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カラーマネジメントシステムの基礎知識 2008.03.06 アドバンテック研究所 村上 <目次> 光とは何か? 2 2 イルミナント 4 放射光(電磁波)4 太陽光 8 赤外線 10 可視光線 12 紫外線 12 X 14 標準光源 15 色温度と演色 16 色とは何か? 19 加法混色と減法混色 31 色の混合と補色 35 原色 41 色空間と等色関数 47 マンセルカラーシステム 53 CIE XYZ 59 CIE L*a*b* 60 等色関数 61 色変換 62 ホワイトバランスとグレーバランス 68 光源の種類とその特徴 70 色温度 71 黒体 72 モニタ調整 74 ガンマとガンマ補正 75 チャンネルとレイヤー 79 等色条件(メタメリズム)とアイソメリズム 62 人の目の色識別域 83 色差 85 目の構造と知覚機能 87 視覚と色覚 88 色順応と色恒常 92 色の三属性(明度、彩度、色相)94 視感度と比視感 96 表示デバイス 97 階調性と解像度 99 デジタル画像の概念 106 デジタル画像の仕組み 109 色素 110 画像形成メディア 116 画像記録メディア 122 カラーマネジメントシステム 135 CMS の仕組み 125 色再現性 137 ICC プロファイル 140 CMM エンジン 146 レンダリングインテント 149 色域圧縮 150 LUT 1D- 3D- 156 アナログ写真とデジタル写真 159 アナログ 164 デジタル 165 1

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カラーマネジメントシステムの基礎知識                                 2008.03.06

                              アドバンテック研究所

                                 村上 彰

               <目次>光とは何か? 2 

光 2 イルミナント 4 放射光(電磁波)4 太陽光 8 赤外線 10 可視光線 12 紫外線 12

X線 14 標準光源 15 色温度と演色 16

色とは何か? 19

加法混色と減法混色 31 色の混合と補色 35 原色 41

色空間と等色関数 47 

マンセルカラーシステム 53 CIE XYZ 59  CIE L*a*b* 60 等色関数 61 色変換 62 

ホワイトバランスとグレーバランス 68 

光源の種類とその特徴 70 

色温度 71 黒体 72 モニタ調整 74 ガンマとガンマ補正 75 チャンネルとレイヤー 79

等色条件(メタメリズム)とアイソメリズム 62 人の目の色識別域 83 色差 85 

目の構造と知覚機能 87 

視覚と色覚 88 色順応と色恒常 92 色の三属性(明度、彩度、色相)94 視感度と比視感

度 96 表示デバイス 97  

階調性と解像度 99 

デジタル画像の概念 106 

デジタル画像の仕組み 109 色素 110 画像形成メディア 116 画像記録メディア 122

カラーマネジメントシステム 135

CMSの仕組み 125 色再現性 137 ICCプロファイル 140 CMMエンジン 146

レンダリングインテント 149 色域圧縮 150 LUT 1D- 3D- 156 

アナログ写真とデジタル写真 159 アナログ 164 デジタル 165 

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[各論]光とは何か?  光

光は、電磁波の一種。おもに可視光線のことだが、赤外線・紫外線を含めていうことも多

い。 光は波動と粒子の二重性をもち、波動であることを強調する場合は光波、粒子であ

ることを強調する場合は光子と呼ばれる。 光源や観測者の速度にかかわらず「相対速度

が変化しない」という特徴を持つ。

    プリズムによる分光

・光の波動性

波動としての光を光波と呼び、反射・屈折・回折などの現象を起こす。ヤングの干渉実験

により光の波動説として証明され、その後マクスウェルらにより光は電磁波であること

が示された。厳密にはマクスウェルの方程式で記述されるベクトル波であり偏光を持つ

が、波動光学では簡略化のためにスカラー波として扱うことが多い。

(光のエネルギーは電場の振幅の 2乗に比例する) (光の運動量はポインティング・ベ

クトルに比例する)

・光の粒子性

粒子(量子)としての光を光子(光量子)という。光子は電磁場の量子化によって現れる

量子の 1つで、電磁相互作用を媒介する。ニュートンの光の粒子説によって唱えられた。

現在の光子の概念はアインシュタインによって提唱された。

E = hν (光のエネルギーは振動数 νに比例する)

E = pc (光のエネルギーは運動量 p に比例する)

・粒子説と波動説

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「光は粒子か波か?」

この問題は、かつてよく議論された。何故なら、光が波でなければ説明がつかない現象

(たとえば光の干渉、分光など)と、光が粒子でなければ説明のつかない現象(光電効果

など)が、どちらも明確に確認できたからである。

この問題は、20 世紀前半から後半にかけて「量子力学」という学問分野が確立していく

中で、「光は粒子でもあり波でもある。粒子と波の両方の性質を併せ持つ、量子というも

のである」ということが確かめられ、決着がついた。この量子の持つ特異な性質のこと

を指して、「光は〈粒子性〉と〈波動性〉を併せ持つ」と表現することがある(量子の詳

しい性質については記事:量子を参照)。

現在では呼び方として、光の粒子性に重点を置く場合は「光子」、波動性に重点を置く場

合には「光波」、光が粒子と波の二面性を持った量子である、という点に重点をおく場合

は光量子と言う。

・光の性質

性質としては上記の通り粒子性と波動性があり屈折・(全)反射・干渉(ホログラフ

ィ)・回折・偏光 (LPL・CPL) などの

光は、通常、直進する。(エウクレイデスの光の直進の法則)

凸凹の無い平面鏡に当たった光は、鏡に当たったときと同じ角度で反射する。 (エウ

クレイデスの光の反射の法則)

屈折率の異なる物質の境界面で光の速度が変化する。その結果、境界面への入射角が直角

でない場合には、光の進路が変化する。(屈折)

光の屈折の際は、スネルの法則が成立する。

光の強さは、光源からの距離に逆 2乗する。 (ケプラーの光の逆 2 乗の法則 )

主な物質との関係ではフォトニクスと呼ばれ大別して Photo(光化学、光物理などの分子

場理論)と Opto(光学などの放射場理論)と呼び方が異なり、光物理機能としては励起

エネルギー移動や化学発光、電界発光 (EL) 等、光化学機能としてはフォトレジストや光

触媒、光エネルギー変換等、光波機能としては、光ファイバーや近接場光学、コヒーレン

ト分光などがある。

・光の種類

太陽光

レーザー光

放射光(電磁波)

赤外線・可視光線・紫外線・X 線 (軟~硬)などが得られる。

イルミナント

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国際照明委員会(CIE)が定めた測色用の光源で

ある。標準の光ともいう。1931 年国際照明委員

会が定めたもので、万国共通の基準になる光で

ある。現実に存在する光ではなく、分光分布で

規定した理論上の光である。「標準イルミナン

ト D65」と「標準イルミナント A」の 2つがあ

る。 ただし、JISでは、標準イルミナント Cも

規定している。

放射光(電磁波)放射光は、シンクロトロン放射による電磁波である。「光」とあるが、実際は、人工の

ものでは赤外線からX 線 、天然のものでは電波から γ 線 の範囲のものがあり、特に光に限

定して呼ぶことは少ない。また、電磁波が放射される現象は他にも多くあるが、シンク

ロトロン放射による電磁波に限り放射光と呼ぶ。

シンクロトロン放射は、高エネルギーの荷電粒子が磁場中でフレミングの法則により曲

がるとき電磁波を放射する現象である。「シンクロトロン(同期式円形加速器)」と名が

付いているが成因を問わずこう呼ぶ。放射光と呼ぶのは人工のものであることが多い。

・特徴

放射光の特徴としてはまず、著しい指向性にある。荷電粒子の速度が光速に近くなると、

相対論的効果によって軌道の接線方向に光が集中し、指向性の高い強力な光となる。普通

の光源は全方位に対して光を放出するのとは対照的である。また、極めて光度が強い白色

光であることが挙げられる。他にもパルス光である、光源からフォトン以外を放出しな

い、等の特徴がある。この放射は理論からの予想と実験が良く一致するので、放射の標準

とされることもある。

このような特性を赤外線から硬 X 線 にいたる光源として利用しているのが、放射光施設

(synchrotron radiation facility) と呼ばれる施設である。日本では、和歌山毒入りカレー事件

で亜ヒ酸の分析に用いられ世間で知られることになった。

放射光はシンクロトロン以外にも、磁場の向きが互い違いになるように並べた磁石列に

よって電子軌道を蛇行させ、放射光を発生させる装置「アンジュレータ」によっても得

ることができる。アンジュレータでは干渉効果によって極めて高い輝度を得ることがで

きる。

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電磁波は、空間の電場と磁場の変化によって形成された波(波動)のことである。電界と

磁界がお互いの電磁誘導によって交互に相手を発生させあうことで、空間そのものが振

動する状態が生まれて、この電磁場の周期的な変動が周囲の空間に横波となって伝播して

いく、エネルギーの放射現象の一種である。そのため、電磁放射とも呼ばれている。

空間そのものがエネルギーを持って振動する現象であるため、波を伝える媒体となる物

質(媒質)が何も存在しない真空中でも伝わっていくと考えられている。電磁波の電界

と磁界が発生する振動方向はお互いに直角であり、また電磁波の進行方向もこれと直角で

ある。基本的には空間中を直進するが、物質が存在する空間では、吸収・屈折・散乱・回

折・干渉・反射などの現象が起こる。また、重力場などの空間の歪みによって進行方向が

曲がることが観測されている。

真空中を伝播する電磁波の速度は一定とされ光速度(約 30 万キロメートル毎秒)と呼ば

れている。一方、物質(媒質)中の電磁波の伝播速度は、物体の屈折率によって変化し、

屈折率は電磁波の波長に依存するため、物質中での電磁波の伝播速度は波長によって異な

ってくる。

電磁波の性質は、波長、振幅(電磁場の強さは振幅の二乗)、そして伝播方向と、偏波面、

偏光の状態で決められる。電磁波を波長変化として考慮したものをスペクトルという。

波長によって物体に及ぼす作用が少しずつ異なってくる点に着目して、違った呼び方を

されることがある。波長の長い方から、電波・赤外線・可視光線・紫外線・X 線 ・ガンマ

線などと呼び分けられている。我々の目で見えるのは可視光線のみだが、その範囲

(0.4μm - 0.7μm)は電磁波の中でも極めて狭い。

・理論

電磁波は、19 世紀に明らかにされていた次の 4つの物理法則、1.ファラデーの電磁誘導の

法則、2.アンペールの法則、3.電場に関するガウスの法則、4.磁場に関するガウスの法則、

を統合することによって、1864 年 にジェームズ・クラーク・マクスウェルにより理論的

に予測され、1888 年 にハインリヒ・ヘルツによる実験で発見されている。電磁波の挙動

はマクスウェルの方程式として体系化されており、波動方程式の一般解として必然的に

導出される。

20 世紀初頭に登場した量子力学は、電磁波という空間が振動して生じた連続性を持った

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エネルギーの波動と、物質という原子や分子で構成された不連続な粒子(パーティクル)

の集合物の間でのエネルギーの授受は、一般の巨視的な波動現象とは異なり、ランダム

な熱運動をしている物質側の共振周波数に依存するエネルギーの最小単位 量子 の整数倍で

しか行われない、不連性を示すことをマックス・プランクが発見したことから始まった。

量子力学の世界では光(電磁波)はアルベルト・アインシュタインの光量子仮説に基づ

いて光子として量子化して扱われている。

・種類

電磁波は波長によって呼び名・用途が異なる。

電磁波は波長によって様々な分類がされており、波長の長い方から電波・光・X 線 ・ガン

マ線などと呼ばれる。

電波は周波数が 30Hz から 3THz の電磁波を指し、さらに波長域によって超低周波・超長

波・長波・中波・短波・超短波・マイクロ波と細分化される。詳しくは電波の周波数によ

る分類を参照。

光は波長が 1mm から 2nm 程度のものを指し、波長域によって赤外線・可視光線・紫外線

に分けられている。

波長が 1nm 以下ではX 線 、10pm 以下ではガンマ線と呼ぶ。

なお、これらの境界は統一的に定められたものではない。学問分野等によって多少の違

いがある。

・特徴

電磁波は波長によって様々な特徴をもつ。

最も波長の長い電波は、進行方向に多少の障害物があっても進行することができる。こ

のため、通信や放送などの長距離の情報送信に使用されることが多い。テレビやラジオ、

携帯電話などが代表的である。

電波よりも波長の短い光は、物質に吸収されて化学反応や発熱などの相互作用を生じるこ

とがある。この現象は眼が見える理由でもあるが、他に植物の光合成やリソグラフィー

などが該当する。

さらに波長が短い X 線 になると、物質との相互作用が減少し、透過するようになる。こ

の現象を利用することで、レントゲン写真やX 線 CT を撮影することができる。

・生体への影響

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電磁波測定器

紫外線・X 線 ・ガンマ線などの電離放射線は、遺伝子に損傷を与えるため発がん性を持つ。

これらの電磁波については年間許容被曝量が法律によって決められている。

家庭で接することの多い 50Hz あるいは 60Hz 程度の電磁波(電磁界)は非電離放射線で

あり、この観点からは直接遺伝子に影響は与えないとされている。しかし、電界や磁界

を変化させてプラズマ化した物体を原子や分子の単位で制御する技術を応用して、生体を

構成するたんぱく質や遺伝子などの高分子の構造を、細かく変化させて、リボザイムな

どが生成されていった RNA ワールド の生命誕生の過程を探る研究を行っている人々の間

では、電界や磁界が低い周波数でも生体を構成する高分子にさまざまな作用を及ぼすこ

とが知られている。

国際がん研究機関(IARC)が 2001 年に行った発がん性評価では、送電線などから発生す

る低周波磁場には「ヒトに対して発がん性がある可能性がある」(Possibly carcinogenic to

humans)と分類した。これは「コーヒー や「ガソリンエンジン排ガス」と同じレベルに」あたる。なお、静的電磁界と超低周波電界については「ヒトに対して発がん性を分類で

きない」(cannot be classified as to carcinogenicity in humans)と分類された。これは「カフ

ェイン、水銀、お茶、コレステロール」等と同じレベルにあたる。

また、EU7ヶ国 12研究所による REFLEXプロジェクト等の研究でも、低周波磁場やマイ

クロ波が試験管内の細胞の遺伝子を傷つけることが示されている。

高強度のマイクロ波には、電子レンジと同様に熱を生じるため生体に影響を与える可能

性がある。このため、携帯電話などの無線機器などでは、人体の電力比吸収率(SAR:

Specific Absorption Rate 単位は[W/kg])を用いた規定値が欧州(国際非電離放射線防護委員

会)やアメリカ(連邦通信委員会)などでは決められているほか、日本でも法規制が行

われている。学会などでも比吸収率の計算(FDTD法)や人体を模した人体ファントムの

組成の決定などが行われている。

一方、電磁波による生体への影響についての疫学調査については正確性に対し疑問が投げ

かけられることもあり、「健康への悪影響」を示した国立環境研究所の研究については、

平成 15 年に「税金のむだ使い」として国会で取りあげられた。

ただし、電磁波の健康への影響は調査自体が非常に難しい。また、健康への影響が無いこ

との証明は、悪魔の証明と同様であり、相当な困難を伴う。一例を挙げると、米国で公的

機関NIEHSで RAPID計画という国家単位での電磁波の健康に対する影響の研究が行われ

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た。この機関が作成したパンフレットでは、臨床研究、細胞を用いた実験室での研究、動

物を使用した研究、疫学研究の各分野を組み合わせ検証した結果でないと全体像が見えな

いと解説されている。

2007 年 6月に公表された、世界保健機関(WHO)の公式見解を示すファクトシート 322

では、短期的影響に関しては「高レベル(100μTよりも遙かに高い)での急性曝露による

生物学的影響は確立されており、これは認知されている生物物理学的なメカニズムによ

って説明されています。」と評価された。一方、潜在的な長期的影響に関しては「小児白

血病」と「小児白血病以外のその他の健康への悪影響」に分けて評価されており、小児白

血病に関しては「全体として、小児白血病に関する証拠は因果関係と見なせるほど強いも

のではありません。」と評価され、その他の影響に関しては「ELF磁界曝露とこれら全

ての健康影響との関連性を支持する科学的証拠は、小児白血病についての証拠よりもさら

に弱いと結論付けています。幾つかの実例(すなわち心臓血管系疾患や乳がん)につい

ては、ELF磁界はこれらの疾病を誘発しないということが、証拠によって示唆されてい

ます。」と評価された。

また、「新環境保健クライテリア(EHC238)」や「ファクトシート 322 」の公表を受け、

『日本や米国などでの疫学調査から「常時平均 0.3~0.4マイクロテスラ(3~4ミリガウス)

以上の電磁波にさらされていると小児白血病の発症率が 2 倍になる」との研究結果を支持。

「電磁波と健康被害の直接の因果関係は認められないが、関連は否定できず、予防的な対

策が必要だ」と結論づけ、各国に対策法の整備などを勧告した。予防として注意が必要な

家電製品には IHクッキングヒーター、IH炊飯器、電子レンジ、ミキサー、トースター、

ホットプレート、アイロン、ドライヤー、電気シェーバー、電動歯ブラシ、ホットカー

ペット、電気毛布、こたつ、マッサージ機、ブラウン管テレビ(モニタ)、掃除機、洗濯

機、蛍光灯などがある。電磁波の影響を減らすには一定の距離をとって、短時間での使用

が望まれる。』との新聞報道がなされた。

・機械への影響

現在のエレクトロニクス機器は、低電圧の信号を高インピーダンスで扱うことが普通で

あるため、環境中に強い電磁波が存在すると誤動作を生じやすい。その機器が誤動作を生

じやすいか生じ難いかを測る指標としてイミュニティ(Immunity)がある。特に携帯電話

からは比較的強い電磁波が発せられるため、航空機やペースメーカーなどへの影響が懸

念されている。ただし、平成 14 年の総務省調査では、携帯電話から 11cm 離れると医療

機器への影響はほぼ認められなくなるため、安全のためにペースメーカーから 22cm 以上

離して使用すべき等の指針を発表している

太陽光 太陽光(Sunlight)とは、太陽が放つ光である。日光ともいう。我々人類は太陽の恵みと

も言われる日の光の恩恵を享受してきた。

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雲間から射す太陽光         太陽の構造(「太陽」より)

・太陽のメカニズム

-発生

太陽中心部における水素の核融合により、ガンマ線が発生する。

ガンマ線は、1500 万 Kという高温のために固定されずに飛び交っている電子や陽子によ

り直進を阻害される。

直進を阻害されたガンマ線は、近くのガスに吸収されてエックス線として放出される。

エックス線は、ガスへの吸収と放出を繰り返し、直進できるほどの外側部に到達した頃

には、可視光線や赤外線、紫外線となる。

外側部の可視光線、赤外線、紫外線は、太陽光として放射される。

・地球到達

地球軌道上での太陽光(AM0)、および温帯の地上での平均的太陽光スペクトルの概形

(AM1.5G)

太陽光として太陽から放出された光は、地球軌道付近で約 1.37kW/m2(太陽定数)のエネ

ルギーを持つ。これが地球軌道上の人工衛星が受光できるエネルギーとなる。光子の数

にして1平方メートル・秒あたり 6×1021個(十垓個)以上になる。

放射線は殆どが大気で遮断される。また有害な紫外線も成層圏のオゾン層で 90%以上がカ

ットされる。可視光線、赤外光も、大気圏中での反射・散乱・吸収などによって平均4割

強が減衰し、地上に到達する(気象庁による解説)。大気を通過する距離が変わるため、

地上の各地点で受光できるエネルギー密度は緯度や季節、時刻に従って変化する。日本付

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近では最大約 1kW/m2のエネルギーとなる。

太陽光が太陽から放たれて地上に到達するまでの時間は約 8分 17~19 秒(天文単位、太

陽と地球の半径、光速から計算できる)。

地球に到達した太陽光線の1時間あたりの総エネルギー量は 20 世紀 後半の世界の1年間

で消費されるエネルギーに匹敵する。

そのエネルギーの地上での内訳は、

地上で熱に変わってしまうエネルギーは約 45%

海中に蓄えられるエネルギーは 20数%

風や波を動かす原動力へ変わるエネルギーは 0.2%程度

光合成に使われるエネルギーは 0.02%程度

宇宙へ反射してしまうエネルギーは 30%程度

最終的には、可視光や赤外線などの電磁波として宇宙へ再放射される。詳しくは地球のエ

ネルギー収支を参照。

赤外線赤外線(英:infrared rays)は、可視光線の赤色より波長が長く(周波数が低い)、電波よ

り波長の短い電磁波のことである。ヒトの目では見ることができない光である。英語

の"infrared"は「赤より下」の意である。

・赤外線の種類

赤外線は赤色光よりも波長が長く、ミリ波長の電波よりも波長の短い電磁波全般を指し、

波長ではおよそ 0.7μm ~ 1mm(=1000μm)に分布する。すなわち、可視光線と電波の間に属

する電磁波と言える。

赤外線は波長によって、近赤外線、中赤外線、遠赤外線に分けられる。波長区分は、学会

によって微妙に違う。下記の区分はその一例である(例えば天文学では 10μm くらいまで

が中赤外線として扱われることが多い)。

・近赤外線

近赤外線は、およそ 0.7~2.5μm の可視光(赤)にほど近い電磁波。可視光線に近い性質

を持つため、「見えないが、可視光線に似た性質の光」として応用されている。

IrDA などの赤外線通信、セキュリティ用 CCD カメラの夜間光源などに利用される。赤外

線 LED が光源としてよく利用される。

・中赤外線

中赤外線は、およそ 2.5~4μm の電磁波。近赤外線の一部として分類されることもある。

・遠赤外線

遠赤外線は、およそ 4~1000μm の電磁波である。電波に近い性質も持つ。

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赤外線は物体からは必ず放射されている(黒体放射)。すなわち熱線としての性質を持ち、

高い温度の物体ほど赤外線を強く放射する。また、放射のピークの波長は温度に反比例す

る。室温 20℃の物体が放射する赤外線のピーク波長は 10μm 程度である。 熱線として調

理や暖房など加熱機器に利用される。一般に電磁波は、波長が長い方が物体に浸透する能

力が大きくなるので、遠赤外線を用いることにより、対象を内部から暖めることができ

る(その好例がコタツである)。ただし、遠赤外線の効果を謳う商品の中には、科学的に

実証されていないばかりか妄説にすぎない商品(浄水器、燃費改善剤など)もあるので

注意を要する。

・特性

地球放射の一部と

太陽放射 (0.8micron

以 下。幅が狭いた

め正確に表現でき

ていない )のスペク

トル。青い部分の

上下幅が広いとこ

ろが大気の窓。横

軸(Wavelength)が波長、縦軸(Transmittance)が放射の透過率を表す。

赤外線は大気に吸収され、その一部が地上に届く。

水蒸気や二酸化炭素で大きく吸収されていることが上の図で示される。

・赤外線カメラ

近赤外線に感光する赤外線フィルムやカメラなど映像装置を用いることで、特殊なメリ

ットを得ることができる。

赤外線は可視光に比べて波長が長いため散乱しにくい性質があり、煙や薄い布などを透過

して向こう側の物体を撮影するために用いることができる。

あくまで光であるため、近赤外線光が当たっていない物体は写らず認識できない。一方

で、赤外線は目に見えないため、外部に近赤外線光源を持つことで、被写体に気付かれる

ことなく夜間などでも撮影することができる。100m先の物体を照らすことのできる光源

も存在する。

これらの利点から、軍事用の暗視スコープでも利用されている。ライトや星から放たれ

るわずかな可視光線・近赤外線を増幅し、明瞭な画像を得るものである(暗視装置参照)。

赤外線カメラは、可視光をシャットアウトする赤外線フィルタを通して用いる。なお赤

外線は可視光と比べてガラスに対する屈折率も小さいため、撮影の際には焦点距離を大き

く取る必要があるものもある。そのため、一部のレンズについては通常の光で焦点を合

わせた後、赤外線でピントを合わせるための目印を付けたものもある。なお、その特長

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を悪用して、水着を透かして撮るなどの盗撮行為が可能となっている。その為、赤外線

に透けない素材の使用を売りにした水着も販売されている。

近年の世界的な治安悪化で、近赤外線まで感度分布を持つ CCD カメラに、赤外線 LED ラ

ンプ照明を使用したセキュリティ用監視カメラが、多方面に使用されてきている。赤外

光を利用して夜間でも相手に気付かれず、相手を刺激せずに撮影することができる。街

中の監視カメラや各種料金所ゲートのカメラから、家庭用のドアホンまで幅広く利用さ

れてきている。

可視光線

可視光線とは、電磁波のうち、人間の目で見える波長のもの。いわゆる光のこと。JIS

Z8120の定義によれば、可視光線に相当する電磁波の波長は、おおよそ短波長側が 360 nm

~400 nm、長波長側が 760 nm~830 nmである。逆に、可視光線の外に位置する赤外線と

紫外線を指して、不可視光線と呼ぶ場合もある。

可視光線は、太陽やそのほか様々な照明から発せられる。通常は、様々な波長の可視光線

が混ざった状態であり、この場合、光は白に近い色に見える。プリズムなどを用いて、

可視光線をその波長によって分離してみると、それぞれの波長の可視光線が、人間の目

には異なった色を持った光として認識されることがわかる。各波長の可視光線の色は ,波

長の短い側から順に、青紫、紫、青緑、緑、黄緑、黄、黄赤(橙)、赤で、俗に七色とい

われるが、これは連続的な移り変わりである。波長ごとに色が順に移り変わること、あ

るいはその色の並ぶ様を、スペクトルと呼ぶ。

可視光線より波長が短くなっても長くなっても、人間の目には見ることができなくなる。

可視光線より波長の短いものを紫外線、長いものを赤外線と呼ぶ。あくまで人間の視覚を

主体とした分類であり、一部の昆虫類や鳥類などは(人間にとっての)紫外線をも見るこ

とができる。

可視光線は、通常は人間の体に害はないが、強い可視光線が目に入ると網膜の火傷の危険

性がある。

紫外線紫外線は波長が 10 - 400 nm、すなわち可視光線より短く軟 X 線 より長い不可視光線の電磁

波である。光のスペクトルで紫よりも外側になるのでこの名がある。英語のUltravioletも

「紫を超えた」という語(ラテン語の Ultraは、英語の beyondに相当)から来ている。日

本語では、紫外線と呼ぶのが一般的であるが、violetを菫色とも訳すことから、文学作品

などでは、菫外線(きんがいせん)と呼ばれることもある。また、英語の Ultravioletから

UVと略される。

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赤外線が熱的な作用を及ぼすことが多いのに対し、紫外線は化学的な作用が著しい。この

ことから化学線とも呼ばれる。紫外線の有用な作用として殺菌消毒、ビタミン D の合成、

生体に対しての血行や新陳代謝の促進、あるいは皮膚抵抗力の昂進などがある。

波長による分類法として、波長 380-200nmの近紫外線(near UV)、波長 200-10nmの遠紫外

線もしくは真空紫外線(far UV (FUV)もしくは vacuum UV (VUV))、波長 1-10nmの極紫

外線もしくは極端紫外線(extreme UV,EUV or XUV)に分けられる。また、人間の健康や環

境への影響の観点から、UVA(400~315nm)、UVB(315~280nm)、UVC(280nm未満)に分け

られることもある。フォトリソグラフィやレーザー技術において、遠紫外線 (deep

UV(DUV))は前記の FUVと異なり波長 300nm 以下の紫外線を示す。

太陽光の中には、UVA、UVB、UVC の波長の紫外線が含まれているが、そのうち

UVA、UVBはオゾン層を通過、地表に到達する。UVCは、物質による吸収が著しく、通

常は大気を通過することができない。地表に到達する紫外線の 99%が UVAである。

(UVCは、オゾン層の反応で生成されるものもある)

物質の屈折率は入射した光の波長に依存する。光学部品(光学窓やレンズなど)の素材と

してよく用いられるガラスは、紫外線の波長域では吸光係数が著しく増大し、透過率が急

激に減少する。このため、ガラスを使った光学部品で紫外線光を取り扱う事は困難であ

る。そのため特殊な材料(例えば、石英ガラス(波長 200nm 以上で使用可)やフッ化カ

ルシウム、フッ化マグネシウム(150nm 以上で使用可))を使用した専用の光学部品が使

用される。

・紫外線の波長ごとの特徴

近紫外線 (波長 380-200nm)

UV-A (波長 315nm-400nm)

太陽光線の内 5.6%通過。皮膚の真皮層に作用し蛋白質を変性させる。細胞の物質交代の

進行に関係しており、細胞の機能を活性化させる。また、UV-Bによって生成されたメラ

ニン色素を酸化させて褐色に変化させる。サンタン(suntan)。

UV-B (波長 280nm-315nm)

太陽光線の内 0.5%通過。表皮層に作用するが、色素細胞がメラニンを生成し防御反応を

取る。これがいわゆる日焼けである。また UV-B には発癌性が指摘されるが発癌するの

は高齢者、しかも肌の露出した部分のみというケースが多い。サンバーン(sunburn)。

UV-C (波長 200nm-280nm)

オゾン層で守られている地表には今のところ到達しない。強い殺菌作用があり、生体に

対する破壊性が最も強い。

遠紫外線、真空紫外線 (VUV) (波長 200nm-10nm)

酸素分子や窒素分子によって吸収されるため、通常は地表には到達しない。真空中でない

と進行しないため「真空紫外線」 (Vacuum Ultra Violet)と呼ばれる。

極端紫外線 (波長 10nm 以下)

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極端紫外線は、物質の電子状態の遷移により放出される。X線との境界はあいまいである。

30nm 近辺の波長は、価電子帯の電子が伝導帯に遷移する際に放出されるのに対し、それ

より短い波長のものは、内側の核電子のエネルギー状態の変化により放出される。この

長波長側の端は、He+による EUV/XUV放射が 30.4nmである。波長の短いものはサイクロ

トロン放射によっても放出される。この領域の紫外線は、X 線 と分類されることもある。

X 線

X線(X ray)は波長が 1pm~10nm 程度の電磁波のこと。放射線の一種。

レントゲンが 1895 年 末に発見した。このためレントゲン線と呼ぶこともある。波長のと

りうる領域(エネルギーのとりうる領域)がガンマ線のそれと一部重なっている。X線

とガンマ線との区別は波長ではなく発生機構による。軌道電子の遷移を起源とするもの

をX線、原子核内のエネルギー準位の遷移を起源とするものをガンマ線と呼ぶ。

なお、日本の法令の条文上ではカタカナを用いて「エックス線」と表記するのが原則と

なっている。

・発生方法

-電子の励起準位の差によるもの

例えば、対陰極として銅、モリブデン、タングステンなどの標的に、加速した電子ビー

ム(30 keV程度)を当て原子の 1s 軌道の電子を弾き飛ばす、すると空になった 1s 軌道に、

より外側の軌道(2p、3p 軌道など)から電子が遷移してくる。この遷移によって放出さ

れる電磁波が X線(特性 X 線 )である。この時、軌道のポテンシャルエネルギーの差で

電磁波の波長が決まるので、どのような場合でもX線が出てくる訳ではない。

加速電圧(管電圧)と電子流による電流(管電流)からくる消費電力の 1%程度だけがX

線に転換される。つまり電子線の電力の 99%が対陰極の金属塊を熱するという事になる

為、実験上冷却が重要である。このような方法でX線を発生させる装置は、

X線管(特にX線管の中で分析管と言われるものは特性X線を利用する)

クルックス管

がある。

-運動エネルギーによるもの

電子を対陰極で急激に制動させたり、磁場により運動方向を変更したりするなどの加速度

運動をすると X線が放射され、制動 X線と呼ばれる。特定のスペクトルを示さないので、

白色X線と言われる。このような方法でX線を発生させる装置は

X線管

放射光施設(SPring-8 等)

-熱によるもの

レーザーで高温のプラズマを発生させ、超短パルスの X線を発生させたり、X線レーザ

ー発振の研究が行われている。

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高温のプラズマ

ブラックホールに落下し加熱されたガス

・用途

医療分野(診断用)での X 線写真 ・CT や、材料の内部の傷等の探索(非破壊検査)、物

性物理学分野では結晶構造解析の手段(X 線回折 )として利用される。

・種類

超軟 X線(Ultrasoft X-ray)

約数 10eVのエネルギーが非常に低く紫外線に近いX線

軟 X線(Soft X-ray)

約 0.1~2keVのエネルギーが低くて透過性の弱いX線

X線(X-ray)

約 2~20keVの典型的なX線 (一部を軟 X線に入れたり硬 X線に入れる場合もある)

硬 X線(Hard X-ray)

約 20~100keVのエネルギーが高くて透過性の強いX線

波としての性質より粒子としての性質を強く示すようになる。

標準光源「物体の色は照明する光源によって違って見える」ということは、上述した通りである

が、色彩計(刺激値直読方法/分光測色方法ともに)には測定用照明光源が内臓されている。

物体の色を測定するためには、各種の光源の代表的な特性を規定しておく必要があり、こ

れらは CIE(国際照明委員会)や JISなどで定められている。図は、代表的な光源の分光分

布である。分光測色計には図の照明光源データが内臓されており、それぞれ目的に応じ

た照明光源によって、色彩値の測定ができる仕組みになっている。同時に、ある製品が

「さまざまな照明光源下においてどのように見えるか」といったシミュレーションを行

うこともできる。刺激値直読方法の色彩計は一般的に、標準の光 か測色用補助イルミ

ナントCのどちらか 1種類で測定している。

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最も標準的な光源(A,C,D65)

              人工光源の種類とその特徴

色温度と演色

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① 色温度とはある光源の色を絶対温度 K(ケルビン)で示したもので、JIS「色に関する

用語」には「完全放射体の色度と一致する試料放射の色度の表示で、その完全放射体

の絶対温度であらわしたもの」とある。

② 色温度は、白色蛍光灯はおよそ 4,300K、快晴の青空はおよそ 20,000Kとなる。数値が

低いほど赤色光の量が多く、高いほど青色光が多い。

③ CIEの標準光源 A、C、D65などのうち、印刷以外で一般によく使われる照明光源は

D65であり、その色温度は約 6,500Kである。写真業界の標準として使われている。

④ 原稿の色の選定、インクの色合わせ、印刷物の色評価、色の均一性の評価など、印刷

の照明光源には、5,000KのD50を標準とする。写真業界の標準としても使われている。

⑤ 一般的な光源の色温度は、印刷の標準光源に比べると高めのため、作業内容によって

はカラーモニタでの色温度を印刷用に設定して使う。

白色点(ホワイトポイント)の分布(黒体軌跡)

色温度に対応する色味の変化

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・演色性

・平均演色評価数(Ra)

 演色性は一般的には、自然光のようなものを基準にして、「よい」「わるい」という

が、その自然光に近い照明を基準光として、JISに定められている試験色を基準として調

べ、照明のその演色性を評価する。演色評価数には、平均演色評価数と特殊演色評価数が

あり、平均演色評価数とは、試験色を、試料光源と基準光で照明したときの色ずれの大き

さを数値化したもので、基準光で見たときを 100とし、色ずれが大きくなるにしたがっ

て数値が小さくなる。ただし、色温度によって見え方は変化するので、白熱灯は、Ra100

であるが、人の顔や食物などは赤っぽく見えてしまい、よく見えない場合がある。平均

演色評価数(Ra)は基準光No.1~8の演色評価数値の平均値として表される。

演色評価数Ra=100-4.6ΔE ΔE:色差

・特殊演色評価数(Ri)

 特殊演色評価数(Ri)とは、特殊演色評価用(No.9~15)の試験色・赤・黄・緑・青・

西洋人の肌色・木の葉の色・日本人の肌色など現実的な物の色を対象に評価するもので、

数値も個々の試験色ごとに表示している。No.15は、日本のみに適用される。・分光特性

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 光源の種類によって、物の見え方が異なってくる。それは、光源によって、分光分布が違うからである。光エネルギーが自然光のように一様に含まれているほど自然光と同じようにみえる。これを、演色性といい、Raで表す。

色とは何か? 

