24.トキソプラズマToxoplasma gondii/トキソプラズマ アピコンプレクサ門胞子虫類に属するコクシジウムの一種で 猫を終宿主とし、その他の動物は中間宿主とする原虫であ
トキソプラズマの中間宿主体内 におけるステージ変...
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抗原虫作用を有す新規薬剤候補物質群の紹介
帯広畜産大学 原虫病研究センター
准教授 加藤 健太郎
従来技術とその問題点
新規抗原虫薬候補物質群
対象となる原虫病(予防薬・治療薬)
•トキソプラズマ症
•クリプトスポリジウム症
•マラリア
世界人口の約3割ほどが感染(潜伏状態)
【感染経路】
1)感染ネコの糞便中のオーシストの経口摂取
2)食肉内シストの経口摂取3)経胎盤感染
水頭症
網脈絡膜炎 脳内石灰化• 後天性トキソプズマ症免疫不全患者において
潜伏感染虫体が再活性化し、播種性多臓器感染
• 先天性トキソプラズマ症妊婦の初感染による経胎盤感染
トキソプラズマ症
2012年09月29日NHKニュース
「妊娠中の感染に注意を!
トキソプラズマ患者会設立」
先天性トキソプラズマ症
既存の原虫薬は休眠型に移行させるだけで根治していない。
既存薬 潜伏感染誘導
トキソプラズマのライフサイクル
侵入
宿主細胞
脱出
分裂 分化
トキソプラズマ(急性期/潜伏期)
緩やかな分裂
①急性感染期を抑える②潜伏感染への回避行動をとらせない③宿主細胞内の潜伏感染期にも効果がある
2015年8月チューリング社の既存薬ピリメサミンの製法特許買占めで、薬価が50倍に高騰!⇒代替薬が必要
新たな問題
①②③
新規薬剤に求められる作用点
薬剤スクリーニングの流れ
Vero細胞
原虫数と潜伏感染虫体数を測定できる組換え原虫(PLK/DLUC1C9)の作製特願2014-109262
ホタル/ウミシイタケルシフェラーゼ系
ホタル
ウミシイタケ
ウミシイタケ ルシフェラーゼの発光量(TUB1プロモーター)⇨総原虫数を反映⇨薬剤の原虫増殖阻止能を反映
ホタルルシフェラーゼの発光量(BAG1プロモーター)⇨潜伏感染原虫数を反映⇨薬剤の潜伏感染誘導能を反映
ホタル/ウミシイタケ ルシフェラーゼ系⇨原虫の増殖と潜伏感染誘導をともに抑制する薬剤のスクリーニングが可能
(宿主細胞)
薬剤処理
東大創薬機構の機能既知の化合物ライブラリー(約3000種)を使用
原虫の増殖、潜伏感染を抑制する薬剤の探索
EC50 [µM](95% CI)
タンシノンIIA 2.5 (2.3 ~ 2.7)
ヒドロキシジン 1.0 (0.70 ~1.6)
タンシノンIIA
ヒドロキシジン
宿主IC50/原虫EC50>10を選定
タンシノンIIA 漢方薬原料タンジンの有効成分の一つ
• 抗ヒスタミン薬• 抗不安薬• 鎮静薬
ヒドロキシジン
特願2016-166525
特願2016-167695
Murata Y et al. PLoS One.
12:e0178203. (2017)
HFF細胞
PLK/DLUC1C9
2 h培養
薬剤添加
48 h培養
潜伏感染期特異的レポーター活性測定
潜伏感染誘導効果の評価
0
20
40
60
80
100
120
Rela
tive
BA
G1
pro
mo
ter
(%)
*
**
潜伏感染誘導度
ヒドロキシジン
ピリメサミン
タンシノン
IIA
タキゾイト
• ピリメサミンは潜伏感染を誘導
• タンシノンIIA、ヒドロキシジンは誘導効果が低い
イミダゾール派生体ライブラリー
FDA認可薬、天然物ライブラリー
金沢大学がん進展制御研究所より供与
• FDA approved drug library Japan version
(ENZO; CB-BML-2841J0100)
化合物数:640
FDAに承認され,医薬品として用いられている化合物。
• Natural Products Compound Library
化合物数:503
微生物、植物、海洋産物など天然物由来の化合物。一部は、古来より薬用として用いられてきた天然物。
急性感染虫体の増殖を阻止し、潜伏感染を誘導しにくいTranilast, Emodin, Maritimein
生薬ライブラリー
平成27年度 富山大学和漢医薬学総合研究所探索研究プロジェクト
• 生薬由来化合物 ・生薬エキス化合物数:96 化合物数:120
抗トキソプラズマ活性生薬由来化合物3種:Baicalein, Luteolin, Coptisine Chloride
生薬エキス4種:オウゴン、マンケイシ、オウバク、オウレン
抗マラリア活性生薬由来化合物4種:Berberine Chloride, Coptisine Chloride,
Dehydrocorydaline Nitrate, Palmatime Chloride
生薬エキス2種:オウバク、オウレン 特願2017-083202
金属ナノ粒子とは?
