テキサトール(TEXTOR)国際共同研究についてjasosx.ils.uec.ac.jp/JSPF/JSPF_TEXT/jspf1984/jspf1984_11/...解...

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テキサトール(TEXTOR)国際共同研究について 宮原 (名古屋大学プラズマ研究所) (1984年11月13日 受理) TEXTOR Intemational Colla,borati Akira Miyahara (Received November13,エ984) Abstra,ct TEXTORlhte脚・na1Co玉lab・ratio尊wasつrganiz Intemationa耳E準ergy「Agency,a皿d stalrted in1978. The p dev・te虚t・tぬe斑acklnec・耳structi・n・andPthe畑c蜘eti decided according’to the P weight to their con甘ibutions. machi皿eti甲ea$pSahdSwiss血血ers・As・thephaseH discharge cleaning、and its effect on limiter conditioni皿g i c・llab・rat孟・n・nALT-H・(AdvancedLimiterTest』H・),圃ectis 1.テキサトール計画の発足 テキサトール(TEXTOR〉の名前1手』孕RUS、聾ERIMENτfo邸CHNgL RESERCHに由来しているカ㍉『そマ)提案は1972年のT?gem Seeに於けるGroupe de 上でドイツ連邦共和町一リヒ蔚力機構プラズマ研究所の』肩・L』」・rdan・PN・ll・EWaelbr・e ってなされたのが発端であった。当時は1968年のT-3「トカマクの結果の発表以来ヨーロッパ・アメリカ全土 にトカマク旋風が吹き荒れている時期ではあったが,それだけに各研究機関はどの点に特徴を出すべきかとい うことに苦心していた。提案はその後のスパッタリングやブリスタリングによる壁の浸蝕の問題提起,さらに は1974年の不純物問題の討議を経て1975年にまとめられ,翌年10月にユーリヒにおいて行われたInternati Symposium on Plasma Wall Interactionにお』いて国際的に討議を行った。この計画は 焼プラズマ容器の研究(Study of Buming Vessel)」とよばれるが,その特徴とするところは大半径1 小半径0.5mのトカマクプラズマを用いて高温プラズマと壁との相互作用を重点的に研究することにある。 そのための装置としては次の点に留意して建設された。 血sオ溜eoブPJαsηαPhツ5∫c5,ノVα9・ツαU伽eず3め,〈~α80ツα464. 391

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難 テキサトール(TEXTOR)国際共同研究について

   宮原  昭

(名古屋大学プラズマ研究所)

(1984年11月13日 受理)

TEXTOR Intemational Colla,boration

Akira Miyahara

(Received November13,エ984)

Abstra,ct

   TEXTORlhte脚・na1Co玉lab・ratio尊wasつrganizedinthef「amewo「kofIntemationa耳E準ergy「Agency,a皿d stalrted in1978. The phase I collaboration was

dev・te虚t・tぬe斑acklnec・耳structi・n・andPthe畑c蜘etimeξ・帥aseHw・rkwas

decided according’to the P weight to their con甘ibutions.  Japa聾 w&s sh&red 20%

machi皿eti甲ea$pSahdSwiss血血ers・As・thephaseHc・llab・r琴ti・n・ECRdischarge cleaning、and its effect on limiter conditioni皿g is under going. 1ntemationa,l

c・llab・rat孟・n・nALT-H・(AdvancedLimiterTest』H・),圃ectisn・wpr・P・sing.

1.テキサトール計画の発足

テキサトール(TEXTOR〉の名前1手』孕RUS、聾ERIMENτfo邸CHNgLOGY墾IENTED

RESERCHに由来しているカ㍉『そマ)提案は1972年のT?gem Seeに於けるGroupe de Liaison会合の席

上でドイツ連邦共和町一リヒ蔚力機構プラズマ研究所の』肩・L』」・rdan・PN・ll・EWaelbr・eckによ

                                のってなされたのが発端であった。当時は1968年のT-3「トカマクの結果の発表以来ヨーロッパ・アメリカ全土

にトカマク旋風が吹き荒れている時期ではあったが,それだけに各研究機関はどの点に特徴を出すべきかとい

                      の           ラうことに苦心していた。提案はその後のスパッタリングやブリスタリングによる壁の浸蝕の問題提起,さらに

         ラ                   のは1974年の不純物問題の討議を経て1975年にまとめられ,翌年10月にユーリヒにおいて行われたInternational

Symposium on Plasma Wall Interactionにお』いて国際的に討議を行った。この計画はしばしば一言で「核燃

焼プラズマ容器の研究(Study of Buming Vessel)」とよばれるが,その特徴とするところは大半径1.75m,

小半径0.5mのトカマクプラズマを用いて高温プラズマと壁との相互作用を重点的に研究することにある。

そのための装置としては次の点に留意して建設された。

血sオ溜eoブPJαsηαPhツ5∫c5,ノVα9・ツαU伽eず3め,〈~α80ツα464.