色鉛筆。色は美術などにおいて重要な要素である。

色は、可視光線の組成の差によって質の差が認められる視覚である色覚、及び、色覚を起

こす刺激である色刺激を指す。

色は視覚を通して得られる感覚の一種ある色は、「形状」や「距離」の様に空間の物理的

な性質ではない。色についてはまだ分かっていない事柄が多い。例えば、物理的な対応

物が擬似的に存在しないのに色を知覚する例として、ベンハムの独楽という錯視現象が

ある。ベンハムの独楽とは独楽の上面を白と黒で塗り分けただけであるのに、回転させ

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ると色知覚が生まれるという実験を指す。 或いは、ある種の魚類ではヒトよりも 1つ多

い 4種類の錐体細胞を持つ。従って、3原色ではなく 4原色の「色」を知覚していると考

えられている。

「色気を出す」、「色をつける(おまけする)」、「焦りの色」というように、魅力や状

態を表す単語でもある。

・色と色覚

物理学的には、色の変化は、物体と物体を照らす光との「相性」により説明される。物体

に入射する何らかの波長の光が観測者の方向へ反射(正反射・乱反射を含む)する際に、

その物体の物性に応じた特定の波長のみが反射されそれ以外は吸収される(=波長に応じ

反射率が異なる)という現象が起こる。観測者には反射された光だけが届く為、その波長

に基づき判断される色が、「その物体の色」として認識される(つまり、光そのものに

色という性質はなく、光を受けた器官が色を作っている)。

またそのように観測者に届く光とそれに対する認識とに左右される為、一般的な色は、

人間の視覚即ち可視光線の範囲内を基準として表現されている。逆に言えば、可視光線の

範囲を超えた波長の光について観測すると、可視光域で見た場合に比べて全く別の「色」

や模様になっている物体もある。例えば蝶の羽根の模様は紫外線領域では人の肉眼で見る

場合とはまた異なる鮮やかな模様を描き出すし、真っ黒に焼け焦げた新聞紙などは赤外

線領域のある波長では燃えた紙とインクが燃えた部分とで反射率が異なる為書かれてい

た元の内容を読むことが出来る。

・錐体細胞と三原色

生理学的に言うと、網膜内にある 3種類の錐体細胞が吸収する可視光線の割合が色の感覚

を生む。これらの錐体細胞は、それぞれ長、中、短の波長に最も反応するタンパク質

(オプシンタンパク質)を含み、それぞれ L, M, S 錐体と呼ばれる。これが 3 原色という

感覚を生む。進化の過程で、L と S の二色型の視覚を持っていた霊長類では L が L と M

に分離した。従って L と M の波長感度は極めて近い。L, M, S が赤、緑、青に対応するわ

けではなく、3 種類の波長特性があるために 3 原色で表現できるのである。

ある人が視覚を通して受け取る光の波長が変化すると、それに伴って変化する視覚経験

の内容が色であると言える。但し、多数派の色覚を持つ者以外に、多数派の色覚をもつ人

と色覚が部分的に整合しない(色覚特性:「色覚が弱い」のではない)人、色覚を持たな

い(全盲など)人もいる為、この事例にも例外がある。しかしながらこの事態に限って

は、色覚特性があっても知覚可能な波長にあっても事情は同様である。

無色の紙のように、全波長において高い反射率で乱反射する物体は白と呼ばれる。人間の

視覚には慣れがあり、多少の光源の色度の違いは補正される。このため昼と夕方とでは

日光の波長分布が違うにも関わらず、物体は同じ色に見える。一方、全波長において反射

がほとんど無い場合、その色は黒と呼ばれる。完全な黒体は、例えば中空の物体に微小な

開口部を設けることで実現できる。この場合、中空の部分に入った光はほとんど吸収さ

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れ外に出てこないので、反射率はほぼ 0 になる。

人間の視覚が色を認識する際には、その光の分光分布を直接計っているのではなく、眼球

の錐体細胞に含まれる 3つの色素が光を吸収する割合を計っているに過ぎない。その為、

独立した複数の色を合成する事で人間に別の色を感じさせる事ができる。例えば、黄の

波長の光は、赤の波長の光と緑の波長の光の組み合わせによってほぼ同じ刺激を与える

ことが可能であり、黄は赤と緑の組み合わせの光として表現出来る。そしてこの場合、

黄の波長だけが眼球に入っている場合と、赤の波長と緑の波長が組み合わされて眼球に入

っている場合を人間は区別出来ない。

色光の三原色

白色の光を合成する為の波長を「光の三原色」や「色光の三原色」と言い、下記の三色を

用いる。

■ 赤(橙赤)(波長: 625-740 nm)

■ 緑(波長: 500-565 nm)

■ 青(紫青)(波長: 450-485 nm)

色は 3つの光を合成することによって表現出来る(加法混色)。

色材の三原色

一方、物体の表面を特定の色にする為にインク等を塗る場合、元の光を遮る形で色を作る

(減法混色)。その合成の元になる基本色は一般に「色の三原色」や「色材の三原色」と

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言われ、下記の三色を用いる。

■シアン(緑青、碧)

■マゼンタ(赤紫、紅)

■イエロー(黄)

この 3色を合成して着色された物体の表面は、光の三原色の場合と反対に黒色になる。そ

の為、印刷等に用いる場合には白色素材の表面に印刷することが前提となるし、白色イン

クの併用が必要になる場合もある。また実際の印刷工程においては三原色全てを混色し

た場合の色が黒の理想値と異なる。それゆえ、より自然にする目的で黒色インクも併用

され、一般に CMYK(Cyan, Magenta, Yellow, Key plate) と呼ばれる。

これはあくまでも一般的な色覚を持つ人間を基準にした色の合成方法である。二色型の色

覚を持つ人にとっては、2つの原色で(その人にとっての)全ての色を合成することがで

きるし、4つ或いはそれ以上の錐体(若しくはそれに相当するもの)を持つ生物にとって

は、4つ或いはそれ以上の「原色」が必要になる。また、そのような生物には、我々が実

際の色に近いと判断する写真が、実物と明らかに異なる色合いに見えると考えられる。

・色の知覚

人間には感知し易い色と知覚し難い色がある。

赤や黄等暖色系の色は実寸より物が大きく近くに見える拡大色で、他の色より知覚し易い。

日本の児童の帽子やランドセルカバーが黄色なのは、知覚し易い色を採用する事で自動車

事故を減らす狙いがあるからである。

逆に、青や黒等の寒色系の色は実寸より物が小さく遠くに見える色である。実際に黒色の

自動車は他の色に比べて事故が多く、その為バスやタクシーの車体は黒色を避けている

ものが多い。また、囲碁の碁石も黒石と白石が同じ大きさだと黒石の方が小さく見えて

しまうので、黒石を一回り大きく作っている。

人間が暗闇で見え難い色は、茶、黒、青、紫であり、見え易い色は、黄、白、オレンジの

順番である。

赤ん坊は赤色を強く認識するので、赤ん坊の玩具は赤色を基調に作られている。

老人性白内障に罹ると水晶体が黄色く濁り、波長の短い青色緑色系統の色は黒っぽく見え

るようになる。この為老人はガスコンロの青い炎が見え難く、火傷や火事を起こし易い

・反対色性

光(色光)の混合おいては、赤(橙赤)と青によってマゼンタなどの紫を得られ、赤(橙

赤)と緑を混ぜると黄を得ることが可能である。このとき、紫には元の赤味も青味もあ

るが、黄においてこの印象は寡少である。黄には元の色彩(赤、緑)がないと主張する

人がいる。然しながら、現実に得ら得る黄は赤気味であったり緑気味であったりする。

赤気味でも緑気味でもない「理想の黄」が現実に得られるとは断言できない。また、黄

と青から白を作る場合も、元の色味が極度に減じる。このような色味を打ち消しあう性

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質を反対色性、色自体についてはもう一方の色の反対色、これを補色という。ただし補色

という語は厳密な反対色を意味しない場合が多い。

反対色性は網膜から大脳へ効率的に色情報を伝達しようとする為に生じると考えられて

いる。なぜなら、それぞれの色は錐体応答間でも高い相関があるからである。その為、

相関が低くなるよう線形変換し、冗長性を低減している。

・心理的補正

以上、人間が光線の波長そのものを知覚しているのではなく 3種類の錐体の出力比を知覚

していることを述べた。しかし、実際にはこれに更に心理的な補正が加わる。

太陽光と異なる波長分布を持つ照明下でも脳が「白色である」と考えるものは白色と感じ

られる。例えば、白熱灯の波長分布はかなり赤に偏っているが、白熱灯の照明下でも白い

紙は白く見える。これは心理的な補正が働く所以である。

太陽光と同じ波長分布の光が最も自然な白色とされるが、それより青成分の強い光を「爽

やかな白」と感じる者が多い。そのため、世の中のモニタ上に表現される白色は純白よ

り青味が強い色になっている。そのような青味の白も度が過ぎない限り、平時から白を

吟味していないような人(多くの人)の眼には「青」でなく「爽やかな白」と感じられ

る。

白以外の色も心理的な補正を受ける。夜間など十分な光の得られない環境では錐体の機能

特に赤錐体の機能が低下する。その為夜間には赤と黒の識別が困難になるのだが、その

ような環境にあっても赤色であると知っているものは赤く見える場合がある。例えば、

林檎を黒く塗ったものを暗い環境下で見せると、赤く見える、といったことが起こる。

太陽光線の波長分布は季節や時刻によって異なる。また、周囲に反射した光によっても影

響される。例えば周りが青い物ばかりならば反射光によって環境光は青みが強くなる。

だが、周囲の色に引きづられて物の色が違って見えては困る。先述の補正の働きは、そ

のような場合でも出来るだけ一定の色覚を保つ為に発達したとの考えは、ある自然さを

持っている。但し、この補正にも限度があり、極端に偏った波長分布では補正しきれな

い。

・色彩心理

暖色系の色は時間を長く感じさせ、寒色系の色は時間を短く感じさせる。

色によってその物体の重さも違って感じられる。同じ重さ・形の物体でも、黒い物体は

白い物体より 1.87 倍重く感じたという実験がある。

ロンドンのテムズ川にかかる橋『ブラックフライアブリッジ』は自殺の名所であったが、

色を黒から緑に変えた所、自殺者が 1/3に減った。

けばけばしい色を避けたがる人間の性格を利用して、イギリスの公園は遊具周辺が派手

な色で塗られている。遊具目当ての子供であれば気にしないが、大人には心理的障壁と

なる様な色使いで、変質者が子供に接近することを防ぐという狙いがある。

子供部屋を黄色にすると,知能指数が高い子供が育つという説がある。

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・人間以外の生物の色覚

脊椎動物

色覚を持つものが多いが、色覚が弱いものや、全く持たないものも少なくない。

哺乳類

哺乳類の多くは 2色型色覚か、色覚を持たない(実は色覚を持っているがその感度が低い、

というものも多い)。哺乳類の祖先である古代の爬虫類は 4色型であったが、中生代の哺

乳類は夜や暗い所で活動することが主であったため、わずかな光でも見えるよう桿体細

胞が発達し、その代わりに 2色型色覚になったり、色覚そのものを失ったとされる。従来、

偶蹄目(ウマ、イノシシなど)は色盲とされていたが、現在では 2色型色覚を持つことが

判明している。もっとも、2色型なので赤から緑にかけての色を見分けるのは難しいよう

である。また、食肉目(ネコ、イヌなど)も同様に色覚を持つことが近年分かったが、

その感度が弱いためにあまり利用されてはいないと考えられている。

哺乳類の中でも、狭鼻猿類(ヒトのほか、チンパンジー、オランウータン、ニホンザル

など)は 3色型色覚を有する。哺乳類が本来あった 4色型色覚のうち 2種の視物質を喪失

した後に、赤錐体の特性を僅かに変えることで緑錐体を得て、一度失った 3色型色覚を再

獲得したものと考えられている。このため、赤錐体と緑錐体の特性の違いの少ない歪な 3

色型色覚ともいえる。再獲得してからの歴史の浅さを反映して、同じ種内でも 3色型色覚

の個体の他に 2色型色覚の個体(色覚特性、色覚異常)も少数混じる。それはヒトにおい

ても決して少なくなく、男性では約 5%、女性でも約 0.3%、全人類人口のうちの約 2億人

が、多少なりとも色覚に特性上の問題(色覚特性、色覚異常)があるとされる。

鳥類

鳥類では色覚が、種や雌雄の識別、さらに餌を探すときなどに幅広く役立てられている

ようである。これは、色彩が豊かなものや、雌雄で著しく外見が異なるものが多いこと

からも容易に想像できるであろう。爬虫類由来の 4色型色覚を持ち、人間でいう紫外線の

領域まで認識できる。

カラスもまた 4色型色覚であるが、主に活用している特定の波長を遮断することで中身を

カラスに見えなくし、ゴミが荒されないようなゴミ袋が開発され、一部自治体で採用さ

れている。これは黄色の半透明だが、黄色の袋であれば何でも効果がある訳ではない。

爬虫類

哺乳類や鳥類へ分岐した過去の爬虫類は一般的に 4色型色覚を持っていたようだが、現在

の爬虫類では 3色型や 2色型、色覚を持たないものもいる。一部の亀にとっては独立した

光が 4つ存在しており、四色性である。この亀が持っている光受容器は広い範囲の波長を

一様に吸収できるようになっている為、細胞自身に波長を区別する能力はない。しかし、

特定の光が透過できる 4種類の油で被膜している為、色を区別できる。

両生類

色覚を持つものが多いが、一方で持たないものも多い。

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魚類

硬骨魚類では一般的に 3色型の色覚を持つ。

節足動物

昆虫のほか、エビやカニなどは色覚を持つと認められている。

昆虫

一般的に色覚を持つが、アリやカマキリは色覚を持たない。

蜂は黒色の物体に対して攻撃的になる。

蚊は黒色を好む。

蟻は白色の物に集まる習性がある。

・構造色

光の波長或いはそれ以下の微細構造による干渉や回折、散乱により物体が色付く現象を構

造色と呼ぶ。構造色として有名なものに、モルフォチョウ、カモの羽根、宝石のオパー

ルなどがある。

・色覚の共有

同じ波長の光を受けた場合でも、それをどのように知覚するかは人それぞれの目と脳の

相関関係によって異なるので、複数の人間が全く同一の色覚を共有しているわけではな

い。

しかし、知覚した色をどのような色名で呼ぶかは学習によって決定される事柄であり、

例えば緑色の絵の具を見て二人の人間が異なる知覚を得たとしても、二人ともそれを

「緑」と呼ぶので、色覚の違いは表面化しない。

色覚の違いが表面化するのは、異なる色を区別できない場合や、区別することが困難な

場合であり、そのような状況を色覚特性、色覚異常(色覚障害)と呼ぶ。 近年はバリア

フリーが叫ばれているが、色覚特性に配慮した動きはまだ一部に留まっている。

NPO法人 カラーユニバーサルデザイン機構(日本):CUDO

Color Universal Design Organization (カラーユニバーサルデザイン機構)、略称 CUDO (クド

ー) は、社会の色彩環境を、多様な色覚を持つ様々な人々にとって使い易い状態に改善し

てゆくことで、「人にやさしい社会づくり」をめざすNPO 法人である。

W3C は、HTML の色使いは色盲・色弱に配慮したコントラストを保つべきだとして綱領

を出している。

色の組み合わせチェック - 読みやすい前景色と背景色

HTMLは 16777216色が表現出来るが、環境に依って見え方は左右される。256色環境で

Windows とMacintosh に共通する 216色のことをWebColorと言い、この 216色は見え方が

環境の違いに左右され難い為、使用が推奨されている。

・文化における色

一般に、色は、デザインや視覚芸術上の重要な要素であり、ある「様式」「作風」「文

化」の特徴の一つに、特定の色の使用、特定の色の組み合わせ、色と結び付いた意味など

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が含まれている場合も多い。

・バーリンとケイの基本色名

あらゆる文化には、RGBや CMYとは異なる、それぞれの文化的な原色がある。それは

その文化の背骨となっている言語の中での、最も古い色名から辿ることが出来る。その

ような色名は基本色名と呼ばれる。 特別な名前が付けられた色や、また名前の付けられ

ていないような色もあるが、それらは全て基本色名で言い換える事ができる。例えば、

「蘇芳色(すおういろ)」は基本色名の「赤 (紅)」と言い代えることができ(ソクラテス

の言葉より)、空の色や海の色などをまとめて「青」と呼ぶことができる。

しかし、中間色がどの基本色名で呼ばれるかは文化によって大きく異なる。例えば、英

語の「yellow」は「ocher」(黄土色や茶色、褐色に近い色)を含んでおり、日本語の

「黄」よりも範囲が広い。また、漢字を使う地域(日本など)やマヤ文明の『青』は

「green (緑)」、「turquoise(緑青:みどりあお、青緑:あおみどり)」、「blue (青。紫青

(或いは、紺))」が混同されているが、他の言語において混同はない。

このような研究を最初に行ったのは文化人類学者のバーリンとケイであり、二人は 98種

の言語を比較し、言語によって基本色の数は異なること、基本色が対応する色の範囲が異

なること、言語の進化によって次第に基本色が分化し増えてゆくことなどを見出した。

また心理学者エレナは、基本色名に対応する色の中でも、その焦点となる色(例えば、

「赤の中で最も『赤』らしい色」)は文化に拠らず共通する原型色が存在する事実を突き

止めた。焦点の存在はヒトの色の認識機能に関わる先天的な要因であり、基本色名に対応

する色範囲の違いは文化など後天的な要因であると考えられる。

バーリンらによると、最も基本色名が少ないのは二色であり、「白」「黒」である。そ

のような文化における言語に依る色の区分においては、全ての色は白いか黒いかにのみ

よる。次いで第三に「赤」が加わり、第四に「緑」が加わる。その後の過程は言語によっ

て異なるが、「白」「黒」「褐」「赤」「橙」「黄」「緑」「青」「紫」の 9種類の色が

共通して基本色名に表れるとされる。なおこの 9つの色は中国では「九色」と呼ばれ、特

別な意味付けがされている。また、この 9色から白・黒・褐を除いた六色は、虹の色でも

あるが、文化によって虹を何色とするかは異なる(虹の項目を参照のこと)。ロシア語

の基本色名は最も数が多く、12色である。これは暗青 синий と水色 голубой を区別する為

である。

また、色名が存在する・しないことと、その色を他の色と区別できる・できないことと

は関係が無い。実際にドニ族の言語では色名が「黒(;暗い)」「白(;明るい)」しか

存在しなかったが、認識実験の結果では色を識別する能力には何ら問題が無かった。但し、

色名が少ないということは、普段の生活で色を細かく区別して考える必要のない文化で

あることの証左ではある。このように、色の認識に関しては後天的要素よりも先天的要

素が上位に位置する。この、認識の可能不可能と名詞の有無の関係は「言語が思考を規定

するか」という問題と密接に関わっている(サピア・ウォーフの仮説)。

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・日本語の色とその語源

現代の日本語において基本色名と言える色は、上述のバーリンとケイによる報告では九

色に灰色・桃色を加えた 11色である。しかし、彼らの定義に従えば、複合語、外来語、

物質・植物・動物などに由来する色名は基本色名ではない。それゆえ、厳密には「赤」、

「青」、「白」、「黒」が基本色名になる。英語でも pink, orange は植物由来、purple は

ラテン語由来である。 日本人が一般に基本的と判断する色には、黄緑色や水色なども含

まれる場合が多い。子供向けの 12~16色程度の色鉛筆やクレヨンの一式でこれらの色に

馴染みがあることが原因だろう。具体的には「白」「灰」「黒」「茶 (褐)」「赤 (紅)」

「桃」「橙」「黄」「黄緑」「緑」「水」「青 (紫青)」「紫」などが挙げられる。また肌

色に関しては、肌色という語が日焼けしていない日本人の肌の色のみを指すものではな

い、という理由で別の名前に変えられている場合がある。

古代から存在する色名は、上記の「アカ (赤)」「クロ (黒)」「アヲ (青)」「シロ (白)」の

4色である。他の色は、鉱物・植物名などからの借用が多い(簡単な区別法としては、

「○○色」を「○○の色」というように分割できないものが古い、と言うことができ

る。)。

古代から在る色が上記 4色である事実は現代日本語においても、その使い方の中に見られ

る。この 4色は、「アカい」「アヲい」「シロい」「クロい」などのように〈色名+

“い”〉で使えるが、黄は「黄色い」・茶は「茶色い」というように〈色名+“色”+“い”〉と

する必要がある。言葉として熟れていない為、この「黄色い」・「茶色い」、特に「茶色

い」に違和感を覚える人は、地域・年代によってはかなりの数が存在する。また、緑や

紫では「緑色の」や「紫っぽい」などの表現を用いる必要がある(方言などでは「黄ぃ

い」「黄ぃない」「緑い」といった言い回しをする人も居る)。

それぞれの語源は、以下の通りとされる。

アカ(赤)

「アケ(朱)」「ア(明)ける」「アカ(明)るい」と同源で、夜が明けて明るくなると

いう意味から色の赤に転用されたもの。

クロ(黒)

古くは玄の字が多く使われた。「ク(暮)レる」「クラ(暗)い」と同源で、日が暮れて

暗くなるという意味から色の黒に転用されたもの。その際、母音交替(a→o甲)を起こ

しただけでなく、アクセントまでも高起式から低起式に変化しているのは後述のシロと

共通している。染料のクリ(涅。水底の黒土。クロと同様低起式)は意義分化に伴ってア

クセント変化を遂げた後にクロから生じたものらしい。

アヲ(青)

植物名で染料名でもある「アヰ(藍)」と同源。後述する「シル(顕)し」の対語で、は

っきりしないという意味から色の青に転用されたものという。

シロ(白)

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「シル(知)」「シルシ(印)」と同源で、はっきりした様を表わす「シル(顕)し」が、

色の白に転用されたもの。その際、u→o甲(詳しくは上代特殊仮名遣参照)に母音交替

したのみならず、アクセントまでも高起式から低起式に変化しているのは注目される。

文化の原色がこの 4色であることから、古代日本語では、明るい色はアカ、暗い色はクロ、

はっきりせず曖昧な色はアヲ、はっきりした色はシロと呼ばれていたと思われる。 これ

らはマンセル・カラー・システム等における明度、彩度の概念を想起させるが、現代に

おいて「赤」と呼ばれる色ははっきりした(彩度が高い)色であり、「白」と呼ばれて

いる色は明るい(明度が高い)色であることから、赤と白の間で言語の逆転が起こった

と思われる。

語源からも分かるように、原始日本語においてはクロの対義語はシロではなくむしろア

カであったと判断されるが、奈良時代には既にシロ甲/クロ甲のようにロの母音が同じ

ロ甲類音になっており、シロとクロが対義語として捉えられるようになっていたようで

ある。「白黒はっきりさせる」などのように、或いは警察関係の隠語でシロ・クロとい

うように、シロがクロに対置されるようになった経緯については様々な意見が見られる

が、「クラさ」に対する「アカるさ」が、「事物を明瞭にシルことができること」とし

て意味が移り変わっていったことや、中国から入ってきた五行思想の色彩観の影響が理

由として挙げられている。

ミドリ(緑)の語源ははっきりしないが、アクセントからは「ミヅ(水)」と同源では

ないかというのが有力(芽ではアクセントが合わない)である。「みどりの黒髪」とい

う言い回しがは、『みずみずしさを感じさせる艶のある黒髪』の意で、おかしな表現で

はない。 日本文化の四原色の中で「ミドリ」は「アヲ」の中に属するが、これは概念の

問題に過ぎず、古代日本人が現代でいう緑(green)と青(blue)を区別する能力を持たな

かったことを意味しない。

ミドリ(緑、green)をアヲ(青、blue)の一部とする用法は広く残っている。また、ミド

リをミドリとせずアヲと呼ぶ色彩観も方言などにおいては残っており、地方によっては

今でもミドリ系統の色を含めてアヲと呼ぶ。また、中国語や朝鮮語でも、ミドリとアヲ

を混同する傾向がある。漢字の「青」も、「緑」と「青」が混同されており、実際には

「緑」を意味する単語が多い。 また、その色彩観は、少なくとも近代まで、日本文化・

政治にも存在した。「青信号」という単語がその証明で、歩行者・自動車信号は法令によ

り「緑色信号」(green light)として定められ、実際にも現代人が「ミドリ」と感じる色

彩が用いられているにも関わらず、俗に「あお信号」と呼ばれ、そのまま定着した。現

在では法令の方が『実情に合わせて』改正され、「青信号」となった(更に、現在の緑信

号は、赤緑色弱者に配慮し、青緑となっている。また、緑ではなく、実際に青い「青信

号」も登場している。)。尚、現代の中国では、「青信号」を「緑灯」と言い、「緑」と

「青」を区別している。

キ(黄)はコガネ(黄金)のように複合語の形ではコという語形を取ることから、同様

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に複合語でコダマ(木霊)・コノハ(木の葉)という語形を取るキ(木)と同源の可能性

が疑われる。但し、両者のアクセントは合わないので、その場合は先述したシル(顕)

→シロ(白)、クラ(暗)→クロ(黒)と同様に意義分化に伴ってアクセント変化を遂げ

たものと解釈するしかない。

ムラサキ(紫)、チャ(茶)などは染料の名からの借用、ハイ(灰)はその名の通り灰

の色である。

・色に対する一般的な印象

色彩は様々な感情を表現したり、事物を連想させることがある。 国や文化などによって

違いはあるが、一般的な印象は次のようなものである。

善(主にキリスト教圏)、雪、無、清潔、純粋、無罪 など

悪(主にキリスト教圏)、死、男、武勇、汚濁、夜、有罪、無 など

褐(茶色)

土、豊穣、糞 など

血、生、火、力、女、情熱、危険、熱暑、太陽(日本)など

温暖、快活 など

太陽、穀類、金、注意、臆病、色欲(中国) など

植物、自然、安全、幼稚、真面目、嫉妬(英語圏)など

水、冷静、知性、憂鬱、寒冷 など

王位、高貴(中国)、貴重、神秘 など

神、宝、光、命 など

職種、階層、貧富を言い表す際にも色が用いられる事がある。例:ホワイトカラー(事務

職)・ブルーカラー(肉体労働職)、ブルーブラッド(貴族・首筋が日焼けせず静脈が見

える人間)・レッドネック(首筋が日焼けした屋外労働者・アメリカ南部者)・ホワイト

トラッシュ(貧乏な白人(レッドネックが白人の男を指すのに対し、こちらは女を限定

して指すこともある))

カラーギャングはそれまでのギャングと違い、互いの対立を色で示しあっている。

・政治における色

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政治の世界においては、色が特定の政治的な立場を現すことがよくある。

赤は、左翼・社会主義・共産主義を形容する色としてよく使われ、党派的にも容共で政

府・資本家に反く側を表す。一説には、1848 年革命 やパリ・コミューンの時に、革命軍

が掲げていた三色旗が血に染まって赤くなったから、左翼的立場を形容するのに赤を使

うようになったとされる。

白は、右翼・反共主義を指す色として使わる。反共で政府・資本家に親しい側(資本主義

など)を指す。フランスの王党派が使い始めたのが最初で、フランスのブルボン家の白

百合紋章に由来する。以来、反革命軍は白旗を目印として、右翼的立場を形容するのに白

を使うようになった。

黒も、右翼・反共主義を指す色として使われる。反共だが政府・資本家に反く側(ファシ

ズム)を指し、白と区別される。日本では天皇の臣下を意味する色として利用される事

があった。ベニート・ムッソリーニのファシスト党は制服の色として使った。

青は、保守主義を形容する。

黄は、労資協調主義や自由主義・リベラル派を形容する。御用組合は俗に「黄色組合」と

も言われ、黄色は容共かつ政府・資本家に親しい党派を表す。

緑は、環境保護派や「緑の党」を形容する色として広く使われている。宗教ではイスラ

ム教を象徴する事から、イデオロギーではイスラム原理主義を形容する使い方がある。

褐(茶色)は、独裁主義やナチズムを形容する。これは、ナチ党の突撃隊(SA)の制服

に因む。

ヨーロッパなどでは三色の縦縞または横縞の国旗が多いが、これらの色にも意味を持た

せている。例えばフランス国旗では青=自由、白=平等、赤=博愛の意味があり、国家の

在り方を色で示している。

・商業における色

日本では、JAPAN FASION COLOR AUTHORITY (JAFCA)が毎年流行色を決めている。

自動車業界では緑色は不人気色なので、一般的に中古車として買い取られる場合、他の色

より値が下がると言われている。ただし、デミオのように緑色がよく売れた車種も存在

する。

玩具業界では、黒い玩具は売れない、と言われていたが、ダッコちゃん人形がそれを破

った。

コンシュマーゲーム業界では、黒色の据え置きハードは売れない、と言われていたがプ

レイステーション 2 がそれを破った。

レゴブロックは、子供が兵器の模型を作って遊ばないようにと緑のブロックを極力作ら

なかった。

・コーポレートカラー

企業や団体等の組織を象徴する色をコーポレートカラー(Corporate Color)と言う。

・看板・標識

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商業看板では色がもつ生理的反応や印象を利用してコーポレートカラーと同様の効果を期

待した色や組み合わせを用いることが多い。茶色やオレンジ色の組み合わせは体温を上

昇させ食欲を増す色とされる。飲食業にあっては、遠くから識別させる目的の商業看板

では黒・オレンジ・茶の各種組み合わせが取り入れられている。 視神経はアルコールが

入ると赤色に敏感になる為、居酒屋は赤提灯を下げている。

トンカツ屋:茶色の背景に白抜き文字。

牛丼屋:橙の背景に黒文字。

喫茶店:焦げ茶。

各国料理:フランスに代表される三色旗から各国の料理を指す場合に用いられることが

多い。一般にトリコロール(仏:Tricolore、赤・白・青)はフランスを指すが、イタリアの

赤・白・緑、アイルランドの橙・白・緑の組み合わせも、同様の用いられ方をする。

ガソリンスタンド:赤

コカ・コーラ:赤の背景に白文字。

マールボロ:紅白のツートンカラーで、米国のタバコ会社のコーポレートカラー。マー

ルボロ・カラーとも言われる。

ロボットアニメのロボット:1980 年頃以前は青・赤・黄がロボット三原則に引っ掛けて

「ロボット三原色」と言われ、玩具において子供に訴えかける印象が強いと考えられ必

須のものとされていた。逆に子供に不人気な色は緑であり敵方ロボットに多く使われた

が,機動戦士ガンダムのザク等ではかえって実在の兵器に近い重厚感を醸しだし,人気

の一因となった。

清涼飲料水:白地に青。1980 年 に大塚製薬が「飲む点滴液」として開発し発売したポカ

リスエットは既存のスポーツ飲料と差別化を図り、清涼飲料水としては前例のない色調

を使った。色の専門家の多くは販売戦略上は不向きと予測したが企業戦略により新たな分

野を開拓し、水分補給の色として確立・定着させた数少ない事例。財団法人ハイライフ研

究所

工事現場・バイオハザード・放射能等の危険区域:黄と黒の二色一組。警戒色も参照。

非常口:緑と白の二色一組。

鉄道会社におけるラインカラーについては日本の鉄道ラインカラー一覧を参照。

加法混色と減法混色画像は、2次元平面上に描かれた絵を指す。画像には静止画 (静止画像) と動画 (動画像) と

があるが、動画像は映像と呼ばれること

が多く、この項目では静止画像について

記述する。

コンピュータ上の静止画像はデジタルカ

メラの写真や、コンピュータグラフィッ

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クスなどから生成されたものがあり、自動的、半自動的な画像処理や画像認識に向くとい

う特徴がある。また、コンピュータ上の画像は複製が容易で、著作権が犯されやすい。

画像の色を合成する方法には加法混色(透過光の三原色)、減法混色(反射光の三原色)

などいくつかがある。また、コンピュータグラフィックスのデータ形式はラスタ形式と

ベクタ形式とに大きく分けることができる。日本国内において通常「画像」と呼ぶ場合、

画素単位の情報を保持するラスタ形式を指す。ベクタ形式のイメージは「図形」と呼ばれ

ることが多い。「image=画像」という翻訳は必ずしも適切でない。

・加法混色(透過光の三原色)

普段われわれが見ている光は、実は複数の色の光が混ざったものである。その光の成分

は足し算や引き算をすることができる。異なった色の光を重ねて別の色を生み出すこと

を加法混色という。光は赤・緑・青の三色を光の三原色としている。例えば、赤・緑・青

の光を均等に混ぜたときに生じる色は、各色の波長の反射率が均等な大きさになるため、

できる光は白となる。この原理を用いた表色系を RGB表色系という。カラーテレビは、

光を画面に投影する方式をとっている。テレビ画面の素子に注目すると、赤・緑・青のた

て縞が見える。カラーテレビはこの三色の強度を調整しながら色を表現していることが

わかる。

・減法混色(反射光の三原色)

色は物体固有の分光反射率、つまり各色の光に応じた反射率によって決まり、反射した光

が目に届いて色がついていると感じる。つまり、光がある物体に当たったとき、その物

体から反射される光が物体の色として感じるのである。これは、物体が光から特定の波

長を奪うフィルタのようなものといて考えることができる。たとえば、赤色紙では赤の

波長領域をよく通すフィルタと考えることができるのである。このような考えでいけば、

様々な色をもつ物体を混ぜるとそれぞれのフィルタを光が通ってくるのと考えられるの

で、光の波長成分が減少してき、残った光の波長成分だけが現れる。このような混色を減

法混色という。減法混色では赤・黄・青の三色を色の三原色としている。詳しくはマゼン

タ(ピンクに近い色)・イエロー・シアン(水色に近い色)と呼ばれている。たとえば、絵の

具を混ぜ合わせることによりそれぞれの中間の色が表現できる。赤と黄を混ぜれば橙に

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なり、黄と青を混ぜれば緑を示す。このことを減法混色という。

・混色実験の説明

-加法混色

1.懐中電灯にフィルタを取り付け、赤・緑・青の光の出る懐中電灯を作る。

2.色の白い壁に各懐中電灯を当てて、光を重ねてみる(周りが暗いとなおよい)。

3.水を加えてから、混ぜ棒で少しずつ溶かしていく。

-減法混色

1.プラコップと混ぜ棒を用意する。

2.各絵の具を少量だけプラコップに取る。

3.水を加えてから、混ぜ棒で少しずつ溶かしていく。

4.各水溶液を一つのプラコップに少しずつ加えていく。

5.加えていくことにより色がどのように変化するか見てみる。

どうして物には色がついているの?

(1) 色の出る理由1

 われわれのまわりにあるあらゆる物は光によって、その物の色がわかる。しかし、な

ぜ光が物に当たることにより色が出るのだろうか?

 それは物が光を反射するからである。しかし、ただ光を反射するというわけではなく、

物それぞれの性質におうじた反射をする。それをわかっておくことが重要である。

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(2) 色の出る理由2

 では物はその性質におうじた反射をすることがわかった。では、そうすることによっ

てどういう光になるのであろうか。

 物に当たった光のうち、ある光は物に吸収され、ある光は反射する。そうなることに

より違った光になる。ということは、色が違って見えてくるということである。例えば、

懐中電灯をのぞくと、白い光が見える。これは、出てくる光そのものである。それが、

りんごに当たると、りんごは赤く見える。つまり、りんごは白い光のうち、ある光を吸

収して、他の光は反射して、その反射した光が私達人間の目では「赤」と見えるのであ

る。

(3) 色の出る理由3

 違った光になるとはどういうことなろうか。上述の通り、違う色に見えるということ

なのであるが、それだけでは理由にならない。光のことを詳しく見ていくと、光は波を

うつ性質を持っている。この波のうねりの間隔を波長という。

 われわれ人間の感じる色は、光の波長におうじて変わる。人間が見ることのできる光

は「可視光」といい、可視光の波長域はおよそ 380~780nm(ナノメートルと読む。非常

に短い長さの単位である)である。このことを理解する必要がある。

(4) 色の出る理由4

 先ほど出てきた波長域、 380 ~ 780nm には、 780nm 辺りが赤い光で、以 下橙、

黄、・・・と虹色が並び、380nm辺りが紫の光というふうに並んでいる。白い光をプリズ

ムと呼ばれる三角形のガラスに当てると、この様子がよくわかる。白い光は、実は色々

な色の光が集まってできているものなのである。逆にいえば、プリズムから出てきた光

の帯は白い光の正体である。

 もちろん、白い光にかぎらず他の色の光でも同じ事が起きる。たとえば赤い光でも同

じようにいくつかの光の帯ができるが、白い光の帯と比べて緑や青の帯が見えにくいは

ずである。「緑の光」や「青の光」より「赤の光」が強いと、赤系統の光になる。

(5)色の出る理由5

 「赤の光」が強いと赤系統の光になる、これはあたりまえなようでとても重要なこと

である。われわれの身のまわりにある赤い光はどれも「赤の光」が特に強いのである。

そして、われわれの身のまわりにある赤い物は、「緑の光」や「青の光」を吸収して、

「赤の光」は反射している。この反射された「赤の光」だけが目に届くので、赤く見え

るのである。

・身近にある色々な物の色のしくみ

赤や黄色の紙、赤や黄色の絵の具、りんご、バナナ、鉄のさび、・・・

 ⇒光が当たったとき、赤や黄色の光だけを反射します。他の色は吸収される。

白い紙、白い絵の具、ごはん、白熊、雪、・・・

 ⇒光が当たったとき、どの光もまんべんなく反射(乱反射)する。

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黒い紙、黒い絵の具、黒豆、カラス、鉛筆の芯、・・・

 ⇒光が当たったとき、どの光もまんべんなく吸収する。

透明なガラス、空気、水、・・・

 ⇒光が当たっても、吸収も反射もあまりせず通過してしまいます。表面が粗いと白く

見える。

色付きのガラス、セロハン、紅茶、・・・

 ⇒特定の光は通過しますが、他の光を吸収する。

蛍光灯の光、太陽、カメラのフラッシュ、・・・

⇒可視光の光をまんべんなく出している。

青色発光ダイオード、ナトリウムランプ、夜空の星、蛍の光、・・・

⇒可視光の光のうち、特定の光のみ、あるいは特定の光をより多く出している。

金色、銀色、鏡、その他金属

⇒当たった光を表面で強く反射します。表面がなめらかなほど正しく反射します。表面が

粗いと乱反射となり、白っぽくなる。

テレビやパソコンの画面、液晶画面

⇒赤・緑・青の小さな光源「素子」が

ぎっしり並んでいて、それぞれの光

の強さを変えて様々な色を表現して

いる。

虹(赤・橙・黄・黄緑・緑・青・紫)

⇒白い光が分裂して波長の長さの順

に並んで見えている。このとき見え

ている光はいわば白い光の正体であ

る。

色の混合と補色たとえば、いま紫のアジサイの水彩

画を描いているとしよう。ところが、

手元には紫色の絵の具がなった。こ

んなとき、あなたならどうしますか。

絵の具を買いに行く、青いアジサイ

に変更する・・・など、いろいろ考

えられるが、選択肢の 1 つとして

「紫色をつくる」というのもある。

紫色をつくるのは簡単である。赤色

の絵の具と青色の絵の具があれば、この 2つを混ぜてできあがりである。でもなぜ、赤

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と青を混ぜると紫になるのであろうか。ここでは、色を混ぜるという「混色」の原理を

説き明かしてみる。

 混色法にはいくつか種類があるが、 まずは「加法混色」から説明する。

 これは光を混ぜたときの話である。絵の具を混ぜる場合とは状況が異なるので注意し

て頂きたい。絵の具の代わりに、ここではカラーテレビのブラウン管を例にとって考え

てみる。ブラウン管には赤・緑・青の 3つの小さな点が 1つのかたまりとして無数に並ん

でいる。この赤・緑・青の 3色の明滅具合によって、いろいろな色が再現される。これら

の色は何かに反射したものではなく、それ自体発光している「色光」である。このよう

に色光どうしが混ざり合う場合を加法混色と言う。 これは、同時加法混色とも呼ばれる。

 ブラウン管に代表されるよ

うな「赤・緑・青」の 3色が

加法混色における三原色(色

光の三原色)になる。三原色

はとても重要な色である。こ

の 3色を混ぜ合わせることで

いかなる色もつくり出すこと

ができるのである。逆に三原

色自体は、混色によってつく

り出すことが不可能という性

質を持っている。なお、三原色は正確には「黄みの赤」「緑」「紫みの青」である。それ

ぞれの英語「Red」「Green」「Blue」の頭文字をとって、RGBとも呼ばれている。

 実際に混色すると以下のようになる。

   黄みの赤(Red) R

   緑(Green) G

   紫みの青(Blue) B

   黄(Yellow) Y=R+G

   緑みの青(Cyan, シアン) C=G+B

   赤紫(Magenta, マゼンタ) M=R+B

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   白(White) W=R+G+B(=Y+B =C+R

=M+G)

 三原色すべてを混ぜると、すなわちすべての波長域の光が合わさると白になることは、

すでに学んだ。三原色のうち 2色のみの組み合わせだと、それぞれ上のような黄・緑み

の青(シアン)・赤紫(マゼンタ)になる。これらの 3色も重要な色で、詳細は後で述べ

る。。

 これを 1つにまとめると下の図のようになる。加法混色は色光の混ぜ合わせなので、色

が混ざるほど明るさも増す。すなわち、中央の白色が一番明るくなる。このように、色

を混ぜれば混ぜるほど明るさがプラスされていく(加法)ので、これを加法混色と言う。

 加法混色の例としては、先に述べたカラーテレビのほかに

LED(発光ダイオード)を利用した表示装置などが挙げられる。

 よく駅や空港で LEDの案内板を見かけるが、一般的に赤・

オレンジ・緑の 3色が使われている。しかしこれはブラウン管

のように、赤・オレンジ・緑色それぞれに光る LEDが並んで

いるのではなく、1個で赤色にも緑色にも光る 2色発光の LED

が使用されている。この LEDは、電流の流れ方によって赤色

発光、緑色発光と色を変えることができ、さらに赤色・緑色が同時に光るように電流を流

すと加法混色によってオレンジ(黄)色の光がつくり出されるのである。このように加

法混色の原理を応用することで、少ない基本色から多くの色をつくり出すことができる

 さらに近年、難しいとされてきた青色

LEDが実用レベルになった。これは大変画

期的なことである。なぜなら、従来からあ

った赤色・緑色とともに LEDとして色光の

三原色すべてが揃ったことになり、LEDで

フルカラーを表現できるようになったので

ある。実際に、街中のオーロラビジョンは

もとより、駅の出発案内なども多彩な色表

現ができるものをよく見かけるようになっ

た。このように、三原色というのは色の 1

つに過ぎないが、あるとないとでは大違いのとても重要な色なのである。

 次に、減法混色の三原色について説明する。加法混色の三原色は赤・緑・青(RGB)で

ったが、減法混色における三原色は「緑みの青(シアン)」「赤紫(マゼンタ)」「黄」

である。では、絵の具を例にして考えてみる。たとえば、キャンバスを彩る黄色い絵の

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具の色。われわれは、光源(太陽や蛍光灯など)の光が絵の具に当たって反射したもの

を黄色と感じている。黄色は中波長と長波長の光が混色されてできる色である。つまり、

黄色の絵の具は短波長(青に見える部分)の光を吸収してしまう性質を持っている。

   短波長の光を吸収して黄に見える

 同様に、シアン色の絵の具は長波長の光、マゼンタ色の絵の具は中波長の光をそれぞ

れ吸収します。言わば特定の波長の光を吸収するフィルタのような役割を持っているの

です。

   長波長の光を吸収して緑みの青(シアン)

に見える

   中波長の光を吸収して赤紫(マゼンタ)に

見える

 では、これらの色を混ぜるとどうなるであろうか。絵の具を混ぜるということは光を

吸収するフィルタを重ね合わせるわけであるから、吸収される光の波長領域が増える。

黄とマゼンタを混ぜると短波長と中波長の光が吸収されるので、長波長の光しか反射さ

れない。その結果、赤色に見えるのである。

   マゼンタ+黄=黄みの赤 (M+Y=R)

   シアン+黄=緑 (C+Y=G)

   シアン+マゼンタ=紫みの青 (C+M=B)

 三原色すべてを混ぜるとすべての波長領域の光が吸収されるわけであるから、原理的

には黒になる。

 これを 1つにまとめると下の図のようになる。実は、減法混色は加法混色と裏表の関係

にあることが分かる。減法混色は言わば光を吸収するフィルタの重ね合わせなので、色

が混ざるほど明るさが低下する。すなわち、中央の黒色が一番暗い(原理的には光のな

い)状態である。このように、色を混ぜれば混ぜるほど明るさがマイナスされていく

(減法)ので、これを減法混色と言う。

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減法混色      加法混色

 加法混色の例としては、先に述べた絵の具のほかにカラー印刷のインクなどが挙げら

れる。インクジェットなどのカラープリンタを持っている人なら、シアンやマゼンタと

いう色名はすでに知っているであろう。プリンタの中には、三原色が並んだインクカー

トリッジが入っているはずである。ところで、加法混色では三原色を RGBと呼んでいた。

印刷の世 界では、これに対して減法混色の三原色シアン( Cyan)、マゼンタ

(Magenta)、イエロー(Yellow)の 3色にブラック(blacK)を加えて「CMYK」と呼ん

でいる。

下の 2つの図を見てく頂きたい。左の図は、黄色と緑色のマスが交互に並んでいる。右の

図も、よく見ると黄色と緑色のマスが交互に並んでいるが、マス目がとても小さいので、

離れてみると混ざり合って黄緑色のように見えてしまう。これを「並置混色」と言う。

これは、目の網膜で個々の色を区別することができなくなり、ひとつの色として知覚し

てしまう現象である。

     

 点描画による印象派の絵画も、並置混色の応用例である。

 次は「回転混色」である。下のように、黄色と緑色に塗り分けられたコマを回転させ

ると、黄緑色になる。これは黄色と緑色が高速で交互に入れ替わるため、目の網膜がこ

れに追いつかず、ひとつの色に見えてしまうのである。

 このように、並置混色や回転混色は網膜上で混色されるという性質がある。もちろん、

どんなに細かく並んだマスも顕微鏡で拡大すればきちんと色の区別ができる。回転する

コマも、止めてしまえば色の区別ができる。

 並置混色も回転混色も、混色の結果つくり出される色は加法混色と同じになる。その点

において、分類上は加法混色の一種とされている。そのため、並置混色は並置加法混色、

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回転混色は継時加法混色とも呼ばれる。ただし、混色による明るさの変化は、もとの色の

