ゴルジ体・リソソームを標的とした 薬物輸送リポ...
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ゴルジ体・リソソームを標的とした
薬物輸送リポソーム
鳥取大学 農学部
生物資源環境学科
生物資源科学講座
准教授 岩崎 崇
2017.10.24 @ JST東京本部
01/26 本研究成果の概要
1)血清中において安定である
2)細胞膜を透過する
3)ゴルジ体・リソソームに局在する
特許公開 2017-31079ポリヒスチジン修飾リポソーム
特許公開 2013-100273新規細胞膜透過ペプチド
ポリヒスチジン
リポソームリソソームを標的とした
薬物輸送の実証データあり
ゴルジ体・リソソームを標的とした薬物輸送リポソーム
細胞膜透過ペプチド:ポリヒスチジンで修飾したリポソーム
ヒト細胞
『ポリヒスチジン』について
『ポリヒスチジン
修飾リポソーム』について
実用化に向けた課題
・従来技術とその問題点
・新技術の特徴
・想定される用途 (実証データ)
02/26 本日の発表内容
細胞内
細胞の中に入ることができる
一般的なペプチド
細胞外
細胞細胞膜
細胞膜透過ペプチド
透過できないG
R KK R
R QR R
R PP Q
RR R
R RR R
R
03/26 細胞膜透過ペプチド
DDS : 薬物輸送技術(システム)→ 薬の宅急便
Drug Delivery System
Drug(薬物)
標的細胞標的オルガネラ
Delivery(輸送)
04/26 細胞膜透過ペプチドの応用先
ポリヒスチジン
新しい細胞膜透過ペプチドの発見
HH H
H HH H
H HH H
H HH H
H
特許公開 2013-100273 新規細胞膜透過ペプチド
Iwasaki, T. et al. (2015) J. Control. Release, 210, 210-224
のみから構成される
シンプルな細胞膜透過ペプチド
ヒスチジン
05/26 新しい細胞膜透過ペプチド『ポリヒスチジン』
特徴① ヒスチジンのみで構成される特徴② 非常に高い細胞膜透過効率を示す特徴③ ゴルジ体・リソソームに局在する
0
500
1000
1500
2000
2500
R8 H6 H8 H10 H12 H14 H16 H18 H20 H22 H24
細胞膜透過
(細胞内蛍光:
MF
I)
ポリヒスチジンは、ヒスチジン鎖長が長くなるほど細胞膜を透過し、ヒスチジン16残基(H16)において
ピークに到達する 以降の研究ではH16を使用する
従来の細胞膜透過ペプチド
ヒスチジン鎖長
新しい細胞膜透過ペプチドの発見06/26 ポリヒスチジンの鎖長と活性
ヒト肝癌細胞:HepG2
0
1000
2000
3000
NIH U251 RAW264 HepG2 RERF HT1080
細胞膜透過
(細胞内蛍光)
NIH-3T3 : マウス繊維芽細胞, U251 : ヒト神経膠腫細胞,
RAW264 : マウスマクロファージ, HepG2 : ヒト肝癌細胞,
RERF : ヒト扁平上皮肺癌細胞, HT1080 : ヒト線維肉腫細胞
従来の細胞膜透過ペプチド(R8)ポリヒスチジン(H16)
2.32 2.37 2.775.20
10.9814.35
05
1015
NIH U251 RAW264 HepG2 RERF HT1080細胞膜透過効率
(R8を
1.0とした
)
ポリヒスチジン(H16)は、RERF(ヒト扁平上皮肺癌細胞)および HT1080(ヒト線維肉腫細胞)に対して
高い細胞選択性を示す
新しい細胞膜透過ペプチドの発見07/26 ポリヒスチジンの細胞選択性
ポリヒスチジン(H16)は細胞膜を透過した後に、
大部分はゴルジ体とリソソームに局在する
* *
ゴルジ体ポリヒスチジン核
* *
小胞体ポリヒスチジン
ミトコンドリアポリヒスチジン核
*10 μm
*
**
リソソームポリヒスチジン核
共局在
共局在
Merg
eM
erg
e
Merg
eM
erg
e
新しい細胞膜透過ペプチドの発見08/26 ポリヒスチジンの細胞内分布
ミトコンドリア
小胞体 リソソーム
ゴルジ体
Flu
ore
scen
ce
inte
nsity
0
50
100
150
200
250
300
0 50 100 150
ポリヒスチジン
ミトコンドリア
核
0
50
100
150
200
0 50 100 150
ポリヒスチジン
小胞体
Flu
ore
scen
ce
in
ten
sity
0
50
100
150
200
250
300
0 50 100 150
ポリヒスチジン
リソソーム
核F
luo
rescen
ce
in
ten
sity
0
50
100
150
200
250
300
0 50 100 150 (pixels)
