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Imafuku S, et al. : J Eur Acad Dermatol Venereol, 28(12) , 1716 : 2014(利益相反あり) ファムビル投与患者における 帯状疱疹後神経痛の残存率 福岡大学医学部 皮膚科学教室 教授 今福 信一 先生 監 修 1) Alper BS, et al. : J Fam Pract, 49(3) , 255 : 2000 2) Tyring S, et al. : Ann Intern Med, 123(2) , 89 : 1995 帯状疱疹は年齢や性別などにより痛みの残存率が異なるが、自然経過の場合、患者の 約17~60%に発症から3ヵ月以上続く痛み、すなわち、帯状疱疹後神経痛(PHN)が残る ことが報告されている 1) 。ファムビルは海外の二重盲検比較試験でプラセボと比較して、 帯 状 疱 疹 関 連 痛が 消 失するまでの 期 間を有 意 に 短 縮することが 確 認されている (modified Bonferroni法、p=0.0202) 2) PHNは患者のQOLを著しく低下させるため、帯状疱疹の急性期にファムビルのような 抗ヘルペスウイルス薬を投与してPHNの残存を出来るだけ抑えることは、治療上、重要で ある。今回、本邦でファムビルを投与した帯状疱疹患者764名の痛みの残存率を投与後 1年間という長期にわたり調査した「FAMILIAR study」の結果の一部を解説する。本調査 は有効性解析対象764名中695名(91.0%)と脱落例が少なく、信頼性の高いデータと 考えられる。 〔 禁忌(次の患者には投与しないこと)〕 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者 87625

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Imafuku S, et al. : J Eur Acad Dermatol Venereol, 28(12), 1716 : 2014(利益相反あり)

ファムビル投与患者における帯状疱疹後神経痛の残存率

福岡大学医学部 皮膚科学教室 教授

今福 信一 先生

監 修

1) Alper BS, et al. : J Fam Pract, 49(3), 255 : 20002) Tyring S, et al. : Ann Intern Med, 123(2), 89 : 1995

 帯状疱疹は年齢や性別などにより痛みの残存率が異なるが、自然経過の場合、患者の約17~60%に発症から3ヵ月以上続く痛み、すなわち、帯状疱疹後神経痛(PHN)が残ることが報告されている1)。ファムビルは海外の二重盲検比較試験でプラセボと比較して、帯状疱疹関連痛が消失するまでの期間を有意に短縮することが確認されている

(modified Bonferroni法、p=0.0202)2)。 PHNは患者のQOLを著しく低下させるため、帯状疱疹の急性期にファムビルのような抗ヘルペスウイルス薬を投与してPHNの残存を出来るだけ抑えることは、治療上、重要である。今回、本邦でファムビルを投与した帯状疱疹患者764名の痛みの残存率を投与後1年間という長期にわたり調査した「FAMILIAR study」の結果の一部を解説する。本調査は有効性解析対象764名中695名(91.0%)と脱落例が少なく、信頼性の高いデータと考えられる。

〔禁忌(次の患者には投与しないこと)〕本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

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「用法・用量に関連する使用上の注意」腎機能障害患者投与間隔をあけて減量することが望ましい。腎機能に応じた本剤の投与量及び投与間隔の目安は右表のとおりである。血液透析患者本剤250mgを透析直後に投与する。なお、次回透析前に追加投与は行わない。

腎機能に応じた減量の目安注)

帯状疱疹の治療

1回500mgを1日3回

1回500mgを1日2回

1回500mgを1日1回

1回250mgを1日1回

≧60

40‐59

20‐39

<20

クレアチニンクリアランス(mL/分)

注)外国人における成績をもとに設定した。

「使用上の注意」(一部抜粋)重要な基本的注意(1)本剤の投与は、発病初期に近いほど効果が期待できるので、早期に投与を開始すること。なお、目安として、帯状疱疹の治療においては皮疹出現後5日以内に投与を開始することが望ましい。

(2)本剤は、原則として帯状疱疹の治療においては7日間使用すること。改善の兆しが見られないか、あるいは悪化する場合には、速やかに他の治療に切り替えること。(3)本剤は、免疫機能の低下(造血幹細胞移植、臓器移植、HIV感染による)を伴う患者に対する有効性及び安全性は確立していない。高齢者への投与本剤は主として腎臓から排泄されるが、高齢者では腎機能が低下していることが多く、高い血中濃度が持続するおそれがあるため、患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。

1.疼痛残存率

疼痛消失までの日数の 50%点は 21日であった。本剤投与開始後の疼痛残存率は 90日後では12.4%、360日後では4.0%であった。

2.年齢別 疼痛残存率

50歳以上の患者の疼痛消失までの日数は、50歳未満の患者と比べ有意に長かった(Log-rank検定、p<0.0001)。50歳以上が帯状疱疹後神経痛のリスク因子となることが確認された。