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核融合研究第52巻第5号 1984年11月

 (1)トロイダル磁場は当初2T,1985年より2.6Tとなるが,送電線から直接受電して2.6Tで10秒の

通電を行うことが出来る・(芋一リ1ヒはヨーロ.7パの各研究所にくらべると極めて電力事情がよい。)

 (2)真空容器とライナーとの二重構造とし,真空容器は350。C,ライナーは6000Cまで加熱可能で,必

要に応じては高温状態で運転を行いうる。

(3)ポロイダルコイルの接続は差し込み構造にしてある。従って装置の分解修理は極めて容易でモー’ター駆

動によって装置が二分割できる様子は第1図の如くである。

謝曝

塾漣

簿

、第1図 分解中のテキサトール装置

 (4)放電時間は長パルス放電を指向していて,現在はオーム加熱で3秒,追加熱と不純物制御によって5~

10秒の動作を達成することを考えているが,10秒の放電には鉄心の増強が必要と.なる。

 (5),プラズマ端部を観測できるポートを数多く設置していて,中心部のプラズマのみならずScrape off

プラズマの観測に便利なように設計してある。

 (6)リミター材料の試験に必要な熱負荷を与えるために,中性粒子ビーム入射および高周波加熱6MW程度

を準備している。

 これらの特徴は当時としては極めてユニークなものであったが,それでもこの計画の発足は財政難からなか

なかはかどらず,ようようにしてOE“Dの許のIEA(IntemationωEnergy Agency)の国際共同研究の一

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解 説 テキサトー」セ(TEXTOR〉国際共同研究について 宮 原