➢ 一般的な大きさの個体(バルク)とは異なる物理的、化学的特性。
• 溶融温度・焼成温度の大幅な低下• 蛍光発光• 触媒の高効率化・新規反応
➢ 比表面積が極めて大きい。
➢ 量子サイズによって特有の物性を示す。
➢ 本研究では、金、銀、白金を使用。
➢エレクトロニクス:電子機器用チップなどの、導電材料。
➢光線力学的療法:温熱療法、腫瘍細胞の破壊等。
➢生物医学用ドラッグデリバリー:表面積が大きいため、多数の化合物(治療薬、標的化剤、防汚高分子等)をコーティング。
➢センサー:比色センサー等
➢プローブ:生物学的イメージング、透過顕微鏡観察。
➢診断用途:バイオマーカー。
➢触媒
金属ナノ粒子の利用
アミノ酸被膜金属ナノ粒子に対するトキソプラズマと宿主細胞の感受性
ナノ粒子 EC50
(トキソプラズマ)
IC50
(宿主細胞:HFF)
IC50 / EC50
金ナノ粒子 <3 µg/ml >115 µg/ml > 38
銀ナノ粒子 <0.96 µg/ml >29 µg/ml > 30
トリプトファン被膜
金ナノ粒子
<0.1372 µg/ml >19 µg/ml >130
トリプトファン被膜
銀ナノ粒子
<0.03 µg/ml >6.211 µg/ml >200
Sulfadiazine
(トキソプラズマ薬)
<100 >500 >5
Pyrimethamine
(トキソプラズマ薬)
<1 >10 >20
特願2017-076436
クリプトスポリジウム症
激しい水溶性下痢有効な薬剤が存在しない水系感染による人獣共通感染症• 免疫不全患者で重篤• 家畜(特に仔ウシ)の斃死や生産性低下
• 1994年 神奈川県で集団感染(400人)
• 1996年 埼玉県で集団感染(8,700人:給水人口の70%)
• 河川あるいは未処理の飲用水からC. parvumを検出(Izumi et al., 2006; Ono et al., 2001; Tsushima et al., 2003 )
• 畜産動物からの散発的感染
日本におけるクリプトスポリジウム症
1994 年 アメリカウィスコンシン州で大規模集団感染患者数 403,000人
先進国のクリプトスポリジウム症
ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤 (HDACi)
金沢大学がん進展制御研究所Epigeneticsライブラリー (HDACi)
化合物数:43
• マラリア原虫• トキソプラズマ• クリプトスポリジウム
一定の抗原虫活性を持ち、かつ、宿主細胞に毒性を示さないものとして、Nullscriptを同定した。
薬剤 原虫種 EC50 IC50 (宿主細胞)
Nullscript Plasmodium 31mM -
Toxoplasma 1.1mM >50mM (HFF)
Cryptosporidium 7mM >100mM (HCT-8)
Nitazoxanide Cryptosporidium 4mM 8mM (HCT-8)
Scriptaid Cryptosporidium - 4.1mM (HCT-8)
Nullscriptの原虫および宿主に対する50%阻害濃度
EC50/IC50
-
45
14
2
-
特願2017-159087
• 世界三大感染症の1つ。
• Plasmodium属の原虫感染によって引き起こされる感染症。
• ハマダラカ属の蚊の吸血によってヒトに感染する。
• 感染者は亜熱帯や熱帯地域、特にアフリカ、南アメリカ、東南アジアに多く存在し、年間約2億人、死亡者は60〜70万人。
• 臨床症状としては、脳症、肺水腫、急性腎不全、DIC様出血傾向、重症貧血、低血糖、代謝性アシドーシス等。
• クロロキン、スルファドキシン、ピリメタミン、メフロキン等、マラリアの予防薬・治療薬に対する耐性株の出現。
• 漢方薬であるアルテミシニン(クソニンジン由来)が有効。
• ワクチンは無い。
マラリア
マラリア流行地域(高/低)クロロキン耐性スルファドキシン/ ピリメタミン耐性メフロキン耐性
マラリア流行地における薬剤耐性株の出現状況
マクロファージによるマラリア原虫寄生赤血球の貪食機構
核
マラリア原虫寄生赤血球
貪食
ゴルジ体
リソソーム
ファゴソーム
??
