ベトナム国 AGF工法及び薬液注入工法による トンネル掘削工 …ベトナム国 AGF工法及び薬液注入工法による トンネル掘削工事の安全性向上及び
トンネル工事における近接交差部の計画・施工について -...
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まえがき 一般国道230号青葉トンネル (仮称 )は、
2000 年 3 月の有珠山噴火に伴い通行不能
となった国道 230 号の復旧ルートに新設
される延長 1,719mのトンネルである。 復旧ルートは、将来想定される噴火によ
る被害を受けないエリアに計画された。そ
れにより、洞爺湖水を導水して発電を興す
目的で、昭和14年に建設された内径 3.5mの導水路トンネルと鉛直離隔約 11m、
平面角度約 25°で交差する箇所が生じた。
このため既設導水路トンネル(以下導水路
トンネルと称す)に青葉トンネル掘削の影
響が及ぶ可能性があるため、三次元 FEM解析を行い補助工法の計画や、管理基準値
の及び、計測管理手法などを設定し、無事
掘削工が完了したので、その計画と施工事
例について報告するものである。
図-1 現場位置図
1 地形・地質概要 当該箇所は、火山観光地帯である。青葉
トンネルの起点側坑口は比較的なだらか
な斜面に位置し、坑口から約 450m区間は、
土かぶり 2D 以下と小さく住宅地や河川な
どが分布している。地質的には第四紀更新
世の安山岩等を基盤とし、それらを覆う形
で未固結堆積物が分布している。新期溶岩
類は、月浦溶岩に区分されるもので、トン
ネル縦断方向に緩く傾斜した地質構造を
示し、凝灰岩や凝灰角礫岩を主体とし、下
部には溶岩が存在する。起点側においては、
熱水変質作用を被っており、重金属類の存
在が確認されている。 導水路トンネル交差区間においては、月
浦溶岩の変質岩(明ばん石帯、鉱化帯、ス
メクタイト帯等)から構成され、変質の程
度や分布が複雑で地山性状も不均一なこ
とから、塑性地圧の発生や掘削時の緩み等
に起因した導水路トンネルへの悪影響が
懸念された。
図-2 導水路交差部地質断面図
トンネル工事における近接交差部の計画・施工について ―既設導水路トンネルと交差する青葉トンネルの事例―
室蘭開発建設部 有珠復旧事務所 ○高橋 渉
荒野 広
甲斐 明
洞爺湖
噴火湾
三豊トンネル
青葉トンネル
新国道 230 号
被災した国道 230 号
Ta(p)非変質部
Ta(l)スメクタイト帯 ,褐鉄鉱鉱染部
Ta(p)珪化帯 ,明ばん石帯
Ta(l)珪化帯 ,明ばん石帯
Ta(p)珪化帯 ,明ばん石帯 , カオリン帯
Ta(l) カオリン帯 , スメクタイト帯
Ta(p)スメクタイト帯 , 明ばん石帯 Ta(p)スメクタイト帯
青葉トンネル
既設導水路トンネル
Wataru Takahashi,Hiroshi Arano,Akira Kai
起点
終点
導水路トンネル 破砕帯
起 点起 点 終 点終 点
2 既設導水路近接交差部の検討 青葉トンネルの掘削が導水路トンネル
へ与える影響や掘削時の対策工法を検討
するため有識者で構成される『一般国道
230 号洞爺道路トンネル技術検討会』(以
下検討会と称す)において、三次元 FEM解析による影響解析を実施した。この結果、
青葉トンネルの変位が導水路トンネルに
与える影響が大きいことが確認され、青葉
トンネルの変位を抑えるための補助工法
が不可欠となった。このため、青葉トンネ
ルの掘削による変位と導水路トンネルの
沈下との関係を分析、管理基準値を設定し、
施工時における計測管理計画を策定した。
図-4 交差部施工管理までの作業フロー
3 FEM 解析による影響解析
三次元 FEM 解析の解析対象範囲は、導
