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意味フレームの実在性HFN/FOCALの心理学的妥当性の検証

京都大学大学院教育学研究科

中本 敬子 kenakamoto@nifty.com

発表の流れ

・ HFN/FOCALでの心理実験の位置づけ

・ 心理学者から見たHFN/FOCALの利点

・ 本実験の目的

・ 実験の報告‐ 能動形(12フレーム）/ 受動形(15フレーム）

‐ カード分類課題 / 意味素性評定課題

‐ 現段階でのまとめと今後の課題

・ 結論と今後の課題

2

心理実験のHFN/FOCALでの位置づけ

・ 構成概念＝理論的仮構物の検証‐ 意味フレーム＝状況理解の単位

‐ 意味素性による意味フレームの表現

‐ スキーマ性/具体性による意味フレームの階層化

‐ これらの概念は（言語外の）認知システムに係わるモノ

‐ 言語データの観察のみからは，その妥当性を検証できない

‐ 少なくとも下記の点を確認せねばならない．

・ 一般話者の直観とHFN/FOCALの分析が一致しているか

・ 言語データの分析以外の課題でも，フレームの存在を確認できるか

心理学者から見たHFN/FOCAL の利点(1)

・ 理解内容を無視せずに，言語理解の研究がしたい．‐ 実は心理学での言語理解研究は「どうやって分かっているか＝意味

の処理過程」が主に扱われている

‐ 「何が分かっているのか＝意味の内部モデル」は不十分な状況

‐ 当然，理解内容を探る手法も確立していない

– しかし，理解の出力が明示できない状況では処理の問題を詰めるにも限界がある．

・ 心理学的に妥当な「意味」の理論が欲しい．

・ あわよくば「意味」のデータベースが欲しい．

3

心理学者から見たHFN/FOCAL の利点(2)

• 心理学者が(認知）言語学的な「意味」の記法に望むもの

– 記述（図，ネットワーク etc..)が心的表示のモデルであることを引き受けて欲しい（ここで言葉を濁されると心理学との接点は無いと判断せざるを得ない）．

– 一貫した体系的な記述をしてほしい（少数の例あるいは少数の語句にだけ

通じる記法では，理解プロセスの一般化につなげられない）．

– 言語表現と意味との対応を明示してほしい（言語のどの部分から，どう意味が構成されているのかハッキリしてほしい．“何となく，こんな感じ” では，実

験による検証も理解プロセスのモデル化もできない）．

– 必ずしも，はじめから“完全に正しい”記述を求めているわけではない（記述の妥当性は言語の解析と実験結果の相互検証で高めていけばよい）．

• HFN/FOCALの枠組みはこれらの要請を満足している．

実験の目的

・ HFN/FOCALの基礎である意味フレームの実在性（心理学的妥当性）

素性での記述の妥当性 について検証する．

・ 今後の展開のため，課題を開発する．

実験2b

意味素性評定

実験2a

カード分類

受動形「YがXに襲われた」

(15フレーム版)

実験1b

意味素性評定

実験1a

カード分類

能動形「XがYを襲った」

(12フレーム版)

