サンフランシスコ湾の現状 - WAVE · 2011. 6. 22. ·...
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ゴールデンゲートブリッジ
南北方向 :80km (東京湾80km)幅 :東西 大21km (30m)平均水深 :11m (45m)湾面積 :1,222km2 (1,380km2)
湾口幅 :約2km (10km以上)サンフランシスコ湾
2.サンフランシスコ湾の再生
SAN FRANCISCOOAKLAND
SAUSALITO
SAN JOSE
SanFrancisco
Bay
SanPablo
BaySuisun Bay
サウスベイ
ベイモデル・センター オークランド港
ソノマ・ベイランズ
ハミルトン地区
SAN FRANCISCO
OAKLAND
SAUSALITO
SAN JOSE
SanFrancisco
Bay
SanPablo
BaySuisun Bay
サンフランシスコ湾の現状
■埋立・湾面積 1849年:2,040km2 、1965年:1,420km2
・1800年→1998年 塩性湿地の90%が埋立・干拓・塩田に
・商務省レポート「サンフランシスコ湾の開発の将来 1960-2020」
→湾が川のように変貌 →住民の危機意識の高まり
■環境の悪化・水質・底質の悪化(水銀、農薬、PCB類など)
・開発による塩性湿地の消失
・土砂の堆積など(金の採掘に伴う土砂・水銀の流入)
・生態系の劣化(105種の動植物が絶滅危惧種・希少種)
商務省レポート (1960) (2020) 60%を埋立
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サンフランシスコ湾での塩性湿地の減少 湾の開発の推移(1800年と1998年)
農地
埋立
締切湿地
塩田
干潟塩性湿地
Tidal Flat(干潟) Tidal Marsh(塩性湿地)Tidal Flat(干潟)
2.1 BCDCとベイプラン
■SSFBA (Save San Francisco Bay Association)・ 1961年 サンフランシスコ湾を救う市民連合 設立
・カリフォルニア大学バークレー校「サンフランシスコ湾の将来」を発刊し、湾を一体のものとした総合的湾管理計画の策定・実施の委員会の創設を提言
■法律と計画・1965年 マッカティア・ペトリス法(McActeer Petris Act) 州法
BCDC(サンフランシスコ湾保全開発委員会)設立、
・1969年 BCDCがSan Francisco Bay Plan策定
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BCDC■BCDCの組織
San Francisco Bay Conservation and Development Commission27人(連邦政府2 (EPA,陸軍工兵隊),州政府5,地方政府13,州議会2,住民5 )委員長-副委員長-/管理/情報技術/浚渫/計画/法律/許認可
補助組織-市民諮問委員会/設計検討審議会/工学的基準検討審議会
■BCDCの役割
・湾計画の策定、実施の責任
・埋立、浚渫の許認可の権限
・湾岸開発の許認可
■対象範囲海域、特定の河川、塩性湿地、湾岸線から陸地に30mの範囲
■申請の許認可 (1970-2004)認可 7,000件、 非認可 37件
ベイプランの概要
■ベイプランの目的①偉大な自然としての湾を現在及び将来の世代のために保護する。
②埋立を 小限にくいとめ、湾及び湾岸地域の持つポテンシャルを 大限まで開発する。
■基本スタンス・湾の水域は一体のものとして扱うべきであり、ある地域に影響を与える
行為はほかにも影響を与えうる。
・水質・公害規制は湾地域管理評議会、陸軍工兵隊などで取り扱う
■ベイプランの内容(計画案)・湾及び湾岸部の将来の利用方針とその計画地図
・港湾の拡大/船舶航路の掘り下げ/水関連工業用の沿岸地域の確保/レクレ-ション開発/将来の空港計画/野生生物保護区/民間投資による住宅開発
大規模な再生の時代へ
■BCDC・ベイプランの成功と限界・湾での大規模な埋立と劣化を確実に食い止めた。
・開発行為は堤防内側に残る湿地の埋立に向かった。湾の保護・再生に必要なステップではあったが、十分ではなかった。
■ミチゲーションから大規模な再生事業へ・1970「連邦法の水質浄化法(CWA)-実現可能な代替案なしに湿地の
埋立を禁止」、1970「絶滅危惧種保全法(ESA)-埋立は絶滅危惧種
を脅かさないこと」
⇒ミチゲーションでは湿地の正味の増加はありえない
・1999「Habitat Goals」サンフランシスコ湾再生のための 良の湿地
