2017年3月10日

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平成29年3月22日調査部 金属資源調査課

新井 裕実子

インドネシア鉱業政策動向とニッケル・銅市場への影響

平成28年度第10回JOGMEC金属資源セミナー

1. インドネシアの鉱業上の位置付け

2. 今回のインドネシア政省令改正概要

3. ニッケル市場動向と銅市場動向

目 次

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• インドネシアはニッケル鉱石生産世界第5位、銅鉱石生産第11位

ニッケル・銅市場における位置付け

3（出典）INSG Monthly Bulletin No.2 Feburary 2017

フィリピン, 341.7

カナダ, 235.7

ロシア, 222.0

ニューカレドニア, 208.8

インドネシア, 197.6

豪州, 196.2

中国, 90.0ブラジル, 86.4

その他, 411.6

0.0

500.0

1000.0

1500.0

2000.0

2500.0

（千t） 2016年 ニッケル鉱石生産量（純分量）

チリ, 5 545.3

ペルー, 2 365.1

中国, 1 821.3

米国, 1 454.0DRコンゴ, 986.6

インドネシア, 620.4

その他, 7 830.1

-

5 000.0

10 000.0

15 000.0

20 000.0

25 000.0

（千t）2016年 銅鉱石生産量（純分量）

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主な銅・ニッケルプロジェクト

Sorowakoニッケル鉱山・企業：PT Vale Indonesia（住友金属鉱山20.09%,三井物産0.36%,住友商事0.14%, 双日0.14%,Vale 58.73%, 他）

Gresik銅製錬所・企業：PT Smelting（三菱マテリアル60.5%,三菱商事9.5%,JX金属5%,PT Freeport Indonesia 25%）

Grasberg銅鉱山・PT Freeport Indonesia

Batu Hijau銅鉱山・企業：PT Amman Mineral Nusa Tenggara

Pomalaaニッケル鉱山・企業：PT Antam

• ニッケル：2013年まで鉱石生産量1位、酸化鉱の主な生産国• 銅：Grasberg、Batu Hijauは世界有数の鉱山で金も産出

インドネシア,

2,509

フィリピン, 1,351

フィリピン, 1,913

ニューカレドニア,

1,100 ニューカレドニア,

1,799

グアテマラ, 36

0%

20%

40%

60%

80%

100%

2013 2016

日本のニッケル鉱石輸入内訳（グロス量・千t）

• 同国からのニッケル鉱石輸入量は2013年は2,509千t 、2014年3月以降はゼロ

• アジアの他2か国に比して、鉱石品位が高い

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日本とインドネシアの関係：ニッケル

（出典）財務省貿易統計を基にJOGMEC作成

総計：4,963千t 総計：3,748千t

• 同国からの2016年銅精鉱輸入量は667千t• 低輸送コストで、鉱石副産物に金が含まれる

日本とインドネシアの関係：銅

6（出典）財務省貿易統計を基にJOGMEC作成

チリ, 2,540 チリ, 2,161 チリ, 2,129

ペルー, 533 ペルー, 563 ペルー, 763

インドネシア, 252 インドネシア, 580 インドネシア, 667 カナダ, 449

カナダ, 514 カナダ, 550 豪州, 564

豪州, 505 豪州, 400

その他, 746 その他, 492 その他, 620

0%

20%

40%

60%

80%

100%

2014 2015 2016

日本の銅精鉱輸入内訳（グロス量・千t）

総計：5,084千t 総計：4,816千t 総計：5,131千t

2009年 2009年法律第4号（通称：新鉱業法）の公布・施行

鉱物資源高付加価値化政策義務の5年以内実施を規定

2014年 1月、政省令の公布・施行

向こう3年間（=~2017年）、銅は精鉱類であれば輸出可能、ニッケル・ボーキサイト鉱石は輸出禁止

2017年 1月、改正政省令の公布・施行

条件付きで向こう5年間、銅は精鉱類、ニッケル・ボーキサイト鉱石が輸出可能に

• 2017年1月に政省令が改正• ニッケル鉱石は条件付きで5年間輸出可能に

インドネシア鉱業法関連 沿革

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■政令No.1/2017 （2017年1月11日付施行）概要

