ディベートに対するイメージの...

29
ディベートと議論教育 ディベート教育国際研究会論集 平成 29 1 pp. 33-60 33 【研究論文】 ディベートに対するイメージの テキストマイニングによる分析 小高裕次 (文藻外語大學) A Text Mining Analysis of Images for Debate KOTAKA Yuji (Wenzao Ursuline University of Languages) The aim of this research is to suggest some methods on how to improve classroom debate. The author asked students to write fixed-style complete and free sentences on "image of debate" and analysed them by using text mining. The result of analysis is that students do not like preparation like bibliographic survey, and the knowledge about debate gives a plus image to debate activities. キーワード:ディベート、ディベート教育、教室ディベート、ディベートイメージ、テキス トマイニング Key words: debate, debate education, classroom debate, image of debate, text mining Debate and Argumentation Education - The Journal of the International Society for Teaching Debate 2017, Vol.1, pp. 33-60. 1. はじめに 筆者は 2003 年から 12 年にわたって文藻外語大学日本語文系の必修科目「日語溝通技巧」 の授業においてディベートを扱ってきた。授業でディベートを経験したことで、ディベート に興味を持ち全国大会に参加する学生がいる一方、ディベートに対する拒否感を隠さない 学生も少なくない。

Transcript of ディベートに対するイメージの...

Page 1: ディベートに対するイメージの テキストマイニングによる分析istdebate.org/file/001/20171031_5.pdf · 2.1.1 ディベートに対するイメージに関する研究

ディベートと議論教育 ― ディベート教育国際研究会論集 平成 29 年 第 1 巻 pp. 33-60

33

【研究論文】

ディベートに対するイメージの

テキストマイニングによる分析

小高裕次

(文藻外語大學)

A Text Mining Analysis of Images for Debate

KOTAKA Yuji (Wenzao Ursuline University of Languages)

The aim of this research is to suggest some methods on how to improve classroom debate. The author asked students to write fixed-style complete and free sentences on "image of debate" and analysed them by using text mining. The result of analysis is that students do not like preparation like bibliographic survey, and the knowledge about debate gives a plus image to debate activities. キーワード:ディベート、ディベート教育、教室ディベート、ディベートイメージ、テキス

トマイニング

Key words: debate, debate education, classroom debate, image of debate, text mining Debate and Argumentation Education - The Journal of the International Society for Teaching Debate

2017, Vol.1, pp. 33-60. 1. はじめに

筆者は2003年から12年にわたって文藻外語大学日本語文系の必修科目「日語溝通技巧」

の授業においてディベートを扱ってきた。授業でディベートを経験したことで、ディベート

に興味を持ち全国大会に参加する学生がいる一方、ディベートに対する拒否感を隠さない

学生も少なくない。

Page 2: ディベートに対するイメージの テキストマイニングによる分析istdebate.org/file/001/20171031_5.pdf · 2.1.1 ディベートに対するイメージに関する研究

34

ディベート授業改善のヒントを得るために、筆者は学生のディベートに対するイメージ

を、定型自由文を用いたアンケートを用いて、初歩的なテキストマイニングの手法を使用し

て分析した(小高 2015)。その結果、授業の前後でディベートに対するイメージが改善され

ていることは明らかになったが、そもそもディベート学習のどの部分にマイナスイメージ

を抱いているかについては明確な解答を得られなかった。 そこで、本稿ではアンケートとして用いる定型自由文に改良を施し、民国 103(2014)学年

度「日語溝通技巧(日本語コミュニケーション)」受講者を対象に、ディベートに対するイメ

ージのさらに詳しい分析を試みた。同時に、103 学年度「文藻杯日本語ディベート大会」参

加者にも同じアンケートに回答してもらい、必修科目でディベートを学習する学習者とデ

ィベート大会参加者とのディベートに対するイメージの違いを探った。 2. 本論 2.1 先行研究

ここでは二種類の先行研究をとりあげる。一つは、ディベートに対する学習者のイメージ

やディベート体験後の感想に関する論文である。もう一つは、定型自由文を用いたテキスト

マイニングに関する文献及び論文である。また、本研究に先立って行った筆者自身の研究に

ついてもここで簡単に紹介しておく。 2.1.1 ディベートに対するイメージに関する研究

舘岡・斉木(2003)は、韓国の漢陽大学で、中級レベルの韓国人学生 20 名を対象に 1 ヶ月

の短期プログラムでディベートを行った。学生のディベートに対する反応はよく、「来年の

同コースでもディベートをしたほうがいいとの意見が圧倒的であった」という。また、ディ

ベートの日本語学習への効果に対する学生の意見として、「日本語学習に役立つという意見」

「トピックについて深く考えることができるという意見」が挙がったという。 早瀬(2007)では、初級・中級レベルの学習者を対象に日本語ディベートを行っている。デ

ィベート終了後のアンケート結果を以下のようにまとめている。①日本語のディベートは

全員が今回初めて、と答えた。②母国語でのディベート経験は、一人を除いて、高校や大学

で行ったことがある、と答えた。③事前準備としては、論題について自分の考えを書き出す

だけだったので、時間がかからなかった、と答えた。④ディベートの授業は、「とても楽し

く面白かった」「難しいが面白かった」「言葉が出ず難しい場面もあったが楽しかった」と全

員がプラス評価をした。⑤楽しかった点は、みんなと一緒に話すことができた点、また、い

ろいろなことを考えて覚えた点。難しかったことは、自分が語彙が少なく言いたいことが言

えなかったこと。⑥今度ディベートをする際、どんな論題を希望するかについては、「日本

のこと」「映画」「日本語の勉強」「簡単で面白いこと」などの他、「国際政治」「歴史」など

の難しい内容のものも挙がった。 野山・八田・古川・文野(1997)では、非母語話者教師研修においてディベート活動を行い、

Page 3: ディベートに対するイメージの テキストマイニングによる分析istdebate.org/file/001/20171031_5.pdf · 2.1.1 ディベートに対するイメージに関する研究

