イスラエルにおける ベンチャー企業動向調査 - JETRO...Copyright (C) 2010 JETRO....

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イスラエルにおける

ベンチャー企業動向調査

2010 年 3 月

ジェトロ・テルアビブ事務所

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目 次

【1】調査目的・手法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ P3

【2】インタビュー・レポート・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ P5

<1> WAZE:ベンチャー企業・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ P6

<2> Yeda Research and Development Company Ltd (Yeda):技術移転機関・・・ P12

<3> Maayan Ventures:インキュベーター施設・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ P16

<4> Vertex Venture Capital:ベンチャー・キャピタル・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ P20

<免責事項>

ジェトロは、本報告書の記載内容に関して生じた直接的、間接的、あるいは懲罰的損害および利

益の喪失については、一切の責任を負いません。これは、たとえ、ジェトロがかかる損害の可能性

を知らされていても同様とします。

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【1】調査目的・手法

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1. 調査目的・概要

日本国内のベンチャー企業の活性化に資するため、イスラエルにおける先端技術分野で活

躍するベンチャー企業又はベンチャー企業動向に詳しい有識者へのインタビューを実施し、

レポートを作成する。

2. 調査方法

イスラエルの調査会社と共に、下記企業・関係機関へインタビューを実施。後日、同調査

会社から提出された英文レポートを、ジェトロ・テルアビブ事務所が翻訳し、補足情報等

を追記した。

<インタビュー先>

(1) WAZE:ベンチャー企業

(2) Yeda Research and Development Company Ltd (Yeda):技術移転機関

(3) Maayan Ventures:インキュベーター施設

(4) Vertex Venture Capital:ベンチャー・キャピタル

3. 主な質問項目

(1) インタビュー企業・機関、及びインタビュー対象の方の紹介

(2) 当該企業の技術や、その独自性、競合他社との優位性

(3) 開発や起業の経緯

(4) ビジネスモデル

(5) 今後のビジネス展開

(6) ベンチャー企業が失敗する理由

(7) イスラエル国内のハイテク産業の動向

(8) ベンチャー企業成功事例

(9) 日本のベンチャー企業の新規参入の可能性、参入における課題

(10) 提携している組織や機関とその連携内容

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【2】インタビュー・レポート

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<1>WAZE

2010 年 2 月 22 日、同社オフィスにて、副社長兼事業開発責任者のサミュエル・ケレット

氏(Mr. Samuel Keret)にインタビュー。

1. 製品・技術概要

WAZE社は、自動車の運転手向けのモバイル・ナビゲーション・システムとSNS (ソー

シャル・ネットワーク・システム)とを組み合わせたソーシャル・モバイル・アプリケー

ション・ソフト:WAZEの開発・設計に取り組んでいる。

自動車の運転手に必要な道路情報やその周辺環境は常に変化しているが、既存のナビゲ

ーション機器や関連のデバイス・ソフトは、それらの“最新”の道路情報に対応しきれていな

いのが現状。

WAZEにより、自動車の運転手は、パソコンからだけでなく、GPS機能を有した携帯電話

やPDAなどのモバイル機器を介して、渋滞、事故、工事などの最新の道路情報や交通情報、

そしてそれらの情報を反映した目的地までの最短ルートをリアルタイムに確認することが

できる。

ユーザーである自動車運転手が、WAZEを使用しながら運転することで、同社のサーバー

に道路・交通情報・データが自動的に蓄積される。一方で、ユーザー(運転手)からも、

WAZEを介して、これらの情報・データを発信・更新することが出来る。

その結果、ユーザー同士で、渋滞、事故等の道路・交通情報、気象災害、警察によるス

ピード違反の取り締まり場所、安いガソリンステーションの場所等といった様々な情報を

交換することができる。

ユーザー(運転手)は、自身が所有するスマートフォン等の GPS 機能が搭載されたモバ

イル機器に、WAZE のクライアント用アプリケーションをインストールするだけで、これ

らの WAZE の機能を使用することができる。

これらの WAZE 内の道路・交通情報や関連データは、全てユーザー(運転手)によって

収集・蓄積され、ユーザー(運転手)は WAZE を無料で使用できる。

またWAZEは情報更新に要する時間が非常に短いのも特徴。例えば、あるユーザーが道

路・交通情報をWAZEにアップロードした後、それらの情報がWAZEのシステムに更新され

るまでの時間は僅か約2分であり、その他のユーザーは、まさにリアルタイムな交通・道路

情報を共有できる。この情報更新に要するスピードは、従来のナビゲーション・システム

やテレビ・ラジオが提供する交通情報と比べて圧倒的に早い。

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当然のことながら、ユーザーは 24 時間 365 日、WAZE を利用することができる。

