 1997 2000

都市 8.0 6.4 8.2農村 - - -合計 8.0 6.4 8.7都市 27.1 18.3 20.8農村 44.5 38.9 39.4合計 36.7 30.1 31.1都市 28.5 23.6 25.4農村 44.2 46.7 51.5合計 38.2 38.2 41.7都市 38.1 32.0 32.7農 村 54.0 51.3 55.1合計 47.6 44.6 47.1都市 24.0 17.9 19.9農村 47.0 44.4 46.9合計 35.5 31.8 33.7

全体

マニラ首都圏

ミンダナオ島

ルソン島

ビサヤ島

国 全 体 貧 困 水 準 農 村 部 貧 困 水 準 農 村 貧 困 率

家族数1人当年間所得(ペソ)

農村1人当年間所得(ペソ)

農村/全体

1 9 8 5 4,355,052 3,744 3,104,655 3,353 71.3%1 9 8 8 4,230,484 4,744 3,031,929 4,094 71.7%1 9 9 1 4,780,865 7,302 2,933,286 6,276 61.4%

1 9 9 4 4,531,170 8,885 3,009,288 7,946 66.4%

1 9 9 7 4,511,151 11,319 3,302,715 10,178 73.2%

2 0 0 0 5,215,420 13,916 3,683,940 12,232 70.6%

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

1800

1985 1990 1995 1996 1997 1998 1999 2000

USド

農業人口1人当GDP

非農業人口1人当GDP

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3.これまでの協力実積 (1)我が国協力の概要

○ 農業農村開発協力は、1967年にマニラにあるアジア開発

銀行(ADB)へのかんがい専門家の派遣に始まり、1969年

にはプロジェクト方式技術協力「稲作開発計画」がスタート。 これまで、国家灌漑庁、農地改革省、農業省及びアジア開発

銀行を中心に約70名の専門家(農業土木技術者)を派遣、33件の開発調査、22 件の無償資金協力、19 件の有償資金協力を

実施。 ○ これらの協力は、時の政権の政策に沿って、また、フィリピ

ン国中期開発計画に即して、1960 年代に稲作農業生産性の向

上を目的とした基盤整備の協力を実施。 1980 年代(米の自給達成以降)は、基盤整備も行いつつ、

地方開発、農村貧困緩和、地域間格差是正等、農村地域開発に

その重点が移行。我が国の協力もこれまでの灌漑開発に加え、

農村地域開発に対する協力も推進。特徴的なこととして、農作

物の多様化のための灌漑技術協力を行っている。

○ フィリピンは、インドネシアに次いで我が国の有償及び無

償資金協力が多い。

【農業農村開発協力の推移】

①開発調査

灌漑開発の分野では、流域開発計画をフィリピン政府の政策に基づ

いて策定している。最近は、既存灌漑システムの改修、水利組合移管・

育成、灌漑実施機関の組織強化の調査を行っている。

農地改革の分野では、土地配分後の地域において農民の農業生産向

上をメインとして支援する農地改革コミュニティー地区が設定され

ており、農地改革の推進に併せて、その地区の開発計画を策定する調

査を行っている。

②無償・有償資金協力

開発調査及びフィリピン国によって策定された流域開発計画の主

要な水利施設に対する協力をフィリピン政府の優先順位に沿って実

施している。また、プロジェクト方式技術協力に係るボホール農業振

興センター、畑地灌漑技術センターの建設も行っている。最近の傾向

としては、既存灌漑施設の改修等の協力も実施している。

年度 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 9900 01 02

開発調査 1 1 1 1 1 3 2 2 1 3 3 1 2 2 1 2 1 1 1 2 1無償 1 1 1 2 3 2 3 1 2 1 2 1 2有償 2 1 2 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1

派遣専門家人数年度 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 9900 01 02個別 2 2 4 2 3 4 3 5 3 3 1 3 3 4 5 4 5 6 6 5 4 4 5 4 4プロ技 2 2 2 1 1 2 1 1 1 1 1 3 3 5 6 5 4 6 3 5 7 6 6 2 1 1

国際機関 1 1 1 1 1 2 2 2 2 2 2 3 3 3 3 3 3 4 2 3 2 1 1 1 1 1 1 1 1 2 2 2 2 2 3 2

プロジェクト方式技術協力

稲作開発計画

カガヤン農業開発計画

農地改革支援地図・図面作成(ミニプロ)

畑地灌漑技術開発計画(第1フェーズ)畑地灌漑技術開発計画(ケソン)(第2フェーズ)

(ボホール農業開発計画(ボホール))ボホール総合農業振興計画(ボホール)(第2フェーズ)

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○ これまでのプロジェクト方式技術協力は、米増産政策にあわ

