メタン分解カーボンナノチューブの 複合材料特性に …...2 技術背景 •...

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1 メタン分解カーボンナノチューブの 複合材料特性に関する研究 発表者 名古屋大学 大学院工学研究科 材料デザイン工学専攻 助教 入澤 寿平 共同研究者 産業技術総合研究所 創エネルギー研究部門 エネルギー変換材料Gリーダー 曽根田 靖

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メタン分解カーボンナノチューブの複合材料特性に関する研究

発表者

名古屋大学 大学院工学研究科

材料デザイン工学専攻 助教 入澤 寿平

共同研究者

産業技術総合研究所 創エネルギー研究部門

エネルギー変換材料Gリーダー 曽根田 靖

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技術背景

• 産総研 メタン熱分解法による水素製造と固体炭素としてのカーボンナノチューブの加工・利用

• 名大 CFRTP(炭素繊維強化熱可塑性樹脂)マトリックスへのVGCF(CNF)添加による力学特性向上

1 mm

ナショナルコンポジットセンター学術支援研究員

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地球温暖化対策としてのCCSの必要性

CO2削減目標および各対策に期待される効果

60%削減

気温上昇を産業革命前に比べ2℃未満に抑えるためには、

2013年から2050年の間に累計940億トン、

2050年時点で年間約60億トンのCO2分離と貯留(CCS)が必要が必要とされている。

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CO2削減と水素供給を同時に達成する!

• IEA資料等より、大規模なCO2発生の抑制、および発生源でのCO2分離と貯留(CCS)が必要

➡ CCSは経済的負担(EOR石油増進回収法を除く)、適地選別が困難

• CO2を排出しない燃料電池(自動車、定置用)、水素燃焼発電への期待

➡ 水素の安価で安定的な供給が必要

• 水素製造技術として、再エネ電力による電解水素供給等が確立されるまでは、化石燃料(メタン)の改質水素が量的な解決をもたらす

➡ メタン水蒸気改質とメタン熱分解法

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新技術1:メタンからの水素製造と炭素固定化

CO2

CH4

FC等

H2

改質

CCS C

CH4

FC等

H2

熱分解固体炭素

(炭素材料)

CH4 890 kJ 4H2

1143 kJ

Electricity 686 kJ

Heat 253 kJ

Heat 204 kJ

CH4 890 kJ

C 394 kJ

H2 394 kJ

Electricity 343 kJ

Heat 75 kJ

Heat 154 kJ

【既存法】水蒸気改質による水素製造 【提案法】熱分解法による水素製造CH4+2H2O → CO2 + 4H2 - 253 kJ/mol CH4 → C(s) + 2H2 - 75 kJ/mol

長所:高い効率(η=0.77)短所:CO2の大量排出は不可避。中小規模

ではCCS不可能。

長所:CO2は全く排出しない。炭素は全て固体となり、機能性材料あるいはエネルギー物質として貯蔵。バイオ由来メタンの場合は、カーボンネガティブ。

短所:低い効率(η=0.39)

2H2571 kJ

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新技術1:メタン分解カーボンナノチューブ製造手順

0-3%-CO2/CH4 H2/CH4

Quartz reactor (36 mm ID x 460 mm L)

Catalyst (200 mg) GC

反応前触媒 反応後(炭素析出)

触媒 酸化鉄担持アルミナ(44%Fe2O3/Al2O3)ナノサイズ酸化鉄粒子鉄含有廃棄物(酸処理後) 0.2gを石英ボートに静置

反応器 固定層流通式反応器反応手順 所定温度まで昇温,保持し,生成ガスを分析反応ガス 100%-CH4, 1−3%-CO2/CH4 10-80 cm3/min分析 出口ガス(GC),生成炭素(SEM, XRD, TG)

50 mm

6 1 mm

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メタン分解カーボンナノチューブの特徴

メタン熱分解法による水素製造プロセスの導入には、副生産物の固体炭素(カーボンナノチューブ)の利用・貯蔵技術開発が重要

0.5mm

5mm

C

AlFe

O

EDX分析

目視では紛末電顕(低倍)毛玉状、(高倍)繊維状元素分析(EDX) 炭素と触媒成分

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CFRP及びCNTの成長見込み

出典:GRAND VIEW RESEARCH 社,市場調査レポートから抜粋

(t)CFRPの用途別需要予測 CNTの用途別需要予測

出典:シーエムシー出版,機能材料2016年2月号から抜粋

どちらも大きな成長産業と言える上,相乗効果によるさらなる成長も期待される!!