さらに、このアプリケーションは、手動で、町名、番地、道路の名称、などの道路・交

通情報を編集する機能も有しており、例えば、新しい道路が出来た場合なども、この機能

を利用することで、ユーザーは新たな情報を WAZE のシステムに登録・更新することがで

きる。(なお、この機能では、ユーザーによって編集された新しい道路名等の道路・交通

情報は、ユーザーが実際に運転(経験)するまで、システムに追加されない仕組みになっ

ている)。

同社曰く、WAZE は、自動車の運転手のための、道路・交通情報の「Wikipedia(ウィキ

ペディア)」を目指しているという。つまり、ユーザーの主観的な情報をベースにした情報

提供となるため、もしかしたら他のユーザーにとって 100%正確な情報を提供できないとい

うリスクを抱えつつも、一般ユーザーの初歩的/必要最低限の道路・交通情報ニーズを満た

し、かつ、他の媒体に比べて情報更新速度が圧倒的に速いというのが最大の特徴と言える。

今日(2010年2月)現在、イスラエル国内では約80万台のスマートフォン(WAZEがダウ

ンロード可能なモバイル機器)が使用されている。また、国内でのダウンロード数は約28

万5,000回で、その約半数が実際にユーザーとしてWAZEを利用している。

米国には20万人以上のユーザーがいる他、米国以外の世界各国市場におけるユーザー数

も約20万人となっている。

日本にも(英語版のアプリケーションを使用している)数千人のユーザーがいる。

2. 同社キーパーソン(経営陣)

(1) Mr. Noam Bardin:CEO

Bardin 氏は、過去約 10 年間、数々の会長職、CEO 職などを歴任。ハーバード大学ジョン・

F・ケネディ行政大学院にて行政学修士、及びヘブライ大学にて経済学士号を取得。

(2) Mr. Uri Levine:共同創設者、会長

Levine 氏は、20 年以上に渡り、ワイヤレス通信分野におけるマーケティングや事業開発等

の幅広い経験を有している。テルアビブ大学にて経済学士号を取得。

(3) Mr. Ehud Shabtai:共同設立者、CTO

Shabtai 氏は、WAZE の前身である Freemap プロジェクトの創設者であり、同プロジェクト

の中心人物。また、数々の企業において CTO も歴任。テルアビブ大学にてコンピューター・

サイエンスの理学士号、及び哲学士号(首席)を取得。

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(4) Mr. Amir Shinar:共同創設者、研究開発部長

Shinar 氏は WAZE の共同創設者で、過去 15 年間、プログラミング設計、技術開発、R&D

の担当者・責任者、さらにオープン・ソース技術関連のハイテク企業の研究開発部長とし

ての経験を有する。ミネソタ州立大学にて電気工学とコンピューター・サイエンス(首席)

の学士号、及び電気工学の修士号を取得。

3. 競合企業と比較した優位点

WAZEは、単なるナビゲーション・アプリケーションではない。通常のナビゲーション・

サービスは、目的地が不明な場合に道案内するためのものであるが、WAZEは、日常的な目

的地(会社など)への走行をサポートするためのサービスである。

WAZEは、“最新の”地図と道路情報をドライバー自身が作成するためのソフトで、多く

のアプリケーションで活用可能なプラットフォームである。WAZE は、GPS機能が付いた

モバイル機器であればすぐにインストールできるため、他のハードウェアは不要である。

また、多くのナビゲーション・ソフトウェアが有料である中、WAZEは無料である。

Dash Navigation社(http://www.dash.net/)などの競合企業もあるが、WAZEはGPS機

能付きのスマートフォンさえ持っていれば、専用デバイスやソフトを購入することなく、

“無料”で使用できる。

現在、WAZEソフトのインストールとその使用が可能な携帯電話は、Android、iPhone、

Symbian、Windows Mobile、J2ME (RIM)等のGPS機能付きGSM電話で、ユーザーの選択

肢も幅広い。

WAZEには多くの競合企業が存在するが、これらの競合企業は、マップ作成、交通情報の

提供、ナビゲーション・ソフト、SNSなどの様々な分野に分かれている。

もちろん、モバイル機器を活用した情報提供・交換という分野においては、Google、Nokia、

Tom Tomなどが主な競合企業となるが、道路・交通情報に特化している訳ではない。

WAZEのサービスは、道路・交通情報に関する唯一のコミュニティであり、これらの競合

企業が提供するサービスとは一線を画している。

また、WAZEの使用にあたり、ユーザーは個人情報を提供・登録する必要はない。(自主

的に提供する場合は除く)。一方で、Googleなどの巨大企業においては、大量のユーザーの

個人情報の管理・漏洩等の問題がある。

WAZEのソフト・システムは、長い時間をかけて開発され、複製が困難であり、また当然

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のことながら、ソフトウェアの一部はイスラエルを含む各国の特許で保護されている。