環として発足したのは1977年の8月のことであった。1977年10月6日にヨーロッ困連合,アメリカ,スイス,

カナダ,トルコが加盟,我が国は翌1978年4月13日に正式に加盟した。我が国からは初代の執行委員会副議長とし

て内田岱二郎氏があたり.・テキサトール国内委員会によって外務省・科技庁塾文部省・通産省等の各省庁間の

連絡をとると共に,テキサトール国内技術委員会によってプラズマ,材料,真空の研究者から意見を求めて計

画に反映していった。現在は次章にのべる共同建設の時代が終り,第一期共同研究の時期である。

 2.テキサトrルの共同建設・

 テキサトールの建設はヨーロッパ連合によって予算が承認された1978年の秋から開始されたが,それと同時

にIEAを通じてテキサトール計画に参画している各国からも入員派遣や国内作業による共同建設が始められ

た。一番始めに手がけた仕事はプラズマの位置制御用の四象限サイソスター電源であり,プラズマ研久保田,

小平両氏,東北大船戸氏に東芝府中工場が協力して設計を行い,さらに詳しいモデル実験まで行ってパラメー

ターを決定した。これは日本には高圧大電流のサイリス、ター素子が新幹線の需要によって開発されていたこと

                   のにもよるが,ユーリヒ側の担当が、.Gehauser氏という理論家であり,解析に精緻を極めたがハード面が整合し

                のなかったことによる。やがてSeeger氏1というチェッパー電車の専門家が南らわれて入札が行われたがユー

リヒから送られて来た入札仕様書は船便で,届いた時は入札が終っていたというハプニングが起った。ユー

リヒ側の責任者であったConrads氏からは平謝りに謝まった連絡があったが,このことがあってから日本

向けの書類は特に指示しない限り航空便とすることになった。もっともヨーロッパもアメリカも国内や大陸内

は航空便と指定しなくても航空便で郵送されるので,上のような間違いが起ったのである。同じ時期にプラズ

マ研の藤田氏がテキサトールに1ヶ月滞在してプラズマ研のJIPP-T-Hでのプラズマ診断の経験をもとに

討論を行って来たが,その結果が現在テキストール測定室で一きわ目立?TVカメラによるプラズマの振舞

いの観測である・1979年塵から、1980年度にかけては原研の中村幸治氏がユーリヒに滞在し・真空容器の時定数

や各種の渦電流の評価を,原研で開発した計算機コードを用いて解析し,改良すべき点の指示などを行った。

この寄与はその後のテキサトールの建設IF対し極めて有効であったとCo皿ads氏は今も感謝をしている・

1980年の夏からは三菱電機の八十島氏が診断用配線や電力系統の接地系についての詳しい検討をテ午サトール

の地下室のダクトにもぐって開始した。この地味でしかも最も重要な仕事の一つを日本チームが逐行したこと

「を,八十島氏と.共に私はいっも誇りに思っている。この年の暮にはプラズマ研から松浦氏がプラズマ制御

系全般についてのチェックと指導のために二ヶ月ユーリヒに滞在した。同氏の解析とそのシミュレーシ11・ン実

験の見事さは今も語り草となっているが,現在テキサトールが位置制御の優秀さを誇っているのは,松浦氏の         8) 一                                      “最適パラメータの選択に負っていることが多い。このころになるとテキサトールも完成に近ついて,トロイダ

ル電源の整流器やサイリスター電源の受入れ試験を是非手伝って欲しいという要請があり,卑芝から藤原氏が

ユーリヒにやって来た。テキサトールは近所を送電線のヨーロッパ幹線が通っていることもありフライホイ

ール付電動発電機を用いずに直接受電によりトロイダルコイルやポロイダルコイルを励礁レているので,こ

との他この電源の試験には注童が払われた。そしてこの寒成によって電気関連の90%は完成しユーリヒ側担

当のGiesen氏を礪っとさせたが,我々にしても主要なところは全部参画したことになり,他国の装置という

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核融合研究第52巻第5号 1984年11月

よりも自分の装置という感覚が強くなったのはその後の共同研究のために幸いであったと思う。

 これに反しトカマク建設にあたっ臼てのもう一つの重要要素である真空系の方は私の専門であるにも拘らず

1980年の秋にプラズマ研より赤石氏に行ってもらう迄は手が抜けていた。これは一つにはユーリヒにおける真

空の専門家のKδnen氏が診断にまわされて直接にはかかわりがなくなったこと,その後任のButyek氏がド

イツ人らしい頑固さで,バックデータのないアルミガスケットの使用を強硬に主張したことによる。しかしあ

とからヘリコフレックスにおきかえることのWorkshopを私が主催させられたことを思うと,もうすこし親

身に考えてやった方がよかったような気がするが,テキサトールの建設部隊の中に装置としての真空専門家が

’いなかったことは現在に至る真空トラブルの遠因であろう。赤石氏がユーリヒに行った時には装置としての真

空系の発注は厩に終り,彼の仕事は診断用機器や共同研究として持ち込まれてくる機器のリーフテスト用ベン

チの設計であったが,そのおかげで,共同建設が終って共同研究フェーズとなり,各国から持ち込まれてくる

機器のリークにもとづく困難は皆無である。

 いよいよ完成が近づいたので,トカマクの運転に未経験なユーリヒチームを指導をするというので,原研の

松崎氏がのりこんだのは198!年の4月であった。しかしながら真空系の試運転の結果熔接ベローズに欠陥のあ

ることがわかり,至急補修をしてはじめてプラズマを点火したのは1981年9月11日である。松崎さんをひきっい

でプラズマ研の櫻井氏がテキサトールにおもむき,オーム加熱トカマクプラズマの最適化ということでプラズ

マの位置制御を詳しく行った。この二人の成果はテキサトールが現在再現性のよさを誇る基盤を築くことに

なった。

 上記のいわば直接的な共同建設と並行して放電洗浄方式の開発といういわばフェーズ1.5ともいうべき共

同建設事業が理研チームによって企画された。これは電子レンジにもちいられる2.25GHzの5kW程度の

マグネトロンによってトカマク中に電子サイクロトロン共鳴(以下ECRと略す)によりプラズマを定常的に

                                 ラ         ヱの生成し,そのプラズマにより放電洗浄を行うものである。既にJFT-2(原研〉JIPP-T-H(プラズマ研)