ポリヒスチジン
ゴルジ体核
Flu
ore
scen
ce
inte
nsity
(pixels)(pixels)
新しい細胞膜透過ペプチドの発見09/26 ポリヒスチジンの細胞内分布
ポリヒスチジン(H16)は細胞膜を透過した後に、
大部分はゴルジ体とリソソームに局在する
ミトコンドリア
小胞体 リソソーム
ゴルジ体
『ポリヒスチジン』について
『ポリヒスチジン
修飾リポソーム』について
実用化に向けた課題
・従来技術とその問題点
・新技術の特徴
・想定される用途 (実証データ)
10/26 本日の発表内容
11/26 従来技術とその問題点
従来の薬物輸送リポソーム
問題点特定のオルガネラを狙った薬物輸送を行うことは難しいと考えられている。※ミトコンドリアを標的とした薬物輸送リポソームは存在する。
特許第5067733号:目的物質をミトコンドリア内に送達可能な脂質膜構造体
需要ミトコンドリア以外のオルガネラを標的とした薬物輸送リポソームの開発が求められている。
核
主に細胞質が標的(核酸導入に使用されるため)
核
特定のオルガネラを狙った技術は少ない
細胞 細胞
ゴルジ体・リソソームに局在するポリヒスチジン(H16)を利用して、ゴルジ体・リソソームを標的とした薬物輸送リポソームを開発する。
『ポリヒスチジン』について
実用化に向けた課題
・従来技術とその問題点
・新技術の特徴
・想定される用途 (実証データ)
12/26 本日の発表内容
『ポリヒスチジン
修飾リポソーム』について
リポソーム組成 (mol/mol)
Dioleoyl phosphatidylcholine : Cholesterol
(DOPC : Chol) = 10 : 1
Liposome size: approximately 100 nm
N末端にステアリル基を付加
Stearyl-H16 (STR-H16)
リポソームの疎水領域へ導入
ゴルジ体・リソソームを標的としたリポソーム
13/26 ポリヒスチジン修飾リポソーム
H16-Lipo
最適なSTR-H16表面修飾率を「20%」に決定
1.0 1.2 1.1 1.1 1.2 1.2 1.3 1.4 1.61.0 1.0 1.0
2.0
6.3
8.1
12.813.7 14.8
0
5
10
15
0 1 2 5 10 15 20 25 30
表面修飾率:DOPC濃度に対する比率 (%)
相対的な細胞膜透過
(未修飾
Lip
oを
1.0とした
)
R8-Lipo/未修飾Lipo
H16-Lipo/未修飾Lipo
14/26 STR-H16表面修飾率の最適化
H16-Lipo
10µm
0
1000
2000
3000
4000
* *
ポリヒスチジン(H16)
ポリヒスチジン修飾リポソーム(H16-Lipo)
核
蛍光強度
細胞膜透過率
(%)
(無血清培地を
10
0%とした
)
100%
141%
0
50
100
150
血清
- +
■血清の影響を受けない
→ 血中内における高い滞留性・安定性が期待
■H16とH16-Lipoの共局在が確認された
→ H16-Lipoはゴルジ体・リソソームに局在する
15/26 H16-Lipoの特徴
ゴルジ体・リソソームに局在する
Length (pixels)
20µm
**
16/26 新技術の特徴
これまでに存在しなかったゴルジ体・リソソームに局在するリポソーム(H16-Lipo)を開発した。
従来の細胞膜透過ペプチドは、血清存在下において細胞膜透過が阻害されることが知られていた。しかし、ポリヒスチジンを修飾したリポソーム(H16-Lipo)は血清存在下においても安定的な細胞膜透過を示した。
ポリヒスチジン修飾リポソーム(H16-Lipo)は、ゴルジ体・リソソームを標的とした効率的な薬物輸送への応用が期待される。
『ポリヒスチジン』について
実用化に向けた課題
・従来技術とその問題点
・新技術の特徴
・想定される用途 (実証データ)
17/26 本日の発表内容
『ポリヒスチジン
修飾リポソーム』について
18/26 H16-Lipoの想定される用途
リソソームを標的とした薬物輸送
を標的とした
核
リソソーム病特定のリソソーム酵素が欠失することにより発症する代謝異常
リソソーム酵素A
リソソーム酵素B
リソソーム酵素C
リソソーム
リソソーム酵素Aを内包したH16-Lipo
薬物輸送
酵素補充療法リソソーム病細胞
本研究ではリソソーム病の原因酵素のひとつである
α-Galactosidase A (GLA) の薬物輸送を試みる
0
100
200
300
400
500
1 5 9 13 17 21 25 29 33 37 41 45 49 53 57 61 65 69 73 77 81 85
Flu
ore
sce
nce
in
ten
sity (
a.u
.)
