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第69回済生会学会・平成28年度済生会総会 済生会の伝統継承と未来への挑戦 −新しい医療と福祉の構築に向けて− 一般演題(ポスター) 会場:301-304 3F Hゾーン 時間:13:30~14:12 リハビリテーション⑤ P23-6 高校生を対象とした学校における 運動器検診による運動器機能の現 状の把握 さとう 藤 晋 しんき 1) 、菅  義行 2) 、吉田 知史 3) 高橋 一男 4) 、小野寺育男 1) 北上済生会病院 リハビリテーション科 1 、菅整形外科 医院 2 、北上済生会病院 整形外科 3 、岩手県教育委員会 4 【目的】現代の子ども達は、運動不足による体力・運動 能力の低下、生活習慣病が深刻な社会問題となっている。 一方で、運動過多によるスポーツ障害も問題となってお り、その二極化が深刻となってきている現状がある。こ のように、児童・生徒の運動器の発育・発達が阻害され ることが危惧されており、運動器検診を中心とした学校 保健での予防が各地で行われている。 今年度より北上 市でも、小中学校における全学年の児童・生徒を対象に、 運動器検診が実施された。しかしながら、高校生を対象 とした運動器検診は、実施されておらず、その現状につ いては、不明である。今回、我々は高校生の運動器機能 を把握することを目的とし、市内の高校の協力を得て運 動器機能検査を実施することにした。 【方法】対象は、北上市内の高等学校1年生238名(男性 113名、女性125名)。方法は、我々が作成した「運動器 チェックシート」を用いた測定を行った。まず、問診で、 関節に痛みがあるかないか確認した。運動器チェックの 項目は、(1)片脚立ち(左右)、(2)しゃがみ込み、(3) 立位体前屈・後屈、(4)トンビ座り、(5)下肢スクウェア、 (6)下肢上げ(左右)、 (7)踵ー尻付け、 (8)膝抱え万歳、 (9) 中指肩付けとした。また、クラス分けは、a.十分にできた、 b.かろうじてできた、c.できなかったとした。事前に高 校の体育教諭と測定方法など打ち合わせを行い、体育の 授業時間内に、生徒同士で実施し、記載させた。 【結果】チェック項目では(1)a.94%,c6%、(2)a54%. b33%c13%、 (3)a82%.b11%.c6%、 (4)a66%,b18%,c16%、 (5) a11%, b63%,c27%、(6)a63%,b37%,c1%、(7) a87%,b10%c3%、(8)a96%b3%c1%、(9)a96%,b4%c0.4 であった。 【考察】今回の研究では、上肢より、下肢、体幹部にお いて柔軟性が不十分だと考えられた。先行研究において、 中高校生のスポーツ外傷の発症では、腰背部、下肢に発 症が多いとされ、筋力強化、柔軟性などの必要性を報告 している。本研究でも、同様な結果であり、今後は、下肢、 体幹を中心とした対応などが必要と考えられた。また、 学校内で、問診及び生徒同士にて行う方法は、短時間か つ簡便に実施可能であり、有効であると考えられた。今 後、検査方法の改良や現場の指導者及び生徒へのフィー ドバックが必要と考えられた。 リハビリテーション⑤ P23-5 院内職員を対象とした足の健康 チェックの取り組み うらかわ 川 隆 たかし 司、衛藤 継富 済生会熊本病院 リハビリテーション部 【はじめに】身体の不調の原因の一つに合わない靴を履 いているからという見解がある。院内で業務を行う中で、 歩くことは日常であるが、気付かぬうちに身体に負担を かけて足、膝、腰痛などで悩んでいる職員の方々が多い といわれている。足と靴の不適合は足のトラブルだけで なく、身体全体のトラブルに繋がりかねない。歩くこと が多い業務の中では、足にあった靴を履くことが、健康 増進、障害予防、業務効率の改善に繋がる。そこで、今 回、職員向けの足と靴に関するチェックの実施を通して、 職員の障害予防に役立てることができたためその内容を 報告する。 【方法】院内にある職員健康管理室と協力し、当院職員 を対象とした足の健康チェックを実施した。その内容は、 足、靴、姿勢、歩行の評価を行い、靴の選び方や履き方、 歩行指導、インソールの作製を実施した。実施した40名 に対して3か月後にアンケート調査を行った。 【結果】取り組み開始から1年半にて100件のチェックを 行い、69足のインソールを作成した。症例提示:60代 女性、歩行中に左母指MP関節部に疼痛が出現すること に悩まされていた。1年前に外反母趾用サポーターを処 方され装着するが疼痛が持続する状態であった。初回 チェック時の外反母趾角は左27.5°であり、母趾MP関節 部に発赤を認める状態だった。業務中は大きめのサイズ のナースサンダルを緩めに履いている状態であった。改 善点として、まず靴の変更を行った。サイズ計測で得た データをもとに足のサイズに合った紐靴を選定した。次 にインソールを作製しアーチサポートを行い、後方重心 であった姿勢を修正するよう歩行指導を行った。1か月 後、疼痛が軽減し外反母趾用サポーターを装着する必要 なく歩行可能となった。外反母趾角は23.5°となり改善が みられた。実施から半年後も疼痛が増強することなく経 過している。足の健康チェック3か月後のアンケート調 査にて40名中29名の回答(解答率72.5%、男性7名、女性 22名)を得た。チェックを受けて歩きやすくなった方は 26名(89.7%)であった。 【考察】提示した症例は、靴の変更とインソールによる アーチサポートによって、歩行時の足趾の機能を向上さ せることができ母趾角が改善したと考えられる。今回の 職員を対象とした足の健康チェックの取り組みにて、疼 痛の軽減や歩きやすくなったなどの効果を得ることがで き、職員の障害予防、健康増進に寄与することができた。