35

参加者の反応を記述している。前述の二つの論文とは異なり、ディベートに対する否定的意

見も挙げられている点が興味深い。 ディベート実施前の意見では、肯定的な評価の大半は日本語運用能力の向上に関する記

述であり、「意見交換や説得は面白い」など抽象的な記述が多く、否定的な評価には「時間

がなくて焦る」などディベートのルールに関して、疑問や不安、否定的印象を伝えるものが

見られた。 ディベート実施後の意見では、肯定的な評価で記述量が増加し、言語技術の練習活動とし

てだけでなく、「自分を深く見られた」など思考法の面からの評価もある一方、否定的な評

価では、記述量が減少しているものの、感情的な反発は根強く残り、「嫌い」「つらい」など

表現が強くなっているという。ただし、全体的に見ると「好き(おもしろい)」という肯定的

意見が増え、「嫌い」「わからない・どちらでもない」という否定的意見・中立的な意見が減

少している。 2.1.2 テキストマイニングに関するもの 林(2002)は、「テキストマイニングとは、テキスト(テキストデータ)を分析し、分析者

によって有益な知識や情報を取り出そうという技術です」と定義している。コンピュータの

普及に伴い、データ解析ツールも格段に進歩した。そのためテキストマイニングはクレーム

処理や市場分析などさまざまな分野で用いられている。 本稿で使用する、文章完成式の定型自由文によるテキストマイニングは、林(2002)によっ

て提案されたものである。林は、文章完成式の定型自由文を「あらかじめ文章の一部を空白

にした状態でフォーマットだけを定めておき、その空白を埋めることで完成する自由文」で

あると定義している。 授業改善のために定型自由文のアンケートをテキストマイニングによって分析した研究

には、井上・園田(2007)がある。井上・園田(2007)では、英語コミュニケーションの授業に

おいて communication strategy(コミュニケーション方略、以下 CS と略す)の指導を行い、

他のクラスと英語でコミュニケーションする合同授業を年 3 回行った。その際、1)学生の心

理的な学習要因を客観的に分析すること、2)その後の授業改善に役立つ情報を発見すること、

を目的として、「合同授業は___だから___だと思った」「___という点は改善すべき

で、___という改善方法が考えられる」などの自由定型文を用いたアンケートを行ってい

る。その結果、「参加学生は CS を使う経験を通して英語コミュニケーションに自信を持つ

ことができるようになり、英語学習への動機付けが高まることが明らかにな」り、「第 1 回

合同授業の問題点(主に日本語使用)が明らかになったため、それに対するフィードバックを

第 2 回、3 回授業に活かすことができた」という。 2.1.3 小高(2015) 筆者は、2013 年および 2014 年に文藻外語大學日本語文系で担当した「日語溝通技巧」

Page 4: ディベートに対するイメージの テキストマイニングによる分析istdebate.org/file/001/20171031_5.pdf · 2.1.1 ディベートに対するイメージに関する研究

36

の授業でディベート学習を行い、学習前と学習後の感想について、「ディベートは( )ので、( )です」という定型自由文の形式でアンケートを行った。第 2 の空白ではディベー

トに対するイメージを、第 1 の空白ではその理由を答えてもらうのがこの定型自由文の意

図である。 ディベート学習開始前のイメージには「難しい」「面倒臭い」「やりたくない」など否定的

なキーワードが多かった。一方、期末試験としてのディベート終了後のイメージには、肯定

的意見の増加と否定的意見の減少が見られ、全体として意見が分散化していた。約半数が否

定的意見から肯定的意見へと変化しており、事前準備の必要性を理解したという記述も多

数見られた。 ただし、このアンケート形式では、ディベート学習前後に「難しい」「面倒臭い」という

否定的なイメージを多く持っていることは分かったが、具体的に何が難しいのか、その原因

までは分からなかった。 2.2 アンケート対象者

この度アンケート調査の対象とした日本語学習者は、筆者の勤務する文藻外語大学日本

語学科で「日語溝通技巧」を受講した学生と、文藻外語大学で開催された文藻杯大学生日本

語ディベート大会に出場した台湾各地の大学の学生である。 2.2.1 文藻外語學院「日語溝通技巧」受講者 文藻外語大学のアンケート対象者は、2015 年に実施した必修科目の「日語溝通技巧」を

受講した二技三年生(日本語学習歴 5 年半)1 クラスと四技四年生(日本語学習歴 3 年半)6 ク

ラスである。各クラスの人数は 20 名ないし 30 名であった。 二技三年生のクラスは小高が担当した。四技四年生は 8 クラスに別れていたが、そのう

ち小高が 1 クラスを担当し、他の 7 クラスのうち 5 クラスが筆者の作成した教案を元に授

業を行った。二技三年生では、一学期期中試験前に「説明スピーチ」・期末試験前に「意見

スピーチ」を、二学期期中試験前に「ディベート」・二学期期末試験前に「ビブリオバトル」

を行った。四技四年生では、一学期期中試験前に「意見スピーチ」・期末試験前に「プレゼ

ンテーション」を、二学期期中試験前に「ディベート」・二学期期末試験前に「ビブリオバ

トル」を行った。 ディベートの指導は二技三年生・四技四年生ともに授業 8 週間・期中ディベート 2 週間

であった。その授業内容は以下の通りである。 1 週目:ディベートとは何かの解説・論題決定 2 週目:メリットおよびデメリットを挙げる・リンクマップの作成 3 週目:メリット・デメリットの検証 4 週目:ディベートにおける立論の「型」の解説

Page 5: ディベートに対するイメージの テキストマイニングによる分析istdebate.org/file/001/20171031_5.pdf · 2.1.1 ディベートに対するイメージに関する研究

37

5 週目:フローシートの書き方・反駁の方法 6 週目:ミニマムディベート 7 週目:ミニマムディベート振り返り 8 週目:再反駁とまとめの方法 9 週目:期中ディベート 1 回目 10 週目:期中ディベート 2 回目 授業の最後に、期末試験としてディベートの試合を行った。2 週間で各チームが 2 回試合

を行い、すべてのチームが肯定側と否定側の両方を経験した。ディベートのフォーマットは

淡江盃方式 1を元に若干時間を短縮したものを採用した。期中ディベートのフォーマットは

以下の通りである。 肯定側立論:5 分 審判記入時間 1 分 否定側立論:5 分 準備時間:2 分 否定側反駁:4 分 審判記入時間 1 分 肯定側反駁:4 分 準備時間:2 分 肯定側再反駁とまとめ 4 分 審判記入時間 1 分 否定側再反駁とまとめ 4 分 溝通技巧の各クラスで使用された論題は以下の通りである。なお、一部の論題は複数のク

ラスで採用されている。 台湾は同性婚を認めるべきである 台湾は学校における体罰を認めるべきである 台湾 or 日本は死刑を廃止するべきである 台湾は教科書をペーパーレス化すべきである

1 ここで言う「淡江盃方式」とは、淡江大学主催の「淡江盃日本語ディベート大会」のフォーマットを指

す。質疑応答がない、肯定側反駁では否定側立論に対する反駁のみ行い否定側反駁に対する再反駁を行わ

ない、否定側再反駁では肯定側反駁に対する再反駁のみ行い肯定側再反駁に対する再々反駁を行わない、

まとめでは双方の議論の要点を整理し自分たちの主張を強固にする、といった特徴がある。なお、2016年に行われた第 6 回大会では質疑応答のステージが加えられている。