のトカマクにおいてその有効性を確かめてはあるが,さらにテキサトールのようにライナーと真空容器が二

重構造になっている場合にどうなるかを研究し,ユーリヒのWinter,Waelbroeck氏等が用意している高周波

                  ヱめ放電を補助としたグロー放電による放電洗浄,さらには所謂テーラー放電洗浄との優劣を比較考察するもので

あった。第一陣として理研から岡崎氏が1980年の11月から1981年の1月にユーリヒに滞在してインターフェー

スの盤の設置やテキサトール装置との取り合いの調整を行ったが,一方ではテキサトール試運転前というこ

とで現場は殺気だっており,随分と苦労が多かったようにはたからも思われた。しかしこの設営は成功しその

後現在に至るまでのECR放電洗浄研究の基礎はこの時固められた。第一回のECR放電洗浄実験は坂本,

石井,矢野の三氏によって1981年8月から11月の期問に行われた。日本に比べると電子レンジの普及率の低

いドイツでは何となくテキストールチームから他国者あつかいをされたり不当にリークの原因とされたりして

苦労を重ねたけれど,このことが結局国際チームとしてとけとむことに役立って,結果はテキサトール共同建

設と共同研究の中問期のハイライ1トとなった。しかしその聞にあって第二回の共同研究1982年3月から6月は

テキサトールのベローズリークのためにユーリヒに行きながら放電洗浄の結果がどうトカマク放電に影響する

かというまでの仕事にならず,その代りに1983年3月にユーリヒ側が滞在費を負担して前年度のマシーンタイム

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解説 テキサトール(.TEXTOR)国際共同研究について 宮原

を取り返すというような事もあった。グロー放電洗浄との優劣は決定するには至らなかづたがECR放電

でばライナーと真空容器の問にもプラズマが存在して洗浄効果があること,清浄度のすすんだ表面の仕上げに

対してはECR放電洗浄の方がより効果的であるととなどがわかって来た。

                                      12)『その他この時期の共同建設としては門田氏によるビ」ムプローブによる診断技術の蘭発研究が1982年春ヒ行

われたり,北大の山科氏が1979年の4月に行われた表面診断についての作業会にF出席したりこれは共同建設期

が名目と.しでは終ってからではあるが今春原研の松田,堀池両氏がNBIの建設に対する本質的な寄与をした。

 我が国以外のIEA加盟国の寄与は米国はトロイダル電源整流器系の設計と建設,1ガス導入系の製造,1放電洗

浄効果の表面分析器による確認などを行い,スイスは5000Cの高温にた1える真空中にサンプルを出し入れす

るマニピュレーターの開発と製作,カナダはNBIテストベンチ建設の助力などを行ったが,それらの評価は

1982年末までの寄与の積算という形でなされ,その後の共同研究のマシーンタイム配分の基礎とをった。

第1表および第2図はその時の資料である。このようなときになるとズィスやカナダは随分と厚かましい積

算を押しつけてきて,私はすこぶる驚いたものであった。

第1表 日本からの共同建設への寄与

Japah=:

1978  1979・ 1980  1981         (Janりune)

12.5Accompanying dcsign study of a force commUtated4-quadrant-rectifler(IPPNag・ya)1)

Diagnostic developments(IPP Nagoya)

3Evaluation of character・ittic times of the vessel andplasmastabilityc・nsiderati。ns(」AERl)2)

4Asscssment study of the grounding system for diagnostic

and power supply(Mitsubishi)

2 Fcedbackc・ntr・land。therplasmac・ntrdsyst曾m(IPP Nagoya)

3 Rectもf看er and thyrlstor system(Toshiba Corporation)

2 6 Design。fvacuumtestbencり(IPPNag・ya)

6Development of ECR discharge cleaning device(IPCR)3)

τotal   I2,5    2 15    12

1)名古屋大学プラズマ研虎所  2)』日本康子力研究所 3)理化学研究所

EC60%

lEAPartners

40%

Swiss27.5%

USA27.5%

Canada17.5%

Japan27.5%

第2図 共同研究マシーンタイム配分

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              核融合研究第52巻第5昌 1984年11月

