サービスを科学する: おもてなしの真意とは · ©2016 Yamauchi...

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© 2016 Yamauchi サービスを科学する: おもてなしの真意とは 山内 裕 京都大学 経営管理大学院 [email protected] 2016/6/15 1 This work was supported by JSPS KAKENHI Grant Numbers 23730349, 25240050 and JST RISTEX

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サービスを科学する:

おもてなしの真意とは

山内 裕京都大学 経営管理大学院

[email protected]/6/15

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科研費 23730349

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京都大学経営管理大学院

MBA (専門職学位課程)サービス価値創造プログラム

Ph.D. (博士後期課程)サービス・イノベーション&デザイン領域

エグゼクティブエデュケーションサービス・エクセレンス講座

プレMBAサービスMBA入門プログラム

* デザインスクール

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サービス?

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サービス 価値が生じる場=

サービス業第三次産業≠

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製造業のサービス化 Servitization

モノを売るだけでは付加価値を訴求できない。

グローバルな価格競争に直面する。

持続的に価値を生み出す仕組みとしてサービスに注目が集まる。

売った時点ではなく、使ってもらう時点で儲ける。

使ってもらう場面をデザインしていく。

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Nike+

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サービスデザイン

一つのタッチポイントではなく、顧客のジャーニー(旅)をデザインする。

タッチポイント : 顧客との接点

顧客ジャーニー : タッチポイントをつなげ合わせた体験の全体。

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サービスとは何か?

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顧客にベネフィット(便益)をもたらす。

顧客の要求を満たす。

顧客の問題を解決する。

顧客に居心地のよい空間を作り、丁寧に応対して、顧客をもてなす。

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「サービスとは闘いである。」

“ Every service is an act of struggle ”

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『二郎は鮨の夢を見る』DVD&BD発売中販売元:アミューズソフト(c) 2011 Sushi Movie,LLC

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リサーチのデザイン

エスノメソドロジー/会話分析 ‒ 鮨屋での実際のやりとりをビデオに撮り分析する。

鮨屋A顧客 11人 (incl. 3組のペアと1組の3人組)

鮨屋B顧客 6人 (incl. 2組のペア)

鮨屋C顧客 7人 (incl. 2組のペア)

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01 Ch : え:::.hhh早速ですが(0.5) [お飲]み物はどうしましょうか.=02 C1 : [8�]03 C1 : =�::::(.)<�>(1AD2:n�GKJ2:04 Ch : >�GKJ�"9(= [�<05 C1 : [�2��2* [ ¿06 Ch : [>+�2*6<

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01 AS : �� � !�,(9([=� 02 C : [GKJC03 (.)04 AS : GKJ!(.)����3 [%'�9*!05 C : [↑D:06 C : )<���2.

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01 Chf : HI&D��: 8.(0.4)� !�, [(9* 02 C4 : [��#-&�03 (.)04 Chf : ��C.05 (0.2) ((Chf ! C4 ?�C+?*))06 Chf : [8�]07 AS : [8�]08 (.)09 Chf : ���2*

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客をテストする:

1. 職人は説明もせず <当然のように> 難しい質問をする。

自分の客はこれぐらい答えることができて当然であるという定義。

2. 客は自分の行為が適切かどうか心配しながら注文する。経験のある客は、端的に答える。

どういう客かがわかる。

3. 職人が注文を受け取る。

適切性を承認する。

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何かお切りしますか?

「切る」って何?

「はい」と答える?

何を切るのかを答えなければならない

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01 Chf : �DL,M8� (0.3)�@9* ?02 (0.2)03 B3 : �/(0.2)8�.(0.4)�(04 (0.2)05 Chf : �!��2*# #.06 (0.4)07 Chf : ����(0.2)�E<F>.08 (1.1)09 B3 : ��:)<��: ?10 Chf : 8�.

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((Chf!B27�51))01 Chf : 4D ��@(9* 02 (6.0)((B2!��*))((22��))25 (5.3)((Chf!��5�0#!�B2C��*)) 26 B2 : .=/3-$)<���C�/1;?/1,27 (0.4)28 Chf : �:: Er::29 B2 : > [ B ( � ]2* ?30 Chf : [< ( > B � ¿]31 (.)32 Chf : ( [ B�]¿33 B2 : [8�]

経験のある客

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食べ物の注文

親方が当たり前のように難しい質問する(Yes/Noで聞く)。

客が3つのパターンで答える。1. 客が「はい」と答えてしまう。2. 質問の意味がわからない客もいる。3. 経験の豊富な客は、自然にタネを指定しようとする。

これにより客のレベルがわかる。

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しかし、なぜ客をテストするのか?

