リビア石油産業の現況と課題 · Mellitah Eni,Hyundai, KNOC, SK, Majuko, Deasung 150 65%...

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2020220独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構 調査部 芦原 雪絵 リビア石油産業の現況と課題

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2020年2月20日独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構調査部 芦原 雪絵

リビア石油産業の現況と課題

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免責事項

本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

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本日の報告事項

原油生産量推移

2011年以降の混乱、対立構図、

2020年1月封鎖の影響

天然ガス生産量、輸出量推移

NOC・IOCの取り組み、状況

今後の見通し

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原油生産量推移

2020年1月の原油生産量は78万b/d(IEA) 現在は12.3万b/d(2月17日、NOC)

紛争以前は、過去数十年にわたり安定的に輸出2011年以降の生産施設・港湾の混乱により、生産量・輸出量が減少し、収益が減少

2016年、石油施設警備隊(PFG;Petroleum Facilities Guard)による中央部・東部での港湾閉鎖の終了により生産量、輸出量は復調傾向にあった

単一政府の欠如-中央銀行(トリポリ)が石油収入を管理、支出(機関への資金提供や国営企業従業員等への給与支払いを含む)

石油販売を担うのはNOC、一方最近はリビア国民軍(LNA;Libyan National Army)が物理的な石油・ガスインフラの大部分を占拠・掌握

武装グループや地域勢力に起因する供給混乱の可能性は従来より懸念されていた

原油輸出先は欧州(主にイタリア)向け6割強、アジア(主に中国)向け4割弱

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原油生産量推移

出所:IEA

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2011年以降の混乱

9年にわたる内戦により、リビア石油部門は“安定的な操業”が阻害されていた 反政府勢力が油ガス田、パイプライン、港湾を標的としており、停止/再稼働が繰り返され

ている

(経緯)

• 部族・武装勢力の妨害によりEl Sharara(2014年11月)、El Feel(2015年4月)閉鎖、2016年12月再開

• 2014年12月PFGがRas Lanuf、Sidraターミナルを閉鎖 その後2016年7月にPFGと国民合意政府(GNA;Government of National Accord=暫定政府)が出荷再開で合意

• 2018年6月東部油田地帯にPFGが侵攻し、LNAとの間で戦闘発生、一部施設も破壊→LNAが奪還 LNAは“NOC East”へ引き渡し これに対しNOCはSidra、Ras Lanuf、Hariga、Zuentinaでフォース・マジュール(不可抗力による操業停止)を宣言 7月LNA、GNA間で合意により解除

• 2018年12月 El Sharara油田が部族・武装勢力に占拠され、NOCはフォース・マジュールを宣言 2019年2月LNAが奪還 3月NOCがセキュリティ確保を確認し生産再開

腐食によるパイプライン損傷により817か所の漏洩を確認

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政治的背景

2011年 カダフィ政権崩壊以降、各地で部族・民兵が軍閥化し、国家分裂・内戦状態が継続混沌の中で、過激派組織の活動も活発化

西部首都トリポリに拠点を置く国連が認めるGNAと東部ハフタル司令官(※)率いる軍事組織LNAの東西対決が激化 アフリカから欧州へ向かう移民や難民も戦闘員に

(※)旧カダフィ政権下の軍高官 チャドで捕虜となり、その後カダフィ政権打倒の運動に加担、米国へ亡命 2011年反カダフィ戦闘に従事し、2015年代表議会(HoR;Libyan House of Representatives)によりLNA最高司令官に任命

2019年4月 LNAがトリポリを目指し軍事進攻、戦闘継続 諸外国による外交的・軍事的関与甚大

• GNA支援:トルコ、カタール、伊• LNA支援:エジプト、UAE、サウジアラビア、UAE、露、仏

2020年1月12日停戦開始するも、永続的な停戦に向けた実質的進展なし

東部5港封鎖、主要油田封鎖によるフォース・マジュール発動

1月19日和平国際会議(@ベルリン)、2月3日・2月18日リビア5+5合同軍事委員会(JMC;Libyan 5+5 Joint Military Commission)(@ジュネーブ)