せた稲作の基盤整備技術、その後、作物の多様化を目指した畑

地灌漑技術、住民参加型による水管理技術の移転等をフィリピ

ン国の状況に合わせた協力を実施してきた。

③プロジェクト方式技術協力

【今までの行われたプロジェクト技術協力案件名】

・稲作開発計画(1969.6-76.6)

稲作栽培全般に必要な基盤整備から営農栽培までの技術協力

・カガヤン農業開発計画(1976.2-84.3) 農業パイロットセンターを拠点とした水稲稲作技術による総合農業開発

・畑地灌漑技術計画(フェーズⅠ:1987.5-92.5)(フェーズⅡ:1993.5-98.5)

作物多様化及び農業全般の発展を目指し、畑地灌漑技術開発センターを拠点

とした灌漑技術開発

・ボホール農業開発計画(1983.2-1990.2)

ボホール農業振興センターを拠点に、地域に適用した栽培技術、水管理

の研究、訓練、普及を活動とした協力

・ボホール総合農業総合振興計画(1996.11-2003.11)

ボホール農業開発計画の成果を基に農家レベルに普及し得る技術体系を

実証として、モデル地区において農業技術及び水管理技術移転を行う。

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4.フィリピン国の農業農村政策と我が国の国別援助計画

1)中期フィリピン開発計画(2001-2004)/ MTPDP2001-2004

○農漁業の近代化

目的:農漁業を国内、海外における自由競争市場機構に統一すること

を目指し農漁業の近代化と社会的公平を図る

戦略:農漁業近代化法に基づく事業の実施

ミンダナオの重点的開発

近代化とグローバリゼーションの影響を被る弱者の救済

事業計画立案・実施参加機関の能力開発

数値目標:粗付加価値(GVA)の平均年間成長率3.12%~4.02%の達成

100 万人雇用創出

灌漑及び水管理達成目標

・30万 haの既存灌漑システムの改修

・17万 haの新規開発 合計47万 haの整備

・全灌漑面積を140万から160万へ拡大

○農地改革による社会的公平の増進

目的:貧困を抱える零細農民や土地無し農業労働者の生産力と所得向

上をするため農地改革と関連の支援対策、これらの活動は、土

地所有権の保障と国土の生態的保全を前提として、引き続き総

合農地改革計画(CARP)を実施

戦略:農地改革コミュニティ(ARC)支援サービスの合理的な提供

数値目標:78.1 万 haの農地改革実行

ARC の支援地区を10,308 から2,035 地区に拡大

○天然資源の持続的管理・利用の促進

目的:限りある天然資源を適切に管理・利用することにより、農漁業

の生産力向上につながる土地利用管理を行う。

数値目標:森林550 万 haの開発と管理

2)我が国のフィリピン国に対する国別援助計画

1.対フィリピン援助の意義

民主化の進展や経済成長を背景に東南アジアにおける政治的・経済

的な重要性を増しているフィリピンは、中核的役割を担うにいたって

おり、我が国対東南アジア外交上の拠点の一つ。また、我が国はフィ

リピンにとり不可欠な経済的パートナーであり、深い相互依存関係に

ある。こうした重要性を有するフィリピンには依然として大きな援助

需要があり、その政治的安定・経済的繁栄に向けた援助を実施するこ

とは、我が国の平和と繁栄にもかなうものであると位置付け。

2.開発上の課題 (農業・農村開発)

農業農村開発はフィリピン経済成長のための経済体質の強化及び成

長制約要因の克服といった課題にとって重要であるとともに、格差是

正に資する。

1)気候不順に対処し得る農業生産基盤強化は急務

2)農村の貧困解消のために、農地改革の円滑な実施が重要

3)開発の遅れたミンダナオ地域等への地域間格差是正への協力

4)行政能力強化、関係機関調整能力強化等の人材育成

3.重点分野・課題別援助方針(農業・農村開発)

1)既設老朽化施設の修復・更新

2)計画作成、施設維持管理への住民参加の促進

3)水利組合強化等の支援

4)農地改革への支援

5)地方分権化の中での地方自治体の行政能力向上にも配慮

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参考:フィリピンの国家開発計画の経緯

○ フィリピン政府では、ほぼ政権ごとに開発計画を策定している。 ○ 1995年のWTO加盟に際し、国際市場で対抗できる競争力を

つけるために1997年に農漁業近代化法を制定し、農漁業近

代化計画を策定した。その中で、自然資源の公平利用のために、

適切かつ効率的な灌漑システムの開発・促進することを明記。主

な内容は次のとおりである。 1)NISの2次水路以下の維持管理を水利組合(IA)に移管。 2)NIAが関連する CIS の計画・設計・建設・管理に関する権限を地方