面積比に応じた中間の明るさになる。そこで、加法混色・減法混色と区別して中間混色と

呼ぶこともある。

 ホームページをつくった経験のある人なら知っていると思うが、ホームページは

HTML(HyperText Markup Language)という言語で書かれている。そしてホームページを

見るには、Internet Explorerや Netscapeといったブラウザを使っている。現に、Web上で

見ている人はこの文章をブラウザを通じて読んでいるはずである。ブラウザは HTMLを

読み取り、命令どおりに内容をブラウザに表示している。こうして私たちはインターネ

ットに接続していろいろなホームページを見ることができるのである。

 さて、ホームページをブラウザを通じて見ていると言いったが、正確にはディスプレ

イに表示されたブラウザを通じて見ていることになる。ディスプレイ上での色は、赤・

緑・青の色光の三原色(RGB)に基づく加法混色によって表示されている。つまり RGB

各色の光り具合を調節することで、さまざまな色を表示できるのである。

 HTMLにおける色指定も「RGBをそれぞれどの程度光らせるか」という考えに基づい

ている。具体的には数値を記述して RGBの各強さを決定する。表記方法としては 16 進数

を用いる。ここで 16 進数について説明する。われわれが日常で使っているのは 10 進数で

ある。これは、0、1、2と数え始めて 10になったら 1桁繰り上がる。これと同じ考え方

で、16 進数は 0、1、2と数え始めて 16になったら 1桁繰り上がる体系になっている。つ

まり 1桁の中に 0~15の 16個の数が含まれることになる。ただ、これを書き表すには 10

~ 15 の 部 分 に つ い て 該 当 す る 数 字 が な い 。 そ こ で 、

10=A、11=B、12=C、13=D、14=E、15=Fとアルファベットの A~Fを割り当てる。つま

り、0、1、2、・・・、8、9、A、B、・・・、E、Fと来て、次の 16個目の数を 10と書き

表す。たとえば、16 進数の 1は 10 進数でも 1であるが、16 進数の 11は 10 進数に直すと

1×16(16の位が 1)+1×1(1の位が 1)=17になる。また、AAは 10×16(16の位が Aす

なわち 10)+10×1(1の位がAすなわち 10)=170になる。

 色指定ではこの 16 進数を用いて、各色で 00、01、02、・・・、FD、FE、FFの 256階調

を決定できる。 RGBは 3色であるから 256×256×256で合わせて 16,777,216階調の色を表

現できることになる。いわゆる「フルカラー 1677 万色」と言われているものである。

 たとえば、「33A0DE」のように各色 2桁ずつ RGBの順に記述する。 RGBそれぞれ値

が大きくなるほど、発光の程度が大きくなる。 00は何も発光しない状態、RGBすべて 00

の「000000」はディスプレイ上では何も映らず「黒」になる。 FFは一番強く発光してい

る状態、RGBすべて FFの「FFFFFF」は加法混色により「白」に見えます。中間の数値の

「999999」は「灰」に見える。

FF0000は赤(R)。

00FF00は緑(G)。

0000FFは青(B)。

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RとGだけを混ぜた FFFF00は黄(Y)。

RとBだけを混ぜた FF00FFはマゼンタ(M)。

GとBだけを混ぜた 00FFFFはシアン(C)。

 なぜ、16 進数になったかという理由は、コンピュー

タに配慮したためであろう。コンピュータは、 2 進法

によって情報を記憶したり計算したりする。これがデ

ジタル(0か 1か)と言うものである。 16は 2の 4乗

なので、2 進数では 4桁の数字(2×2×2×2=16 通り)を

必要とする。たとえば、 16 進数の 1 は 2 進数では

0001、16 進数の 3は 2 進数では 0010、16 進数の Fは 2

進数では 1111といった具合である。この 2 進数におけ

る桁数をビット(bit)と言いうが、256 通りを表現するには 8 ビット、16,777,216だと 24

ビット必要ということになる。 256や 16,777,216は 10 進数では中途半端な数であるが、2

進数ではキリの良い(「2の○乗」に読み替えられる)数字なのである。 コンピュータ

の世界では、○ビットカラーという表現をよく使われる。たとえばフルカラーと呼ばれ

る 16,777,216色は、2の 24乗色なので 24 ビットカラーである。現在では、4,096色や

65,536色といった多くの色調を表示できるカラー液晶の携帯電話が発売されている。

4,096色は 12 ビットカラー、65,536色は 16 ビットカラーである。ビットと実際の数(10

進数)には、このような関係がある。

 ところで、パソコンで描いた画像をプリンタでプリントアウトしたら違う色になって

出てきた、なんて経験はないだろうか。パソコンのディスプレイでは、色は加法混色

(RGB)によって表示される。一方、プリンタは減法混色(CMYK)によって印刷する。

加法混色と減法混色という混合方法の違いにより、色によってはミスマッチが起きてし

まうのである。そのため、デザイナやイラストレーターはこのカラーマッチングの問題

に大変気を使っているのである。

・補色

補色とは色相環で正反対に位置する関係の色の組

み合わせのことである。2つの色を一定の割合で

混色して、光の場合は白、絵の具の場合は灰色に

なるとき、一方の色を他方の色に対していう語で、

余色、対照色、反対色ともいう。ただし反対色は

補色が相対する色をじかに指すのに対し、若干色

の範囲が広い。赤と緑、紫と黄色など、一番コン

トラストの強い組み合わせの色のことでもある。

補色同士の色の組み合わせは互いの色を引き立て

あう相乗効果もあり、補色調和といわれる。図は、

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色相環といい、輪の反対側に位置する色が補色となる

原色 

赤・緑・青の蛍光物質の発光スペクトル。カラーブラウン管の「加色法三原色」

(additive primary colors)に使われているものである。

原色(primary colors)とは、混色することであらゆる種類の色を生み出せる、互いに独立

な色の組み合わせのこと。互いに独立な色とは、たとえば原色が三つの場合、二つを混

ぜても残る三つ目の色を作ることができないという意味である。

人類の目においては、原色は三つの色の組み合わせであることが多い。たとえばテレビ

モニタや照明などで、異なる色の光を重ねて新たな色を作る「加法混色」の三原色は、通

常赤・緑・青の三色である。また、絵具を混ぜたりカラー印刷で色インクを併置すると

きに行われる「減法混色」の場合の三原色は、マゼンタ・シアン・黄の三色である。

原色とされる色の選択は基本的には恣意的なものである。加法混色の三原色に使う赤・

緑・青も多様であり、表現のしやすさなどを

考えに入れてさまざまな基準が定められてい

る。またたとえば、リュミエール兄弟が開発

した初 期のカラー写真・オートクローム

(Autochrome Lumière)では、赤・緑・青のほ

かにオレンジ・緑・紫の組み合わせも使われ

た。

・生物学的な基礎

網膜の模式図。R: 桿体 (rod) 、C: 錐体 (cone) 。

暗い場所では桿体細胞が光を感知し、明るい

場所では錐体細胞が特定の波長の光(原色)

に反応する。

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原色は光の本質的な要素ではない。原色は、生物の眼が光に対して起こす生理学的反応と

結び付けられている。レーザー光のような単色光は別として、天然光や照明などの光は、

あらゆる波長の放射エネルギーが合成されており連続的なスペクトルを持つ。その刺激

値空間は無限次元にわたるが、人間の目はこれを次のような受容の仕方によって三次元

の情報として処理している。

人間の目の奥の網膜には一面に光受容細胞(錐体細胞と桿体細胞)があるが、光量が充分

な場合は三種類からなる錐体細胞が反応する。錐体細胞には、長波長に反応する赤錐体、

中波長に反応する緑錐体、短波長に反応する青錐体の三種類があり、それぞれの波長に最

も反応するタンパク質(オプシンタンパク質)を含む。これらが可視光線を感受するこ

とで信号が視神経を経由して大脳の視覚連合野に入り、ここで赤・緑・青の三種類の錐体

からの情報の相対比や位置を分析し、色を認識している。

人間など、三種類の色覚受容体をもつ生物の色覚は「三色型色覚」(trichromacy)とよば

れる。これらの種の生物は、光刺激を三種類の錐体で受けとめ三次元の感覚情報として処

理し、あらゆる光の色を三つの原色の混合比として捉える。

色覚受容体の種類の数が違う生物は、異なる数の原色によって色を感じている。たとえ

ば四色型色覚(tetrachromacy)を持つ生物には四種類の色覚受容体があり、四原色の組み

合わせで色を認識している。人間は波長 800ナノメートル(赤)から 400ナノメートル

(紫)の範囲までしか見ることができないが、四色型色覚の生物は波長 300ナノメートル

の紫外線まで見ることができ、四番目の原色はこの短波長の範囲にあると考えられる。

鳥類や有袋類の多くは四色型色覚を持つが、人間でも女性の中には四色型色覚を持つ人も

いる[4][5][6]。X 染色体 にある赤錐体と緑錐体の遺伝子は時として変異により赤・緑のハイブ

リッドの錐体細胞を作ってしまい色覚障害を起こすことがあるが、女性の場合は X染色

体が 2つあるため、1つのX染色体でこのような変異が起こってももう一方で正常な赤錐

体と緑錐体が作られれば、赤・緑・青のほかに長波長の範囲にもうひとつの原色を認識す

ることになる。人間の色覚受容体が反応する波長は個々人においても多様であり、色覚の

「正常」な人の間でも微妙な色覚の差として現れる。人間以外の生物の場合、こうした多

様性の幅は大きいが個々の生物はそれに適合していると考えられる。霊長類以外の哺乳類

のほとんどは緑と青の二種類の色覚受容体しか持たないため二色型色覚(dichromacy)で

あり、原色は二色しかない。

大多数の人間のもつ三色型色覚以外の生物の見る世界は色が狂って見える、と考えるのは

誤りと言える。そのように生まれた生物にとってはそれが普通な世界の色であり、そう

した生物が色を知覚する能力は人間の色覚の能力とは種類が違うであろう。また人間に

とって自然な色に見えるものは、他の生物たちにとっても自然に見える。しかし三原色

の光を使って人工的に再現した色(たとえばカラーテレビの画面)を見る場合、人間に

とっては自然な色に見えても他の生物にとっては自然な色には見えない。つまり、原色

を使って色を再現するときには、再現する者の色覚のシステムに依存した再現がなされ

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る。

・加法混色

  加法混色               色度図

上図右は、色度図上の sRGB カラートライアングル。パソコンのディスプレイで正確に表

示されるのはこの三角形の範囲内である。

色を表現する媒体のうち、様々な色の発光体を組み合わせて観る者の方へ放つことで色刺

激を起こすものは、加法混色を使用して色を作っている。この場合、典型的に使われる原

色は赤(Red)・緑(Green)・青(Blue)の三色である。

白色の光を合成する為の波長を「光の三原色」や「色光の三原色」と言い、下記の三色を

用いる。

■ 赤(橙赤)(波長: 625-740 nm)

■ 緑(波長: 500-565 nm)

■ 青(紫青)(波長: 450-485 nm)

テレビほかディスプレイ類はこの三原色からなる「RGB 表色系」を用いて様々な色を加

法混色で作る代表的な例である。原色として用い

られる三色は、幅広い色を表現するために色度図

上で可能な限り大きなカラートライアングルを描

ける色相・純度の色であり、蛍光体や燐光体の手

に入りやすさ(またはコストや使用電力など)も

加味して選ばれている。 ITU-R の勧告 BT.709-

2(ITU-R BT.709-2)で定められた sRGB はその例

である。

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CIEが 1931 年に定めた RGBカラートライアングル

赤と緑の光を重ねて投影すると黄色・オレンジ色・茶色の影ができる[10]。緑と青の光を重

ねるとシアンの影が、赤と青の光を重ねると紫とマゼンタの影ができた。三つの原色を

等しい割合で重ねると、灰色および白色の影ができた。こうして生成される色空間を、

RGB色空間という。

国際照明委員会(CIE)が 1931 年 に定めた CIE標準表色系(CIE 1931 color space)は、単

色の原色の定義に当たりその波長を 435.8ナノメートル(青)、546.1ナノメートル

(緑)、700ナノメートル(赤)とした。カラートライアングルの各頂点(三原色)は、

色度図に描かれた馬蹄形の曲線上(最も彩度の高い「スペクトル色」の軌跡)に置かれ、

可能な限りの大きさ(色の幅の広さ)を実現している。しかしこのトライアングルにあ

る赤と紫の限界の波長を現行のディスプレイで表現するには発光効率が非常に低くなる

ため、この三原色を実際に使うディスプレイ類はない。

・減法混色

色を表現する媒体のうち、色や光を反射して観る者に色刺激を起こすものは、減法混色を

使用して色を作っている。

物体の表面を特定の色にする為にインク等を塗る場合、元の光を遮る形で色を作る。その

合成の元になる基本色は一般に「色の三原色」や「色料の三原色」と言われ、下記の三色

を用いる。

■シアン(緑青、碧)

■マゼンタ(赤紫、紅)

■イエロー(黄)

この三色を合成して着色された物体の表面は、光の三原色の場合と反対に黒色になる。

・伝統的な減法混色

標準的な RYB色相環。赤・黄・青を等間隔に置き、二次色で

ある紫・オレンジ・緑を等間隔に置く

RGB色相環。赤・緑・青を等間隔に、二次色のマゼンタ・

黄・シアンを等間隔に置く

RYB(赤、黄、青)はかつての減法混色における三原色(色

の三原色)であり、近代の科学的な色彩理論に先立つもので

ある。美術および美術教育において使われ、特に絵画では盛

んに使われた。

RYBは標準的な色相環の中で正三角形をなす。またこの三

原色を混ぜ合わせてできる二次色(VOG:紫、オレンジ、

緑)がもう一つの三角形をなす。特定の色相環の中で等距

離にある三色が「色の三角形」をなすが、知覚的に均等に

配された色相環の中では RYBも VOGも等距離にはならな

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い。RYB色相環においては、これらが等距離になるように色相環が作られていた(ゲー

テの色彩論も参照)。

画家たちは長年、パレットの上に三つ以上の「原色」の絵具を置いて色を混ぜていた。

たとえば赤、黄、青、そして緑が「四つの原色」とされた。この四色は現在でも心理的な

原色として認知されているが、赤、黄、青が三つの心理的な原色として挙げられ、白と黒

が第四・第五の原色に加えられることもある。

17 世紀 後半にアイザック・ニュートンがプリズムにより太陽光を分光させてスペクトル

を取り出す実験を行ったが、18 世紀 の色彩理論の専門家たちはこれを意識して赤・黄・

青を三原色と考えた。これらは基本的な感覚の性質と推定され、すべての物理的な色につ

いての感覚や、顔料や染料の物理的な混合の中には、この三色が混ざっていると考えら

れた。しかし、赤・黄・青の三色の混合では他のすべての色を作ることはできないとい

う多くの反証があったにもかかわらずこの理論はドグマと化し、今日にまでこの考えは

残っている。

赤・黄・青の三色を原色として使った場合の色域は比較的小さなものとなり、なかでも鮮

やかな緑・シアン・マゼンタを作ることができないという問題があった。これは知覚的

に均等に配された色相環においては赤・黄・青は間隔が偏っていることが原因であった。

こうしたことから、今日の三色印刷・四色印刷やカラー写真ではシアン・黄・マゼンタ

が色の三原色として使用される。

多くの画家は、赤・黄・青の絵具から作れない色(RYBモデルには納まる場所のない

色)の絵具を別にパレットに置いている。ある者はパレットに置く三原色に、印刷業者

の使うより幅広い色の作れるシアン・黄・マゼンタを置き、またある者は色域を広げる

ために六つ以上の絵具を原色として使用している。

・CMYK、あるいは四色印刷

印刷産業では、様々な色を表現するために減法混色の

原色であるシアン、マゼンタ、黄色の三色が用いられ

る。「シアン」や「マゼンタ」という色名が標準的に

使われる以前は、印刷の三原色は「青緑」や「紫」、

あるいは「青」や「赤」などとも呼ばれていた。正確

な三原色は長年の間に、新たな顔料や技術の開発とと

もに何度も変えられている。

原色のうち、マゼンタとシアンはそれぞれ紫と青緑、または青と赤とも呼ばれることも

ある。               減法混色

黄色とシアンを混ぜると緑が、黄色とマゼンタを混ぜると赤が、マゼンタとシアンを混

ぜると青が生まれる。理論上は三色すべてを均等な割合で混ぜると灰色になり、三色に

充分な光学濃度(光学密度、optical density)があれば黒が生まれるはずである。実際には、

泥のような茶色になりきれいな黒は作れない。美しい黒を印刷するため、また三原色の

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インキを節約し消費量と乾燥時間を減らすため、この三色に加えて黒のインキがカラー

印刷に使われる。

これは CMYK モデルとよばれるもので、シアン(cyan)、マゼンタ(magenta)、イエロ

ー(yellow)、キー(key)の略語である。キーとは印刷する画像の細部(輪郭や濃淡)

を表現するために用いられるキープレートという版の略称で、通常は黒インキが使われ

る[22]。

実際には、絵具など実際の物質からできた着色料を混ぜることはより複雑な色の反応を

起こす。三原色の顔料を混ぜるより、天然の色からできた中間色の顔料を使うほうがよ

り明るく彩度の高い色が得られる。また顔料の持つ天然の性質も混色の過程に干渉する。

たとえばマゼンタと濃緑のアクリル絵具を混ぜると、暗いシアンができる。これは混色

が完全な減法混色ならば決して起こらないことである。印刷の場合は、三原色の顔料は実

際には混ぜられることなく、網点(ハーフトーン)の状態で印刷され、一定のパターン

で配置された各色の微小の網点を見ることにより、頭の中で色が混ぜられ色調が表現さ

れる。

減法混色では、白の顔料を加えることで一定の効果を挙げられる。原色の着色料の量を減

らすか酸化亜鉛など反射度の高い白の顔料混ぜることでを色の色相は変えずに彩度を低

めることができる。また減法混色印刷は、印刷面や紙面の色が白かまたはそれに近い場

合、もっとも効果を発揮する。

減法混色のシステムは、RGBのカラートライアングルのように、色度図上で色域を簡単

にあらわす方法はなく、色域は三次元のモデルで表現する必要がある。また二次元の色

度図や三次元の色空間でCMYKの色域を表現する試みは非常に多くある。

・四つの「純粋な」色

色覚の反対色モデルに基づく純粋な色。赤←→緑、黄←→青の四色に加え、多様な色の表

現のために白と黒も追加される

心理視覚の研究および反対色モデルの研究により、四つの「純粋な」または「ユニーク

な」色の概念が生まれている。赤と緑は反対色の軸をなし、黄色と青はもう一つの反対色

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の軸をなす。

このモデルでは、加法混色や減法混色のように、色を組み合わせて他の色を作るといっ

た物理的な混色は考慮に入れられていない。

色空間と等色関数色空間

  

加法混色             減法混色

色空間とは、色を数値(チャンネルと呼ぶ)の組み合わせによって表現するための方法。

英語の Color Spaceからカラースペースともいう。また、色空間が表現できる色の範囲を

色域という。色空間は 3種類か 4種類の数値を組み合わせることが多い。色空間は主に色

の再現(特にデジタルの表現)に役立つ。デジタル印刷やディスプレイなどには欠かせ

ないものである。

色空間の種類によって、しばしば円柱状や六角錐、円錐、球などの形状として説明される。

なお、色空間にはファイルとして記録可能な色空間 (RGB, RGBA, YCbCr, CMYK, L*a*b*)

と記録できない色空間(その他)がある。

・基礎知識

色を数値的に表すための体系を表色系といい、通常は 3つの軸を持つ 3次元空間で表現さ

れることから、色空間の名がある。

数学的には 3つの変数があれば、すべての色を表現できると言える。しかし、すべての

色を表示できる必要がない状況や、そのほか実用の便宜のために、2変数以下、あるいは

4変数以上を用いる色空間もある。また変数の取り方もさまざまなものがあり、目的に応

じて多種多様な色空間の規格が存在する。

基本となるいくつかの色を混ぜて色を表現する混色系の色空間と、そうでない色空間と

がある。混色系の色空間は、色を直接作り出す目的で用いられることが多く、そうでな

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い色空間は、色を情報として表示することを目的としている場合が多い。

計算によってある色空間から別の色空間への変換は行えるが、変換先の色空間で表現でき

ない色の情報は失われてしまう。色を扱うにあたっては、なるべく色空間を統一して作

業することが求められる。

・RGB 系列

-RGB

RGBは一般に、加法混色を表現するのに使われる。RGBは、それぞれ赤 (red) 緑 (green)

青 (blue) の頭文字である。光の三原色であり、数値を増すごとに白に近づく。反対に、数

値を減らすごとに黒くなる。コンピュータのモニタで用いられるのも、この RGBである。

視覚上では、色は光の三原色に近い、3波長に対応した 3種の細胞が受け取って、知覚さ

れる。これには若干の個人差があり、また実際問題として純粋な 3波長を用意することが

難しい場合が多いため、加法混色系の色空間にはさまざまな種類のものがある。さまざ

まな表色系が存在するが、それぞれの表色系ごとに、赤・緑・青の基準が定められてい

る。

コンピュータで同時に表示可能な色数は、

ビデオメモリにおいて各ピクセルに何ビッ

トの情報を割り振るかにより決定される。

かつてメモリが高価だった頃には表示色は

かなり限られていたが、現在では RGB各 8

ビット、計 24 ビットを割り振る事で、1677

万 7216色の表示を可能にしている。これは、

ほとんどの人間の目で識別可能な限界とさ

れ、フルカラーやトゥルーカラーなどと呼

ばれる。しかし 24bitでは画像編集の過程で

劣化が無視できないため、 48bit(各色

16bit)などより多ビットで扱うことも多い。

「RGBでは人間が知覚できる色をすべて表

現できる」と説明されることがあるが、これは明確に誤り(あるいは誤解)である。こ

れについてはXYZ で詳述。

- sRGB / AdobeRGB

sRGB(三角形の内側)と CMY(白線の内側)の色空間。基準となっている平面は xyY 色

空間で、全ての色空間を内包できる。xyYは均等色空間ではないため、面積の大きさが知

覚上での色の多様さとは直接対応しない点に注意。

RGB色空間に関する規格として、「sRGB (standard RGB)」と「AdobeRGB」の 2種類があ

る。sRGBは国際電気標準会議 (IEC) が定めた国際標準規格であり、一般的なモニタ、プ

リンタ、デジタルカメラなどではこの規格に準拠しており、互いの機器を sRGBに則った

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色調整を行なう事で、入力時と出力時の色の差異を少なくする事が可能になる。

AdobeRGBは Adobe Systems によって提唱された色空間の定義で、sRGBよりも遥かに広

い(特に緑が広い)RGB色再現領域を持ち、印刷や色校正などでの適合性が高く、DTP

などの分野では標準的に使用されている。

近年の技術向上によって、家庭用製品にも AdobeRGB色空間を用いるものが徐々にでて

きている。プリンタにおいては、多色印刷を行うことによって AdobeRGBに迫っている。

モニタにおいては、液晶ディスプレイでは冷陰極管とカラーフィルタの組み合わせで高

彩度を得ることが技術的に難しいことと、JPEG など一般的な画像ファイルが sRGBを想

定しているため sRGBが再現できれば十分という考え方も重なって、sRGBどまりとなっ

ているものが多い。

-RGBA

RGBAは RGBの色空間に加えて、アルファチャンネルも色決定に考慮させる。これは、

透過(透明度)を表現するものである。(厳密にはこれは色空間ではない。)

・CMYK 系列

理論上、CMYをすべて均等に混ぜると黒色になるが、インクや紙の特性上、CMYのイン

クを混ぜて綺麗な黒色を作るのは技術的に困難であり、通常はすべてを混ぜても濁った

茶色にしかならない。そこで、黒(Key plate)の発色をよくするために別途黒インクを用

いるようになったのが CMYKである。キープレート (key plate) とは画像の輪郭など細部

を示すために用いられた印刷板のことであり、通常黒インクだけが用いられた。なお、K

は"blacK"の略とされることが多いが、これは俗説で本来誤りである。日本の印刷業界で

は黒インクを「スミ(墨)」と呼ぶことがある。

印刷物では、文字などで黒は多用されるため、インクの節約にもなるので、現在ではも

っとも使われている。

-CMY

CMYは印刷の過程で利用する減法混色の表現法である。絵の具の三原色。基本色は白で、

それに色の度合いを加えて、黒色にしていく。すなわち、始めは白いキャンバスから始

め、インクを加えて暗くしていく(反射光を減らす、すなわち減法)ということである。

CMYには、シアン (cyan)、マゼンタ (magenta)、イエロー (yellow) インクの数値が含まれ

ている。

-CMK

CMKは印刷の過程で利用する減法混色の表現法で、絵の具の三原色からイエロー (yellow)

を除いた表現である。CMKには、シアン (cyan)、マゼンタ (magenta)、そして黒 (black) の

インクの数値が含まれている。 一般的にイエローの使用頻度が少なく、CMKだけで十分

表現可能であり、印刷コストも下がることからチラシなど低価格印刷物に利用されてい

る。

・その他

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-HSV

HSV はコンピュータで絵を書く場合や、色見本として使われる。これは、色を色相(色

味)と彩度という観点から考える場合、加法混色や減法混色よりも自然だからである。

HSVには色相 (hue)、彩度 (saturation value)、明度 (value) が含まれている。HSBとも呼ば

れる。

-HLS

HLS は、HSL、HSIなどとも呼ばれる。色相 (hue)、彩度 (saturation)、輝度 (luminance) よ

りなる、HSVに近い表現法である。明度と輝度との違いは値の算出方法である。明度が

rgb各色のビットを足して単純に 3で割ったものであるのに対し、輝度は下に書かれてい

るように各色の重み付けが違う。(比率 赤:0.29891 緑:0.58661 青:0.11448) 明度より輝度の

方がより人間の目から見た場合の明るさに近いと言われる。

・放送用

-YIQ

YIQは、NTSCテレビ放送で経緯があって使用されている。YIQにはルミナンス(輝度)

と 2つのクロミナンス(色差、YIQの場合大体色の中の青と赤の量に相当)の値が含まれ

る。このことは PAL テレビや JFIF形式の JPEG 画像で用いられる YUV(YCC、正確には

YCbCrとも)に非常に似ている。

YIQは 1950 年代当時のカラーのブラウン管の性能に基づき定められている。当時は青の

発色が悪かったため、YIQは青の表現力に欠ける面がある。テレビ・ビデオのデジタル

化に伴い、YPbPrなどにとって代わられるであろう。

-YCbCr / YPbPr

別名を YUVや YCCと言う。YIQも基本的には同じ仕組みである。なお、Adobe 社の

Photoshop ではこれと似た形式を L*a*b* (Luminescence alpha beta) カラーとして扱ってい

る。Yは輝度信号(明るさ)を示し、Cb (U) は青の差分信号、Cr (V) は赤の差分信号を示

す。

一般的に最も使われている色空間でテレビ等につなぐ方式はほぼこの方式を使っている

(パソコン用ディスプレイは RGB で送るのが基本)。これには様々な方法があり、一般

的に使われている黄色のケーブルでは YCと呼ばれる差分信号部分を一つにまとめて送る。

このケーブルをコンポジットといい、高画質テレビなどでよく使われる D端子や緑青赤

の三色ケーブルを用いるものをコンポーネントという。過去にはパソコン用ディスプレ

イにも BNC ケーブル を使い、コンポーネント方式を使ったディスプレイがあった。

なお、特にYUVで帯域を減らす際に色差分を減らす方法も存在している。

YUV444 (YUV) : 4ピクセルごとに色差分と輝度を 1ピクセルごとにとる方式。1ピクセル

24 ビットとするのが一般。

YUV12 : 各ピクセルを表現するのに必要なビット数が 12 ビットの YUV。YUV420と

YUV411の総称。

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YUV422 : 2×2ピクセルから色差信号を 1だけとる形式。輝度信号は 1ピクセルごとにと

る。1ピクセルは 16 ビット(デジタル放送ではこれが採用されている)。

YUV420 : 2×2ピクセルのうち、青の色差信号を最初のラインから取り、赤の色差信号を

次のラインからとる方式。輝度信号は 1ピクセルごとにとる。

YUV411 : 2×2ピクセルのうち色差信号を各色 1つだけとる形式。輝度信号は 1ピクセルご

とにとる。

YUV9 : 4×4ピクセルで 1つの色差信号しかとらない方式。輝度信号は 1ピクセルごとに

とる。1ピクセルは 9 ビット。

RGBからの変換式は

Y = 0.29891 × R + 0.58661 × G + 0.11448 × B

Cb (U) = -0.16874 × R - 0.33126 × G + 0.50000 × B

Cr (V) = 0.50000 × R - 0.41869 × G - 0.08131 × B

逆にRGBに変換するときは

R = Y + 1.40200 × Cr (V)

G = Y - 0.34414 × Cb (U) - 0.71414 × Cr (V)

B = Y + 1.77200 × Cb (U)

・商業印刷用

-マンセル表色系

色相、明度、彩度の 3属性を用いて色を表す。

-オストワルト表色系

マンセル表色系が心理的考察に基づいているのに対し、オストワルト表色系は心理物理

学的考察に基づいている。デザイン分野で利用されることが多い。

-DIC

大日本インキ化学工業 (DIC) 社のカラーシステム。印刷用インキと密接に結びついている

ために再現性が高い。

-パントーン

米国の企業、パントーン社が考案したカラーシステム。デザイン、工業、繊維、建築分野

などで広く使われていて、色見本のデファクトスタンダードとなっている。

・NCS color system

-日本塗料工業会標準色

日塗工あるいは JPMA標準色。日本塗料工業会が定める塗料の色標準。現在の日本の塗料

の色標準、この標準番号を使えばどのメーカーからも同じ色の塗料が購入できる。

-CIE表色系

CIE(国際照明委員会)が定める各種の表色系。

XYZ

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RGBは色知覚のよい近似であるが、知覚できる色を完全に合成できるわけではない。た

とえばレーザー光などにみられる単一波長の色は RGB色空間の外側であって、加色によ

って再現することができない。この問題は、RGBの係数に負の値を許可することによっ

て色空間を拡張すれば表現することができるが、取り扱いに不便である。

したがって RGB表色系を単純な一次変換で負の値が現れないように定めた XYZ表色系を、

CIEは 1931 年に RGB表色系と同時に定めた。XYZ表色系は他の CIE表色系の基礎となる。

RGB表色系と異なり XYZ表色系では、それぞれの数値と色彩との関連がわかりにくい。

Yは明度を表し、Zはおおむね青みの度合いを表すと考えてよい。Xは、それら以外の要

素を含むと考えられる。

xyY

XYZ表色系では数値と色の関連がわかりにくい。そこで XYZ表色系から絶対的な色合い

を表現するための xyY表色系が考案された。

YはXYZの Yをそのまま使う。この xと yを色度座標と呼び、すべての色は xと yによ

る 2次元平面、および明度を示す Yで表現できる。当然ながら、xyYから XYZに変換す

ることもできる。

・OSA(Optical Soceiety of America)

-UCS

Uniform Color Spaceの略、均等色空間とも。色の物理的な差異よりも、人間の知覚上での

差異に主眼を置いた色空間の各種。色空間上での距離が、知覚上での色の「距離」の感覚

に似るよう設定されている。

-L*u*v*表色系

CIEが 1976 年に定めた均等色空間のひとつ。CIELUV(エルスター、ユースター、ブイス

ターと読むのが一般的)は光の波長を基礎に考案されたもので、XYZ表色系の xy色度図

の波長間隔の均等性を改善したものである。日本では JIS Z8518に規定されている。

-L*a*b*

CIE L*a*b*(エルスター、エースター、ビースター、慣用的にはシーラブと読む)は

XYZから、知覚と装置の違いによる色差を測定するために派生した。L*は Luminance(輝

度)を意味する。1976 年に勧告され、日本では JIS Z 8729に規定されている。だが、使う

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のはあまり簡単ではないらしい。

ある色と他の色の色差を知るには、L*軸、a*軸、b*軸の差をそれぞれ二乗したものの和

の平方根、

を(つまり、2つの座標の距離を)求めればよい。

CIE 1976 L*a*b*は CIE XYZを直接の基礎として、色差の知覚の線形化を試みている。

L*、a*、b*の非直線関係は、目の対数的な感応性の模倣を目的としている。色情報は、色

区間の白色点 nの色を参照する。

Adobeシステムズ社の Adobe Photoshop など、高価なグラフィック編集ソフトは L*a*b*を

サポートしているが、L*a*b*の色空間は Adobe RGBよりも広いため既製ディスプレイで

は対応していない。レタッチ用途としてはもっぱら輝度チャンネル(L*)を使って内部

処理に使用することが多い、a*b*のカラーチャンネルには手を入れないため画像の劣化

が防げる。

-その他派生

L*u*vや L*a*b*から派生して、計算の便宜を図った妥協的(実用的)な均等色空間がいく

つか存在する。

・過去に用いられていた色空間

-RGV

青色(Blue)でなく菫色(Violet)を用いた加法混色。RGB法に至る以前の初期の研究で

用いられたのみ。

-RG, RGK

赤 (Red) と緑 (Green) の強度で色を指定する方法。赤と緑の合成は、RGB色空間と同様に、

加算により行なわれる。青 (Blue) がないので、青成分を含む色が正しく表現できない。

テクニカラーフィルムで使われていた。RGK色空間は RG色空間にキー(Key, インクの

黒、CMYK色空間でも使われる)を追加した色空間である。

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マンセル・カラー・システムマンセル・カラー・システム(Munsell color system)は、色を数値的に表すための体系

(表色系)の一種で、色彩を色の 3属性(色相、明度、彩度)に基づいて表現する。アメ

リカの画家、美術教育者であるアルバート・マンセル(Albert H. Munsell(1858-1918))

によって、色という概念を系統的に扱うため創り出された。マンセルシステム、マンセ

ル表色系あるいはマンセル色体系などとも言う。

色の名前の付け方が曖昧で誤解を招きやすいことから、10 進数を使って合理的に表現し

たいと考えたマンセルは、1898 年 に研究を始め、1905 年 にその成果を「Color Notation」

(表色)という本に著した。これを 1943 年 にアメリカ光学会(OSA)が視感評価実験によって

修正したものが、現在のマンセル表色系のベースとなっている。そのため、修正マンセ

ル表色系という場合もある。なお、マンセルの新しい版の書籍である「Munsell Book of

Colors」は現在でも使われている。

表色系は各種あるが、マンセルの表色系は美術、デザイン分野でよく使われる。

・色の 3属性

表色系でいう色の 3属性について個別に記す。

-色相(Hue)

色相はいわば色の種類を表すものである。

マンセルはこれを基本となる 5色、すなわ

赤 (R)  黄 (Y)  緑 (G) 青 (B)  紫 (P)

と中間の 5色、すなわち

黄赤 (YR)  黄緑 (GY)  青緑 (BG)  青紫

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(PB)  赤紫 (RP)

の合計 10色に分割した。さらにそれらの色相を 10で分割した計 100色相で表現した。こ

れを順番に円形に並べたものを色相環という。

色相環では各色の基本 5色を 5で、10分割した色を 10として色名の頭文字に付加して表

現する。黄色であれば 5Y、青緑であれば       

10BGとなる。100分割した色の場合、それぞ       マンセルの色相環

れ 1~4、6~9を付ける。

-明度(Value)

これは色の明るさを示すものである。白や黒など色を持たないものを無彩色といい、こ

れを基準に明度は決められる。すなわち無彩色の中で最も明るい白を明度の 10とし最も

暗い黒を明度 0とし、その中間の明るさ、いわゆる灰色に 2~9の数字を割り当てる。理

想的には白は光の全反射、黒は全吸収するものが物理的定義であるが、現実の色票(色見

本)などではそれは不可能なので、白は 9.5、黒は 1の値を用いる。

-彩度(Chroma)

色の鮮やかさを示す。彩度は色のない無彩色を 0として色の鮮やかさの度合いにより数字

を大きくしていく。ただし彩度は上記の色相と明度によって最大値が異なり、また 10で

もない。最も大きい 5Rでは 14、低い 5BGでは 10となる。(当初は 8であったが修正さ

れた。)

無彩色に対し色を持つ(彩度が 0より大きい)ものは有彩色という。

3個の属性を合わせた表記方は、

有彩色: 色相 明度/彩度

無彩色: N数値

である。例として色相 5B、明度 5、彩度 10であれば、

5B 5/10

と表記し「ごびーごのじゅう」と読む。 白と黒の中間的な灰色であれば、

N4.5

などと表記する。 塗料缶などに色はマンセル近似としてこれが表記されている場合があ

る。

この 3属性を含めて図示したものをマンセルの色立体という。前述の色相環の中心に軸を

想定しその上下方向が明度を示し軸の底が黒、頂上が白である。また軸からの距離が彩度

を示し軸から離れるに従い彩度が上がる。色相、明度により彩度の範囲は異なるため色立

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体はきれいな円筒形にはならずいびつな球体になる。たとえば赤の代表色である 5Rの明

度は 5の時、彩度 14になるのに対し、黄色の代表色 5Yの明度 8で彩度 14で明るい方に

ずれていることになる。

なおマンセル表色系は日本では、JIS Z 8721(3属性による色の表示方法)として規格化さ

れている。

・HSV HSV モデル (HSV model)は色相 (Hue)、彩度 (Saturation・Chroma)、明度 (Brightness・

Lightness・Value)の三つの成分からなる色空間。HSB色空間(Hue、Saturation、Brightness)

とも、HSV色空間(Hue、Saturation、Value)とも言われる。

環状のHSV色空間

色相 - 色の種類(赤、青、黄色のような)。0~360の範囲(アプリケーションによっては 0~

100%に正規化されることもある)。

彩度 - 色の鮮やかさ。0~100%の範囲。刺激純度と colorimeric purityの色彩的な量と比較

して「純度」などともいう。色の彩度の低下につれて、灰色さが顕著になり、くすんだ

色が現れ、また彩度の逆として「desaturation」を定義すると有益である。

明度 - 色の明るさ。0~100%の範囲。

HSVは 1978 年 にアルヴィ・レイ・スミス(Alvy Ray Smith)によって考案された。これは

RGB色空間の非線形変換であり、色の変換に用いられることもある。HSVとHSBは同一

であるがHLS とは異なることに注意すること。

・HSVの視覚化

HSVモデルは通例コンピュータグラフィックスアプリケーションに用いられる。いろい

ろなアプリケーションでユーザは個々のグラフィックス要素に適用する色を選択する必

要がある。このような場合、HSV色環がよく用いられる。これは円状の領域に色相が表

現されたもので、それとは別に三角形の領域が彩度と明度の表現に用いられることがあ

る。一般的に、三角形の垂直軸は彩度を指示し、また水平軸は明度に対応する。この場合、

色は最初の操作で環状の領域から色相を選択することができ、それから三角形の領域か

ら所望の彩度と明度を選択する。

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錐体のHSV色空間          円柱のHSV色空間

HSVモデルの別の視覚化方法は円錐である。この表現では、色相は色環の三次元円錐状

の構造に描かれる。彩度はその円錐の円形交差部分の中央からの距離、明度は円錐の頂点

からの距離で表される。円錐ではなく六角形の錐体(六角錐)で表現するものもある。

この方法は単一の物体で HSV色空間全体を視覚化するのに適しているが、その三次元的

な性質のため二次元のコンピュータインターフェイスにおける色の選択には適していな

い。

HSV色空間は円柱状の物体として視覚化されることもあり、上記と同様に色相は円柱の

外周に沿って変化し、彩度はやはり円状の交差点の中央からの距離に伴って変化する。明

度もまた頂点から底へ向かって変化する。このような表現は HSV色空間のモデルとして

もっとも数学的に厳密であると考えられるかもしれないが、実際のところ視覚化された

彩度レベルと色相の精度は黒に近づくにつれて明らかに減少する。さらに、通常コンピ

ュータは有限の範囲で RGB値を格納する。精度の制限は人間の色認知能力の限界とも関

連し、ほとんどのケースで円錐による視覚化はより現実的とされている。

・HSVと色覚

デザイナは RGBや CMYKのようなモデルより HSVカラーモデルを用いることを好むこ

とがあるが、これは HSVモデルのあり方が人間が色を知覚する方法と類似しているため

である。RGBと CMYKは加算的な色と減算的な色によるモデルであり、どちらも原色の

組み合わせによって色が定義されるが、それに対し HSVはより人間と親和性のある内容

――この色は何色?鮮やかさはどのくらい?明るくしたり暗くするにはどうしたらい

い?――で色についての情報をカプセル化する。HLS色空間も類似しており、この観点

においてもおそらく間違いなく HSVより同等以上に優れている。

HSV三刺激値空間は、放射測定されたものとしての物理的なパワースペクトルへの一対

一の対応は技術的にサポートされてはいない。従って、HSV座標と波長や振幅といった

物理的な光の性質のあいだに直接の比較を試みる一般的で妥当な方法は存在しない。しか

しながら、もし物理的直感が必須であれば、以下のような「色彩測定」の心理物理的技術

を用いて、HSV座標系を「擬似物理的な」性質に変換することは可能である。

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色相は色の主波長を定義し、色相はスペクトルに沿った波長位置を意味する。ただしイ

ンディゴから赤の間(およそ 240~360度)は純紫線(ピュアパープルの線)上を示す。

もし色相知覚が再現されれば、実際単色では主波長に位置する純粋なスペクトル色を利用

し、「脱飽和」は適用された主波長の頻度分布あるいは単色光に同じ力の量の光 (例・白)

を加算することとだいたい同じことになるだろう。

明度はスペクトラムのパワーの総量または光の波形の最大振幅にほぼ類似する。しかし

ながら、実際のところ明度が最大のスペクトル成分 (統計学「モード」、この分布に直交

し累積した力ではない)に近いことは以下の方程式より明らかだろう。

・RGBからHSV への変換

R、Gおよび Bが 0.0を最小量、1.0を最大値とする 0.0から 1.0の範囲にあり、(R,G,B)で

定義された色が与えられたとすると、それに相当する(H,S,V)カラーは次のような数式に

より決定することができる。

MAXを(R,G,B)値の最大値と等しく、MINをその最小値と等しいする。この式は次のよう

に書ける。

結果は(H,S,V)形式であり、またHは 0.0から 360.0 まで変化し、色相が示された色環に沿

ったディグリーの角度で表現される。Sおよび Vは 0.0から 1.0 までの範囲で変化し、そ

れぞれ 0.0を最小値、1.0を最大値とした彩度および明度である。角座標系で、Hは 360か

ら 0 までを覆っており、0.0から 360.0の範囲を超えるHのいずれもHを 360.0で割ること

でこの範囲に対応させることができ、剰余(または「モジュラ演算」)で求めることができ

る。つまり、たとえば-30は 330と等しく、480は 120と等しくなる。

この式がHSVの他の性質の影響を示すことにも注意。

MAX = MIN(例・S = 0)のとき、 Hは定義されない。上記の HSV空間の図を考慮すればこ

れは明白である。もし S = 0ならこの色は中央のグレーの直線の周囲にあり、従って必然

的にこの色には彩度がなく、角座標には意味がない。

MAX = 0(例・V = 0)のとき、Sは未定義である。これは上記の円錐状の図に最もよく表れ

ている。もし V = 0ならこの色は完全な黒であり、この色に色相も彩度もないことは自明

である。従って円錐状の図は単一の点に潰れ、この点では角度も角座標系も無意味である

円柱よりは円錐モデルを好む人は、次のように Sの方程式を変更することによって円錐

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空間を実現することができる。

.