ファゴリソソーム
残骸
マクロファージ内で発現変動する遺伝子をマイクロアレイを用いて選別
β-Defensin 130合成ペプチド
Pazgier et al., 2005
57アミノ酸(シグナル配列は除く)システインリッチの陽イオン性低分子ペプチド
Yang et al., 2005
GVIPGQKQCIALKGVCRDKLCSTLDDTIGI
CNEGKKCCRRWWILEPYPTPVPKGKSP
0 1 2 30
20
40
60
80
100 sDEFB130
DEFB130
Log Con. mM
Inh
ibit
ion
%
培養細胞系での原虫増殖阻害効果の評価原虫増殖阻害率(%)
ペプチド濃度 log (μM)
DEFB130 sDEFB130
特願2015-233632
新技術の特徴・従来技術との比較
• トキソプラズマ症の既存薬であるpyrimethamine
は原虫の潜伏感染を誘導してしまうが、今回紹介する薬剤候補物質群は潜伏感染誘導を阻止することが可能である。
•現在有効な薬剤が存在しないクリプトスポリジウム症に対して一定の効果のある薬剤を同定した。
•マラリア原虫の薬剤耐性を解消するための薬剤選択肢が広がる。
想定される用途
•本技術の特徴を生かすためには、抗原虫薬の開発を行っている企業等が、薬剤シーズとして、化学構造等を改良の上、新規の抗原虫薬を開発するメリットが大きいと考えられる。
•上記以外に、抗ウイルス薬、抗細菌薬等の抗感染症薬の効果が得られることも期待される。
実用化に向けた課題
•実用化に向けて、感染動物実験を行い、実際に生体での薬剤シーズの抗原虫効果を解析する必要がある。
•しかし、熱帯熱マラリア原虫については、ヒトあるいはチンパンジー等にしか感染しないため、実際の抗原虫効果を確認するには治験が必要である。
•薬剤シーズの商品化を行うには、大学で行う実験系やノウハウでは限界がある。
企業への期待
•ヒト及び動物を対象とした薬剤開発の技術を持つ、あるいは、化合物ライブラリーを保有する企業との共同研究を希望したい。
•また、ヒト及び動物を対象とした薬剤を開発中の企業、動物薬分野への展開を考えている企業には、本技術の導入が有効と思われる。
• 発明の名称 :抗原虫薬のスクリーニング方法及び組換えトキソプラズマ株
• 出願番号 :特願2014-109262
• 出願人 :帯広畜産大学、鹿児島大学
• 発明の名称 :抗原虫薬
• 出願番号 :特願2015-233632
• 出願人 :帯広畜産大学
• 発明の名称 :抗トキソプラズマ剤
• 出願番号 :特願2016-166525, 2016-167695
• 出願人 :帯広畜産大学
本技術に関する知的財産権
• 発明の名称 :抗トキソプラズマ剤及びこれを含む医薬
• 出願番号 :特願2017-076436
• 出願人 :帯広畜産大学
• 発明の名称 :抗原虫作用を持つ生薬由来化合物と生薬エキス
• 出願番号 :特願2017-083202
• 出願人 :帯広畜産大学
• 発明の名称 :抗原虫作用を持つヒストン脱アセチル化酵素阻害剤
• 出願番号 :特願2017-159087
• 出願人 :帯広畜産大学
本技術に関する知的財産権
産学連携の経歴
• 2008年-2012年 生研センター イノベーション創出基礎
的研究推進事業(技術シーズ開発型
研究)に採択
• 2012年-2014年 生研センター イノベーション創出基礎
的研究推進事業(発展型研究)に採択
• 2014年-2015年 JST A-STEP事業に採択