欧州の宇宙産業振興と 宇宙利用拡大への取組み状況 …...2 Ⅰ.EUの宇宙産業振興や宇宙利用拡大プログラム Ⅰ-1.EUの宇宙産業政策 1.欧州の宇宙政策の沿革
宇宙における光エレクトロニクス技術 ~光衛星間通 …Nd:YAG laser system, LCS;...
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宇宙における光エレクトロニクス技術
~光衛星間通信を中心に~
山川 史郎
宇宙航空研究開発機構
光エレクトロニクスシンポジウム 東京大学伊藤国際学術研究センター 2015年6月16日
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アウトライン
JAXAとは。そして、「衛星」に関するバックグラウンド
光通信を用いた宇宙の通信インフラ:「光データ中継衛星」
- 実現への重要なステップ:光衛星間通信実験衛星「きらり」
- 光データ中継衛星
宇宙における「光エレクトロニクス」 そして
光エレクトロニクスへの期待: もっと「光」を!
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JAXAとは。そして、「衛星」に関するバックグラウンド
光通信を用いた宇宙の通信インフラ:「光データ中継衛星」
- 実現への重要なステップ:光衛星間通信実験衛星「きらり」
- 光データ中継衛星
宇宙における「光エレクトロニクス」 そして
光エレクトロニクスへの期待: もっと「光」を!
宇宙航空研究開発機構(JAXA)の概要1. 発足
平成15年10月、文部科学省傘下の3機関(宇宙科学研究所、航空宇宙技術研究所及び宇宙開発事業団)が統合して発足【法人格:国立研究開発法人(H27FY~)】
2. 規模
職員数 約 1,540名 (平成24年4月)
予算額 約 1,720億円 (平成24年度当初予算)
3. 事業所 所在地
調布(本社)、御茶ノ水(東京事務所)、筑波、相模原、
種子島、角田、他
4. 事業概要1.衛星による宇宙利用
2.宇宙科学研究
3.宇宙探査
4.国際宇宙ステーション(ISS)
5.宇宙輸送
6.航空科学技術
7.宇宙航空基盤技術の強化
8.教育活動及び人材の交流
9.産業界、関係機関及び大学との連携・協力
10.国際協力
11.情報開示・広報・普及
4
JAXAの活動
世界の宇宙機関
• 宇宙航空研究開発機構(日本)(JAXA:Japan Aerospace eXploration Agency)
• アメリカ航空宇宙局(NASA)
• ヨーロッパ宇宙機関(ESA)
:欧州20カ国+αによる国際機関
• ロシア航空宇宙局(RSA)
• カナダ宇宙庁(CSA)
• 中国国家航天局(CNSA)
• インド宇宙研究機関(ISRO)
• フランス国立宇宙研究センター(CNES)
• ドイツ航空宇宙センター(DLR)
・・・
宇宙機開発の特徴
○対象物 : 宇宙システム(ロケット、衛星・探査機、有人宇宙機)は大規模でかつ複雑かつ修理がほぼ不可能なシステムである。
(例)部品点数 H-IIAロケット 約30万点
大型の地球観測衛星 約25万点
(⇔ 一般乗用車 約2~3万点)
○少量生産: 我が国で年間数機程度
全世界 ロケット 81機/年 人工衛星 198機/年(2013年の実績)
○使用環境:特殊環境(無重力、高真空、厳しい熱環境・放射線環境等)
○試験実証:実使用環境下では試験が困難なものも多い
○我が国の宇宙開発の問題点:
欧米に比べてロケット及び衛星の打ち上げ数が少なく、経験及び
データの蓄積が十分でない。
真空中で温度変化、放射線環境等にさらされて動作しなければならない
宇宙機開発の特異な例
実環境の試験困難
無重力下で開く巨大なアンテナの展開を同一条件で地上では確認できない
厳しい使用環境
約100分毎に繰り返し
37m
約130℃
重要な衛星軌道(静止軌道と太陽同期軌道)
1.静止軌道(GEO)赤道上空 約 36,000 km
(気象衛星、通信衛星など)
○衛星の周期が地球の自転周期と同じ24時間のため、地上から止まっているようにみえる。
2.太陽同期軌道(低軌道LEOの一つ)
地表から 約600~ 1000km(地球観測衛星など:低い軌道で「よく見える」)
○軌道面の傾斜角が赤道面とほぼ垂直
○同緯度ならば同じ時間に衛星が上空を通過する⇒観測条件が揃うため地球観測に向いている。
○ある回帰日数後(例えば十日後)に同一地点の上空に定期的に戻ってくる軌道にも設定できる。
24時間後
12時間後
回帰日数後
静止衛星軌道(高度36,000km)
(地球直径の約3倍)
国際宇宙ステーション(高度400km)