・HSVからRGB への変換

Hが 0.0から 360.0の範囲で変化する角度で表記され、色相を配置した色環に沿っており、

Sおよび Vが 0.0から 1.0の間で変化し、彩度と明度を意味し、(H,S,B)値によって定義さ

れた色が与えられているとし、次の式を通してそれぞれ対応する (R,G,B)カラーを決定す

ることができる。

まず、もし Sが 0.0と等しいなら、最終的な色は無色もしくは灰色である。このような特

別な場合、R、G、および Bは単純にVと等しい。上記の通り、この場合 Hは無意味とな

る。

Sがゼロでない場合、次の式を用いることができる。

CIE xyzCIE xyz 表色系は,CIE(国際照明委員会)が 1931 年に定めた表色方法である。 光の 3 原

色である RGB の加法混色の原理を元にしている。基本的には光の 3 原色 を混ぜると,理

論上は人間が知覚できるどんな色でも表せることになっている。

R(赤),G(緑),B(青紫)の3原色を仮定の原色値に当てはめ3刺激値として設定し,

R=x,G=y,B=zとして,この 3 刺激値 の混合比によって色を表すのが CIE xyz表色系

のやり方である。人の目の色感度の値(標準観測者と呼ばれる多くの人間を被験者として

行われた実験をもとに導き出された座標から計算して値を求めた,装置に依存しない色

空間)と,測定する色の分光反射率を分光光度計で測定した値とを用いて算出する。 マ

ンセル表色系の顕色系に対して混色系とよばれる表色系である。

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xyzの数値でどんな色でも表せるといっても,数値だけでは具体的にイメージできない。

そこで色度図という色の地図を作って目に見えるようにした。カラーマネジメントなど

の色管理の話で必ず出てくる CIE xyz 表色系 の図である。CIE 色度座標 xと yによる平面

上の(2次元の)グラフで,xを横軸,

yを縦軸に取る。目に見える色の境界

は, 380nm から 770nm までの純粋な

スペクトルの色を含む,馬蹄形をし

たスペクトル曲線で描かれる。これ

をスペクトル軌跡という。

色度図のほぼ中心が光源であり白色

点として表示される。光源を軸にし

て色相が 360°回転して徐々に色が変

化する色相環状態となり,彩度は光

源から離れるほど増している。光源

やモニタの白色点をプロットして比較し表示する時きわめて有用な図となっている。

CIE xyz表色系

CIE L*a*b*CIE Lab 表色系は,本来は CIE L*a*b*と表記し,L*a*b*は「エルスターエースタービース

ター」と読む。

CIE xyz 表色系に基づく色空問で,より知覚的に

均等なものに進化させたものである。CIE Lab の

中の色の間の距離が,知覚される色の違いとよ

く対応して分かりやすくなっているということ

である。L*値は明度を表し,a*と b*は色度座標

になっており,色相と彩度を一緒に表している。

L*値は色に関係なく明るさ(明度)だけを表し,

L=0(黒)から L=300(白)までの値を取って

おり,値が大きいほど白く明るいということに

なる。

a*は赤から緑への軸であり,+aは赤方向を-a

は緑方向を表し,300~0~-300の値を取る。b*は黄から青への軸であり,+bは黄方向

を-bは青方向を表し,300~0~-300の値を取る。a*と b*それぞれプラス側とマイナス

側どちら側であっても数値が大きくなるほど彩度が上がっていく。真ん中に位置する0

は無彩色ということになる。 a=300から a=-300 までの位置と b=300から b=-300 ま

での位置から任意の色の色相と,彩度の2次元の色度座標値が決まり,それに明度という

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高さの位置情報が加わって3次元(立体)の色空間上の色座標値が確定する。

CIE Lab は反射性,透過性の物体を測定する業界において,現在,もっとも使われている

表色系であり,RGB と CMYK どちらともやり取りができるので,RGB と CMYK 間の橋

渡しもおこなえることから,両方の色空間を扱う印刷業界ではカラーマネジメントで重

要な役割を担う。

等色関数人間の色感覚には、それぞれ個人差があるが、

視角(物体の大きさ)が変わっても色感覚は変化す

る。従って、色測定の際には人間の色感覚を規

制する必要があり、2°視野と 10°視野の分光感度

が CIEや JISで決められている。例えば、観察者

が 50cmの位置で直径 1.7cmの試料を観察し、色

を判定する場合が 2°視野で、同様の距離で直径

8.8cmの試料を観察する場合が 10°視野である。

これまで説明した内容は 2°視野に基づいたもの

である。2°視野は視角が 1°~4°用で、10°視野は

視角が 4°以上の場合に用いる。

W.G.Wrightと J.Guildの等色実験に基づき、CIE

で定められた等エネルギースペクトルに対する

目の感度をスペクトル刺激値といい、この感度

曲線を等色関数という。つまり「人間の目に対

応する分光感度」が等色関数である。等色関数

は 2°視野と 10°視野の場合が CIEで採用されてい

る。

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色は物理的特性ではなく、目から大脳に至る神経系(視覚系)が生み出す感覚である。従

って、RGB表色系は、波長 435.5nm(青色:B)、546.1nm(緑色:G)、700.0nm(赤色:R) の 3つの単色光を三原色としたものである。

色変換(画像変換)デジタルカメラの画像データは RGBや RAW(デジタルカメラで独自に定義されたカラ

ー)といったカラースペースを基準にして保存される。こういったデータはそのままで

は印刷で使えないため、CMYKのカラースペースに変換しなければならない。

カラースペースを変換する場合に問題なのは、カラースペースという基準にはそれぞれ

限界があるという点である。たとえば、CMYKというカラースペースは各チャンネルで

0~100%の範囲が限界になる。-10%とか 150%という数値はあり得ないのである。デジ

タル画像でもっとも一般的なカラースペースの sRGBも、RGBの各チャンネルが 0~255

の範囲しかない。

0とか 100といった数値は基準を作る際に人為的に決めた(あるいはデバイスの限界で決

まった)もので、実際の自然界の色はその外側にも存在する。つまり、これらのカラー

スペースでは自然にある全ての色を表現することができないのである。

さらに重要なのは、カラースペースによって表せる限界が異なっているという点である。

たとえば CMYKで限界の外にある色でも sRGBでは限界内ということがあり得るわけで

ある。デジタルカメラの RGB画像を CMYKに変換する場合、このことが大変大きな問題

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になってくる。

sRGBの場合、CMYKで表せない彩度の高いオレンジや紫の色が表せる。デジタルカメラ

で撮影する際は、こういった色があっても sRGBのデータできちんと記録されるわけで

あるが、CMYKに変換するとこれらの色が表せなくなってしまうことになる。もちろん、

4色で印刷する以上、これはいかんともしがたいことであり、あきらめるしかないのであ

るが、プリンタや印刷で高い品質を求めるのであれば、できるだけ近い色を出す必要が

ある。

・RGB

RGBはそれぞれ、赤、緑、青成分の輝度を表し、0~255の整数値、もしくは 0~1の実数

値とする。以下では、整数か実数かは明記しないので各自で判断する事。

・RGB<-->CMY

CMYはそれぞれ、Cyan、Magenta、Yellowを表す。Rと C、GとM、BとY、は補色関係

にある。

C = 1-R

M = 1-G

Y = 1-B

R = 1-C

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G = 1-M

B = 1-Y

・RGB<-->CMYK

Kは黒。

Black=minimum(1-Red,1-Green,1-Blue)

Cyan=(1-Red-Black)/(1-Black)

Magenta=(1-Green-Black)/(1-Black)

Yellow=(1-Blue-Black)/(1-Black)

Red=1-minimum(1,Cyan*(1-Black)+Black)

Green=1-minimum(1,Magenta*(1-Black)+Black)

Blue=1-minimum(1,Yellow*(1-Black)+Black)

・RGB<-->HSV

H: Hue angle (色相角度) 0~360°。赤が 0°、黄が 60°、緑が 120°、水色が 180°、青が 240°、

紫が 300°、360°で再び赤に戻る。

S: Saturation (彩度) 0~1の実数値。0 側が薄く(無彩色)、1側が濃い(有彩色)

V: Value (強度) 0~1の実数値。0 側が弱く、1 側が強い。0 側が黒絵の具を加えた状態、1

側が黒絵の具を加えない状態。明度に似ている。

H/60の整数部を i、小数部を fとする。

p1=V*(1-S)

p2=V*(1-S*f)

p3=V*(1-S*(1-f))

i=0: R=V, G=p3, B=p1

i=1: R=p2, G=V, B=p1

i=2: R=p1, G=V, B=p3

i=3: R=p1, G=p2, B=V

i=4: R=p3, G=p1, B=V

i=5: R=V, G=p1, B=p2

cmax=maximum(R, G, B)

cmin=minimum(R, G, B)

V=cmax

S=(cmax-cmin)/cmax (ただし、cmax==0の時は S=0)

R==cmax: H=60*{(G-B)/(cmax-cmin)}

G==cmax: H=60*{2+(B-R)/(cmax-cmin)}

B==cmax: H=60*{4+(R-G)/(cmax-cmin)}

なお、H<0の時はHに 360を加える。

また、S==0の時はH=0とする。

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・RGB<-->HLS

H: Hue angle (色相角度) 0°~360°。HSVのHと同じ。

L: Lightness (明度) 0~1の実数値。0 側が暗く、1 側が明るい。0~0.5 側は黒絵の具を加え

た状態、0.5~1 側は白絵の具を加えた状態。0.5はどちらも加えない状態。

S: Saturation (彩度) 0~1の実数値。HSVの Sと同じ。

L<=0.5: cmin=L*(1-S), cmax=2*L-cmin

L>0.5: cmax=L*(1-S)+S, cmin=2*L-cmax

R=f(H+120)

G=f(H)

B=f(H-120)

ただし、

f(h)=

h<60: cmin+(cmax-cmin)*h/60

h>=60 && h<180: cmax

h>=180 && h<240: cmin+(cmax-cmin)*(240-h)/60

h>=240: cmin

cmax=maximum(R, G, B)

cmin=minimum(R, G, B)

L=(cmax+cmin)/2

cmax-cmin==0: S=0, H=0

L<=0.5: S=(cmax-cmin)/(cmax+cmin)

L>0.5: S=(cmax-cmin)/(2-(cmax+cmin))

R==cmax: H=60*{(G-B)/(cmax-cmin)}

G==cmax: H=60*{2+(B-R)*(cmax-cmin)}

B==cmax: H=60*{4+(R-G)*(cmax-cmin)}

なお、H<0の時はHに 360を加える。

・RGB<-->CIE

CIEとは 1931 年の国際照明委員会(Commission Internationale de l'Eclairage)で決められた色

度図のカラーモデルである。日本工業規格では JIS Z 8701である。

x: 色度(0~1) chromaticity

y: 色度((0)~1)

Y: 輝度。0 側が弱く、1 側が強い。0 側が黒絵の具が加えられた状態、1 側が黒絵の具が加

えられていない状態。

R=2.739386694386690*x*Y/y-1.144708939708940*Y-0.424074844074844*(1-x-y)*Y/y

G=-1.118985713198160*x*Y/y+2.028500773974170*Y+0.033144618976324*(1-x-y)*Y/y

B=0.137976247723133*x*Y/y-0.333450588949605*Y+1.104800777170610*(1-x-y)*Y/y

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X=0.478*R+0.299*G+0.175*B

Y=0.263*R+0.655*G+0.081*B

Z=0.020*R+0.160*G+0.908*B

W=X+Y+Z

x=X/W

y=Y/W

Y=y/W

・YIQ

YIQはNTSC(National Television System Committee)方式のカラーテレビ放送で使われるカラ

ーモデルである。Y 信号は 0~4MHz 帯域、I 信号は 1.5MHz 帯域、Q 信号は 0.6MHz 帯域で

ある。Yはカラー映像を白黒映像にすることに使用できる。 (白黒テレビと互換性があ

る。)

Y: 輝度

I: 肌色を含む、オレンジからシアンにかけての色調

Q: I 以外の色調

色んなホームページに載っていたものをここに掲載する。

・RGB<-->YIQ(その 1)

R=Y+0.956*I+0.623*Q

G=Y-0.272*I-0.648*Q

B=Y-1.105*I+0.705*Q

Y=0.299*R+0.587*G+0.114*B

I=0.596*R-0.274*G-0.322*B

Q=0.211*R-0.522*G+0.311*B

・RGB<-->YIQ(その 2)

R=Y+0.956*I+0.621*Q

G=Y-0.272*I-0.647*Q

B=Y-1.105*I+0.702*Q

Y=0.299*R+0.587*G+0.114*B

I=0.596*R-0.274*G-0.322*B

Q=0.212*R-0.523*G+0.311*B

・RGB<-->YIQ(その 3)

R=Y+0.9489*I+0.6561*Q

G=Y-0.2645*I-0.6847*Q

B=Y-1.11270*I+1.8050*Q

Y=0.2990*R+0.5870*G+0.1140*B

I=0.5959*R-0.2750*G-0.3210*B

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Q=0.2065*R-0.4969*G+0.2904*B

・YUV, YCbCr, YCC

これらは全て似たようなカラーモデルである。ホームページ上でも色んな定義があって

どれが正しいのかは僕も分からない。しかも、それぞれ2種類以上の定義があったりす

る。YUVと YCbCrは違うらしいけど、通常、YUVもYCbCrも同じものを指す事が多い。

YCCはYCbCrの事らしい。とりあえず、いろいろなホームページに載っていたものをこ

こに掲載する。

Y: 輝度

U(Cb): 青み成分

V(Cr): 赤み成分

CENTER: 0、0.5、128(0x80)のどれでも好きなものを使って良い。

・RGB<-->YCC(YCbCr)

Y = 0.29900*R + 0.58700*G + 0.11400*B

Cb = -0.16874*R - 0.33126*G + 0.50000*B + CENTER

Cr = 0.50000*R - 0.41869*G - 0.08131*B + CENTER

R = Y + 1.402*(Cr-CENTER)

G = Y - 0.34414*(Cb-CENTER) - 0.71414*(Cr-CENTER)

B = Y + 1.772*(Cb-CENTER)

・RGB<-->YUV

Y = 0.299*R + 0.587*G + 0.114*B

U = -0.147*R - 0.289*G + 0.437*B + CENTER

V = 0.615*R - 0.515*G - 0.100*B + CENTER

R = Y + 0.000*(U-CENTER) + 1.140*(V-CENTER)

G = Y - 0.394*(U-CENTER) - 0.581*(V-CENTER)

B = Y + 2.028*(U-CENTER) + 0.000*(V-CENTER)

・RGB<-->YCbCr

Y = 0.2989*R + 0.5866*G + 0.1145*B

Cb = -0.1687*R - 0.3312*G + 0.5000*B + CENTER

Cr = 0.5000*R - 0.4183*G - 0.0816*B + CENTER

R = Y + 0.0000*(Cb-CENTER) + 1.4022*(Cr-CENTER)

G = Y - 0.3456*(Cb-CENTER) - 0.7145*(Cr-CENTER)

B = Y + 1.7710*(Cb-CENTER) + 0.0000*(Cr-CENTER)

・RGB<-->YCbCr

上の定義は誤差が乗る。これは、CCIR601, CCIR601-1(D65)の定義。

Y = 0.299*R + 0.587*G + 0.114*B

Cb = -0.172*R - 0.339*G + 0.511*B + CENTER

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Cr = 0.511*R - 0.428*G - 0.083*B + CENTER

R = Y + 0.000*(Cb-CENTER) + 1.371*(Cr-CENTER)

G = Y - 0.336*(Cb-CENTER) - 0.698*(Cr-CENTER)

B = Y + 1.732*(Cb-CENTER) + 0.000*(Cr-CENTER)

・RGB<-->YUV

Y = 0.299*R + 0.587*G + 0.114*B

U = -0.147*R - 0.289*G + 0.436*B + CENTER

V = 0.615*R - 0.515*G - 0.100*B + CENTER

R = Y + 0.000*(U-CENTER) + 1.140*(V-CENTER)

G = Y - 0.396*(U-CENTER) - 0.581*(V-CENTER)

B = Y + 2.029*(U-CENTER) + 0.000*(V-CENTER)

・RGB<-->YCbCr

Y = 0.299*R + 0.587*G + 0.114*B

Cb = -0.1687*R - 0.3313*G + 0.5*B + CENTER

Cr = 0.5*R - 0.4187*G - 0.0813*B + CENTER

R = Y + 0.000*(Cb-CENTER) + 1.402*(Cr-CENTER)

G = Y - 0.34414*(Cb-CENTER) - 0.71414*(Cr-CENTER)

B = Y + 1.772*(Cb-CENTER) + 0.000*(Cr-CENTER)

・RGB<-->YCbCr

CCIR 601-1

Y = 0.2990*R + 0.5870*G + 0.1140*B

Cb = -0.1687*R - 0.3313*G + 0.5000*B + CENTER

Cr = 0.5000*R - 0.4187*G - 0.0813*B + CENTER

R = Y + 0.0000*(Cb-CENTER) + 1.4020*(Cr-CENTER)

G = Y - 0.3441*(Cb-CENTER) - 0.7141*(Cr-CENTER)

B = Y + 1.7720*(Cb-CENTER) + 0.0000*(Cr-CENTER)

・RGB<-->YUV

Y = 0.2990*R + 0.5870*G + 0.1140*B

U = -0.1684*R - 0.3316*G + 0.5000*B + CENTER

V = 0.5000*R - 0.4187*G - 0.0813*B + CENTER

R = Y + 0.0000*(U-CENTER) + 1.4020*(V-CENTER)

G = Y - 0.3441*(U-CENTER) - 0.7139*(V-CENTER)

B = Y + 1.7718*(U-CENTER) + 0.0012*(V-CENTER)

ホワイトバランスとグレーバランスホワイトバランス(白色補正)とは、デジタルカメラやビデオカメラにおいて、色温度

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が異なる光源状態でも、白色を正確に白く映し出すように補正する機能である。

ここでは主にデジタルカメラにおいてのホワイトバランス機能について詳述する。

基本的に写真撮影を行う際、フィルムカメラにおいては、大抵の場合、フィルムは日中

の太陽光(デーライト)の色温度にあわせて作られている。そのため、電球や蛍光灯の

ような人工の光、また太陽光でも曇天時や早朝においても色温度が変化するため、正確な

色が出なくなってしまう。

これはデジタルカメラにおいても同様で、適正な色温度が設定されていない場合、正確

な色が出ない。むしろデジタルカメラの方がはっきり影響が出る傾向にある。こうした

状況で色を正確に出すために、一定の色基準(純粋な白色もしくは 18 パーセントグレ

ー)を基にして、デジタルカメラ内蔵の画像処理プロセッサが判断し、適正な色を出す

ようにする機能がホワイトバランス機能である。

フィルムカメラで厳密に撮影する場合は、カラーメーターによって色温度を測定し、そ

の色温度に適した色補正用フィルタを選択し、装着して撮影する必要が生じる。しかし、

デジタルカメラではカメラ自体の機能で補正が可能なため、色補正の機材や手間がかか

らない。これは、フィルムカメラによる撮影と比べて大きなメリットと言えるだろう。

ホワイトバランスには、撮影対象の光の状況を自動的にデジタルカメラ内蔵の画像処理

プロセッサが自動的に判断し、適正な色状態を再現する「オートホワイトバランス」、

晴天時や曇天時、蛍光灯、ストロボ光などあらかじめ設定された色設定を、その状況にあ

ったものを選択し、適正な色再現を行う「プリセットホワイトバランス」があり、さら

にデジタル一眼レフカメラやコンパクトデジタルカメラの上位機では、撮影対象から一

定の色基準(純粋な白色もしくは 18 パーセントグレー)を取得し、より正確な色再現を

図る「マニュアルホワイトバランス」、カラーメーターで測定した色温度を入力して色

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温度の適正化を行う「色温度指定」、設定したホワイトバランスを基準に色温度の数値を

青系・赤系双方に変えた状態も同時に撮影する「ホワイトバランスブラケティング」と

いった機能を備える場合が多い。また、RAW 画像 が撮影可能な上位機では、専用ソフト

ウェアによる「現像処理」を行う際に、画像から再度基準となる色を取得することで、適

正なホワイトバランスに修正することも可能になっている。

一見便利なオートホワイトバランス機能だが、弱点もある。白熱灯(タングステン電

球)が多い夜間の室内撮影においてストロボを発光させると、ホワイトバランスも自動

的にストロボ光に合わせられ、近距離

はともかく背景が赤みを帯びてしまう。

特に内蔵ストロボの光量が小さいコン

パクトタイプのカメラにおいて顕著と

なり、フォトレタッチツールを使って

も容易に補正できない。このようなと

き外部ストロボが接続可能な中級機以上なら、マニュアルかプリセットのホワイトバラ

ンスで白熱灯に合わせておき、外部ストロボにアンバー色(薄いオレンジ)のフィルタ

をかけて、ストロボの色温度を白熱灯に近づけると、実用的なレベルで自然な撮影が可

能となる。主に報道目的に、外部ストロボにすっぽりかぶせるタイプのフィルタが市販

されている。このような例に限らず、あまりソフトウェアの機能に頼ることなく、撮影

時になるべくベストなホワイトバランスを保持できるように工夫することが、デジタル

カメラ撮影には必要と言える。

グレーバランスは色補正の重要な手法の1つである。どんな写真データでも、色補正の

ポイントは「グレーバランス」である。ハイライトとシャドウ部に適正に補正をかけれ

ば、おおよそ補正はできたようなものである。あとは中間調のバランスを微調整すれば

できあがりとなる。全てのグレーバランスに共通していることであるが、理論上はシア

ン・マゼンタ・イエローの 3色を同じ%でかけ合わせればニュートラルグレー(無彩色)

が得られるはずである。しかし、実際の印刷では、ニュートラルなグレーバランスにす

るにはシアンを若干多めにします。これは、印刷で使用される各インクの特性が理論上

の理想値を満たしていないためである。写真の場合も印刷と同じである。RGBのバラン

スは必ずしも理想的な状態に保たれていないため、グレーバランスをとることが重要に

なる。

光源の種類とその特徴・スペクトル

鉄の輝線スペクトル

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最も広い意味でのスペクトル(Spectrum)とは、複雑な情報や信号をその成分に分解し、

成分ごとの大小に従って配列したもののことである。2次元以下で図示されることが多く、

その図自体のことをスペクトルと呼ぶこともある。様々な領域で用いられる用語で、

様々な意味を持つ。

数学や物理学では時間信号をフーリエ級数展開したときの各調波成分の振幅の大きさを周

波数の関係から見たものという意味で用いられる。

・天文学におけるスペクトル

天文学においては天体からの光をプリズムや回折格子といった分光器を通すことにより

得られる、光の波長ごとの強度の分布をスペクトルという。

連続スペクトル

熱放射による光はあるゆる波長の光を含んでいる。このような光はプリズムで分光する

と連続的な虹色の模様になる。そこでこのような光のスペクトルを連続スペクトルとい

う。

輝線スペクトル

電離あるいは励起された原子から放射される光は原子内の電子のエネルギー準位が量子化

されているため、ある特定の波長だけに限られている。このような光はプリズムで分光

すると離散的ないくつかの光の線となる。この光の線を輝線といい、輝線からなるスペ

クトルを輝線スペクトルという。

吸収線スペクトル

連続スペクトルを放つ光源と観測者との間に原子が存在すると、その原子がある特定の

波長の光を吸収して励起されるため、その波長での強度が減少したスペクトルとなる。

このような光はプリズムで分光すると連続的な虹色の模様の中にいくつかの暗い線が見

られる模様となる。この暗い線を吸収線または暗線という。吸収線を持つスペクトルが

吸収線スペクトルである。

恒星は中心部の核融合反応で輝くガス球であり、その分光学的性質はほぼ黒体に近い。そ

のため、恒星のスペクトルは大雑把にはその表面温度の黒体放射に対応する連続スペク

トルとなっており、その中に恒星大気中の原子や分子による吸収線スペクトルが見られ

る。その吸収線スペクトルのパターンによって恒星の分類がされている。これをスペク

トル分類という。太陽も恒星の一つであるから、そのスペクトルには吸収線が見られる。

この吸収線は発見者の名前をとってフラウンホーファー線と呼ばれている。

・化学におけるスペクトル

化学においては試料に対してなんらかの刺激を与えた際、その刺激や応答を特徴づける

量に対して応答強度を記録したものをスペクトルという。刺激としては電磁波が用いら

れ、そのとき用いた波長に対して吸収強度を記録したものをスペクトルという例が多い。

しかし、質量分析法では刺激として電子衝突を用いて、分解によって生じた破片の質量に

対しその量を記録したものをスペクトルと呼んでいる。分光法も参照のこと。

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色温度 どのような物質も、温度によってさまざまな波長の光を放射するようになる。その色合

いは、物質ごと、温度ごとに微妙に異なる。たとえば鉄の釘など金属をガスの炎で加熱

すると光を発するようになる(実際には温度を持っていればオレンジよりも波長が長い赤

外線、遠赤外線などをわずかに発している)。最初はオレンジ色であり、だんだん白く輝

くようになる。

・色温度の単位

理想的な黒体を想定すると、ある温度において黒体が放射する光の波長の分布を導き出す

ことができる。温度が低い時は暗いオレンジ色であり、温度が高くなるにつれて黄色み

を帯びた白になり、さらに高くなると青みがかった白に近くなる。このように、白とい

う色を黒体の温度で表現することができるのであり、この温度を色温度(いろおんど)

と呼ぶ。単位として、絶対温度のK(ケルビン)を用いる。

(このカラーチャートはイメージであり、特に物体を特定して色温度を計算したもので

はない)

朝日や夕日の色温度はおおむね 2000Kであり、普通の太陽光線は 5000~6000Kぐらいで

ある。澄み切った高原の空の正午の太陽の光はおおよそ 6500Kといわれる。これらは、

一般に考えられている白より、かなり黄色っぽい(実際に物体を照らす光は大気の青色

がかなり色味を中和しているためで、6500Kよりも高い色温度のほうが「白」く感じられ

る)。

・モニタにおける色の再現性について

写真やテレビ、パソコンのモニタなどでは、色温度は色の正確な再現のために重要であ

る。写真においては、スタジオ撮影のライトが 3200K、太陽光線が 5500Kと想定されて

おり、フィルムはこの色温度の照明において最適な色再現ができるよう作られている。

色彩工学においては「標準の光 D65」が現在の事実上の標準であり、これは色温度 6500K

である。日本・アメリカのテレビでは色温度は 6774Kと定められているが、実際のテレ

ビの色温度は 9000K 以上あり、かなり青みがかっている(当然ながら色再現上の問題が

ある)。パソコンのモニタは 9300Kが主流だが、特に廉価な製品を除き、6500K・5000K

に変更する機能が備わっているため、デザインや映像制作などの都合で適切な色温度を

選ぶことができる。また、鋭く青白い 9300Kの設定から温和な 6500Kや 5000Kに変える

ことで疲労感を下げることができるので、色彩についての正確さが厳しく要求されない

場面でもこの機能は有用といえる。PowerStrip のようなソフトウェアでもパソコンの色温

度の調整ができる。

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・人の感覚とケルビン数

一般的に色温度の感じ方はケルビン数に比例しない。人の感じ方に近い表現方式として、

1,000,000をケルビン数で割ったメガケルビンと呼ばれる値が考案されている。部屋の照

明として広く利用されている蛍光灯では、「電球色」「温白色」「白色」「昼白色」「昼

光色」と主に分類されており、順に約 3000K、3500K、4200K、5000K、6500Kとなる。各

ランプ間の色温度の蛍光灯が無いのは、それぞれのメガケルビン数が 333MK-1、286MK-

1、238MK-1、200MK-1、154MK-1となり、全て差が 40~50 前後になるので色温度の感じ

方が一定になる。このうち「電球色」「昼白色」「昼光色」が一般に販売されている。

黒体 黒体(Black body、あるいは完全放射体)とは、外部から入射する熱放射など(光・電磁

波による)を、あらゆる波長に渡って完全に吸収し、また放出できる物体のこと。完全

な意味での黒体(完全黒体)は現実には存在しないと言われているが、ブラックホール

など近似的にそうみなせる物質、物体はある。

黒体からの熱などの放射を黒体放射と言う(以前は黒体輻射ともいった)。ある温度の黒

体から放射される電磁波のスペクトルは一定である。温度 T において、波長 λ の電磁波

の黒体放射強度 B(λ) は

で表される。これをプランク分布という。プランク分布を全波長領域で積分することで、

黒体放射の全エネルギーが T4 に比例する(E = σ T4, σ: シュテファン=ボルツマン定数)

というシュテファン=ボルツマンの法則を得る。また微分して B(λ) が極大となる λ を求

めることで、 放射強度最大の波長が T に 反比例するというヴィーンの変位則を得る。

・空洞放射

十分に大きな空洞を考え、空洞を囲む壁は光を含む一切の電磁波を遮断するものとする。

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この空洞に、その大きさに対し十分に小さな孔を開ける。孔を開けることによる空洞内

部の状態の変化は無視できるとする。外部からその孔を通して入った電磁波(ある特定

の波長のものが光)が、空洞内部で反射するなどして再び出てくることは、孔が十分に

小さければ無視することができる。つまりこの空洞は、外部から入射する電磁波を(ほ

ぼ)完全に吸収する黒体とみなすことができる。

この空洞からの熱などの放射を空洞放射という。

・黒体放射と量子力学

理想的な黒体放射を現実にもっとも再現するとされる空洞放射が温度のみに依存する、と

いう法則はグスターブ・キルヒホッフにより 1859 年に発見された。以来、空洞放射のス

ペクトルを説明する理論が研究され、最終的に 1900 年にマックス・プランクによりプラ

ンク分布が発見されたことで、その理論が完成された。

物理的に黒体放射をプランク分布で説明するためには、黒体が電磁波を放出する(電気双

極子が振動する)ときの振動子の量子化を仮定する必用がある (en:Planck's law of black

body radiation)。つまり、振動子が持ちうるエネルギー (E) は振動数 (ν) の整数倍に比例し

なければならない。

この比例定数 は後に、プランク定数とよばれ物理学の基本定数となった。これは古典力学と反する仮定であった(古典力学では物理量は連続な値をと

り、量子化されない)が、1905 年にアルベルト・アインシュタインがこのプランクの量

子化の仮定と、光子の概念を用いて光電効果を説明したことにより、この量子化の仮定に

基づいた量子力学が築かれることとなった。

・灰色体

工業製品などでの設計では、対象の温度範囲が限られていることから、しばしば放射率

が周波数に依存しない理想的な物体として灰色体(かいしょくたい)を用いる。灰色体は、

黒体の放射率を 1より小さい定数としたものと等価であり、黒体よりも現実的なモデルを

与える。

モニタ調整・何故モニタ調整が必要なのか

 モニタやTV売り場で並んでいる画面を見ていただければ判るが、同じ画像なのに機

種によって色が違って見える。また、昼間と夜で同じ画面なのに見やすさが違ってくる。

 極端な話し、モニタが適切に調整されていない場合幾ら綺麗に撮れた画像でもキレイ

に見ることはできない。そんなモニタでデジタルカメの画質を比較することは誤った評

価を出すだけである。

 最低でも明るさとコントラストの調整はしておく必要がある。個々の調整の仕方は画

面のプロパティやモニタの取扱説明書を読んで事前に調整しておくことを推奨する。

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 それと静電気で結構汚れている場合があるので、画面を拭くのも忘れてはならない。

明るさコントラスト調整をしする。

 下記サンプルは HTMLの色指定で 16階調を表示している。16階調が正しく見分けられ

だろうか? モニタの明るさとコントラストが正しく設定されていないと、階調が潰れ

てしまう。特に両端の黒と白の部分が区別できるか判断して頂きたい。

 またグレーではなく赤味や青味がかって見える場合は色の調整も必要である。

 市販のレタッチ編集ソフトであるフォトショップを持っている人は付属のアドビガン

マを利用すると容易にグレーバランスを調整することができる。  

                               

・調整の手順

 調整前に設置場所・環境を整える。

 具体的には、外部の灯りの影響を受けない場所に設置、受けるようならフード等を利用

する。部屋の灯りは白色光の蛍光灯にすると行ったところである(色評価用蛍光灯がベ

ストである)。

 次に色温度調整が 6500 ケルビン前後になっているかどうか確認する。機種によっては

工場出荷設定が 9300 ケルビンと寒色系(青白)になっているものが多い。デジタルカメラ

のデータのホームページ公開を目的としている場合は多くの人が無調整であるという前

提で遭えて 9300 ケルビンにしておくのも一つの手である。

 最低でも電源を入れて 15分から 20分くらいしてから調整を始め必要がある。特に CRT

は暖まるまで時間が掛かるので 30分以上を推奨する。

 調整の際はまず明るさで黒側が判別できるように調整し、コントラストで白側が判別

できるように調整するのがよいようである。

一度調整したからと安心は禁物である。経年変化などでずれて来るから年に最低でも 1回

くらいは調整することが肝要である。

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ガンマとガンマ補正・ガンマ値(gamma value)

画像の明るさの変化と、出入力電圧の比で、これが 1に近いほど自然な画像に見える。

入力または出力する色と、画像データによる信号の強さの関係を「ガンマ特性」と呼ぶ。

例えば、ディスプレイでは、入力されたディスプレイの輝度信号と、実際のディスプレ

イ上の蛍光帯の輝度の関係がガンマ特性である。

これは常に完全な比例関係になっているわけではなく、ディスプレイの種類によっても

違うので、自然に近い画像を表示するためにはガンマ値を調整する「ガンマ補正」を行

なう必要がある。

・誤解されがちなガンマの話(電塾・塾長早川氏の論文より抜粋)

良く使われるカラースペース、AppleRGBはガンマ 1.8、sRGBはガンマ 2.2、再現色域の

差は大きなものでは無くガンマ値の違いによる濃度差が最も眼に付く。

プリントや印刷物など反射原稿はガンマ 1.8、カラーポジや標準的なモニタはガンマ 2.2

と言われている。モニタ調整アシスタントや Knoll Gamma等でガンマを調整した場合、

ガンマ 1.8よりもガンマ 2.2のほうが表示は暗くなる。その結果、ガンマ 1.8のデータよ

りもガンマ 2.2のデータのほうが暗いデータなのだと思い込まれている人が多い様である。

ひとくくりにガンマといいっても、表示結果(表示デバイス)のガンマの話である。一

般にガンマというとこのガンマ値を指している。

Photoshopのレベル補正で中間濃度スライダを移動すると、表示数値も変化するが、この

数値はガンマ値の変化量を表している。開いているのがリニアデータ(ガンマ 1.0)であ

ったとしたら、スライダで変化させた後の表示数値がそのファイルのガンマ値となる。

ちなみにリニアな画像データ(ガンマ 1.0)というのは、ガンマ 2.2の一般的なモニタで

表示したら明るくてフラットな画像である。ガンマ 1.0という表示特性のモニタが有れば

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正常に表示されるはずである。ガンマ 1.8(例えば AppleRGB)のデータを開いてレベル

補正で中間値として 1.8を打ち込むとリニアデータ(ガンマ 1.0)の状態をシミュレーシ

ョンすることができる。ファイルのガンマ値は数字が多いほど明るく表示されることに

なる。

もちろん表示だけでは無くデータそのものも明るくなっている。反対に数値を 0.55など

と1よりも小さくすると暗くなる。

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デジタルフォトデータのガンマ値とは、入力から出力までのトータルな環境の中で考え

る必要がある。元をたどればリニア(直線的)な階調はリニアに感じられないという、

人間の眼の感受特性に端を発しているが、同様に各々の出力機器に応じた固有のガンマ特

性を考慮しないと、視覚的に正しい階調を得ることができないのである。

それら出力機器固有のガンマ特性が、反射原稿のガンマ 1.8、TVモニタのガンマ 2.2であ

り、sRGBのガンマ 2.2、AdobeRGBのガンマ 2.2、AppleRGBのガンマ 1.8である。

AppleRGBがガンマ 1.8なのはプリントや印刷物のガンマ特性とモニタの表示を近付ける

ための意識的な工夫である。

sRGBや AdobeRGBがガンマ 2.2なのはモニタ本来のガンマ 2.2をそのまま素直に採用し

ているからである。数ある RGBカラースペースの多くが各種モニタの再現範囲そのもの

であることは理解できると考えるが、広範色域 RGBや ProPhotoRGBなど再現できるデバ

イスは存在しない計算上のカラースペースも現実にはあり得る。

それら表示デバイス、出力デバイスのガンマ特性に対応して画像入力時に、そのガンマ

特性を補完する逆数のガンマ値を与え、入出力トータルでガンマ 1.0(リニア)の状態に

するのがデータのガンマである。ガンマ 1.8に対応するために1÷1.8=0.55のガンマ値に

なる。ガンマ 2.2に対応するためには1÷2.2=0.45となる。スキャナなどでガンマ 1.8で

取り込むという設定は、実は画像データをガンマ 0.55で取り込んでいるのである。これ

をガンマ 1.8のデータだと思い込む

と誤解が生じる。ガンマ 1.8の表示

に適合させるためにガンマ 0.55の

特性を与えたデータなのである。

・ ガ ン マ 補 正 ( gamma

correction、gammacorrection)

画像の階調の応答特性を表わすと

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きに「ガンマ(γ)」という数値が使われる。たとえばディスプレイの場合、表面の明る

さは入力電圧に正比例せずに指数関数的な変化をする。入力電圧が小さいときは明るさの

変化は緩やかで、入力電圧が大きくなると明るさの変化が急激に大きくなる。この関係

が 2.2乗のカーブを描くとき、ガンマ(γ)は 2.2であるという。γ=1のときにカーブは直

線になる。γ 1≧ の場合は、黒の潰れた出力になり、γ<1の場合は、黒の浮いた出力になる。

スキャナやカラープリンタなど、画像データの入出力機器はそれぞれ固有のガンマ値を

もっている。画像を忠実に再現するためには、画像入力から最終出力までの全体のガン

マが 1になるようにする必要がある。入出力機のガンマ値に応じた最適のカーブに補正す

ることをガンマ補正という。入出力機器間で画像データを処理するさいにガンマ補正を

施すと、ガンマは各ガンマ変換の値の積になる。たとえばスキャナの γ=0.56で、ディス

プレイの γ=1.8なら、全体のガンマは 0.56×1.8となってほぼ 1になる。グラフィックソ

フトやレイアウトソフトでは画像のガンマ補正を行なうことができる。

チャンネルとレイヤー・カラーチャンネル (Color channel )

 Photoshopなどの画像処理ソフトにある、カラー情報を編集できる機能。すべての画像

はチャンネルパレットでチャンネルを見ることができる。CMYK画像の場合、4色それ

ぞれのカラー情報のチャンネルに分かれ、さらに 4色が統合されたチャンネルができる。

これらのチャンネルは単独に編集でき、チャンネルの交換もできる(図示)。同様に、

RGB画像の場合、3色それぞれのカラー情報のチャンネルに分かれ、さらに 3色が統合さ

れたチャンネルができる。また、バックの切り抜きやオブジェクトのカラー調整などを

するための、特殊なアルファチャンネルを追加することもできる。

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 通常、元画像は、市販のレタッチソフトを利用してチャンネルごと、レイヤーごとに

