コーポレート・ガ戸バナンス論の生成と展開 - 明治 …...Jensen and Meckling (1...

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99 コーポレート・ガ戸バナンス論の生成と展開 The Generation and Development of Corporate Governance Theories 1.はじめに 閥次 1.はじめに 1I.契約関係としてのコーポレート・ガパナンス論 m. コーポレート・ガノf ナンス論の展開 鈴村美代子 Miyoko Suzumura IV. コーポレート・ガパナンスの既存研究に対する批判的検討 v.むすびにかえて 本稿の目的は,コーポレート・ガパナンスの理論的系譜を概観することにより,既存研究を批 判的に考察し,今後のガパナンス研究の方向性を示すことである。 コーポレート・ガパナンス論は,機関投資家の株式保有が個人投資家のそれを超える状況にま で株式の所有構法が変容することとなったこと(古村, 2010:69) や,アメリカのエンロン社や ワールドコム社による不正会計などによる相次ぐ企業不祥事を背景とし, 1990 年代から C Bl air 1995; 平田, 2001; 吉村, 2007) ひとつの研究領域とし℃注目されてきた。そのため,コーポレー ト・ガバナンスは比較的新しい研究領域といえる。にもかかわらず,コーポレート・ガバナンス 論は今日まで絶えず活発な議論が展開されているために,多様なアプローチに基づく膨大な理論 的蓄積がなされている。そのため,今後さらなるガパナンスの研究を展開させていくためには, これら各々の理論を整理す忍ことを通じて,ガパナンス・メカニズムの根拠を形成する既存研究 を把握するとどもに,その問題点を明らかにすることが必要である。 このような問題に取り組むにあたり本稿では,まず,コーポレート・ガパナンス論の源流と, 1970 年代以降,株主を中心的な利害関係者とする株主電視経営,あるいは株主主権の立場が確 立したことによる,今日のコーポレート・ガ、パナンス論の支配的なパラダイムとして位置づけら れるエージェンシ一理論について概観する。次に,エージェンシ一理論に対する理論として,ス チュワードシップ理論 Cstewardshiptheory) ,及び利害関係者論 Cstakeholdertheory)につ いて説明する。そして最後に,これらの理論を前提としたコーポレート・ガパナンス論について

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99

コーポレート・ガ戸バナンス論の生成と展開

The Generation and Development of Corporate Governance Theories

1.はじめに

閥次

1.はじめに

1I.契約関係としてのコーポレート・ガパナンス論

m.コーポレート・ガノfナンス論の展開

鈴村美代子

Miyoko Suzumura

IV. コーポレート・ガパナンスの既存研究に対する批判的検討

v.むすびにかえて

本稿の目的は,コーポレート・ガパナンスの理論的系譜を概観することにより,既存研究を批

判的に考察し,今後のガパナンス研究の方向性を示すことである。

コーポレート・ガパナンス論は,機関投資家の株式保有が個人投資家のそれを超える状況にま

で株式の所有構法が変容することとなったこと(古村, 2010: 69)や,アメリカのエンロン社や

ワールドコム社による不正会計などによる相次ぐ企業不祥事を背景とし, 1990年代から CBlair,

1995;平田, 2001;吉村, 2007)ひとつの研究領域とし℃注目されてきた。そのため,コーポレー

ト・ガバナンスは比較的新しい研究領域といえる。にもかかわらず,コーポレート・ガバナンス

論は今日まで絶えず活発な議論が展開されているために,多様なアプローチに基づく膨大な理論

的蓄積がなされている。そのため,今後さらなるガパナンスの研究を展開させていくためには,

これら各々の理論を整理す忍ことを通じて,ガパナンス・メカニズムの根拠を形成する既存研究

を把握するとどもに,その問題点を明らかにすることが必要である。

このような問題に取り組むにあたり本稿では,まず,コーポレート・ガパナンス論の源流と,

1970年代以降,株主を中心的な利害関係者とする株主電視経営,あるいは株主主権の立場が確

立したことによる,今日のコーポレート・ガ、パナンス論の支配的なパラダイムとして位置づけら

れるエージェンシ一理論について概観する。次に,エージェンシ一理論に対する理論として,ス

チュワードシップ理論 Cstewardshiptheory),及び利害関係者論 Cstakeholdertheory)につ

いて説明する。そして最後に,これらの理論を前提としたコーポレート・ガパナンス論について

100 「明大商学論議」第 97巻第4号 (652 )