4

<襲う> (旧）HFN

ROOT

生体の抗争

災厄の発生

人の襲撃

動物の襲撃

自然災害発生

異変の発生

捕食

異常気象

非捕食

資源強奪

抗争/紛争

暴行

強盗

侵略

疫病の流行

活動への打撃

発病/発症

虐待

強姦

大規模

小規模

実験1 材料

・ (旧)HFN最下位12フレームを実現する文（3文ずつ）

<発病/発症>悪性のガンが働き盛りの彼を襲った

<動物の襲撃：捕食>ライオンがインパラの群れを襲った

<活動への打撃>株価の暴落が市場を襲った

<強姦>ストーカーがその女性を襲った

<疫病の流行>悪性のインフルエンザが我が国を襲った

<虐待>通り魔がその小学生を襲った

<異常気象：小規模>突風がTVのレポーターを襲った

<紛争/抗争>暴徒と化した民衆が警官隊を襲った

<異常気象：大規模>大型台風が日本列島を襲った

<侵略>ナチの戦車部隊がパリを襲った

<動物の襲撃：非捕食>スズメバチの群が子どもたちを襲った

<強盗>２人組の強盗がその銀行を襲った

5

実験1a カード分類（能動形）

・ 材料 “XがYを襲った”形式の36文（12Frame×3文）

・ 手続き材料が1文ずつ印刷されたカード36枚を配布し，「襲った」の類似性に基づいて，任意のグループ数に分類するように求めた．

・ 被験者 大学生 64名

実験1a 反応の例 (1) 9グループ分類の例

・ サメー傷ついたイルカ，ライオンーインパラの群れ，ハイエナの群－国立公園の監視員，スズメバチの大群－子供達，イノシシーキノコ採りに来ていた男性，毒蛇－近づいてきた登山客

・ ５，６人の少年たちー公園にいた浮浪者，23歳の男性－通行人，二人の組員－敵対する組長

・ 二人組の強盗－その銀行，外国人のグループー現金輸送車，覆面をかぶった男－銀座の宝石店

・ 大洪水－東海地方，大型台風－日本列島，直下型地震－神戸の町，鉄砲水－避難する住民，突風－テレビのリポーター，土砂崩れー民家

・ 言いようのない不安－彼，悪性のガンー働き盛りの彼，突然の痙攣－少女の全身

・ 大型の不況－その国，株価の暴落－市場，狂牛病問題－畜産業界

・ 悪性のインフルエンザーわが国，ペストーその町，エイズーアフリカの国々

・ ストーカー－その女性，無職の男－一人暮らしの若いOL，店長－アルバイトの女子店員，通り魔－その小学生

・ 政治的に孤立した国－隣国，ドイツの戦車部隊－パリを襲った，テロリストの集団－アメリカ軍基地，森の西側の部族－北側の部族，暴徒と化した民衆－警官隊

6

実験1a 反応の例 (2) 3グループ分類の例

・ 森の西側の部族－北側の部族，政治的に孤立した国－隣国，ドイツの戦車部隊－パリ，テロリストの集団－アメリカ軍基地，突風－テレビのリポーター，土砂崩れ－民家，大洪水－東海地方，直下型地震－神戸の町，大型台風－日本列島，大型の不況－その国，株価の暴落－市場

・ ストーカー－その女性，無職の男－一人暮らしの若いOL，暴徒と化した民衆－警官隊，スズメバチの大群－子供達，イノシシ－キノコ採りに来ていた男性，毒蛇－近づいてきた登山客，サメ－傷ついたイルカ，ライオン－インパラの群れ，ハイエナの群－国立公園の監視員，二人組の強盗－その銀行，覆面をかぶった男－銀座の宝石店，外国人のグループ－現金輸送車，二人の組員－敵対する組長，店長－アルバイトの女子店員，通り魔－その小学生，５,６人の少年たち－公園にいた浮浪者，23歳の男性－通行人

・ 言いようのない不安－彼，悪性のガン－働き盛りの彼，突然の痙攣－少女の全身，悪性のインフルエンザ－わが国，ペスト－その町，エイズ－アフリカの国々，鉄砲水－避難する住民，狂牛病問題－畜産業界

実験1a 反応の例 (3) 16グループ分類の例・ 政治的に孤立した国－隣国，ドイツの戦車部隊－パリ，テロリストの集団－アメリカ軍基地，森の

西側の部族－北側の部族・ サメ－傷ついたイルカ，ライオン－インパラの群れ・ 暴徒と化した民衆－警官隊・ イノシシ－キノコ採りに来ていた男性，毒蛇－近づいてきた登山客・ ストーカー－その女性，無職の男－一人暮らしの若いOL，店長－アルバイトの女子店員・ 通り魔－その小学生，23歳の男性－通行人・ 大洪水－東海地方，大型台風－日本列島，直下型地震－神戸の町，突風－テレビのリポーター，

土砂崩れ－民家・ 悪性のインフルエンザ－わが国，ペスト－その町，エイズ－アフリカの国々，悪性のガン－働き盛

りの彼，狂牛病問題－畜産業界・ 言いようのない不安－彼・ 大型の不況－その国，株価の暴落－市場・ 突然の痙攣－少女の全身・ ５，６人の少年たち－公園にいた浮浪者・ 二人の組員－敵対する組長・ 鉄砲水－避難する住民・ ハイエナの群－国立公園の監視員，スズメバチの大群－子供達・ 二人組の強盗－その銀行，外国人のグループ－現金輸送車，覆面の男－銀座の宝石店