Page 6: ディベートに対するイメージの テキストマイニングによる分析istdebate.org/file/001/20171031_5.pdf · 2.1.1 ディベートに対するイメージに関する研究

38

各クラスとも、二回目の期中ディベート終了後にアンケートを行った。回収総数は 109 名

分である。 2.2.2 「文藻杯日本語ディベート大会」参加者

第 13 回文藻杯日本語ディベート大会は、2015 年 4 月 18 日に行われた。論題は、「世界

のすべての国は一切の捕鯨を禁止するべきである」であった。台湾各地から 8 大学 56 名の

参加者があった。うち、アンケート回答者は 34 名であった。 2.3 研究方法 まず、文藻外語大学の「日語溝通技巧」受講者(以下、「溝通技巧受講者」と呼ぶ)と、第 13回文藻杯日本語ディベート大会参加者(以下、「大会参加者」と呼ぶ)に、ディベート学習以前

と試合経験後のディベートに対するイメージを「ディベートは( )が( )ので、( )。」という文章を完成させる方法で尋ねた。第 3 の空白ではディベートに対するイメージを、

第 1 と第 2 の空白でその理由を答えてもらう。また、第 1 の空白ではディベートに関する

要素を、第 2 の空白ではその要素に対する判断を、それぞれ回答してもらうことになる。 次に、誤字・脱字を修正し、「怖かった」「こわかった」など表記違いの表現を「怖かった」

に統一したり、(知識が)「上がる」「増える」など同一・類似の概念を「増える」に統一した

りするカテゴリ化を手作業で行った。 最後に、修正したアンケート結果をもとに、クロス集計表及び価値認識構造図を作成し、

分析を行った。 2.4 アンケート結果 実際のアンケート結果では、筆者の意図していなかったタイプの回答が少なからず見ら

れた。 まず、「ディベートは( )が( )ので、( )。」という定型文を全く無視して自由記述

を行う学生が見られた。また、括弧の一部を空白にしたまま回答する学生が見られた。これ

らの回答は、クロス集計を行う都合から分析対象から外した。 次に、定型自由文の前半部分・「( )が( )」と書くべきところを「( )を( )」と

いう形で記述する回答や、格助詞の「が」を逆接の接続詞として解釈する回答が見られた。

これらの回答は、クロス集計を行っても意味の推測が可能であるため、分析対象として残し

た。 以上の作業を行った結果、有効回答数は溝通技巧受講者のディベート経験前が 104、同デ

ィベート経験後が 102、大会経験者のディベート経験前が 31、同ディベート経験後が 29 と

なった。 また、本アンケートでは、説明の授業 8 週間を含むディベート授業全体の開始前または

ディベート大会のための準備開始前と、期末ディベートまたはディベート大会終了後のデ

Page 7: ディベートに対するイメージの テキストマイニングによる分析istdebate.org/file/001/20171031_5.pdf · 2.1.1 ディベートに対するイメージに関する研究

39

ィベートに対するイメージの変化を記述してもらうことを意図して、「今学期、ディベート

を経験する前と経験した後のディベートに対するイメージを、( )の中に書いてくださ

い」と書いたのだが、「ディベートを経験する」という表現を 2 週間の期末ディベートまた

はディベート大会のみととらえる学生がかなりいた。そのため、アンケート結果は、学習す

る前・大会を準備する前に抱いていたディベートに対するイメージではなく、期末ディベー

トに至るまでの授業やディベート大会準備期間に対するイメージが多く含まれている。 2.4.1 ディベート経験前のイメージ・溝通技巧受講者 ディベート経験前のイメージに対する溝通技巧受講者のそれぞれの空白に対する回答の

うち、複数の回答があったものを示す。 要素を示す第 1 の空白に対しては 39 種類の回答があった。「指導の先生」12 例・「事前準

備」「資料」各 11 例・「経験」10 例・「論題」9 例が比較的多く、以下「何か」5 例「過程」

「やり方」各 4 例・「立論を作るの」3 例・「授業」「反駁」「全てが」「チームメイト」「内容」

各 2 例と続いた。 判断を示す第 2 の空白に対しては 42 種類の回答があった。「難しい」が 15 件と最も多

く、以下「ない」10 例・「分からない」9 例・「複雑な」「やさしい」各 7 例・「多い」6 例・

「面倒な」5 例・「つまらない」「知らなかった」各 3 例・「少ない」「ある」「いる」「面白い」

「○○さんだった」「厳しい」各 2 例と続く。 イメージを示す第 3 の空白に対しては 34 種類の回答があった。「難しい」が 20 件と最も

多く、以下「怖かった」11 例・「大変だった」8 例・「楽しかった」7 例「辛かった」6 例・

「嫌だった」「面白かった」各 4 例・「やりたくなかった」「安心した」「興味があった」「つ

まらない」「興味がなかった」各 3 例・「楽しくなかった」「困った」「疲れた」「拒んでいた」

「心配した」「緊張した」「好きではない」各 2 例が続く。

Page 8: ディベートに対するイメージの テキストマイニングによる分析istdebate.org/file/001/20171031_5.pdf · 2.1.1 ディベートに対するイメージに関する研究

40

次に、それぞれの回答の組み合わせを見ていくことにする。表 1 は第 1 と第 2 の回答の

組み合わせである。 表 1溝通技巧受講者のディベート経験前のイメージ:回答 1と回答 2の組み合わせ

(部分)

第 1 と第 2 の回答の組み合わせでは、10 例見られた「経験」が「ない」という組み合わ

せと 7 例見られた「指導の先生」が「やさしい」が比較的突出していた。その他「事前準備」

が「難しい」・「資料」が「多い」・「論題」が「難しい」・「何か」が「分からない」という組

み合わせが 3 例ずつ、「事前準備」が「多い」・「事前準備」が「面倒な」・「論題」が「つま

らない」・「論題」が「面白い」・「何か」が「知らなかった」・「過程」が「分からない」・「や

り方」が「難しい」・「チームメイト」が「○○さんだった」という組み合わせが 2 例ずつ見

られた。

回答1\回答2

難しい

ない

分からない

複雑な

やさしい

多い

面倒な

つまらない

知らなか

った

少ない

ある

いる

面白い

○○さんだ

った

厳しい

総計

指導の先生 7 1 12事前準備 3 1 1 2 2 1 11資料 1 3 1 1 11経験 10 10論題 3 2 2 9何か 3 2 5過程 2 1 4やり方 2 1 1 4立論を作るの 1 1 3授業 1 2