再生マスタープラン・再生目標⇒大規模な湿地再生事業を可能に/1980~1990年代の大規模な商業用開発事業用地のほとんど全てが
湿地再生用地に変貌
Goals Project (the San Francisco Bay Area Wetlands Ecosystem Goals Project)
塩田
塩性湿地
締切湿地干拓農地埋立
干潟
塩性湿地 6,000ha → 40,000ha
過去 現在 将来
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BCDCでの説明状況説明状況BCDC事務所からベイ・ブリッジを望む
2.2 ソノマ・ベイランズ湿地再生事業(Sonoma Baylands Wetland Demonstration Project)
サンパブロ湾(サンフランシスコ湾北部)
N
ソノマ・ベイランズ 事業の概要
■約100年前に湿地を干拓して農地に転用したが、その後の地盤沈下(1.8m沈下)によって農地として機能しなくなった。そこで、オー
クランド港の港湾整備事業により発生する浚渫土砂を用いて、湿地の再生を行う事業である。
■目的 20年以内に塩性湿地生態系の再生
希少生物2種の生息地(ハビタット)の復元
■事業の主体
計画立案: カリフォルニ州沿岸管理委員会
設計・事業実施: 陸軍工兵隊・カリフォルニア州
■視察先・ヒアリング: 陸軍工兵隊サンフランシスコ支部
■現地視察の実施
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ソノマ・ベイランズ 事業の背景
■LTMS (Long Term Management Strategy)・浚渫土砂の長期管理戦略
・これまでは浚渫土砂を湾内処理
⇒ 市民の反対
⇒ 浚渫土砂の有効利用を目標とした土砂管理
⇒ ハビタット(生息地)の再生に当てる
■浚渫土砂の発生(予定)量・オークランド港・レッドウッドシティ港・リッチモンド港 70万m3/年
・オークランド港 -15m深へ掘下 1400万m3 浚渫予定
希少生物2種の復元
オニクイナ(California clapper rail )
カヤネズミ(Salt marsh harvest mouse)
ソノマ・ベイランズ 事業内容
サンパブロ湾(サンフランシスコ湾北部)
N
事業規模:約140ha事業年度:1994~1996事業費用:約8億円
(連邦:州=0.65:0.35)
【Pilot Unit】94年11月:浚渫土受入
96年01月:潮汐導入開始
【Main Unit】96年早々:浚渫土受入
150万m3
96年10月:潮汐導入開始
工事内容
周辺堤防の強化
半島状堤防の造成
浚渫土砂の投入
潮汐作用導入の海側堤防の改良
視察ポイント
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現在の湿地半島状堤防:波よけ堤
(wave breaker peninsula)現在の湿地
順応的管理の導入■事業の目的達成のために、12項目の目標達成基準(SUCCESS
CRITERIA)を設定し、モニタリング結果が目標達成基準を満たしていな
い場合は管理手法の修正を行うという「順応的管理」を導入して進められた事業。(当時としても先進的取り組み)
基準項目 評価時期
1 浚渫材を盛土した場所の標高 工事完了後約1ヶ月後
2 浚渫材表層の化学物質 土砂投入直後
3 サンパブロ湾と湿地を結ぶ主要水路の地形 堤防開削後1年以内
4 主要水路における平均潮差 5年以内
5 湿地内の半島状堤防の標高 潮汐作用復元後10年以内
物理的基準
6 事業区域内に形成される水路の密度 潮汐作用復元後20年以内
1 塩生湿地植生の定着開始 潮汐作用復元後5年以内
2 湿地植生による植被率 潮汐作用復元後20年以内
3 鳥類の個体数 20年以内
4 魚類の生息密度 20年以内
5 オニクイナ(鳥類)の生息 20年以内
生物的基準
6 塩湿地カヤネズミの生息適地 20年以内
順応的管理 目標達成基準と評価
【物理的基準】
①浚渫材を盛土した場所の標高: 潮流導入後、1か月後に2.9フィート(0.9m)NGVDを越えない → ○達成
②浚渫材表層の化学物質: 土砂投入し、潮流導入前の濃度が基準値を超えない → ○達成
③再生湿地と湾の間の主要水路の地形: 堤防開削後、1年以内に安定した地形に落ち着く → ○達成
④再生湿地内の堤防寄りの水路(ミオ)での平均潮差: 5年以内に、サンパブロ湾の平均潮差の90%に達する → ×未達成(議論・・自然に・・)⇒Pilot 7~8年後に大きく改善 ⇒Main 今年、達成見込
⑤再生湿地内の半島状堤防の標高: 潮流導入後、10年以内に4フィート(1.2m)NGVDとなる → ×未達成の見込 ⇒ スコップなどで削る?
