マイクロウエットミリングによる...

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マイクロウエットミリングによる 機能性 食品 の開発 改良型電動石臼 を用いた 湿式粉砕装置 筑波大学 生命環境系 教授 北村 平成26年7月22日 JST東京本部別館ホール 筑波大学新技術説明会

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マイクロウエットミリングによる

機能性食品の開発

〈改良型電動石臼を用いた湿式粉砕装置〉

筑波大学 生命環境系教授 北村 豊

平成26年7月22日 JST東京本部別館ホール

筑波大学新技術説明会

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玄米を液化する技術です

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コメの消費量の減退

111.7 kg(1965) → 59.5 kg (2010)

水田面積の減少

338.5 万ha (1965) → 162.5 万ha (2011)

耕作放棄地の増加

13.1 万ha (1975) → 39.6 万ha(2010)

玄米を液化した理由①②③

日本の稲作を元気にしたい!

(農林水産省 食糧需給表、耕地及び作付面積統計より) 3

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新規需要(炊飯米以外)に用いるコメ• 飼 料• バイオ燃料

• 米 粉

小麦粉との価格差・ 品質相違,コメ粉砕の困難性

米粉利用の課題

玄米を液化した理由①②③

消費の伸び悩み:40.3 千t (2011) → 34.5 千t (2012)

新規需要米の栽培が普及!

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新規需要の例

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新規需要米は・・・

1.炊いて食べてはいけない

2.でも栄養分はたっぷり(特に玄米)

3.水に浸せば軟化して粉砕が容易

4.しかし栄養成分が水に溶ける

5.粉にするにはエネルギーを余計に消費

米粉以外の用途はないものか?

玄米を液化した理由①②③

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水を上手に活用したコメの新たな利用を提案できないか?

湿式粉砕・液状化食素材に着目!

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湿式粉砕とは?

6乾式粉砕機の例(ロールミル)

http://h-mog.sakura.ne.jp/seihunnmyu-jiamu.php

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湿式粉砕の特徴

方法①②③④⑤⑥⑦

水の力でより細かく

エネルギー節約

ほこりがでない

うるさくない

熱くならない

連続操作の可能な石臼式粉砕機に着目8

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石臼粉砕(Stone mill)とは?

方法①②③④⑤⑥⑦

人類が食品加工に使った最初の道具(旧石器時代)

http://store.shopping.yahoo.co.jp/e-tomo/index.html 9

粒子を流し込む

石と石の間で粉砕

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ふくみ部原料同士の

摩擦力

擦り合わせ部石臼の

せん断力

石臼の断面はこうなっている

石臼の横断面

方法①②③④⑤⑥⑦

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τ = 𝜏0 + 𝜂𝜕𝑢

𝜕𝑦

τ :せん断応力 (N/m2)τ0:降伏強度 (N/m2)η :粘性係数 (Pa s)u :下臼回転数 (m/s)y :間隙 (m)

せん断応力を向上するには?

𝝏𝒚:間隙

𝝏𝒖:下臼回転数

方法①②③④⑤⑥⑦

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上 臼

下 臼

• 重い石を使う

• 石を高速で回す

要するに! 欠点も!

• 装置が重い…

• 熱が発生…

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1. 湿式利用に適した石臼の設計・開発

2. 湿式石臼システムによる微細化ノウハウ

なぜそこまで細かくしたいのか?

方法①②③④⑤⑥⑦

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★飲料(液体食品)は,さらさら感が大事

→粒子が大きいと,舌触り・のど越しが悪い

★よく混ざって,安定することが大事

→粒子が大きいと,濃淡が発生(均質性が悪化)

美味いコメの飲料ができれば消費が増える?

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①Rotary rice feeding equipment②Motor ③Stone mill④Pump

⑤Solution tank⑥Rubber spatula⑦Strage bottle

マイクロウエットミリングシステム改良型電動石臼を用いた湿式粉砕装置

方法①②③④⑤⑥⑦

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M

P

①②

④③

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どうやって作る?玄米ミルク(ライススラリー)

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MWM粉砕

玄米を直に微細化する①②③

玄米

玄米ミルク

浸漬・殺菌

玄米ミルク加工プロセス

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マイクロウエットミリングの実際

玄米を直に微細化する①②③

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玄米ミルク

メジアン径(μm)

玄米試料 6.2

75%径(μm)

52.8

02468

10

0 1 10 100 1000

Fre

qu

en

cy (

%)

Particle size (μm)

Fig: Particle size distribution

白米由来 糠由来

デンプン最小粒径

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玄米を直に微細化する①②③

17※官能的に良好な粒径20 μm以下(井上,2011)

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さらに微細化するには?