(地球半径の16分の1)
地球観測衛星(高度800km)
地球(半径:6,400km)
人工衛星・宇宙ステーション軌道高度
地上局:衛星の運用とデータの受信
○ 人工衛星の運用および人工衛星によって得られるミッション成果(地球観測データ)伝送のため無線通信にて地上と交信する必要がある。この際用いる地上通信局は全地球上に広く分布させることが必要
➣ 地上局の整備:JAXAにおける例
沖縄宇宙通信所
増田宇宙通信所(種子島)
勝浦宇宙通信所(千葉)
キルナ可搬型追跡管制局(スウェーデン)
3つの海外局(チリ・スペイン・豪州)
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JAXAとは。そして、「衛星」に関するバックグラウンド
光通信を用いた宇宙の通信インフラ:「光データ中継衛星」
- 実現への重要なステップ:光衛星間通信実験衛星「きらり」
- 光データ中継衛星
宇宙における「光エレクトロニクス」 そして
光エレクトロニクスへの期待: もっと「光」を!
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「だいち(ALOS)」による災害観測
地震/津波
火山噴火
洪水
東日本大震災福島県相馬市
(2011/3)
Mt. Merapi volcano, Indonesia (Jun 2006) Flooded areas in ChoeleChoele City, Argentina (July 2006)
東日本大震災福島県相馬市
(2011/3)
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1985 1990 1995 2000 2005 2010
ADEOS
ALOS
GSD
(m)
Launch (year)
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100
0 2 4 6 8 10 12 14
ALOSADEOS
Sw
ath
(km
),TopSat
OrbView-3
SPOT-5Beijing-1
QuickBirdIKONOS
Kompsat
SPOT-1~4
LANDSAT-7
IRS-1C
IRS-1D
GSD (m)
SPOT-1~4
Kompsat
IRS-1C,D
SPOT-5
Beijing-1
TopSatQuickBird
OrbView-3IKONOS
分解能と観測幅
の両立
高分解能
次世代の観測衛星「先進光学衛星」のターゲット
■ 地球観測では「解像度(GSD)」と「観測幅(Swath)」が重要⇔ 「データ量」∝「解像度(の高さ)」×「観測幅」
■ 次世代のJAXAの高分解能光学観測衛星は解像度と観測幅の「両方取り」を狙う。
「可視時間(通信カバレッジ)の長さ(データ中継)」+「通信容量の拡大」が必須→ データ中継回線の「光化へ」
データ中継衛星システムの高度化
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データ伝送量を増やすために:データ中継衛星システム
東経90度付近のデータ中継衛星からの可視範囲(最⼤40分)
地上局からの可視範囲(数分から10数分)
●データ中継衛星のメリット・広い可視範囲により、即時性を有する。・長時間の通信時間を実現することで、大容量化が図れる。
緑:フィーダ-リンク
赤:光衛星間回線
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「こだま」と欧米のデータ中継衛星システム
ⒸNASA
NASAのTDRS
JAXAの「こだま」(DRTS)
ESAのARTEMIS
ⒸESA
©ESA
データ中継技術衛星「こだま」(DRTS)打上げ時期 2002年9月
静止質量(打上げ質量) 1,500kg(2,800kg)
軌道高度 36,000km
静止位置 東経90.75度
ミッション期間 7年
ESAのEDRS(Eutelsat 9Bと相乗り)
©Airbus-D&S
0°
90°90°
180°
West East
TDRS-5
TDRS-7TDRS-8
TDRS-9
TDRS-10
NASA(ホワイトサンズ)
ESA(フチノ・レデュー)
TDRS-6
ARTEMIS(21.4E)
DRTS(90.75E)
TDRS-3
NASA(グアム)
JAXA(筑波)
CNSA(中国)
RFSA(ロシア)
日本の通信事業者(CS/BS)
天鏈1A(77E)
Luch5B(16W)
ロシア/FSA(Luch)
中国(CTDRS)
NASA(TDRS)
データ中継衛星
現在及び将来の静止軌道上のデータ中継衛星:静止軌道上配置図