批判的に考察することを通じて,今後のガパナンス研究の方向性を示す。

II.契約関係としてのコーポレート・ガパナンス論

コーポレート・ガパナンスが lつの研究領域として注目されたのは,前述のように 1990年代

からであるが,その源泉を辿ると法律学者の Ber1eと経済学者の Meansが 1932年に公刊した

「近代株式会社と私有財産 ("TheModern Corpora tion and Property") Jに遡る。

アメリカにおいて 1860年代までに株式会社制度が普及したのは,繊維産業と鉄道部門だけで

あった。これらの産業では企業規模の拡大とともに企業経営は複雑化し,出資者である株主だけ

では企業を効率的に経営することが困難になったことから,専門経営者が生まれた。とはいえ,

当時はまだ限られた出資者が人事権を掌握しており,経営者は出資者である株主の代理人として

地位を与えられているにすぎなかった。しかし,南北戦争(1861-1865年)以後の第 2次産業

革命とともに急速に産業化・近代化が進み,また企業規模が巨大化するに伴い,大量の資本が必

要とされることとなる。このような背景をもとに, Ber1e and Means (1932)は, 1929年当時

のアメリカの巨大な非銀行系株式会社(付加価値額上位)200社を分析対象とした研究を行って

いる。この分析のなかで彼らは,少数の個人大株主から多くの個々人に株式が所有される小株主

へと株式所有構造が変化したことによって,株式所有の分散,つまり企業経営に対する株主の発

言権の分散化が生じたことを明らかにした。これは,企業の所有者である個々の株主が経営を行

う取締役を任免しうる株式を保有することが不可能となり,株主は経営者の意思決定に対して意

見を反映することが不可能な状態を表わしている。つまり,株式をほとんど所有しない専門経営

者が,実質的な経営の支配権を獲得することになったことを実証しているω。以降,これまでの

伝統的企業において一般的な,大量の株式を保有する企業の所有者による所有者支配 (owner-

ship control)から,専門的知識を保持する経営者が取締役メンバーの任免権を掌握する経営者

支配 (managementcontrol)が大企業では一般化しており, こうした事態を, Berle and

Meansは所有と経営の分離 (theseparation of equity ownership from management),さら

には所有と支配の分離 (theseparation of ownership and controDと呼んだ。これによって,

株主の目的と経営者の目的とが相反した際に,株主がこれまで企業経営に及ぼしてきた監視やコ

ントロールが機能不全となり,経営者が株主の利益から離れて自己の私的な利益を追求するよう

になるのではないかという懸念から,企業コントロールのあり方ぞ巡る問題として,コーポレー

ト・ガパナンスに関する問題提起がなされてきた。

その後,コーポレート・ガパナンス論は,企業を法的擬制とみなし,個人聞の契約関係のよう

に企業をさまざまな利害関係者から構成される一連の契約の束として認識する「契約の東」

( 1) Berle and Means (1932)は,単独最大持株比率が 20%以下の会社を経営者支配にあると定義している。この調査で対象とした非銀行系株式会社のうち, 44%が経営者支配となっていることを示した。

(653 ) コーポレート・ガパナンス論の生成と展開 101

(nexus of contract) としての企業観に基づく企業の法学・経済学的視点から発展をみせた

(Jensen and Mecking, 1976; Fama and Jensen, 1983; Eisenhardt, 1989; Hart, 1995)。この背