7

実験1a 結果

・ ２つの文が同じグループに分類された頻度を類似性の指標として採用．

・ 多次元尺度法（Multidimensional Scaling: MDS)，階層的クラスター分析を用いて解析．

1 2 3 4 5 6 7 8 ・・・1 23歳の男性が通行人を次々と襲った 2 通り魔がその小学生を襲った 603 突風がテレビのリポーターを襲った 1 14 サメが傷ついたイルカを襲った 10 10 45 ドイツの戦車部隊がパリを襲った 2 2 4 36 店長がアルバイトの女子店員を襲った 30 31 1 6 37 政治的に孤立した国が隣国を襲った 3 3 2 5 54 48 悪性のインフルエンザがわが国を襲った 0 0 14 3 2 0 2． ・． ・． ・

実験1a結果：MDS

・ MDS (3次元解)で得た布置

・ フレームごとにまとまりをなしている，

・ [+/- animate(s)]で大きく分離している．

・ 概ねHFNと一致する結果と言える．

stress = .065

F01抗争/紛争 F02侵略 F03強盗 F04虐待 F05強姦 F06捕食動物の攻撃 F07非捕食動物の攻撃 F08異常気象（小規模） F09異常気象（大規模） F10疫病の流行 F11活動への打撃 F12発病

8

0 50 100 150 200 250 300 350結合距離

F11a 大型の不況がその国をF11b 株価の暴落が市場を

F11c 狂牛病問題が畜産業界をF12a 言いようのない不安が彼を

F12c 突然の痙攣が少女の全身をF12b 悪性のガンが働き盛りの彼を

F10b ペストがその町をF10c エイズがアフリカの国々を

F10a 悪性のインフルエンザがわが国をF08b 大型台風が日本列島を

F08a 大洪水が東海地方をF08c 直下型の地震が神戸の町を

F09c 土砂崩れが民家をF09a 鉄砲水が避難する住民をF09b 突風がTVのリポーターを

F07a スズメバチの大群が子ども達をF06c ハイエナの群が国立公園の監視員を

F07c 毒蛇が近づいてきた登山客をF07b イノシシがキノコ採りに来ていた男性を

F06b ライオンがインパラの群をF06a サメが傷ついたイルカを

F01c 森の西側の部族が北側の部族をF02a 政治的に孤立した国が隣国を

F02c テロリストの集団がアメリカ軍基地をF02b ドイツの戦車部隊がパリを

F05a ストーカーがその女性をF05b 無職の男が一人暮らしの若いOLを

F05c 店長がアルバイトの女子店員をF03c 覆面をかぶった男が銀座の宝石店を

F03b 外国人のグループが現金輸送車をF03a 二人組の強盗が銀行を

F01a 二人の組員の組員が敵対する組長をF01b 暴徒と化した民衆が警官隊を

F04b 5,6人の少年達が公園にいた浮浪者をF04a 通り魔がその小学生を

F04c 23歳男性が通行人を

実験1a 結果クラスター分析

虐待/抗争

強盗

強姦

侵略/紛争

動物の襲撃

異常気象

疫病の流行

発病・発症

活動への打撃

[±animate(s)]での分岐

・ 一般日本語話者の「襲う」の直観的分類は，HFN解析で得られる意味フレームと概ね一致している．

・ 特に，最下位クラスターと最上位とでHFNと一致が見られたことは重要．‐ 中位では，多少クラスターの結合順位が異なる．

‐ 素性の利用の課題依存性を示唆する．

実験1a まとめ

9

実験1b 意味素性評定（能動形）

・ 評定項目

‐ HFN解析でフレーム弁別に有効と想定された意味素性を日本語に翻訳したもの15項目

・ 襲い手は生物である [+ alive (s)]

・ 襲い手はやむを得ず襲いかかった [+ reactive (s)]

・ 被害は直接感じ取れる [+ direct (e)]

・ 襲う相手はあらかじめ決まっていた [+ targeted (o)]

