第 1 章 固体表面の濡れの理論と撥水・撥油のメカ …...11 4. 最近の超撥水・超撥油性の定義 前述の通り,これまでの超撥水・超撥油性の定義は,θSの値が150
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バイオマスの超臨界水ガス化
松村幸彦
1.超臨界水とは
我々が普段見知っている水は、冷や
せば凍り、加熱すれば 100℃で沸騰し
て水蒸気になる。しかしながら、圧力
を上げて同じことを行うと、沸騰温度
は上がり、水蒸気はどんどん濃くなっ
ていく。圧力を上げれば上げるほど水
蒸気は濃くなり、 後には水と同じ密
度まで圧縮されてしまう。密度が水と
同じになるような高圧では、水を加熱
して水蒸気になったとしても、水と水蒸気の区別がつかない。なぜなら、これらは同じ物
質であり、密度が違うことだけが区別の理由だからである。このような高温高圧の水/水
蒸気のことを「超臨界水」と呼ぶ。
超臨界水は、高温高圧であるために、反応が早く進む特長を持っている。化学反応は、
分子と分子が、十分に勢いよく衝突して分子を構成する原子の組み替えが起きることによ
って進行する。高温であると、分子の勢いがあるので、衝突したときに反応が進行しやす
い。高圧だと分子が詰まっているので衝突の回数が増える。こうして、超臨界水中では化
学反応が迅速に進行する。このことを利用して、草や木からエネルギーとなる都市ガスを
得ることができる。これが、バイオマスの超臨界水ガス化と呼ばれる技術である。
2. 地球にやさしいバイオマス
草や木は、太陽の光があれば
すくすくと育ち、これを燃やし
てエネルギーにすることができ
る。薪や、たきぎである。この
時に、大気中の二酸化炭素と水
を吸収する。光合成と呼ばれる
しくみである。このようにして
育ったバイオマスをエネルギー
利用すると、石油、石炭、天然
ガスなどの化石燃料を使うこと
によって生じる問題の解決に貢
献することができる。化石燃料は、地面から掘ってきて使うだけなので、いずれ枯渇して
超臨界水
水蒸気
水氷
三重点 温度 [℃]
・ウ・ヘ
[MPa]
臨界点
0.1013
612 Pa
22.1
0.01 100 374
図1 水の相図
図2 いろいろなバイオマス
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しまう。また、燃やすと二酸化炭素が発生するので大気中の二酸化炭素濃度が高くなり、
地球の気候が変動する。一方、バイオマスは次々に作られるので、再生するスピードの中
で使っていればなくなることはなく、また、成長する時に二酸化炭素を吸収するので、大
気中の二酸化炭素濃度が増加することはない。
バイオマスには、木や草、これを食べて成長する動物、その糞や尿、また、各種の微生
物やこれらから2次的に発生する廃棄物や廃材などが含まれる。これを有効利用すれば、
地球に優しいエネルギー利用ができる。しかしながら、バイオマスをそのままの形で薪や
まきとして利用するのは、煙が出たり、温度が上がらなかったり、場所を取ったりするの
で現在は流行らない。使いやすい形にすることが求められる。特に、水分を多く含むバイ
オマスについては、超臨界水ガス化が有効である。
3. 超臨界水ガス化
これまで、水分を多く含むバイオマスは、空気がないところで腐らせるメタン発酵とい
う技術で処理するのが一般的であった。バイオマスは空気があるところで腐らせると水と
二酸化炭素になる。水も二酸化炭素も燃やせないのでエネルギーとしては利用できない。
一方、空気がないところで腐らせると、メタンと二酸化炭素ができる。メタンは燃やすこ
とができるので、エネルギーとして使うことができる。ところが、ものが腐るのは微生物
が分解していることなので、微生物が食べられないものは腐らない。また、微生物がもの
を食べる速度は数日~数十日ととても遅い。このために、時間がかかる上に、完全に分解
できないという問題があった。普通のメタン発酵では1ヶ月、中温型でも2週間程度かか
り、それでも分解できなかった残渣が多く発生してその処理に困っている。
これに対して、超臨界水ガス化を用いれば、反応は迅速に進行し、しかも条件を選べば
完全にガス化ができる。中国電力では、600℃、25 MPa という条件で、鶏の糞を完全にガス
化できることを確認している。このときに、活性炭を入れてやると反応が早く進むように
なる。これは、触媒、と呼ばれるしくみだが、活性炭触媒が有効であることを確認したの
はハワイ大学のアンタール先生である。このとき、反応器の中に粒粒の活性炭を詰めてい
たために良く反応器が詰まってしまった。アンタール先生と研究を行った松村は、帰国後、
図3 超臨界水ガス化装置
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活性炭を粉々にして原料に混ぜ込んでしまうことを思いつき、みごとに濃いバイオマスで
も連続して完全にガス化できるようにした。今も、もっと早く、もっと簡単な装置でガス
化ができるような技術開発が続けられている。