反駁 1 2全てが 1 1 2チームメイト 2 2内容 1 1 2総計 15 10 9 7 7 6 5 3 3 2 2 2 2 2 2 104

Page 9: ディベートに対するイメージの テキストマイニングによる分析istdebate.org/file/001/20171031_5.pdf · 2.1.1 ディベートに対するイメージに関する研究

41

表 2 は第 2 と第 3 の回答の組み合わせである。

表 2溝通技巧受講者のディベート経験前のイメージ:回答 2と回答 3の組み合わせ

(部分)

第 2 と第 3 の回答の組み合わせでは、「ない」ので「難しい」・「ない」ので「怖かった」・

「やさしい」ので「楽しかった」・「多い」ので「難しい」の組み合わせがそれぞれ 4 例ずつ

と最も多く、「難しい」ので「怖かった」・「難しい」ので「大変だった」が 3 例ずつ、「難し

い」ので「辛かった」・「分からない」ので「難しい」・「分からない」ので「つまらない」・

「複雑な」ので「難しい」・「複雑な」ので「嫌だった」・「やさしい」ので「安心した」・「面

白い」ので「興味があった」・「厳しい」ので「緊張した」が 2 例ずつであった。

回答2\回答3

難しい

怖か

った

大変だ

った

楽しか

った

辛か

った

嫌だ

った

面白か

った

やりたくなか

った

安心した

つまらない

興味があ

った

興味がなか

った

楽しくなか

った

った

疲れた

拒んでいた

心配した

緊張した

好きではない

総計

難しい 3 3 2 1 1 1 1 1 15ない 4 4 1 10分からない 2 1 1 2 1 1 9複雑な 2 1 2 7やさしい 4 2 7多い 4 1 6面倒な 1 1 1 1 1 5つまらない 1 1 3知らなかった 1 1 1 3少ない 1 1 2ある 1 2いる 1 2面白い 2 2○○さんだった 1 1 2厳しい 2 2総計 20 11 8 7 6 4 4 3 3 3 3 3 2 2 2 2 2 2 2 104

Page 10: ディベートに対するイメージの テキストマイニングによる分析istdebate.org/file/001/20171031_5.pdf · 2.1.1 ディベートに対するイメージに関する研究

42

表 3 は第 1 と第 3 の回答の組み合わせである。 表 3 溝通技巧受講者のディベート経験前のイメージ:回答 1と回答 3の組み合わせ

(部分)

第 1 と第 3 の回答の組み合わせでは、「指導の先生」「楽しかった」・「資料」「難しい」の

組み合わせが 5 例ずつと最も多く、以下「経験」「難しい」・「資料」「怖かった」が 4 例ず

つ、「事前準備」「難しい」が 3 例、「指導の先生」「面白かった」・「指導の先生」「安心した」・

「事前準備」「大変だった」・「事前準備」「辛かった」・「事前準備」「好きではない」・「論題」

「大変だった」・「論題」「興味があった」・「論題」「楽しくなかった」・「何か」「怖かった」・

「過程」「つまらない」・「やり方」「怖かった」がそれぞれ 2 例ずつであった。 2.4.2 ディベート経験前のイメージ・大会参加者 ディベート経験前のイメージに対する大会参加者のそれぞれの空白に対する回答のうち、

複数の回答があったものを以下に示す。 要素を示す第 1 の空白に対しては 22 種類の回答があった。「指導の先生」が 4 例と最も

多く、その他「先輩」「経験」「相手」「論題」「事前準備」「試合」がそれぞれ 2 例ずつだっ

た。 判断を示す第 2 の空白に対しては 25 種類の回答があった。「ある」が 3 例、「難しい」「誘

った」「イケメンだった」「ない」がそれぞれ 2 例ずつだった。

回答1\回答3

難しい

怖か

った

大変だ

った

楽しか

った

辛か

った

嫌だ

った

面白か

った

やりたくなか

った

安心した

つまらない

興味があ

った

興味がなか

った

楽しくなか

った

った

疲れた

拒んでいた

心配した

緊張した

好きではない

総計

指導の先生 5 2 2 1 1 12事前準備 3 2 2 1 1 2 11資料 5 1 2 1 11経験 4 4 1 10論題 2 2 2 9何か 2 1 1 1 5過程 1 1 2 4やり方 2 1 1 4立論を作るの 1 1 3授業 1 1 2反駁 1 1 2全てが 1 2チームメイト 1 1 2内容 1 2総計 20 11 8 7 6 4 4 3 3 3 3 3 2 2 2 2 2 2 2 104

Page 11: ディベートに対するイメージの テキストマイニングによる分析istdebate.org/file/001/20171031_5.pdf · 2.1.1 ディベートに対するイメージに関する研究

43

イメージを示す第 3 の空白に対しては 20 種類の回答があった。「楽しかった」が 5 例と

最も多く、以下「怖かった」3 例、「参加しました」「面白かった」「分からなかった」「期待

していた」「興味がなかった」各 2 例と続く。 次に、それぞれの回答の組み合わせを見ていくことにする。表 4 は第 1 と第 2 の回答の

組み合わせである。 表 4 大会参加者のディベート経験前のイメージ:回答 1と回答 2の組み合わせ(部分)

第 1 と第 2 の回答の組み合わせでは、「指導の先生」が「イケメンだった」・「経験」が「な

い」がそれぞれ 2 例ずつであった。

回答1\回答2

ある

難しい

った

ない

イケメンだ

った

総計

指導の先生 1 2 4先輩 2経験 2 2相手 2論題 2事前準備 2試合 1 1 2総計 3 2 2 2 2 31

Page 12: ディベートに対するイメージの テキストマイニングによる分析istdebate.org/file/001/20171031_5.pdf · 2.1.1 ディベートに対するイメージに関する研究

44

表 5 は第 2 と第 3 の回答の組み合わせである。 表 5 大会参加者のディベート経験前のイメージ:回答 2と回答 3の組み合わせ(部分)

第 2 と第 3 の回答の組み合わせでは、「イケメンだった」ので「楽しかった」という組み

合わせが 2 例あるだけであった。 表 6 は第 1 と第 2 の回答の組み合わせである。 表 6 大会参加者のディベート経験前のイメージ:回答 1と回答 3の組み合わせ(部分)