景として, 1970年代以降,個人投資家から,年金基金やミューチュアル・ファンドを含む機関

投資家へと株式の所有構造が変化し,それに伴い機関投資家の株式市場での影響力が拡大したこ

とから,株主を中心的な利害関係者とする株主重視経営,あるいは株主主権の立場が確立したこ

とが挙げられる。この契約の束の企業関係に基づき,経営者の行動をコントロールするための利

害関係者と経営者の最適な契約関係について探究するのが,エージェンシ一理論である。このア

プローチは,最も多くの研究者が研究関心をよせるプリンシパル=エージェンシー問題に基づい

ている (Shleiferand Vishny, 1997)。

エージェンシー問題において扱われるエージェンシ一関係 (agencyrelationship)は人

あるいは複数の人々(依頼人〉が,自身の目的のために他の者(代理人〉に意思決定の権限を委

譲し,依頼人の利益に関わる業務を遂行するために,他者である代理人が従事するための契約関

係を意味する(Jensenand Meckling, 1976: 308)。エージェンシ一理論は,このエージェンシー

関係によって生じうる 2つの問題に集約される。 lつ目は, (a)依頼人と代理人の聞の欲求や目標

にコンフリクト ciム利害コンフリクト)が生じる場合と, (b)代理人の実際の行動を依頼人が確

かめることが不可能であるか,費用がかかる場合に生じるエージェンシー問題である。この問題

は,代理人が適切にふるまうかを依頼人が確認できないことを意味する。 2つ目は,依頼人と代

理人がリスクに対して異なる態度を示す場合に生じる, リスク共有の問題である。この問題は,

依頼人と代理人は異なるリスクを優先させるために,異なる行為を選ぶ可能性を示唆する

CEisenhardt, 1989: 58)。つまり,エージェンシ一理論は,人間行動について,①全ての人聞は

効用最大化行動を取るが,その利害は必ずしも閉じではなく(利害の不一致),②全ての人聞は

情報収集,情報処理,情報伝達能力に限界があり(限定合理性),③相Eに同じ情報を持つとは

隈らない(情報の非対称性), という仮定に基づいている(赤石, 2011: 49-50)。効率的な企業

経営を行うためには,代理人の利己的な行動を限定し,これらの問題を解決することが必要であ

り,そのためにエージェンシ一関係のなかで依頼人に費やされるコストを削減するためのガパナ

ンス・メカニズムの構築が, コーポレート・ガパナンスの問題として扱われる。 Jensenand

Meckling (1976)によると,このエージェンシー関係にかかるコストは,依頼人による監視費

用,代理人による保証費用,そして残余損失に区分される。

依頼人による監視費用 (themonitoring expenditures by the principal)は,依頼人が代理

人の行動を監視することによって発生するコストである。依頼人と代理人は,自己効用の最大化

を優先しようとするため,代理人の行為は依頼人の利害と必ずしも一致しない。そのため,依頼

人は,代理人のための適切なインセンティブの確保や,代理人の常軌を逸した活動 (aberrant

activities)を限定することを目的とした監視コストを負うことによって,代理人が依頼人の利

害から逸脱することを抑制することができる(Jensenand Meckling, 1976: 308)。具体的には,

依頼人である株主が代理人である経営者をモニタリングするために,監査役会や取締役会を設置

102 『明大商学論議」第97巻第4号 (654 )