①IUP*とIUPK**の延長は期限5年前から可能②鉱物販売における基準価格適用の義務付け③外資による現地への資本移転義務比率は「生産開始5年後から

段階的株式譲渡を行い、10年目には51%以上を移転」に統一④一部ニッケル鉱石とボーキサイトの、国内処理の義務付け

■エネルギー・鉱物資源大臣令No.5/2017 （2017年1月11日付施行）概要

⑤精鉱類、アノードスライム、低品位ニッケル鉱石、洗浄工程後ボーキサイトは条件を満たせば5年間一定量輸出可能

* IUP: 鉱業事業許可。鉱業事業活動を行うための一般的な許可。**IUPK:国が保留する特定の地域内において採掘活動を行うための許可。

• 2017年1月に政省令が改正、主な改正点は5つ

今回改正概要

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• CoWからIUPKへの切替えが必要• 鉱物ごとに各条件を満たせば輸出可能

輸出可能条件

輸出対象物 国内製錬義務 輸出税の支払い 輸出可能な品位基準国内処理義務量の充足

精鉱類 ○国内製錬進捗度によって異なる（次ページ表）

―（但し最低製品基準は満たす必要あり）

―

アノードスライム

○ なし―（但し最低製品基準は満たす必要あり）

―

低品位ニッケル鉱石

○ 原則一律10% 1.7%未満製錬能力の30%以上相当量について国内処理義務あり

洗浄工程後ボーキサイト

○ 原則一律10% 42%以上 ―

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• 適用税率は2022年までの5年間有効• ニッケル鉱石などは一律10%

輸出税率

国内製錬進捗度 旧適用税率(2014.1~2017.1)

新適用税率（2017.1~2022.1）

0 - 7.5% 7.5%7.5%

7.5 - 30% 5.0%

30 - 50%

0.0%

5.0%

50 - 75% 2.5%

75 - 100% 0.0%

一律輸出全面禁止であったため、設定なし

10%

■精鉱類

■ニッケル鉱石／ボーキサイト

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■ニッケル鉱石・ボーキサイト

• 国内処理義務量や輸出割当の設定、運用・管理方法が不明（ニッケル鉱石については独立審査機関の組成時期が不明）

• 品位基準を満たさない鉱石輸出を統制できるのか

• 製錬計画を進めても、輸出税率は5年間変更なし

• 現実的でない運用の規定が散見される

改正の主な不明点

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■全体

• 国内製錬建設の「物理的な進捗」に関する定義がない

• 現地資本に譲渡された権益比率の希釈禁止規定が解釈困難

• 国内製錬建設進捗度が対計画90%を満たすのは困難

• 現地への資本移転譲渡価額算出基準が不明瞭

■PT Antam (国営企業のためCoWはなし)

• 1月16日には、今回の改正歓迎の意向を表明• 2017年度の低品位Ni鉱石輸出可能量を6百万tと試算。• 4月初めに申請書提出予定

■PT Vale Indonesia (CoW期限：2025年)

• 鉱石禁輸解禁に反対の立場で、今回の改正にも懸念を表明• 既に製錬所を有しており、CoWを期間満了まで維持の意向• IUPK切替え時に、尼資本化義務比率について交渉予定