第 1 と第 3 の回答の組み合わせでは「指導の先生」「楽しかった」・「指導の先生」「期待

していた」という組み合わせが 2 例ずつであった。

回答2\回答3楽しか

った

怖か

った

参加しました

面白か

った

分からなか

った

期待していた

興味がなか

った

総計

ある 1 1 3難しい 1 2誘った 1 1 2ない 1 1 2イケメンだった 2 2総計 5 3 2 2 2 2 2 31

回答1\回答3楽しか

った

怖か

った

参加しました

面白か

った

分からなか

った

期待していた

興味がなか

った

総計

指導の先生 2 2 4先輩 2経験 1 1 2相手 1 2論題 2事前準備 2試合 1 2総計 5 3 2 2 2 2 2 31

Page 13: ディベートに対するイメージの テキストマイニングによる分析istdebate.org/file/001/20171031_5.pdf · 2.1.1 ディベートに対するイメージに関する研究

45

2.4.3 ディベート経験後のイメージ・溝通技巧受講者 ディベート経験後のイメージに対する溝通技巧受講者のそれぞれの空白に対する回答の

うち、複数の回答があったものを以下に示す。 要素を示す第 1 の空白に対しては 41 種類の回答があった。「資料」が 18 例と突出してお

り、以下「チームメイト」11 例、「指導の先生」9 例、「論題」6 例、「資料の収集」5 例、

「資料の準備作業」4 例、「過程」「知識」「反駁」各 3 例、「人の意見」「緊張感」「対戦相手」

「内容」「経験」「○○さん」「試合」「授業」が各 2 例ずつと続いた。 判断を示す第 2 の空白に対しては 56 種類の回答があった。「多い」が 10 例と最も多く、

以下「難しい」7 例、「分かった」6 例、「面白い」5 例、「複雑な」各 4 例、「ある」「楽しか

った」「準備しなければならない」「学べる」「イケメンだった」各 3 例、「よかった」「探す」

「まじめだった」「理解できた」「やさしかった」「準備した」「必要な」「協力した」「強い」

「持った」が各 2 例ずつと続いた。 イメージを示す第 3 の空白に対しては 49 種類の回答があった。「楽しかった」が 19 例と

突出して多く、以下「難しかった」11 例、「大変だった」7 例、「勉強になった」6 例、「面

白かった」4 例、「役に立った」「良かった」各 3 例、「愉快だった」「反駁できない」「嬉し

かった」「怖かった」「緊張した」「難しくなかった」「論題を理解した」が各 2 例ずつと続い

た。

Page 14: ディベートに対するイメージの テキストマイニングによる分析istdebate.org/file/001/20171031_5.pdf · 2.1.1 ディベートに対するイメージに関する研究

46

次に、それぞれの回答の組み合わせを見ていくことにする。表 7 は第 1 と第 2 の回答の

組み合わせである。

表 7 溝通技巧受講者のディベート経験後のイメージ:回答 1 と回答 2 の組み合わせ

(部分)

第 1 と第 2 の回答の組み合わせでは、「資料」が「多い」が 7 例と最も多く、「資料」が

「準備しなければならない」・「指導の先生」が「イケメンだった」・「資料の収集」が「難し

い」・「知識」が「学べる」が各 3 例、「資料」が「探す」・「資料」が「準備した」・「資料の

準備作業」が「多い」・「チームメイト」が「協力した」・「指導の先生」が「やさしかった」・

「論題」が「理解できた」・「人の意見」が「分かった」・「対戦相手」が「強い」・「経験」が

「持った」が各 2 例ずつであった。

回答1\回答2

多い

難しい

分か

った

面白い

複雑な

準備しなければならない

楽しか

った

ある

学べる

イケメンだ

った

よか

った

探す

やさしか

った

準備した

必要な

まじめだ

った

った

協力した

強い

理解できた

総計

資料 7 3 2 2 18チームメイト 1 1 1 2 11指導の先生 1 3 2 1 9論題 1 1 2 6資料の収集 3 1 5資料の準備作業 2 4過程 1 1 3知識 3 3反駁 1 1 3人の意見 2 2緊張感 1 2対戦相手 2 2内容 1 1 2経験 2 2○○さん 2試合 1 2授業 1 2総計 10 7 6 5 4 3 3 3 3 3 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 102

Page 15: ディベートに対するイメージの テキストマイニングによる分析istdebate.org/file/001/20171031_5.pdf · 2.1.1 ディベートに対するイメージに関する研究

47

表 8 は第 2 と第 3 の回答の組み合わせである。

表 8 溝通技巧受講者のディベート経験後のイメージ:回答 2と回答 3の組み合わせ

(部分)

第 2 と第 3 の回答の組み合わせでは、「多い」ので「難しかった」が 3 例と最も多く、「多

い」ので「勉強になった」・「分かった」ので「楽しかった」・「分かった」ので「勉強になっ

た」・「学べる」ので「楽しかった」・「イケメンだった」ので「楽しかった」・「よかった」の

で「楽しかった」がそれぞれ 2 例ずつであった。

回答2\回答3楽しか

った

難しか

った

大変だ

った

勉強にな

った

面白か

った

役に立

った

良か

った

愉快だ

った

反駁できない

嬉しか

った

怖か

った

緊張した

難しくなか

った

論題を理解した

総計

多い 3 1 2 1 10難しい 1 1 7分かった 2 2 1 6面白い 1 1 5複雑な 1 1 1 4準備しなければならない 1 1 3楽しかった 1 3ある 1 1 3学べる 2 1 3イケメンだった 2 3よかった 2 2探す 1 2やさしかった 1 2準備した 2必要な 1 1 2まじめだった 1 1 2持った 1 1 2協力した 1 2強い 1 2理解できた 1 1 2総計 19 11 7 6 4 3 3 2 2 2 2 2 2 2 102

Page 16: ディベートに対するイメージの テキストマイニングによる分析istdebate.org/file/001/20171031_5.pdf · 2.1.1 ディベートに対するイメージに関する研究

48

表 9 は第 1 と第 3 の回答の組み合わせである。 表 9 溝通技巧受講者のディベート経験後のイメージ:回答 1と回答 3の組み合わせ

(部分)

第 1 と第 3 の回答の組み合わせでは、「資料」「難しかった」・「指導の先生」「楽しかった」

が各 4 例と最も多く、以下「チームメイト」「楽しかった」・「資料の準備作業」「勉強になっ

た」が各 3 例、「資料」「大変だった」・「チームメイト」「怖かった」・「論題」「難しかった」・

「知識」「楽しかった」・「人の意見」「勉強になった」・「授業」「楽しかった」が各 2 例ずつ

と続いた。 2.4.4 ディベート経験後のイメージ・大会参加者 ディベート経験前のイメージに対する大会参加者のそれぞれの空白に対する回答のうち、

複数の回答があったものを以下に示す。 要素を示す第 1 の空白に対しては 23 種類の回答があった。「資料」が 5 例、「知識」が 3例であった。

回答1\回答3

楽しか

った

難しか

った

大変だ

った

勉強にな

った

面白か

った

役に立

った

良か

った

愉快だ

った

反駁できない

嬉しか

った

怖か

った

緊張した

難しくなか

った

論題を理解した

総計

資料 4 2 1 1 1 1 18チームメイト 3 1 1 1 2 11指導の先生 4 1 1 9論題 2 1 6資料の収集 2 5資料の準備作業 3 1 4過程 1 1 3知識 2 1 3反駁 1 1 3人の意見 2 2緊張感 1 2対戦相手 1 2内容 1 2経験 1 1 2○○さん 1 1 2試合 2授業 2 2総計 19 11 7 6 4 3 3 2 2 2 2 2 2 2 102

