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ドイツにおける サイトブロッキングの 間接侵害構成 OLG München, Urteil v. 14.06.2018 – 29 U 732/18の紹介を中心として 東海⼤学総合社会科学研究所⻑・知的財産部⾨⻑ 教授 角田 政芳(Masayoshi SUMIDA) 2018年7月28日 東海大学総合社会科学研究所/日本知財学会 第2回コンテンツと法シンポジウム 〜諸外国におけるサイトブロッキング法制〜 諸外国におけるサイトブロッキング法制 (ドイツ/独)

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ドイツにおけるサイトブロッキングの

間接侵害構成OLG München, Urteil v. 14.06.2018 – 29 U

732/18の紹介を中心として

東海⼤学総合社会科学研究所⻑・知的財産部⾨⻑

教授 角田 政芳(Masayoshi SUMIDA)

2018年7月28日東海大学総合社会科学研究所/日本知財学会第2回コンテンツと法シンポジウム

〜諸外国におけるサイトブロッキング法制〜

諸外国におけるサイトブロッキング法制(ドイツ/独)

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ISPC

(サーチエンジンを含む:著47条の6)

サイトブロッキング⽤侵害者情報受領後①C自身の公衆送信権の直接侵害(著23条)②Aの複製権公衆送信権侵害の間接侵害

(ファイルローグ判決)

③Bの公衆送信権侵害の間接侵害但し、損害賠償責任は免除(プロ責法)

④通信の秘密:他の情報は⾒ない(BGH)

1.サイトブロッキングの法的構成

ISPD

ユーザB複製・公衆送信

ISPC

ユーザA複製・公衆送信

ISPD

①公衆送信権の直接侵害(著23条)(まねきTV判決)

②Aの送信可能化権侵害の幇助責任・間接侵害但し、損害賠償責任は免除(プロ責法)

①公衆送信権の直接侵害(著23条)公衆?(まねきTV判決)②Aの複製権侵害の間接侵害但し、損害賠償責任は免除(プロ責法)

①ネット瞬時性②ネット自動送信性

ブロックフィルタリング

ユーザA

ユーザB

ファイル共有・知情ダウンロード:複製権侵害(著21条、著30条1項3号)

公衆送信権(著23条:送信可能化権)侵害

違法UL

送信

送信要求

送信

※2018年3月10日第1回コンテンツと法シンポジウム資料再掲

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2.⽴法の提案

1.知的財産法各法に差止請求権規定を新設

例:著作権法112条3項新設

①著作者・・・は、その著作者人格権、著作権・・・を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。 ②<省略>

③第1項の規定は、インターネット・サービスの提供者が、そのサービスを著作権・・・を侵害するために他人が使用することを知っているか、知るべきである場合には、その提供者に適用する。(新設)

2.プロバイダー責任制限法第5条を新設

「第5条 権利を有する者は、特定電気通信役務提供者(インターネット・サービス提供者)が、その役務(サービス)を⾃⼰の権利を侵害するために他人が使用することを知っているか、知ることができたと認めるに⾜りる相当の理由があるときは、そのサービスの提供を停⽌⼜は予防を請求することができる。」

3.著作権の外国犯処罰規定(刑法施⾏法27条1号)の活用

※2018年3月10日第1回コンテンツと法シンポジウム資料再掲

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3.ドイツにおける著作権の間接侵害概要

1.間接侵害の沿革

(1)⽴法

・著作権法69条f項(権利の侵害)

・著作権法97条(不作為及び損害賠償を求める請求権)

(2)学説

(3)判例

・BGH v. 18.5.1955, GRUR1955 S.492”Tonbandgeraete”

・BGH v. 22.1.1960, GRUR1960S.340”WerbungfuerTonbandgeraete”

・BGH v. 29.5.1964, GRUR1965 S.1040”Personalausweise”

・BGH v. 9.6.1983, GRUR1984 S.54ff”Kopierladen”

・BGH v.15.10.1998, GRUR1999 S.418ff”Moebelklassiker”

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3.ドイツにおける著作権の間接侵害概要(1)⽴法

① 著作権法69条f項(権利の侵害)

(1) 権利保有者は、所有者⼜は占有者に対して、違法に製作され若しくは頒布され⼜は違法な頒布のために特定された複製物のすべてを廃棄するよう求めることができる。第98条第3項及び第4項は、ここに準用するものとする。

(2) 前項は、技術的なプログラム保護機構の不法な除去⼜回避を容易にすることに専ら特定された手段について、準用するものとする。

②著作権法97条(不作為及び損害賠償を求める請求権)

