抗レトロウイルス療法の開始...2017/10/17  · ee or te e o tretror et t oecet t...

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Guidelines for the Use of Antiretroviral Agents in Adults and Adolescents Living with HIV 31 October 17, 2017 抗レトロウイルス療法の開始 (2017 年10 月17 日改訂、2017 年10 月17 日見直し) 当委員会による推奨 •  抗レトロウイルス療法(ART)は、HIV 感染症に関連する罹患率および死亡率を減少させるためにCD4 陽 性 T リンパ球数の多寡にかかわらずすべての HIV 保有者に推奨される (AⅠ) •  ART は、HIV の伝播を予防するためにも HIV 保有者に推奨される (AⅠ) •  ART を開始するにあたり、ART のベネフィットと検討事項について患者を教育し、アドヒアランスを最良 な状態にする戦略に取り組むことが重要である。状況によっては、臨床的および /または心理社会的要因 により ART 開始を遅らせることもあるが、治療は可及的速やかに開始しなければならない。 推奨評価:A=強い推奨、B=中程度の推奨、C=任意 エビデンスの評価: Ⅰ = 無作為化比較試験のデータ、Ⅱ = 長期的臨床転帰が示された適切にデザインされた非無作為化試験または観察 コホート研究のデータ、Ⅲ=専門家の見解 はじめに 治療を行わなければ、HIV保有者のほとんどは最終的にCD4陽性Tリンパ球(CD4)数欠乏が示す進行性の免 疫抑制状態に陥り、AIDS 指標疾患および早期死亡へと至る。抗レトロウイルス療法(ART)の第一の目標は HIV に関連した病態および死亡を予防することにある。この目標を実現するには、有効な ART によって HIV 複製を最 大限抑制し、血漿中 HIV-1 RNA 値(ウイルス量)を市販されている検査の検出限界未満に維持するのが最も効果 的である。持続的なウイルス抑制は免疫機能および QOL(quality of life)を改善し、AIDS 指標疾患か否かにかか わらず合併症の発症リスクを低減し、余命を延長する。 さらに、血漿中HIV-1 RNA高値はHIV 伝播の重要な危険因子のひとつであり、有効なARTを用いることに よって、ウイルス血症や性的パートナーへの HIV 伝播を抑制することが可能である 1, 2 。モデリング研究で示唆さ れているように、ART の拡大利用により、地域レベルまたは人口レベルで HIV 新規感染率が低下し、最終的には 有病率も低下すると考えられる 3 。したがって、ART の第二の目標は HIV 伝播リスクを抑えることである。 従来、HIV保有者はCD4数が低下した状態で受診するのが常であった 4 が、高リスク者に対する検査を増や すとともに、進行 HIV 疾患に至る前に HIV 保有者に医療を受けさせようという、一致した努力が行われている。 CD4 数が減少するまで ART の開始を延期するとAIDS 指標疾患および AIDS 以外の重篤な疾患の罹患リスクが上 昇する。さらに、CD4 数の回復の速さは、ART 開始時の CD4 数と直接相関している。その結果、CD4 数が 350 個 /mm 3 未満の状態で治療を開始すると、ART 開始後 10 年経過してもCD4 数が 500 個 /mm 3 を超えることは決し てなく 5, 6 、より高い CD4 数の閾値で治療を開始した患者に比べて余命が短い 5-7 ART 開始の最適な時期を明らかにするために 2 件の大規模無作為化比較試験、START 試験 8 と TEMPRANO 試験 9 が実施され、CD4 数が 500 個 /mm 3 超の HIV 保有者のうちARTを即時開始する群に無作為割り付けされた 患者では、開始を遅らせた群(詳細は後述する)の患者に比べて、罹患率と死亡率が約 50%減少することが明らか になった。上記の理由により、「成人および青少年に対する抗レトロウイルス薬に関するガイドライン専門委員会」 (当委員会)は、CD4 数の多寡にかかわらずすべての HIV 保有者に対して ARTを速やかに開始することを推奨し ている (AⅠ) 。ART の早期開始は、後述するような特定の臨床症状がみられる患者にとっては非常に重要である。 ART開始を決定する際には常に患者の併存疾患を検討し、患者が積極的に治療を開始しようとする意思を 示し準備が整うことが必要である。したがって、状況によっては、臨床的および /または心理社会的要因により ART 開始を遅らせることもあるが、治療は可及的速やかに開始しなければならない。