・ 襲い手は気象現象である [+ weather (s)]

・ 手続き 材料文に評定項目がどれくらい当てはまるか評定

（５件法：1．全くそう思わないー５．強くそう思う）

・ 被験者 大学生 64名

実験1b 評定用紙

こういう感じで一人につき24文（12文×2セット）評定

10

実験1b

結果(1)評定の例

政治的に孤立した国が隣国を襲った

1 2 3 4 5

襲い手は人間である

被害は意図されたものである

襲う相手はあらかじめ決まっていた

道具を使って被害を与える

襲い手はあらかじめ襲う準備をしていた

襲い手は生物である

襲い手には生命感がある．

やむを得ず襲いかかった

襲い手は目に見える

襲い手は集団をなしている

被害の規模は個人/個体を越える

被害は直接感じ取れる

被害の受け手は死ぬこともある

気象現象である

存在は感じ取れる

全被験者の反応を平均して各文の

プロフィールを算出

0 10 20 30 40 50 60

結合距離

F12b 悪性のガンが働き盛りの彼をF12c 突然の痙攣が少女の全身を

F12a 言いようのない不安が彼をF11b 株価の暴落が市場を

F11a 大型の不況がその国をF11c 狂牛病問題が畜産業界を

F09a 突風がテレビのリポーターをF08c 直下型地震が神戸の町をF10c エイズがアフリカの国々を

F10b ペストがその町をF10a 悪性のインフルエンザがわが国を

F09c 鉄砲水が避難する住民をF09b 土砂崩れが民家を

F08b 大型台風が日本列島をF08a 大洪水が東海地方を

F07c 毒蛇が近づいてきた登山客をF07b イノシシがキノコ採りに来ていた男性を

F06c ハイエナの群が国立公園の監視員をF07a スズメバチの大群が子供達を

F06b ライオンがインパラの群れをF06a サメが傷ついたイルカを

F05c 店長がアルバイトの女子店員をF05b 無職の男が一人暮らしの若いOLを

F05a ストーカーがその女性をF04c 23歳の男性が通行人を次々と

F04b 5,6人の少年たちが公園にいた浮浪者をF04a 通り魔がその小学生を

F02c テロリストの集団がアメリカ軍基地をF02b ドイツの戦車部隊がパリを

F01b 暴徒と化した民衆が警官隊をF01c 森の西側の部族が北側の部族を

F02a 政治的に孤立した国が隣国をF01a 二人の組員が敵対する組長を

F03c 覆面をかぶった男が銀座の宝石店をF01b 外国人のグループが現金輸送車を

F01a 二人組の強盗がその銀行を

実験1b 結果(2)