水路トンネル方向に SP3150~SP3400 の
250m、導水路トンネル直角方向に 240mとした(図-5,図-6)。また、施工時に
おける逆解析や三次元 FEM 解析で表現で
きない詳細な施工ステップを評価するた
め、二次元 FEM 解析を実施した。二次元
FEM 解析は導水路トンネルと青葉トンネ
ルが交差する断面(SP3314,図-3)でモ
デル化した。解析は地質、コンクリートお
よびグラウト(AGF 工法による改良部)を
全て弾性体と仮定した。地質区分を表-1に示す。
解析は、現在の応力状態を適切に表現す
るため、実工程を模擬して段階的に計算を
進めた。
図-5 解析対象腑瞰図
図-3 青葉トンネル縦断図・平面図
三次元 FEM 解析による既設水路トンネ
ルへの影響把握
施工における管理基準の策定 (計測値に対する管理基準値の設定)
補助工法、対策工の設定
試験施工区間での計測値を用いた管理計
画の設定(二次元 FEM 解析による逆解
析及び交差部での予測解析)
導水路トンネル影響区間での現場管理
方法の設定
二次元 FEM 解析と三
次元 FEM 解析の結果
の分析
起 点
起 点
終 点
終 点
国道37号国道37号
洞 爺 湖 側
噴 火 湾 側
導 水 路 トンネル
導 水 路 トンネル
交 差 測 点 SP=3,314
SP3400 側
SP3150 側 240m
250m
図-6 三次元 FEM モデル要素分割状況
また、解析ケースについてはAGF(長
尺鋼管フォアパイリング)工法による改良
範囲を変えて表-2 のように設定し解析を
実施した。
表-1 地質区分および使用物性一覧
*グラウトの物性は AGF により改良された地盤物
性を示す
表-2 解析ケース
AGF なし 支保工のみ
AGF120°
AGF180°(改良厚 t=0.5m)AGF あり
AGF180°(改良厚 t=1.0m)
表-3 に解析ケースごとの三次元 FEM 解
析結果を示す。また、青葉トンネルの天端 変位と導水路トンネルの底面変位、発生応
力、最大傾斜角それぞれの関係を図-7~9に示す。導水路トンネルの底面変位・発生
応力の関係については、導水路トンネルと
の交差部断面での二次元弾性 FEM 解析に
よる結果も併せて図示する。 すべての結果について青葉トンネルの
天端変位と相関関係があることがわかる。
また、二次元 FEM 解析と三次元 FEM 解
析の結果は、ほぼ傾向として同様の結果と
なっている。三次元 FEM 解析の方が小さ
めの結果となっているのは、トンネルが軸
方向に伸びる連続的な梁の剛性の三次元
効果によるものである。 表-3 三次元 FEM 解析結果
図-7 青葉トンネル天端沈下と
導水路トンネル底面変位の関係
図-8 青葉トンネル天端沈下と
導水路トンネル発生応力の関係
修正地質および 使用材料
単位体積質量 ρ (g/cm3)
変形係数 E (MPa)
ポアソン比 ν
厚さ (mm) 色分け
S 1.60 300 0.35 P 2.00 1,200 0.30 L 2.40 8,000 0.25 D 1.50 80 0.40
青葉トンネル 600 北電導水路トンネル
2.35 20,600 0.20 350
グラウト 2.35 9,310 0.20 1000
地質区分 岩種 変質帯区分 単位体積質量 ρ? (g/cm3)
変形係数 E (MPa)
ポアソン比
ν 修正後
地質区分
硬質珪化帯 A-Si 1.70 8,000 0.30 L 珪化帯 Si 1.50 160 0.35 S
珪化帯(破砕帯) F 1.50 10 0.40 D 明ばん石帯 Al 1.60 150 0.40 S カオリン帯 Ka 1.90 120 0.40 S