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抗レトロウイルス療法の開始 (2017年10月17日改訂、2017年10月17日見直し)

当委員会による推奨

• �抗レトロウイルス療法(ART)は、HIV感染症に関連する罹患率および死亡率を減少させるためにCD4陽性Tリンパ球数の多寡にかかわらずすべてのHIV保有者に推奨される(AⅠ)。• ARTは、HIVの伝播を予防するためにもHIV保有者に推奨される(AⅠ)。• �ARTを開始するにあたり、ARTのベネフィットと検討事項について患者を教育し、アドヒアランスを最良な状態にする戦略に取り組むことが重要である。状況によっては、臨床的および/または心理社会的要因によりART開始を遅らせることもあるが、治療は可及的速やかに開始しなければならない。

推奨評価:A�=�強い推奨、B�=�中程度の推奨、C�=�任意エビデンスの評価:Ⅰ�=�無作為化比較試験のデータ、Ⅱ�=�長期的臨床転帰が示された適切にデザインされた非無作為化試験または観察コホート研究のデータ、Ⅲ�=�専門家の見解

はじめに 治療を行わなければ、HIV保有者のほとんどは最終的にCD4陽性Tリンパ球(CD4)数欠乏が示す進行性の免疫抑制状態に陥り、AIDS指標疾患および早期死亡へと至る。抗レトロウイルス療法(ART)の第一の目標はHIVに関連した病態および死亡を予防することにある。この目標を実現するには、有効なARTによってHIV複製を最大限抑制し、血漿中HIV-1 RNA値(ウイルス量)を市販されている検査の検出限界未満に維持するのが最も効果的である。持続的なウイルス抑制は免疫機能およびQOL(quality of life)を改善し、AIDS指標疾患か否かにかかわらず合併症の発症リスクを低減し、余命を延長する。

 さらに、血漿中HIV-1 RNA高値はHIV伝播の重要な危険因子のひとつであり、有効なARTを用いることによって、ウイルス血症や性的パートナーへのHIV伝播を抑制することが可能である1, 2。モデリング研究で示唆されているように、ARTの拡大利用により、地域レベルまたは人口レベルでHIV新規感染率が低下し、最終的には有病率も低下すると考えられる3。したがって、ARTの第二の目標はHIV伝播リスクを抑えることである。

 従来、HIV保有者はCD4数が低下した状態で受診するのが常であった4が、高リスク者に対する検査を増やすとともに、進行HIV疾患に至る前にHIV保有者に医療を受けさせようという、一致した努力が行われている。CD4数が減少するまでARTの開始を延期するとAIDS指標疾患およびAIDS以外の重篤な疾患の罹患リスクが上昇する。さらに、CD4数の回復の速さは、ART開始時のCD4数と直接相関している。その結果、CD4数が350個/mm3未満の状態で治療を開始すると、ART開始後10年経過してもCD4数が500個/mm3を超えることは決してなく5, 6、より高いCD4数の閾値で治療を開始した患者に比べて余命が短い5-7。

 ART開始の最適な時期を明らかにするために2件の大規模無作為化比較試験、START試験8とTEMPRANO試験9が実施され、CD4数が500個/mm3超のHIV保有者のうちARTを即時開始する群に無作為割り付けされた患者では、開始を遅らせた群(詳細は後述する)の患者に比べて、罹患率と死亡率が約50%減少することが明らかになった。上記の理由により、「成人および青少年に対する抗レトロウイルス薬に関するガイドライン専門委員会」

(当委員会)は、CD4数の多寡にかかわらずすべてのHIV保有者に対してARTを速やかに開始することを推奨している(AⅠ)。ARTの早期開始は、後述するような特定の臨床症状がみられる患者にとっては非常に重要である。

 ART開始を決定する際には常に患者の併存疾患を検討し、患者が積極的に治療を開始しようとする意思を示し準備が整うことが必要である。したがって、状況によっては、臨床的および/または心理社会的要因によりART開始を遅らせることもあるが、治療は可及的速やかに開始しなければならない。

