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薬剤投与時に使用する シリンジ 37 在宅医療において高 K 血症となった腸瘻の CKD 患者に対し薬剤師の栄養学・薬学的 アプローチにより血中 K 濃度の改善に至った一例 金城学院大学 薬学部 薬学科 医療法人 杉山クリニック 株式会社 浅井薬局 〇高橋 果歩 ¹, 福石 信之 ¹, 杉山 秀樹 ², 浅井 治行 ³ はじめに 高カリウム (K) 血症となった腸瘻の慢性腎臓病 (CKD:Chronic Kidney Disease) 患者に対し、経管で K 吸着剤の投与を行うことは有効 であるが、在宅医療においては腸瘻チューブの閉塞リスクを高める危険性がある。今回、薬剤師が介入し栄養剤の見直しを行ったこ とで、血中 K 濃度が改善し K 吸着剤の中止に至った一例を経験したので報告する。 患者背景 【患者】70歳代男性 身長:168.2cm 体重:48.3kg キーパーソン:妻(70歳代) 【既往歴】 食道癌、胃菅再建術による廃用症候群 Ⅱ型糖尿病、心房細動、慢性心不全、不眠症、CKD 【現病歴】 胸部食道癌にて X 病院へ入院。食道癌の手術を実施。 術後、嚥下が困難となり、腸瘻を増設し経腸栄養剤が開始となった。 術後の状態が安定し、患者の希望により在宅療養の開始となった。 ラコールNF®: 朝 2 昼 2 夕 1 リーナレン LP®: 眠前 1 30 60 90 120 150 換算値 % 基準値 % 水分量 mL タンパク質 g K 含量 mg カロリー kcal 換算値(%)は患者の CKD ステージ(3b) の食事療法基準を 100%とし、算出したも のである。上限値と下限値がある場合は中 間の値を用いて算出した。 経腸栄養剤 ※写真・各成分値は各社 HP から引用 在宅療養移行後の経過 在宅での医療は病棟とは異なり介護者が家族であることが多い。在宅医療において薬剤師は医療的側面と介護的側面の双方を理 解し安全に医療を継続していけるように手技の簡略化など家族の負担軽減に努める必要がある。本症例は在宅医療において薬剤師 が介入し、栄養学的・薬学的提案をすることで高 K 血症の改善と介護者負担の軽減ができた症例であると考えられる。 メリット:K 摂取の 30%減量が可能となった。カロリーは 1400kcal で同じに保つことができる。水分量も大きく変更は無い。 デメリット:タンパク質の摂取量が少なくなる。食品として扱われ保険適応がないため、1日 550 円のコストが増加する。 結語 ラコール NF® 200 mL/1 パック カロリー kcal カリウム含量 mg タンパク質 g 水分量 mL 200 400 276 8.76 170 120 4.0 リーナレン LP® 250 mL/1 パック 189.6 分類 医薬品 ※保険適応あり 食品 ※保険適用なし 経腸栄養剤名 実物写真 カロリー kcal K 含量 mg タンパク質 g 水分量 mL 400 400 552 17.52 440+α 552 17.52 就寝前 440+α 200 276 8.76 270+α 400 120 4.0 389.6+α 1400 1500 47.8 1539.6+α 換算値 % 96.6 75.0 141.4 127.5 +αはフラッシュで使用した水分量 経腸栄養剤の投与経路 ( 腸瘻 ) 薬剤・栄養剤投与スケジュール 夕分の薬剤 フラッシュ 眠前の薬剤 フラッシュ 水 900mL 朝分の薬剤 フラッシュ 昼分の薬剤 フラッシュ 7時 11 時 13 時 17 時 30 分 19 時 30 分 21 時 30 分 ラコール NF® 2 パック リーナレン LP® Z1 パック ラコール NF® 1 パック リーナレン LP® Z1 パック 現在服用中の薬剤・栄養剤 ( 全ての薬剤は粉砕し腸瘻で投与 ) 腸ろうから栄養剤を投与する際の注意点 ・高浸透圧性の下痢が起きやすいため滴下速度を遅くする。 ・栄養剤、薬剤投与によるチューブ閉塞回避のため投与後フラッシュ を行う。 ・投与時間が長時間になる ・薬剤投与時の手技が煩雑になる 患者・介護者の負担増大 ムコダインDS50%® 朝昼夕 (1500mg) ミヤ BM® 朝昼夕 (3 錠 ) ミチグリニド Ca 錠 10mg® 朝昼夕 (3 錠 ) 塩化ナトリウム 朝夕 (2 錠 ) ロラタジン錠 10mgOD® 朝 (1 錠 ) タケキャブ錠 10mg® 朝 (1 錠 ) フロセミド錠 40mg ® (1 錠 ) ワーファリン錠 1mg® (1 錠 ) ロゼレム錠 8mg® 就寝前 (1 錠 ) ランタス注ソロスター ® (6 単位 ) ラコール NF 配合経腸用液 ® 朝2夕1 リーナレン LP® 昼 1 就寝前 1 Day 13 での検査結果 血中 K 濃度 mEq/L HbA1c 血清 Cr 値 eGFR mg/dL mL/min/1.73m² 6.3 6.9 1.23 44.5 高 K 血症 高 K 血症への対処 ・K の排泄促進 ・K の吸収阻害 ・K 摂取量の制限 Day 18 より K 吸着剤であるポリスチレンスルホン酸カルシウム ( カリ メート散 ®) を 15g/ 分 3 で開始。 ※カリメート ® を経腸投与する際の注意点 腸瘻 チューブの閉塞を防ぐため 2.5g を 20mL で懸濁し、すぐに 注入することが推奨されている。 患者・介護者の負担が更に増大 チューブ閉塞リスクの増大 薬剤師によるアプローチ ラコールNF®:朝 2 夕 1 リーナレン LP®:昼 1 眠前 1 30 60 90 120 150 換算値 % 基準値 % 水分量 mL タンパク質 g K カリウム含量 mg カロリー kcal 換算値(%)は患者の CKD ステージ(3b) の食事療法基準を 100%とし、算出したも のである。上限値と下限値がある場合は中 間の値を用いて算出した。 ラコールNF®: 朝 2 昼 2 夕 1 リーナレン LP®: 眠前 1 30 60 90 120 150 換算値 % 基準値 % 水分量 mL タンパク質 g K 含量 mg カロリー kcal 換算値(%)は患者の CKD ステージ(3b) の食事療法基準を 100%とし、算出したも のである。上限値と下限値がある場合は中 間の値を用いて算出した。 カロリー kcal K 含量 mg タンパク質 g 水分量 mL 400 400 552 17.52 440+α 552 17.52 就寝前 440+α 200 276 8.76 270+α 400 120 4.0 389.6+α 1400 1500 47.8 1539.6+α 換算値 % 96.6 75.0 141.4 127.5 +αはフラッシュで使用した水分量 カロリー kcal カリウム含量 mg タンパク質 g 水分量 mL 400 400 552 17.52 440+α 120 4.0 就寝前 389.6+α 200 276 8.76 270+α 400 120 4.0 389.6+α 1400 1068 34.28 1489.2+α 換算値 % 96.6 53.4 101.4 123.3 +αはフラッシュで使用した水分量 在宅での栄養療法 経腸栄養剤の種類、量の検討により K 摂取量の制限を行い高 K 血症改善を図る。 経腸栄養剤変更後の推移・考察 2 3 4 5 6 7 血中 K 濃度 mEq/L Day 122 Day 112 Day 60 Day 26 Day 13 Day 1 破線は血中 K 濃度 の基準値 0 300 600 900 1200 1500 経腸栄養剤 カロリー kcal Day122 Day112 Day60 Day26 Day13 Day1 0 300 600 900 1200 1500 経腸栄養剤 カリウム含量 mg Day122 Day112 Day60 Day26 Day13 Day1 Day 72 カリメート散 ® 終了 変更前カロリー 変更後カロリー 変更後 K 含量 Day18 にカリメート散 ® を開 始し Day26 には血中 K 濃度が 4.7mEq/L となり改善した。 Day28 に経腸栄養剤のメニュー 変更を行った。 1 か月ほど経過観察を行った後、 患者の血中 K 濃度の状態が安定 したと判断し、カリメート散 ® が中止された。 一時的な血中 K 濃度の上昇はあ ったが、その後低下し現在は 安定している状態である。 Day 18 カリメート散 ® 開始 腸瘻 基準値 3.5 ~ 5.3 4.4 ~ 6.2 0.6 ~ 1.1 30 ~ 44 担当者連絡会にて提案し、医師・患者・患者家族の同意を得て変更実施 Day 28 栄養剤の変更 眠前の薬剤 水 900mL 朝分の薬剤 7時 11 時 13 時 17 時 30 分 19 時 30 分 21 時 30 分 ラコール NF® 2 パック ラコール NF® 2 パック ラコール NF® 1 パック リーナレン LP® Z1 パック カリメート散 ® (2.5g/20mL)×2 昼分の薬剤 夕分の薬剤 カリメート ® 開始後の薬剤投与スケジュール カリメート散 ® (2.5g/20mL)×2 カリメート散 ® (2.5g/20mL)×2 フラッシュ フラッシュ フラッシュ フラッシュ 変更前 K 含量 ※基準値は ( 株 ) ファルコバイオシステムズが定めるものを参考とした