スメクタイト帯 Sm 1.90 110 0.40 S
火山砕屑岩類 ( Ta ( p ) )
非変質部 - 2.00 1,400 0.35 P 珪化帯 Si 1.60 180 0.40 S
珪化帯(破砕帯) F 1.60 10 0.40 D 明ばん石帯 Al 1.60 180 0.40 S 褐鉄鉱鉱化帯 Or 2.30 1,100 0.30 P カオリン帯 Ka 2.00 1,000 0.35 P
スメクタイト帯 Sm 2.00 1,000 0.35 P
月浦溶岩 ( Ta )
溶岩 ( Ta ( l ) )
非変質部 - 2.40 8,200 0.30 L 洞爺二次堆積物 ty - - - S 崖錐堆積物 dt - - - S
解析ケース青葉トンネル
天端変位(mm)
北電導水路トンネル底部変位
(mm)
北電導水路トンネル発生応力
(MPa)
最大傾斜角(rad)
AGF無し 支保工のみ -25.1 -11.0 3.1 0.29
AGF120° -18.3 -10.0 2.6 0.24
AGF180°(t=0.5m) -17.5 -8.9 2.3 0.21
AGF180°(t=1.0m) -15.1 -8.3 2.0 0.19
※変位: +隆起、- 沈下、応力: +引張、-圧縮
AGF有り
青葉トンネル天端変位と導水路トンネル底面変位の関係
-18
-16
-14
-12
-10
-8
-6
-4
-2
0
-30 -25 -20 -15 -10
青葉トンネル天端沈下(mm)
導水
路ト
ンネ
ル底
面沈
下(m
m)
三次元FEM解析
二次元FEM解析
青葉トンネル天端沈下と導水路覆工応力の関係
0
0.5
1
1.5
2
2.5
3
3.5
4
4.5
5
-30 -25 -20 -15 -10
青葉トンネル天端沈下(mm)
導水
路覆
工応
力(M
Pa)
三次元FEM解析
二次元FEM解析
-15.1
上半施工時
下半施工時
先行変位 6.0mm
安 全 管 理 体 制通常体制 注意体制 要注意体制 厳重注意体制
管理レベルⅠ管理レベルⅡ管理レベルⅢ
7.2mm 10.0mm
A計測管理基準値
7.2mm 8.5mm 12.0mm
9.0mm 10.8mm 15.0mm
天端沈下の全体値 15.0mm 18.0mm 25.0mm
図-9 青葉トンネル天端沈下と
導水路トンネル最大傾斜角の関係
4 管理基準値の策定 導水路トンネルは昭和初期に建設され、
現在覆工に発生している応力状態が不明
確であり、導水路トンネルに計測器を設置
することができないため、導水路トンネル
の覆工発生応力と傾斜角に着目して、これ
らを管理基準とした。この設定根拠につい
て以下に示す。
4-1.導水路トンネル覆工発生応力によ
る管理基準 導水路トンネルから採取したコアを用
い一軸圧縮強度試験を行った結果、覆工コ
ンクリート強度は 23.1MPa であった。青
葉トンネルの掘削に伴い、導水路トンネル
の底部には引張応力が発生するため、圧縮
強度の 1/10 に当る 2.31MPa 以下に増加発
生引張応力を確保することで、導水路トン
ネルの健全性が確保されるものとしてこ
れを管理する上での目標値とした。 三次元 FEM 解析の結果、導水路の発生
応力と青葉トンネルの天端沈下には相関
性があることから、導水路トンネルの発生
応力が 2.0MPa 発生した時の青葉トンネル
天端沈下量を、管理基準値の一つとして採
用した(表-4)。
4-2.導水路トンネルの傾斜角による管
理基準 導水路トンネルはブロック施工されて
おり、縦断方向に発生する応力はこの継ぎ
目で解放されることから、三次元 FEM 解
析で得られた発生応力よりは小さいもの
と考えられる。 導水路トンネルのように、ブロック間の