TDRS-11JAXA(DRTS)
欧州(EDRS)
計画中
計画中
Luch5B(167E)
TDRS-M(軌道位置TBD)
EDRS-A(9E) EDRS-B(22.5E)
天鏈1B(177E)
天鏈1C(軌道位置を含め詳細不明)
Luch5V(95E)
光衛星間回線を保有
光衛星間通信とデータ中継衛星への応用■データ中継衛星のメリットの更なる拡大
①通信回線の高速化(「こだま」:最大240Mbps)
②通信機器(特にユーザとなる衛星に搭載するもの)の小型化→アンテナを小さく
+③干渉が少ない(周波数調整が不要)、④耐妨害・耐傍受(秘匿性)
光通信が有効:光によるデータ中継衛星システムへの期待
「光衛星間通信」とは、自由空間光通信/光無線通信の一形態
◆ システム構成は、
- 「電波」の通信と同じ:
送信機→アンテナ →(空間伝搬) →アンテナ→受信機
- ファイバ通信の「ファイバ」の代わりに自由空間」を使う
GoptGRF
レーザ通信のアンテナ
電波通信のアンテナ
>>
直径a=20cmで116dB
直径a=30mで56dB
光の周波数(300THz) > 電波の周波数
(300THz) (100MHz~2GHz)
光アンテナ径: 10~15cm全体寸法: 50cm前後
132cmアンテナ径: 77cm
光衛星間通信機器
衛星間通信機器の進化
電波による衛星間通信機器の例 光による衛星間通信機器の例
低軌道周回衛星用(地球観測衛星等)
ミッションデータ伝送速度 240Mbps 1.8 Gbps以上
搭載用アンテナ外観
静止衛星用(データ中継衛星)
直径 3.6 m
静止衛星搭載形態
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宇宙レーザー通信の実証実験の歴史(~2000年)
1970’s 1980’s 1990’s 2000’s
CO2 laser system (NASA)
航空機と地上間の実験成功
Coherent laser communication system (FSK)
(MITLL / NASA)
Nd:YAG laser system,SFTS and AFTS
(U.S. Air Force)
Nd:YAG laser system, GOPEX: Galileo-ground
(JPL)
LD-APD,800nm IM-DD,GOLD:ETS-VI-ground
(CRL/JPL)
地上からのレーザー光を撮像用カメラが受信
地上-衛星間の通信実験成功
LD-APD,800nm IM-DD,ARTEMIS-SPOT-4
(ESA)静止-低高度周回衛星間の通信実験成功
1.5μm帯GeoLITE: GEO-ground
(NRO)
Nd:YAG laser system, LCS; Laser crosslink subsystem
(U.S. Air Force)
➣ レーザを用いた自由空間光通信を宇宙で利用するという考えは、1960年代から米国を中心に研究がなされてきた。
➣ 実用化が見えてきたのは最近:(1)光ファイバ通信技術の進展(2)大容量通信ニーズ
技術課題
光ビーム制御技術○超高利得、狭ビームという(利点)
●少しでも送信光ビームの出射方向がずれると受信局に届く光の強度が急激に低下→回線の喪失(欠点)
◆極めて広がり角の狭い光ビームを正確に制御し、安定な通信回線を形成・維持する光ビーム制御技術が大きな課題
・制御技術/・光学系の安定(軌道上の熱環境/打上げ時の振動環境)
宇宙レーザー通信の技術課題
浜名湖付近を走行する新幹線から富士山山頂のサッカーボール大の的に双方の通信機間で
協調して照射し続ける技術※
∽
約45,000 km離れた(GEO-LEO)衛星間でレーザ通信を行う技術
▲
▲
浜名湖⇔富士山約130km
技術確立が必要:試験衛星「きらり(OICETS)」
• 光通信とKa帯通信のビームの広がりの⽐較(静⽌軌道から地上に照射)
光通信の特性:ビームの広がり
東京ドーム
電波(Ka帯)通信の地上におけるフットプリント(⼀例)直径100km程度
光通信の地上におけるフットプリント(⼀例)
直径300m程度
※ 3dBビーム幅で⽐較
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衛星間レーザー通信実験の概要
静止衛星:先端型データ中継衛星-ARTEMIS(欧州宇宙機関)
「きらり」(JAXA)
Forward link(ARTEMIS →「きらり」)
Return link(「きらり→
ARTEMIS)
波長 819 nm (comm.)801 nm (beacon) 847 nm (comm.)