3.テキサトールの概要

第二表にテキサトール装置のパラメrタ,第三表にプラズマのパラメータを示す。装置としては円形断面の

プラズマでごく平凡なトカマクであるが,その特徴とするのは次の点にある。第一にテキサトールの研究目標

は高温プラズマを閉じこめるプラズマ容器一燃焼容器の研究が主眼であり,プラズマと壁の相互作用の研究を

行い,さらにそれに関する対処法を明らかにする。

その問題点は熱出力の取出し方,壁の浸食,不純

物問題,燃料の循環,灰の搬出等が考えられよう。

核融合反応の結果発生する14MeVの中性子は

燃料室を放射化するがテキサトールでけトリチウ

ムを使用しないのでその問題は除外される。

したがって灰物質であるヘリウムの研究を行うに

『も適当なシミュレーションを考える必要がある。

さらに具体的な研究目標としては次のことを考え

ている。

 (1)プラズマのコアー,境界層,壁の各々を特

徴づけるパラメーターの同時の観測と診断。『

 (2)適当なプラズマ加熱によ6て核融合炉が受

けると同等の壁の熱負荷を生み出すごと。

 (3)境界層と壁との間の相互作用に寄与するプ

ロセスの系統的な研究。

 (4)壁材料,コーテング材,複合桝なξの開発

研究およびそれらの冷却技術の研究。

 (5)燃焼室系の各部品の試験および開発とプラ

ズマ・壁相互作用に関する技術の開発。

 (6)燃焼室のモデルを設立すること。

  第2表トロイダル磁場

プラズヤ電流

 ムφ

大半径 :

小半径

温  度

材  料

排気速度

テキサトール装置のパラメータ

 2.oT →2.6丁 (1984/85)

 500kA→ 620kA(1984/85) 4.75Vsec

真空容舞  180cmライ、ナー 175cm

真,空 容器    65cm

ライナー  55cm

アンテナ用保護リミター   48.8cm

リ ミ ター  可変(移動距難5cm)

真空容器 ≦3500Cライナー ≦600。C

真空容器 SUS-304相当材ライナー Inc◎nel,TM6001mm厚リ ミ タ ー  ・lnconel TM600

      →Graphite(1984/85)

      4     10 β/sec      ・(600。Cにおいて)

第3表

 プラズマ大半径(Ro)

 プラズマ半径(a)

 プラズマ電流(ゆ) 1ターン電圧(VL.) 卜ロイダル磁場(BT)

 安全係数q(a〉 平均電子密度りe(r) 中心部電子温度Te(Ro)・中心部イオン温度Ti(R。)

 ポロイダルベータ値 (βp)

ジュール加熱テキサトールプラズマのパラメータ

1.75m

.0.40-O、48m

O.35-0.5MA『1.5『一2.O V

2T≧2.3    19 -3≦;4.2×10  m

≦ 1.3keV

≦10.8keV

O.2-0.4

 このような研究計画を実験装置で実施するとなると,ハードウェアヘの要求はきびしいものとなり,その概

要ははじめにのべたが,ここでもう少し詳しく述べておく。

 トロイダル磁場とプラズマの位置制御電源は整流器を介して直接送電線から受電しているが,現在はライン・

ヴェストファーレン発電所と直接契約を結び80MW必要となるが,同発電所は研究所近傍の褐炭鉱区にあり

9GWの出力を有するので,勿論他の需要家との協調は必要とするが受電に対する不安はない。コイルの温度

上昇も2.6T10秒までは耐えるように設計されている。

 テキサトールのプラズマ容器はエネルギーを直接うけるライナーと真空壁とに役割分担をしている。真空壁

は350。C,ライナーは600。Cまで昇温可能として,炉心プラズマの存在条件に近い壁の状態の実現を目指

している。このためのライナーは1mm厚のインコネル625材を用いている。

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解説 テキサトール(TEXTOR〉国際共同研究について 宮 原