分けて編集できる。上述のように、チャンネルは RGBと CMYKの 2つがありそれぞれの

チャンネルに分版できる。また、レイヤー(後述)は、文字、画像、背景などをそれぞ

れレイヤー単位で合成でき、総合的には、これらのチャンネルやレイヤーを合成して画

像データを作っている。

・色分解

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 色分解には、次の 2つがある。

RGB① 画像を、プロセス印刷で用

いられる 4 色のインク(CMYK)

に対応した、CMYK層の画像に分

解 す る こ と で あ る 。 Adobe

PageMaker や QuarkXPress など 4 色

分解をサポートしたソフトウェア

を使えば、CMYKの 4色用の製版

フィルムが作成できる。 各モー

ドにおける色構成には大別して 3

種ある(右図)。使用目的によっ

て該当するモードを選択してそれ

それのデータ情報(チャンネル)

に分けて色を創生する。

②フラットベッドスキャナのカラー画像読み取り方式である。

(1)RGBの 3つの光源を順番に切り替える「RGB光源切り替え方式」、(2)RGB3色の

ストライプフィルタ等のカラーフィルタをオンチップ状に形成したカラー CCDで読み取

る「カラーセンサ方式」、(3)原稿から CCD までの光路中で、R、G、Bのフィルタを

切り替える「色フィルタ切

り替え方式」、(4)白色光

源を RGB3 色に分解して各

色を 3 つの CCD で読み取る

「プリズム色分解方式」が

ある。(1)RGB光源切り替

え方式、(2)カラーセンサ

方式は、原稿全体をいちど

の走査で読み取る「線順次

ワンパス読み取り」が可能

で高速化が容易に図れるた

め多くのスキャナが採用し

ている。とくにカラーセン

サ方式はセンサの性能向上

に伴い増えてきている。(3)色フィルタ切り替え方式は、原稿全体を 3度の走査で読み

取る「面順次スリーパス読み取り」のため、一般的に線順次方式に比べて読み取り時間が

遅くなる。しかし、光源やオンチップフィルタによって色特性が一義的に決まってしま

う光源切り替え方式やカラーセンサ方式に対し、フィルタ切り替え方式ではフィルタを

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選択することによって色の再現性を簡単に調整できる。(4)プリズム色分解方式は光学

系に大きくコストがかかるため、パーソナル向けスキャナでは採用されていない。

・アルファチャンネル(alphachannel)  

 コンピュータが扱うデジタル画像データにおいて、各点に設定された透過度情報を保

存するデータ領域を示す。 透過度情報はアルファ値と呼ばれ、完全な透明(無色)から、

完全な不透明(背景の色をまったく通さない)まで設定することができる。コンピュータが

画像を扱う場合、色情報として、各点について R(赤)・G(緑)・B(青)の三原色のデータ領

域(チャンネル)をもち、その組み合わせで色を表現する(CMYK モードの場合は 4色)。点

の透明度を表現する場合にはこれにアルファチャンネルを加え、4つの情報の組み合わせ

で一つの点を表現する。 アルファチャンネルは、データ形式やソフトウェアによって、

用意されている場合とされていない場合がある。

 また、画像処理アプリケーションがデータ加工用に使用する補助チャンネルのこと指

し、32-bit QuickDrawは RGBそれぞれ 8bitずつ、計 24bitを使ってカラー表示を行なうが、

余った 8bit をアルファチャ

ンネルとして使用すること

もある。 Adobe Photoshop な

どの画像処理用アプリケー

ションで採用され、αチャン

ネルとも表記される。

・レイヤー(layer)

 画像系ソフトに搭載され

ている機能で、元画像に手

を加えることなく修正や文

字を加えるなどの作業がで

きる。理屈としては、元画

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像の上に透明のシート(レイヤー)があり、その部分に修正や変更を加えることで元画

像には影響がないようにしている階層のことである。複数のレイヤーを利用することで、

作業途中に簡単に戻ったり、同じ変更を別の画像に加えるなど、非常に多彩なテクニック

が使える。

レイアウトソフトやドロー系グラフィックソフトでは、オブジェクト同士に前面背面の

関係があるが、いくつかのまとまったオブジェクトが属するレイヤーを作成し、そのレ

イヤー同士に前面背面の関係をもたせることもできる。最近ではペイント系のグラフィ

ックソフトにもレイヤー機能が取り入れられてきた。特定のレイヤーの表示、非表示を

切り替えたり、下書きのレイヤーを隠したりすることで、複雑な描画の際に威力を発揮

する。

条件等色(メタメリズム)とアイソメリズム・条件等色(メタメリズム)

 これまで物体の色は照明光源の違いによって、いろいろと変化して見えるということ

があったが、例えば、「太陽の下で同じ色に見えていた 2つの試料が、室内に入って見た

ら違う色に見える」という場合がある。下図左を見て頂きたい。試料 Aと試料 A’を分光測

色計で測定すると、分光反射率グラフで分かるように、分光反射率がそれぞれ違ってい

る。また、標準の光 で測定した値(L*、a*、b*)は同じであるが、標準の光 Aで測定した

値(L*、a*、b*)は違っている。このように、分光反射率が異なる 2つの色が特定の光源下で

同じ色に見えることを、条件等色(メタメリズム)と呼んでいる。条件等色(メタメリズム)は、

着色材(顔料、染料)の種類が異なっていると起こりやすくなる。不思議である。では、こ

の「条件等色」の問題を解決するた

めにはどうすればよいのであろか。

条件等色の評価は、標準の光 と標

準の光 Aのように、発光特性の大き

く違う 2種類以上の光源で測定する

必要がある。刺激値直読方式の色彩

計には、1種類の光源しか内蔵されて

いない。従って、条件等色を測定す

ることができないのである。その点、

分光測色計には、これまでも見たよ

うに、たくさんの照明光源のデータ

が内蔵されているから、条件等色を測定することができるのである。さらに、分光測色

計の大きな特徴でもある分光グラフ表示機能によって、二つの色の違い (波長成分の違い)

をグラフによってはっきりと示してくれるのである。

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・アイソメリズム 

 アイソメリズム(isomerism)は、同じ色紙を 2枚に切って比較した場合、その光分布は

同じであり、照明光源を変えても当然同じ色に見えることである。

→同色と同義。

 つまり、分光反射率を再現するというもので、「全く同じ物を複製する」というよう

な再現のやり方である。照明条件が変わっても等色が成立する isomerism(アイソメリズ

ム)である.印刷物と印刷物というようにメディアが同じ場合は何とかなるのであるが、

CRTと印刷物のようにメディアが異なる場合は事実上不可能である。

 分光的色再現では分光分布を一致させるので、オリジナルと再現物はどんな照明のも

とでも(オリジナルと再現物の照明がそろっていれば)同じ色に見える。このような等

色を isomerism(アイソメリズム)という。

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人の目の色識別域人の目には、ある色を基準にしたとき、色

が異なるにも関わらずその色の違いを識別

できない範囲が存在する。これを、色識別

域と呼んでいる。

図は、CIE L*a*b*色空間を表す a*b*色度図

の一部を図式化したものである。色度図上

に描かれた白い楕円(これをマクアダムの

楕円という)は、各彩度および色相におけ

る、人の目の色識別域を表している。つま

り、この白い楕円の範囲に含まれる色は、

人の目では色に違いがあっても識別できな

い。

この白い楕円に注目してみると、 CIE

L*a*b*(L*a*b*表色系)の色空間(色度

図)上では、人の目が色の違いを識別する

能力に、次の 4つの特長があることがわか

る。

1)彩度の高い色では色の違いに対する感

度が低く、色の違いを識別しにくくなる

(彩度依存性が高い)

全体的に、彩度が低い色では真円に近い形

状ですが、彩度が高くなるごとに、色相方

向に狭く彩度方向に広く延びた楕円形状と

なる。つまり、彩度が高いと、少々色差が

大きくても、人の目には区別ができない。

2)色相方向の色の違いに対する感度が、

色相によって異なる

3)明度方向の色の違いに対する感度が、

明度によって異なる

残念ながら図では、明度は紙面を貫く法

線で表されるため確認できないが、明度

50の辺りが一番感度が高く、明度が低く

ても高くても感度が低くなるといわれて

いる。

4)青色では、色識別域の方向がゆがむ

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図中の青色付近の白円は、図の中心から彩度方向へ延ばしたラインに対して傾きを生じ、

彩度方向を長軸とする楕円形状になっていないこ

とがわかる。

また、こちらもよく用いられるクロマネティクス

指数差 Δa*b*も、図中□で示されるように方形状を

しており、人の目による色識別域の形状(白い楕

円形状)と大きく異なっていることが分かる。こ

れらの形状の違いが、計算結果に基づく色差判定

結果と人の目による評価との違いとなって表れる

のである。

実はこれらの特徴が、測色計による色差判定と人

の目による評価に違いを生じさせる原因となって

いる。

CIE Lab(L*a*b*表色系)での色差判定に一般的に

用いられる色差 ΔE*abは、右図中○で示している

ように、どの彩度、色相においても同様に真円で

示される。

図中の白円 Aと Bを比較して見ると、色相角 120

度付 近(黄緑色)の A と色相角 180 度付 近(緑

色)の Bとでは、彩度は同じくらいの色でも、色

相方向の幅が Aでは広く Bでは狭くなり、より細

長い楕円になっていることが分かる。つまり、A

より Bのほうが、色相の違いによる色の違いに敏

感になる。

色差 ・色差の概念

人の目の色識別域との形状、大きさの違いにより生じる目視評価との違い、この問題点の

解決策として登場したのが

CIE2000色差式である。

CIE2000色差式では、人の目の色

識別域の幅が均等になる表色系

の構築を目指すという試みでは

なく、計算に基づく色差が、CIE

Lab(L*a*b*表色系)の立体色空

間上での人の目の色識別域に近

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似するように計算式を定義している。

具体的には、明度差 ΔL*、彩度差 ΔC*、色相差 ΔH*をもとに、重価係数 SL、SC、Shで重

み付けを行う。重価係数 SL、SC、Shは、明度 L*、彩度 C*および色相角 hの影響が加味

されており、CIE L*a*b*(L*a*b*表色系)の色空間上での人の目の色識別域の特長、

1)彩度依存性、2)色相依存性、および、3)明度依存性を考慮した計算式となってい

る。

 L*a*b*表色系の場合、ΔE*ab(デルタ・イースター・エ

ー・ビー)※の数値で色差を表わす。二つの色の、方向

の違いはわからないが、色差を一つの数値で表わすこ

とができる。 の場合、ΔE*ab=5.16 ΔL*=4.03 Δa*=

-3.05 Δb*=1.04である。これを計算式で表わすと、

  ΔE*ab=〔(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2〕1/2

となる。

 一方、L*C*h表色系で測定した場合の色差は のよう

になった。明度差 ΔL*は、L*a*b*表色系と同じであるが、

彩度差 ΔC*=-2.59、色相差 ΔH*=1.92で、図 13から、

彩度がマイナスになり、色相は b*方向へ変化している。

また、図から、 は に比べて「多少うすい色」とい

うことがわかる。

これらを総合的に見て、りんご の色をりんご と比

べて、ことばで言い表すとすれば「赤系の色相で多少

うすい色」といったところであろう。

Δ(※ デルタ)は、差を表すときの記号として使われる。

・色差の計算

-CIE 1976 L*a*b*色差式

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 CIE 1976 L*a*b*表色系で現される色差で、最もスタンダードな色差式として、広く利

用されている。CIE1976L*a*b*表色系で得られた、 L*、a*、b*の値の距離をもって色差と

する。

図 1 CIE 1976 L*a*b*色差式

眼の構造と知覚機能  知覚とは、動物が外界からの刺激を感じ取り、意味づけすることである。 視覚、聴覚、

嗅覚、味覚、体性感覚、平衡感覚などの感覚情報をもとに、「熱い」「重い」「固い」な

どという自覚的な体験として再構成する処理であると言える。

 視覚の観点から見れば

図に示すように、無脊椎動物の網膜では、光は上から

来るように描いてある。光の来る方向に向かって光の

受容細胞である視細胞が配列する。一方、脊椎動物の

網膜では、光は下から来るように描いてある。これを

「反転網膜」と呼んでいる。では何故、錐体や桿体が

眼の一番奥あるかを考えてみる。

 図から判る通り、視細胞は光の来る方向とは逆の一

番奥にあり、その手前に、双極細胞(B)、アマクリン

細胞(A)、神経節細胞(G)がある。これらの細胞は

無脊椎動物では眼の外にあった神経細胞の集団(視

葉)が網膜の中に取り込まれた結果、出来上がった構

造であるといわれている。また、錐体や桿体は光を電

気信号に変換する場合に多くのエネルギーを必要とするので、毛細血管を含む色素上皮に

接している方が栄養補給を行うのに適しているからでもある。このように脊椎動物の網

膜には脳に近い機能が取り込まれており、網膜で視覚情報処理の最初のステップが進行す

る。

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 視覚とは、可視光を物理的入力とした感覚のことであり、いわゆる五感のひとつであ

る。視覚によって、外界にある物体の色、形、運動、テクスチャ、奥行きなどについて

の情報、物体のカテゴリーについての情報、物体の位置関係のような外界の空間的な情報

などが得られる。したがって、視覚は光情報をもとに外界の構造を推定する過程とみな

せる。脊椎動物の神経系では、可視光は網膜において符号化され、外側膝状体(LGN)を経

て大脳皮質において処理される。コンピュータビジョンでは、光センサからの光情報の

入力をもとにした処理が行われる。ここではヒトを中心に、動物の視覚のみを扱う。脊

椎動物(ヒトを含む)、節足動物(昆虫、甲殻類)、軟体動物(タコ、イカ)など、多く

の動物が視覚を持つ。

・カメラと眼球の構造比較

 アナログカメラやデジタルカメラと人間の眼に

は、多くの部分でそれら機能の類似点や共通点が

ある。その機能を比較すると右図に示す通りであ

る。 

[カメラ]  [眼球]    [機能]

レンズ    水晶体   光を焦点に集める

絞り     虹彩  光の量を調節する

シャッター   目蓋   光を時間的に開閉する

撮像素子    網膜   映像を投影する

暗箱      強膜   外部の光を遮断する

フィルタ    黄班   特定範囲の波長を通す

コーティング  角膜   外傷保護、平面性確保

・視細胞

人間の目は、網膜の中にある視細胞で光を感じている。視細胞には、桿(杆)体細胞と錐

体細胞がある。桿体は感度がいいのですが、色の識別できず明暗しか判らない。一方、錐

体の感度は桿体ほどよくないのであるが、色を識別することができる。

人は 3 つの錐体を持っていて、

それぞれ青錐体、緑錐体、赤

錐体という。この 3 つは、そ

れぞれ感度のピ-クとなる波

長に差があり、名前の通り、

順に青、緑、赤の色を感じて

いる。

錐体と桿体だと少し成分が違

うが 主にロドプシンという物、質で出来ている。

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ロドプシンに光が当たるとレチナールとオプシンという二つの物質になり、レチナール

は時間が経つにつれてレチノール(ビタミンA 1)になり、レチノールとオプシンがくっ

つくとまたロドプシンになる。

ロドプシンが光をうけてレチナールとオプシンになる時の刺激が脳に伝わって光を感じ

とる。だから ビタミンAが不足すると暗いところで目が見えなくなったり(夜盲症)暗、いところから明るいところに出た時にいつまでも目が見えなくなったり(暗順応障害)

する。

視覚と色覚 ・色の見えモデルの必要性

・観察環境変化への追従の問題

 -同じモニタでも違って見える。

  (右図参照)

-心理的影響

◆ 人間の生理的・心理的特性によって色

の見え方は影響を受ける。1つの色の知覚

は、直前の色の知覚、周囲の色の知覚の

影響なども受ける。

◆ 訓練や色を観察する方法を工夫するこ

とによって、心理的・生理的要素の影響

を小さくすることが可能である。

◆ 生理的・心理的影響の代表的なものに

色対比、同化効果、色順応、残像がある。

◆知覚は脳が視覚情報を積分/補正した結

果起こるものなので、計測の値と異なる

場合がある。

-人間の眼と脳のモデル

 色覚メカニズムを単純化すると図のよ

うになる。

りんご(対象物)に光源が照射され、そ

の色情報は、眼の網膜に配置された 3種

の光センサ RGBで検知される。そこで色

信号である RGBに別々に変換され、視神経を経由して、大脳皮質に

伝送さる。そこで初めて、色として識別される。

 物体は、光が無ければ、色は存在しない。人間が色を認識できる

ということは、「光源」「物体」「視覚」の 3つの要素(これを見え

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モデルの三要素という)が必要である。例えば、真っ暗闇の中では色は識別できない。

また、まぶたを閉じてしまえば物体の色は見えなくなってしまう。さらに、肝心の物体

がなければ、色が存在するはずはない。

 図のように、「光源」「物体」「視覚」の 3つが揃わないと、絶対に色を感じることは

出来ないのである、赤いりんご、黄色いレモン・・・という具合に、色の違いができる

のはなぜであろうか。もともと人間の眼は、RGBの 3つのセンサしかないので、物体の

反射光(又は透過光)に含まれる全ての色

成分を検知するのではなく、眼に入った段

階で RGBの分光特性に分けられる。これを

三刺激値というが、この色情報は視神経を

経由して大脳に伝達されて、初めて色とし

て認識される。

 認識は、心理学的な過程のひとつで、外

界から得た情報が意味づけされた上で意識

に上ることをいう。ここで述べた、外界か

らの情報が知覚である。これは、身体から

の信号である感覚をもとに構成されたものとなる。

 この知覚に対して意味づけを行う過程には知性的能力(理性・悟性)や知識が介在し、

同じ対象に対しても個人ごとに同じ認識をしているとは限らない。 認識の形式や仕方、

認識される対象を主に哲学・心理学視点から研究する分野が認識論である。

ここで、知覚していることは必ずしも認識していることを意味しない。 いわゆる、「見

ている」と「見えている」の違いである。また、認識はそれだけではブラックボックス

で、行動・発話などの出力行為によってのみ客観的に確認できるものである。

・色覚

 色覚は網膜の視細胞のうち、中心部に多くある錐体細胞の働きで、光の波長を感じとり

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それを大脳に伝えて色を感じる。 

-色を感じる三大学説

①ヤング・ヘルムホルツの三大要素説

網膜の錐体細胞には、赤・緑・黄(または青)を感じる 3種の要素があって、これらがす

べて興奮すると白になり、まったく興奮しなければ黒になり、三つの要素がいろいろな

割合で適当に興奮することで、すべての色を作り感じることができるという説である。

つまり、三つの原色の絵具ですべての色を作ることができるのと同じ原理である。

②ヘーリング反対色説

白と黒、赤と緑、黄と青の三つの物質があると仮定して、それらの物質が分解したり合成

(同化)されるときに、白、赤、黄、黒、緑、青の色を感じることができるという説で

ある。

③ラッド・フランクリンの発達説

長波に属する黄の感覚をおこす物質と、短波の青の感覚を分化していくと、長波長、短波

長の両側の波長の光をおこす物質が次々とできてくるという説である。なお、人間の目

は、最高の条件*1のもとで 100 万種類の色を識別することができるといわれている。たと

えば、最も精度の高い光電式分光光度計でも、人間の目に比べると 40%の精度しかない

から、いかに人間の目が素晴しいかわかるであろう。

*1 最高の条件とは次の三つが整っていることをいう。

(1) 両目を使う

(2) 明るい照明のもと

(3) 広い面積の色を比較する

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・光覚

 光覚とは光を感じその強さを区別する感覚のことで、色調、明度、彩度の三つの要素を

持っている。明るいところでは、網膜の視細胞中の錐体細胞(約 700 万)が、暗所では桿

体細胞(1億 5000 万)が光エネルギーを電気エネルギーに変えて脳に伝えることで光覚

を感じることができる。

 ○色調 → スペクトル中の各単色光に特有な色

 ○明度 → 色の明るさ

 ○彩度 → 白がどの程度交わっているかによって決まる要素

また、同じ色でも明るさが異なると目立つ度合が違う。つまり、明るいところでは黄色

と緑がもっとも明るく見え、たそがれ時には、青色と緑色の部分がもっとも明るく見え

る。このようなことをプルキニエ現象とう。

色順応と色恒常・色順応メカニズム

人間の目には、網膜があり、その網膜には光を受容する二種類の細胞がある。

桿体(桿状体ともいう、杆体または杆状体とも書く)と錘体(錘状体ともいう)である。

桿体(ロッド)は、光の明暗のみを知覚する細胞で、いうならばモノトーン(白、グレ

ー、黒)信号のみを受光する。錘体(コーン)は、色を知覚する細胞で、色の三原色であ

る赤 R、緑G、青 Bの光それぞれを受光する。三種類あるということである。

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そして、人間の視覚には、しばらくの間、ちょっとした時間だけでもであるが、受光し

た光信号を”抑制”しようとする働きが起こるのである。

明るすぎる白色は暗いグレーまで抑制したり、彩度の高い鮮やか過ぎる派手な色は地味

なグレーの方向へ抑制したりする。これが視覚の順応である。その中で鮮やかな色を地

味な色へ抑制するのが「色順応」である。

 どのように視覚系の感度が変化すると、なぜ昼光色で照明された時の色に近づくので

あろうか?von Kries (1905) は、簡単なモデルを提案した。

 人間の網膜の 3種類の光受容器(錐体)のそれぞれが、照明光に対して生ずる応答に逆

比例するゲイン制御をしていると仮定すると、3種類の錐体の出力のバランスはほぼ一定

に近い状態に保たれる。

その後、このような単純なゲイン制御だけではなく、視覚系の非線形性を考慮した様々

なモデルが考案され、提案されている(MacAdam; Y.Nayatani et.al.; R.W.G.Hunt et.al.)。この

ように、照明光への色順応は、照明光の変化をキャンセルするように作用することが知

られている。

・不完全色順応

 最近、視覚系の順応は照明光の変化を 100 % キャンセルできるメカニズムではないこ

とが指摘されている(M.D.Fairchild; I.Kuriki ら)。これを不完全順応と呼ぶ。

視覚系の感度変化(=順応)が不完全であるということは、照明光に目が十分に順応しても、

必ずしも全ての物が昼白色の照明光で照らされた時と同じ色には見えない、ということ

である。つまり、色順応だけではわずかながら色の見えに違いが残る、ということを意

味している。従って、順応だけでは色恒常性が説明できない、というのが現在の認識で

ある。

・明順応と暗順応

 光に対する目の反応のことを順応といい、暗いところから、明るい場所に出たときに

視覚が順応することを明順応、明から暗への順応を暗順応という。

明順応には約1分、暗順応には約 30分かかる。

・物体色の見え(色の恒常性)

 照明光や反射光の分光分布が変化すると人が知覚する色も変化する。特に反射物体を見

ているとき、それを照明する光現の変化に伴って眼に入射する物体表面での反射光の分光

分布も変化する。しかし、このような場合でも人間は安定して物体の色を知覚すること

が出来る。つまりどのような照明下であっても赤いリンゴはそれとして知覚される。こ

れが色の恒常性である。

また様々な視環境に適応する能力として色順応が知られている。例えば屋外から白熱電球

光で照明された部屋に入った時、始めは赤っぽいと感じるが時間の経過と共に感じなく

なってくる。

照明光に十分順応するのには数十秒から数分の時間を要することが知られている。

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・色順応効果

 色順応効果について説明する。例えば試験光であるA 光下の状況に十分に順応し、物体

色が完全に基準光である D65 下での見えに一致した時、この順応の状態を完全順応と呼

ぶ。しかし、試験光の色度が D65 光からはずれるにつれて物体色の見えは照明光の色味

を残したものとなる。このような順応の状態を不完全順応と呼ぶ。不完全順応時の色の見

えは、順応が起こっていない状態から完全順応に達する過程の間に位置すると考えられ

る。

・von Kries(フォン・クリース) の色順応予測

 von Kries は、照明光の分光分布の変化に応じて、各光受容器の基本分光感度の形は変化

させず、感度バランスを白色の見えが一定となるように調節することで色順応が生じる

と考えた。これはほとんど全ての色予測手法の基本的な考え方となっている。von Kries

則は完全順応を予測するが、今日では不完全順応状況も多いことが知られている。

下図は、照明光下の白色の分光分布と目の感度のバランスを示す。

色 の三属性(明度、彩度、色相)①色相(色あい)

 オブジェクトが反射または

発光した場合のカラー(赤、

黄、青など)。

標準カラーホイールの回転方

向の位 置( 0~360°)として表

される。

-ニュートラルグレー

 ニュートラルグレーとは、

濁りのないグレーのことであ

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る。

 典型的なニュートラルグレー値としては、次のようなものがある。

 ・ペーパーホワイト

  RGBが、いずれも「255」

 ・ハイライト

  RGBが、いずれも「250」

 ・1/4階調

  RGBが、いずれも「220」

  RGBが、いずれも「190」

  RGBが、いずれも「159」

  ・1/2階調

  RGBが、いずれも「128」

 ・3/4階調

  RGBが、いずれも「98」

  RGBが、いずれも「68」

  RGBが、いずれも「36」

 ・シャドウ

  RGBが、いずれも「5」

 ・ブラックポイント

  RGBが、いずれも「0」

-補色の関係(RGBとCMYK)

 混色したときにグレーになる色の関係。

一般に、RGB(赤・緑・青)と CMY(シアン・マゼンタ・イエロー)とが補色の関係と

して有名である。

CMYK(シアン・マゼンタ・イエロー・黒)データは、印刷用インキによる混色用で、

この混色は、混ぜるほど黒に近づく減法混色と呼ばれる。

対して、RGB(赤・緑・青)データは、光の三原色による混色用で、この混色は、混ぜる

ほど白に近づく加法混色と呼ばれる。

また、デジタルカメラの受光部分には、RGB(原色系フィルタ)やCMY(補色系フィル

タ)が使われている。

 原色系フィルタは、フィルタ(RGB)と同じ色の光だけを通す。

 補色系フィルタは、フィルタ(RGB)と同じ色の光だけを通さない。

すなわち、Cフィルタは「G+B」、Mフィルタは「B+R」、Yフィルタは「G+R」の光

を通す。ただし、各フィルタがカットする光の波長範囲を理論どおりのカーブにするこ

とは、製造技術上、非常に困難であり、CMYカラー空間での値と、RGB空間に変換した

値は正しくない。

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演算の過程で色の再現にロスが発生し、原色系フィルタのような鮮やかなトーンにはな

らない。

①彩度(色度・あざやかさ)

 カラーの度合いや純度。

色相に対するグレー混合の程度を表し、その値はグレー時の 0%から最高彩度時の 100%

の範囲になる。

標準カラーホイールの半径方向の位置として表され、-方向にいくと中間調が多くなり、

+方向へいくと潰れていく。

②明度(明るさ) あるカラーの相対的な明るさや暗さを示し、通常は黒の 0%から白の 100%の範囲にな

る。

標準カラーホイールの軸方向の位置として表され、-方向にいくとハイライト側が多く

なり、+方向へいくとシャドウ側がなくなっていく。

③ 色(色相)と明るさ(明度)の関係

色(色相)は、それぞれ固有の明るさを持っている。RGBがいずれも同一の値 Aで表さ

れるとき(白、グレー、黒)の明度を Aとしたとき、色 RGBと明るさ Yの関係は、次の

ように表すことができる。

     Y = 0.299R+0.587G+0.114B

すなわち、最も明るさに寄与する色は、緑である(緑、赤、青の順)。

(彩度と明度を表す色調(トーン))

 *あざやかな(色(色相・色合い)が強い)⇔くすんだ(色(色相・色合い)が弱い)

(黒も1つの色とみれば、色相に対するグレー混合の程度が彩度(鮮やかさ)といえ

る)

(例えば、256階調で「R:1、G:0、B:0」であれば、「赤色:黒色=1:764」である)

 *明るい(やや明るい)⇔濃い(やや暗い)

 *薄い(やや白い)⇔暗い(やや黒い)

視感度と比視感度・視感度特性とは、

エネルギーが電磁波として空間を伝

わる現象が放射(Radiation)である。

 一般には、人間の目に入って明る

さの感覚を生じさせる放射を光とい

っている。人間の眼で感じることが

できる電磁波が可視光線(Visible

light)である。しかし、広い意味で

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は、紫外線 赤外線を含む・ 100nmから 1mmの波長域を光放射としている。

・視感度(Photopic Luminous Efficiency)

  光はある方向に放射された放射エネルギーが一定であっても、人間の目は波長によっ

て感じ方が異なります。それを視感度という。

 人間の目には明るさを感じる器官が二つあり、明るいところで作用するものと、暗い

ところで使用するがあり、この二つを切り替え(順応)て、昼よと夜といった明るさの

違いに対応している。明るいところに順応したときの各波長の明るさを感じる強さが視

感度(上図参照 最大視感度を示す波長 555nmで視感度は 683lm/W)である。

・ 比視感度(Photopic Luminous Efficiency Function ) 

 光の明るさを表す心理的な物理量を定義するために、光の基本単位として、国際単

位系( SI unit ) の基本単位には光度を定めている。それは単位立体角、単位時間あた

りに放射される 放射強度(放射のエネルギー) に標準の比視感度(明所視標準比視感

度)をかけたものである。

 最大視感度を示す波長 555nmで

の視感度 683lm/Wに対する各波長

の視感度との比率である。人間の

比視感度の世界標準として、1979

年の第 16 回国 際度量衡総会

(CGPM)において最大視感度に対

する標準比視感度 (標準分光視感

効率) が定められた。標準比視感

度には明所視標準比視感度と暗所

視標準比視感度がある。

・プルキニエ現象

 プルキニエ現象(Purkinje Phenomenon、Purkinje effect、プルキンエ現象又はプルキニェ

現象とも言う。)は 19 世紀のチェコの生理学者ヤン・エヴァンゲリスタ・プルキニエが

解明したことから名付けられた。

人間の目の働きの現象である。色は網膜の視細胞で感知しているが、明るい場所では赤が

鮮やかに遠くまで見え、青は黒ずんで見える。一方、暗い場所では青が鮮やかに遠くま

で見えるのに対して、赤は黒ずんで見える。これは、視細胞のひとつ「桿状体」の働き

によるもので、人の目は暗くなるほど青い色に敏感になる。

千利休が浅葱(浅黄)色(うっすらと緑が混じった水色)の足袋を穿いていたのは薄暗い

茶室での色彩のバランスをとるためと言われており、プルキニエ現象に気づいていたの

ではないかと思われる。

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プルキニエ現象による心理的影響として、夕暮時は人間の心理が不安定になりやすくな

り、統計学上でもこの時間帯に衝動買いする人が多いと言われる。

防犯のために活用する動きも見られる。奈良県警はイギリスのグラスゴーの防犯対策に

倣い(ただし、グラスゴーでは当初景観改善のために導入された)、奈良市で青色街路灯

を導入し一定の効果をあげたため、奈良市以外でも天理市、生駒市など県北部の都市を中

心に導入を進めており、全国的に注目を集めている。

表示デバイス・ブラウン管(CRT)

 ブラウン管は、ドイツのカール・フェルディナント・ブラウンが発明した表示器で、

多くのコンピュータ ディスプレイ 、ビデオ モニタ 、テレビ受像器やオシロスコープなど

で用いられる。工学的には英語直訳の陰極線管(CRT、Cathode Ray Tube)や、受像管と

呼ばれる。陰極線とは真空管の陰極(カソード)を熱すると発生する熱電子の高速な流れ

のことである。

カラー受像管の断面図

電子銃

電子ビーム

集束コイル (焦点調整)

偏向コイル

陽極端子

シャドーマスク

色蛍光体

色蛍光体を内側から見た拡大図

-原理

 ブラウン管内で、電子は一本の電子線に集束され、磁界により偏向されて蛍光物質を塗

布した表示面(陽極、アノード)を走査する。電子が蛍光物質に衝突すると光が放出され

る。陽極に高電圧を印加することにより、陰極から放出された電子はさらに加速される。

カラーブラウン管のアノード電圧は普通 20から 26kVであり、白黒ブラウン管ではこれ

よりも低い。電子ビームを輝度変調するためにコントロールグリッドを備えるため、簡

単なブラウン管は真空管の三極管に分類される。さらに多くの電極を持つ複雑な管もあ

る。

ブラウン管で用いられるガラス管は形が漏斗に似ている事から、ファンネルと呼ばれる。

コンピュータの草創期には、蛍光面が高電圧で帯電されることを利用して、主記憶装置の

デバイスとして使用されたことがある。

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-種類

 テレビ受像機では管面全体を走査線(ラスタ)とよぶ固定パターンでスキャンしつつ、

映像信号の輝度成分に従って電子ビームの強さを変調する。このように画面上の任意の点

の明るさを制御することにより画像を作り上げている。この方式をラスタスキャンと呼

ぶ。

初期のレーダー表示装置では、パラボラアンテナの向きと同期して放射線状に電子線を走

査し表示を行う。この方式をラジアルスキャンと呼ぶ。

オシロスコープでは、電子ビームの強さは一定の設定値に保ち、ビームを任意の軌跡に

そって動かして描画する。通常、水平偏向は時間に比例させ、垂直偏向は入力信号の振幅

に比例するように走査する。オシロスコープ用のブラウン管はテレビのものより細長く、

電界により偏向させる。これは、電界偏向のほうが磁界偏向よりも、高い周波数で走査を

行えるからである。

レーザー光線を用いて大気中の微粒子をスクリーンとし、文字や図形を表示する手法があ

るが、それと同様、電子ビームの方向を自由に制御し、文字、図形を直接一筆書きのよう

に表示する表示方法を、ベクトルスキャンと呼ぶ。

・液晶ディスプレイ(LCD)

液晶ディスプレイは、英語の

Liquid Crystal Displayの訳語であり、以下の二通りの意味を持つ。略称は LCD。

-液晶を応用した表示素子

-上記素子を組み込んだ画像表示装置(ディスプレイ)

 日本語でディスプレイと言うと、画像表示装置のことを指すことが多いため、現在で

は後者の意味で使われるのが一般的となっており、表示素子のことを区別して言う時に

は、単に LCDと呼んだり、LCD パネル、液晶パネルなどと呼んだりする。

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液晶ディスプレイなど液晶を使用した表示装置のことを指して、単に「液晶」と呼ぶこ

ともある。テレビ(液晶テレビ)、

携帯電話、デジタルカメラ、パ

ソコン等の画像表示装置として、

広く用いられている。

・ 液晶パネルの原理

1.偏光フィルタ(垂直)

2.ガラス板

3.透明電極に挟まれた液晶

4.ガラス板

5.偏光フィルタ(水平)

6.光源

 液晶パネルは、外光や、フロ

ントライト、バックライト等の光源により発せられた光をさえぎったり透過させたりす

ることによって表示をする。液晶に電圧を加えると液晶分子の向き(配向)が変化する。

この配向変化を利用して光のシャッターを実現して表示する。ただし、液晶だけでは光

をさえぎることができないため、液晶の前後に特定の偏光方向の光のみを透過させる偏

光フィルタを配置する。

液晶は、電卓や時計では、あらかじめ「絵」の形に電極を配置して液晶に電圧を加える。

階調表現と解像度 ・色深度

-基本概念

 色深度(Color Depth)とは、画面や画像データの色数

に関する情報で、使用可能な色数をビットで表したも

のである。画面になにが表示されているかという情報

は、もちろんメモリに記憶されている。そしてたとえ

ば、画面が 256色モードのとき、一つの点の情報をメモリに格納するのに必要なデータサ

イズは 8 ビット(2の 8乗は 256)である。この場合は色深度は 8になる。白黒モードな

ら、ひとつの点に必要なデータサイズは 1 ビットであるから色深度は 1である。

Macで通常使用される色深度には表に示すものがある。

色深度 使用可能色数1 白黒2 4色4 16色8 256色16 32768色32 1670 万色

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 ここで疑問に感じるかもしれない。256色までは計算が合うが、32768色を表すのに必

要なビット数は 15 ビットであるし、167 万を表すのに必要なビット数は 24 ビットである。

・デジタルデータの色深度

 8bitカラーと 10bitカラーの間にあるもの

 デジタルビデオの世界では「8bit」や「10bit」といった表現がよく登場するが、そんな

環境の違いが色の深度にどう影響しているのかを知っておくと、デジタルワールドがも

っとよく見えてくる。

 「転送レート」で、データやディスクの容量の表現として使われている「MB:メガバ

イト」と、ディスクの転送スピードやネットワーク(インターネット)の転送レートと

して使われている「Mbps:メガビット(パーセコンド)」の違いや関係といったあたり

を詳述するが、この単位はデジタルビデオワークの中では、画質や色にも大きく関わっ

ている。

 コンピュータで取り扱うデータは、当然そのすべてが「デジタルデータ」として取り

扱われているわけであるが、それがグラフィックのようなデータであれば、そのデータ

を構成している「画像」や「大きさ」や「色」といったような情報も決して例外ではな

い。

では画像を構成する要素の中で「色」というものが、いったいどのように扱われている

のでしょうか?うを知る必要がある。

なんだか難しそうな話であるが、近年のデジタルビデオの世界では、ビデオカードやソ

フトウェアの画質が語られる多くのシーンで「8bit」や「10bit」や「16bit」といった単位

や「色深度」が当たり前のように使われている。

 まずは、わかりやすいところから、一般的なパソコンにおけるモニタの画面表示色の

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設定を例にとって考えてみる。

「Windows XP」の「画面設定」を見てみると、「中(16 ビット)」、「高(24 ビッ

ト)」、「最高(32 ビット)」といった形でディスプレイの表示色の設定が表現されお

り、「Mac」の場合は「ディスプレイ設定」で「約 32,000色」、「約 1,670 万色」といっ

た形で表現されているのがわる。

 表示できる色の数で両者を分類してみると、Windowsの「中(16 ビット)」とMacの

「約 32,000色」が同じ色の数であることを表しており、同様に「Win:高(24 ビット)」

と「Mac:約 1,670 万色」が同じ色数を表していることになる。

 それでは、この「16bit」を例にとって、その中身がどのようになっているのかを考え

てみる。

「16bit」の場合、先にも触れたように表示できる色の数が「約 32,000色」であるわけで

あるが、ディスプレイ上では「R(Red)、G(Green)、B(Blue)」の 3原色の組み合わ

せによって色が表現されるため、「16bit」の情報量は「R,G,B」各色ごとに情報量を均等

に配分する必要がある。

そ こ で 、 整 数 で 割 り 切 れ る 数 値 で 3 等 分 す る と 、 各 色 「 5bit 」 ず つ の

「R:5bit、G:5bit、B:5bit」がそれぞれの色で使用されているということになる。

 少し面倒な話になるが、「5bit」というのは「2の 5乗」ということになるので、十進

数で表すと「32(2×2×2×2×2=32)」という数値になる。

したがって、「R:5bit、G:5bit、B:5bit」ということは「R,G,B」の各色がそれぞれ「32段

階の階調」の色合いを持っているということがわかる。

ということは、その組み合わせによって「R,G,B」全体で表示できる色の数は「32×32×32

=32,768色」となり、Macのディスプレイ設定で表示されていた「約 32,000色」と合致

することになる。

余談であるが、ビットではなく色の数で設定メニューが表示されているのも Macらしい

部分である。

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 また、「24bit」であれば「R:8bit、G:8bit、B:8bit」となるので、同様に考えると、1色

あたり「2の 8乗」で、「256階調」の色合いを持ち、表示できる色の数は「256×256×256

=16,777,216色」ということになる。これが、デジタル上で取り扱われる色再現の基本的

な仕組みである。 それでは次に、「bit」による色再現の違いを、実際に目で見てみて、

どのような違いがでてくるのかを視覚的に表現してみる。

わかりやすくするために「R,G,B」のうち「G:Green1色」だけの場合で考えてみる。

・16bitの場合の階調表現

 先にも触れたように「16bit」の場合は「R:5bit、G:5bit、B:5bit」の構成となり、「G:

Green」1色あたりは「5bit/32階調」の色合いを持っているので、「0~100%」のグラ

デーションに当てはめて考えると <図 1:上> のように「32段階」で表されることになる。

「32階調」の変化では、視覚的にも 1階調ごとの変化がはっきりとわかり、滑らかなグ

ラデーションを再現することができないのが見てとれる。

・24bitの場合の階調表現

 これに対して、「24bit(R:8bit、G:8bit、B:8bit)」の場合は、1色あたりは「8bit/256

階調」の再現性があることから下図のように、人間の目では段階的な変化は識別しにく

いぐらいに滑らかな再現が可能になる。

 グラフィックや映像制作の現場を考えてみると、最終的にビデオ出力するような場合

には 5bitの制作環境で作業を行うことはまずなく、通常「8bit」以上の色深度が使用され

るはずなので、段階というものをそれほど意識する必要はない。

 しかし、滑らかな変化に見える「8bit」環境であっても、実は人間が一般的に識別でき

る限度よりも多い色数を持っているだけで、厳密に言えば 256段階(RGB各色ごとに)

という段階的な階調になっていることは理解しておいたほうがよい。

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 ここで、先に進む前に、統一性を図るため定義付けをしておく。