偏光 LHCP LHCP
データレート 2.048 M bps 49.3724 M bps
信号フォーマット 2PPM NRZ
ビット誤り率 10-6 10-6
約36,000 km
Forward
Return
・質量 3.1トン(打上げ時)・サイズ 25m×8m×4.8m ・静止軌道(東経21.5度) ・打上げ日 2001年7月12日
質量 570 kg
サイズ 9.4 m× 1.8m ×3.1 m
高度(円軌道) 610km
打上げ日 2005年8月23日
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<捕捉・追尾・指向 (ATP)> 光衛星間通信のキー技術
◆3段階で捕捉する[Step I] 粗捕捉<視野±0.2度> ①、②
- 光アンテナ自体を動かす(CPM)[Step II] 精捕捉追尾<視野±0.01度>
- ターミナル内部の光学系の小型ミラー(FPM)を駆動
- ここで最終的に±1radまで追い込む[Step III] 指向(光行差補正) ③、④
「きらり」からの光は100mくらいしか広がらない⇔衛星の相対的な位置は7 km/sで変化
0.3秒=約2km
光ターミナル:LUCE
距離:4万km~3万6千km相対速度:秒速約7km到達時間:往復で約0.3秒光行差補正:最大60マイクロラジアン
軌道予測誤差(「きらり」+ARTEMIS)+計算誤差
衛星姿勢誤差
衛星自身の振動+その他外乱
衛星構体と光衛星間通信機器間の取付精度
レーザビーム制御精度(特に光行差補正ビーム制御)
ミラー、レンズ等の光学機器の宇宙空間での熱歪み
約7km/sで北極から赤道へ移動
約3km/sで赤道上空を東西移動
姿勢他による変動
姿勢他による変動
双方の光衛星間通信機器が様々な変動を吸収し、常に相手のレーザ光を追尾し、光行差補正を加えたレーザ光を相手に送信し続ける
「きらり」の捕捉・追尾・指向について
捕捉で3.5ミリラジアン(0.2°)
追尾で1マイクロラジアン
指向で2.6マイクロラジアン
ARTEMIS衛星
「きらり」
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「きらり」搭載のレーザー通信装置(LUCE)
項目 仕様・性能
重量 約150 kg
消費電力 220 W
光アンテナ
波面精度 λ/20 rms within 1 mrad field of view (λ=847 nm)
倍率 20
有効径 26 cm
送信系
レーザー光源 InGaAsP-LD
最大送信出力 100 mW (modulated mean value)
送信放射強度 280~780 MW/sr
波長 LD1: 848 nm, LD2: 847 nm
送信信号 49.3724×106 bps / No return to zero signal
受信系
検出用デバイス Si-APD
受信信号 2.0428×106 bps / 2 Pulse position modulation signal
カセグレン方式の光アンテナ部
光学特性試験装置*1
・高性能の光学性能測定装置(熱真空下での光学特性の測定が可能)
光アンテナ
二軸ジンバル
光センサ類 光学素子類
・極低速回転摩擦対策
・低熱歪みフレーム構造
・0.04μの鏡面精度の研磨
・低熱膨張ガラスの一体構造
・ガラス構造の強度評価確立
・不正光反射対策
・低熱歪み締結構造・高感度光センサの開発・耐宇宙環境性
レーザダイオード*2
・200mW出力
・耐宇宙環境性
ビーム制御機構
・高精度角度制御・低熱歪み締結構造
内部光学部
・低熱歪みフレーム構造・内部温度の均一化・歪み伝達の防止機構
電子回路部
内部光学部
・高速の捕捉追尾制御演算(ビーム捕捉から0.3秒以内に指向)
・自衛星及び相手衛星の軌道位置・速度予測計算
「きらり」で開発した光衛星間通信機器
*1:ESAの光衛星間通信
機器との適合性を評価するため、同機器の試験装置を製作した欧州のメーカ製とした。
*2:レーザダイオードについては、国産品を検討したが、高出力の観点から米国製とした。