 トカマク装置の分解修理に時問が必要なことは主としてポロイダルコイルの分解がむずかしいことによって

いる。この点をテキサトールはかってデータピンチのコレクダー板にたくさんのケーブルを接続して合成インダ

タタンスを低くする手法を応用し,ただ差し込むだけで充分よい電気的接触をうる構造をそれこそ数度にも及

         ユのぶ失敗を克服して完成した。現在テキサトールが年に2回程度4週間の分解修理期間をスケジュールに入れて

イオジサイクロトロン加熱用のコイルの装着などを気軽にやっているのはこのような構造を採用したからに外

ならない。

 長パルスの実現のためには鉄心の設計にも注意がはらわれた。当初プラズマヘの接近性から4脚で設計され

ていたものを建設中途で6脚に仕様変更した。ちなみに鉄心の板材は日本製である。

 テキサトールの最大の特徴ともいうべき点はプラズマ端の観測や制御に便利に設計したことであろう。コイ

ルと真空容器の空問が大きいこと,バンドルダイバータの取付けをも考慮した100ヶをこえるポート,特に

プラズマからのバックグランドを避けるためにプラズマ端部のみを見る切線ポートの存在などはテキサトール

・の大きな特徴といえる。

 テキサトールのオーム加熱は500kWであるが,リミターや壁に必要な熱負荷を与えるためにも,1ター

ンあたりの電圧を下げて長パルス運転を可能とするためにも追加熱が必要となる。もちろん追加熱と同時に不

純物制御を考えなくではならぬことはいうまでもない。現在設備された追加熱はイオンサイクロトロン加熱の

3MWであり,さらに2.6MWの中性粒子ビーム入射加熱が準備中である。

 テキサトールの建設費はオーム加熱トカマクで5000万マルタ,約45億円である。テキサトールチームとし

てはユーリヒのプラズマ研の全員が当ったがその内訳は工学者(DipL Ingenleur)5名,物理実験研究者15名,

プラズマ診断研究者15名,理論10名,Montage Meisterと呼ばれる据付,組立ての親方が1名にTechnician

が70名程度であり,他にAachen,Disseldurf,Bo曲um,Essenなど近郊の大学からの大学院学生が15名程度

いる。その他にユーリヒ原子力機構の他の研究所からの助勢がある。IGV(lnstituH癒Grenz-Oberflachen u捻d

Vakuum Technik)からHo∫er,・Tchersich氏等9名が表面解析装置について,iCH(Institut fゴf Chemie)は

Vietzke氏等5名が材料特にGraphiteの特性について,H≧W(Institut f漉Reaktor-Werkstoff)からは

Koityhk,Linke氏等8名が・リミター熱負荷の研究,さらにZLE(Zentral-Labo f廿r Elektronik)からは

Seeger,Brocke氏がフィードバックコントロール系や中央制御盤の建設に本質的な役割を果した。その他に

ECはじめ世界各国からの共同研究者が常時20名程度滞在している。

日本の装置建設とちがうのは据付け・組立・調整まで含めて研究所側の全責任であり,いわば徹底的な部品買

いを行っている点である。さとえばトロイダルコイルケースはKrUPPがっくり, コイル捲線はBBC_

血annheimで行い,一体にしたのはユーリヒの研究所の工場である。このような建設方法は欧米の研究所では

一般的であるが,日本の核融合装置建設と著しくちがうところであろう。

4.テキサトールの現在と今後

 オーム加熱テキサトールの建設の終了が宣言されたのは1983年3月で,その後の1年聞は主として標準的な

診断装置(Conventio亘al diagnostics)とプラズマ端診断装置(Plasma edge diagnostics)の整備に費され,

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核融合研究第『52巻第5号 1984年11月

ようやく2.5秒の放電時間をもつ再現性のよいプラズマの生成に成功して1984年9月のLondonにおける

           14)IAEA会議に発表された。

 一方これと期を一にして元来の目的であるPWI研究を炉壁の負荷に近い状態のパラメータで行うためのテ

キサトールの増力と改造が企画ざれはじめた。これらのあるものはテキサトールチームの研究として,またあ

るものは国際共同研究として研究されているが,以下に我が国がかかわっている主なものをのべる。

 現在テキサトールを中心にくまれている国際共同研究は大きくわけて三つあり,いづれもユーリヒのチーム

との密接な連絡のもとになされている。

 第一はECR放電洗浄および表面状態の変質(乃至はhmiter’Condition董ng)であり,理研の坂本氏によ

って提案され既に数回にわたって共同研究を行って来たものと,北大やプラズマ研のグルー」プによって提案さ

れていたリミター表面の変質やDeposition Analys玉sによる不純物の動向の検討をプ本化して行うものであ

る。この題目が重要になって来たのは一つには最近の大型トカマクの放電に鉄やニッケルの混入が多く,この

起源が放電洗浄時におけるグロー放電によるスパヅタリングによるものではないかという疑いをもたれてい