4. WAZEの技術開発が始まった経緯

WAZEの技術のアイデアの発端は、現在の経営陣の一人のであるShabtai氏が以前、ナビ

ゲーション・ソフトウェアがインストールされたGPS機器を自身が所有するPDAに取り付

けた際、そのナビゲーション・ソフトウェアには最新の道路情報が反映されていなかった

ことがきっかけとなる。

同氏は、Web2.0アプリケーションを活用したオープン・ソース技術の経験を有していた

ため、GPS技術とオープン・ソース・ソフトウェア、そして自動車の運転手のコミュニテ

ィを組み合わせることで、常に変化するこれらの道路情報を反映させたプラットフォーム

が構築できないかと考えた。

同氏は、道路情報や渋滞情報、そして運転手が必要とする全ての情報をいつでも的確に

反映させるプラットフォームの開発に取り掛かったが、同士の友人・知人らが、そのアイ

デアはビジネスへと繋がるとアドバイスし、それがWAZEの設立へと繋がった。

当初、このプロジェクトは「Freemap」と呼ばれ、2006年に本格的にスタートし、イス

ラエル国内の自動車の運転手から高評価を得た。その2年後の2008年2月、Shabtai氏は、起

業家のLevine氏及びShinar氏と一緒にWAZEの前身となるLinQmap社を設立した。

これらの会社創設者、そして現在の経営陣らは、イスラエルの大手通信関連企業の

Comverse社で一緒に働いていた友人・知人同士であり、また、うち何人かは大学時代から

の友人でもあったため、同社におけるアットホームで親しみやい雰囲気を作り出している。

現在、従業員は35人で、その大部分はソフトウェアの開発者である。経営陣の平均年齢

は約40歳、開発部門の平均年齢は約30歳である。

5. ビジネスモデル

WAZEは、一般の運転手等の個人ユーザーに対するサービスは無料で提供しているが、法

人等に対して有料で情報提供を行っており、法人等が希望するデータ(最新の地図、渋滞

情報など)を販売することで収益を上げている。イスラエル国内の主な顧客としては、行

政機関や運輸省等である。また、最近ではLBS(ロケーション・ビジネス・サービス)を

開始し、ユーザーに顧客の広告を配信するなどしている。

6. 今後のビジネスの展望

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今後のビジネスプランとしては、米国(既に米国には事務所を設立済み)、ヨーロッパ諸

国、南米(エクアドル)およびアジア太平洋地域において積極的にサービスを展開してい

く予定。

一方で、日本市場については、日本市場に適応した/特化したサービスを提供する必要が

あるため、現時点で参入するのは困難であるとしている。言葉の問題等もあり、同社が想

定する一般的な作業チームでは対応出来ないため、日本専用のチームが必要になる。

もし日本市場に参入するとするならば、まずは地図作成会社との提携が考えられるが、

業界最大手の地図作成会社は、WAZEをビジネス・パートナーではなく、競合企業とみなす

可能性が高いため、同業界の中堅クラス(6~7番手くらい)で、かつ日本の地図の更新が

可能な企業が適切なパートナーと想定している。マーケティングに関しては、大手携帯電

話会社との提携が最適と考えている。

7. 出資者等

同社へ出資しているベンチャー・キャピタル・ファンドは以下の3社である。

Blue Run Ventures:http://www.brv.com

Magma Venture Partners:http://www.magmavc.com

Vertex Venture Capital:http://www.vertexvc.com

また、同社、イスラエル産業貿易労働省・OCS(注1)からの支援(投資)も受けている。

8. ベンチャー企業の課題

WAZE社によると、ベンチャー企業の課題は、新しく開発した技術をビジネスモデルに取

り込み、適切な製品・サービスを適切な顧客に提供することが最も重要である。もちろん、

素晴らしい新技術・サービスを開発することは重要であるが、例えどんなに素晴らしい新

技術・サービスを開発したとしても、ビジネスモデルが明確・的確でなければ成功には結

びつかない。逆に、ビジネスモデルが的確であれば、資金難等の一般的な問題が起こるこ

とは稀である。

9. ベンチャー企業立ち上げの失敗の理由

イスラエルにおいてベンチャー企業を起業した際に発生する失敗の主な理由は、マーケ

ティング能力、特にブランド力を作り上げる能力の欠如が挙げられる。

(注 1)OCS(Office of Chief Scientist):イスラエル産業貿易労働省に設置されており、様々な

プログラムを通じて、ベンチャー企業への財政的支援(投資)を行っている。

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また、最先端技術の変化が非常に早いことも問題になる場合がある。例えば、2年前に