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当委員会の推奨 ARTは、HIV感染に関連する罹患率および死亡率を減少させるためにCD4数の多寡にかかわらずすべてのHIV保有者に推奨される(AⅠ)。ARTは、HIVの伝播を予防するためにもHIV保有者に推奨される(AⅠ)。ARTを開始するにあたり、ARTのベネフィットについて患者を教育し、アドヒアランスの障害となる問題に対処してアドヒアランスを最良な状態にする戦略を推奨することが重要である。状況によっては、臨床的および/または心理社会的要因によりART開始を遅らせることもあるが、治療は可及的速やかに開始しなければならない。患者は、現行のARTではHIVは治癒しないことも理解する必要がある。免疫機能を改善し維持するため、そしてウイルス抑制を維持するためにARTは無期限に継続されなければならない。

 ARTはすべての患者に推奨されるが、以下の症状がみられた場合は治療開始の緊急性が高まる。

• 妊娠(HIV保有妊婦の管理について、推奨内容の詳細は、「Perinatal Guidelines[周産期ガイドライン]」を参照のこと)10

• AIDS指標疾患、HIV関連認知症(HAD)およびHIV関連悪性腫瘍を含む• 急性日和見感染症(下記の検討を参照されたい)• CD4数が少ない場合(例えば200個/mm3未満)• HIV関連腎症(HIVAN)• 急性および早期の感染(詳しくは「急性および最近(早期)のHIV感染症」[111ページ]を参照のこと)• B型肝炎ウイルス(HBV)/HIVの重複感染• C型肝炎ウイルス(HCV)/HIVの重複感染

急性日和見感染症と悪性腫瘍 有効な治療法のないAIDS関連日和見疾患(クリプトスポリジウム症、ミクロスポリジウム症、進行性多巣性白質脳症など)を有する患者では、ARTにより免疫応答が改善すれば転帰改善の可能性があるため、可及的速やかに治療を開始すべきである。軽度または中等度の皮膚カポジ肉腫を有する患者には、化学療法を伴わないARTを単独で速やかに開始することがカポジ肉腫病変の改善と相関する。免疫再構築症候群(IRIS)が発現し、カポジ肉腫病変が初期に一過性に進行したとしてもARTを開始すべきである11。同様に、ART開始後の非ホジキンリンパ腫にIRIS様の病態が発現したとしても12、ARTが媒介する強力なウイルス抑制は、AIDSリンパ腫の治療を受けている患者の生存期間の長期化と相関する13。化学療法の薬剤と一部の抗レトロウイルス薬(特に一部の非核酸系逆転写酵素阻害薬[NNRTI]およびリトナビルやコビシスタットでブーストした処方)の間で重大な相互作用が起こる可能性があることからARTを選択する際には薬物相互作用を考慮しなければならない。しかしながら、悪性腫瘍と診断された場合はARTの開始を遅らせてはならないし、ARTの開始によって悪性腫瘍の治療が遅れることがあってはならない。

 クリプトコックス髄膜炎および結核性髄膜炎など、すぐにARTを開始すると重篤なIRISを生じるリスクが高いと思われる日和見感染症がある場合は、ARTを開始する前に短期間治療を遅らせてもよいかもしれない14-17。頭蓋内感染症のある患者にARTを開始する場合は、IRISに関連する徴候や症状の有無を子細にモニターする必要がある。ニューモシスチス肺炎など、上記以外の日和見感染症が認められる場合は、早期にARTを開始することで生存率が向上するため18、治療を遅らせるべきではない。

 活動性非髄膜性結核を有する患者には、結核治療中にARTを開始すると生存率が有意に改善するため19-23、「結核とHIVの重複感染」(160ページ)で推奨されているようにARTを開始すべきである。

 特定の日和見感染症が認められる場合のART開始時期については、「Guidelines for Prevention and Treatment of Opportunistic Infections in HIV-Infected Adults and Adolescents(成人および青少年HIV感染者における日和見感染症の予防法と治療法に関するガイドライン)」11に詳しいため、そちらを参照されたい。