クラスター分析

強盗

抗争/紛争

虐待

強姦

非捕食動物

異常気象

疫病の流行

活動への打撃

発病・発症

捕食動物 [±human(s)]での分岐

11

実験1 カード分類，素性評定とHFNの比較

・ (旧)HFNの最下位フレームとカード分類クラスターの比較

F01 F02 F03 F04 F05 F06 F07 F08 F09 F10 F11 F12

抗争/紛争

軍事侵略

資源強奪

虐待 強姦捕食動

物非捕食動物

気象（大）

気象（小）

疫病の流行

活動への打撃

発病 計

2 抗争 2 25 侵略 1 3 43 資源強奪 3 31 虐待 3 34 強姦 3 36 動物の襲撃 3 3 67 異常気象 3 3 68 疫病の流行 3 3

10 活動への打撃 3 39 発病 3 3

HFNの意味フレーム

カード分類でのクラスター

実験1 カード分類，素性評定とHFNの比較

F01 F02 F03 F04 F05 F06 F07 F08 F09 F10 F11 F12抗争/紛争

軍事侵略

資源強奪

虐待 強姦捕食動

物非捕食動物

気象（大）

気象（小）

疫病の流行

活動への打撃

発病 計

2 抗争/侵略 2 3 5

1 資源強奪 1 3 4

3 虐待 3 3

4 強姦 3 3

5 捕食動物の攻撃 2 2

6 非捕食動物の攻撃 1 3 4

7 異常気象 2 2 4

8 疫病の流行，地震 1 3 4

9 狂牛病，突風 1 1 2

10 活動への打撃 2 2

11 不安・痙攣 2 2

12 ガン 1 1

HFNの意味フレーム

素性評定でのクラスター

・ (旧)HFNの最下位フレームと素性評定クラスターの比較

12

実験1 まとめ

・ カード分類(1a)，意味素性評定(1b)とも，HFNの解析と一致した結果を示した．‐ HFNで特定された意味フレームが一般話者の直観と一致

‐ フレームを記述するための意味素性の利用は心理学的に妥当

‐ 一般話者でも（少なくとも意味的側面に注意を向けさせた場合には）相当に細かい意味の区別ができる．

・ HFN/FOCALの枠組みに肯定的な結果である．

・ しかし…

実験1 まとめ : HFN改訂にむけて･･･

・ F12 <発病・発症>フレームのまとまりが悪い．‐ カード分類のMDS布置では，他のフレームに比べ，ばらついている．

‐ クラスター分析の結果をみると，

カード分類では ｛｛ 悪性のガン，痙攣 ｝，不安 ｝

素性評定では ｛ 悪性のガン．｛ 痙攣，不安 ｝｝

‐ もう少し細かいフレームに分けた方がいいのでは?

・ 「暴走車が通行人を襲った」‐ <事故>フレーム?

・ といった事情で<襲う>のHFNは15フレーム版に改訂

13

実験2 受動形での実験

15フレーム版 <襲う>HFN

予稿集

?ページ参照

実験2 材料 (受動形)