目違いによる漏水が重要視される構造物
においては相対変位も重要となるが、この
影響を反映した解析モデルを構築するこ
とは困難である。 このような背景において近年施工され
た近接交差工事では、「建築基礎構造物設
計指針」(日本建築学会)の下限変形角(0.3×10-3rad)を基準管理基準値として施工
し、良好な結果を得ている事例がある。 青葉トンネルにおいては、三次元 FEM
解析により詳細な傾斜角の算出が可能で
あり、より精度の高い基準値となり得ると
考えられることから、管理基準値の一つと
して採用した(表-4)。 4-3.施工時の管理基準値
解析で求められた青葉トンネルの天端
沈下量は、初期変位も含めた全変位量であ
るため一般的に用いられる先行変位量を
全体の 40%と仮定し、さらに上下半の分
割 表-4 管理基準値
表‐5 施工時の管理基準
青葉トンネル天端沈下と導水路傾斜角の関係(三次元FEM解析)
0.00
0.05
0.10
0.15
0.20
0.25
0.30
0.35
0.40
-30 -25 -20 -15 -10
青葉トンネル天端沈下(mm)
導水
路傾
斜角
(×10
-3 r
ad)
三次元FEM解析
-25.1
3 次管理値 2 次管理値 1 次管理値
青葉ト
ンネル
天端部絶対沈下量 (mm)
+:隆起 -:沈下 ‐25 ‐18 ‐15
覆工発生応力 (MPa)
+:引張 -:圧縮 ― ― 2.0
導水路トンネル
縦断方向最大傾斜角
(10‐3rad) 0.29 ― ―
計測種別 断 面 数量 測定点数
A計測SP3,215.5~SP3,352.3
坑内 天 端 沈 下 ・ 内 空 変 位 30断面天 端 沈 下 : 30 点内空変位:120測線
坑外 地 中 沈 下 計 1本 6点
地 中 変 位 計 6本 36点
吹 付 け コ ン ク リ ー ト 応 力 計 7箇所 7点(1点/箇所)
鋼 製 支 保 工 応 力 計 7箇所 14点(2点/箇所)
SP=3,252.0 坑外 地 中 沈 下 計 1本 6点
ス ラ イ デ ィ ン グ ミ ク ロ メ ー タ
デ ジ タ ル Q テ ィ ル ト
SP=3,299.0 坑外 地 中 沈 下 計 1本 6点
1箇所
坑内
仕 様
PM-100G-6 45.0m・6測点
PV-100-6SG 10.0m・6測点
GK-20N-202
ライカジオシステムズTPS1100
B計測
SP=3,228.0
SP=3,267.0 坑外 3成分地中沈下計
KM-100B
PM-100G-6 54.5m・6測点
PM-100G-6 73.0m・6測点
項 目
施工の影響を考慮し、施工時の管理基準
値を策定した(表‐5)。 5 対策工
三次元 FEM 解析上見込まれていた補助
工法は、AGF工法のみであるが、地山は
非常に不均一であり、解析では考慮されな
い脚部の沈下や、支保工と地山の馴染み等
が発生する可能性があった。そのため、許
容沈下量を満足するためには、更なる補助
工法の採用が必要であった。 捕縄工法は図-10 の「標準で行う補助
工法」を基本として施工を行った。また、
導水路トンネルからの漏水による出水が、
沈下を助長する可能性があるため、多量の
出水が発生した場合は止水対策補助工法
を、沈下が許容値を超えることが想定され
た場合は、状況に応じて補助工法の追加や
見直しを行うこととした。 また、施工においては三次元 FEM 解析
の結果より、導水路トンネル交差部の前後
40mが掘削の影響が大きく重点管理を必
要とする区間として、影響区間を 80mと
し設定した。また、補助工法の妥当性や沈
下量の程度を把握し、地山物性値の評価を
実施する区間として、試験施工区間および
再確認区間を設定した。(図‐12) 6 計測計画