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HIV感染症の早期診断の必要性 本ガイドラインが推奨する早期ART開始の基本的前提は、HIVを早期に診断することである。残念ながら、HIV保有者はHIV感染が進行するまで診断されないことがある。感染リスクの認識の有無にかかわらず、本人が拒否しなければHIVスクリーニング検査を医療施設で日常的に実施する(opt-out)ことを推奨し24、初回来院時のCD4数は徐々に増加しているが、新規診断例のCD4数の中央値は350個/mm3未満にとどまっている4。他の集団に比べてHIV診断が遅れがちなのは、白人以外の人種、薬物注射使用者、高齢者であり、これらの患者集団では診断後1年以内にAIDS指標疾患を発症する患者がかなりいる25-27。したがって、本ガイドラインの影響を最大限に発揮するためには、現行の米国疾病予防管理センター(CDC)の推奨に従ってHIVスクリーニング検査を実施することが不可欠である。特に重要なのは、すべての新規診断患者に対してHIV疾患に関する教育を実施し、詳細に評価し、経過観察し、管理するために可及的速やかにケアに結びつけることである。さらにケアを開始した後も、早期の診断と治療による十分なベネフィットをHIVを保有する患者とその性的パートナーの両者が得られるように、ARTを開始し患者を医療につなぎとめるために集中的な努力を払う必要がある(「ケア継続に向けたアドヒアランス」[166ページ]を参照)。

症状の発現と死亡を予防する抗レトロウイルス療法のベネフィットを支持するエビデンス ARTを開始する至適時期の定義について複数の観察研究においては一貫性がみられないものの28-31、複数の無作為化比較試験が、疾患の進行状態にかかわらずすべてのHIV保有者に対してARTを開始しなければならないことを、現在明らかにしている。CD4数が少ない患者では、日和見感染症、非AIDS疾患、および死亡の絶対的リスクが最も高く、こうした患者に対するARTの開始は最も緊急性を要する。CD4数が200個/mm3未満の患者および/またはAIDS指標疾患の既往のある患者ではARTにより生存率が改善し疾患進行を遅らせることが無作為化比較試験によって長い間示されてきた18, 32。さらに、ハイチで実施された無作為化比較試験では、CD4数が200 ~350個/mm3の時点でARTを開始した患者の方が、CD4数が200個/mm3未満に低下するまで治療を延期した患者に比べて、生存期間が長いことが示された33。ごく最近公表されたSTART試験およびTEMPRANO試験では、CD4数の多寡にかかわらずすべての患者にARTを開始する(AⅠ)という当委員会の推奨の根拠となるエビデンスを提供している。これら2件の試験結果の概要を下記に示す。

 START試験は、大規模、多国籍、無作為化比較臨床試験であり、無症状のHIV保有者に実施した早期ARTが、複合臨床評価項目であるAIDS指標疾患、重篤な非AIDSイベント、または死亡の減少に及ぼした効果を評価するようにデザインされた試験である。この試験では、CD4数が500個/mm3超でART未経験の成人(年齢18歳超)を対象とし、無作為化直後にARTを開始する群(即時開始群)とCD4数が350個/mm3未満に低下するか治療すべき臨床症状が発現するまで待つ群(遅延開始群)に無作為に割り付けた。4,685例を組み入れ、平均観察期間は3年であった。各々の群が終了した時点で、主要評価項目である重篤なAIDSまたは非AIDSイベントは即時開始群で42例(1.8%、あるいは0.60件/100人–年)、遅延開始群で96例(4.1%、あるいは1.38件/100人–年)(ハザード比[HR]0.43、早期ART開始が望ましい[95%信頼区間(CI):0.30 ~0.62、P <0.001])と報告された。最も多く報告された臨床イベントは結核とAIDSおよび非AIDS悪性腫瘍であった。遅延開始群での臨床イベントの多く(59%)は、CD4数がまだ500個/mm3以上を保っている患者に発症しており、CD4数がこの閾値を下回る前に即時にARTを開始するベネフィットの根拠を示している。さらに、ART即時開始のベネフィットは、男性、女性、高齢者、若年者、血漿中HIV RNA量の多い被験者、少ない被験者、高所得国に住んでいる被験者、低/中所得国に住んでいる被験者など解析したすべての被験者サブグループに共通していることが明らかとなった。START試験には、それぞれの臨床イベントについてART即時開始のベネフィットを分析する力はないが、そのベネフィットが特に大きかったのは、AIDSイベント(HR 0.28、[95% CI:0.15 ~0.50、P <0.001])、結核(HR 0.29、