新CNTのCFRPへの応用を検討

分野 明細 2010 2015 2020 伸び率

宇宙航空 ー 5,788 10,022 17,989 1.13スポーツ・レジャー ー 6,030 7,868 10,819 1.06

産業用途

風車 7,786 21,920 61,711 1.23圧力容器 1,368 3,404 8,470 1.20自動車 1,863 4,569 15,096 1.23その他 10,728 15,762 23,160 1.08小計 21,745 45,655 108,437 1.17

合計(t) 33,563 63,545 137,245 1.15

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自動車用途CFRPの開発

スポーツ 航空宇宙 自動車に適用熱硬化性樹脂が母材

量産に向いていない

リサイクル性が悪い

熱可塑性樹脂が母材

量産しやすい

リサイクル性が良い

(エポキシ樹脂)

コスト

PA6(ナイロン6)

汎用性プラスチック

PP

CFRTP

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CFRTP化のメリット

熱硬化性樹脂 熱可塑性樹脂

加熱

低分子量状態

流動性

架橋等による三次元網目構造化(硬化)

化学反応を伴った成型反応は最短でも数十分程度

加熱

流動化(軟化,融解)

冷却

固化(ガラス化,結晶化)

状態変化による成型数分での成型が可能

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CFRTPの短所

炭素繊維束 織物

樹脂フィルム

樹脂フィルム

加熱プレス

プリプレグ (中間)成形材)

プリプレグ 積層体

加熱プレス

加熱プレス成形

CFRTP

一般的な(想定されている)CFRTP製造手法・溶融法によるCFRTP作製手法

CFRTPの課題

・炭素繊維−熱可塑性樹脂の界面接着力の制御

・高粘度な溶融樹脂の炭素繊維束への含浸性

・熱可塑性樹脂の剛性・弾性率不足

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CFRTPの短所克服技術への新技術の応用1ナショナルコンポジットセンター(NCC)

・LFT –D法 ナショナルコンポジットセンター学術研究員として自動車用途CFRP開発に参画中(入澤)

混練技術を応用した不連続繊維強化型CFRTPの開発

将来的にCFの一部,もしくは全部にメタン分解CNTの置き換えが可能になるかも??(と期待.)

http://ncc.engg.nagoya-u.ac.jp/project.html

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CFRTPの短所克服技術への新技術の応用2

V a R T M 法によ り 試験片作製

強化材: 炭素繊維CK6 2 6 1 C (東レ株式会社)

母材 : 現場重合型ポリ アミ ド 6 (PA6 ) (ナガセケムテッ ク ス株式会社)

(ε-カ プロラ ク タ ム+ 触媒)

原料ε-カ プロラ ク タ ム

融点: 6 8 °C

(Vacuum assisted Resin Transfer M o ld ing )

低粘度のモノマー

状態で含浸

高品質なCFRTPが成型可能

力学物性:複合則の6~7割程度

母材樹脂の剛性不足も影響??

メタン分解CNTの母材樹脂への添加によるCFRTP物性の増大への期待!

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③ ④

炭素繊維 上蓋

原料タンク

ヒーター

真空ポンプ

真空引き +

加圧

CFRTP

市販CNTを使用し,高分散原料の開発に成功

CFRTPの物性改善に達成!!

先行技術(名大):CNT分散CFRTP

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複合材料への展開に向けた検討事項

③ ④

炭素繊維 上蓋

原料タンク

ヒーター

真空ポンプ

真空引き +

加圧

CFRTP

市販 VGCF(CNF)ではCFRTPの力学物性改善に成功!!