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Page 1: リハビリテーション⑤ - JTB Com · といわれている。足と靴の不適合は足のトラブルだけで なく、身体全体のトラブルに繋がりかねない。歩くこと

第69回済生会学会・平成28年度済生会総会済生会の伝統継承と未来への挑戦 −新しい医療と福祉の構築に向けて−

一般演題(ポスター)

会場:301-304 3F Hゾーン時間:13:30~14:12

リハビリテーション⑤

P23-6 高校生を対象とした学校における運動器検診による運動器機能の現状の把握

佐さ と う

藤 晋し ん き

樹1)、菅  義行2)、吉田 知史3)、高橋 一男4)、小野寺育男1)

北上済生会病院 リハビリテーション科1、菅整形外科医院2、北上済生会病院 整形外科3、岩手県教育委員会4

【目的】現代の子ども達は、運動不足による体力・運動能力の低下、生活習慣病が深刻な社会問題となっている。一方で、運動過多によるスポーツ障害も問題となっており、その二極化が深刻となってきている現状がある。このように、児童・生徒の運動器の発育・発達が阻害されることが危惧されており、運動器検診を中心とした学校保健での予防が各地で行われている。 今年度より北上市でも、小中学校における全学年の児童・生徒を対象に、運動器検診が実施された。しかしながら、高校生を対象とした運動器検診は、実施されておらず、その現状については、不明である。今回、我々は高校生の運動器機能を把握することを目的とし、市内の高校の協力を得て運動器機能検査を実施することにした。

【方法】対象は、北上市内の高等学校1年生238名(男性113名、女性125名)。方法は、我々が作成した「運動器チェックシート」を用いた測定を行った。まず、問診で、関節に痛みがあるかないか確認した。運動器チェックの項目は、(1)片脚立ち(左右)、(2)しゃがみ込み、(3)立位体前屈・後屈、(4)トンビ座り、(5)下肢スクウェア、

(6)下肢上げ(左右)、(7)踵ー尻付け、(8)膝抱え万歳、(9)中指肩付けとした。また、クラス分けは、a.十分にできた、b.かろうじてできた、c.できなかったとした。事前に高校の体育教諭と測定方法など打ち合わせを行い、体育の授業時間内に、生徒同士で実施し、記載させた。

【結果】チェック項目では(1)a.94%,c6%、(2)a54%.b33%c13%、(3)a82%.b11%.c6%、(4)a66%,b18%,c16%、(5)a11% , b63% , c 27%、(6)a63% ,b37% , c 1%、(7)a87 %,b10%c3%、(8)a96%b3%c1%、(9)a96%,b4%c0.4であった。

【考察】今回の研究では、上肢より、下肢、体幹部において柔軟性が不十分だと考えられた。先行研究において、中高校生のスポーツ外傷の発症では、腰背部、下肢に発症が多いとされ、筋力強化、柔軟性などの必要性を報告している。本研究でも、同様な結果であり、今後は、下肢、体幹を中心とした対応などが必要と考えられた。また、学校内で、問診及び生徒同士にて行う方法は、短時間かつ簡便に実施可能であり、有効であると考えられた。今後、検査方法の改良や現場の指導者及び生徒へのフィードバックが必要と考えられた。

リハビリテーション⑤

P23-5 院内職員を対象とした足の健康チェックの取り組み

浦うらかわ

川 隆た か し

司、衛藤 継富

済生会熊本病院 リハビリテーション部

【はじめに】身体の不調の原因の一つに合わない靴を履いているからという見解がある。院内で業務を行う中で、歩くことは日常であるが、気付かぬうちに身体に負担をかけて足、膝、腰痛などで悩んでいる職員の方々が多いといわれている。足と靴の不適合は足のトラブルだけでなく、身体全体のトラブルに繋がりかねない。歩くことが多い業務の中では、足にあった靴を履くことが、健康増進、障害予防、業務効率の改善に繋がる。そこで、今回、職員向けの足と靴に関するチェックの実施を通して、職員の障害予防に役立てることができたためその内容を報告する。

【方法】院内にある職員健康管理室と協力し、当院職員を対象とした足の健康チェックを実施した。その内容は、足、靴、姿勢、歩行の評価を行い、靴の選び方や履き方、歩行指導、インソールの作製を実施した。実施した40名に対して3か月後にアンケート調査を行った。

【結果】取り組み開始から1年半にて100件のチェックを行い、69足のインソールを作成した。症例提示:60代女性、歩行中に左母指MP関節部に疼痛が出現することに悩まされていた。1年前に外反母趾用サポーターを処方され装着するが疼痛が持続する状態であった。初回チェック時の外反母趾角は左27.5°であり、母趾MP関節部に発赤を認める状態だった。業務中は大きめのサイズのナースサンダルを緩めに履いている状態であった。改善点として、まず靴の変更を行った。サイズ計測で得たデータをもとに足のサイズに合った紐靴を選定した。次にインソールを作製しアーチサポートを行い、後方重心であった姿勢を修正するよう歩行指導を行った。1か月後、疼痛が軽減し外反母趾用サポーターを装着する必要なく歩行可能となった。外反母趾角は23.5°となり改善がみられた。実施から半年後も疼痛が増強することなく経過している。足の健康チェック3か月後のアンケート調査にて40名中29名の回答(解答率72.5%、男性7名、女性22名)を得た。チェックを受けて歩きやすくなった方は26名(89.7%)であった。

【考察】提示した症例は、靴の変更とインソールによるアーチサポートによって、歩行時の足趾の機能を向上させることができ母趾角が改善したと考えられる。今回の職員を対象とした足の健康チェックの取り組みにて、疼痛の軽減や歩きやすくなったなどの効果を得ることができ、職員の障害予防、健康増進に寄与することができた。