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http://jocr.jp/blog/giants.php?blogid=25&archive=2012-7-1

※これはイメージです

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分離粉砕

分離

混合スラリー

白米

白米スラリー

糠スラリー 微細化

20 μm以下

+

微細化

玄米ミルク

メジアン径(μm)

玄米 6.2

75%径(μm)

52.8

コメとヌカを分離して粉砕!①②③

別々に粉砕後,混合する

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精米

白米 糠

湿熱殺菌

加水

玄米

マイクロウエットミリング

浸漬

分離粉砕法のフロー

分離粉砕法①②③

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0

20

40

60

80

100

D50 D75

Pa

rtic

le s

ize

(μ

m)

Fig: Comparison of mixed and brown rice slurry

Mixed rice slurry

Brown rice slurry

目標値20 μm以下を達成

• メジアン径5.0 μm

• 75%径16.1 μm

更なる微細化を達成

分離粉砕法①②③

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分離粉砕+混合スラリー

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色々な食品への加工が可能!

玄米がミルクのようになれば

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有名なGABAも

富加しやすくなります

23http://www.satake-

japan.co.jp/ja/about/gabarice.html

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GABAとは?

GABAを有する発芽玄米( Gamma-aminobutyric acid )

降圧効果・ストレス低減作用

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参考: http://www.fumu-fumu.com/

ピリドキサルリン酸(補酵素)

グルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)

グルタミン酸 GABA

玄米中の酵素が水で活性化してGABAが生成+CO₂

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GABAの作り方

玄米 水

酵素-基質反応の促進

GABA生成の高速化

従来のGABA生成:固体反応

提案:液体反応

長時間の浸漬・温度管理が必要

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玄米ミルク

良好な混合・均質化

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玄米ミルクでGABAを作ると

<知見> スラリー化によるGABA生成速度の上昇

GABA生成に適した温:33℃ GABA生成に適した品種(北陸胚240号)

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微細化により広がる農産物の高付加価値化

27玄米ミルクは一例です

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新たなMWMは2段粉砕です

予め粗砕したジュースをMWMに供給すると…

糠の粉砕からヒントを得ました

M

P

④③

⑥①

生産量・効率の向上

コメ以外の農産物にも使

えます

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微細化でできること①②③

1.官能性と機能性の両立

種子・果皮・繊維質(機能性成分が豊富)

・・・原形のままでは官能性を悪化させます

➡微粒化により食材への包含が容易になります

➡健康とおいしさが両立できます

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微細化でできること①②③

2.酵素・微生物反応の活性化

続く低分子化・変換を容易にします

➡健康機能成分を増やします,新たに作ります

➡消化・吸収をよくします

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例)

・青果物中リン脂質の分解・合成

・薬用植物中の高分子の低分子化

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微細化でできること ①②③

農産物の高付加価値化を実現

粉砕,分離,混合,攪拌,加熱,分離などの

機械的・熱的操作の活用

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メカノバイオケミカル反応

酵素・微生物(バイオケミカル)反応の活性化

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メカノバイオケミカルによる農産物加工

健康・食料・環境問題を解決できます

➡食品の保健機能を高めます

➡種子・果皮の資源化で廃棄物を減らします

➡可食部を増やし,食料自給率を改善します

➡フードロス問題にも対応します

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玄米ミルクの商品化事例

ブディーノ・デ・リーゾ(イタリア※語でライスプリン)

※EU圏でTOPの150万トンのコメ生産(日本は1100万トン弱)2010FAO33

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お問い合わせ先

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筑波大学 国際産学連携本部

技術移転マネージャー

柿本茂八

TEL:029-853 -5854

FAX:029-853 -6565

e-mail:kakimoto@ilc.tsukuba.ac.jp

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実用化に向けた課題

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• 石臼粉砕速度(生産量)の向上

• 粗粉砕(1段目)機構の開発

• 石の摩耗に関する問題の解決

• 機能性農産物の探索

• MWMの用途開発

• スラリーを食材とする食品開発

➡食品機械メーカーとの共同研究

➡農業生産法人・食品加工との共同研究

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本技術に関する知的財産権

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• 発明の名称 :γ‐アミノ酪酸含有の食品素材およびその製造方法

• 出願番号 :特願2011-245885

• 出願人 :筑波大学 外1

• 発明者 :北村 豊 外1名

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ご清聴ありがとうございました

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