⑥再生湿地内に形成される水路(ミオ)の密度: 潮流導入後、20年以内に
自然湿地と同等以上である → 今後評価
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順応的管理 目標達成基準と評価
【生物的基準】
①塩性湿地植生の定着: 潮流導入後、5年以内に定着を開始→○達成
②湿地植生による被覆率: 潮流導入後、20年以内に、潮汐を受けるエリアの65% → 今後評価(現在、5%と低い)
③鳥類の個体数: 20年以内に再生湿地を利用するシギ・チドリ類、カモ類、
その他の水鳥類の合計が参照地と比較して著しく低くない → 今後評価
④魚類の生息密度: 20年以内に、河口域を生息場とする魚類が参照地と
比較して著しく低くなく、湿地内の水路(ミオ)を利用する → 今後評価
⑤オニクイナの生息: 20年以内に、3組のつがいが湿地内で生活する
→ 今後評価
⑥カヤネズミの生息適地: 20年以内に生息適地を11ha以上提供
→ 今後評価
モニタリング計画(物理的特性 )
・0年目:2週に1回(パイロットユニット)・1年目:2週に1回(メインユニット)
塩分、水温、溶存酸素の現場測定
水質8
・1~10年目:夏季1回・11年目以降:2年に1回、夏季(著しい変化がない場合)
断面調査
・1~10年目:夏季1回・11年目以降:2年に1回、夏季(著しい変化がない場合)
航空写真によるマッピング内水路の形成7
・1~10年目:夏季1回・11年目以降:2年に1回、夏季(著しい変化がない場合)
断面調査
・1年目:毎月・2~5年目:四季調査・6年目以降:年1回、夏季(著しい変化がない場合)
固定測棒の計測土砂堆積6
・5年目:予備(簡易)測量・10年目:詳細測量
ライン測量半島頂上の標高5
・0年目:堤防撤去の6ヶ月後・1~5年目:3月と9月、半年に1度両ユニット調査・6年目以降:春季1回
潮位潮汐4
・0年目:堤防撤去前と堤防撤去の6ヶ月後、パイロットユニット・1~5年目:3月と9月、半年に1度両ユニット調査・6年目以降:春季1回調査を変動がなくなるまで続け、変動がなくなった時点で5年に1回に切り替える
水路の断面調査外海との水路3
・0年目:メインユニット室内分析化学成分2
・1年目:メインユニット(堤防撤去の約1ヶ月後)写真測量
・0年目:パイロットユニット断面調査
・0年目:毎月(両ユニット)・1年目:毎月(メインユニット)(注:複数箇所有)
固定測棒の計測浚渫材の盛土標高1
頻 度調査方法モニタリング項目No
出典)”Sonoma Baylands Wetland Demonstration Project Monitoring Plan”(San Francisco District USACE/California Coastal Conservancy, 1996)より作成
モニタリング計画(生物的特性 )
出典)”Sonoma Baylands Wetland Demonstration Project Monitoring Plan”(San Francisco District USACE/California Coastal Conservancy, 1996)より作成
・0~4年目:半年に1回、3月と9月パイロットユニットにおける堆積物調査(堆積物をふるいにかけた後種のカウント)
底生動物6
・カリフォルニア産イリエクイナに適した生息場調査・塩沼地カヤネズミを対象としたライブトラップ調査
・5年目以降:5年に1回調査適切な生息場のマッピング希少種5
・3年目以降: 3月と9月、成功達成基準を満足するまで2年に1回。対象地及び参照地における水路内の捕獲(網による)と種のカウント
・0年目:1~4月の毎月(パイロットユニット)・1年目:1~4月の毎月(メインユニット)
曳網による捕獲と種のカウント(潮汐による環境修復が進んでから)
魚類4
・0~4年目:両ユニットにおいて年14回・3年以降:成功判定基準を満足するまで2年に1回。調査回数は植生が確立するまで年14回、その後は年18回。
・周辺の堤防上から植生の少ない部分の観測を実施・堤防及び半島群に沿って植生のある箇所に断面を設定、観測実施・参照地における観測実施
鳥類3
植生断面調査
・1~10年目:夏季1回・11年目以降:2年に1回、夏季
航空写真によるマッピング湿地植生の植被率2
・0年目以降:半年~1年に1回(パイロットユニット)・1年目以降:半年~1年に1回、航空測量で判別できる程度に発達するまで
現地調査湿地植生の形成1
頻 度調査方法モニタリング項目No