したりするのに必要なコストを意味する(菊津, 2004: 163)。株主により選任される取締役は,

誘因(incentive)によって監視の程度を変えることを認めており,誘因は経営者を効果的に監

視・誘導するための重要な要因である CJensenand Meckling, 1976; Fama and Jensen, 1983,

Eisenhardt, 1989)。そのため,取締役の独立性 (boardindependence),すなわち現行の CEO

や組織への取締役の依存性の程度が,取締役会による監視に重要な要因として考察される

(Lynall, Golden and Hillman, 2003: 417)。

代理人による保証費用 (thebonding expenditures by the agent)は,依頼人の利益を害す

るような行為を生じさせないことへの保証や,もし代理人がそのような行為を生じさせた場合の

依頼人への補償を確実にするために,資源を消費し,代理人へ支払われるコストである CJensen

and Meckling, 1976: 308)。一般的に,依頼人は可能な限り非効率な監視コストを代理人に負わ

せようとするため,代理人はこのコストを避けるために,自ら非効率な行動を避け,自らの潔白

さを依頼人に示そうとする。例えば,自発的に公認会計士を雇って帳簿を監視させることもでき

るし,自発的に企業をめぐる情報公開を行うことも可能である。この時に発生するコストが,保

証費用である(菊津, 2004: 163)。しかしながら,依頼人視点の最適な意思決定を代理人に確実

にさせるための依頼人や代理人にかかる費用をゼロに抑えることは,概して不可能である。その

ため,依頼人と代理人のエージェンシ一関係のほとんどは,積極的な監視や保証費用を負うこと

になる CJensenand Meckling, 1976: 308)。

そして,残余損失 (theresidualloss)は, 自己利害を追究する代理人の意思決定と,富を最

大化しようとする依頼人の意思決定との聞には根本的な相違があり,その違いによって生じる依

頼人の富の減少を意味する CJensenand Meckling, 1976: 308)。

このようなエージェンシ一理論に基づくコーポレート・ガ‘パナンスにおいては,外発的動機付

けが採用され,取締役(特に社外取締役)や株主による監視,または自社株保有や役員報酬など

の報酬システムによるインセンティプ付与を用いた,経営者のコントロールを重視する。例えば,

Daily and Dalton (1994)は, 1972年から 1982年の 10年間に倒産した米国企業 57社と存続企

業57社を対象とし, CEOの二重性 (CEOduality)ベ及び関係取締役ω比率 (percentageof

affiliated directors)を説明変数,倒産の有無を被説明変数とし,ロジット分析を行っている。

その結果, CEOの二重性を採用する企業のうち,存続する企業は 37.5%,倒産した企業は 53.8

%であり,また,存続企業の取締役のうち 44.9%が関係取締役であるのに対して,倒産企業は

59.5%が関係取締役であることが示された (Dailyand Dalton, 1994: 1610-1994)。この結果から,

CEOに対するコントロールが弱い企業ほど,倒産する可能性が高い傾向にあると分析している。

このように,エージェンシ一理論は,経営者の人間行動を自らの利益の最大化を図るものとし

て捉える。それ故に, I株主と経営者が相反する利害を持ち,企業の組織構造はこの内在するコ

(2) CEOと取締役会議長の地位が,同ーの人間によって兼任されることを意味する。(3) かつて従業員であったものや,関係企業の取締役である者を意味する。

(655 ) コーポレート・ガバナンス論の生成と展開 103

ンフリクトに対処するための取り組みを具体化するというエージェンシ一理論の中心的概念は,

現代企業の発展を理解するために重要な視点となっているJ(Davis and Thompson, 1994: 146)。

このような論点に対する立場を主張する理論的枠組み (Learmount,2002)として,次節ではス

チュワードシップ理論,及び利害関係者論について概説する。

m.コーポレート・ガパナンス論の展開

1.スチュワードシップ理論

エージェンシ一理論の経済合理的な人間行動に対し,スチュワードシップ理論は内発的動機付

けをする人間行動に注目し,心理的・社会的側面を重視するアプローチへ展開した (Dona1dson

and Davis, 1991; Davis, Schoorman and Dona1dson, 1997)。この理論的枠組みに基づくと,

経営者は依頼人の利益を最大化するために,行為することによって動機づけられる「執事」であ

ると捉えられる。

スチュワードシップ理論は,組織に賛同し集産主義的 (collectivistic)な人間行動が高い効

用を持つという視点に基づいているため,一人の執事の行動は,自身が所属する組織の利益から

逸脱することはないということを意味している。執事は依頼人の利益が合わない時でさえ,協働

を重視する。というのは,執事は協働行動によって自身のより高い効用を得ることができると知

覚しているからであり,それゆえに彼らの行動は合理的と考えられる。そして,この行動は,外

部の所有者(iι 株主〉のような依頼人に利益をもたらす。つまり,スチュワードシップ理論は,

組織の成功と依頼人の満足の関係は堅固なものであると仮定しており,執事である経営者は,自

身の効用関数が最大化されるために,企業のパフォーマンスを通じて株主の富の保護と最大化を

目指すとされる (Davis,Schoorman and Dona1dson, 1997: 24)。そのため,スチュワードシッ

プ理論は,株主も経営者も同一社会に存在し,双方の目的を達成することを前提としている,と

捉えられる。

このスチュワードシップ理論は, Argyris (1973)ω 等の行動科学の理論に基づき,人間行動

をより複雑で人本主義的(伊丹, 1987)なものとして捉えている。 Argyrisは,人間行動を単純

に「経済人」と捉える人間観の非現実性を主張し,これに代えて人聞は生まれながらにして現在

の段階を越えてより高い次元へと到達しようとする成長や達成の欲求を持つ「自己実現人 (self凶

( 4 ) Argyris (1973)の理論は, Maslow (1954),及びそれを経営学の領域に援用した McGregor(1960) の理論に基づいている。 Maslow(1954)は, ~人間性の心理学 (Motivation and Personality) jにて