(1) 著作権その他この法律に基づき保護を受ける権利を違法に侵害する者に対して、その被害者は、侵害の排除を、反復のおそれがあるときは不作為を請求することができる。不作為を求める請求権は、違反⾏為が最初に差し迫る場合にも認められる。

(2) その⾏為を故意⼜は過失によって⾏う者は、被害者に対して、それによって⽣じた損害について賠償の義務を負う。損害賠償の算定に際しては、加害者が権利の侵害によって得た利益を考慮することもできる。損害賠償請求権は、加害者が、侵害した権利に関する使⽤について許諾を得ていたならば、相当なる報酬として⽀払わなければならなかった⾦額を基礎とすることによって、計算することもできる。著作者、学術的刊⾏物の作成者(第70条)、写真家(第72条)及び実演芸術家(第73条)は、財産的損害とは異なる損害を理由とする場合にも、衡平の命ずるところに従い、⾦銭による賠償を求めることができる。

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3.ドイツにおける著作権の間接侵害概要

(2)学説

〜サービスプロバイダーの間接侵害の成⽴を認める⾒解〜

・Manz, Friederike, Die Hartung fuerUrheberrechtsverletzungen im Internet nachdeutschen und amerikanischem Recht, Muenchen1999.S.15.

・Schricker,Gerhard,Urhebergesetz,2,Aufl.Muenchen1999.

・Philipp Cepl,Die MittelbareUrheberrechtsverletzung,Berlin 2005

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Philipp Cepl,Die Mittelbare Urheberrechtsverletzung,Berlin 2005 S.63~S.64

「アクセスの提供の場合にも、間接的な著作権侵害が生じ得る。

アクセスプロバイダはコンテンツ自体を提供するのではなく、ネットワークだけを提供する。

彼は、インターネットに接続され、インターネットへのアクセスが保証されているコンピュータを提供する。

アクセスプロバイダも、ホストプロバイダと同様に、インターネット上の著作権侵害コンテンツを第三者が取得または配布できるようにする技術条件を作成するだけで、その活動は間接的な著作権の侵害⾏為として評価される。」

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ドイツBGH1955年5月18日「グルンディヒ・レポーター事件」

<判 旨> -その1-

「本件の被告自身は原告の著作権を侵害して複製をしてはおらず、

『グルンディヒ・レポーター』と称する録音機器を製造販売するにすぎない。著作権侵害の要件はその録音機器の使用者である第三者において充足されるのであって、被告が差止請求を受ける根拠についてはさらに検討しなければならない。

差止請求については、BGB1004条が根拠となる。差止請求には過失が要求されず、客観的に違法な妨害⾏為があれば足りる。BGB1004条にいわゆる妨害を⾏う者とは、例え間接的であっても、保護されるべき財産権の侵害を招いた者である。」

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4.ドイツにおけるサイト・ブロッキングの現状

1. 内閣府知的財産戦略推進事務局「インターネット上の海賊版対策に係る現状と論点整理」2018年2月16日7頁:

ドイツ

■根拠法なし

「2015年にドイツ連邦最⾼裁(BGH)において、ドイツ⺠法823

条、1004条に基づく間接侵害(störerhaftung)の概念を適⽤し

、 侵害サイトへのアクセスを無効とする救済措置の有効性

を認容。」

⇒ この解釈により、サイトブロッキングの 可能性が肯定された。

(現時点で適⽤事例なし)

2.根拠法:

テレメディア法(TelemediengesetzVom 28.September 2017

3.適⽤事例:

LG München I, Urteil v. 01.02.2018 – 7 O 17752/17

OLG München, Urteil v. 14.06.2018 – 29 U 732/18諸外国におけるサイトブロッキング法制

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2017年改正テレメディア法Telemediengesetz von 28.September 2017

第3章 侵害責任

第7条 総則

(1)&(2)<省略>

(3)⼀般法に基づいて、司法または公式の命令による情報を削除する義務または情報の使用をブロックする義務は、第8条から第10条に基づいてサービス提供者の責任を負わない場合でも、影響を受けない。

電気通信法第88条に基づく電気通信の秘密は守られなければならない。

(4)一方のユーザが、他のユーザの知的財産権を侵害するためにテレメディアサービスを使用している場合において、その知的財産権の所有者が権利の侵害を是正する他の⼿段を有していない場合、その権利の所有者は、第8条3項に基づいて、侵害の繰り返しを防ぐために情報の使用をブロックすることを要求することができる。