[95% CI:0.12 ~0.73、P = 0.008])、悪性腫瘍(HR 0.36、[95% CI:0.19 ~0.66、P = 0.001])であった。重要なことは、即時ARTが重篤な非AIDSイベントをも全体として有意に減少させたことである(HR 0.61、[95% CI:0.38

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~0.97、P = 0.04])8。

 TEMPRANO ANRS 12136試験はコートジボワールで実施された無作為化比較試験である。2×2要因デザイン(two-by-two factorial design)を用い、CD4数が800個/mm3未満のHIV保有被験者を対象としART即時開始群と遅延群のいずれかに無作為に割り付けた(治療開始にあたり国のガイドライン基準に基づいている)。各群の半数には結核予防のためにイソニアジドを6 ヵ月間投与し、残りの半数には投与しなかった。試験の主要評価項目は全原因死亡、AIDS疾患、非AIDS悪性腫瘍、非AIDS浸潤性細菌感染症の組み合わせであった。2,000例以上を試験に組み入れ、観察期間の中央値は30 ヵ月であった。ベースライン時のCD4数が500個/mm3を超える849例のうち主要評価項目のイベントが61患者に68例報告された。主要イベントのリスクはART即時開始群の方が遅延開始群より低く、HRは0.56で早期ARTが望ましい(CI:0.33 ~0.94)ことを示した。このような結果に基づき、研究者らは早期ARTにはこうした臨床イベントを減少させるベネフィットがあると結論づけた9。

 TEMPRANO試験とSTART試験は、CD4数が500個/mm3超のHIV保有者に対する即時ARTには防御効果があるという非常によく似た評価をもたらした。これはCD4数の多寡にかかわらずすべての患者にARTを開始するという当委員会の推奨をさらに強く支持している。

抗レトロウイルス療法の早期開始によるウイルス抑制の達成後も長期にわたり続く理論的ベネフィット START試験とTEMPRANO試験によりCD4数が500個/mm3超のHIV保有者に対する即時ART開始に明らかなベネフィットが示されたが、早期にARTを開始するベネフィットがウイルス抑制の達成後も長く継続するのは当然のことと思われる。「ウイルス抑制が得られたにもかかわらずCD4陽性Tリンパ球数の回復が不十分で炎症が持続する場合」(95ページ)の項で詳しく述べられているように、抑制効果のあるARTを実施しているにもかかわらず低CD4数が持続し、免疫活性および炎症の異常な高レベル状態が持続すると、AIDSイベントのみならず腎疾患、肝疾患、心血管疾患、神経学的合併症、悪性腫瘍などの非AIDSイベントのリスク上昇を予測する。早期のART開始により、正常なCD4数、正常なCD4/CD8の割合、低レベルの免疫活性および炎症に至る可能性が高まると考えられる34-39。数年あるいはそれ以上治療を遅らせた患者に比べて非常に早期(感染後6 ヵ月以内)にARTを開始した患者では、ARTを介したウイルス抑制を実施している間は免疫活性の低下および免疫機能の改善(ワクチン応答により評価)も達成できると考えられる40-42。決定的な無作為化比較試験において論拠が示されているわけではないが、ARTを早期に開始すると、結果として治療中に免疫不全が改善する可能性があり、理論的には今後数十年にわたって疾患リスクを低下させる可能性がある。

HIV伝播を予防するための抗レトロウイルス療法利用を支持するエビデンス

性行為による伝播の予防 生物学的、生態学的および疫学的研究を含む多数の研究と、1件の無作為化臨床試験により、HIV保有者を治療することで性行為によるHIV伝播を大幅に予防できることが裏付けられている。血漿中HIV RNA量が減少するに伴い、性器分泌物中のウイルス濃度も低下する43, 44。HIV陽性者と陰性者の男女カップルを対象とした研究では、血漿中ウイルス量とHIV伝播リスクの間に関連性があることが示されており、血漿中HIV RNA量が少ないと伝播が生じる頻度も少なくなる1, 2。