詳述した欲求段階説のなかで,人聞の欲求は低次の欲求が満たされるとより高次の欲求を目指すとし,

その欲求段階の頂点に白日実現欲求安位置付けている。そして,経営管理に関する動機付け理論として

McGregor (1960)は, r企業の人間的側面 (TheHuman Side of Enterprise) j において Maslow(1954)の欲求段階説を援用し, I人聞は本来怠け者であり,強要・強制・命令されなければ仕事をしな

い」とする X理論と, I条件次第で責任を受け入れ,自ら進んで責任を取ろうとする」とする Y理論,

という 2つの対照的な側面があることを示し,このどちらの立場に立っかによって動機づけの管理が異

なることを主張している。

104 「明大商学論叢』第 97巻第4号 (656 )

actualizing man) Jとしての新しい人間観を提示している CDavis,Schoorman and Donaldson,

1997: 27)。この Argyrisによって示された人間行動モデルに基づくスチュワードシップ理論で

は,執事である経営者のパフォーマンスは,彼らが置かれる構造的状況が効果的な行為を容易に

するかどうかによって左右されると主張する。つまり,ガパナンス構造やメカニズムが経営者に

適切な権限を与えるならば,経営者の動機づけがスチュワードシップ理論の強調する人間行動モ

デルにフィットするのである。したがって,経営者をコントロールしようとすることは逆効果を

及ぼす原因となりうるため,経営者の自主性を計画的に拡張するために信頼を与えることによっ

て,経営者の動機づけを刺激することが求められる CDavis,Schoorman and Donaldson, 1997:

25)。

このようなスチュワードシップ理論に基づいた研究は,前節において詳述したエージェンシ一

理論との比較(表 l参照)において,どちらがより理論的に現実を説明しうるかという視点を前

提とし展開している。しかし,市場で実現される企業価値を判断基準として,経済的な効用を最

大化する経営者を前提とし CLearmount,2002), CEOの二重性や,社外取締役比率などの属性

を用いた分析が行われている点においては類似する。例えば, Donaldson and Davis (1991)

は,米国企業 321社を対象として, CEOの二重性を説明変数,企業業績 CROE)を被説明変数

とし, CEOと取締役会議長が兼任される企業とそうでない企業の自己資本利益率 Creturnon

equity: ROE)の平均値を比較した結果, CEOの二重性を持つ企業が高い企業業績を得ている

ことを示している。この結果から, CEOの二重性は株主利益に影響を及ぼさず,むしろ CEOの

二重性があり,株式が分散されている企業ほど,戦略策定や実行に対して明確なリーダーシップ

を発揮することが可能となるために企業パフォーマンスが向上するとされる。また, Westphal

表 1 コーポレート・ガパナンスにおける対照的なアプローデ

コントローjレ コラボレーション

エージェンシー理論 理論的枠組み スチュワードシップ理論(経済学金融論) (社会学心理学)