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「国家の石油」を巡る対立構図

西部 東部

政府 国民合意政府(GNA)@トリポリ 代表議会(HoR)@トブルク

国営石油会社 NOC NOC East(独自に設立)

石油輸出 『 唯一容認 』 『 販売収入がNOC Eastに支払われない 』

石油収入 リビア中央銀行 CBL (→ NOC) LNAはアクセス不能

石油施設、インフラ 西部の一部のみ 東部を中心に大部分を掌握

要求・石油収入の公正な分配

・NOC本部のベンガジへの移転・中央銀行総裁の変更

“石油販売収入”に対する

コントロールを要求

政治的要求を呑ませるためのレバレッジとして「国家の石油」が用いられた この状況はいつまで続くか? GNAにとってCBLに関する要求は容認し難い 国際社会の反応:市場反応〔小〕、OPEC+〔より一層の減産を検討〕・・ハフタル陣営への圧力に

はならず、欧米〔ハフタル氏を容認?〕 GNAの耐久力次第、長期化する可能性あり 解決策は「政治的合意」 米国の思惑は?

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単位:千b/d

地域 ターミナル 主な生産油田 オペレーター 外資パートナー 出荷能力2019年Q4稼働率

(推定※)Marsa al-Hariga(Tobruk) Sarir, Mesla, Majid Agoco - 150 119%

Bu Attifel Mellitah Eni

Nakhla (C97) Wintershall Wintershall, Gazprom

IntisarZueitina OilCompany

OMV

Nafoura Agoco -ZeltenLehib (Dor Marada)

Sirte Oil -

Nafoura Agoco -

As Sarah (C96), Nakhla (C97) Wintershall Wintershall, Gazprom

Naga Harouje Suncor (PetroCanada)

Waha, Dahra, GialoWaha OilCompany

ConocoPhillips, Total, Hess

Mabruk MabrukRepsol, Total,OMV

Zawiya El Sharara (NC-115 and NC-186 fields) Akakus Repsol, Total, OMV 350 66%

MellitahEl Feel (Elephant), mixed withcondensate from WafaBahr Essalam gas field

MellitahEni,Hyundai, KNOC, SK, Majuko,Deasung

150 65%

Bouri [FPSO※] Bouri (offshore) Mellitah Eni 150 17%Farwah(Al-Jurf)[FPSO※] Al-Jurf (offshore) Mabruk Total 45 58%

※浮体式生産貯蔵積出設備 2020年1月、2019年Q4の輸出量は、報道等を基に推計、概算出荷容量は2013.9.25付meesに基づく 稼働率は 2019年Q4輸出量(推定)/出荷容量 により算出出所:EIA、MEES他各種資料よりJOGMEC作成

東部

西部

34%

Ras Lanuf 250 43%

Zuentina 250 38%

Marsa el Brega 155

Es Sider 450 60%

東部貯蔵容量:合計で600万バレル程度

(参考)2011年以降のインフラ状況

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2020年1月港湾等封鎖の影響①

2020年1月17日LNAとPFGが協力し東部主要5港からの出荷停止を指示1月18日 NOCはフォース・マジュールを宣言[2019年平均輸出量74.5万b/d(リビア全体の約70%)] NOC「約80万バレル削減を強いられる」

1月19日 Zawiya、Meliitahターミナルへの輸送パイプラインがLNAに近い武装勢力により閉鎖El Sharara(30万b/d)、El Feel(7万b/d)が生産停止に追い込まれ、NOCはフォース・マジュールを宣言

直近数年間で最長の閉鎖期間「このまま閉鎖が続けば、すぐに7.2万b/dまで落ち込むだろう」(生産はBouri、Al Jurf、Wafaのみ)

出所:MEES資料にJOGMEC加筆

2019年のリビア石油輸出ターミナルからの出荷量(単位:千b/d)

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2020年1月港湾等封鎖の影響②

石油収入は国家収入の93~95%を占め、歳出の70%をカバー(2020年1月24日カビール・リビア中央銀行総裁)