リソソームH16-Lipo (GLA)
核
* *
**
20 µm
0
10000
20000
30000
40000
50000
Lipo(GLA+LY) solution100µU GLA+LY solution
GL
A e
nzym
e a
ctivity (
a.u
.)
GLALipo (GLA)
19/26 H16-Lipo (GLA) の特徴
H16-Lipo (GLA) は細胞膜を透過し、リソソーム局在を示す
限外ろ過 H16-Lipo (GLA)
Length (pixels)
Lipo (GLA)
GLA
GLA
GLA
GAPDH 37 kDa
49 kDa
siCont. siGLA
20/26 GLAノックダウン細胞
GLAノックダウン細胞
100%
20%
0%
20%
40%
60%
80%
100%
120%
Normal cells GLA-deficient cellsgla
mR
NA
exp
ressio
n
(siC
on
t. =
10
0%
)
siCont. siGLA GL
A p
rote
in e
xp
ressio
n
(siC
on
t. =
10
0%
) 100%
24%
0%
20%
40%
60%
80%
100%
120%
siCont. siGLA C
siCont. siGLA
Real-time PCR
Western blotting
核
リソソームsiRNA
(siGLA)
siRNAによりGLAノックダウン細胞を構築
100%
39%
15%
65%
0%20%40%60%80%
100%120%
1 2 3 4
Ce
ll via
bili
ty
(siC
on
t. =
10
0%
)
siCont. N.T. Lipo (GLA) H16-Lipo (GLA)
siGLA(GLAノックダウン細胞)
21/26 GLAノックダウン細胞に対するH16-Lipo (GLA) の薬物輸送効果
GLAノックダウン細胞
核
リソソーム
Lipo (GLA) H16-Lipo (GLA)
H16-Lipo (GLA) 処理により
GLAノックダウン細胞の増殖率の回復を確認
siRNA(siGLA)
回復
22/26 H16-Lipoを用いたリソソーム薬物輸送
・GLAを一例として用いることで、H16-Lipoを用いた
リソソーム薬物輸送を実証することができた
・リソソーム病に関与する酵素は約40種ほど存在する
・他のリソソーム酵素にも応用できる可能性がある
核
リソソーム病細胞リソソーム酵素A
リソソーム酵素B
リソソーム酵素C
リソソーム
リソソーム酵素Aを内包したH16-Lipo
薬物輸送
『ポリヒスチジン』について
実用化に向けた課題
・従来技術とその問題点
・新技術の特徴
・想定される用途 (実証データ)
23/26 本日の発表内容
『ポリヒスチジン
修飾リポソーム』について
24/26 実用化に向けた課題・企業担当者様への期待
リソソーム酵素のリポソーム内包と薬物輸送は実証できたが、リポソームへの酵素の内包率が悪い。
リポソーム製剤技術をお持ちの企業との共同研究を希望しています。
現在の実証データは、人工的に調製したリソソーム病細胞を用いた実験結果のみである。今後は、患者由来の分離細胞やモデル動物を用いた実証データが必要になる。
動物実験技術をお持ちの企業との共同研究を希望しています。
• 発明の名称:新規細胞膜透過ペプチド
• 出願番号 :特開2013-100273
• 出願人 :鳥取大学
• 発明者 :岩崎崇、徳田佳久、小竹彩香、河野 強
25/26 本技術に関する知的財産権
• 発明の名称:ポリヒスチジン修飾リポソーム
• 出願番号 :特開2017-31079
• 出願人 :鳥取大学
• 発明者 :岩崎崇、品川松美、小竹彩香、河野 強
26/26 本件に関するお問い合わせ先
鳥取大学 産学連携推進機構
知的財産管理運用部門 部門長 三須幸一郎
TEL 0857-31-6000
FAX 0857-31-5474
E-mail [email protected]