 HPTN 052試験は、HIV陽性者と陰性者のカップル1,763組を対象とした多大陸間試験であり、非常に重要である。HIVを保有するパートナーはART治療歴がなく、組み入れ時のCD4数は350 ~550個/mm3であった。試験では、HIVに感染していないパートナーへのHIV伝播について、HIV保有パートナーに直ちにARTを開始した場合と治療を延期した場合(CD4数が250個/mm3未満になるまで開始しない場合)とでその影響を比較した45。試験組み入れ時、被験者の97%は一夫一妻的関係にある男女であった。被験者全員に対し、行動修正とコンドーム使用に関するカウンセリングが行われた。試験期間中に、HIV伝播に至る事象が28件確認されたが、このうち早期治療群に生じたのは1件のみであった。この早期ART開始に伴う96%の伝播抑制は統計的に有意であった

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(HR 0.04、[95% CI:0.01 ~0.27、P <0.001])。この研究の最終的結果によると、HIV保有パートナーが処方通りにARTを受けてウイルス量が抑制できている場合、カップル間でのHIV伝播は一貫して93%減少することが認められた2。HIV保有パートナーのART開始後にカップル間でHIV伝播がみられたのは8例にすぎないことは注目すべきである。4例の伝播はHIV保有パートナーのウイルス抑制が達成される前に発生し、他の4例の伝播はウイルス学的に失敗している間に発生した。これらの結果が示すように、ウイルス抑制効果のあるARTは、これまでに研究されてきた他のあらゆる行動的・生物医学的予防介入に比べてHIV伝播予防効果が高い。本研究だけでなく、他の観察研究やモデル解析でも、ART開始後にHIV陽性者と陰性者の男女カップルのHIV伝播率が低下することが示されており、これらの研究では、ほかに性感染症を併発していないART遵守例の場合、ウイルス血症を抑制することでHIV伝播リスクが大幅に低下することが示されている3, 46-49。HPTN 052は男女カップルを対象に実施されたもので、同性愛者間の曝露や注射針の共有による伝播リスクの高い集団を対象とした研究ではなく、ARTのアドヒアランスは良好でほぼ完璧であった。それでも、HPTN 052で認められた有効なARTによるHIV伝播予防効果は、他の症例にも広く適用できると考えられる。したがって、当委員会では、性的パートナーへのHIV伝播リスクが高い患者に対し、ARTを提供することを推奨する(AⅠ)。医師は、治療がもたらしうる個人的なベネフィットや公衆衛生上のベネフィット、処方された治療法を遵守することの必要性について患者と話し、ARTがコンドーム使用や行動修正の代用ではないこと、ARTに他の性感染症を予防する効果はないことを忠告すべきである。

周産期伝播予防 上記のように、有効なARTにはHIV伝播を抑制する効果がある。この効果が最も如実に、確実に現れる例は、周産期HIV伝播予防のために妊婦にARTを実施した場合である。HIV複製の効果的な抑制は周産期伝播低減の重要な決定要因のひとつである。出産間際のHIV RNA値が50コピー/mL未満の場合、妊娠期間中のART併用療法により周産期HIV伝播率が約20 ~30%から0.1 ~0.5%にまで低下する50, 51。したがって、母体の健康および新生児へのHIV伝播を予防するためにすべてのHIV保有妊婦に対してARTが推奨される。ART経験のない妊婦には、妊娠期間を通して血漿中のウイルス量を抑制するために可及的速やかにARTを開始しなければならない

(「Perinatal Guidelines[周産期ガイドライン]」を参照)。

抗レトロウイルス療法を開始する際の検討事項 現在、本ガイドラインで推奨されている治療経験のない患者に対するART処方(「どの処方で開始すべきか」

[41ページ]を参照)は、処方を遵守する患者のほとんどにおいてウイルス量を定量レベル未満に抑制しそれを維持することが可能である。推奨処方の多くは、錠剤数が少なく忍容性に優れている。いったん治療を開始したら、患者はARTを生涯継続しなければならない。