自治体に移管し、必要に応じて地方自治体に技術支援。

3)民間主導による小規模灌漑の振興。 4)適正な水利費の勧告。

○ 農漁業近代化計画(AFMP)は、農水産業公共投資プログラ

ムの指針となっている。 1)食料安全保障 2)貧困緩和と社会的公正 3)農民・漁民の所得向上 4)国際競争力 5)持続可能な開発 ○ 中期フィリピン開発計画(2001-2004)では、次の3本柱で貧困、

雇用、法秩序を大きな課題として取り上げている。

1)農林水産業の近代化

2)農地改革による社会的公平の増進

3)天然資源の持続的管理・利用の促進

政権 開発計画等

ラモス

●中期農業開発計画(1993-1998)策定

貧困緩和と所得・富の配分を長期目標として掲げ、目標

の設定

●農漁業近代化法制定

農漁業振興に関する基本法令として制定、国際市場で高

い競争力をつけることが目的

エストラー

●中期フィリピン開発計画(1999-2004)策定

(1993-1998)の後継として、農漁業近代化法達成を目的

に策定

●農漁業近代化計画策定

農漁業近代化法に基づいて、次の5項目を重点化

1.食糧安全保障

2.貧困緩和と社会的公正

3.農漁民を対象とした所得向上

4.国際協力

5.持続可能性

アロヨ

●中期フィリピン開発計画(2001-2004)策定

農漁業近代化計画策定に基づいて、(1999-2004)計画の改

訂策定を行った。具体的には現実的な目標設定に修正

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5.農業農村開発分野の主要課題と協力の方向 (1) 農業生産基盤強化

①水利組合強化 農漁業近代化計画の中で、国営灌漑地区(NIS)の2次水路

以下の末端施設について、管理契約により段階的に水利組合に

移管する方針を打ち出した。しかし、水利組合側の能力不足か

ら、適切な水配分が行われず、結果的に水利費の徴収率低下を

招く悪循環となっている。 我が国は、土地改良区の「参加型開発・水管理」による多く

の知見を有し、効率的な灌漑システム運営のための協力が可能。

②灌漑施設更新及び維持管理改善 灌漑施設の老朽化等に対して、効率的な施設更新と可能な

限り施設を機能発揮させる維持管理の改善を水利組合強化と

共に進めることが必要。 ③地方自治体への灌漑システムに関する技術支援 農漁業近代化法で、共同灌漑システム(CIS)の計画・設計・

建設・管理に関する権限を地方自治体に移管し、必要に応じて

国家灌漑庁が地方自治体に技術的支援することとなっており、

今後の灌漑面積の拡大は CIS 面積の拡大に大きく依存すると

考えられることから、国家灌漑庁から地方自治体への円滑な

技術支援システム作りのための協力が必要。

【国営灌漑地区(NIS)施設機能状況】

出典:NIA システム管理部(SMD)調査結果(2000)

水 利 組

合強化

灌 漑 施

設 更 新

及 び 維

持 管 理

地方自治

体への灌

漑システムに

関する技

術支援

今後の協力活動内容

良好に機能

部分的に機能

機能しない部分が多い/データ無し

良好に機能

部分的に機能

機能しない部分が多い/データ無し

27 43 56 24 47 55(21.4%) (34.1%) (44.4%) (19.0%) (37.3%) (43.7%)

4 16 9 1 17 11(13.8%) (55.2%) (31.0%) (3.4%) (58.6%) (37.9%)

13 11 17 10 14 17(31.7%) (26.8%) (41.5%) (24.4%) (34.1%) (41.5%)

44 70 82 35 78 83(22.4%) (35.7%) (41.8%) (17.9%) (39.8%) (42.3%)