表示色の設定を表す「bit」の表記は、同じ色数を表現する場合であっても「24bit(R,G,B

の合計)」であったり、「8bit(1色あたり)」であったりと、さまざまであるが、映像

関連の機器(ビデオカードなど)やワークフローの中では一般的に後者の「1色あたりの

bit数」で表現することが多いので、この後の表記はこちらに統一することにする(フル

カラー環境を 8bitと表記)。

 さて、先にも紹介したように「8bit」あれば、人間が識別できる色数以上を表示できる

わけであるが、近年のデジタル映像機器(VTRやビデオカードなど)では、「8bit」では

飽き足らず、「10bit」や「12bit」さらには「16bit」といった仕様が謳われているものが

数多く存在する。

また、映像制作に使用される VTRにおけるデジタ

ル映像信号の「量子化 bit数(アナログ信号をデジ

タル信号へ変換する際に、何段階の数値で記録す

るかを示す値)」を見てみると、下表の通り

「8bit」のものと「10bit」まで対応しているものが

あることがわかる。

 こうしてみると、ノンリニア編集システムの導

入を検討する場合などは、いったい「何 bit」のシ

ステムを選択すればよいのか迷ってしまうが、通

常、先にも触れたように、人間の目では「8bit」以

上は識別できない(個人差があり識別できる人も

いる)ことから、「DVCAM」や「DVCPRO」などの「8bit」で記録する VTRの使用がメ

インであれば、「8bit」以上の制作環境は基本的に必要ないというように考えられる。

実際、「DVCAM」で撮影した素材をノンリニア上で編集していく場合、カットでつなげ

ていくだけでエフェクト(レンダリング)等を使用しないのであれば、まず「10bit」は

必要ないと考えてよい。

先に解説した数式に当てはめてみると、「10bit」の場合は、「2の 10乗=1024階調」の

色深度を持っていることになり、実に表示色の数は「1024×1024×1024=1,073,741,824(約

VTR または映像信号 量子化 bit数SDDigital Betacam 10DVCAM 8DVCPRO 8DVCPRO 50 8D-1 8D-5 10HDHDCAM-SR 10HDCAM 8/10HD D5 8/10DVCPRO HD 8

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10億色)」ということになる。

 しかし、忘れてはならないのは、「8bitであれば人間の目では識別できなくてもデジタ

ルデータ的には段階的な階調になっている」ということである。

合成作業を行う場合、2つ以上の画像を重ね合わせることになるが、風景などの自然画像

には、実に多くの階調(グラデーション)が存在していて、それらを掛け合わせていく

と作業過程においては「8bit(256階調)」以上の情報量が生まれてしまうケースがある。

また、カラーコレクションやエフェクトなどの作業では、色相や彩度や明度といった

「階調」を左右する部分において、煩雑な足し引きが繰り返され、情報量が増えてしまう

こともある。

 ではあるが、「8bit」環境で作業していれば、合成後の結果は、結局「8bit」のレンジ

の中に圧縮されてしまうことになり、思いがけない変化や劣化を招いてしまう可能性も

あるということになる。

 結果的に「8bit」の VTRにマスタリングするのであれば、何の意味もないように思わ

れるが、作業工程で繰り返される過密な作業において、可能な限り情報を失わないよう

にすることは、最終的なクオリティに大きく影響してくると考えて間違いない。

 なお、「10bit」のデータは、当然「8bit」のデータよりも情報量が多くなるってしまう

ために、データ容量も、ディスクに求められる転送レートもあがってしまうことになる。

これからのデジタルワークにおいては、プロジェクトをスタートする前に、作業内容に

応じた環境を決めることも大きなポイントになる。

・階調 

階調とは、パソコンで色を表示する際の色の変化の滑らかさを示す数字のことである。

例えば白黒の 2階調といえば白と黒だけで表現しなければならないが、10階調となれば、

白と黒の間に 8段階の明るさの灰色を使えることにな

る。

カラー画像の場合は光の三原色である赤(R)緑(G)

青(B)がそれぞれ何階調あるかで表現できる色数が変

わる。それぞれが 2階調ならば表現できる色の組み合

わせは 2の 3乗で 8 通り、つまり 8色になる。パソコンで扱う最高の階調は 256階調が一

般的。この場合表示できる色数は 256の 3乗で 1677 万 7216色となり、これを便宜的にフ

ルカラーと呼んでいる。

画素のいちばん明るい状態からいちばん暗い状態までを、何段階にわけるかをあらわす

量子化の数を階調という。1つの画素に各色1ビットの記憶領域を割り当てると、各色2

階調(2 1=2)、2ビットでは各色4階調(2 2=4)、8ビットでは各色 256階調(28=256)で画像が表現できる。

また、色の濃淡を表すグラデーション(gradation)、つまりカラーやグレースケールの調

子の段階のことを階調という。例えば白と黒の場合、その中間には灰色があり、さらに

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灰色には薄いものや濃いものがある。この段階を多く取ることで、白と黒のたった 2色

でも、滑らかな色の変化を持った表現力豊かな画像を構成することができる。通常、

Macintoshでは 256階調(8bit)まで扱える。RGBカラーがそれぞれ 8bitの階調をもった

場合がフルカラーである。画像処理ソフトなどでビットマップ画像を扱う場合、補正を

かける度に画質が劣化してしまう。

-階調による画像の違い 画素のいちばん明るい状態からいちばん暗い状態までを、何段階にわけるかをあらわす量子化の数を階調という。1つの画素に各色1ビットの記憶領域を割り当てると、各色 2階調(21=2)、2 ビットでは各色 4階調(22=4)、8 ビットでは各色 256階調(28=256)で画像が表現できる。

フルカラー64 階調(6ビット)

・ポスタリゼーション(階調変更) ポスタリゼーション(階調変更)とは、グラフィックの階調を変える処理である。通

常のフルカラーグラフィックは RGBそれぞれ 256階調で表現されているが、この階調を

変えてやることで様々な効果を出すことが可能で、さらに他の処理の前処理として使わ

れることも多いようである。ここでは、フルカラーグラフィックの階調を変更してどの

ような効果が得られるか、試してみる。

-階調の変更

 RGB各 256段階の階調を任意の数の階調に変更する。つまり、0-155の値を階調数分の

区間に区切るわけである。この分割は簡単で 256を階調数で割れば、区間に含まれる階調

数が求まる。例えば、2階調に分けるのなら 0-127、128-255と各区間に元の 256階調の内

の 128階調が含まれるわけである。3階調の場合は、割り切れず 86、85、85となるので

0-85(この区間のみ 86階調)、86-170、171~255などとすることになる。

 区間が求まってから問題になるのは、その区間の「値」である。これは、やはり全体

を等分に分ける値を採用したいところである。ただし、コントラストを低下させないた

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めに最初と最後の区間は最小値である 0、最大値である 255にする。例えば、256段階 0-

255の階調を 2階調にするのなら、0-127、128-255と分けられるが、それぞれの値は 0-127

が 0,128-255は 255とする。また、3階調なら最初と最後は最小・最大である 0と 255を

対応させ、間にはその中間である 127か 128を置くと良さそうである。4階調なら、最初

と最後の間が 2つあるので階調の幅を 85にすると(0、85、170、255)ちょうど収まる。

3階調

元の階調 0-85 86-170 171-255

階調の値 0 127 255

4階調

元の階調 0-63 64-127 128-191 192-255

階調の値 0 85 170 255

 以上の例を見てみると、階調の値の増加幅は 255を階調数-1で割ったもの、になりそう

である。実際、簡単な図を描いてみれば最初と最後を除いた「間」にある区間の数は階調

数-2なので、その間に区間の数だけの値を等分に配置するには全体の増加数 255を階調数

-1で割れば良いことがわかる。これは、値が 0となる最初の階調を除いた区間を残りの

区間数(全体の区間数-1)で等分する、と考えても良い。

 ただし、こうして求まった階調の増加幅を順次加えていくことで得られる階調の値は

「全体を」等分に分ける値なので「各区間の」中央値とは一致しない場合もある点に注意

が必要である。(例えば、上の 4階調の例を見ても一致していない)。場合によっては、

間の区間については区間の中央値をとった方が良いこともあるかもしれない。

デジタル画像の概念

・デジタル画像の意味

-デジタル化の仕組み 2次元画像や 3次元画像を問わず、画像のデジタル化は、まず標本化から始まる。標本化する場合にはサンプリング周波数、つまり画像を分割する目盛の大小を決める。周波数

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が高ければ高い程、細かいサイズに分割できる。標本化が終ると、それを数値化する。これを量子化というが、量子化は離散的な値(とびとびの値)に数値化することである。また、デジタルの意味は、次の 3つがある。①0101の配列により情報を信号化し運用する総体的事柄をいう。つまり、デジタルは 0と 1からなるコードをもとに表現される。数字・アルファベット・漢字・図などは、ドットの数が多くなるだけ書体や図の表現を詳細にかつ大量な処理を可能にする。アナログ情報と違ってデジタル情報は、その信号を遠隔地に劣化なく送信することができるのが最大のメリットである。②紙・マイクロフィルム情報(文書・帳票・図面)・写真などのアナログデータをデジタル信号に変換して記録することをいう。また、画像加工・コピー・検索・通信などデジタルデータにすることで利用範囲を拡大することができる。③デジタルデータを活用することでオリジナルであるアナログデータの劣化防止、データ活用の効率化を実現できる。

デジタルの特徴

画像処理 デジタルの画像データはゴミ・かすれ等を修正することが可能。

階調処理以前白黒 2値でしかなかったデータから現在では写真調画像の入力においてより

再現性が向上。

加工・編集 画像の回転、拡大・縮小、トリミング、傾き補正、部分修正等加工・編集が可能。

データ圧縮データ量が大きい階調処理、高解像度のデータは圧縮を行うことによりデータ量

を低減し運用を容易にすることが可能。

検索 パソコン等でデータを参照する際に、検索(画像の読み出し)が瞬時に可能。

通信 ネットワーク上でのデータ情報の共有、通信が可能。

複製デジタルデータの複製を作成する場合データの劣化がほとんどなく、オリジナル

と同等の複製が容易にできる。

解像度dpi(dot per inch)…1インチ(25.4mm)の中にドット(黒点)がいくつ表現でき

るかによりデータの精密さを表す。

書類の一般的解像度目安

漢字を含む日本語書類 400×400dpi

英数字の書類 300×300dpi

大きな手書き文字書類 200×200dpi

 

-標本化 (Sampling)

 標本化または英語でサンプリング(sampling)とは、時間的に連続した信号を一定の間隔

をおいて測定することにより、離散的な(連続でない)データとして収集することであ

る。アナログ信号をデジタルデータとして扱う場合には、標本化が必要になる。標本化

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によって得られたそれぞれの値を標本値という。

連続信号に周期 T のインパルス列を掛けることにより、標本値の列を得ることができる。

この場合において、周期の逆数 1/T をサンプリング周波数(標本化周波数)といい、一般

に fs で表わす。

周波数帯域幅が fs 未満に制限された信号は、fs の 2 倍以上の標本化周波数で標本化すれば、

それで得られた標本値の列から元の信号が一意に復元ができる。これを標本化定理とい

う。

数学的には、標本化されたデータは元信号の連続関数 f(t) とくし型関数 comb(fs t)の積にな

る(fs はサンプリング周波数)。 これをフーリエ変換すると、スペクトルは元信号のス

ペクトル F(ω) が周期 fs で繰り返したものになる。 このとき、間隔 fs が F(ω) の帯域幅よ

り小さいと、ある山ととなりの山が重なり合い、スペクトルに誤差を生ずることになる

(エリアシング)。

-量子化(Quantization)

 物理学において、古典力学で連続量と考えられていた物理量が、量子力学の量子条件に

合わせて離散的な(とびとびの)値になること。連続量を不連続量で表す近似ではない。

ミクロの世界が本質的に不連続になっていると考えなければならない。なお、古典力学

の理論から量子力学の理論に移行するための手続きそのものを指す場合もある。具体的

には正準量子化、経路積分量子化、確率過程量子化などが存在する。

情報理論において、アナログデータ(連続量)をデジタルデータなどの離散的な値で近

似的に表すこと。離散値としてとりうる値の範囲を広げると(例えば値をあらわすのに

用いるビット数を増やすと)、一般に量子化の精度を上げることができる。

データ圧縮においては、値の精度を落としてより少ない(粗い)区間に分け直すこと。

元の区間に戻すことを逆量子化と呼ぶ。

-ラスタデータ(イメージデータ)

2値化されドットで表されたデータをラスタデータとう。解像度を高くするほど画像情報

として細微な表現が可能になる。

-ベクトルデータ

始点と終点の 2 点の線分を座標表示しコード化した情報をベクトルデータという。長さと

方向を二次元または三次元で表現できる。

CADで作成された情報は、線分をコード化したベクトル情報になる。

-テキスト(テキストデータ)

文字データのことで、特殊な制御コードを含まない文字列からなっている。コンピュー

タの機種やソフトウェアによる互換性の差異が少ないこと、また、 ラスタデータではな

いので文字としてそのまま利用することができる。

英数字のASCII コード、日本語 JIS コードなどコード体系を基に表現される。 体系の違

う文字を扱う場合コード変換が必要となる。

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紙・マイクロフィルムからデジタル化された文字は、あくまでもラスタデータであり文

字情報としてそのまま利用することはできない。

対応としてOCR(光学文字読み取り)機能でテキストデータに変換することができる。

デジタル画像の仕組み・ 「画素」を「数字」で持つ(量子化)デジタル化の仕組みについては、上で述べた通りである。アナログ画像がデジタル画像に変換されるプロセスは、

  画像分割→標本化(サンプリング)→量子化→数値化

であり、このプロセスがデジタル画像を作成するための基本ステップとなっている。

アナログ信号とデジタル信号の比較

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色素色素(coloring matter)とは可視光の吸収あるいは放出により物体に色を与える物質の総称

である。色素となる物質は無機化合物と有機化合物の双方に存在し、染料や顔料に於いて

は発色成分として含むものも多い。逆にすべての発色が色素によるものというわけでは

なく、光の散乱による白色顔料や光の干渉による構造色や真珠状光沢など色素による可視

光の吸収あるいは放出とは無関係の発色原理を持つ染料や顔料も存在する。また応用分野

では色素と染料あるいは顔料との言い表しの区分は明確ではなく相互に言い換えられる

場合もある。

・概論

光の吸収あるいは放出は物質を構成する電荷と光子の相互作用の結果である。電子のエネ

ルギー準位に相当する光の波長は多くの場合紫外領域に存在し、分子の電気双極子の振動

に相当する光の波長は赤外領域に存在する。したがって可視光を吸収あるいは放出する色

素となりうる化合物は少数である。また、通常存在する状態で目で色を感じるほどの呈

色を示さないものは色素としてみなされない場合が多い。

また、実際には、単純に色素が光の吸収あるいは放出した光に、物質粒子による表面散乱

や反射、透過、屈折、干渉などの光学的な効果が重畳する。したがって、色素の色と、そ

れを含む物質の見た目の色とは必ずしも一致しない。

かつては特定の置換基、構造が色素の発色原因と重要視された時代もあったが、分子の構

造が可視光の吸収あるいは放出に適したエネルギー準位の分子軌道や禁則帯を持つことが

発色に重要な要素であると考えられている。したがって、経験に基づく色素の設計から、

今日では色素を設計するために分子軌道法やバンド理論などの計算機化学によるシミュ

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レーションにより、理論に基づいた設計することも可能になりつつある。

・色素の性能

色素の重要な機能として、観察者に対して色覚上の識別を与えるという点にある。しか

し生物学的な見地から見ると、色素の持つ色彩以外の機能の方が重要な場合も多い。代表

的な例としてヘム鉄が挙げられる。ヘムの中心金属が鉄であるヘモグロビンとミオグロ

ビン、あるいは金属が銅であるヘモシアニンとが存在する。前者 2者は赤色で、後者は淡

青色であるがいずれも生体内では酸素の運搬に関与する重要な色素であり、色とその能

力に直接的な関係は無い。チトクローム等ほかにも生体内では種々の色素が存在するが、

生体内での重要な機能を担っているが、たまたま色彩を持っている為に色素と呼ばれる

ものも多い。

一方、色彩を持つことが重要である色素の代表が葉緑素(クロロフィル)である。葉緑素

は太陽光の中から赤から近赤外の光エネルギーを効率よく吸収するための色素である。

その上、光エネルギーの収集効率を上げるためにわずかに極大吸収換えた複数の色素が

配置され、中心の色素分子に光エネルギーが集中するようになっている(アンテナ色素

に詳しい)。また紫外線による DNA 損傷を防止するメラニンの機能も色が生物学的機能

を持つ例でもある。また、捕食させることが繁殖に有利に働くことを考えれば、花弁や

果実の色も能動的な機能では無いものの、自然淘汰により増強された色素のもつ生物の 1

つの機能とも言える。

人間活動における色素の位置づけを考えるとき、人間の印象に与える色彩の影響力には強

いものがある。それ故、種々の顔料あるいは染料が、市場で取引される商品に特徴を与

えるものとして求められてきた。19 世紀 に有機化学が最初に実用化された分野の一つが

染色の化学であった。同世紀に軽工業が産業化するとともに多くの色素が求められ、有機

化学の発展とともに多くの色素が発見・開発された。また、色素による染色法を応用する

ことで多くの細胞小器官が発見され細胞生物学の発展に色素が寄与した。そして生物学と

同様に生理学や医学の発展にも色素と染色とが応用され医療技術の発展にも大きく寄与し

ている。たとえば色素が持つ染色の選択性から、エールリッヒは「魔法の弾丸」という

着想を得、それが化学療法剤の礎となった。

また現代社会に目を転じてみると、機能性色素は写真、コピー、印刷、光通信媒体、光記

録媒体などを始めとして、色素は種々の情報メディアに大量かつ広範囲に利用されてい

る。したがって色素の存在なくしては今日の情報化社会は語ることができない。

・発色機構

前述のように発色は電荷と光子の相互作用なので、量子効率の高い物質では物質固有の特

性である紫外吸収が長波長側にずれたり、あるいは近赤外吸収が短波長側にずれると、吸

収スペクトルの裾野が可視領域にかかるので色として認識される。またセレン化合物の

ようにエネルギー帯間遷移のエネルギー準位の波長が可視領域と一致して呈色する場合も

ある。つぎに主な発色機構について説明する。

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・発色団説

有機化合物と色と関係に初めて言及したのはドイツ人化学者グラーベ(C.Grabe)とリー

ベルマン(C.T.Libermann)である。彼らは 1868 年 に、色を持つ化合物には炭素、窒素、

酸素の不飽和結合が含まれることを発見した。その後、ドイツ人化学者ウィット

(O.H.Witt)が学説として纏め、ウィットの発色団説と呼ばれるようになった。この理論

に基づき研究と実用化が進められ 19 世紀終わりから 20 世紀初頭にかけて石炭化学工業を

元にした染料化学工業が勃興した。

1876 年にウィットは色を発現する化学構造に発色団(chromophore)という名称を与え、

呈色の原因として必要な色原体(しきげんたい、chromogen)と命名し、染色性を高める

為の置換基として助色団(じょしょくだん、auxochrome)を命名し両者から色素が構成さ

れるとした。ウィットは次の置換基などを色原体とした。

>C=C<、>C=O、>C=N-、>N=N<、-N=O

そしてつぎの置換基を助色団とした。

-CH3、-OH、-NH2、-NHCH3、-COOH

また、1888 年 にイギリスのアームストロング(H.E.Armstrong)は呈色には分子内にキノ

ン構造を持つ必要があるとしたキノン説を提唱した。これは発色団説の特定の場合であ

ると考えられる。

その後、呈色の説明として分子軌道法による機構に発色団説はとって変わられた。した

がって今日の発色団や助色団の意味はウィットの提唱した当時とは異なる。分子軌道法に

よる呈色機構は後に詳説するとして、今日において発色団の意味は不飽和結合系に作用し

て共役系を延長したり電荷の偏りを偏重させる原子団を指す。例を次に挙げる。

>C=C<、>C=O、>C=N-、>N=N<、-N=O、-N=N(→O)-、-NO2

また今日における助色団は塩を形成することで染色性を助け、且つ共役系に対して電子供

与性あるいは電子吸引性を示す置換基を指す。その多くは非共有電子対を持つ電子供与性

置換基である。例を次に挙げる。

-O-、-OH、-OR、-NH2、-NR2、-Cl、-Br、-CN、-NO2、-SO3H、-COOH

したがって、助色団も積極的に呈色に関与しており概念上は発色団に含まれるが、呈色に

関わる主たる原子団を発色団と呼ぶ。

・分子軌道論による発色機構

発色団説は染料化学に対して多大な影響を与えたが、物理学理論に基づいで光学的物性を

説明するものではなく、また染料化学が発展するにつれ食い違いう例も多く見られるよ

うになった。今日では有機色素の呈色の多くは、共役 π電子系が置換効果によりその吸収

スペクトルを移動させたり、吸収強度を増大させることで物質の可視領域の吸収が増大

して呈色すると考えられている。一般に長大な共役 π電子系はより長波長側に吸収帯を持

つ。次に縮合芳香環の環の数と極大吸収波長の例を示す

ベンゼン(無色) - 255nm

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ナフタレン(無色) - 286nm

アントラセン(淡青色) - 375nm

ナフタセン(橙色) - 477nm (可視領域に極大吸収)

ペンタセン(濃紺)- 575nm (可視領域に極大吸収)

上の図はグラフの吸収度は量子収率を加味して模式図としてスケーリングして示してい

る。可視領域の上部には透過光の色を示し、可視領域以外の部分は灰色で示している。ベ

ンゼンおよびナフタレンは可視領域に吸収を持たないために無色である。アントラセン

は可視領域に吸収を持たないが、可視領域に蛍光を持つ為に淡青色に呈色している。ナフ

タセンは紫~黄色にかけて吸収を持つ為に補色である橙色に呈色する。ペンタセンは可

視領域全般に強い吸収を持つものの、青色領域に吸収の極小値を持つ為に濃紺色に呈色す

る。

また、前述のように多くの置換基が置換基効果により吸収スペクトル作用する。したが

って発色団や助色団の構成によっては比較的短い共役 π電子系であっても強く呈色する。

・配位子吸収帯

遷移金属元素を含む化合物で、配位子場の作用で内殻の不対電子の励起による配位子吸収

帯が可視領域と合致して発色する場合があり、結晶場着色とも呼ばれる。代表的な例では

ルビーが挙げられる。ルビーはコランダムを構成している Alの一部が Cr3+に置換した構

造を持つ。配位子場の影響で Cr3+の内殻励起は紫と黄緑に配位子吸収帯を持ち、透過光は

赤色に見える。同様な例として、他にもエメラルド、ヒスイ、アクアマリン、トルコ石、

クジャク石あるいはザクロ石などが挙げられる。

・電荷移動吸収帯

異なる金属イオン間の電荷移動や分子軌道間の電子遷移のエネルギーに起因する電荷移動

吸収帯が可視領域と合致して発色する場合がある。たとえばサファイアはコランダムに

不純物として含まれた Fe2+と Ti4+のイオン間で電子遷移が発生する際に約 2電子ボルトの

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エネルギー差がある。その為、電荷移動吸収帯は黄色から赤にかけて吸収を持ち透過光は

青色を示す。同様な機構で酸化鉄 Fe3O4、鉛丹 Pb3O4も呈色することが知られている。

・エネルギー帯間遷移

金属や半導体などバンド理論説明されるエネルギー帯を持つ物質の一部に、禁止帯幅が可

視領域に合致するために色として現れる光学的性質を持つ物質も存在する。

たとえば、辰砂(硫化水銀(II))は禁止帯幅が 2.1電子ボルトである。そして黄色以上の光

エネルギーは電子の励起に利用されるので吸収され、それ以外は反射されるので赤く見

える。カドミウムイエロー(CdS)は 2.6電子ボルトで紫以上が吸収されて黄色に、セレ

ン化カドミウムは 1.6電子ボルトで可視領域すべてが吸収されるため黒ずんで見える。

・主な色素の区分・名称

色素は特徴、用等などを現す語ともに区分され呼びあらわされるが、次に代表的な区分・

名称を示す。

由来による分類

天然色素

動物性色素

植物性色素

鉱物色素

無機顔料

合成染料・合成顔料(合成色素)

有機色素

有機顔料

用途・機能による分類

染色性による分類

直接染料

酸性染料

塩基性染料・カチオン染料

媒染染料

建染染料

ナフトール染料(アゾ染料)

反応染料(反応性染料)

分散染料

酸化染料

蛍光増白剤

指示薬

生体染色用色素

生体由来の色素

カロチノイド

カロチン

キサントフィル

クリプトキサンチン

フラボノイド

フラボン類

フラバノン

アントクロール

アントシアン

カテキン

キノン類の色素

メラニン

ポルフィリン系色素

クロロフィル

チトクロム

フェオホルビド

フェオポルフィリン

ヘムエリトリン

ヘモグロビン

ヘモバナジン

ヘモシアニン

ポルフィリン

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臨床検査用色素

インドシアニングリーン

医薬品用色素

食用色素

アゾ色素

タール系色素

化粧品用色素

写真用色素

増感色素

シアニン色素

クリプトシアニン

ネオシアニン

減感色素

感光色素

感圧色素

感熱色素

レーザー色素

アンテナ色素

錆止顔料

防汚顔料

導電性顔料

磁性顔料

光導電性顔料

耐摩耗性顔料

防振防音性顔料

真珠顔料

蛍光顔料

蓄光顔料

夜光顔料

示温顔料

染料として使用される色素

アゾイック染料

アゾ染料

アクリジン

アニリン染料

ポルフィン

ミオグロビン

フィコビリン系色素

フィコシアニン

フィコビリン

フィコエリスリン

フィトクロム

アリザリン

アントシアン

アントラキノン

インジゴ

ウロビリン

エリトロクルオリン

カルタミン

キサントマチン

クルクミン

クロセチン

クロリン

クロロクルオリン

クロロフィリド

ゲニステイン

コチニール

ゴッシポール

コンメリニン

シコニン

ステルコピリン

ゼアキサンチン

タンニン

ツラシン

バクテリオクロロフィル

ビキシン

ビリベルジン

ビリルビン

ヒペリシン

ピンナグロビン

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アニリンブラック

インダンスレン

エオシン

コンゴーレッド

ジヒドロイントール

メチレンブルー

フェナジン誘導体色素

ニュートラルレッド

フェノールフタレイン

フクシン

フルオレセイン

パラレッド

モーブ

フコサンチン

ブラジリン

プルプリン

ベタシアニン

ベルベリン

ホルビリン

マンゴスチン(mangostin)

モリンジン

ラミナラン

レグヘモグロビン

リコピン

リトマス

ルテイン

ロドプシン

ロドキサンチン

ロドマチン

画像形成メディアインク

 カラーインクとペン          プリンタ用のインク

写真右:パソコンに接続して用いるプリンタ用のインクで、写真の例ではブラック、シ

アン、マゼンタ、イエローの 4色が見える。

インク(ink)は顔料・染料を含んだ液体で、文字を書いたり表面に色付けするために用いら

れるものである。油性、水性、ジェルなどの種類がある。印刷で用いるものはインキ

(オランダ語の Inkt に由来)と呼ぶ場合が多い。

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今日では、ペンにつけるインクよりも、インクジェットプリンタで使用されるインクの

方が日常で触れる機会が多いかもしれない。

日本や中国で古くから使われている墨もインクの一種である。

近年はボールペンやプリンタなどで「水性顔料(染料)インク」が多用されている。従

前のインクでは、油性は長時間未使用のまま保存するとインクが固まって使い物になら

ない、水性は保存には優れているが雨など水がかかってしまうと折角の作品も滲んでし

まい、使い物にならないというケースが多かったが、そういった弱点を改善して、長期

間の保存に適し、水にぬれても滲みにくいものになっている。また、手についても水洗

いすれば簡単に落ちるなどといった利点を多く持っている。

インクジェットメーカー純正プリンタ用のインクカートリッジは高価であるため、詰め

替え用インクやリサイクルインクカートリッジを利用するユーザーも多いが、プリンタ

によっては、詰め替え用インクを使うことでプリンタを損傷させる事がある。又、詰め

替えインクは、純正インクと違い台湾など海外からの安価な汎用インクを輸入し国内で

十数倍の価格で販売されている物が目立つ。

詰め替えインクの問題点として安価な輸入インクの為、純正とは、違う点。インクの詰

まるトラブルが予測される点。詰め替えインクは、プリンタメーカーと無関係なインク

である為、修理保証が効かない無保証インクである。※修理の場合保証期間内であっても

有償修理となるデメリットがある。

・プリンタにおけるインクの関係

プリンタメーカー製インクが高く、それと比べ詰め替えインクが安いと思われやすい。

しかし、インクの中身は、プリンタメーカー製インクとは、異なる台湾など海外の安価

(30mlあたり数十円)な輸入インクである。

プリンタメーカーは、プリンタ販売だけではプリンタ研究開発費用、製造費用、プリン

タ保証経費などを補えない。その為、消耗品である「インク」の価格に上乗せするしか

ない。更に詰め替えインク販売業者が増え続けている為に、プリンタメーカーの利益が

減り、その悪循環で純正プリンターインクが高くなっているのが現在の実状。詰め替え

インク販売業者は、エコと言う名目を販売戦略に活用しインターネットで販路を広大し続

け大きな利益を得ている。又、詰め替えインクや互換インクの輸入販売業者の中には、他

店の数倍の価格で詰め替えインクを販売する業社も多い。詰め替えインクの購入で損を

しない為には、価格とインク量を確認して購入する必要がある。

又、最近では、インク 20ml 入りの詰め替えインクが超低金ショップでも購入出来る。

詰め替えインクは、同じ輸入先のインクであっても販売店の利幅の考え方により価格の

差が激しい。このためインクの品質と販売価格が比例しない矛盾が広がっている。本来、

経費削減専用のインクが詰め替えインクである。安く購入するには、インクの内容量と

販売価格を比較して選ぶ事が必要である。この、詰め替えインクは、あくまでもプリン

タメーカー非公認のインクであり、詰め替えインク業者の責任にて輸入販売されている

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インクである。又、詰め替えインク業者は、詰め替えインクを使う際は全て購入者の責

任として販売している。

現代においてはプリンタの価格競争等でプリンタ本体の価格が安く売られている傾向が

あるが、詰め替えインクが増えた影響でプリンタ用メカ製インクの値上がりが後を絶た

ない。プリンタ開発やプリンタの保証の費用を補う為に純正インクが売れなくてはなら

ない現状であるが、利用者にとって正規品インクの価格が値上がりでは詰め替えインク

の存在は逆効果だといえる。

・消費者の懐疑

リサイクルインクメーカーによる再生インクは、純正品と大して変わらない値段で売ら

れている場合もある。詰め替えインクやリサイクルインクがエコを販売戦略として PRし

ている。しかし純正でないこうしたインク販売業者は、純正品以外の詰め替えをしない

様に呼びかけているが、本当にエコを考えるならば再生品インクや互換インクであって

も詰め替えを勧めるのが本来の姿のはずだ。詰め替えインクらは、その性能、仕入れ金

額に対してあまりにも高値。 詰め替えインクは仕入れが安価な価格に対してあまりにも

高値で販売されている実情。又、台湾や中国の輸入インクでありながらそれを明らかに

しない不透明な表記多く見られる。

プリンタを使っている上で使用出来なくなる限界のインク量は実際のインク残量の限界

ではない場合がある。ユーザーにとってはそれ以上使えないのだから交換するしか手段

は無いが、実際の残量インクは十分に使える量である事もある。一部では満タンに対す

るインクの残量が 1/3も残っていたという事もあった。

・インク特性

染料:染料(英語 Dyestuff) とは、溶媒(普通は水である)に溶解させて布や紙などを染

色するのに用いられる有色の物質をいう。無色の前駆体が溶媒に可溶であり、染着後に発

色させた色素は不溶となるようなものも含む。溶媒に溶解せず何らかの媒体に分散させ

て使用されるものは顔料と呼ぶ。

顔料:顔料にはその成分から、無機顔料と有機顔料の 2種類に分類できる。無機顔料は有

史以前から使われていた天然鉱物顔料と、化学的に合成されたものがある。有機顔料は、

昔は藍玉のように植物から採った染料を種々の方法で固形化させたものが主体であった

が、現在工業的に使われているものの多くは石油化学系の合成有機顔料である。有機顔料

は化学構造自体が不溶性の品種(不溶性色素)と、本来水溶性の合成染料を不溶化させた

レーキ顔料がある。顔料はその品種毎 Color Index Generic Name等で分類され得る。例え

ばチタン白は Pigment White 6である。

・インク種類と用途

水性インク:インクの希釈にシンナーの代わりに水で薄められるインクの総称である。

油性インク:インクの希釈にシンナーなどの油で薄められるインクの総称である。

分散インク:染料には水に不溶なため分散財を使って微粒子に分散または一部微量溶解し

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た状態で、ポリエステルをはじめナイロン、アセテート繊維の染色に利用する。

色素の母体は、アゾ系またはアントラキノン系、ジフェニルアミン系など数多くの種類

があり、耐光性や耐洗剤性は中程度である。

酸性インク:羊毛、絹、ナイロン、アクリル系に酸性染浴で染色する。分子中に塩基(-

OH、-COOH、-SO2H)を持つ。耐洗濯性、耐光性は中程度で、色相は鮮明である。

反応性インク:染料として母体分子を骨格として可溶性基(スルフォン基、アミノ基、水

酸基など)、反応性基(繊維分子に反応性を付与)、連結基(可溶性基や反応性基などを

繋ぐ)から成る。セルロース繊維用に製品化されたが、羊毛、絹、ナイロンなどにも使

用される。繊維と染料が共有結合して強固に結び付いているため、洗濯、摩擦に強く、耐

光性も良好であり、染色は鮮明である。

顔料インク:塗料、印刷インク、プラスチック、ゴム、紙、繊維(捺染、原液着色)、文

具、陶器、建材、皮革などあらゆる材料の着色に使用する。耐光性、耐熱性、溶剤性に優

れている。

・印刷用インク(印刷業界ではインキという)

インクとは、いろいろな印刷インクが、身の回りにある新聞、本、箱、包装、車、電気製

品など多くのものに使われている。

印刷インクは大別して顔料とワニス(ビヒクル)を主剤とし、これに若干の添加物(補

助剤)を加えた 3つの要素から成っている。

顔料は印刷物の色再現に重要な役割を果たしている。ワニスは油脂類、天然樹脂、合成

樹脂等を溶剤に溶かしたもので、顔料を分散し、印刷素材に転移、固着させる働きをする。

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添加剤は乾燥性や流動性等いわゆる印刷適性や印刷効果を調整する機能がある。

これらの原料は、天然物から石油化学製品に至る多種多様な化学物質で、用途適性に

応じて使い分けられている。現在では環境に配慮した石油化学製品や大豆油などの植物

油をその特性と機能を生かし、印刷インクの成分として利用している

トナートナー(toner)は、レーザープリンタ及び複写機で使用される、帯電性を持ったプラス

チック粒子に黒鉛・顔料等の色粒子を付着させたミクロサイズの粒である。静電気を利用

して紙にトナーを転写させ、熱によって定着させることで印刷する。

カラー印刷の場合、通常シアン、マゼンタ、黄色、黒の 4色が用意される。英語で

「tone」とは色調のことであり、それから由来する。

トナーはカートリッジと呼ばれる専用の容器(トナーカートリッジ)に入れられ、それ

をプリンタに挿入して使用される。トナーカートリッジは、トナーを充填した容器だけ

のものとドクターブレード・アドローラー・現像ローラー(スリーブ)が組み込まれた

容器のもの、それに感光体ドラムを付属したカバーを組み合わせたものなどがある。何

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れも、機種・メーカーによって異なる。

・トナーのサイズについて

トナー 1粒 1粒の大きさは、1000分の 5ミリ程度と非常に小さく、肉眼では見る事が極め

て困難である。通常、トナーは、カートリッジの形で供給される。1 本のカートリッジの

中には無数のトナーが収められており、その数は、世界の人口を遥かに超えると言われ

ている。

・飛散トナー

カートリッジに詰められたトナーは、通常、飛散の恐れは無いのだが、万一カートリッ

ジを落とすなどして破損させた場合、多量のトナーが床などに散乱する事がある。トナ

ーはチリやホコリのように軽いので、ちょっとした風などで飛び散りやすい。また、サ

イズが非常に小さいため、吸い込むと、気管支などに入る恐れもある。トナーは、有害

物質である。ネズミを使った実験で肺に癌が出来たとの報告もあるようだ。また、高密

度で空気中に飛散したトナーになんらかの原因で引火すると粉塵爆発を起こす可能性も

ある。したがって、事務所などでトナーカートリッジを扱う際には、十分注意すべきで

あろう。

・リサイクルトナー

リサイクルトナー(recycle toner)とは再生トナーともよばれ、レーザープリンタ及び複

写機で使用が終わった空のトナーカートリッジを回収し、汎用トナーを充填し販売する

商品をいう。純正トナーを供給する機器メーカーが回収しきれずに廃棄される空のトナ

ーカートリッジを回収し、幾度も再利用するため、トナー漏れなど品質、安全面やそれ

による機器本体への影響については業界をしばしば賑わせ、品質向上が待たれる反面、

カートリッジ自体を開発、製造するコストがかからないため、純正トナーに比べ割安の

商品として現在、普及しつつある。

2000 年に導入された循環型社会形成推進基本法において 3R(Reduce(リデュース:減ら

す)、Reuse(リユース:再び使う)、 Recycle(リサイクル:再資源化))で、

Recycle(リサイクル:再資源化)は、「製品化された物を再資源化して、それを利用し

て新たな製品などをつくること」と定義されており、その中で、消耗部品以外を再使用

するリサイクルトナーは Reuse(リユース:再び使う)にあたる。さらに、再使用を繰り

返し、使用限界を超えたトナーカートリッジは Recycle(リサイクル:再資源化)されて

おり、無駄なく資源化される製品のひとつである。

写真フィルム写真フィルムとは狭義には映像記録用メディアの 1つで、透明な薄い膜状のベース(支持

体)に感光剤(主として銀化合物=銀塩)を塗布したもの。単にフィルムとも言われる。

写真や映画を中心にした映像を、感光剤の化学反応を利用して光学的に記録するメディア

である。

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感光材料としてのフィルムとは、旧来の写真乾板に対立する概念といえる。壊れやすい

ガラス製乾板に対し取り扱いやすく保存性・即用性に優れ量産しやすいフィルムの発明

は写真の普及の原動力となった。またロールフィルムの実現は、映画発明の直接の基盤技

術でもあった。

銀塩式フィルムは、露光(狭義にはカメラなどで撮影)した後、現像・定着・焼き付け処

理を経て初めて肉眼に見える画像を得ることができる。

以前はニトレート・フィルム Nitrate filmが使用されていた。ニトレート・フィルムは可

燃性のニトロセルロース性で時に火災の原因となるため危険物第 5類に指定され、写真館

等の火災保険が高価であった原因になる程であった。このため 1950 年代以降不燃性のセ

ーフティー・フィルム Safety filmに置換されている。初期のセーフティー・フィルムはア

セテート・セルロースであったが劣化が早いことが問題となり、1990 年代頃からポリエ

ステル製に置換されている。

2000 年 頃からのデジタルカメラの普及により、フィルム消費の大部分を占めていた

35mmフィルムの売り上げが激減しており、一部のフィルムメーカーでは倒産や写真フィ

ルム事業からの撤退があり、また存続のメーカーでもラインナップ縮小という事態に陥

っている。カメラ用フィルムの製造には巨額の設備投資が必要であり、一度廃業すると

再生産は極めて困難である事から、フィルム式カメラの愛好家に危惧されている。

印画紙印画紙 (photographic paper) は、写真フィルムに記録された画像を陽画として記録するため

の、感光材料を塗布された紙である。通常は、フィルムより大きな像を得るため引き伸

ばし機を用いて拡大投影した像を記録するのに用いる。 デジタル画像を高画質に出力す

るための装置でも用いられる。

感光材料や、感光にいたるプロセスは基本的にフィルムと同じである。ただ、フィルム

に比べて印画紙の感度は一般にかなり低く作られている。

処理には暗室を必要とするが、完全暗黒である必要はなく、各印画紙が指定する波長と明

るさの光(セーフライト)であればつけておく事が出来る(通常、モノクロ印画紙は赤

パンクロ印画紙、カラー印画紙は暗緑色)。これは印画紙の感度が低く、特定波長の光に

は反応しないという感光材料の性質を利用したものである。

画像記録メディア紙

紙とは、植物などの繊維をくっつけ合わせ、薄く平にしたもの。日本工業規格(JIS)で

は、「植物繊維その他の繊維を膠着させて製造したもの」と定義されている。現在では、

木材を原料にしたパルプから機械を使って製造した洋紙が多くの割合を占めている。

狭義の紙は、植物繊維を水に分散させてから、簀の子や網の上に広げ、脱水・乾燥して作

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る。広義の紙には、原料として金属や合成繊維を用いたものや、水を使用しない乾式で製