・ 15フレーム版<襲う>HFN

F15<悪感情>いつも温和な若者が激しい嫉妬に襲われた．

F10<異常気象: 小規模>民家が土砂崩れに襲われた．

F0ｴ<虐待>公園にいた浮浪者が5,6人の少年達に襲われた．

F14<発症>雪山遭難者が眠気に襲われた．

F09<異常気象: 大規模>日本列島が大型台風に襲われた．

F04<強姦>一人暮らしの若いOLが無職の男に襲われた．

F13<発病>隣のおじいさんが脳卒中に襲われた．

F08<事故の発生>大通り沿いの保育園が暴走したトラックに襲われた．

F03<資源強奪>都内の銀行が二人組の強盗に襲われた．

F12<活動への打撃>株式市場が株価の暴落に襲われた．

F07<動物の攻撃: 非捕食>キノコ採りに来ていた男性がイノシシに襲われた．

F02<軍事侵略>パリがドイツの戦車部隊に襲われた．

F11<疫病の流行>川沿いの町がペストに襲われた．

F06<動物の攻撃: 捕食>インパラの群れがライオンに襲われた．

F01<抗争>ある組長が敵対する二人の組員に襲われた．

14

実験2a カード分類（受動形）

・ 材料 “YがXに襲われた” 45文（15Frame×3文）

・ 手続き材料が1文ずつ印刷されたカード45枚を配布し，「襲った」の類似性に基づいて，任意のグループ数に分類するように求めた．

・ 被験者 専門学校生 55名

0 100 200 300 400

結合距離

F08c原発付近の住民が大きな災難にF10c避難する住民が鉄砲水に

F10aテレビのリポーターが突風にF09a東海地方が大洪水にF10b民家が土砂崩れに

F09b日本列島が大型台風にF09c神戸が直下型地震に

F08b大通り沿いの保育園が暴走したトラックにF08a買い物帰りの主婦が交通事故に

F12c畜産業界が狂牛病問題にF12b株式市場が株価の暴落に

F12a南米の国々が大型の不況にF13c知人の妹が拒食症に

F13a働き盛りの男性が悪性のガンにF13b隣のおじいさんが脳卒中に

F14a難病の少女が痙攣にF11aアジア諸国が悪性のインフルエンザに

F11b川沿いの町がペストにF11cアフリカの国々がエイズにF14c仕事中の男性が脱力感に

F15bいつも温和な若者が激しい嫉妬にF15c万引きした少年が罪悪感に

F15a敏腕の社長が言いようのない不安にF14b雪山遭難者が眠気に

F07a子供達がスズメバチの大群にF07c41歳の登山客が毒蛇に

F07bキノコ採りに来ていた男性がイノシシにF06c国立公園の監視員がハイエナの群れに

F06bインパラの群れがライオンにF06a傷ついたイルカがサメに

F01b警官隊が暴徒と化した民衆にF02aある国が資源の乏しい隣国にF02bパリがドイツの戦車部隊に

F02cアメリカ軍基地がテロリストの集団にF01c森の北側の部族が西側の部族に

F04a近所の女性がストーカーにF04b一人暮らしの若いOLが無職の男にF04cアルバイトの女子店員が店長に

F01aある組長が敵対する二人の組員にF05aその小学生が通り魔に

F05b公園にいた浮浪者が5,6人の少年たちにF05c何人かの通行人が23歳無職の男性にF03c銀座の宝石店が覆面をかぶった男に

F03a都内の銀行が二人組の強盗にF03b現金輸送車が外国人のグループに

実験2a 結果クラスター分析

強盗

虐待

強姦

紛争/侵略

動物の襲撃

悪感情/発症

疫病の流行

活動への打撃

事故

眠気

発病

異常気象

[±animate(s)]での分岐

15

実験2a結果：MDS(1)

・ MDS (3次元解)で得た布置

・ フレームごとにまとまり，

・ [±animate(s)]で大きく分離．

・ 概ねHFNと一致する結果．

F01 武力抗争 F02 侵略 F03 資源強奪 F04 強姦 F05 虐待 F06 捕食のための攻撃 F07 捕食のためでない攻撃 F08 事故の発生 F09 異常気象（大規模） F10 異常気象（小規模） F11 疫病の流行 F12 活動への打撃 F13 発病（非一時的な異常） F14 発症 （一時的な身体の異常） F15 悪感情（一時的な心の異常）

実験2b 意味素性評定（受動形）

・ 評定項目

‐ HFN改訂と実験1bの結果から追加・削除・修正した項目21個

‐ ROOTの素性を確認する項目を追加・ 被害の受け手には襲われる理由があった [+ vulnerable (o)]

・ 襲い手は自然現象である [+ natural (s)]

・ 襲われたものは被害を被った (ROOT） [+ dameged(o)]

・ 被害を受けたのは生き物である [+ animate (o)]

・ 被害を受けたのは人間である [+ human (o)]

・ 手続き 材料文に評定項目がどれくらい当てはまるか評定

（５件法：1．全くそう思わないー５．強くそう思う）

・ 被験者 大学生 61名．1人15文(１セット) を評定．

16

0 20 40 60

結合距離

F15c万引きした少年が罪悪感にF15bいつも温和な若者が激しい嫉妬に

F13c知人の妹が拒食症にF14c仕事中の男性が脱力感に

F15a敏腕の社長が言いようのない不安にF14b雪山遭難者が眠気にF14a難病の少女が痙攣に

F13b隣のおじいさんが脳卒中にF13a働き盛りの男性が悪性のガンにF08c原発付近の住民が大きな災難に

F12b株式市場が株価の暴落にF12a南米の国々が大型の不況に

F09c神戸が直下型地震にF12c畜産業界が狂牛病問題にF11b川沿いの町がペストに

F11cアフリカの国々がエイズにF11aアジア諸国が悪性のインフルエンザに

F10aテレビのリポーターが突風にF10c避難する住民が鉄砲水に

F10b民家が土砂崩れにF09b日本列島が大型台風にF09a東海地方が大洪水に

F07bキノコ採りに来ていた男性がイノシシにF07c41歳の登山客が毒蛇に

F06c国立公園の監視員がハイエナの群れにF07a子供達がスズメバチの大群にF06bインパラの群れがライオンにF06a傷ついたイルカがサメに

F08b大通り沿いの保育園が暴走したトラックにF08a買い物帰りの主婦が交通事故に

F05c何人かの通行人が23歳無職の男性にF05a登校中の小学生が通り魔に

F05b公園にいた浮浪者が5,6人の少年たちにF01b警官隊が暴徒と化した民衆にF04cアルバイトの女子店員が店長にF04b一人暮らしの若いOLが無職の男に

F04a近所の女性がストーカーにF03b現金輸送車が外国人のグループに

F03c銀座の宝石店が覆面をかぶった男にF03a都内の銀行が二人組の強盗に

F02cアメリカ軍基地がテロリストの集団にF01c森の北側の部族が西側の部族に

F02bパリがドイツの戦車部隊にF02aある国が資源の乏しい隣国に

F01aある組長が敵対する二人の組員に

実験2b 結果クラスター分析

侵略/抗争

強盗

強姦/虐待

通り魔(虐待)