地域 地区数

基幹施設 支線・末端施設施設機能状況別地区数

計 196

ルソン

ビサヤ

ミンダナオ

126

29

41

農業生産基盤強化

持続的な灌漑システムの開発・運営・管理

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(2) 農地改革の円滑な実施

農地改革は、各政権において農村地帯おける貧困緩和のため

の最重点課題としてきたが、思うように進んでいない状況。我

が国は、土地改良事業で培った知見をもとに協力が可能。

① 農地改革コミュニティ(ARC)地区支援 土地配分後のインフラ整備・農民組織強化等を優先的実施する

ARC 地区に対する支援は、円滑な農地改革のためには欠かせな

いものであり、日本の土地改良区が有する参加型開発・管理等の

ノウハウの技術移転が有効。

② 関係機関との組織連携及び能力向上 ARC 支援事業を含めた総合農地改革計画(CARP)を推進する

に当たり、主導官庁である農地改革省(DAR)に、NIA 等のイ

ンフラ整備機関及び土地配分や ARC 事業を直接行う地方政府等

の関係機関との連携、農民への支援指導を行う職員の能力向上が

不可欠。組織連携及び能力向上のようなARC 事業を支援する協

力が必要。

③ 基本情報整備 我が国はこれまで地図作成、農地改革データベース開発のため

の技術移転を行ったが、農地改革に伴う需要に応える体制までに

は至っておらず、円滑な推進のためには、速やかな体制整備が必

要であることから、これに関わる技術支援が必要。

【総合農地改革計画:CARP】

【農地改革コミュニティ(ARC)地区】 農地改革省は、土地配分後の農家支援として、インフラ整備・農民組織

強化等を優先するコミュニティ地区を設定し、限られた CARP 財源を、優

先する地区に集中支援することにより、速やかな効果発現及び周辺地域へ

のモデル効果を狙い、非 ARC も含めた農地改革地域全体の農業生産性向上

の達成を目指すものである。 【農地改革コミュニティ(ARC)地区支援状況】

出典:農地改革省 JICA 専門家報告(2001年 9月時点)

  実施中(うち日

予定(うち日

完了

13地区

(4地区)- -

6地区(1地区)

- -

61地区 71地区 12地区141地区 166地区 106地区

ドナー国・国際機関による支援

フィリピン国独自実施

インフラ整備中心

組織強化等ソフト中心

灌漑事業(NIA)道路等事業

フィリピン政府は、1988 年から総合農地改革計画(CARP)を、実施し、

806万 haの農地改革を 2008 年まで達成することを目標にしている。 CARP は農地配分、配分後の農村支援、土地収用・配分に係る係争処理の3

つから成る。2001 年現在まで全体の約 69%を完了したが、資金不足及び人

材不足にから、残る小規模地主私有農地の配分には困難が予想される。 (CARP概要): 全ての農地及び農業労働者を対象としており、地主の農地保有限度は5ha(地

主の子供1人につき3ha加算)、受益者の保有限度は3haである。手順は、市

町村長が CARP対象地区を地主に通知、受益農民を確認、測量を開始し州事務

所に実施申請書を提出する。フィリピン土地銀行は州事務所に土地評価額を通

知し、州事務所が地主に買収通知後、土地名義をフィリピン共和国に変更。そ

の後、受益農家に配分する。受益農家の土地代金年賦支払方法は30年年賦、金

利 6%である。

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(3)地域間格差・貧困緩和に対する協力 ○ フィリピンでは、地域間格差が大きく、特にミンダナオ地域の

長きにわたる紛争は、同地域の貧困問題を深刻化させ、テロの温

床を担い、そのことがフィリピンの投資先としてのイメージ低下

を招き貧困に陥っている実態。 ○ 我が国は、ミンダナオ地域全体の平和定着と開発はアジア全体

の安定にとっても重要として、「平和と安定のためのミンダナオ支

援パッケージ協力」を行うことを決定。 ○ 本地域の貧困からの脱却のために、農業・農村開発は最重点分野

であり、小規模農家を対象とした農業・農村開発や灌漑開発などの

基礎的インフラ整備の協力が必要(但し、治安の安全確保が条件)。

12 月 4日アロヨ大統領訪日の際、小泉総理より、ミンダナオの平和定着と開

発はアジア全体の安定にとっても重要として、テロと貧困への闘いを同時に進

めるアロヨ政権を支援するため、「平和と安定のためのミンダナオ支援パッケ

ージ」を策定した旨表明。

目的: ミンダナオ地域の最貧困からの脱却と平和の定着に貢献するため、中長期的視

野に立った持続的支援を行っていく。特に紛争により多大な影響を被り、開発

が大幅に遅れているイスラム・ミンダナオ自治地域(ARMM)に重点を置く。

支援の重点分野: ・ARMM自治政府を対象に政策立案・実施に対する支援

(開発計画策定・実施、行政能力向上等。) ・基礎的生活条件の改善に対する支援

(農業・農村開発、基礎的インフラ整備)

・平和構築、テロ対策に直接資する支援 (テロ対策関連の人材育成、警察能力の向上等)

具体的な協力: ・プロジェクト形成調査団を派遣(案件形成)

・有償資金協力「イスラム・ミンダナオ自治地域平和開発社会基金事業」

(コミュニティー開発の支援及び地域インフラの整備:24.7億円) ・セクタープログラム無償資金協力

(平和構築及び社会経済開発:15億円)

以下のプロジェクトをはじめとする約400 億円を支出する予定。

・有償資金協力「日比友好道路修復(ミンダナオ島区間)事業(I 及び II)」

・有償資金協力「ミンダナオコンテナ埠頭建設事業」 ・有償資金協力「アグサン川下流域開発事業(洪水制御)」

〈平和と安定のためのミンダナオ支援(日比首脳会談 H14.12.4 )〉

イ ス ラ ム ・ ミ ン タ ゙ ナ オ 自 治 区

A R M M

ミンダナオ島

出典:外務省HP