封鎖による経済損失額は、2月17日時点で17.3億ドル

天然ガス生産量の変化は明らかにせず イタリア向けグリーンストリームパイプラインへ影響?、国内市場向けへ転用?といった兆候は今のところ見られず

西部Zawiya製油所(12万b/d、供給元はEl Sharara)は1ユニット停止、生産量が5.5~6万に減少 → 2月8日閉鎖

東部、中央部では十分な燃料在庫を確保 西部、南部の在庫施設については「内戦による輸送難に直面」 → 不足

東部Zuentinaと北Benghaziの発電所への随伴ガス供給停止、東部全域で広範囲にわたる停電の報告あり

2月17日時点で国営企業従業員の1月分給与支払いがなされていないと報道

外国人の石油関係者は既にリビアから出国し、リビア人スタッフが中心となり油田等インフラを操業中

出所:NOC

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(参考)リビアの主要油ガス田およびインフラ

出所:MEES情報を基にJOGMEC作成

油ガス田名〔権益保有者,オペレーター〕

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天然ガス生産量、輸出量推移

2018年のガス生産量は900MMcf/d、生産量の約44%(400MMcf/d)を地中海横断のグリーンストリームパイプライン(全長540km、2004年開通、NOC50%、Eni50%)経由でイタリアへ輸出、産出元はWafa・Bahr Essalam、パイプライン容量8Bcm/年※2020年1月23日時点 435MMcfd → 2月12日時点 398MMcfd

LNG輸出に関しては、国内唯一のプラント(Marsa el Brega)が内戦による損傷のため2011年2月より操業停止、再開見込みなし (対象はSirte盆地の油田随伴ガス、1971年輸出開始、1982年Exxon撤退後国有化 当初設計容量3.2MMトン/年→2000年以降0.7MMトン/年)

天然ガス輸出に関しては、Eniが唯一の外資プレイヤー Mellitahプロジェクト(3.5MMトン/年 NOC/Eni)計画中

2011年以降、紛争および閉鎖により混乱はみられるもの石油部門よりも被害は軽微

出所:BP統計

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NOCの取り組み

複数IOCが権益を放棄、リビアから撤退を決断BG(2010年)、Woodside(2011年)、Shell(2012年)、Occidental(2017年)、Marathon(2018年)

2013年 未開発エリアでの開発に向けて新子会社Zallaf Oil & Gasを設立、複数鉱区を付与 対象の多くは南西エリア

NC-200(2015年Repsol放棄):2019年7月EPC作業開始、最終的に1.6万b/dを計画NC-210、NC-151(1957年Exxon発見、2003年Woodside獲得 2011年放棄):最大200MMcfdを目標2019年11月 18~25歳の若年層を対象とした訓練プログラム開始(溶接、機械メンテナンス、掘削、建設 etc.)

NOCの限られた技術的・財政的リソースを勘案すると「言うほど簡単ではない」 「国外の専門知識と技術が必要」 + セキュリティ確保が必須

出所:MEES

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目下順調であったNOC目標はどうなったか?

NOCの掲げる目標(2019年11月NOCサナラ会長)• 現在の125万b/dから2020年中に150万b/dまで増産 -必要費用12億ドル-• 2024年までに石油210万b/d、ガス3.5Bcf/dを目指す -必要費用600億ドル-• (内訳:国家107億ドル、残りは投資家より調達)• 自然減退率は7-8%

2024年目標達成(現状プラス85.5万b/d)にむけた方策• 新規プロジェクトから46万b/d:Bahr Essalam拡張、Faregh フェーズ2開始、Sirte盆地での作業付与、North Hamada、Atshan(NC-151、NC-210に位置) etc.

• 損傷フィールドの再開12万b/d:Mabruk(Total)、Ghani(Harouge)、Bahi・Dahra(Waha)• 閉鎖坑井の開坑15万b/d、発電増加12.5万b/d• ガス:Mellitahの沖合NC-41 A&E構造