ブロックは合理的で、かつ⽐較衡量されたものでなければならない。

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判例(1)ドイツ最⾼裁判所2015年11月26日判決BGH 26.11.2015 “GEMA v Deutsche Telekom”

【判 旨】 -その1-

A.本件の被告は原告に対し妨害者Störerin責任を負うことはない。

アクセス・プロバイダーの妨害者責任Störerhaftung von Access-Providernは、―テレ・メディア法や放送条約において定められている特権を考慮しても―原則的に認められる。

それに加えて、著作権で保護された音楽著作物を無断でアップロードしたファイルにつながるリンクやURLを提供することは、公衆提供権を侵害することとなる。

被告は、インターネットへのアクセスを仲介したことにより、原告が著作権侵害の責任を追求するに値する因果関係のある寄与を⾏っていることとなる。 ・・・しかしながら、被告の妨害者としての責任は、それが、強制的なプロキシ、つまりIP ブロックまたは DNS ロックを使用して⾏なうURLロックの形での―技術的には議論の余地なく可能な―ブロック措置Sperrmaßnahmen(=サイトブロッキング)を被告に採⽤させて⾏われるものであれば、受け⼊れることはできない。

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判例(2)ミュンヘン高等裁判所2018年6月14日OLG München,v.14.06.2018–29 U 732/18

【事実の概要】 -その1-

X(原告・被控訴人)は、映画配給会社であり、2017年10月26日にドイツ内の映画館で初演され、2017年12月3日までに570万人の観客を動員した映画「Fack Ju Göhte3」について、著作権法上の利⽤権、特にドイツでの公衆提供権(Rechts der öffentlichen Zugänglichmachung für Deutschland)を有する者である。

Y(被告・控訴人)は、334万人のユーザーに対してインターネットへの接続サービスを提供している。そのコンテンツは、Sharchostcrのサーバーに保存され、ユーザーが、その選択した時間と場所でアクセスできるようになっている。

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判例(2)ミュンヘン高等裁判所2018年6月14日OLG München,v.14.06.2018–29 U 732/18

【事実の概要】 -その2-

Xは、2017年11月7日に、KINOX.TOにおいて、自己の映画を入手可能であることを知った。

そこで、Xは、2017年11月20日、KINOX.TOの運営者に対して、警告した後、KINOX.TOの運営者のホストプロバイダに警告した。

さらに、Xは、Yに対して、2017年11月28日付の「弁護士の手紙」を送って、この映画について⾃⼰が著作権法上の利⽤権を保有していることと、YがKINOXのサービスに関してインターネット上不法に利⽤できるようにしているのであって、Yによって提供されたインターネットへのアクセスは、いわゆるDNSブロックまたはIPアドレスのブロックを実施するよう通知した。

Xが提訴したので、Yは、2017年テレメディア法改正により、アクセスプロバイダーの免責範囲が拡大されたので、Xの請求は認められないと主張した。

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判例(2)ミュンヘン高等裁判所2018年6月14日OLG München,v.14.06.2018–29 U 732/18

【事実の概要】 -その3-

原審(LG München I, Urteil vom 01.02.2018 – 7 O 17752/17)は、2017年2月1日、2017年のテレメディア法改正後においても、XはYの注意義務違反を理由として、Yに対してウェブサイト・ブロッキングを求めることができると判示し、もし、仮にYに対する差止請求による救済をみとめないことは、情報社会指令(2001/29/EC)第8条第3項に違反することとなる、ブロッキングを実施する費用は、Yが得ている収益総額を含めて検討する必要があると述べ、Yが数十億ユーロの収益を得ていることを考慮して、15万ユーロ(約2000万円)の費用を負担すべきであるとの判断を示した。

※原審の簡単な紹介は、著作権情報センター「侵害サイトへの接続遮断について初の判決/ミュンヘン地裁(独)」コピライト№687/Vol.58、P44を参照

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判例(2)ミュンヘン高等裁判所2018年6月14日OLG München,v.14.06.2018–29 U 732/18

【関連規定】

・情報社会指令Directive 2001/29/EC第8条第3項

・欧州指令 (Dir情報社会指令第8条第3項

・テレメディア法第2条第1項、第7条、第8条

・民法第1004条第1項

・民事訴訟法第253条第2項第2号

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【主 文】

Ⅰ.2018年2月1日付のミュンヘン地方裁判所の判決に対する控訴人(被告)の控訴を棄却する。

被告は、違反のたびに秩序拘禁Ordnungshaftの代わりに、25万ユーロ以下の秩序⾦(罰⾦Ordnungsgeldes)を課せられるか、もしくは、6か月以下の秩序拘禁Ordnungshaft、繰り返した場合は2年以下の秩序拘禁、被告らの⾸謀者については秩序拘禁または任意拘禁が執⾏される。