Page 17: ディベートに対するイメージの テキストマイニングによる分析istdebate.org/file/001/20171031_5.pdf · 2.1.1 ディベートに対するイメージに関する研究

49

判断を示す第 2 の空白に対しては 24 種類の回答があった。「増える」が 3 例、「必要な」

「できる」「不足だった」が各 2 例ずつであった。 イメージを示す第 3 の空白に対しては 19 種類の回答があった。「楽しかった」が 6 例と

最も多く、その他「負けた」「疲れた」「面白かった」「残念だった」「良かった」が各 2 例ず

つであった。 次に、それぞれの回答の組み合わせを見ていくことにする。表 10 は第 1 と第 2 の回答の

組み合わせである。 表 10 大会参加者のディベート経験後のイメージ:回答 1 と回答 2 の組み合わせ(部

分)

第 1 と第 2 の回答の組み合わせでは、「知識」が「増える」が 3 例、「資料」が「不足し

た」が 2 例、その他は全て 1 例ずつであった。 表 11 は第 2 と第 3 の回答の組み合わせである。 表 11 大会参加者のディベート経験後のイメージ:回答 2 と回答 3 の組み合わせ(部

分)

第 2 と第 3 の回答の組み合わせでは、「増える」ので「楽しかった」・「不足だった」ので

「負けた」がそれぞれ 2 例ずつ、その他は全て 1 例ずつであった。

回答1\回答2 増える

必要な

できる

不足だ

った

総計

資料 2 5知識 3 3総計 3 2 2 2 29

回答2\回答3

楽しか

った

負けた

疲れた

面白か

った

残念だ

った

良か

った

総計

増える 2 3必要な 1 2できる 1 1 2不足だった 2 2総計 6 2 2 2 2 2 29

Page 18: ディベートに対するイメージの テキストマイニングによる分析istdebate.org/file/001/20171031_5.pdf · 2.1.1 ディベートに対するイメージに関する研究

50

表 12 は第 1 と第 2 の回答の組み合わせである。 表 12 大会参加者のディベート経験後のイメージ:回答 1と回答 3の組み合わせ(部

分)

第 1 と第 3 の回答の組み合わせでは、「知識」「楽しかった」・「資料」「負けた」の組み合

わせが 2 例あったが、その他は全て 1 例ずつであった。 2.5 分析 定型自由文で回答してもらった「要素」「判断」「感想」の 3 項目がどのように関連してい

るかを見るために、ディベートに対する「認識構造図」を作成した。溝通技巧では回答数が

多かったため、複数意見が上がったものだけを用いて認識構造図を作成した。一方、文藻杯

の方は全ての回答を反映した認識構造図を作成している。認識構造図では、同じ回答が多か

った項目をより太く、関連が強かった項目間の矢印を太くしている。 2.5.1 ディベート経験前 以下の図 1 で溝通技巧受講者の、図 2 で大会参加者のディベート経験前の認識構造図を

それぞれ示す。

回答1\回答3

楽しか

った

負けた

疲れた

面白か

った

残念だ

った

良か

った

総計

資料 2 1 5知識 2 3総計 6 2 2 2 2 2 29

Page 19: ディベートに対するイメージの テキストマイニングによる分析istdebate.org/file/001/20171031_5.pdf · 2.1.1 ディベートに対するイメージに関する研究

51

図 1 溝通技巧受講者のディベート経験前の認識構造図

Page 20: ディベートに対するイメージの テキストマイニングによる分析istdebate.org/file/001/20171031_5.pdf · 2.1.1 ディベートに対するイメージに関する研究

52

図 2 大会参加者のディベート経験前の認識構造図

Page 21: ディベートに対するイメージの テキストマイニングによる分析istdebate.org/file/001/20171031_5.pdf · 2.1.1 ディベートに対するイメージに関する研究

53

ディベート経験前のイメージで、溝通技巧受講者と大会参加者に共通しているのは、事前

準備に対するマイナスイメージ、論題に関するマイナスイメージ、チームメイト・指導教員

に対するプラスイメージである。 事前準備に対するマイナスイメージは、とくに溝通技巧受講者に顕著であったが、大会参

加者の記述の中にもいくつか見られた。溝通技巧受講者では、「事前準備」「過程」「やり方」

「立論を作るの」「反駁」「資料」「全て」が「面倒な」「複雑な」「難しい」「多い」「分から

ない」ので「難しい」「怖かった」「大変だった」「嫌だった」「辛かった」「拒んでいた」「好

きではない」「疲れた」という一大グループが出来上がっている。それまでのスピーチやプ

レゼンテーションの授業と比べて扱う参考資料が格段に増える点、今まで考えたことのな

かった政策論題が論題となっている点に拒否反応を示したのであろうと推測できる。大会

参加者の中にも、「事前準備」が「多い」ので「面倒だ」・「事前準備」が「面倒な」ので「嫌

だった」・「資料とデータ」が「必要な」ので「精一杯だった」などの記述が見られた。 論題に関するマイナスイメージとしては、溝通技巧受講者で「論題」が「難しい」ので「大