● 「警告・禁忌を含む使用上の注意」等はD.I.の頁をご参照ください。

帯状疱疹後神経痛に対するファムビルの臨床効果

■対  象:帯状疱疹患者 764名      安全性解析対象:721名 疼痛に対する有効性解析対象:695名■調査期間:2010年9月~ 2012年11月■実施施設:84施設■投与方法:通常、成人にはファムビル1回500㎎を1日3回、7日間経口投与■調査項目:1)観察期間(4週間)

患者背景、本剤の使用状況、疼痛治療の併用薬、皮膚病変の臨床経過、疼痛の臨床経過、皮膚病変の全般改善度、有害事象等

2)追跡期間(疼痛消失まで最長12ヵ月間)疼痛状況(毎月1回電話にてNRS※を用いて確認)、疼痛治療の併用薬等

※NRS(Numerical rating scale)は「痛みなし」を 0、「想像できる最大の痛み」を 10 とし、現在の痛みを 11段階の数値から答える方法

0 30 60 90 120 150 180 210 240 270 300 330 360(日)

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60

50

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20

10

(%)

疼痛残存率

ファムビル投与開始からの日数

21日

30 31.6

60 19.0

90 12.4

180 7.1

360 4.0

日数 疼痛残存率(%)

n=695Kaplan-Meier Plot

0

100

90

80

70

60

50

40

30

20

10

(%)

疼痛残存率

16日

23日

0 30 60 90 120 150 180 210 240 270 300 330 360(日)

ファムビル投与開始からの日数

50歳未満(n=187)

50歳以上(n=508)

Kaplan-Meier PlotLog-rank検定:p<0.0001

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「用法・用量に関連する使用上の注意」腎機能障害患者投与間隔をあけて減量することが望ましい。腎機能に応じた本剤の投与量及び投与間隔の目安は右表のとおりである。血液透析患者本剤250mgを透析直後に投与する。なお、次回透析前に追加投与は行わない。

腎機能に応じた減量の目安注)

帯状疱疹の治療

1回500mgを1日3回

1回500mgを1日2回

1回500mgを1日1回

1回250mgを1日1回

≧60

40‐59

20‐39

<20

クレアチニンクリアランス(mL/分)

注)外国人における成績をもとに設定した。

「使用上の注意」(一部抜粋)重要な基本的注意(1)本剤の投与は、発病初期に近いほど効果が期待できるので、早期に投与を開始すること。なお、目安として、帯状疱疹の治療においては皮疹出現後5日以内に投与を開始することが望ましい。

(2)本剤は、原則として帯状疱疹の治療においては7日間使用すること。改善の兆しが見られないか、あるいは悪化する場合には、速やかに他の治療に切り替えること。(3)本剤は、免疫機能の低下(造血幹細胞移植、臓器移植、HIV感染による)を伴う患者に対する有効性及び安全性は確立していない。高齢者への投与本剤は主として腎臓から排泄されるが、高齢者では腎機能が低下していることが多く、高い血中濃度が持続するおそれがあるため、患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。

観察期間中の疼痛治療薬の使用状況疼痛治療薬の使用状況を調査した結果、鎮痛薬を使用した患者は 576 名(79.9%)であった。疼痛治療薬の内訳

(重複あり)は、NSAIDs 490名(68.0%)、アセトアミノフェン137名(19.0%)、ステロイド 88名(12.2%)、プレガバリン 58名(8.0%)であった。

本試験の副作用721例中5例(0.7%)に 6件(倦怠感、浮動性めまい、嘔吐、腹部不快感、蕁麻疹、痙攣が各1件)の副作用が認められた。うち嘔吐、痙攣は重篤であったが、いずれも本剤投与中止後に回復した。

3.初診時の疼痛重症度別 疼痛残存率

疼痛消失までの日数は、初診時の疼痛重症度に比例して有意に延長した(Log-rank検定、p<0.0001)。急性期の疼痛の重症度が帯状疱疹後神経痛のリスク因子であることが確認された。

帯状疱疹後神経痛に対するファムビルの臨床効果

●初診時の疼痛の重症度は以下の 4段階で評価した。

軽微:ときとして忘れるくらいの痛み  軽度:痛みはあるが、我慢できる

中等度:身のまわりのことはできるが、仕事には大いに影響する   高度:耐えられない痛み

「ファムビル錠250㎎ 帯状疱疹後神経痛に関する特定使用成績調査集計結果のお知らせ」より

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(%)

疼痛残存率

ファムビル投与開始からの日数

14.5日

18日26日

66日軽微(n=99)

軽度(n=370)

中等度(n=176)

高度(n=21)

(疼痛重症度が判定できなかった29名を除く)Kaplan-Meier Plot

Log-rank検定:p<0.0001

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