被告は、インターネット接続により、そのユーザを映画Fack JuGoehte 3に仲介することを禁止される。この映画が、KINOX.TOを通じて ド メ イ ン 名 で あ る kinox.to, kinox.am, kinox.me, kinox.nu,kinox.tv, kinox.sg, kinox.sx や kinos.to 、 ま た は IP ア ド レ ス185.200.190.136で呼び出されるかぎりは、禁止される。

II. 訴訟費用は、原告が1/9、被告が8/9を負担せよ。

判例(2)ミュンヘン高等裁判所2018年6月14日OLG München,v.14.06.2018–29 U 732/18

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【判 旨】 -その1-

「原告は、差⽌命令による救済の請求を受ける権利を有する。

26 a)法的判断のために、以下の基準が用いられるべきである:

27 aa)

ア 情報指令(Art.8 Abs.3 der Richtlinie 2001/29/EG)

によれば、加盟国は、特に著作物につき公の伝達権

Rechts der öffentlichen Wiedergabeを有する者が、仲介

者に対して、著作権または関連する権利を侵害するために

第三者によって使⽤されるサービスの提供⾏為を差し⽌め

る国⺠の権利を保障しなければならない。」

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【判 旨】 -その2-

「29 bb)EU法のこれらの条項は、テレメディア法第7条および第

8条の規定に対応している。

特に、明らかなことは、インターネットへのアクセスを、ローカルエリアネットワーク(後述の無線LAN事業者)を介してユーザに提供する者よりも、他のアクセス・プロバイダーが、差止を請求される妨害者とみなされることである。」

「46(1)被告は、テレメディア法第2条第1項第8号パラグラフ1文章のサービス提供者である。被告は、第三者がインターネットアクセスを介して端末からインターネットにアクセスできるようにするため、通信ネットワークへのアクセスを提供している。

被告は、アクセスを仲介することにより、地⽅裁判所が発⾒した著作権侵害に対して十分な因果関係を有している。

判例(2)ミュンヘン高等裁判所2018年6月14日OLG München,v.14.06.2018–29 U 732/18

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【判 旨】 -その3-

「情報指令2001 / ECの検討理由59によれば、ディレクティブで使用される「仲介者」の概念は、保護される著作物についての第三者の権利侵害に、ネット上で中継するすべての人を指す。

このような意味での権利侵害には、保護対象の公衆への伝達が含まれる。」

「インターネット・アクセス・サービスの提供を⾏う者は、ネットワークアクセスの提供を通じて、彼のクライアントと第三者との間のインターネット上で、このような権利侵害を転送できるようにしているのであり、したがって、著作権侵害へアクセスするサービスに使用され て い る ( vgl. BGH, a.a.O., – Störerhaftung des Access-Providers Tz. 24 f. m.w.N.)。」

判例(2)ミュンヘン高等裁判所2018年6月14日OLG München,v.14.06.2018–29 U 732/18

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【判 旨】 -その4-

「50aaa)妨害者責任は、原則として加害者の主張に従属していない。

「情報指令2001 / ECの検討理由59によれば、ディレクティブで使用される「仲介者」の概念は、保護される著作物についての第三者の権利侵害に、ネット上で中継するすべての人を指す。

このような意味での権利侵害には、保護対象の公衆への伝達が含まれる。」

「インターネット・アクセス・サービスの提供を⾏う者は、ネットワークアクセスの提供を通じて、彼のクライアントと第三者との間のインターネット上で、このような権利侵害を転送できるようにしているのであり、したがって、著作権侵害へアクセスするサービスに使用されている(vgl. BGH, a.a.O., – Störerhaftung des Access-Providers Tz.24 f. m.w.N.)。」

「52 bbb)これによれば、本件の場合、2017年11月28日の弁護士の⼿紙に定められた⾦額の原告の請求は妥当である。」

判例(2)ミュンヘン高等裁判所2018年6月14日OLG München,v.14.06.2018–29 U 732/18

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5.おわりに

1.ドイツ判例の到達点

(1)サイトブロッキング要求権者:著作権者等

(2)サイトブロッキングの法的根拠:間接侵害

(3)サイトブロッキング方法:DNS&IPアドレス

(3)サイトブロッキング命令権限:裁判所

(4)サイトブロッキング費用負担:ISP

2.わが国との比較法

(1)法的根拠に関する議論の⽋如

(2)憲法上の表現の⾃由・通信の秘密優先の議論

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