アドヒアランスを最良の状態に保ちケアにつなぎとめること ウイルス抑制とその維持を目的とするARTを成功させるキーポイントは処方に対するアドヒアランスである。治療失敗とその結果生じる薬剤耐性変異は将来の治療選択を複雑にすることがある。アドヒアランスを最良の状態に保ちケアにつなぎとめておくことは、ARTの開始時期を問わず非常に重要であるが、これまでのエビデンスによると、ARTを早期に開始した患者に比べて感染後時間がたってから治療を開始した患者に薬剤耐性がより頻繁に発現することが明らかにされている52。START試験8とTEMPRANO試験9では、ART即時開始群に無作為に割り付けられた患者はART遅延開始群の患者より高い確率でウイルス抑制を達成した。しかしながら、アドヒアランスを最良の状態に保ち、ケアを継続する戦略についてART開始前に患者と話し合うことは重要である。

 複数の臨床的、行動的、社会的要因がアドヒアランス不良に関連しており、これには、未治療の重要な精神障害、神経認知機能障害、物質乱用中であること、居住地が定まらないこと、社会的状況が良くないこと、副作用に対する患者の懸念、受診不良などが挙げられる。治療開始前にも開始した後も、医師はアドヒアランス改善に

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必要な介入領域がないかどうか確認することが必要である。アドヒアランス改善のための戦略については、「ケア継続に向けたアドヒアランス」(166ページ)で論じる。しかし臨床医はARTに対するアドヒアランスを必ずしも正確に予測できるわけではなく、多少アドヒアランスが不良であっても薬剤耐性が存在しても、ARTは罹患率と死亡率を低減させる。したがって、精神疾患、物質乱用、心理社会的困難は患者に対してARTを保留する理由にはならない。むしろ、こうした問題はアドヒアランスを支援する新たな介入の必要性を示しており、推奨すべきART処方の種類を示している可能性もある(「どの処方で開始すべきか」[41ページ]を参照)。

HIVと診断された当日直ちに抗レトロウイルス療法を開始 最初のHIV診断(または最初の受診)とARTが処方されるまでの間に遅滞がある場合、受診者の多くがケアされないことがあるため、HIVと診断された当日直ちにART開始を提案している医療者の一団がある。これは患者をケアにつなぎとめARTによるウイルス抑制を達成し、それを持続させる患者の割合を増加させる戦略である。近年、南アフリカにおいてHIVと診断されたばかりの377人を対象にした無作為化試験が実施され、この戦略が試験された。診断当日直ちにARTを受けるように無作為割り付けされた患者は、10 ヵ月目の時点で、通常のケアに無作為割り付けされた患者(ART開始前2 ~4週間にわたりアドヒアランスのカウンセリングのために3 ~5回追加受診)よりも、ウイルス量が抑制される可能性が有意に高かった(64対51%)53。ハイチで最近実施されたART即日開始の無作為化比較試験では、ケアにつなぎとめた参加者において1年後のウイルス抑制の達成と生存の両方の割合が南アフリカの試験と同等に改善したことが報告された54。南アフリカとハイチにおける保健医療システム、ケアの継続に対する構造的バリア、HIVと結核の蔓延には米国と異なる点が多く、こうした研究結果を米国に当てはめて一般化するには制約があるが、ARTの即日開始は適切で臨床結果を改善する可能性があることを示唆している。米国では無作為化比較試験は実施されていないものの、39人を対象としてサンフランシスコで最近実施されたパイロット試験では、HIV診断当日にARTを開始すると、ウイルス抑制を達成するまでの時間が多少短縮されうることが示唆された55。HIV診断当日にARTを開始することは、資源集約的であり、それには“オンコール”の医師、看護師、ソーシャルワーカー、患者の移送を手配する研究室スタッフが必要で、臨床評価、カウンセリング、保険補償範囲の拡大、臨床検査、今後のケアに確実につなぎとめるシステムも必要となることが強調されなければならない。こうした資源が必ずしも準備できるわけではなく、HIV診断当日にARTを開始することの長期的な臨床ベネフィットは米国においてはいまだ証明されておらず、このアプローチは検討中である。