ることによる。ECR放電洗浄がライナー・容器間の洗浄が出来ることもさることながら低い電子温度で放電

を維持出来ることはスパッタリングを少なく・するために極めて本質的である。チーム編成は理研・プラズマ研・

北大のグループよりなり,文部省と学術振興会の国際共同研究旅費によって1985年1~3月と1985年10~12月

の二回にわたって共同研究の実施が予定されている。

 第二はプラズマ端診断およびリミター材や壁材開発のための研究である。1テキサトールはプラズマ端の観測

ポートが設置されてあり,・それが一つの大きな特徴であることは既に述べた。この特色を生かすことは国際共

同研究のように各国の予算で実行する場合になかなかタイミングが合いにくく,・ともすると世界で一番初め

にやうたという方式の研究を行いにくい場合特に重要である。現在はビームプローブ法の開発とぞのためにも

必要となる・レ」ザー技術の研究のために大分大の浜本氏とプラズマ研の門田氏がテキサトールに参加している。

             ユ ラ材料研究は昨年度原研の山田氏がPERI一コ}ドを用いてのライナーからの水素の放出の解析およびレー

ザー蛍光分光法によるTiのスパッタリングの研究に参画されたが,今年度はさらに原研の西堂氏がスパッタ

リングによる表面の変質の研究および阪大の田辺氏がGr&p鼓iteと酸素の相互作用の研究を行っている。さらT

に日立中研の後藤氏はIRW(Intitut f“r Reaktor Werkstof{)に籍をおいてリミター材のテキサトールに・お

      ユのける損傷を研究し,どのような改良を今後ほどこせばよいかということを中心に研究を続けて来たが,この

研究所では核分裂炉の材料試験を手がけて来ただけに核融合のリミター材料の問題設定が充分でないという不

満を表明している。核融合研究者としては努力を必要とする点である。

 第三の共同研究課題はALIT-1(Advanced Limiter Test-H)であるが・これはいうならばテキサト

ールのUpgradeで本質的には各国からの出資を伴う共同建設である。もちろん建設といっても新しい概念を

発展させる必要があるので共同研究によって設計を固めていく必要がある。ALT-Hはダイバータ方式と

対比されるポンプリミターで,しかもトロイダル全周にわたって設置するこ,とにより,①粒子制御②熱負荷

の制御③不純物制御さらにはシュミレーションではあるが④ヘリウムの制御を行って現有のJET,TFTR

などのリミター装置にデータベースを供給することと,さらに大事なことではあるがALT-Hによって本格

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  解 説        テキサトール(TEXTOR)国際共同研究について        宮 原

                                      の的なリミター材料試験が行えることである。ポンプリミターの考え方はユーリヒのBieger氏や日本の岡本  18)                                                        19)耕輔氏によって具体的に論じられ始めたが,テキサトールの共同研究への提案はUCLAのConn と

SNLAのGausterによってまとめられ,現在は国際的な提案の形で日本がリミター板および基板,アメリカ

がポンプ系および支持機構,ユーリ,ヒが新しいライナーの設置とICRHアンテナなどというように分担を定

めて仕事をすすめている。1984,1985年が設計検討段階で19聞年に製作,組込み1937年から実蛾開始というの

が現在考えているスケジュールである。ALT-1のように大きい国際共同研究となると各国間の協調はます

ますむづかしくなるが,それだけに将来のより大きな国陳協力の準備のためにも是非成功させたいと考えて

いる。

5.結語 テ・キサトールの国際共同研究の話が始まってからやがて10年になる。当初は先見性はあるものの中心課題

ではなカ・っだプラズマ・壁相互作用の研究も今や押しも押されぬ中心課題となり,この問題の理解と解決がな

ければ次期の長パルス運転ぺの見込みがつかないという状況となった。「また当初は二流のトカマクと目されて

いたテキサトールもプラズマ端診断や分解組立ての容易さなど他のトカマクの追従、をゆるさない特徴からポン

プリミターの研究に世界の眼が集まるようになった。国内的にいってもテキサトール技術委員会における研

究者からの提秦も当初は淋しいものであったが現在は極めて活発なものになって来ている。これらもプラズマ・

壁相互作用や,リミター材料の研究の重要さへの認識によるものであろう。

 テキサトール国際共同研究の窓口は国内技術委員会を通じて研究者に開かれている。これはという提案やさ

らに詳しいことを知りたい方は私に御連絡下さることを願うものである。この拙文がそのための一助になれば

筆者の望外の幸である。

参 考 文 献

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8)

』9)『

10)

1玉)

.12)

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16)

『17)『

18)

19)

400