仮説

個人主義機会主義 人間行動 集産主義協同

外発的 動機づけ 内発的

目標のコンフリクト 経営者と所有者の関係 業目標の一致リスク格差) (企 との同一化)不信感 処方筆 信頼

規律と監視 取締役会の主な役割 奉仕と助言

社外取締役 取締役会構成 社内,社会的繋がりCEOの二重性無 CEOの二重性有l

目標コンフリクトの減少 経営者の株式所有 企業期との同一化とリスク格差増加の回避 長的関係の促進

利己的行動の抑制 市業場コにおける 心理的コミットメントの抑制企 ントロール

出所:Sundaramurthy and Lewis (2003): 398

(657 ) コーポレート・ガパナンス論の生成と展開 105

(1999) もまた,企業業績 (ROE)を被説明変数とした回帰分析の結果, CEOと社外取締役が

親密であるほど,取締役会の助言機能は発揮されることから,企業業績は向上することを示して

L 、る。

2.利害関係者論

前述のエージェンシ一時論及びスチュワードシップ理論は,株主の利害の擁護を中心に研究が

進んだが,利害関係者の範聞を拡大する議論が展開することとなる。 Freeman(1984)を主と

する利害関係者論は,株主(あるいは債権者)と経営者聞の 2者聞の契約関係に着目したエージェ

ンシ一理論に対し,所有者である株主 (stockholder)のみを重視するのではなく.より広義的

な利害関係者 (stakeholder)に配慮、した企業経営を提唱している。具体的には, stakeholder

という言葉は, stockholderとの対比であるとし,経営者や株主だけでなく,企業組織の存続を

支持するその他の利害関係者も取り込んだ主張を展開している。利害関係者論は,多様な利害関

係者の利害をいかに取り込むべきか,利害の調和のためにどのような関係性を構築すべきか,と

いった利害関係者の擁護を強調する。こうした主張には,企業の経営者や取締役が株主価値の創

造を企業の唯一の正統な目的であると述べたとしても,企業は広範囲にわたる利害関係者との相

互作用により成立しており,そのため,株主のみを重視することによって企業価値を創造するこ

とは出来ず,企業組織が存続していくためには,より広義的な利害関係者の支持を得ていくこと

が必要である (Donaldsonand Preston, 1995; Freeman et a1., 2007: 4-5,訳 5) という背景が

ある。このような背景から,企業と社会 Cbusinessand society)の関係性の理論を根拠とした

主張が展開している。

一方,利害関係者の範囲について, Phillips (2003)は,企業組織が道徳的義務 (moraIobli-

gation)を負う利害関係者は規範的正統性を持ち,道徳的義務はないものの企業組織に影響を

及ぼす者や集団は派生的正統a性を持つとし,道徳的義務の有無により利害関係者の範囲を区別す

る。また, J ensen (2002)は,多様な利害関係者の利害の擁護を肯定するが. Freemanの視点

に基づくと,企業組織は株宇品価値の最大化と,例えば雇用の維持のような問題をともに企業の目

的とせねばならず,とのような状況において,経営者は自己効用の最大化を優先すると論じる。

そのため,企業組織は,第一に株主価値向上を口指し,その結果として,より広義的な利害関係

者の支持を得ていくことが合理的であると主張する。

このように,本節ではコーポレート・ガパナンスの主要な理論的枠組みについて概観してきた。

エージェンシ一理論は,株主価値という経済学的な効用を最大化する経営者の人間行動を前提と

する。これに対して,スチュワードシップ理論はエージェンシ一理論と同様に株主価値の最大化

を目指す経営者を前提とするが,とりわけ内発的動機付けをする人間行動に注目している。そし

て,株主も経営者も同一社会に存在し,相互の目的与を達成することを前提としている。 また, こ

の利害関係者の範聞を拡大する議論として,利害関係者論が展開されている。

106 『明大商学論叢』第 9"7巻第4号 (658 )