■中国系企業

• China’s De Long Nickelなど、これまで投資を進めてきた他の製錬所操業者は共同で政府を訴える意向を表明

• 歓迎モードはPT Antamのみ

ニッケル市場：インドネシア企業動向

12（出典）PT Antam HP、各報道より

■操業監査関連動向

7月 既存鉱山の操業監査及び新規鉱山プロジェクトのモラトリアム実施

9月 10鉱山が操業停止

2月 監査結果発表、23鉱山が閉鎖命令、5鉱山が操業一時停止命令を受ける

• 2016年7月～国内全土の鉱山操業監査を実施• 2016年同国ニッケル鉱山生産量は前年比

26.8%減の34.2万t

ニッケル市場：フィリピンの動向

466.8

341.7

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50.0

100.0

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200.0

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300.0

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2015 2016

フィリピン鉱石生産量（純分量）

13（出典）INSG Monthly Bulletin No.2 Feburary 2017

（千t）

■Batu Hijau銅鉱山

企業PT Amman Mineral Nusa Tenggara (PTAMNT)(CoW期限：2030年)

生産量 22.4万t（2015年、純分量）

動向 • 日本企業4社が計24.5%の権益を2016年7月に売却• インドネシア資本化義務は充足済み。CoWから

IUPKへの切替え受け入れを決定。切替え条件は継続審議の上で、6か月の暫定輸出許可取得

• 2017年2月～2018年2月の輸出割当は675千wmt

• 2大銅鉱山で対応分かれる

銅市場：インドネシア企業動向①

14（出典）SNL, PTAMNT HP

■Grasberg銅鉱山

企業PT Freeport Indonesia (PTFI)(CoW期限：2021年)

生産量 48.2万t（2015年、純分量）

動向 • 税制面・法制面で安定している特別なIUPKを希望、政府提示の暫定IUPKの受け入れは拒否（詳細後述）

• 現在6か月期限で交渉中だが不調に終わった場合国際仲裁付託の可能性もあり

• 2/10~操業一時休止・Force Majeure宣言、3/21~通常の4割操業再開

• Grasberg銅鉱山は事態混迷

銅市場：インドネシア企業動向②

15（出典）SNL

■Gresik銅製錬所

企業PT Smelting（三菱マテリアル60.5%、PT Freeport Indonesia 25%、三菱商事9.5%、JX日鉱日石金属5.0%）

生産量 銅カソード30万t/年、アノードスライム1.8千t/年 等

動向 • 1/19~ストライキが発生していたが、2/1~溶錬再開との報道

• Grasberg銅鉱山の4割操業は、このGresik製錬所向け国内出荷見合いのもの

• Gresik製錬所がGrasberg銅鉱山の4割操業分を担う

銅市場：インドネシア企業動向③

16（出典）PT Smelting HP、各種報道

• FreeportにとってIUPKへの切り替えは不利

Freeportとインドネシア政府の対立

項目 CoW IUPK

鉱区 127,000ha 最大25,000ha

税率

• 安定化条項有り• 契約締結時に、法人

税率やロイヤルティ等の契約期間中固定制か変動性か選択可能

⇒法人税固定税率35%だが安定性確保される

• 都度政府決定に従う• 一般税率（=現在25%）

に準ずる• ただし「Production Fee

（≒鉱産税）」として純益の10%納付義務有り

• ⇒税率実質変更なしの上安定化を失う

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Freeportとインドネシア政府の対立

項目 CoW IUPK

資本化義務 30% 51%

CoW(IUPK)延長期間

条件付きで2021年以降の鉱業権延長認める

初期設定期間は2021年、その後は10年×2回まで延長可能

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• FreeportにとってIUPKへの切り替えは不利

■インドネシアは重要な原料供給国

• ニッケル、銅ともに日本にとって重要な国• 銅生産量世界上位のGrasberg銅鉱山の動向は市場全体に大き

な影響を及ぼす

■ニッケル市場における動向と影響

• 法内容、運用面で不明点は残るものの追って対処する様子• 現時点で輸出申請提出しているPT Antamの鉱石6百万t（グ

ロス量）が早くて6月頃に市場に流入か• 今回の改正が製錬所建設のインセンティブになるか要注視

■銅市場における動向と影響

• PTFIと政府の交渉期限は7~8月、先行きは不透明• Batu Hijau銅鉱山からは順次出荷、2018年2月まで675千

wmtの輸出割当を取得済み

まとめ

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