-------------- 「目標を達成するいかなる可能性も失われた」と認めた 「“野心的なプログラム”に必要な予算をNOCは受け取らないだろう」

沖合の生産には影響しておらず、その場合には、ガス目標「2024年までに3.5Bcf/d」は達成可能性ありともいわれる

2019年末時点

2020年1月時点

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外国企業の参入状況

NOC(子会社含む)が生産中の油ガス田権益のうち51%を保有、一部を直接管理 大半はJVを設立し参加

主要プレイヤー: Eni、 Total、 ConocoPhillips、 Hess、 Repsol、 OMV、 Suncor 等 2013-2016年にかけて生産量減少、企業にとってリビアの重要性が低下、投資減少 生産停止、国家管理の欠如 一方、国家管理能力回復の場合には、資産売却の制限をもたらす可能性もあり

e.g. MarathonからTotalへの資産売却の際のNOCによる妨害

production is exported by entitlement, which are allocated by each companies' share

出所:GlobalData

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リビアにおけるEniの活動状況

操業開始: 1959年 活動エリア: 沖合(トリポリ近郊)、砂漠地帯

2018年生産量 30.2万boe/d 約16万boe/d(2/6報道) 契約形態:Exploration and Production Sharing Agreement contracts (EPSA) 2019年7月Bahr Essalam フェーズ2完了(995MMcfd→1100MMcfd)

の後、近隣構造の開発に向けてFEED作業で協力中 回収率向上を目的にBouriでの更なる開発に向けスタディ実施 Ghadames盆地における未開発石油・ガスの潜在的発見も評価中 太陽光・風力発電所の実現可能性についても調査予定

リビア最大の外資プレイヤー、特にガス部門においては支配的役割を果たす可能性あり

西部地域でのプロジェクトや政治環境が許せば将来成長の可能性を有するプロジェクトあり

2020年1月29日、NOCサナラ会長とEni上流チーフAlessandro Puliti氏が現在のプロジェクト状況と封鎖によるリビアの人々や生産施設への影響について議論Eniは「油ガス田の早期生産再開の重要性について合意」

出所:Eni資料にJOGMEC加筆https://www.eni.com/docs/en_IT/enipedia/international-presence/Lybia/2015-03-30-brochure-libya.pdf

A

BE

D

F

D

C• Area A former concession 82 (Eni 50%) ~2042年• Area B former concessions 100 (Abu-Attifel field), NC 125 Block (Eni 50%) ~2042年• Area C Bouri oil field (Eni 50%) ~2038年 Bouri• Area D NC169, NC41 (Eni 50%) ~2043年 Bahr Essalam、Wafa は現在も操業• Area E El Feel field (Eni 33.3%) ~2041年• Area F NC118 (Eni 50%) N/A

LNA勢力下でない

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最近の他社の動き

2018年10月 EniがBP保有のゾーンABC権益85%のうち42.5%を獲得することでLoI締結 残る15%はリビア投資庁保有取引完了後、Eni、BP、NOCは探鉱活動を再開

2019年10月 アルジェリアSonatrachとNOCが、2019年10月操業再開・生産拡大に向けたJV設立に向け共同作業部会設立で合意

2019年12月 NOCがTotalによるMarathon保有のWaha権益(16.33%)買収を承認 NOC声明によれば、Totalは6.5億ドルの投資をコミット、North Gialo、NC98開発プロジェクトを通じて現在生産量(約35万boed)プラス18万boe/dを図るまた、地域貢献プログラムに総額1.5億ドルを投じる

2019年12月 NOCとWintershallが権益更新(ただし条件悪化)で合意新たにJV Sarir Oil Operationを設立し、そのJVへ2020年央に操業引継予定 投資予定額1.5億ドル

2019年12月6日 露Tatneftが2014年に一時停止された200㎡の震探プログラムを完了するため、Ghadames盆地での震探作業を再開サナラNOC会長「Tatneftの活動の再開に非常に満足している。これにより、石油・ガス部門への信頼が高まり、リビア経済の利益に貢献することになる」2020年1月30日震探データ取得完了

BP Group Chief Executive Bob Dudley, NOC Chairman Mustafa Sanalla,Eni CEO Claudio Descalzi 出所:Eni

出所:Total

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今後の見通し①:IOC各社の置かれた状況

「資産保有エリア」が、参入外国企業の生産見通しにおける重要な決定要因東部、中央部に資産を持つ会社はEni、Totalといった西部、沖合に資産を持つ企業よりも混乱、停止に見舞われる傾向あり