「きらり」搭載のレーザー通信装置(LUCE):構成
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「きらり」搭載のレーザー通信装置(LUCE)
捕捉・追尾・指向(ATP)のために3種類の制御が行われる- 粗捕捉機構(CPM: Coarse pointing mechanism)- 精捕捉・追尾機構(FPM: Fine pointing mechanism)- 光行差補正機構(PAM: Point ahead mechanism)
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宇宙に行く前の地上での事前試験
LUCE 光学部 光学特性試験装置
筑波宇宙センターにおける光学特性試験
除振床
模擬宇宙環境{真空・高温・低温}下での試験
打上げ振動環境下での試験
LUCE光アンテナからの放射パターン
LUCE 試験装置
打上げとARTEMISとの衛星間光通信実験
PN(疑似ランダム)データ発生器
ビットエラー計測器
電波によるリンク20GHz/30GHz
フォワードリンク2Mbps(2PPM)819 nm (comm.)801 nm (beacon)
50Mbps
リターンリンク50Mbps(NRZ)847 nm (comm.)
ベルギーESAREDU局
電波によるリンク(2GHz)ミッションテレメトリ(実験計測データ)取得
JAXA勝浦局
筑波宇宙センター
実験データ解析
衛星の状態監視・指令(コマンド)データ作成
光から電波の信号に変換PN(疑似ランダム)
データ発生器
ビットエラー計測器
ARTEMIS
きらり
2Mbps
JAXA追跡管制局群
静止衛星
低高度周回衛星
JAXA装置
光衛星間通信
・「ドニエプルロケット」(旧ソ連のICBMであるSS-18を転用)を使用
・2005年8月23日:カザフスタン共和国バイコヌール宇宙基地から打上げ
■光衛星間通信実験のコンフィグレーション
捕捉追尾の確立
粗捕捉センサの視野:0.2deg
精捕捉センサの視野:0.01deg
光行差を補正したレーザ光
捕捉→追尾の状況(センサ視野から見た場合)
粗捕捉センサーの視野(中心から0.2度)
粗捕捉追尾の状況 精捕捉追尾の状況
±0.00006度(1マイクロラジアン)
アルテミス・「きらり」双方の追尾・指向精度が良くなり安定状態に入っていく様子
ARTEMISビーコン照射 ビーコンオフ・通信光のみ
誤差(X軸)[deg.rad]
誤差(Y軸)[deg./rad]
粗/精捕捉センサ受信電力[dBm]
追尾状態の維持
精追尾センサ及び光受信器の
受光電力は安定状態を維持
変調信号受信電力[dBm]
2006年5月24日
精追尾誤差(X軸)[rad]
精追尾誤差(Y軸)[rad]
精追尾センサ受信電力[dBm]
通信ビット誤り率(BER)特性測定
1秒間のビット誤り個数(3個)1秒間のビットエラー個数(0個)
平均ビットエラーレート2.5×10-10
2006年2月9日
2006年8月2日
(94回目の実験)
1秒間のビット誤り個数(2個)
平均ビットエラーレート5.8×10-10
• 平成17年12月から平成18年8月までの約9ヶ月に渡ってARTEMISとの実験を行い、合計100回の光衛星間通信実験に成功(105回試行)した 。
• 実験結果より、電波同様に安定した光通信が可能であると共に、通信回線のビット誤り率が誤り訂正符号無しで、衛星通信回線の指標である10-6以下となる結果が得られ、回線品質が良好であることを実証した。
次のステップ
◆「きらり」でキー技術の「捕捉追尾指向」技術&「宇宙⽤光学技術」を獲得
○次のステップ 通信容量の向上:光のメリットが⽣きるGbpsクラス(⇔「きらり」50 Mbps) 光通信機器の⼩型・軽量化 (⇔「きらり」 約150 kg) 低消費電⼒化 ( ⇔「きらり」 約220 W ) GEO-LEO両⽅を開発(⇔「きらり」ではESAのシステムに合わせたLEO側のみ) GEOから地上のリンク(フィーダリンク)は当⾯、電波(Ka帯)を使⽤