交差部の施工においては、通常の坑内 A計測の他に坑外から地中沈下計や傾斜計
を設置し影響を監視するとともに、得られ
た値を二次元FEM解析による逆解析に
よって地山及び、補助工法の評価に活用し
た。 図-12 に計測平面位置を示す。また、
各断面での計測項目を表-6に、計測頻度
を表-7に示す。
図-10 変形抑制に対する対策工メニュー
図-11 補助工法概念図
図-12 計測位置図
表-6 計測項目一覧表
導水路トンネルへの影響の抑制
青葉トンネルの変形の抑制
・AGF(長尺鋼管フォアパイリング)180°2 段 等 ・ウィングリブ ・鏡吹付け ・長尺鏡ボルト ・プレロードシェル ・高強度吹付けコンクリート
(さらなる内空変位の抑制が必要な場合)
・早期併合 ・ミニベンチによる掘削 ・上半仮インバート
(さらなる沈下抑制が必要な場合) ・脚部補強工
標準で行う補助工法
状況に応じた追加対策
・薬液注入工法(改良範囲 0.5D 程度)
止水対策補助工法
表-7 計測頻度
3Dまで 3D~5D 5D以上
A計測 3時間毎 12時間毎 24時間毎
坑内B計測 2時間毎 3時間毎 4時間毎
坑外B計測 30分毎
計測断面と切羽の離れ計測種類
※D :トンネル掘削径 (D≒12m) A 計測は、内空変位及び天端沈下の状況
を迅速に察知するため、測定方法はオンラ
イン方式とした。A計測のオンライン方式
は坑内に三次元測定器を固定し、3時間間
隔に測定を行い、現場内のパソコンに集約
し、専用回線にて工事事務所内のパソコン
に転送しモニタリングした。 坑外地中沈下計測においても、トンネル
掘削に対し、先行変位の挙動を迅速に察知
するため絶対沈下量をリアルタイムで監
視することなどを目的としてオンライン
方式で行った。 7 計測結果 7-1.補助工法の差異による計測結果 試験施工区間は、前述の「標準で行う補
助 工 法 」 を 全 て 実 施 し た 。 そ の 結 果 、
SP=3228 断面においては、先行変位は微
小であり、切羽通過後も変位は進行せず、
緩み領域も最大でも 4m程度と小さく、沈
下量も 5.7mm程度と管理レベルⅠ(15mm)を下回る良好な結果となった(図‐13)。
図-13 SP3228 断面の緩み領域の模式図 この結果、実施した補助工法の有効性は
確認出来たものの、過大な補助工法になっ
ている可能性があるため、先行変位防止目
的で実施した長尺鏡ボルト工及び地山の
早期支保の目的で実施したプレロードシ
ェル工を省略し施工を試みた。この結果
SP=3252 断面においては先行変位が 6.5mm程度確認され、最終沈下量も 16.2mm
と管理レベルⅠを超える値となった。又、
緩み領域もトンネル上方 13mにまでおよ
び、導水路トンネルに影響を及ぼす危険性
が生じた。このため長尺鏡ボルトを再施工
し、先行変位を防止することとした(図‐
14)。
図-14 SP3252 断面の緩み領域の模式図
図-15 SP3299 断面の緩み領域の模式図
長尺鏡ボルト再施工後の SP3299 断面に
おいては、先行変位 3.4mm、最終沈下量
8.6mm と小さく抑制することが出来た。 又、緩み領域もトンネル上方 6mと小さ
く良好な結果よなった(図‐15)。
7-2.A 計測結果
4.5m間隔 30 断面において実施した A 計
測の結果は、天端・脚部沈下量ともに 6mm程度に抑制することが出来た。また、変
位も切羽離れ 2D までに収束する傾向にあ
った。図-16 に切羽離れ 0.5D 及び 1D~
2D 時の天端沈下の進行状況を示す。
図-16 切羽離れと天端沈下量の進行
図-17 導水路内測量点
⑰80m⑮60m
⑬40m
⑪20m
⑨0m
(交差部直下)⑦-20m