変だった」・「論題」が「つまらない」ので「楽しくなかった」などの意見が見られ、大会参

加者でも「論題」が「よく知らなかった」ので「難しい」・「論題」が「現実のことな」ので

「考えたくなかった」という意見が見られた。ただし、溝通技巧参加者の意見の中には「論

題」が「面白い」ので「楽しかった」という意見も複数見られた。 チームメイト・教員に対するプラスイメージは、溝通技巧受講者では、「指導の先生」が

「やさしい」・「チームメイト」が「○○さん」なので「楽しかった」「安心した」という記

述が見られ、大会参加者では「指導の先生」が「イケメンだった」・「チームメイト」が「一

緒に努力した」ので「楽しかった」という記述が見られる。ただし、「先生がイケメンなの

で楽しかった」というフレーズは、アンケート用紙に書かれた例文そのままであり、回答の

有効性を疑うべきなのかもしれない。また、溝通技巧参加者の中には「指導の先生」が「厳

しい」ので「緊張した」というマイナスイメージの意見もあった。 溝通技巧受講者に特徴的な回答としては、ディベートに対する知識の欠如に対するマイ

ナスイメージが挙げられる。 「(ディベートとは)何か」「内容」「過程」「やり方」が「知らなかった」「分からなかった」

ので、「怖かった」「難しい」「つまらない」という一連の流れや、「経験」が「ない」ので「怖

かった」「難しい」という流れからディベートに対する知識の欠如がマイナスイメージに繋

がる様子が見てとれる。「内容」「過程」が分からないという記述については、ディベートの

フォーマットが理解しづらかったのではないかと推測できる。 大会参加者の記述で特徴的なのは、大会参加の理由の説明・ディベートに対する期待感と

不安感・先輩に関する記述である。 大会参加者は指導教師や先輩・友人からディベートの様子をあらかじめ聞かされ、ディベ

ートに対して興味を持った上で大会参加を決意している。「友達」が「誘った」ので「参加

しました」・「先生」が「誘った」ので「期待していた」という回答に大会参加の理由とディ

Page 22: ディベートに対するイメージの テキストマイニングによる分析istdebate.org/file/001/20171031_5.pdf · 2.1.1 ディベートに対するイメージに関する研究

54

ベートへの期待感が見られる。また、「教育の意味」が「ある」ので「参加しました」とい

う回答からは、ディベートのもたらす教育的効果についても理解していることがうかがえ

る。 ただし、「議論と関係のある人」だけ「考えるべき」なので「興味がなかった」・「人と議

論するの」が「苦手だった」ので「興味がなかった」という回答からは、指導教師もしくは

先輩・友人に誘われるまま大会に参加した学生の姿も垣間見える。 また、興味深いのは、溝通技巧経験者では「経験」が「ない」という理由がマイナスイメ

ージに繋がっていたのに対して、大会参加者では「楽しかった」「面白かった」というプラ

スのイメージに繋がっている点である。 一方、他の学校との対戦に対する恐怖感を感じている大会参加者もいた。「相手」が「喧

嘩腰な」ので「怖かった」・「喧嘩」が「しているみたいな」ので「怖かった」・「試合」が「あ

る」ので「怖かった」といった回答が見られる。 2.5.2 ディベート経験後 以下の図 3 で溝通技巧受講者の、図 4 で大会参加者のディベート経験前の認識構造図を

それぞれ示す。

Page 23: ディベートに対するイメージの テキストマイニングによる分析istdebate.org/file/001/20171031_5.pdf · 2.1.1 ディベートに対するイメージに関する研究

55

図 3 溝通技巧受講者のディベート経験後の認識構造図

Page 24: ディベートに対するイメージの テキストマイニングによる分析istdebate.org/file/001/20171031_5.pdf · 2.1.1 ディベートに対するイメージに関する研究

56

図 4 大会参加者のディベート経験後の認識構造図

Page 25: ディベートに対するイメージの テキストマイニングによる分析istdebate.org/file/001/20171031_5.pdf · 2.1.1 ディベートに対するイメージに関する研究

57

ディベート経験後のイメージとして、溝通技巧受講者と大会参加者に共通しているのは、

資料に関する記述・ディベートの学習効果に関する記述・他人との意見のやりとりに関する

記述・指導教師やチームメイトに関する記述・対戦相手に関する記述・試合の緊張感に関す

る記述である。 最も多かったのは資料探しなどの事前準備に関する記述である。溝通技巧受講者には「資

料」が「多い」「探す」「準備しなければならない」ので「難しかった」「大変だった」・「資

料の収集」が「難しい」「必要な」ので「大変だった」「もうやりたくない」といったマイナ

スイメージの回答は依然として多かった。しかしその一方で、「資料」「資料の準備」が「重

要な」「多い」ので「勉強になった」と事前準備を肯定的にとらえる意見も見られた。大会

参加者にも、「資料の準備作業」が「大変だった」ので「疲れたけど、勉強になった」とい

う回答が見られた。 また、ディベートを通して社会問題に対する理解を深めたことを肯定的に評価する回答

も見られた。溝通技巧受講者の「論題」が「理解できた」ので「良かった」・「知識」が「学

べる」ので「楽しかった」「嬉しかった」という回答や大会参加者の「知識」が「増える」

ので「楽しかった」・「論題」が「勉強になった」ので「ありがとうございました」・「大変だ」

が「いろいろ勉強した」ので「楽しかった」という回答がそうである。 ディベートのためにチーム内で議論を進めていったり、試合で相手チームの立論や反駁

を聞いたりするといった、他人との意見のやりとりをディベートのプラスイメージに挙げ

る意見が見られた。溝通技巧参加者の「人の意見」が「分かった」ので「勉強になった」と

いう回答や、大会参加者の「人の意見を聞くこと」が「大切だと思い始めた」ので「楽しか

った」・「相手の考えを理解すること」が「できる」ので「良かった」等の解答がそうである。 チームメイトや教員に関しては、溝通技巧参加者の「指導の先生」が「やさしかった」の

で「楽しかった」・「チームメイト」が「協力した」「良かった」ので「楽しかった」、大会参

加者の「隊員と指導の先生」が「一生懸命だった」ので「元気をもらった」といったプラス

のイメージが多かった。一方、溝通技巧受講者の中には「指導の先生」「チームメイト」が

「まじめだった」ので「緊張した」「怖かった」というマイナスイメージの回答も見られた。

また、溝通技巧受講者では例文と同じ「先生」が「イケメンだった」ので「楽しかった」と

いう回答が複数見られた。 対戦相手に関しては、溝通技巧受講者が「対戦相手」が「強い」ので「大変だった」とい

う回答だったのに対し、大会参加者では「対戦相手」が「強かった」ので「楽しかった」と

異なる反応が見られた。 試合の緊張感については、溝通技巧受講者で「緊張感」が「ある」ので「ドキドキした」、

大会参加者で「緊張感」が「ある」ので「手が震えた」という回答が見られた。 溝通技巧参加者に特有の回答は、ディベート授業そのものに対する記述である。「授業」

「過程」が「面白い」ので「愉快だった」「楽しかった」というプラスイメージの回答が見

られる一方、「過程」が「複雑な」ので「嫌だ」というマイナスイメージの回答も見られた。

Page 26: ディベートに対するイメージの テキストマイニングによる分析istdebate.org/file/001/20171031_5.pdf · 2.1.1 ディベートに対するイメージに関する研究