○ 曇天時には光通信は不可能
○注⽬&参考にすべき海外の動向 使⽤する通信光波⻑:
○ 1.0 m(⾼出⼒・⾼効率)or 1.55 m(地上の光通信技術の活⽤) IMDD(強度変調・直接検波)ではないより⾼度な変復調⽅式 NASA、ESA(欧州宇宙機関)とも、データ中継衛星の衛星間は光通信化 NASAはフィーダリンクについても光化を狙っている(優位な気象条件)
海外動向:NASA/ESAの取組み状況
Alphasat搭載光ターミナル
【事前実証】①TerraSAR‐X(2007打上)
②Alphasat(2013打上)
①地球観測衛星TerraSAR‐Xに試験搭載。米国
の低軌道衛星搭載ターミナルとの通信実験に成功
5.6 Gbps(但し通信距離は最大6,000km)②《通信衛星へのhosted‐payload》・衛星間通信リンク(実験)
300/600Mbps(実データ)2Gbps(疑似データ)
【実運用】EDRS‐A(2015打上予定)
《PFIによるサービス調達》《衛星形態:他の商用ミッションと相乗り》• 商用通信衛星Eutelsat‐9B• 衛星間通信リンク:
光(1.8G/600Mbps)/Ka帯(150 ‐ 300Mbps)
【実運用】EDRS‐C(2016打上予定)
《PFIによるサービス調達》《衛星形態:データ中継専用衛星》• 衛星間通信リンク:光(1.8G/600Mbps)
NASA
53 kg / 160 W 60 cm
■ LCRD計画: 2017年打上げ予定➢商用静止衛星にhosted-payloadとして搭載➢GEO-地上を実施(GEO-ISS搭載ターミナル実験も計画中)➢次世代データ中継衛星(TDRS)に適用するシナリオ
ESA
●実運用システム●主要ユーザはESAの地球観測衛星Sentinelシリーズ
(c) JPL
● 1.24Gbps (誤り訂正符号を含むと2.880 Gbps)
● 69 kg / 130 W
■ ESAのデータ中継衛星システム:EDRS(ドイツの宇宙機関DLRも深くプログラムに関与)
(c) NASA
(c) ESA
(c) TeSAT
(c) NASA
■ LLCD計画: 2013年打上げ➢月探査ミッションLADEEに搭載➢月-地上間通信実験を実施(成功):622Mbps➢ニューメキシコ州ホワイトサンズにある地上局光通信局他と通信実験➢大気による擾乱を訂正する誤り訂正符号の実証も実施
地上光通信局搭載ターミナル10 cm31 kg / 90 W
LADEE
©NICT光地上局(NICT)
通信容量:1.8 Gbps 通信光波長:1.55 m 光データ中継衛星と先進光学衛星/「きぼう」船外プラットフォーム間での実証
光データ中継衛星計画
打上げ年度 平成31(2019)年度
打上げロケット H‐IIAロケット
軌道 静止軌道
運用期間 10年~15年(検討中)
主要ミッション機器
(1)光衛星間通信機器(2)光対応フィーダリンク機器
●地上-衛星(LEO)間通信(光:数⼗Gbps)●地上-衛星(GEO)間通信-光通信機器の性能評価-光フィーダリンク実験
NICT所有の光地上局等との実験
先進光学衛星 きぼう船外実験プラットフォー
ム
●光衛星間通信の実証
●将来地球観測衛星等での利⽤
光データ中継衛星
光衛星間通信回線
フィーダリンク回線(データ中継衛星⇔地上)
地上局(筑波局/鳩⼭局)
《実験》光通信回線(データ中継衛星→地
上)
光衛星間通信回線
●さまざまな地球観測ミッションで利用・災害のリアルタイム・高分解能観測・遠隔地災害の観測・非常時対応・高分解・高頻度の陸域・海域観測
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JAXAとは。そして、「衛星」に関するバックグラウンド
光通信を用いた宇宙の通信インフラ:「光データ中継衛星」
- 実現への重要なステップ:光衛星間通信実験衛星「きらり」
- 光データ中継衛星
宇宙における「光エレクトロニクス」 そして
光エレクトロニクスへの期待: もっと「光」を!