特別な患者集団に対する検討事項

エリートHIVコントローラー ごく少数のHIV保有者は、ARTを実施しなくても長年にわたって血漿中のHIV RNA量を定量レベル未満に保っている。こうした患者は「エリートHIVコントローラー」と呼ばれている56, 57が、このような患者におけるARTの役割については限られたデータしかない。START試験とTEMPRANO試験の結果からCD4数の多寡にかかわらずARTに明らかなベネフィットがあることを踏まえると、初回診断後に患者がエリートコントローラーになるかどうかを見極めるために、ARTを延期するのは、非常に残念である。しかし、ARTを実施していなくても長年にわたってウイルス量が検出限界未満に保たれているエリートコントローラーに対する最適な管理方法については不明な点が多い。エリートコントローラーであってもHIVの複製が進んでいることを考えると、CD4数の減少あるいはHIV関連合併症の進展で定義されるHIV疾患の進行が認められる場合にはARTは確かに推奨される。正常なCD4数を維持しているエリートコントローラーでも異常に高い免疫活性やアテローム性動脈硬化症の代理マーカーのエビデンスが認められる。これらのエビデンスは非AIDS関連疾患のリスクを上昇させる可能性がある56, 58-60。1件の観察研究では、一般集団およびART治療中の患者に比べてエリートコントローラーは心血管疾患および呼吸器疾患で入院する頻度が多いことが示唆されている61。さらに、CD4数を維持しているエリートコントローラーにARTを開始すると免疫活性化が低下すると考えられており、治療にベネフィットがある可能性を示唆している62。エリートコントローラーにARTを実施した場合、その免疫学的ベネフィットの可能性が

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ART毒性の可能性を上回り、その結果として臨床的ベネフィットとなるのか否かについては明らかではない。残念なことに、この問題に取り組んだ無作為化比較試験は、ありえないほど少数のエリートコントローラーを対象にしている。START試験は、ウイルス量が非常に少ない患者を多く対象としており、ウイルス血症の程度にかかわらずART即時開始のベネフィットを明らかにしたが、十分な人数のエリートコントローラーを対象にしておらず、この特殊な集団に対するARTの臨床的影響を決定的に確信するには至っていない。しかし、血漿中HIV RNA量が検出限界未満であってもエリートHIV保有者にARTを処方する明確な理論的根拠がある。もしエリートコントローラーに対するARTを保留するのであれば、CD4数の減少がないか、ウイルス管理ができているか、HIV感染に関連する合併症がないか等について細かく観察する必要がある。

青少年のHIV保有 START試験もTEMPRANO試験も青少年を組み入れていない。すべての患者にARTを開始するという当委員会の勧告は、成人と同様に青少年も早期ARTのベネフィットを受けるであろうという予測に基づいて、青少年に当てはめている。従来、成人に比べて青少年ではARTのアドヒアランスがかなり不良でウイルス抑制レベルもかなり低く、最初のウイルス抑制後にウイルス量のリバウンドが高率に発生することが実証されている63。若年者はアドヒアランスに対してさまざまな心理社会的およびその他の障害に直面することが多いため、ARTの開始を決定する際には、治療を遵守する若年者の能力を注意深く考慮しなければならない。青少年のなかには治療の開始に消極的な場合もあるかもしれないが、医師は、治療を受けることに対する障害およびアドヒアランスの障害をそれぞれ評価し対処する有効な介入を実施しながらARTを提供する必要がある。若年者に対するARTのベネフィットを最大にするために多分野からなるケアチームによる心理社会的支援およびアドヒアランス支援の提供が必要である(「青少年および若年成人のHIV保有者」[118ページ]を参照)64。

結論 決定的な無作為化比較試験の結果によって、CD4数の多寡にかかわらずすべてのHIV保有者にARTを開始するという当委員会の推奨は支持されている。HIV感染の早期診断とそれに続く迅速なARTの開始には、HIV保有者の罹患率と死亡率を低減させ、性的パートナーへのHIV伝播を抑制する明らかな臨床的ベネフィットがある。特別な臨床的、心理社会的要因があって、やむを得ずARTが短期間延期される場合があるかもしれないが、ARTは可及的速やかに開始されなければならない。医師は、ARTのベネフィットとリスクおよびアドヒアランスの重要性を患者に説明する必要がある。

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