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薬剤投与時に使用するシリンジ

37在宅医療において高 K血症となった腸瘻の CKD患者に対し薬剤師の栄養学・薬学的アプローチにより血中 K濃度の改善に至った一例 金城学院大学 薬学部 薬学科

医療法人 杉山クリニック株式会社 浅井薬局

〇高橋 果歩 ¹, 福石 信之 ¹, 杉山 秀樹 ², 浅井 治行 ³

はじめに 高カリウム (K) 血症となった腸瘻の慢性腎臓病 (CKD:Chronic Kidney Disease) 患者に対し、経管で K吸着剤の投与を行うことは有効であるが、在宅医療においては腸瘻チューブの閉塞リスクを高める危険性がある。今回、薬剤師が介入し栄養剤の見直しを行ったことで、血中 K濃度が改善し K吸着剤の中止に至った一例を経験したので報告する。

患者背景【患者】70歳代男性 身長:168.2cm 体重:48.3kg    キーパーソン:妻(70歳代)【既往歴】食道癌、胃菅再建術による廃用症候群Ⅱ型糖尿病、心房細動、慢性心不全、不眠症、CKD【現病歴】胸部食道癌にて X病院へ入院。食道癌の手術を実施。術後、嚥下が困難となり、腸瘻を増設し経腸栄養剤が開始となった。術後の状態が安定し、患者の希望により在宅療養の開始となった。

ラコールNF®: 朝 2 昼 2 夕 1リーナレン LP®: 眠前 1

30

60

90

120

150  換算値 %

 基準値 %

水分量mL

タンパク質g

K含量 mg

カロリーkcal

換算値(%)は患者の CKD ステージ(3b)の食事療法基準を 100%とし、算出したものである。上限値と下限値がある場合は中間の値を用いて算出した。

経腸栄養剤

※写真・各成分値は各社HPから引用

在宅療養移行後の経過

 在宅での医療は病棟とは異なり介護者が家族であることが多い。在宅医療において薬剤師は医療的側面と介護的側面の双方を理解し安全に医療を継続していけるように手技の簡略化など家族の負担軽減に努める必要がある。本症例は在宅医療において薬剤師が介入し、栄養学的・薬学的提案をすることで高 K血症の改善と介護者負担の軽減ができた症例であると考えられる。

メリット:K摂取の 30%減量が可能となった。カロリーは 1400kcal で同じに保つことができる。水分量も大きく変更は無い。デメリット:タンパク質の摂取量が少なくなる。食品として扱われ保険適応がないため、1日 550 円のコストが増加する。

結語

ラコールNF®200 mL/1 パック

カロリー kcal

カリウム含量 mg

タンパク質 g

水分量 mL

200

400

276 8.76 170

120 4.0 リーナレン LP® 250 mL/1 パック 189.6

分類

  医薬品※保険適応あり

  食品※保険適用なし

経腸栄養剤名 実物写真

カロリー kcal

K 含量 mg

タンパク質 g

水分量 mL

400400

552 17.52 440+α552 17.52昼

就寝前

440+α

200 276 8.76 270+α400 120 4.0 389.6+α

1400 1500 47.8 1539.6+α

換算値% 96.6 75.0 141.4 127.5+αはフラッシュで使用した水分量

経腸栄養剤の投与経路 ( 腸瘻 )

薬剤・栄養剤投与スケジュール

夕分の薬剤フラッシュ

眠前の薬剤フラッシュ

水 900mL

朝分の薬剤フラッシュ

昼分の薬剤フラッシュ

7時

11 時

13 時

17 時 30 分

19 時 30 分

21 時 30 分

ラコールNF®2パック

リーナレン LP®Z1 パック

ラコールNF®1パック

リーナレン LP®Z1 パック

現在服用中の薬剤・栄養剤 ( 全ての薬剤は粉砕し腸瘻で投与 )

腸ろうから栄養剤を投与する際の注意点・高浸透圧性の下痢が起きやすいため滴下速度を遅くする。・栄養剤、薬剤投与によるチューブ閉塞回避のため投与後フラッシュ を行う。

・投与時間が長時間になる・薬剤投与時の手技が煩雑になる

患者・介護者の負担増大

ムコダインDS50%®朝昼夕 (1500mg)ミヤ BM®朝昼夕 (3 錠 )ミチグリニドCa錠10mg®朝昼夕(3錠 )塩化ナトリウム 朝夕 (2 錠 )ロラタジン錠 10mgOD®朝 (1 錠 )タケキャブ錠 10mg®朝 (1 錠 )