既存のサービス理論では説明がつかない。

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まずは厚遇、歓待を見極めよう。

ホスピタリティhospitality

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ホスピタリティの不可能性

ホスピタリティ hospes= hostis + pets (ラテン語)

hostis = 「見知らぬもの」>> hostilis「敵意ある見知らぬもの」

pets = 「力を持つ」 (e.g., potis, potes, potentia)

敵意ある見知らぬものに対して、力を持つこと。

客の要求に一方的にこたえることではない。

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Jacques Derrida

Émile BenvenisteBenveniste, É. (1983). 一般言語学の諸問題. (通. 岸本). みすず書房.Derrida, J. (1999). 歓待について. (浩. 廣瀬). 産業図書.

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文化人類学者にとっては当たり前

部落の外からやってきた見知らぬ人を最大限もてなす。

見知らぬ人は、不気味で「魔術を持った恐しい人」である。

神あるいはその使者かもしれない。

聖なる他者に対する自身の無化 (アブラハム)?

もてなしによって、衝突を避けようとしている?

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力の呈示

数多くの客人をつねに泊めて気前の良さで客人を恐縮させ、そのことでほかの宿主に抜きんでるということが高貴であることの証であるとされた。(p. 8)

Peyer, H. C. (1997). 異人歓待の歴史. (岩井隆夫訳). ハーベスト社.

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相手のためになる親切をすることはまさっている人のすることだが、相手から自分のために親切にしてもらうことは、劣っている人にふさわしいことだからである。それでこの人は、受けた恩義には、それを上回るお返しをするのである。なぜなら、このようにすれば、はじめに親切にした人がかれに借りを負うことになり、しかもかれから親切にしてもらったことになるからである。(pp. 281-282)

Aristotle. (2015). ニコマコス倫理学. (渡辺& 立花訳). 光文社.

Aristotle

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贈与

首長とその部下のあいだ、部下とさらにその追従者のあいだで、こうした贈与によって階層性が作られるのである。与えることが示すのは、それを行う者が優越しており、より上位でより高い権威者(magister)であるということである。つまり、受け取って何のお返しもしないこと、もしくは受け取ったよりも多くのお返しをしないことが示すのは、従属することであり、被保護者や召使いになることであり、地位が低くなること、より下の方に落ちることなのである(従僕 minister)。(p. 276)

Mauss, M. (2009). 贈与論.

Work by キヨンネ / CC BY

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ホスピタリティは倫理の根源に関わる

無条件に他者を迎え入れる。

未知の他者に自己を開く。

自分のコントロールできない外部性と向き合う。

単に客に対して心配りをする、客を喜ばせるという意味ではない。

現代社会においてホスピタリティは失われつつある…

Levinas, E. (2005). 全体性と無限. (熊野純彦訳). 岩波書店.Schérer, R. (1996). 歓待のユートピア. (安川訳). 現代企画室.

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ホスピタリティ

永遠平和のための第三確定条項

世界市民法は、普遍的な 友 好を

もたらす諸条件に制限されなければ

ならない。

『永遠平和のために』イマニュエル・カント

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しかし、現代のサービスがなぜ闘いになるのか?

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Chef: お飲物はいかがいたしましょうか?

サービスの定義: 我々の客は、この質問に問題なく答えることができる。

我々のサービスは、あなたが日常生活で経験するものよりも洗練されている。

Customer: え::っ (0.2)じゃ: ビール:で:?

できるだけルーチンに答えることで、自分がその場にふさわしいことを演じる。

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文化の構築

提供者は自分のサービスのために洗練された文化を作り上げる。

顧客はその文化にふさわしい人物として背伸びをする。

常に緊張感を伴う。

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ショート (short), トール (tall), グランデ (grande), ヴェンティ (venti), エノルメ (enorme)…

Grande soy mocha chip chocolate sauce macha cream frappuccino

Tall double shots low-fat non-foam extra hot extra caramel sauce latte

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表向き、メニューはレストランの売り物を列挙していることになっているが、その言葉に情報価値があると思う者はほとんどいなかった。十九世紀初頭の、裕福で教養があるフランス品展の旅行者も、自らの言語能力に苛立つことがしばしばだったが、フランス語を母語とする者でさえ、メニューが理解できる証はなかった(図14)。 (pp. 285-287)

Spang, R. L. (2001). レストランの誕生. (小林正己, Trans.). 青土社.

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顧客を満足させようとすると、

顧客は満足しなくなる。

サービスの弁証法

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顧客満足の弁証法:

鮨屋の職人が自分のために仕事をしたら?

職人は「自分のために」仕事をするから、価値がある。

しかし、自分ために仕事することで、客のために仕事している。

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承認をめぐる弁証法的闘争

客提供者

笑顔を見せ、心を配り、喜ばせる

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承認をめぐる弁証法的闘争

提供者

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承認をめぐる弁証法的闘争

提供者

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客はそのサービスの価値を認めるのは、

職人が客のためではなく、自分のために仕事しているから。

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主人と奴隷の弁証法

「生死をかけた闘い」自己意識は、他の自己意識に出会い、承認を求める。

主人は奴隷の承認に依存するが、従属する奴隷からの承認では意味がない。

Hegel, G. W. F. (1977). Phenomenology of Spirit. (J. N. Findlay & A. V. Miller, Trans.). Oxford University Press, USA.