町.コーポレート・ガパナンスの既存研究に対する批判的検討

前節までは,コーポレート・ガパナンス論の主要な理論的枠組みとされるエージェンシ一理論,

スチュワードシップ理論,そして利害関係者論について概観してきた。本節では,これらの理論

に対する批判的考察を行うことを通じて,コーポレート・ガパナンス論の新たな理論的発展の方

向性を示す。

1.企業パフォーマンスを被説明変散とする

効率性そ中心的概念としたエージェンシ一理論に依拠したアプローチは,公式組織構造に従っ

た企業の機能を前提とする「経済合理性」に基づいている(Daily,Dalton and Cannella, 2003)。

そのため,エージェンシ一理論に基づいた実証研究は,企業パフォーマンス(例えば ROEなど〉

との相関関係の有無が用いられるが,本稿で取り上げた他の理論的枠組みもまた然りである。確

かに企業組織は,営不11性を追求するために合理性を必要とする (Marchand Simon, 1958)。そ

れ故に,利害関係者と経営者が相反する利害を持ち,企業の組織構造はこの内在するコンフリク

トに対処するための取り組みを具体化するというエージェンシ一理論の中心的概念は,現代企業

の発展を理解するために重要な視点である (Davisand Thompson, 1994: 146)。しかしながら,

今日のグローパル化における変化の激しい不確実性の高い環境下では,企業業績は,為替の変動

による輸出入コストへの影響や,市場金利の上昇に伴う企業の資金調達コストや投資への影響な

ど,金融市場との連動によって大きく左右されるため,企業業績を単年度ベースで分析したもの

を累積していく手法から捉えるアプローチでは,長期的な視点からの企業価値が見えにく L、。ま

た,これらの理論は市場で実現される企業価値をガパナンスの判断基準とした上で,経済的効用

を最大化する経営者を前提とするため,経済学的枠組みから完全に脱していない CLearmount,

2002)。さらには,労働条件などの社会性の概念を,直接的に市場メカニズムで捉えることは困

難である。以上から,研究視野において,いかにしてより長期的な視点をコーポレート・ガパナ

ンス研究に取りいれていくことが課題となる。

2.個人特性を断定する

エージェンシ一理論では単純に経済人として捉えられた人間行動に対し,スチュワードシップ

理論はより複雑で内発的動機付けをする人間行動に注目し,心理的・社会的側面を重視するアプ

ローチへと展開した。とはし、ぇ,エージェンシー理論及びスチュワードシップ理論は共に,株主

など利害関係者と経営者におけるコ者聞の関係性を前提とするため,かなり狭義的な概念として

扱われている (e.g.,Rubach and Sebora, 1998; Shleifer and Vishny, 1997: 737) (6)。とりわけ,

(5 ) エージェンシ一理論についてのみの指摘にとどまる。

(659 ) コーポレート・ガノfナンス論の1=.成と展開 107

これらの理論は共通して,代理人である経営者の個人特性を対象とする。従って,コーポレート・

ガパナンスに関わる行為者(経営者)の人間行動は, I利己的である(エージェンシ一理論)Jあ

るいは「自己実現を求める(スチュワードシップ理論)Jというように,一定の前提に基づいて

議論が展開されている。換言すれば,コーポレート・ガバナンス論の人間仮説モデルは単一であ

ることを意味している。その結果として,この行為者の人間行動に対してどのように臨調・コン

トロールを行なうべきか,あるいは監視・コントロール機能は有効であるか,そ明らかにするた

めのガパナンス構造や所有の問題として扱われている。しかしながら,現実的には人間行動を既

に備わっているものとして断定することは困難である。経営者においても,利己的な行動をとる

経営者もいれば自己実現を志向する経営者も存在すると考えられるし,様々な利害関係者との組

織活動を通じた相互行為によって,その都度,主体者の行為は変化するとも捉えられる。

3.規範論的枠組みを用いる

これらの指摘以上に注目すべきコーポレート・ガパナンスの既存研究における葉嬰な問題は,

このような既存研究の視点は,ガ、パナンス論がそもそも所与となっているため,ガバ十ンスに関

わる行為者がどのように構造的な文脈に埋め込まれているのか,また,企業コントロールにおけ

る政治的な駆け引きや,利害関係者の諸活動といった経営者や利害関係者が現実の世界において

何を行っているかを説明するには不十分であるという点である。つまり,アクターの様々な行為

によって構築されるガパナンス実践を十分に説明しているとは言えない CDavisand

Thompson, 1994)。

この論点を支える視点として,エージェンシー塑論は,経営に関わる行為者がどのように構造

的,政治的,認知的,そして文化的な文脈に埋め込まれているかという視点には,十分に触れて

いない CGranovetter,1985: 488; Golden-Biddle and Reo, 1997: 594) ことが挙げられる。例え

ばDavisand Thompson (1994)は,エージェンシ一理論に基づいた効率志向のガパナンス・

アプローチは,企業コントロールの駆け引き,特に利害関係者の諸活動の出現を説明するために

は不十分であるととを指摘している。この点を指摘したうえで,彼らは,ガPパナンスの行為者の

利害,社会インフラ,そして与えられた政治的な機会構造のなかで-成功する集合的行為の可能性

を決定する人々の重要性を強調する,ソーシャル・ムープメント・パースペクティブ Csocial

movements perspective) Cti)を展開する。

このことは,近年の経営学における実践的転回 (practiceturn)の議論にも通ずる。そもそ

も,初期のガパナンス論は,企業のガパナンス実践の丹念な調査および記述から成立してきた

(e.g., Berle and Means, 1932)。にもかかわらず,その後,ガノ〈ナンス論は,理論構築によるガ

パナンス実践の規定へと変化を遂げる Ceふ Jensenand Meckling, 1976; Donaldson and

Davis, 1991; Freeman, 1984)。もちろん,この変化は想論の精織化および実社会への理論的貢

( 6 ) social movements persp巴ctivesについては, McAdam, McCarthy and Zald, 1996を参照。

108 『明大商学論議』第 97巻第4号 (660 )