直近(2020年1月)の混乱によって、IOCの大規模撤退を引き起こす可能性は今のところ低く、最低限の投資は維持する可能性(生産量回復力、地中海市場における優位性) ただし、IOCの忍耐力は漸減「将来収入予測が不可能」⇔「リビア石油産業の将来を長い目で俯瞰」 目前にはセキュリティリスクもあり

Eniの保有資産(世界全体)に対するリビアの割合 16% 「武力紛争が継続すれば、この割合は中期的に低下することになる」 Eniは、30万b/dから2020年には20万b/dに減少する見立て

政治的および操業上の不確実性は引き続き大きい 各社の短・中期的影響は、新規生産能力への投資ではなく、混乱なく生産を維持する能力によって決まる

長期的には、依然として、沖合および陸上の双方地域での発見、および既存資産への増進回収技術の適用により、大きなポテンシャルがあると見られている

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今後の見通し②:直近の封鎖による影響

封鎖が数か月、1年と継続した場合には、リビア石油部門への長期的影響は免れない• すでに腐食しているパイプラインへの残留原油による更なる腐食• 貯留層への予期せぬ悪影響(El Sharara(Repsol)、El Feel(Eni)、Sarir、Messla等(国営

Agoco))が懸念• コスト増加

「リビアは経済的には現在の低生産量でどれだけの期間生き残れるか?」• NOCサナラ会長:「外貨準備残高による。枯渇すればIMFまたは世界銀行から融資を

求めることになる」

出所:World Bank

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今後の見通し③(参考)世界銀行見通し(2019年10月報告)

2019年10月、世界銀行はリビアの外貨準備高を約877億ドルと推定

(参考)世界銀行2019年10月報告より http://pubdocs.worldbank.org/en/772861570664060131/EN-MPO-OCT19-Libya.pdf

2019年4月からの政治抗争により、2017年から2018年にかけての経済回復の勢いは逆転 過去2年間で石油生産を2倍以上に伸ばしたものの減少(2019年7月)、抗争が収まる気配は無く、減少傾向

は年内継続と予想 これにより年末まで100万b/dしか生産できず、今後数年間このレベルに留まる見込み 2019年のGDP成長率は約5.5%に減速(2017年~2018年平均17.3%)の見込み

長期にわたる政治的空白が、権力と富の獲得に向けた戦争に変化、もろい現状(戦争ではないが平和でもない)を破壊し、これにより政治情勢は更に複雑化、合意到達は遅れ、安定化はますます遠のく

暴力の継続、および付随する経済、社会の不確実性は国民、移民に深刻な苦労を強いている 2011年からの輸出急減により公共サービスは大きく低下 電力供給は不安定化し食糧不足も招いた

貧困層はより不利に ⇔ 統治崩壊により、武力と資金を持つものがより強権化

現在の逆境と不確実性からの脱却を可能にする代替シナリオの実現には、国家および機関の統合に向けて「国家統治の意思の再興(revitalized political will)」が必要

重要な政策実行や改革(制度強化、経済安定化、民間雇用創出に向けた経済多角化)の実施を可能にする政治的取り決め(political solution)が必要

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今後の見通し③:リビアに必要なこと

長期的見通しは国家の政治的命運と密接に結びつき 和平プロセスの崩壊、武装グループや地域勢力に起因する供給混乱(閉鎖、破壊活動) 下振れリスクが高い

1.石油生産量、輸出量の復活:• 政府が権限を確立するには、石油・ガス収入へのコントロールが必須• リビア経済の維持のためには早期の生産再開が必要

2.IOCとの関係の再構築:• IOCはほぼ全ての外国人従業員をリビア国外へ退避、現地人員による操業が続く

まずは政治・セキュリティの安定性確保が必要• 将来の油ガス生産を支えるためには投資再開が不可欠 IOCが「適切」と判断で

きるように、リビア政府の協力・努力が求められる

3.NOCの立場:• 国内勢力争いの中で常に翻弄されている状況• IOCにとって、NOCは権限・役割において非常に重要な存在• 原油販売収入へのアクセスをどれだけ維持できるかも注目点