GWF ヘーゲル

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我々は闘争を経て初めて、自己を獲得できる。

客という主体はサービスの結果であって、そのインプットではない。

客を満足させること(だけ)ではなく、客がどういう人になるのかが問題である。

承認をめぐる闘争

Honneth, A. (2014). 承認をめぐる闘争. (山本啓, 直江清隆訳). 法政大学出版局.

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「鮨を真剣に味わうお客様が減れば、職人も緊張感を失い店の味は落ちます。… お客様が最高の味と雰囲気を楽しんでこそ店の真価が伝わる。その味わいがお客様の味覚を育て、真剣勝負する職人を鍛え、店の味を高めるのです。」

中澤圭二. (2007). 鮨屋の人間力. 文藝春秋.. p. 17

弁証法的動態性

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『二郎は鮨の夢を見る』DVD&BD発売中販売元:アミューズソフト(c) 2011 Sushi Movie,LLC

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気遣っていないように見せる気遣い

気遣いに対して相手が気遣うことに対する気遣い。

さらには、自分にとってはそのような気遣いなど大したことではないというジェスチャー。

つまり力の呈示。

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コワい顔しているけど、実は気遣っているという効果。

明示的に気遣いを見せると?

支払いを得て客に媚びる形となり、提供者は自らの地位を毀損する。

気遣いをしていないように見せることで、この地位が逆転する。

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サービスは高級になるほど、「サービス」が減っていく。

笑顔、親しみやすさ、情報、迅速さ…

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礼儀作法

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わかりにくい作法

白身、赤身、こってり、巻物。

親指、中指、人差し指でつかんで食べる。

軍艦はきゅうりを醤油につけてたらす。

がりに醤油をつけて上からかける。

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二重否定

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礼儀作法の構築

作法とは差異化=卓越化の実践にほかならない。

作法とは、非実用的である。

作法を身につける.=非実用的なことに時間を費すことが可能である.=経済的に余裕がある。

自分の直ぐ下の階層の人との差異化; 自分の直ぐ上の階層の人への同化。

Elias, N. (1977). 文明化の過程. (赤井慧爾, 中村元保, 吉田正勝, Trans.). 法政大学出版局.Veblen, T. (1998). 有閑階級の理論. (高哲男, Trans.). 筑摩書房.

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二重否定

好きなように食べればいい。

順番なんてない。

江戸前ではサーモンは握らない。

だけど鮭児はある。

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支配クラス 希少性

非支配クラス 粗野な

文化資本

(&経済資本)

緊張のなかのくつろぎ

気楽でありふれた

Bourdieu, P. (1984). Distinction: a social critique of the judgement of taste . (R. Nice). Cambridge: Harvard University Press.

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支配クラス 希少性

非支配クラス 粗野な

文化資本

(&経済資本)

緊張のなかのくつろぎ

気楽でありふれた

Bourdieu, P. (1984). Distinction: a social critique of the judgement of taste . (R. Nice). Cambridge: Harvard University Press.

だらしない

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支配クラス 希少性

非支配クラス 粗野な

文化資本

(&経済資本)

緊張のなかのくつろぎ

気楽でありふれた

Bourdieu, P. (1984). Distinction: a social critique of the judgement of taste . (R. Nice). Cambridge: Harvard University Press.

これ見よがしの

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© 2016 Yamauchi191

支配クラス 希少性

非支配クラス 粗野な

中間クラス 上昇志向

文化資本

(&経済資本)

緊張のなかのくつろぎ

仰々しい

気楽でありふれた

Bourdieu, P. (1984). Distinction: a social critique of the judgement of taste . (R. Nice). Cambridge: Harvard University Press.

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「サービスとは闘いである。」

“ Every service is an act of struggle ”

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闘い Struggle

サービスは単に要求を充足し、客を満足させる活動ではない。

承認をめぐる闘争を通して、人々が自己を呈示する。

自分がどういう人間なのかを呈示し、相手がどういう人間なのかを見極める。

闘わないサービスは、客を自分の世界に閉じ込め、一人の独立した人間だとは捉えていない。

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注意

笑顔がダメなのではない。不親切がいいのではない。

サービスにおける社会的関係は複雑であり、このように画一的に言うことに意味はない。

サービスをどのように読み解くのか?

それを試されている。

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サービス化社会を乗り越えて

社会的な関係性がサービスに置き換わっている。

金を払えば、他の人がやってくれる。

金を払えば、満足させてくれる。

本当にそのような社会を求めているのだろうか?

むしろ闘いを通して自らを証明するような社会の方が、

我々にとって生きる価値があるのではないだろうか?

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山内 裕京都大学 経営管理大学院

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This work was supported by JSPS KAKENHI Grant Numbers 23730349, 25240050 and JST RISTEX