注)1. メインユニットの潮汐作用の修復(1996年10月予定)が行われるまでを0年目とし、その後をモニタリング期間の1年目とする。2. パイロットユニットの潮汐作用の修復は0年目、1996年1月24日に実施された。3. 特に注意書きがなければ、成功判定基準を満足するまでモニタリングを続けることとする。
順応的管理 目標達成基準など
補足:
①植生、希少種などの評価を20年とした根拠
議会での決定事項。
20年位の間には目標達成できないといけないだろうと。
②いつまでモニタリングを実施するのか。
全ての基準を満たすか、当事者全てがもういいというまで実施。
本事業は特殊な事例-通常は5年間、費用はプロジェクト全体の5%、
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現時点での事業の評価状況
■概況
・工事完了後9年経過。現在、地形がほぼ安定し、湿地内の植生の植被率はまだ低い。
・モニタリングは年間約15万ドルかけて当初計画どおりに実施。
■目標達成基準の達成状況及び順応的管理の措置
(ヒアリング結果)
・評価時期を向かえた目標達成基準はいずれも達成。
・2006年に評価する物理的基準5【半島状堤防の標高】は、達成見込み
がないため、人為的に高さを調節する可能性。
・水路と湿地のつなぎの部分で段差ができ、問題はないと考えられるが、取り除く可能性がある。
・植物(外来種の侵入)と捕食者(オニクイナの捕食者であるアカギツネの侵入)の問題が発生すれば、何らかの措置を行う可能性がある。
2.3 ハミルトン飛行場湿地再生事業(Hamilton Airfield Tidal Wetland Restoration)
■概要ソノマ・ベイランズの西側において、1800年代に湿地を干拓し、その後1930年
代に軍の飛行場に転用した場所を湿地に再生する事業
■事業概要・事業主体 陸軍工兵隊・事業規模 約400ha
内陸側を季節性湿地(Seasonal Wetland)、海側を塩性湿地(Tidal Wetland)にする計画
・事業の拡大隣接した約600haの土地をカリフォルニア州沿岸管理委員会が購入し、湿地再
生に利用する法案が、現在議会に諮られている。・工事内容
湿地の外周堤防の建設と地盤高嵩上げのための土砂の投入計画地では軍の演習による銃弾などの汚染物質の除去が必要滑走路などのコンクリートを剥がさないで土砂を投入(水路部は掘削)
・土砂の確保ソノマ・ベイランズと同様、オークランド港の港湾整備で発生する浚渫土砂
ハミルトン飛行場湿地再生地区
ハミルトン飛行場
事業の進捗状況
■事業の進捗状況・現在は、汚染物質の除去作業がほぼ完了、
・堤防の建設も進行中で、2006年から浚渫土砂を投入。
・浚渫土砂の投入が終わると、土砂の安定を待って、海との間の水路を開削し、海水を導入。
■本事業の順応的管理・計画を策定中
・植物の育成促進、外来種対策等について検討中
・計画は来年6月に提示予定
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滑走路
滑走路
陸軍工兵隊サンフランシスコ地区司令官の挨拶
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2.4 サウスベイ塩田再生計画(South Bay Salt Ponds Restoration Project)
■概要・サンフランシスコ湾南部で塩田として利用されていた場所を、「様々な生
物の生息地の形成(A mix of habitats)」、「野生生物を重視したレクレーション(Wildlife-oriented recreation)」及び「洪水対策」を目的として湿地に再生する事業
・米国西部で 大規模の湿地再生プロジェクト2008年から事業開始予定
・カリフォルニア州沿岸管理委員会よりヒアリング
■事業概要・事業計画主体 カリフォルニア州沿岸管理委員会、米国魚類野生生物局、
カリフォルニア州魚類狩猟局の共同
・事業規模 約6,000ha( 3つの塩田を対象)
・事業計画順応的管理により湿地再生を進める計画であり、塩田を塩性湿地に再生
する割合について複数の代替案を提示し、どれが一番適切かを順応的管理により決定する方針
順応的管理計画(案)が策定(http://www.southbayrestoration.org)
SF BCDC November 15, 2005Brenda Buxton, State Coastal Conservancy
干潟塩性湿地
塩田
再生地区
塩田
サウスベイの塩田の風景