造したものが含まれる。例えば、不織布は紙の一種として分類されることがある。

紙は、情報の記録・伝達を目的とした筆記や印刷をはじめ、包装・衛生などさまざまな用

途で利用される。

2005 年、世界では約 3億 6,640 万トンの紙が生産され、そのうち日本は 3,146 万トン

(8.4%)を占めている。日本での 2005 年の紙・パルプ・紙加工業製造業の市場規模は、

約 7兆 1,300億円。この金額は製造業の約 2.4%を占め、製造業 24種中第 13 位である。

・紙の物性

紙の原料である植物繊維は、セルロースが主成分である。

セルロースは、水素結合によって結びつく性質がある。紙を構成する植物繊維がくっつ

き合うのは、主にこうした水素結合のためである。一方、水素結合は水が入るとすぐ切

れるため、防水加工していない紙は水濡れに弱い。

・紙の分類と用途

-和紙と洋紙

紙は、原料により和紙と洋紙に分類される。

和紙

和紙は、7 世紀 はじめまでに中国や朝鮮半島から伝来した紙が日本独自に発展したもので、

ガンピ・コウゾ・カジノキなどが原料である。和紙は現在でも手漉きで作られているほ

か、1900 年代 からは機械抄き和紙も製造されている。

詳細は和紙を参照

洋紙

現在の洋紙は、木材を主原料に機械を使って製造する。日本では 1873 年 に、欧米の機械

を導入した初の洋紙工場が設立された。なお、洋紙の主原料は、木綿のぼろや藁だったこ

ともある。

-紙と板紙

紙の中で、主に包装用に使われる厚い紙を板紙

(ボール紙)という。

詳細は板紙を参照

-経済産業省による分類

経済産業省(旧通産省)では 1948 年以来、紙・

板紙・パルプの品種分類を所管しており、「生

産動態統計分類」で紙を分類している。2002 年

以降の分類は次の通り。                    さまざまな紙製品

分類 説明

新聞巻取紙 新聞紙

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印刷・

情 報用

非塗工印刷用紙

表面を顔料などで塗工していない印刷用の紙。ただし、筆記性

や表面強度を改善するため、デンプンなどの薬品が表面に塗布

されることも多い。

化学パルプの使用割合により、上級印刷用紙(100%)・中級印

刷用紙(70%から 100%)・下級印刷用紙(40%から 70%)に分

類される。辞書本文などに使われるインディアンペーパーな

ど、薄葉印刷用紙も含まれる。

微塗工印刷用紙 塗工印刷用紙は、上級印刷用紙や中級印刷用紙を原紙とし、表面

に塗料を塗布した印刷用紙。塗料の量などにより、アート紙・

コート紙・軽量コート紙などに分類される。

微塗工印刷用紙は 1987 年頃に登場した比較的新しい品種で、塗

料の量が塗工印刷用紙よりも少ない。

詳細は塗工紙を参照

塗工印刷用紙

特殊印刷用紙 色上質紙・官製はがきなど

情報用紙 複写原紙、感光紙、PPC用紙(コピー用紙)など

包装用

未晒し包装紙漂泊されておらず茶褐色。重袋用両更クラフト紙、両更クラフ

ト紙など

晒し包装紙晒しクラフトパルプが原料。純白ロール紙、晒しクラフト紙な

衛生用紙 ティッシュペーパー・トイレットペーパーなど

雑種紙工業用雑種紙 加工原紙・ライスペーパー(紙巻きタバコの巻紙)など

家庭用雑種紙 書道用紙など

・紙の原料

紙の原料は、現在の洋紙では、木材と古紙がほとんどである。木材が紙の原料となった

のは、19 世紀 後半からで、それより前は非木材植物が原料となっていた。また、近年で

は製紙による森林伐採を抑制する観点から、ケナフなどの非木材植物が注目される場合も

ある。

-非木材植物

紙の原料として使われた非木材植物には、次のものがある。いずれも、安定供給や品質

の面から木材の代替にはならないとされており、現在では特別な用途で使われている。

アサ

アサやそのぼろは、中国で紙が発明されたときの主原料だった。

カジノキ・ガンピ・コウゾ・マユミ・ミツマタ

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カジノキ・ガンピ・コウゾ・マユミ・ミツマタはいずれもその樹皮が紙の原料として、

中国・朝鮮半島・日本などで使われた。このうち栽培が比較的容易なコウゾは、現在和紙

の主原料となっている。また、ミツマタは日本紙幣の原料として混ぜられている。

竹紙は、中国で唐時代(7 世紀 )から作られ、宋時代(10 世紀 以降)には竹が紙の主原料

となった。

藁(稲わらや麦わら)は、中国では唐時代から紙の原料として使われた。また、日本で

は 1890 年代 頃は洋紙の主原料だった。藁には、繊維が細くて短すぎるため弱い紙しかで

きない、年に 1回しか収穫できず腐りやすいため保管が難しい、などの問題点があった。

亜麻

亜麻やそのぼろは、イスラム世界で紙の主原料となった。ヨーロッパでも木材以前はよ

く使われた。

木綿

木綿のぼろは、欧米で木材以前は紙の主原料であった。しかし、15 世紀に印刷技術が確

立して紙への需要が大きくなると供給不足になり、木材からの製紙方法が開発される契機

となった。日本でも、製造開始直後の 1880 年代 頃は洋紙の主原料だった。なお、通常の

木綿は、繊維が長過ぎるため、製紙には使いにくい。

サトウキビ

インド・中国や南米諸国では、製糖時に発生したサトウキビの絞りかす(バガス)から

パルプを製造している。バガスパルプは多くの場合、製糖工場に隣接したパルプ工場で

生産される(三島製紙 - 砂糖キビの絞りかすから生まれたバカス紙について 参考)。

マニラアサ

マニラアサは、フィリピンなどで栽培されているバショウ科の植物。繊維が細長いため、

しなやかで強い紙を作ることができる。現在、日本紙幣の主原料となっているほか、テ

ィー・バッグ、掃除機の紙パックの原料となっている。

ケナフ

ケナフは木に近い性質を持ち、成長が非常に早いため、木材の代替候補として注目された。

-木材

木材は、1840 年代 に木材パルプの製造方法が確立して以来、紙の原料として使われるよ

うになった。日本では、1889 年 に最初の木材パルプ工場が建設された。

針葉樹と広葉樹

木材パルプの原料にはもともと針葉樹が使われており、日本では 1960 年代 から広葉樹も

使われるようになった。

針葉樹の繊維は、広葉樹の繊維より太く長いため、一般的に針葉樹から製造した紙の方が

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強い。新聞巻取紙や印刷用紙・情報用紙では針葉樹が使われることが多い。一方、現在の

印刷・情報用紙の多くは、広葉樹が主原料になっている。

輸入木材チップ

日本では 1965 年 から、大型専用船でアメリカ・オーストラリア・ニュージーランド・チ

リなどから輸入した木材チップを紙の原料として使うようになった。輸入木材チップは、

1980 年代 以降の円高などの影響もあって割安なことから、現在では国内の木材より多く

使われている。

木材チップは、製材の背板などの残りや間伐材、廃材などから製造される物もあるが、

製紙原料用に植林されたユーカリやアカシアなどの木材から生産されたものが多くなっ

ている。

-古紙

古紙を元に紙を作ることは、紙の発明直後から行われていたと考えられる。

現在、古紙の利用率は、世界で約 50%と推定されている。日本では、約 60%である。

・紙の作り方

『天工開物』での竹紙の作り方

紙は、植物繊維から次の手順で作る。

① 植物繊維をとりだす

②紙をすく

③脱水・乾燥する

こうした紙の作り方は、古代中国で発明されて以来、基本的には変わっていない。中国で

明末の 1637 年に書かれた天工開物では、竹紙の作り方を次のように記述している。

斬竹漂塘 - 竹を切り、ため池に漬ける

煮楻足火 - 十分に煮る

蕩料入簾 - 竹麻を簾(れん)ですく

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覆簾壓紙 - 簾をひっくり返し、紙を積み重ねる

透火焙乾 - 火を通し、紙を焙り乾かす

-植物繊維をとりだす

伝統的な製紙方法では、原料となる植物や木綿やアサのぼろを、アルカリ性の溶液で煮

て、軟らかくする。こうしてとりだした植物繊維は、パルプに相当する。また、古紙を

水につけてパルプを作ることもできる。例えば、牛乳パックからパルプを作ることがで

きる。

叩解

植物から繊維をとりだして紙をすくときには、パルプをたたき、繊維が切断・水和・膨

潤・絡み合うようにする作業が必要である。こうした作業を叩解という。パルプを叩解

すると、繊維はまず内部フィブリル化し、次に外部フィブリル化する。

内部フィブリル化

繊維の組織がゆるみ、軟らかくなる。

外部フィブリル化

繊維の表面から、ごく短い繊維の束(フィブリル)が出てくる。

-紙をすく

紙漉き。イタリア・モンセーリチェの中世祭にて

水に溶かしたパルプを簀の子(すのこ)や網の上に広げることを「すく」という。「す

く」は、手で行う場合は「漉く」、機械で行う場合には「抄く」と表記する。手漉きの場

合、紙は 1枚ずつすく。一方、機械抄きの場合は連続して紙をすくため、高速で紙を製造

できる。

・洋紙の製造

洋紙の製造では、幅広の紙を機械を使って連続的に抄くため、大量生産が可能となってい

る。洋紙製造には、次の工程がある。

パルプ化工程

調成工程

抄造工程

塗工工程

仕上・加工工程

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-パルプ化工程

パルプは、その後の工程と同じ工場の中で製造する場合と、別の工場で製造する場合があ

る。パルプ製造とその後の工程を両方とも行う工場は、紙パルプ一貫工場と呼ばれる。

洋紙の製造過程では多くの場合、木材からパルプを製造する。木材から製造するパルプ

は、製造方法により機械パルプと化学パルプに大別される。現在、化学パルプでは、ク

ラフトパルプが一般的である。また、古紙から作るパルプも多く用いられており、古紙

脱墨パルプと呼ばれる。

白い紙を作る場合、パルプ製造過程でパルプを漂白する。漂白したパルプは、晒しパル

プと呼ばれる。

-調成工程

調成工程では、各種パルプを混合し、叩解し、薬品を添加する。叩解には、かつてはビー

ター、現在はリファイナーという機械が使われる。調成工程を経たパルプを、紙料とい

う。

-抄紙工程

抄紙工程では、抄紙機を使い、紙料を 1%程度に水で薄めたものを原料に、次の工程で紙

を抄く。

ワイヤーパート

プレスパート

ドライヤーパート

ワイヤーパート

紙料を、網(ワイヤー)の上に流して薄く平(たいら)にすることで、湿紙を作る。こ

の工程で水分が重力によって脱落し、紙料の水分は 99%(濃度 1%)だったのが、湿紙で

は 80%程度になる。

プレスパート

湿紙にフェルト(毛布)を当てて上下から圧縮することで、水分を搾り取る。この工程

で、湿紙の水分は 55%程度になる。

ドライヤーパート

湿紙を加温して水分を蒸発させ、水分が 8%程度になるまで乾燥させる。

塗工工程

塗工紙の場合は、コーターを使い、紙の表面を顔料などで塗

工する。コーターには、抄紙機と直結することで抄紙・塗工

を 1 工程とするオンマシン式と、抄紙とは別工程とするオフ

マシン式がある。

仕上・加工工程

乾燥し、抄紙機またはコーターから出てきた紙は、次の工程

で仕上・加工する。

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カレンダリング

リールによる巻き取り

ワインダーやカッターで断裁

包装                             ロール状の原紙

出荷

・カレンダリング

紙の表面に、カレンダーを使って圧力をかけ、光沢や平滑性を高める。ただし、このと

き紙の厚さは減少する。カレンダーは、金属ローラーと弾性ローラーの組み合わせ(ニ

ップ)から構成される機械である。コーターと同様に、カレンダーにはオンライン式と

オフライン式がある。

カレンダーには、スーパーカレンダーとソフトカレンダーの 2種類がある。

スーパーカレンダー

一般に用いられるカレンダー。ニップ数が大きくなるほど紙の光沢や平滑性は高くなる。

通常の印刷用紙では 8から 12ニップ、アート紙などでは 10から 12ニップのものが用い

られる。

ソフトカレンダー

紙の厚さが減少するのをできるだけ避けたい場合に用いる。紙は表面の温度を高くする

と光沢が出るため、圧力を小さくする代わりにローラーの表面温度を 100度から 200度程

度にする。ニップ数は、2から 4である。

・洋紙に添加される薬品

洋紙に添加される主な薬品は次の通り。薬品は、調成工程でパルプに混合されたり、塗工

工程で紙の表面に塗工されたりする。

サイズ剤

水性インクなどのにじみを防ぐ。かつてはロジンと硫酸バンド(硫酸アルミニウム)が

広く使われており、そうした紙は酸性紙という。酸性紙は寿命が 50 年から 100 年で、図

書館での蔵書の保管などで寿命が短すぎることが大きな問題になった。中性紙は、硫酸

バンドの代わりに中性サイズ剤を用いており、寿命は酸性紙の 4 倍から 6 倍といわれてい

る。現在、印刷用紙や PPC用紙では中性紙が使われることが多く、酸性紙は新聞や雑誌

など長期保存の必要がない用途で使われる。

填料

繊維間の隙間を埋め、不透明度・白色度・平滑度・インク吸収性を向上させる。従来から

カオリンなどのクレー(白色粘土)やタルク(滑石)が使われているほか、中性紙では

炭酸カルシウムが使われる。填料は、印刷用紙や PPC用紙などには 5%から 20%程度、辞

書などに使う薄葉印刷用紙では 25%程度が含まれる。

紙力増強剤

紙の表面強度を高くする。デンプンやポリアクリルアミドが使われる。

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染料

染料は、紙に色を付けたり、白さを高めたりする。白さを高めるには、青色の染料が使

われる。また、書籍などでは、文字を読みやすくするため、淡い黄色の染料を使う。蛍

光染料は、白さを特に高めるために使う。

塗料

美感や平滑さを高める目的で塗料が紙の表面に塗布されることがあり、そうした紙は塗

工紙という。塗料は、カオリンや炭酸カルシウムなどの白色顔料と、デンプンなどの接

着剤を混合して作る。

・寸法・単位

紙の製造管理や商取引上では、次の寸法や単位が用いられる。

-寸法

枚数 - 連(れん)

重量 - 坪量(つぼりょう)と連量(れんりょう)

紙の寸法には、断裁に必要なまわりの余白を含めた原紙寸法と、製品に仕上げたときの寸

法である紙加工仕上げ寸法がある。こうした寸法は、日本工業規格や ISO により規格化さ

れている。

原紙寸法には次の種類がある。

種類 寸法(mm)

A 列本判 625×880

B 列本判 765×1085

四六判 788×1091

菊判 636×939

ハトロン

判900×1200

仕上げ寸法には、A 列とB 列がある。

A 列 B 列

-枚数の単位

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1 連とは一定寸法に仕上げられた紙 1,000枚(板紙の場合は 100枚)のことで、紙取引の

基準となる枚数である。小数点を使い、2.5 連(2,500枚)のように表す場合もある。

-重量の単位

坪量

坪量は、紙や板紙の基準となる重さを、単位面積である 1m2あたりの重量で表す。単位は

g/m2。坪量は紙の基本品質を表す、重要な項目である。米坪ともいう。

連量

連量は、一定寸法に仕上られた紙 1,000枚(1 連)の重量。寸法は日本の場合、板紙では

実際に取引する紙の寸法、板紙以外では四六判(788mm×1,091mm)が一般的である。1 連

が 1,000枚でないのが通常(例えば 100枚)である用紙の場合には連量も変わる。

連量は、紙の重みだけでなく、厚みを比較する目安としても捉えられている。厚い紙は

私製ハガキで 220kg、薄いものは純白ロール紙 34kgがある。ただし、紙質によって同じ

厚みでも密度は異なるため、あくまで目安。同質の紙同士で厚みを比較する際にはよい

参考になる。

・紙に関係する法令・規格

ISO(国際標準化機構)

RoHS 指令

PRTR 制度 (Pollutant Release and Transfer Register)

MSDS 制度(Material Safety Data Sheet)=化学物質安全性データシート

ICP データ(Inductively Coupled Plasma Data)=誘導結合プラズマによる分析データで特定

有害物質などの元素分析に用いられる。RoHS 指令に対する不使用の証明として求められ

る事が多い。

容器包装リサイクル法、グリーン購入法、森林認証制度 など

・紙とコンピュータ

かつて、コンピュータが普及すると情報の記録や伝達はコンピュータに置き換えられる

ため、紙の消費は減るであろうとする予想があった。こうした紙の消費量を減らすこと

をペーパーレス化といい、情報伝達の効率が高くなることや、文書を保存・管理するコ

ストが小さくなることが期待されていた。

しかし、実際にはコンピュータが普及しても、紙の消費量はむしろ増加している。

Abigail Sellenと Richard Harperは、著書"The Myth of the Paperless Office"で、現在では仕事

の多くが知識労働になっているため、紙の有効性は高まっていると主張した(ペーパー

レス神話と現実参考)。

・紙と環境問題

紙は、環境問題で議論の対象となることが多い。

プリント用紙

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プリントとは、インクにより、紙などの媒体に文字や絵、写真などの画像を再現するこ

とを指す。現代では二次元の媒体に限らず、車体など三次元の曲面に直接プリントする技

術も多数開発されている。プリントがカバーする範囲は極めて広く、気体以外の全ての

物体に対して可能であるとされている。

・ 種類

-インクジェットプリンタ用紙

スーパーファイン用紙、 ファイン用紙、 超高級印画紙タイプ、光沢紙 ・高級タイプ 、光沢紙

・リーズナブルタイプ、つやなしマットタイプなど

-カット紙

フィルムタイプ ( 超光沢 ) 、超高級・写真印画紙タイプ、超高級・写真印画紙タイプ・絹目、超

特厚タイプ、厚手タイプ、薄手タイプ、両面印刷タイプなど

-特殊紙

OHP フィルム 、 マグネットペーパー、厚紙 &UV カットフィルム 、 UV カットフィルム  エンボス用紙、 クリーニングシート、 マルチタイプ コピー偽造防止用紙など

・膨潤、多孔質(空隙)タイプ

膨潤タイプ:架橋された高分子固体が液体に浸させたとき、大量の液体を吸収して、体積

を顕著に増大される現象で、膨潤にある固体をゲルと言う。

多孔質タイプ:多孔質体とは内部に大小さまざまな孔をもつ固体の総称であって、多孔体、

多孔質固体、多孔材料とも呼ばれ、孔のない(つまり無孔質の)固体とは種々異なる性質

をもつ。プリント用紙として使用する場合は、空隙タイプとも呼ばれ、インクが用紙に

浸み込んで、色素固定をより安定にすることを考慮したものである。それは単に孔があ

るためばかりでなく、孔の存在によリ固体構造自体に変化が生じるためでもあり、また

孔の表面の微細構造がもたらす一種の界面現象によるものでもある。 そのため、多孔質体

はかなり前から科学者や工学者の興味をひき、研究対象となってきたが、実用的にもその特異

な性質を利用して、道路材、軽量骨材、耐火物や断熱材、緩衝材、吸音材などとして、あるい

は吸着材(吸着剤)、触媒または触媒担体として多方面にわたって使用されてきた。現在は、

さらに日常生活における快適さの追求、工業的にはハイテク指向に呼応して多孔質体の重要性

はますます高まっている。高品位の画像をプリントするための用紙として応用されている。

ペーパーテクノロジー(ピクトリコ製品の紹介)ここ数年、インクジェットプリンタの普及は目覚ましく、1999 年の国内出荷台数におい

ては約 490 万台と前年比 46%増の伸び率となっている。その主な理由は、小型なら数万円

程度で買える低価格帯製品の登場と、低価格化したにも関わらず実現した、ハイ クオリ・ティー プリントの実現にある。・写真とほとんど変わらない画質、汎用機でも 50インチ幅の長尺がプリントできる大型機、

染料と顔料の両方に対応できる機種などである。さらにそれに加え、高画質出力を支え

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る記録媒体(メディア)の確実な進化があったことも見逃せない。

『ピクトリコ(PICTORICO)』は 1993 年、市場に登場した、そういった高画質を担うイン

ク ジェット プリンタ用記録媒体である。・ ・・ピクトリコの特徴

『ピクトリコ』は旭硝子(株)が開発した、インクの吸収層に多孔質のアルミナを用いた記

録媒体。アルミナは、インク ジェット プリンタでの高画質を実現する要求特性を備え・ ・た、インク受容媒体である。

インク ジェット プリンタで高画質を得るための必要特性・ ・● インクの吸収速度が速いこと

● シャープな円形のドットを形成すること

● インク受容層が透明であること

● 耐水性、耐候性が高いこと

・インクの吸収速度

【図 1】に示すように、従来品はコート層を形成する粒子が球状であるため、それぞれの

粒子が安定するためには隣接する粒子と 45度の角度で接する必要がある。

そのため、インクがその粒子と粒子の間にできる細孔に染み込む際に大きな抵抗を生み

出し、浸透時間が長くなる。

それに対し『ピクトリコ』は、非球状粒子を配向させているため直線的な細孔が形成さ

れ、コート層厚の巨大な表面積による吸着力により、瞬時にインクを吸収することがで

きる。

・シャープな円形ドット

ドット経を小さく真円にし、そして均一ドットを打つことは、画像の解像度を上げ、高

品位なカラー印刷物を得るためにとても重要である。

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【図 2】で示したように『ピクトリコ』上に印字したドットは真円で、サテライトドット

まで鮮明に認めることができる。ドットのにじみもない。

これは、細孔半径が小さく細孔分布がシャープであることを反映している。

・透明なインク受容層

インク受容層の透明性を高めるには、層を構成する微粒子および細孔の大きさを、光散乱

がほとんど無い領域の 200angstrom 以下に抑えることが望ましい。

『ピクトリコ』は、インク受容層の主原料として一次粒子経が 200angstrom 以下のアルミ

ナ微粒子を採用、インク受容層の細孔半径も 100angstrom 以下に制御している。

・耐水性 耐候性・従来のインクジェットプリンタ用のインクは耐水性が低く、かつ大気中の微量酸化性ガ

スによる単色ブラックの褐色が比較的大きいという問題を抱えていた。

『ピクトリコ』はアルミナの表面がインク染料の構成物を強く吸着、インクをコート層

内部に格納。さらに、インク受容層の主構成材料を無機微粒子とすることで受容層自体の

耐水性も高めた。

さらに、褐色防止剤吸着や表面をウレタンコートすることで褐色化の心配も、ほぼ問題

のないレベルにまで抑えることに成功した。

・出力による用途展開

(株)ピクトリコでは、開発元の(株)旭硝子の協力により、『ピクトリコ』を用いてインク

ジェットプリンタより出力したものを商品とした出力サービス ビジネスも展開している。・最高級画質を出力する IRISの大型プリンタを主力としたアンテナショップを軸に末端市

場の情報を収集。幅広く客先の要望に応えていく。

・出力用素材の多様化への対応

『ピクトリコ』の大きな特徴のひとつに、素材を選ばないという点がある。

多種多様な素材にピクトリコの塗工処理を施すことで、高品質なインクジェットプリン

トが可能になるのだ。

主な素材は透明 白色 塩ビなどのフィルム、光沢 マット 和紙 合成紙 特殊紙などの紙媒・ ・ ・ ・ ・ ・体、そしてキャンバス ニットなどの布媒体である。他にも金属、人工皮革、コルクなど・

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にも塗工 出力が可能である。・出力品の出来映えに関心が強く評価の厳しい、例えば芸術家の方のような客先の、要望す

る素材に希望の画像を形成するため、少量多品種の業務にも対応できる半自動化設備を持

って応える。

・高品質、高耐久性への対応

通常使用されている染料インクは耐候性に乏しく、ベストな状態を 1ヶ月も保つことがで

きない場合もある。また、その対策として使用されるようになった顔料インクでは、染

料インクほどのハイ クオリティな画質を得ることができない。・

これらの問題を解消するため、UVカットのラミネート技術が導入された。しかしそのラ

ミネートも、そのままではせっかくの素材の風合いを失うことになってしまう。

そのため、光沢 マットの他、ラミネート表面に素材と同じ風合いを持たせる技術を開・発 導入し、用途に応じて画像の長期安定保持を図ることができる体制を整えている。・

カラーマネジメントシステム(色管理システム、CMS)・CMSの仕組み

 カラーマネジメントシステム(CMS:Color Management System)は、印刷物を作成する工程

で、デジタルカメラ、スキャナ、モニタ、プリンタなどの異なるデバイス間の色を統一

的に管理するシステムのことであり、また、入出力 デバイス による色の差を補正し、同

一のデータならば同一の色が再現されるようにするためのシステムでもある。

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 モニタやプリンタ、デジタルカメラなどの入出力機器では、それぞれに異なった色特

性や再現領域を持っているため、同じ画像データを扱ってもそれぞれ微妙に異なった色

になってしまう。その差を補正し、モニタで見た色がそのままプリンタで印刷できるな

ど、どの機器を使っても同じ色が再現されるようにするのがカラーマネジメントシステ

ムである。

 カラーマネジメントシステムはまず、入力された色のデータを、その際に用いられた

機器(モニタやスキャナなど)の特性を記述した「デバイスプロファイル」を参照して補正

し、記憶する。そして、出力の際には出力機器(プリンタや他のモニタなど)のデバイスプ

ロファイルに応じて、入力時と同様の色が再現できるようにカラーマッチングを行なう。

 このプロファイルとマッチングの精度が、カラーマネジメントシステムの性能を決め

る大きな要素となる。以前はハイエンドのグラフィックワークステーションに特殊なソ

フトウェアとして搭載されていたが、最近では標準で OS に組み込まれていることも多い。

Macintosh(Mac OS)には ColorSync、Windows には ICM、Solaris や IRIXには KCMSが用意

されている。

139

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・色空間変換

 カラーマネジメントシステムでは、RGBや CMYKなどのデバイスディペンデントカラ

ー(デバイスに依存する色)を、CIE L*a*b*などのデバイスインディペンデントカラー

(デバイスに依存しない色)に色空間の変換を行う。

・ICCプロファイル

 色空間変換では、ICCプロファイル(デバイスの色空間の特性を定義したファイル)を

使用してデバイスごとに変換を行う。プロファイルの種類は、スキャナ、モニタ、プリ

ンタのプロファイルの他、AdobeRGBなどアプリケーションのプロファイルなどがある。

ICCプロファイルは標準でデバイスに付属していたり、デバイスメーカーの公式サイト

で入手できる。また、アプリケーションによりカスタムプロファイルを作成することも

できる。

・CMM

 色空間変換は、CMM(カラーマネジメントモジュール)を使用して行い、CMMは複

数インストールして選択することができる。CMMでは、レンダリングインテント(色空

間変換の方法)を選択することもできる。レンダリングインテントの種類は 、

Perceptual(知覚的)、Satusation(彩度)、Relative Colormetric(相対的な色域を維持)、

Absolute Colormetric(絶対的な色域を維持)の 4種類がある。

・主なソフトウェア(CMMの入り口まで導入するツール)

*Apple ColorSync

*ICM(Microsoft Image Color Management)

*Kodak CMS

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色再現性  写真は、”真を写す”と書くが、実はぜんぜん”真を写していない”ということは、長年、フ

ィルムで写真を撮てきて、当然のことと理解できる。そういった意味で、ぜんぜん”真を

写していない ”こと

の代表が、色の再

現である。

人間が肉眼で見て

いる色彩や色の濃

淡(階調)を、そ

っくりそのま ま写

真に記録する こと

は、フィルムでも

デジタルでも今の

技術では出来ない

ことである。

フィルムでもデジタルでも、光の受光可能な範囲(ダイナミックレンジ)が限られて い

るため、その限られた狭い範囲で、肉眼での見た目に似せて、写真の絵を作っているわ

けである。(記憶色、期待色の項を参照)

その限られた狭い範囲での色の再現方法にも、さまざまな手法が存在し、それぞれ独自

の色の再現域があり、指標があるのである。それが色空間(カラースペース)と呼ばれ

る ものである。

・色空間(カラースペース)のいろいろ

 デジタルカメラで写真を撮り、パソコンに取り込み、画像ソフトで表示させ、プリン

タで印刷し、DTPで印刷所にデジタル入稿、等々とデジタル画像を活用しようとすれば

するほど、色のイメージが正確に伝わらないことに悩むことになる。

つまり、デジタルカメラで撮った写真の色のイメージが、いろんな作業工程を経るに従

い変わってしまうという問題があるのである。

これは、色を表現する為の基準となる色空間(カラースペース)というものが多数存在

し、デジタル画像を扱う作業工程の変わり目で色空間(カラースペース)が変わってし

まうためである。この問題を解決するために考え出されたものが色管理(カラーマネジ

メント)というシステムである。

 色管理(カラーマネジメント)を理解する前に、まず色空間(カラースペース)とい

うものを理解する必要がある。色空間(カラースペース)とは、色を数値で表現するた

めの基準のことである。

141

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 色というものは、パソコンのモニタで表示させる色と紙にカラー印刷して表示させる

色とでは同じ青色でも微妙に違う青色になってしまう。このようにデバイス(モニタと

かプリンタとか)ごとに少しずつ異なる色になるため、それぞれのデバイス毎に独自の

色の基準=色空間を持つことになるのである。

パソコンで表示される色は、R(赤)G(緑)B(青)で表現されているということは周

知のことと思う。しかし RGBにも sRGB(Windows標準)、AdobeRGB(Adobe社の規

格)、 AppleRGB(Macintosh標準)のように微妙に異なるものが複数存在する。最近の

デジタルカメラやインターネットでは sRGBが標準となっている。AdobeRGBは、sRGB

より広域の色を表現できるということで、一部のハイエンドデジタルカメラではサポー

トされているが、 AdobeRGBを扱うには色管理の知識が不可欠となる。

印刷業界では以前から CMYKが使用されてきた。これらは全てデバイスに依存する色空

間である。これに対し、デバイスに依存しない(つまり、絶対的な基準の)色空間があ

る。それが、CIE(国際照明委員会)が規定した Lab色空間で、現在「CIE L*a*b*」が次

に述べる色管理の基準となっている。

・色管理(カラーマネジメント)

 このようにデバイス毎に勝手な色を使っていると、同じデジタル画像にもかかわらず

扱うデバイスによって色がころころ変わってしまうので、 ICC( International Color

Consortium)が色管理の統一システムを確立させた。

デバイスに依存しない絶対的な色空間に CIE L*a*b*を採用し、デバイスに依存する各々

の色空間は、CIE L*a*b*との色の対比表を細かくプロファイル化(これを ICCプロファ

イルと呼ぶ)したのである。

色管理(カラーマネジメント)を理解し実践することは非常に難しいことである。

関連する専門書、インターネットサイトが多数存在するので、ここでは簡単な概念の紹

介程度の話に留めることにする。

 そもそも色管理は、一般ユーザが熟知して使いこなすものではなく、一般ユーザは何

も意識することなく、自動的に行われるべきシステムなのである。しかし、現状ではま

だ色管理システムが不完全であるために、一般ユーザも多少の知識を持って、要所要所で

意識して注意しなければいけないのである。 以下、ポイントとなる項目を挙げる。

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-色空間にはさまざまな種類があるということを認識する

-デジタルカメラでは普及機では sRGB、ハイエンド機では sRGBとAdobeRGBが当面は

主流となる

-色管理をきちんと行うには

ICCプロファイルを利用すると

いうことを認識する

-パソコンの画像ソフトでデジ

タル画像を扱う際にその色空間

を意識する

-パソコンの画像ソフトでデジ

タル画像を扱う際にはモニタの

調整が重要となる

-印刷所への デジタル 入稿

( RGB/CMYK ) は、現状ではま

だ特殊な作業となるという認識

があればよいであろう。

-あまり難しく考えたくない時は、sRGB を使う

 (最近のシステムは、とりあえず sRGBを前提として作られている)

-色管理がよく理解でき(ICCプロファイルの扱い方)、より高品質(広域の色再現)を

求める時は、AdobeRGB を使う。

-RAWデータ記録で写真を撮る

 (RAWデータであれば、ソフトでの現像処理時に色空間の変更ができる)

ということである。

繰り返すが、色管理(カラーマネジメント)を理解し実践することは非常に難しいこと

である。

しかし、カメラマンが色管理(カラーマネジメント)に精通しなくても、フィルム時代

と同じようにいい写真は撮れる。

ただカメラマンがデジタルカメラを使用するようになり、撮影後の後工程にもカメラマ

ンが気楽に手を加えられるようになった(これ自体は良いことである)結果、色管理

(カラーマネジメント)をまったく知らなくても良いとは言えなくなったのも事実であ

る。

・記憶色、期待色の再現

 おそらくフィルム(写真)業界や印刷業界だけの業界用語だと思われるが、 ”記憶色”

や”期待色”という言葉がある。

”記憶色”とは、撮影者がある風景や被写体を撮影した時、自分の脳に記憶されるその情景

の色のことである。

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”期待色”とは、写真や印刷において、「こういう色に出来上がって欲しい」と期待してい

る色のことである。

  

         期待色               記憶色

そして”記憶色”も”期待色”も実際の真の色とほとんどの場合において異なる色なのである

たとえば、撮影者が綺麗な「南国の青い空とエメラルドグリーンの海」に感動して写真

を撮ったとする。その時、撮影者には感動という主観が加わることでより誇張された青

い空とエメラルドグリーンの海が脳に記憶されるのである。

もし、その時撮影された写真が実際のものにより近い色で再現されると、ほぼ例外なく

「この写真は、なんか違う。全然感動が伝わって来ない」とガッカリするのである。

そこで、青や緑を誇張(彩度を上げ、コントラストを強調)すると「まさにこの写真の

ような青い空とエメラルドグリーンの海だった!」と感動的な記憶が蘇るのである。”記

憶色”とはこのように作られた嘘の色なのである。そして世の中に存在するほとんどのフ

ィルムは、”記憶色”を再現する為に、多かれ少なかれ色を作って(誇張して)いるのであ

る。

もちろん、より忠実な色を再現するフィルムも有る。それは商品カタログなどの撮影で

使用されるフィルムやフィルムを複製する為のデュープ用フィルムといった、特殊なフ

ィルムである。そして、綺麗な写真で写真集を出版する場合はこうである。

透過原稿であるフィルムの色を印刷物で忠実に再現する事は今の印刷技術ではできない。

詳しい話は色空間毎の色再現といった難しい話になるので、ここでは省略するが、カラ

ーフィルムを原稿にカラー印刷物を作る際、印刷所はカラーフィルム上の色(RGB)に

似せる為に印刷用の色(CMYK)をもっともらしく作り直すのである。ここで重要なこ

とは、元の色を作りだすことではなく、見た目で元の写真と近いイメージに見えるよう

再現することなのである。

前例の「南国の青い空とエメラルドグリーンの海」における青色や緑色という色はもと

もと CMYKの色空間には存在しない色なので、CMYKの色空間範囲でいかにらしく見せ

るか工夫して作り上げなければいけないのである。

カメラマンや編集者は、らしくみえる色を印刷所が工夫して作ってくれることに期待し

ているのである。 ”期待色”とはこういう色のことである。

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我々が普通に目にしている写真や印刷物の色は、意図的に加工されていない限り、我々は

その色が本当の色だと思っているであろう。しかし、本当の色だと思っている色も実は”

記憶色”や”期待色”といった極めてあいまいな指標により作られ再現された色なのである。

ICCプロファイルカラーマネジメントとは、色を管理する方法・手段全般のことである。しかし現在のカ

ラーマネジメントシステムは、色のマッチング(色合わせ)を目標にしており、CMS=

カラーマッチングシステムだと理解しておいたほうがよいだろう。

・カラーマネジメントの基本な意味

[表色系]

 表色系とは色のデー

タを表す物差しだが、

デバイスインディペン

デントというところが

ポイントで、絶対尺度

ではないということに

注意したい。特に RGB

はビットの割り振りを

しているので絶対的な

値のように思ってしま

うが、実際はそうでは

ない。

[濃度]

 濃度は、一般に透過光・入射光を常用対数で表したもので、印刷ではベタ濃度管理に使

われている。ベタ濃度を管理すれば印刷の皮膜が管理できて品質が安定するが、製版ま

で含めたオープンな環境において濃度ですべてを管理するのは難しい。

[ガモット]

ガモットとはモニタ、印刷、インクジェットプリンタなどそれぞれの色再現域を表すも

のである。

[色差]

 色差は確かに色と色の距離を表わす数値だが、人間の感覚との関係はいろいろな条件に

よって左右されるということなので、一般にいわれる Δの値は微妙である。

[ICCプロファイル]

 ICCプロファイルの実体は変換テーブル(Look Up Table)である。各デバイスに対して、

例えば CMYKのある値に対する Lab値が書かれている。重要なことは 1つのプロファイ

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ルに対して必ず双方向(例えばデバイスが CMYKなら、CMYK→Lab,Lab→CMYKとい

う具合)を定義しなければならないということである。実際に利用するときは、2つのデ

バイスのプロファイルを使って、例えば RGBから一度 Labに落として CMYKに変換する

ということになる。

[インテント]

 RGBと CMYKなど異なる色空間の間では互いに存在しない色があり、色変換を行う場

合は、これらの色を何らかの方法でマッピングしなければならない。ICCではその方法

をレンダリングインテントとして、知覚・彩度・相対・絶対という 4つが規定されている。

色合わせをするということは、プリンタ、印刷物、モニタのそれぞれ異なる色空間を互

いに縮めたり延ばしたりして合わせ込むことである。4つのインテントは、その延ばし

方・縮め方の方法である。結論からいえば、知覚的インテントを使うのがよいようであ

る。これははっきりした定義はないのであるが、大きな色空間を、小さな色空間に合う

ように全体的に圧縮してしまうものである。

-カラーマネジメントポリシー

 カラーマネジメントのポリシーとしていろいろな設定がある。独立したプロファイル

を使う設定や埋め込まれているプロファイルを使う設定などである。現在では TIFFや

PDFのデータに ICCプロファイルを埋め込むことができるが、きちんと理解しないまま

運用すると二重にプロファイルをかけてしまうことになる。データの埋め込みプロファ

イルはすべて外して、ドライバや RIPで最終的にかけるとか、RIPもドライバも対応して

いないのであらかじめデータを変換してから運用するということがあるだろうが、その

会社のワークフローとして、絶対的なルールを決めておかなければならない。

残念ながら現時点では ICCプロファイルをそこまで認識できる RIPがなく、埋め込まれ

たプロファイルをすべて無視してしまうものもある。おそらく今後は、埋め込まれたも

のを優先するか、RIPの設定を優先するかを選べるようになるだろう。

-条件の問題

 問題提起をしたかったのは、現在の CMSは現実性としては高いレベルにあるが、やは

り限界があるのではないかということである。

個々のデバイスのガマットの差をどう吸収するのか。プロファイルの編集が必要である

が、そのほかにも、測色機の光源と蛍光灯の標準光源が 5000Kというときにそれらが本

当に同じなのかどうかという問題がある。細かい点でいろいろと合わせ込みする必要が

あるのではないか。また、測色機同士でも差があるのではないかという問題もある。

さらに、紙に含まれる蛍光増白剤の影響も考慮しなければならない。インクジェットプ

リンタなどは蛍光色を入れて青白いものを使っているが、こういうことが測色機にどう

影響しているのかまで考えなければいけないのではないか。

-ICCプロファイルの仕様の問題

 ICCプロファイルの仕様については、オープンなフォーマットであるのはよいが、拡

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張タグが付けられるという問題がある。つまり、ある領域がブランクになっていて独自

に拡張できるようになっているのである。この部分を使えば便利ではあるが、クローズ

ドなシステムになってしまい、他のシステムにもっていくと読めなくなる可能性がある。

大日本スクリーンは標準タグしか付けていないので、大日本スクリーンの ICCプロファ

イルはどこにいっても読むことができる。ただ、基本的に、タグを付けるのは、そもそ

も仕様に不十分な部分があるからである。

-運用形態の問題

 運用形態としては,プロファイルデータを埋め込むかどうか、また、デバイスリンク

プロファイルというプロファイルをどう捉えるかということがある。キャリブレーショ

ンとキャラクタライゼーションを区別していくとして、本当に印刷条件が 1つひとつ変

わったときにプロファイルをすべて作り直さなければならないのかどうかが重要なポイ

ントである。機械と紙と刷り方と、各種の要因を考えていけば、たちまち数十種類の設

定が必要になってしまう。そのときに本当にプロファイルをその数だけ用意しなければ

いけないのか、またすべてプロファイルによって運用するのか、あるいはインキ特性だ

け取り出してプロファイルを作るのか。場合によってはデバイスリンクプロファイルと

いう方法も使ってよいのではないかといった点は、今後考えていかなければならない課

題だろう。

印刷産業界では、製版と印刷は別の分野と考えられてきたが、デジタル印刷や CTPによ

ってその区別がなくなっている。そこで必要なのはトータルで効率的なカラーマネジメ

ントである。さまざまなメディアが混在する中で、印刷メディアが十分な役割を果たす

には、とりあえずは現行のプロファイルを用いたカラーマネジメントを導入しなければ

ならない。そして問題点をきちんと把握した上で、試行錯誤しながら精度の高いカラー

マネジメントシステムを構築しなければならない。

・ICCプロファイル

 デバイス依存の色再現特性と、デバイス非依存であるカラースペース PCS(Profile

Connection Space)と呼ばれる LabやXYZ色空間とに相互展開する仕組みを提供するのが

カラーマネジメントモジュール、各機器の特性を記述したものがデバイスプロファイル

である。これらを使うことによってプリンタや印刷機など CMYKカラーで表現できる色

空間を Labにマッピングし、それをモニタで用いる RGB色空間に展開させ、結果として

プリンタや印刷機の色再現特性をモニタに再現させたり、最終的に出力させる印刷機の色

再現特性を手持ちのプリンタでシミュレートさせることが可能となる。各デバイスの色

域を機器に依存しないもので数値比較することにより、工程の早い段階から印刷最終結果

を予測することが可能となる。しかしこれは表示されている色がそのまま印刷されると

いうわけではない。

ICC*1プロファイルを用いたカラーマネジメントの流れには、次のようなものがある。

①RGBからCMYK へ

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 入力側デバイスプロファイル(RGB値→Lab値)は、スキャナなどの入力側の RGBの