献という社会科学における学問的前提に基づけば当然ではあるが, しかしながら,理論と実践の

関係性の再考を掲げる実践的転固から考えると,ガパナンス論と実践との関係については,十分

に語られているとは言えない。経営学の実践的転回では,すでに意味づけされた対象が存在し,

そこに基づいた行為が生じるという構造機能的な前提に基づいて行為が成立するのではなく,あ

る行為者による意味づけにより新たな行為が生じ,行為者聞の関係性とそれに伴い生じる行為は

常に変化する (e.g.,Johnson, Langley, Melin and Whittington, 2007)。また,必ずしもある

行為者の意図通りに利害を取り込むことが出来るとは限らないため,行為者間での利害の取り込

みが生じることになる。こうした視点は,コーポレート・ガパナンスの理論的枠組みが規範論と

しての合意を求めているために,現実に有意義な合意を持つとは必ずしも言えないという問題を

抱えていることを意味する。なぜならば,研究者が第三者的立場からガパナンスのあり方や有効

性を描いたとしても,それは現実におけるガパナンスの論理に当てはまるとは断定出来ず,さら

にはガパナンス・モデルが客観的な合理性をもっていたとしても,限定された合理性しか持ちえ

ないガパナンスに関わる行為者に対して,また,必ずしも合理的なガパナンスが実行できるとは

限らない (e.g.,桑田 2007)。

このように,本節ではエージェンシ一理論,スチュワードシップ理論,そして利害関係者論の

批判的考察を通じて,これら理論に共通する規範論としての重要な問題点を指摘した。社会が確

固たる構造を持つのではなく,人々によって構成されるものとして捉え,能動的主体により生成

される変化する社会的現実 Csocialreality)を把握すること (Berg巴rand Luckmann, 1967)

が,今後のコーポレート・ガパナンス論においては必要といえる。

v.むすびにかえて

本稿では,コーポレート・ガパナンスの理論的系譜を概観することにより,既存研究の理論的

な矛盾点について考察してきた。

コーポレート・ガパナンス論は,様々なアプローチのもとに多様な議論が行われてきている。

しかしながら,ガパナンスには確固たる理論が構築されているわけではなL、。にもかかわらず,

例えば, 日本においては複数人の社外取締役の導入を促す改正会社法が成立し,機関投資家に対

して投資先企業との対話を求める日本版スチュワードシップ・コードが制定されたように,これ

らの理論はガパナンスの実践において活用されている。というのは,理論的な矛盾を持ちながら

も,ガパナンスに関わる行為者にとって自身の行為を正統化することが可能だからと捉えられる。

つまり,ガパナンスの理論が実践を規定し,そして実践もまた理論を規定するのである。このよ

うな行為者の主観や解釈が,その行為者を取り巻く制度的文脈によって形成されるという前提を

とる制度的アプローチに依拠し,ガパナンス理論がガパナンス実践を規定し,またガパナンス実

践が理論を規定するという視点を前提とした理論と実践の相互作用について,より注意深く考察

を深めていくことが重要といえる。

(661 ) コーポレート・ガパナンス論の生成と展開 109

また,法規制のような,道具主義的な観点から合理的な行為を支援する意識的に作られた合理

的規則の体系 (Weber,1924/1968: 24, 953-954; Scott, 1995: 48,訳 77) によってガパナンス機

能を補強することは可能である。しかし一方で,暗黙・明示的な規範理論を合意するものして,

あるいは企業組織におけるパワーの分配や利害の自然秩序(自然律:natural order)の論理と

してガパナンス・モデルを捉えることでガパナンスの本質がより良く解釈される, という見解が

ある (Fiss,2008: 391)。社会的行為は,社会構造のなかに埋め込まれている (Bergerand

Luckmann, 1967)。それゆえに,組織を動かしている人々のガパナンスに関わる行為プロセス

を分析するために,暗黙的な枠組みを必要とする (Davisand Thompson, 1994: 142)。従って,

今後のコーポレート・ガパナンス論の展開の方向性として,実践のなかで行われることとしての

コーポレート・ガパナンスについて議論することが必要である。現実はすでにそこに存在するの

ではなく,行為者によって作られていく (Weick,1979) ことを前提に,経営者は自らの利害を

いかに正統化 Oegitimate)するかというような,企業組織を取り巻く関係性のなかでいかにガ

パナンス行為者が自らの利害の正統性を獲得していくかにも目を向ける必要がある。

そのため,近年注目されつつある,文化的,政治的,社会的に構成された行為者と企業組織に

属する社会性を付与するガパナンス・メカニズムについて,組織論(社会学〉に基づく制度的ア

プローチを用いることにより考察することを今後の研究課題とする。

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