宇宙における光エレクトロニクスの利用
◆ 衛星・探査機・ロケットで用いられている光エレクトロニクス技術
1. 太陽電池:太陽電池開発の初期から使用されていた。高変換効率のものが開発されている。衛星、探査機のほとんどはその電源を太陽電池に依存している。
2 観測センサ(フォトダイオード、CCD、CMOSセンサ・・・).
3. レーザ利用
– レーザジャイロ
– 光通信
– レーザレーダ(ライダ)
4. 部品レベルでは:フォトカプラ、フォトダイオード
半導体レーザ・・・
★ 発展著しい光エレクトロニクスの更なる適用が期待される。
リングレーザジャイロ(H-IIロケット搭載)
光エレクトロニクスへの期待(と課題)
1. 軽くなるか?/小さくなるか?/低消費電力になるか?
– 光データハーネス:メタルのハーネスに比べて軽い
2. 便利になるか?
– 広帯域
– 無誘導(EMC):設計の自由度、試験の簡素化
– 今までになかった機能 (例)光ファイバを使った歪計測
3. 安価になるか?
4. 衛星製作期間の短期化につながるか?
★宇宙機内「データバスの光化」や「マイクロ波フォトニクス技術」に期待
● 部品レベルで宇宙用としての開発は困難:少ない出荷数=高い単価
⇒ 民生部品の宇宙転用がポイント【スピンオフからスピンインの時代】
但し、特殊な要求(耐放射線性/温度範囲/品質管理要求/実績重視)
スピンイン
■ 昔の宇宙開発:スピンオフ(スピンアウト)の時代
-宇宙活動のために開発していた先端技術を他分野で利用
-NASAのアポロ計画は代表例
(例)初期の太陽電池開発(高効率)/構造解析ソフトウェア(NASTRAN)
マットレス(Temper foam)/消防士の装備品(呼吸装置)/水純化システム
(国内でも)ロケットの断熱材→建築用塗布式断熱材、傾斜機能材料→スパイクシューズ/シェイバー
高信頼性抵抗部品→海底通信ケーブル用中継器 などなど
■ 今は、、、「スピンイン」の時代
-民生を中心とする進んだ技術を宇宙で利用する
-(米国では)冷戦終結による宇宙関連予算の縮小が遠因の一つ
★ 光衛星間通信で通信波長1.5mを用いたものを同じ理由
( 1.5m : 光ファイバの損失最小波長)
◆ 研究者・エンジニアの交流の深化
ま と め
地球観測衛星の観測データの地上への伝送について、通信速度および即時性に対する需要が高まっている。
有効な解決手段:データ中継衛星&光衛星間通信
衛星が使用する周波数の国際調整が不要という観点においても干渉が発生しない光通信は将来有望な通信手段である。
光衛星間通信実験衛星「きらり」による光通信実験の成功は宇宙における光通信の可能性を大きく示した。
JAXAはより高性能化した光データ中継システムの構築に着手。2019年の打上げを目指している。
光エレクトロニクスへの期待:「地上技術」の成果を宇宙開発に取り入れる。
(スピンイン)
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