データを Labの値に置き換えるために使われることがほどんどである。出力側デバイス

プロファイル(Lab値→RGB値)は、入力側のスキャナでいったん Labに換算したもの

をモニタ上に表示させるための変換テーブルである。出力側デバイスプロファイル(Lab

値→CMYK値)は、入力側のもっている Labのデータを出力用の CMYKのデータに変換

するプロファイルである。

② RGBからRGB へ

 RGBから CMYK へとの違いは単に出力側のカラースペースがRGBになるのみである。

このように、入力側プロファイルと出力側プロファイルが非常に単純な仕組みで使われ

ている。

入力側プロファイルから出力側プロファイルに向かう過程で、Labや XYZのような一つ

の共通のカラースペースをもつことによって、同じような形の入出力を行える。このプ

ロファイル同士を合体させる役割をもつデバイスインディペンデントな色空間が

PCS(Profile Connection Space )と呼ばれるものである。実際の印刷現場からは、スミ版

の保存やカラーコレクションなどを含め、どこまで ICCプロファイルで可能なのかとう

点では、現状の ICCプロファイルにはスミ版保持機能がないので全てを満足させること

はできない。

*1:ICCとは、International Color Consortiumの略で、国際カラー・コンソーシアムをいう。

1993 年にAdobe System社ほか7社で設立した組織で、一般に技術開示することによって、

どのベンダーにとっても共通してクロスプラットフォームで利用できるカラーマネジメ

ントシステム・アーキテクチャ(色管理システム設計思想の意味)の標準化及び発展を策

定し、促進することを目指したものである。

-ICCプロファイルの分類

 デバイスで分けた場合次のように大別される。

①RGBプロファイル

 これにはモニタやスキャナ、ごく一部のプリンタ、sRGBやAppleRGBなどの閾値定義

プロファイル(色空間を定義している)が相当する。

②CMYKプロファイル

 プリンタや印刷出力機に使用される。上述の RGBプロファイルとほぼ同じである。

③Lab/XYZプロファイル

 これを使うデバイスが現実には見つからないため、目的が現時点では不明である。基

本的な構造は先のRGBや CMYKのプロファイルと同じである。

④NamedColorプロファイル

 スポットカラーや特色のインキ番号に対する Lab値を記述している。これをサポート

しているプリンタ、アプリケーションは非常に少ない上、現存するプロファイルを探す

のも難しい状態である。

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-ICCプロファイルの構造・概略

 ICCプロファイルは大きく分けると、プロファイルの情報を記述しているヘッダの部

分とプロファイルを構成する要素の一覧を記述しているタグテーブル、それぞれの構成

要素タグの内容を記述しているタグドエレメントデータの 3つの部分から構成される。

-ポストスクリプトプリンタの色管理

 独自の色変換テーブルを RIP内にもっており、色管理には次の 2種類の手法が用意され

ている。両者とも、トランスファ関数やハーフトーニング(多値階調を持つ画像などを 2

値出力の機器で出力するために、多値の階調を 2値の面積比率で置き換えることにより出

力する方法のこと)は濃度調整には関係しているが、色変換には何ら関係していないと

いって差し支えないものと考える。

①CIEベースのカラーを使わない方法

 この方法ではスミ版保持が可能なため、印刷業界では一般的だと考える。入ってきた

データに対して色変換を行うのが、CMYK各色の濃度を調整するトランスファ関数とハ

ーフトーニングの 2つの要素である。非常にシンプルな方法であるが、そのシンプルさ

ゆえにいくつかの問題点を含んでいる。

②CIEベースのカラーを使う方法

 与えられた色情報をUseCIEColorというCIEベースの色空間(XYZ色空間)にいったん

展開して色変換をする方法である。入ってきた CMYKデータをまず ColorSpaceTableに通

し、再び CIE色空間から CMYKデータへの変換時に ColorRenderingDictionaryと呼ばれる

色変換テーブルを通す。この後にトランスファ関数やハーフトーニングをかける。上記

の方法と比較すると処理が複雑な分だけ速度的には不利である。いったん CIE色空間に変

換するため、スミ版保持ができないことが問題として挙げられる。しかし、各社 RIPメ

ーカーは独自機能で墨版保持を可能としている。

-RGBデータが入力された場合

 RGBデータが入力されると、その白色点情報、RGBソースプロファイル、ガンマ特性、

RGB色度座標といったものを RGBリソーステーブルに格納する。この RGBリソーステ

ーブルは色空間変換機能をもっており、RGBデータを CIE色空間に変換する。そして

CCT(Color Collection Tool)を用いてこの CIE色空間からデバイス CMYKカラーに色変換

を行う。この工程は ICCプロファイルをベースとした色変換に酷似している。

-ColorPolishについて

 自分自身でプロファイルビルダーを使ってプロファイルを作ろうとしても、微妙な色

ずれを調整する部分である CLUT まで編集できるツールは存在しなかった。

そこで、編集や解析が可能なプロファイルエディタとして ColorPolishを作り、これまで

は手が届かなかった ICCプロファイルの内部のすべての要素を確認・改造できるように

した。

・カラーデバイスプロファイル

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 プリンタやモニタ、印刷機などは、それぞれ再現できる色の範囲(ガモット)が違っ

ている。そのため、色を合わせるための管理が必要になってくる。これをカラーマネジ

メントという。

カラーマネジメントでは、それぞれのデバイスがどのような色の範囲を再現できるのか

という特性を、プロファイルで管理する。一般的には ICC準拠のプロファイルを利用す

る。

それぞれのデバイスの ICCプロファイルを、デバイスに依存しないカラースペースに変

換するのが、CMM(カラーマネジメントモジュール)の役割である。

そして、各モジュール間のガモットの違いを、できるだけ再現可能になるように変換す

ることをガモットマッピングという。

実際にどのようにガモットマッピングすればいいのか、理想の答えはない。そのため、

ICCではレンダリングインテントという方法が決められている。

レンダリングインテントには既に述べた 4つの項目(知覚的、彩度、相対的な色域を維持、

絶対的な色域を維持)があるが、それぞれ使用目的に合った方法を選ぶことが重要であ

る。

・ICCプロファイルの機能と構成

 ICCプロファイルを作成する仕組みとプロセスは、上図に示した通りである。

使用目的に合った、ICCプロファイルの選択と作成用チャートの設定が重要である。

CMMエンジン

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・CMMエンジンの機能

 CMMエンジンは、上述したようにある色空間

から別の色空間に色域圧縮して色変換するための

カラーエンジンであるから、色変換のアルゴリズ

ムが新しく変換される画像を左右していることは

間違いない。従って、CMMエンジンの機能は、色

変換を完璧なものにすることであるが、現状では

やむなく近似色で置換する方法が採られている。

具体的には、ACEというカラーエンジンがあるが、

これは、Adobe Color Engineの略で、Adobe System

社が開発したものである。 Photoshop, Illustrator,

InDesignの最新版に共通してアプリケーションの一部として組み込まれているカラーマネ

ジメントモジュール(CMM)をいう。この CMMエンジンは、Adobe独自のカラーマッ

チング手法であるが完全に色変換できるものではない。

・CMSからCNS へ

 CMSはこれまで述べてきたように、通常のカラーマネジメントシステムを指している

が、感覚的にいうとMはマッチングのMと捉えられることができる。ところが、現状で

はデバイス間の色域が違う場合に、カラーの完全なマッチング(色彩の同一性維持また

は色彩の一致性維持)は無理であることは明らかである。その理由は明確で、無い色は無

いからである。つまり色域の共通の範囲では、何とか同一性の維持が出来るが、共通色域

以外では同一性の維持は全く望めないのである。

 色彩を飽和させないで変換する行為は、まさに色彩のネゴシエーションといえる。つ

まり、現状の CMSとは通常のカラーマネジメントシステム(CMS)とカラーネゴシエー

ションシステム(CNS)の合体と言えなくもない。色が一致する部分と、一致しないま

でも限りなく近い色の部分を、うまく組合わせることが理想的な CMSの働きなのである。

 CMS(カラーマネジメントシステム)は色彩の同一性を重要視しているのに対して、

CNS(カラーネゴシエーションシステム)は限られた色空間の中で、異種空間同士の色域

圧縮により原画に対してある程度妥協した色彩を創出することを重要視しているといえ

る。

 所詮違う色域への変換は完全な同一性の維持に悩むより、CNSであると理解すること

で、CMMエンジンの持つ重要性が理解できるであろう。 そういった意味で、CMMエン

ジンはネゴシエータであるといっても過言ではない。 逆な言い方をすれば、これから

の CMSは、色の妥協を許さず完全な色の一致をみるまで、限りなく進化し続けなければ

ならないといえる。

・計算方法

151

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 CMM(Color Management Module、カラーマネジメントモジュール)は、一種のカラー

マネジメントエンジン(CMMエンジン)をいう。これはカラーマッチング手法(Color

Matching Method)とも呼ばれ、ICCプロファイルを使って、例えば、RGBから CMYK へ

カラースペースの変換を行う場合、変換ソフトの

バックグラウンドで自動的に計算を行うためのエ

ンジンである。CMMエンジンの入り口まで誘導す

るツールは、代表として Windows の ICM (Image

Color Management)とMacintoshの ColorSyncが有名

である。

  CMM エ ン ジ ン に は 、

HeidrbergCMM、AppleCMM、KodakCMM、Adobe

Color Engine*1(ACE)などがある。

*1 : Adobe System 社が開発したものである。

Photoshop、Illustrator、 InDesignの最新版に共通してアプリケーションの一部として組み

込まれている CMMをいう。この CMMエンジンは、Adobe独自のカラーマッチング手法

でもある。

 CMMエンジンの機能は上図に示すように、例えばデジタルカメラで撮った画像データをモニタで見ることを想定した場合、入力デバイスで作成された入力ファイル(RGB)は一端インデペンデントカラーである共通色空間を介して中間ファイル(L*a*b*)に変換される。更に中間ファイルから再びモニタプロファイル(RGB)に逆変換されて新しい画像データが生成される。 この変換作業に着目して具体的にどのように数値化されるかを、下図を参照しながた解析する。 この図では、入力デバイスの画像データが RGBで、中間ファイルである三刺激値 XYZ

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を仮想的に作成し、また PCSを介して L*a*b*に変換し、さらに L*a*b*からプリンタにCMYKとして出力するシステムである。 まず RGBから 3次元の LUT(3D-LUT)を用いて、三刺激値 XYZに演算処理する。こ

の XYZを画像処理し、第1次の中間ファイル(XYZ)を作成する。PCSでは、まず

L*a*b*と CMYK の LUT を作成する。次に出 力データに変換するために新しい

LUT(L*a*b*と CMYKを含んだ参照表により)を作成する。これを 4D-LUT(CMYK

用)を介してプリンタに出力するための最終の CMYKデータに変換する。

 LUTを使った使った実際の変換方法は、上図にも見られるように、元のデータが持っ

ている入力プロファイルを基に変換元のデバイス値を算出する。次に変換先となるプリ

ンタの ICCプロファイルを参照して作られた LUT(参照表)に合致したデバイス値を参照し

て新しいデバイス値を割り当てる。つまり、入力デバイスは、変換を行う直前の LUTを

持っており、中間ファイル作成前の LUTと出力側の LUTを参照していき、中間ファイル

同士が一致している部分でその値に対応した出力デバイスのデータ値を選ぶようにして

いる。

レンダリングインテント・ 色 域 圧 縮 の

種類

  異 な る 色 空

間 ( プ ロ フ ァ

イ ル ) で カ ラ

ー マ ネ ジ メ ン

ト を 実 施 す る

場 合 に 置 き 換

え る 色 の 方 向

や 位 置 を 計 算

さ せ る 手 段 。

知覚的、彩度、

相対的、絶対的

の 4項目がある。

・ 色 域 マ ッ ピ

ングの概念

- 基 本 的 な 考

え方

  色 域 マ ッ ピ

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ングは、色域がメディア毎に表現できる色の範囲が違うので、適当に色を変更して、い

かにもその色があるように見せる色域圧縮の手法である。

-圧縮(compression)、別名 :データ圧縮、data compression

 一定の手順にしたがって、データの意味を保ったまま、容量を削減す処理のこと。逆

に、圧縮されたデータを元のデータに復元する処理は「解凍」とか「展開」「伸張」「減

圧」「抽出」などという。

 ネットワーク上でデータの送受信にかかる時間を短縮したり、ハードディスクなどの

記憶装置により多くのデータを記録するために利用する。たとえば、「AAAAAA」とい

う文字列を「Aが 6つある」という意味の「A6」という符号で置き換えれば、意味を保

ったまま 6文字を 2文字にすることができ、1/3の容量に圧縮できたことになる。

 圧縮法には様々な方式があり、それぞれ一長一短がある。画像や音声、映像などの圧縮

の分野では、データにある程度の損失が出ることを許容することにより劇的に圧縮率を

高める「損失のある圧縮(lossy compression)」(または「不可逆圧縮」)という手法が使われ

ることがある。画像形式の JPEG や音声正式のMP3 は損失のある圧縮法を採用しており、

どの程度の損失まで許容するかを段階的に設定することができる。圧縮率を上げればデ

ータの劣化が激しくなり、下げれば音質や画質は向上するが容量は増えトレードオフと

なる。

 色空間は、入出力デバイス特有の特性を持つ。それらの色空間は図に示す通りである。

色域圧縮(gamut mapping )  異なるメディア間で色情報を交換する際、測色値の一致する色信号対をマッピングし

て測色的に等価な情報交換が行われる。しかし各メディアがもつ色域の形状が異なるた

め,すべてのマッピングが測色的等価性を確保できない。一般的にプリントメディアは

青色相のガマットが小さく、CRTディスプレイ上の鮮やかな青を測色的に等価にプリン

トできない。色域圧縮とは、あるメディアの色域を形状の異なる他のメディアの色域に

マッピングする問題であり、測色的に等価な再現画像が作成できない制約の中で、いか

にして原画像に近い再現画像を作るかがポイントになる.色域圧縮の方法は大きく「ク

リッピング法」と「スケーリング法」の 2つに分けられ、画像の内容に応じて経験的に使

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い分けられている。前者は受信メディアの色域外に存在する送信測色値を受信メディア

の色域表面にマッピングする。一方、後者は多くの場合、色相を固定し、明度と彩度をス

ケーリングして送信測色値を受信メディアの色域内にマッピングする。マッピングの方

向を決めるアンカー点の位置やスケーリングのタイプ(線形 /非線形スケーリング)など

の違いによって、さまざまなアルゴリズムが存在する。

・色域マッピング(色域圧縮)の運用

-基本ルール

色相を変えない

明度の変化をできるだけ抑える

彩度を動かす

無数の方式が存在する

-ガモット(Gamut:演色範囲、色域、ガミュー、ガマット)

 プリンタ、モニタなどの周辺デバイスそれぞれが、再現できる色の範囲をいう。

つまり、デバイスによって再現されるカラーのトータルなレンジを意味する。ガモット

は、RGB色空間や CMYK色空間においてそれぞれ固有の色域を持っているが、RGBから

CMYKに色変換する場合、全てが同じ範囲に重なっているわけではなく、重なり合わな

い部分が発生する。この状態では、ガモット外

となってしまうため何らかの方法で色のマッピ

ング(近似色に移動)を行う必要がある。

Yxy色度図上では、プリンタやモニタは三角形

で表示される狭い領域の色域である。

-ガモットマッピング( Gamut Mapping、色域

マッピング、色域圧縮)

 画像の原始データは、デジタルカメラでの撮

影、ポジや紙焼き原稿をスキャナで読み取った

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場合もRGBで表現される。しかし、印刷用データを作成する場合には、これを CMYKに

変換することが必要である。このときに印刷機のドットゲインやインクの違いを反映さ

せて CMYKにマッピングすることをガモットマッピングという。各デバイスに合わせて

作成されたプロファイルによってCMYKに変換すると、印刷機やインクの違いを踏まえ

た上で CMYKの画像データを作成することが出来る。ガモットマッピングは、単に“マッピング”ともいう。-ガモットマッピングの作用

基本的にカラーマネジメントをすれば 100%色が合うわけではなく、色のコミュニケーシ

ョンとして、できるだけ安定して皆が仕事できる環境作りのために必要なのである。

 また、高いクオリティ、精度を保持するためにプロファイルの精度を編集する作業が

必要になってくる。今後は、プロファイルとプロファイルを編集するという概念が少し

ずつ広がるのではないだろうか。プロファイルの精度が上っていけば、色のコミュニケ

ーションが取りやすくなる。

 カラーモニタの色空間と印刷の色空間のずれを補正する働きを、ColorSyncなどのカラ

ーマネジメントがする。そのときのずれの移動方法がガモットマッピングである。

 プロファイルのカラースペースは測色しただけではなく、アレンジが必要なのではな

いかと考えることが多い。本当は空間テーブルに合っていることが正しいのであるが、

どうしても表現できない色をマッピングさせて、似ているように見せていくのがガモッ

トマッピングの働きになる。つまり、カラースペースの違いを計算して可能な色空間に

引っ張ろうとするために、Photoshop上などで RGBデータと CMYKデータとでは色が変

わることがある。

・等色相圧縮

-色相を変えない

 色相を一定にして色域圧縮する方法である。

これは、色相点を固定して色域を圧縮するため比較的安定したマッピングができる。

 そのため、通常のマッピングでは、むしろ色相を変えない方が良いとされている。 

-レンダリングインテントの実際

 レンダリングインテントとは、CMM(Color Management Module)が、あるデバイスの

ガモットから別のデバイスのガモットにカラー変換(マッピング、色域変換)するため

に利用する色変換の方式である。CIEの標準では知覚的、彩度、相対的な色域を維持、絶

対的な色域を維持の4つの方式がある。レンダリングインテントは、また異なった色域

を持つ色空間同士を比較して、それらの色を変換する際に、再現色が出来るだけ近似でき

るように色域を圧縮することである。

 色域を圧縮する方法、つまり色をより小さなカラースペースにマップする方法には、

「クリッピング」(ガモット外の色だけをそれに近似したガモット内の色にマップし直

す方法)と「圧縮」(入力された色の全範囲を一定のアルゴリズムに従って出力範囲の異

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なった色にマップし直す方法)の 2つがある。

-色域圧縮の種類

*Perceptual (知覚的)

  グレー(明度)は保たれるが測色的には合っていなくても良い(彩度がトレードオフ

 関係になる)

*Colorimetric (色域を維持)

 測色的、光学的に合致すること

 相対的 (Relative)と絶対的 (Absolute) の 2つがある

*Saturation (彩度)

 彩度が保たれる(明度がトレードオフの関係になる)

①明度維持型圧縮

・明度を保つ

 -自然画像向き

 明度を維持したまま、彩度を犠牲にして圧縮

する方法である。

 

②彩度維持型圧縮

・彩度を保つ

 -C/G 向き

 彩度を維持したまま、明度を犠牲にし

て圧縮する方法である。

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③色域特性維持型

・彩度のもっとも高い部分同士を合わせる

 -主観的に「良い」画像向き

 彩度の最も高い部分を基点として色域圧

縮された部分の最も彩度が高い位置にあわ

せるもので、その他の部分は比例して圧縮

する方法である。

④三刺激値維持型

・重なっている部分のみ再現

 -厳密なカラープルーフ用

完全な色変換である。内側に描かれた曲線

領域内だけを表現するために、変換前後で

のデータは同じである。

しかし、曲線領域外の色は再現できない領

域となるため、限定された色しか表現でき

ない。

⑤圧縮の程度(シフトする基本的方向)

(i)境界に動かす

 曲線領域からはみ出した部分を境界まで

移動させることである。

この場合、移動量は各位置で異なるために

色の表現は目の感度にもよって異なるが、

色目が変化してしまう。

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(ii)入出力の境界に比例して動かす

 先に述べた明度維持型圧縮と同様の圧

縮方法である。つまり、入力側(圧縮

前)の位置に比例して出力側(圧縮後)

の位置が決めるもので、明度はそのまま

で再度のみの圧縮となる。

(iii)2つの境界を参考に高彩度部が強くなるように非線形に圧縮する

 圧縮前の領域と圧縮後の領域を比較し

て部分的な領域での圧縮方法である。

つまり、曲線領域の破線部分は相互で同

じ範囲(無変換部分)とし、曲線領域の

実線と破線で囲まれた領域に元の色を移

動させる方式である。これは高彩度部が

強調されるように非線形の圧縮となる。

(iv)画像の色分布に応じて適応的に変える

 元の色空間領域が黒の曲線領域外の直

線で囲まれた領域にある場合でも、上述

の①~③のような圧縮を行うのではなく、

実際の画像の色分布に応じて(この場合

灰色の曲線領域)黒の曲線領域からはみ

出した部分だけを圧縮する。

この圧縮方法は、圧縮後の画像の色分布

に合わせた形で実際の画像分布を合わせ

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込むため、色再現は非常によいものになる。しかし、画像そのものが限定されるために、

個々の画像に合わせた圧縮方法として利用すべきである。

・レンダリングインテント(マッピング、色域圧縮)

 RGBと CMYKなど異なる色空間の間では互いに存在しない色があり、色変換を行う場

合は、これらの色を何らかの方法でマッピングしなければならない。ICCではその方法

をレンダリングインテントとして、知覚・彩度・相対・絶対という 4つが規定されている。

色合わせをするということは、プリンタ、印刷物、モニタのそれぞれ異なる色空間を互

いに縮めたり延ばしたりして合わせ込むことである。4つのインテントは、その延ばし

方・縮め方の方法である。結論からいえば、「知覚的」か「相対的」のインテントを使う

のがよいようである。これははっきりした定義はないが、大きな色空間を、小さな色空

間に合うように全体的に圧縮してしまう方法である。(下図参照)

LUT(Lookup Table) ルックアップテーブルは、LUT(Look Up Table)とも言いう。デジタル化された輝度階調の

データを任意の階調に補正する際に使用される、入力と出力の対照表(あるいは参照表)

のことを指す。当然ながら他の利用もある。

 ICCプロファイルの実体は変換テーブル(Look Up Table)である。各デバイスに対して、

例えば CMYKのある値に対する Lab値が書かれている。重要なことは一つのプロファイ

ルに対して必ず双方向(例えばデバイスが CMYKなら、CMYK→Lab,Lab→CMYKとい

う具合)を定義しなければならないということである。実際に利用するときは、2つのデ

バイスのプロファイルを使って、例えば RGBから一度 Labに落として CMYKに変換する

ということになる。

 また、ルックアップテーブル(LUT)とは、デジタル化された輝度階調のデータを任

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意の階調 に補正するために使用する図

のようなテーブルになる。従来の画像

処理のアプリケーションで はカメラか

ら出力されたデジタルデータを画像取

込ボードにて LUTを介して後処理を行

っていた。 あるメーカーの LUT内蔵

カメラはカメラ内部で 10bitの幅広い階

調でデ ジタル化されたデータをパソコ

ンで扱いやすい 8bitのデータに割り当

てて出力している。 テーブルはユー

ザが任意に設 定できるので 2 点の

「Knee」という座標を指定出来る。カメラの出力段階ですでに LUTを介した最適化画像

が出力される。

 よく似た機能として、ガンマ 0.45の補正がある。こちらは アナログ処理であるが、

LUTの場合はデジタル化された値を任意に補正できるため、ユーザ側で把握しやすいと

いうメリットがある。このカメラではWindowsのGUIの機能を活かして視覚的にテーブ

ルを設定できるコントロールソフトウェアを提供し、RS-232(カメラリンクシリアルも

含む)より簡単に設定できるように設計されている。

1D LUT

1D LUTで、各入力値は、他の色チャンネルの値を照合せずに処理される。

一番目の例において、たとえ、緑色と、青色のチャンネルにおける値が何であっても、

赤色の入力値「50」は「70」に変換される。同様に緑色の「50」は「75」に、青色の

「50」は「65」にそれぞれ変換される。

 二番目、三番目も同様にして変換される。

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3D LUT

一方、3D LUTは各インプット色が 3の倍数のために三重のアウトプットを定義している。

一番目の例において、赤色の入力値が「50」、緑色が「50」、青色が「50」の値に依存し

ている(完全に一致した)3つの違うアウトプット値(赤色の出力値が「70」、緑色が

「70」、青色が「70」)に変換される。つまり、RGBの全ての値(入力値)が一致した

場合に限り、それに対応した数値が出力値として変換される。

 二番目、三番目も同様にして変換される。(変換される数値の組合せは 1個のみ)

・ルックアップテーブルの応用

 ルックアップテーブル(LUT:Lookup Table)とは、入出力関係を表す参照表のことで

ある。市販のソフトウェア、たとえば Simulinkの Look-Up Tablesライブラリには、下図に

示すようにユーザ定義の入出力表を定義できるブロックが各種用意されている。同ライ

ブラリのブロックを利用することによって、実験データを取り込んだシミュレーション

が可能となる。

Look-Up Tablesライブラリ

 Simulinkでは、n 入力 1 出力の n次元ルックアップテーブルを使用することができる。

以下、1次元/2次元ルックアップテーブルを例にとり、その具体的な使用方法について

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説明する。

・ルックアップテーブルの作成例

 ここでは、次のような 1 入力 1 出力の入出力関係を考える。

次元の入出力表例

入力 u -8 -5 -2 0 5 7

出力 y -50 -30 -20 -12 -5 -1

図は、上表をプロットした結果である。

 表のプロット結果

このような 1次元の入出力関係を使用し

たい場合は、Look-Up Tableブロックを使用する。

アナログ写真 と デジタル写真  デジタル全盛の世の中になってきたが、それでもなお「やっぱり銀塩フィルムの画質

 LUT_1D.mdl

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-フィルムはデジタル

 銀塩フィルムは今はやりのデジタル画像に対するアナログの雄として代表的なもので

 撮影すると被写体の明るい部分では多くの光が、暗い部分では少しの光がこのハロゲ

ン化銀結晶に当たる(図 2)。

 ところが、いざ現像すると(図 3)、少ない光しか当たっていない粒子も、多くの光が

当たった粒子も、同様に粒子全体が黒化(銀に変わる)してしまう。つまり現像された後

のフィルムは、光が当たった部分の黒(0)か当たらなかった部分の白(1)の 2種類に分けられる、デジタルそのものなのである。

 ではどうしてあの、なだらかな階調がでるのか?小さなハロゲン化銀粒子がたくさん、

それもランダムな配置で存在し、光の量が少ない部分と多くの光が当たる部分では、光

の当たる粒子と当たらない粒子の比率が違ってくるからである(図 4)。場所によって(当たる光の量によって)黒化する粒子の比率が異なり、マクロに見たときに階調が再

現されるのである。

 後で出てくるが、逆にデジカメ等で用いられる CCD素子の出力は 0と 1のデジタルではなく、アナログなのである。

-フィルムの画素数

右図は K社のカラーリバーサルフィルムのMTF 曲線*1と呼ばれる図である。

 横軸は被写体の細かさを示し、縦軸は

コントラストの再現性を示している。た

とえば 1mm 当たり 50 本という細かさの

赤い被写体をこのフィルムで撮影すると、

撮影されたフィルム上でのコントラスト

は被写体のコントラストの約 20%まで低

下すると言うことを示しているのである。

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このグラフから Filmのデジタル換算画素数を求めてみる。 デジタルに換算する上で、コントラストの再現が 50%以下に落ちてしまうと 2値化が困難であるから、MTF(縦軸のコントラスト再現)が 50%の所の空間周波数(横軸)から画素数が決まる。仮にG像に対して考えると図から空間周波数は 40 本/mmとなる。*1:MTF曲線とは MTF(Modulation Transfer Function)は、レンズ性能を評価する指標のひとつで、レン

ズの結像性能を知るために、被写体の持つコントラストをどの程度忠実に再現できるかを空

間周波数特性として表現したものである。

 オーディオの分野では、原音の情報を機器が如何に忠実に再生するかを周波数特性を用いて

判断するが、光学の世界では空間周波数(Spatial frequency)を用いる。空間周波数

(本/mm)は 1mmあたり何本のパターンがあるかを示す。

 ここに掲載のMTF 曲線は、空間周波数を特定の値(10 本/mmと 30 本/mm)に固定した

状態で、横軸に像高(画面中心からの距離 mm)をとり、縦軸にコントラストの値(最大値

1)を示したものである。各レンズに対応するMTF 曲線は、絞り開放の場合に対応し、空間

周波数 10 本/mmに対応する曲線を赤線で、空間周波数 30 本/mmに対応する曲線を青線で

示している。

 軸外像高では非点収差の影響で S方向(サジタル方向:放射方向)とM方向(メリジオナ

ル方向:同心円方向)で、コントラストの変化が異なってくる。一般に、10 本/mm の曲線が

1に近いほどコントラストがよくヌケの良いレンズになり、30 本/mmの数値が高いほど高解

像なレンズといえる。

 なお、レンズ性能については、ボケの評価や、色にじみ等 、MTFでは判断できない評価項

目もある。従って、MTFは性能を評価する尺度のひとつとして利用するのがよい。

 この空間周波数は1mm 当たりの白黒のペアが何本かを示しているので、白、黒をそ

れぞれ1本(ドット)と考えると 2 倍の 80ドット/mm(0.0125mm 角)となる。

 35mmFilm(135)では大きさは 24mm×36mmなので、フィルム全体では、

 となり、おおよそ 550 万画素となるが、これは緑1色の画素数で、R、G、Bの 3色では約 1660 万画素となる。このようにして計算すると、種種フィルムの画素数は白黒

Filmでは少なく、高解像度タイプで 1000 万画素程度、カラーネガフィルムは多く、

ISO400クラスでも 2500 万画素相当になる。

 この画素数は、単に「撮影前のフィルムそのものが持っている画素数」でしかないの

である。

-フィルムの階調数

 銀塩写真は「階調が豊かだ」と言われている。では何階調(何ビット画像)かを調べて

みよう。

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 階調数は Filmの濃度(濃さ)と粒状性によって決まる。あるフィルム(上のMTFと同

じフィルムである)のデータシートから粒状性に関する値、RMS粒状度の所を見ると

10と言う値が書かれている。これは 1辺 48μで測定した時に標準偏差から算出される粒

状を示す値であるから、上記

-銀塩写真の画素数

 先ほどフィルムの画素数の話をしたが、今度は「写真の画素数」について考える。フ

ィルムの画素数と同じではないか?と思われるであろうが、実は全く異なるのである。

いくらフィルムの換算画素数が 1660 万画素あっても、カメラに入れ、レンズを通して

写真を撮らなければ絵は出来ず、このカメラやレンズの性能で実際は画素数はどんどん

下がって行くのである。

 最初に挙げたフィルムと同

じ く、50 本/mm で 50%のレスポンスとなるフィルムの

MTF を青い曲線で、一般的な

交 換 レ ン ズ の OTF(Optical Transfer Function、MTF と同

じ)を赤い曲線で示す。この時、

フィルムとレンズの合成 MTFは 2 つの曲線の積(フィルム

が 80%、レンズが 50%なら 0.8 x 0.5 = 0.4 で 40%)になる(緑の線)。 さてこの合成MTF(緑の曲線)から最初と同じように画素数を計算してみると、

画素数=

24mm×36mm

=1785124 と な り 3 色 で は

53553720.022mm2

つまり、フィルム単体では 1660 万画素だったのが、レンズを用いて撮影すると約 536

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万画素に低下してしまう。

画素数=

24mm×36mm =793388 となり 3色では 238016 0.033mm2

高々、約 238 万画素まで下がってしまう。こうして考えてみると、銀塩写真も画素数で

はたいしたことないことなるが、逆に、この程度の画素数であれほどの描写を誇る銀塩

写真はすごいとも言える。

-銀塩 vsデジタル 銀塩写真とデジタル写真の鮮鋭性比較において、単純に画素数や解像力、階調数ではな

く、「情報容量」と言う考え方をすることがよくある。これは「画素数×階調数」で示さ

情報容量=536 万 画 素

×5.46bit=約 2927 万ビッ

 一方、デジタルカメラの出力データは通常各色 8 ビット(256階調)と言われるが、

真の階調数はデジタルカメラの持つダイナミックレンジから決まり、常用対数で 3.5と考えると、これを印画紙(再現輝度レンジ 2.4)にプリントするとプリントの階調数 Kは、K=256x2.4/3.5=176となり、705 ビットに相当することになる。従って、銀塩写真と

同じ情報容量と考えると、2927 万 bit÷7.5bit=約 390 万画素で、ほぼ 400 万画素のデ

ジタルカメラの情報量が 35mm銀塩カメラの情報量と等しくなるのである。考え方、算

出する視点にはいろいろあるであろうが、今のデジタルカメラの鮮鋭度は銀塩カメラに

ひけを取らない。と言うことは言える。実際にはデジタルカメラの解像度(最大周波

数)は画素の細かさまで小さくは出来ないのでもっと多い画素数が必要となる。

-デジタルの限界

 上で計算したように、現在のデジタルカメラの鮮鋭度は十分に銀塩に追いついてきて

いると言える。もちろん写真の画質を決めるのは鮮鋭度だけではないことは事実であり、

デジタルカメラの色再現などについても別の場所で説明しているが、さらに高鮮鋭度な

デジタルカメラが今後出てくることは明らかであろう。ところが、どうしてもデジタル

カメラには銀塩写真を越えることの出来ない(現在では)部分があるのである。先ほど

から何度も書いている「小さなハロゲン化銀粒子がたくさん、

それもランダムな配置で存在する」ことによる特徴である。

右のような何の変哲もない画像であるが、この一部分を拡大

してみると銀塩、デジタルはそれぞれ次のようになる。それ

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がその下の拡大図である。

銀塩がランダムな粒子群(配置も大きさも)であるのに対しデジタルは整然と並んだ均

一な画素からなる。これを実際の画像に当てはめてみる。も

ちろん解像力限界を超えた部分の話であり、意味無いと言え

ば意味はないのであるが・・・。 

同じように湖畔に係留されたヨットの写真のアップである。

銀塩写真の場合は何とかヨットらしいものの形が認識できる

が、デジタルの場合は、これだけを見せられたら何が何だか

分かりようもないように見える。 解像はしていなくても、

何があるのか分かるのが銀塩なのである。かの御巣鷹山での

日航機事故で尾翼の破損が確認されたのも銀塩ならではの恩

恵である。

もしあれがデジタルカメラの画像であったら尾翼の破損などは解明されなかったかも知

れない。銀塩は本当にすばらしい感光材料である。こういった「解像していない部分で

の違い」が、立体感や存在感と言った描写として出てこないとも限らないのである。微

細な変化の芸術とでも言えるのではないだろうか。

 ランダムと整然、ここが銀塩写真とデジタル写真のもっとも大きく、もっとも重要な

違いだということをしっかりと理解することが大切である。

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アナログ(analog又はanalogue) アナログとは、数や量を連続的な物理量(長さ・角度・電流など)で表現する方式であ

る。また、その方式による物の

頭に冠される言葉(アナログ 時

計、アナログデータなど)でも

ある。ただ、デジタルカメラに

対するものは通常銀塩カメラと

いい、アナログ カメラ とは言わ

ない。

・長所・短所

量をアナログに扱うことの長所

として以下のようなものがある。

扱うための機器の精度を上げる

ことで誤差を小さくできる。対して、デジタル方式では量子化の規格が精度の限界であ

り、これより誤差を小さくすることはできない。

視認して直感的に量を把握しやすい。

対して欠点は以下のようなものである。

-計測あるいは伝達するたびに誤差が蓄積する

-外部からの擾乱(雑音など)の影響を受けやすい

-記録・伝送・変換(特に A/D=アナログ⇔デジタル変換)などの過程で、各機能のもつ

-非直線性の影響を受けやすい

-コンピュータには扱いにくい

-精度を上げることができても、それが容易あるいは経済的に引き合うとは限らない

これらの特徴が、精度に関して如実に表れるのがオーディオ機器である。コンパクトデ

ィスク(CD)の登場以降、安価で高音質なデジタル方式の機器が普及したが、標本化周

波数および量子化の精度が不足であるとして、より良好な音質を求める人々のためのア

ナログ機器(レコードなど)の需要はなくなっていない。このため、デジタル機器側で

もスーパーオーディオ CD 、DVD-Audio など精度を上げた規格を登場させている。

視認性に関しては、時計の表示方法からよくわかる。常に何時何分か読み上げることの

できるデジタル時計と、時間経過を直感的に読み取ることのできるアナログ時計は、そ

れぞれの長所のため共存している。

・ その他

 二値的なものをデジタルとし、これに対して多値的なものがアナログとみなされる場

合もある。 例えば比喩的に、物事を割り切らず、曖昧さを残しつつ理解する人のことを

「アナログ人間」と呼ぶことがある。 ゲーム機において、コントローラからの入力(レ

バーを倒した角度など)を多値で処理できる場合は「アナログ入力に対応」していると

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される。

また、アナログの「類似・相似」という本来の意味から、あるホルモンと同等の働きを

する物質や、ある医薬品と類似した医薬品のこともアナログと呼ぶことがある。

デジタル(digital) デジタルとは、工学的には状態を示す量を数値化して処理(取得、蓄積、加工、伝送な

ど)を行う方式のことで、数や量を有限桁数の離散数値*1 で表現する方式である。また、

その方式による物の頭に冠される言葉(デジタル 時計 、デジタルカメラ、デジタルデー

タなど)。より原語に近く「ディジタル」とも言う。

*1:0と 1のみの 2 進法による必要はない。コンピュータで扱う場合に 2 進法の方が都

合が良いだけで、人間にとっては 10 進法の方が判りやすい。

・ 概要

 データの数値化にあたっては量子化を行い、整数値(すなわち digit)で表現する。このため、データ量を離散的な値として表現することになり小さい量に対しては誤差を持

つ。この誤差は適切な量子化を行うことで実用上影響の無い範囲にすることができ、デ

ータ量に比例したアナログ量を用いるのとほぼ等価な処理を提供可能である。

今日のコンピュータの主流であるデジタルコンピュータにおいては、0と 1だけからな

る 2 進数 を物理的な表現形式 (電圧の高・低) として持つため、デジタルは 0と 1からなるという説明がよくなされるが、はっきりと区別できる 2 以上の状態で表現されている

データ (例: そろばんの玉など) はどれもデジタルと呼ぶことができる。

一般的には「デジタル」と記述される。しかし、電気・電子・情報工学の分野では「ディ

ジタル」と記述される。これは、「digital」のスペル「di」を意識してのことである。・特徴

 デジタルデータは、離散値とし

て数値化しているため、アナログ

データと比べて劣化しにくい特性

を持つ。伝送・記録再生などを行

う場合、デジタル量もアナログ量

と同様に電圧・電流などの電気信

号に置き換えて取り扱われるが、

外乱が生じて信号にノイズが混入

した場合、アナログ処理では特別

な処理を行わない限り信号に混じ

ったノイズを取り除くことが困難

である。これに対しデジタル処理

では、数値は離散化してあり中間

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値を持たない(注 1)ため、ノイズによって生じた誤差が一定以下ならばそれを無視でき、

元の数値データを劣化無しに復元可能である。

注 1) 例えばデータが整数表現の場合、ノイズによって 1が 0.8や 1.2に変化しても 1と認識させることが可能である。

 実際の記録・伝送などではノイズなどの影響が無視できず、もとのデータと異なるデ

ータが再生されてしまうこともある(上の例では 1が 0.4や 1.6に変化すると別な値、すなわち 0あるいは 2として再生される)。しかし、データを予め誤り訂正符号などを

使って冗長化しておくと、途中で劣化しても自動的に修復したり、誤りの発生を検出して

再送を要求したりすることができ、信頼性の高い処理を提供することが可能になる。

・ デジタル処理の適用

 実際のデジタル処理に当たっては、2 進数ひとつの単位をビットとし、8 ビットなどの

まとまった単位を合わせてオクテットまたはバイト、ワードという単位にして取り扱う

ことが多い。これは処理装置や記憶装置の語長に合わせて効率よく使えるようにするた

めである。

デジタルデータにおいては、表現可能な数値範囲を超えたり、最小値に近い数値を扱う際

には注意が必要である。 アナログ処理では、多少入力電圧が規定より超過しても影響が

ないか、わずかな影響で済む場合もある。しかしデジタル処理では、定義された最大値

を超えた場合には桁あふれ(オーバーフロー)となり、以後の演算処理の結果は保証され

ない。また、最小値に近い数値では量子化誤差が無視できず、S/N比の劣化として現れることがある。さらに、数値計算の際に不用意な処理手順による桁落ちが生じ、著しい有効

桁数の減少を招くこともあるため、注意を要する。

・ 符号化

 様々な分野でそれぞれ適切な表現形式を用いてデータを符号化している。

数値は、整数や浮動小数点型、固定小数点型などとして扱える。

文字は、文字コードで文字とコードを対応させることができる。

音声は、PCM などでデジタル化できる。楽譜情報を電子化したものは MIDI、MML など。

絵、映像は、光をRGBなど色の成分に分解し、各色の明るさなどを数値化する。

                                    以上

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