メタン分解CNTでの効果を検討

①現場重合法によるCFRTPの制作 ②樹脂単体へのCNT添加の検討

二軸混練

フィルム引張試験による力学物性への各CNT添加効果を検討

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メタン分解CNTとVGCF(CNF)との比較

VGCF A

B C

CNT-A

CNT-CCNT-B

VGCFと比較し,凝集力が高い様子

種々の繊維径,純度を調整可能

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現場重合PA6への分散1

現場重合法を想定したポリアミド6原料のε-カプロラクタムへの分散状態

溶媒:ε-カプロラクタム 110℃ (溶融状態) CNT:0.1 wt%

撹拌後、静置12h

VGCF

良好な分散性

CNT-A

凝集を確認(低分散性)

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現場重合PA6への分散2

CNT-B

CNT-C

CNF未添加 B添加

分散性が樹脂含浸性に影響

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現場重合PA6への分散2

曲げ強度[MPa] 曲げ弾性率[GPa]

NeatCFRTP

平均値 411 44.6

標準偏差 17.7 1.86

CNT-B添加CFRTP

平均値 388 46.7標準偏差 20.4 1.63

VGCF添加CFRTP

平均値 574 48.6

標準偏差 35.1 1.45

今後:CNTの高純度化、表面処理などで含浸性の改善を検討する。

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混練によるCNT分散ポリマーフィルムの成形

or

VGCF 各CNT試料

ポリプロピレン

ラボプラストミル

二軸混練

ホットプレス(250℃)

1st:1MPa 1min2nd:5MPa 1min

フィルム引張試験

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メタン分解CNT分散フィルムの力学物性

試料添加量[wt%]

弾性率[GPa]

引張強度[MPa]

Neat PP -平均値 1.10 27.5

標準偏差 0.149 1.48

VGCF添加

1平均値 2.58 33.1

標準偏差 0.758 0.400

CNT-A添加

1平均値 1.46 34.8

標準偏差 0.0927 1.49

CNT-B添加

1平均値 2.24 31.8

標準偏差 0.368 2.02

CNT-C添加

1平均値 2.97 32.3

標準偏差 0.731 1.45

全てのCNT添加試料で力学特性の向上を確認

今後:CNTの高添加量での検討に着手予定

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既存技術とその問題点

カーボンナノチューブ(CNT)

CNT

⾼強度

⾼熱伝

導性

⾼電気

伝導性 ・高コスト

5 µm

・少量添加での機能向上が求められてきた(~5 wt%程度).

・ (高付加価値な材料に)用途が限定的

複合材料のフィラーとしての応用

期待していた機能が得られない

自動車の構造部材用途など汎用用途では使用不可

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新技術の特徴

1 mm

・水素製造と同時にCNTを大量に生成・安価なCNTの創出の可能性

③ ④

炭素繊維 上蓋

原料タンク

ヒーター

真空ポンプ

真空引き +

加圧

CFRTP

高分子複合材料への展開

・汎用用途への展開が可能・高添加物への期待・熱伝導性による耐火性・電導性による耐雷性

高性能な複合材料を汎用用途への展開を可能とする

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本研究課題の社会的インパクト

・自動車・飛行機の軽量化

・ CCSが不要・水素のクリーンエネルギー化

背景:CO2削減が急務

新水素製造プロセス

メタン分解 CNTの複合材への適用

結果:CO2削減を多角的に達成(相乗的)

・CNTを同時に大量生産

・高性能CFRPが生産

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本研究課題の新規性・独創性

1.CCS不要な新水素製造プロセス

本研究の成果物

2.安価で大量なCNT製造プロセス

同時に,,

複合材料に適用

3.高機能・高物性なCFRPを実現

4.CO2削減による地球温暖化の抑制へ大きく貢献!!

燃費向上クリーンエネルギー化

1 mm

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• メタン分解CNTの残留触媒の影響など,品質管理

• メタン分解CNTの低分散の克服

• 高添加量複合材料に関しては未着手

• メタン分解CNT分散高分子複合材料の応用・用途開発

実用化に向けた課題

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• 樹脂開発企業(コンパウンド技術実績有)。

• 応用先企業(自動車,一般産業)。

企業への期待現状:

産総研ー名大アライアンスでの協力のほか,戸田工業(株)様とメタン分解CNTの生成技術開発における協力体制を構築中

今後の連携への期待:

複合化技術に関しては,装置メーカーを含めたコンパウンド制作ノウハウを有した実績ある企業様との連携を希望

安価な新しいCNTの創出により,今までに使用検討されて来なかった部材への適用の可能性有り.

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お問い合わせ先

名古屋大学 学術研究・産学官連携推進本部

プロジェクト推進グループ

主任リサーチ・アドミニストレーター

原田千夏子

TEL 052-747-6784

FAX 052-747-6796

e-mail [email protected]