58

大会参加者に特徴的な回答としては、敗因の分析に関する記述・ディベートや日本語学習

に対するモチベーションの向上が挙げられる。 敗因の分析に関しては、「資料」が「不足だった」ので「負けた」という回答が複数見ら

れた。 ディベート大会参加が日本語能力向上に対するモチベーションの向上に繋がったとする

意見があった。「もっと上手い日本語」が「必要な」ので「もっと頑張りたい」・「聞き取り」

が「重要な」ので「日本語能力を向上したい」などの回答である。また、「想像以上に難し

い」が「負けたくない」ので「来年も頑張る」という次回大会参加への決意を表明する回答

も見られた。 2.5.3 ディベート前後の変化 溝通技巧受講者のディベート経験前後の変化として最も顕著なのは、回答の多様化・分散

化である。ディベート経験前のイメージに対する回答は、述べ回答数 104 に対して、回答

の異なり数は空白 1 が 39・空白 2 が 42・空白 3 が 34、組み合わせの異なり数は 1 と 2 が

73、2 と 3 が 80、1 と 3 が 76 であった。それに対して、ディベート経験後のイメージに対

する回答は、述べ回答数 102 に対して、回答の異なり数は空白 1 が 41、空白 2 が 55、空白

3 が 49、組み合わせの異なり数は 1 と 2 が 79、2 と 3 が 94、1 と 3 が 85 であった。ディ

ベート経験前に持っていたステレオタイプのイメージが、ディベートを経験したことでよ

り具体的・個別的なイメージに変化したと推測できる。 一方、大会参加者では、回答の多様性に大きな変化は見られなかった。ディベート経験前

のイメージに対する回答では、述べ回答数 31 に対して、回答の異なり数は空白 1 が 22・空

白 2 が 25・空白 3 が 20、組み合わせの異なり数は 1 と 2 が 29・2 と 3 が 30・1 と 3 が 29であった。ディベート経験後のイメージに対する回答では、述べ回答数 29 に対して、回答

の異なり数は空白 1 が 23・空白 2 が 24・空白 3 が 19、組み合わせの異なり数は 1 と 2 が

26、2 と 3 が 27、1 と 3 が 27 であった。 また、溝通技巧受講者では、ディベートに対するイメージがマイナス優勢からプラス優勢

に変化している。ディベートに対する感想を示す空白 3 に対する上位 5 位までの回答は、

ディベート経験前では「難しい」20 例・「怖かった」11 例・「大変だった」8 例・「楽しかっ

た」7 例「辛かった」6 例と「楽しかった」を除いて否定的なイメージが並んでいるが、デ

ィベート経験後では「楽しかった」19 例・「難しかった」11 例・「大変だった」7 例・「勉強

になった」6 例・「面白かった」4 例とプラスイメージのほうが多くなっている。このことと

2.5.1 で指摘した「知識の欠如によるマイナスイメージ」を考え合わせると、多くの学習者

はディベートを「食わず嫌い」で敬遠していたのであり、実際にディベートを経験した結果

その楽しさや意義を理解し、ディベートを肯定的にとらえるようになっていることがわか

る。 ディベート経験前後で余り改善されなかったのが、資料などの事前準備に対する苦手意

Page 27: ディベートに対するイメージの テキストマイニングによる分析istdebate.org/file/001/20171031_5.pdf · 2.1.1 ディベートに対するイメージに関する研究

59

識である。ディベート経験後のイメージでは「勉強になった」「論題を理解した」といった

肯定的な回答も見られたが、「難しかった」「大変だった」といった否定的な回答の方が優勢

であった。 3. 結論:授業改善のために ディベート経験後のマイナスイメージを軽減させるために、以下のような方法が考えら

れる。 一つ目は、ディベートで得られる学習効果のより丁寧な説明である。前項で述べたように、

溝通技巧受講者の多くがディベートに対する知識の欠如によりマイナスの先入観を持って

いる。一方、大会参加者にはそうした先入観が少ないことから、教師によるガイダンスの強

化がディベートのイメージ改善に効果をもたらすことが期待できる。 二つ目は、ディベートで扱う資料の教師による統制もしくは調整である。これまでの授業

では、教師は資料調査に関してほぼノータッチであったが、受講者が探し出してきた資料に

ランク付けを行うなどして、「必読の資料」と「使えない資料」を教師側で選別することで、

学生の負担を軽減できるかもしれない。 4. おわりに 本稿執筆のために行ったアンケートには、いくつかの問題点があった。 溝通技巧受講者および大会参加者の日本語能力の問題から、必ずしもこちらが意図した

形で記述してくれるとは限らない。定型文を無視した回答を減少させるためには、定型自由

文の説明方法を改善する必要がある。アンケートで用いる定型自由文を中国語にするのも

一つの手であろう。 質問用紙の「ディベートを経験する」という文言の取り違えによって、ディベート学習時

におけるディベートに対するイメージについての回答が多く見られた。これはこれで興味

深い資料とはなったが、ディベート学習開始前と開始後のディベートに対するイメージの

違いを知るという本来の目的がぼやけてしまった。説明の文言を誤解のないような表現に

修正した上で、改めて調査を行いたい。

引用文献 井上 真紀・園田 暁子 (2007). Communication Strategy(コミュニケーション方略)指導の

効果のテキストマイニングによる分析 中京大学教養論叢, 48(2), 157–183. 小高 裕次 (2015). ディベートに対するイメージのテキストマイニングによる初歩的分析

-日本語を専攻する台湾人学生を例に- ディベートと議論教育国際研究大会:ディベ

ート教育国際研究会・九州大学言語文化研究院・日本ディベート協会九州支部・議論教育

研究会 (JSPS 科研費 26282054 助成) 舘岡 洋子・斉木 ゆかり (2003). ディベート授業の実践と意義 : 漢陽大学日本語研修講座

Page 28: ディベートに対するイメージの テキストマイニングによる分析istdebate.org/file/001/20171031_5.pdf · 2.1.1 ディベートに対するイメージに関する研究

60

におけるディベート 東海大学紀要, 23, 53–66. 野山 広・八田 直美・古川 嘉子・文野 峯子 (1997). 非母語話者教師研修における「聴解・

口答表現」授業の試み 日本語国際センター紀要, 7, 69–87. 林 俊克 (2002). Excel で学ぶテキストマイニング入門 オーム社 早瀬 郁子 (2007). 初級・中級レベルの日本語学習者におけるディベートの意義 佐賀大学

留学生センター紀要, 7, 13–28.

Page 29: ディベートに対するイメージの テキストマイニングによる分析istdebate.org/file/001/20171031_5.pdf · 2.1.1 ディベートに対するイメージに関する研究

61