⑤-40m
③-60m
①-80m
-5mm
-4mm
-3mm
-2mm
-1mm
0mm
1mm
2mm
3mm
4mm
5mm
図-18 導水路トンネル底面沈下量 7-3.導水路トンネルの沈下測量
掘削前、掘削中の解析上最大沈下量が予
測される位置及び、掘削完了後において、
通水を一時中止し、導水路内部の測量を実
施した。測量点は交差部前後 80mとし、
内空変位・底面沈下量及び多角測量を実施
した。 掘削完了後の測量の結果、交差部近傍で
2mm程度の沈下が観測されたが、新たな
クラックの発生等も見られず、健全性が確
認された。
おわりに
当該交差部は、複雑な変質帯が混在する
不均一な地山であったが、事前調査で想定
し三次元FEM解析に用いた物性値は、
A・B計測結果を利用した逆解析での物性
値とほぼ整合がとれ、又、坑外沈下計計測
の結果と比較しても大凡整合がとれてい
た。このことから、本工事においては適切
な補助工法を選択し、導水路トンネルに影
響を与えることなく施工することができ
た。さらに導水路トンネルが圧力トンネル
であることから、導水路からの漏水による
~0.5D掘削時の天端沈下量
-6.0-4 .3
-2 .0
-5 .5
-2 .8-3 .6-4 .1-4 .2-4 .0-3 .1-3 .5-3 .2-2 .8
-8 .1-6 .1
-3 .8-4 .7-3 .5
-4 .6
-1 .5-2 .9-2 .4-1 .7
-3 .2-3 .8-5 .2-5 .3
-3 .5-2 .3
-7 .2
-10.0
-8.0
-6.0
-4.0
-2.0
0.0
2.0
4.0
3215.5 3220.0 3224.5 3229.0 3233.5 3238.0 3243.4 3247.9 3252.4 3256.9 3261.4 3265.9 3270.4 3274.9 3279.4 3283.9 3288.4 3292.9 3299.2 3303.7 3309.1 3314.5 3319.9 3325.3 3329.8 3334.3 3338.8 3344.2 3347.8 3352.3
変位
量(m
m)
1 .0D~2.0D掘削時の天端沈下量
0.2 0 .5-1 .9
0 .7 0 .3 -0 .3 0 .4 0 .1 -0 .9-2 .7
-0 .9
-3 .5
-0 .4-0 .2-0 .2-0 .9-0 .9 0 .1-1 .7-0 .7 0 .1
-1 .4-1 .9-1 .40 .2
1 .5
-10.0
-8.0
-6.0
-4.0
-2.0
0.0
2.0
4.0
3215.5 3220.0 3224.5 3229.0 3233.5 3238.0 3243.4 3247.9 3252.4 3256.9 3261.4 3265.9 3270.4 3274.9 3279.4 3283.9 3288.4 3292.9 3299.2 3303.7 3309.1 3314.5 3319.9 3325.3 3329.8 3334.3 3338.8 3344.2 3347.8 3352.3
変位
量(m
m)
突発的湧水の可能性があったことから、掘
削時の湧水にも注意したが、AGF施工に
よる改良帯が遮水効果をもたらしたため
と考えられるが、湧水量の増加はわずかで、
無事に掘削を終えることができた。
今回は既設トンネルと近接交差する新
設トンネルの掘削という特異な事象では
あるが、3次元において解析を行い、2次
元において現場施工管理をするという手
法は他の箇所においても十分生かせる手
法と考えている。
おわりに、近接交差部の解析・ご検討頂
いた「洞爺道路トンネル技術検討会」の各
委員の皆様はじめ、ご指導・ご尽力を賜っ
た関係各位に深く感謝いたします。