フロセミド錠 40mg ®朝 (1 錠 )ワーファリン錠 1mg®朝 (1 錠 )ロゼレム錠 8mg®就寝前 (1 錠 )ランタス注ソロスター®昼 (6 単位 )ラコールNF配合経腸用液®朝 2夕 1リーナレン LP® 昼 1就寝前 1

Day 13 での検査結果血中K濃度 mEq/L

ーHbA1c

血清 Cr 値

eGFR

mg/dL

mL/min/1.73m²

6.3

6.9

1.23

44.5

高 K 血症

高 K血症への対処

・Kの排泄促進・Kの吸収阻害・K摂取量の制限

Day 18 より K吸着剤であるポリスチレンスルホン酸カルシウム ( カリメート散®) を 15g/ 分 3 で開始。※カリメート®を経腸投与する際の注意点 腸瘻 チューブの閉塞を防ぐため 2.5g を 20mL で懸濁し、すぐに 注入することが推奨されている。

患者・介護者の負担が更に増大 チューブ閉塞リスクの増大

薬剤師によるアプローチラコールNF®:朝 2夕 1リーナレン LP®:昼 1 眠前 1

30

60

90

120

150  換算値 %

 基準値 %

水分量 mL

タンパク質 g

K カリウム含量 mg

カロリーkcal

換算値(%)は患者の CKD ステージ(3b)の食事療法基準を 100%とし、算出したものである。上限値と下限値がある場合は中間の値を用いて算出した。

ラコールNF®: 朝 2 昼 2 夕 1リーナレン LP®: 眠前 1

30

60

90

120

150  換算値 %

 基準値 %

水分量mL

タンパク質g

K含量 mg

カロリーkcal

換算値(%)は患者の CKD ステージ(3b)の食事療法基準を 100%とし、算出したものである。上限値と下限値がある場合は中間の値を用いて算出した。

カロリー kcal

K 含量 mg

タンパク質 g

水分量 mL

400400

552 17.52 440+α552 17.52昼

就寝前

440+α

200 276 8.76 270+α400 120 4.0 389.6+α

1400 1500 47.8 1539.6+α

換算値% 96.6 75.0 141.4 127.5+αはフラッシュで使用した水分量

カロリー kcal

カリウム含量 mg

タンパク質 g

水分量 mL

400400

552 17.52 440+α120 4.0昼

就寝前

389.6+α

200 276 8.76 270+α400 120 4.0 389.6+α

1400 1068 34.28 1489.2+α

換算値% 96.6 53.4 101.4 123.3+αはフラッシュで使用した水分量

在宅での栄養療法

経腸栄養剤の種類、量の検討により K摂取量の制限を行い高 K血症改善を図る。

経腸栄養剤変更後の推移・考察

2

3

4

5

6

7

血中K濃度 mEq/L

Day 122Day 112Day 60Day 26Day 13Day 1

破線は血中 K濃度の基準値

0

300

600

900

1200

1500

経腸栄養剤

カロリー kcal

Day122Day112Day60Day26Day13Day1

0

300

600

900

1200

1500

  経腸栄養剤

カリウム含量 mg

Day122Day112Day60Day26Day13Day1

Day 72カリメート散®終了

変更前カロリー 変更後カロリー

変更後 K含量

Day18 にカリメート散®を開始しDay26 には血中 K濃度が4.7mEq/L となり改善した。Day28 に経腸栄養剤のメニュー変更を行った。1か月ほど経過観察を行った後、患者の血中 K濃度の状態が安定したと判断し、カリメート散®が中止された。一時的な血中 K濃度の上昇はあったが、その後低下し現在は安定している状態である。

Day 18カリメート散®開始

腸瘻

基準値

3.5 ~ 5.3

4.4 ~ 6.2

0.6 ~ 1.1

30 ~ 44

担当者連絡会にて提案し、医師・患者・患者家族の同意を得て変更実施

Day 28栄養剤の変更

眠前の薬剤

水 900mL

朝分の薬剤

7 時

11 時

13 時

17 時 30 分

19 時 30 分

21 時 30 分

ラコールNF®2パック

ラコールNF®2パック

ラコールNF®1パック

リーナレン LP®Z1 パック

カリメート散®(2.5g/20mL)×2

昼分の薬剤

夕分の薬剤

カリメート®開始後の薬剤投与スケジュール

カリメート散®(2.5g/20mL)×2

カリメート散®(2.5g/20mL)×2

フラッシュ

フラッシュ

フラッシュ

フラッシュ

変更前 K含量

~ ~~ ~

※基準値は ( 株 ) ファルコバイオシステムズが定めるものを参考とした