事故

異常気象

疫病の流行

発病

発症

動物の襲撃

活動への打撃

悪感情

[±human(s)]での分岐

実験2 カード分類，素性評定とHFNの比較

・ HFNの最下位フレームとカード分類クラスターの比較

HFNF01 F02 F03 F04 F05 F06 F07 F08 F09 F10 F11 F12 F13 F14 F15

カード分類抗争/紛争

軍事侵略

資源強奪

強姦 虐待 捕食 非捕食 事故異常気象(大)

異常気象(小）

疫病活動への打撃

発病 発症 悪感情

4 侵略 2 31 強盗 33 強姦 32 抗争/紛争 1 35 捕食 26 非捕食 1 3

12 事故 213 異常気象 1 3 39 疫病 3

11 活動への打撃 310 発病・発症 3 17 眠気 18 悪感情 1 3

Frame

17

実験2 カード分類，素性評定とHFNの比較

・ HFNの最下位フレームと素性評定クラスターの比較

HFNF01 F02 F03 F04 F05 F06 F07 F08 F09 F10 F11 F12 F13 F14 F15

素性評定抗争/紛争

軍事侵略

資源強奪

強姦 虐待 捕食 非捕食 事故異常気象(大)

異常気象(小）

疫病活動への打撃

発病 発症 悪感情

1 抗争・紛争 2 32 強盗・強姦・暴動 1 3 3 13 虐待 25 動物の攻撃 3 34 事故 29 原発 16 異常気象 2 37 疫病の流行 1 3 18 活動への打撃 2

10 発病 211 発症 1 3 112 悪感情 2

Frame

実験2 まとめ

・ カード分類(2a)，意味素性評定(2b)とも，HFNの解析と一致した結果を示した．‐ 実験1（能動形）での結果を，より明確な形で再現

（F13<発病>, F14<発症>, F15<悪感情>の分離)

‐ 15フレーム版HFNに肯定的な結果

・ コーパス解析だけでなく，心理実験によっても，HFNを改善していくことができる．‐ フィードバックと相互検証の効果

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結論

・ 意味フレームの心理的実在性を強く示唆‐ 能動形(実験1a, 1b)，受動形(実験2a, 2b)の全てで，HFNの最下位フ

レームを再現する結果

‐ 上位でのクラスターの結合過程は，HFNの素性中和と一致

・ 素性による意味フレーム表現の有効性‐ 素性評定のみからフレームを分類し，弁別することが可能．

‐ 意味素性によって，15(12)個のフレームを特徴づけられる．

・ 能動形，受動形に関わらず，HFNに対応する結果‐ 意味フレーム＝「(非)言語的な理解の単位」仮説に支持的

今後の課題

・ 他の語のHFNを同じ手法で検証する必要あり．

‐ 「守る」「つかむ」など

‐ HFNが木に近くならないケースの解析方法の特定

・ 意味素性評定項目を充実させる．

‐ 他の語をやってみて，重要そうな素性項目を蓄積していく

‐ 最終的には汎用的に使える素性評定項目のリストを作る

・ 「意味」と心理プロセスとしての理解過程を探る

‐ 多義性の認知: 意義の距離を導入した検討

‐ 語の理解におけるフレームの競合 = 側抑制の検証

‐ 動詞と（具象）名詞の処理の差を明らかにする

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謝辞

・ 実験に参加してくださった被験者のみなさま

・ 実験実施にご協力いただいた方々‐ 瀧ヶ崎隆史（日本工業大学），時津倫子（関東学院大学）

‐ 関水しのぶ，大内善広（早稲田大学教育学研究科）

‐ 安田孝（早稲田大学文学研究科）

‐ 椎名乾平（早稲田大学教育学部）

• 有益な助言・示唆をくださった方々– 楠見孝（京都大学）および楠見研究室のみなさま