Apple社がiPhoneを発表したことで、モバイル機器の操作性が従来のものとは大きく変化し

た。このように、ハイテク市場は変化が著しく早いため、ベンチャー企業はこれらの市場

の変化・ニーズを素早く・的確に感知し、市場の流れを予測し、それを自社の技術・サー

ビスに取り込むことが重要である。

10. WAZE連絡先

社名:WAZE

住所:2 HaSadna St., PO BOX 2468, Raanana 43651, Israel

電話:+972-(0)9-7486437

携帯電話:+972-(0)52-6344844

ファックス:+972-(0)9-7486436

URL:www.WAZE.com

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<2>Yeda Research and Development Company Ltd (Yeda)

2010 年 2 月 25 日、同社オフィスにて、CEO のアミール・ナイバーグ氏(Mr. Amir Naiberg)

にインタビュー。

1. 研究機関における産業界への技術移転事業の概要

Yeda Research and Development Company Ltd (以下、Yeda)は、国内有数の研究機関であ

るワイツマン研究所(Weizmann Institute of Science)によって、1959 年に設立された。ワイ

ツマン研究所で調査・研究された技術を民間に移転する、あるいは研究所にて産業界のニ

ーズに応じた調査・研究を実施することを目的としたイスラエル初の、そして世界有数の

技術移転機関である。

(1) Yeda は、ワイツマン研究所で開発された新技術や研究成果を世界市場に送り出すと共に、

さらなる研究・教育プロジェクトを促進するために、同研究所と独占契約を締結し、同

研究所が有する特許・知的財産権を産業界・民間企業へ商業的に移転している。

Yeda の主な活動内容は以下の通り。

① 商業的な成功の可能性を有する調査・研究プロジェクトの認定・評価。

② ワイツマン研究所とその科学者が有する特許・知的財産の保護。

③ ワイツマン研究所の新発明と新技術の産業界・民間企業へのライセンシング。

④ 産業界・民間企業からの調査・研究プロジェクトへの資金提供の促進。

(2) 従来、ワイツマン研究所における研究・開発分野はライフ・サイエンス分野に特化して

いた。現在でも同分野は主たる研究・開発分野であることには変わりはないが、近年、

環境関連技術や代替エネルギー技術も注目を集めつつある。約 250 の研究・調査グルー

プがこれらの研究に取り組んでいる。

現在進行中の調査・研究プロジェクトは以下の分野。

① バイオテクノロジー、製薬、診断

② 生物情報科学、プロテオミクス、生体材料、システム生物学

③ 医療機器

④ 再生可能エネルギー、バイオ燃料、環境技術と環境科学

⑤ 農業と植物遺伝学(バイオ燃料を含む)

⑥ 化学、ナノテクノロジー

⑦ 物理学、電気光学

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⑧ 数学、コンピューター科学

(3) 2008 年及び 2009 年における Yeda の主な実績は以下の通り。

① 民間企業に対して、ワイツマン研究所で研究・開発された 2000 件以上の新技術を

紹介・提供。

② 機密保護契約を締結した上で具体的に紹介・提供した新技術は 160 件以上。

③ 40 件以上の新規ライセンス契約とオプション契約を締結。

④ Johnson & Johnson、Merck、Serono 及び Teva などの世界的大手企業との共同プロ

ジェクト等、民間企業、産業貿易労働省・OCS、あるいは Yeda 自身から資金を提

供されて実施した共同研究・開発プロジェクトは 80 件以上。

⑤ ワイツマン研究所によって発表された特許は 180 件以上。

2. Yeda の概要

現在、Yeda は 18 人の従業員を有しており、以下の 4 つの部門に分かれている。

(1) 営業部門

(2) 財務部門

(3) 法務部門

(4) 特許部門

Yeda は、有望技術・研究を発掘するだけではなく、研究・開発された技術が一般公開さ

れる前に、特許を通じてこれらの技術・研究内容を保護することにも積極的に取り組んで

いる。ワイツマン研究所の研究者に対して、研究・開発内容や技術を保護することが如何

に重要かという啓発にも努めており、近年では、これらの研究者らが自ら Yeda に相談しに

くるケースも多くなった。

また、Yeda は国内の多くの起業家の間でも知られており、起業家からの問い合わせも頻

繁にある。また Yeda としても、有望なベンチャー企業や、それを設立し得る起業家を、常

に探している。

さらに Yeda は、大手企業が新しいプロジェクトを立ち上げる際に、当該企業からの研究

者の募集に応じる形で、同プロジェクトに最適の研究者を紹介するなどしている。

3. 民間企業へのライセンス供与とベンチャー企業の設立

Yeda のビジネスモデルは、ワイツマン研究所で研究・開発された技術を販売するという

よりも、むしろライセンスを企業等へ供与することで、そのロイヤルティ収入を上げるこ

とが主流である。2007 年、Yeda を介した民間企業等への技術移転を活用した製品・サービ

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スの売上高は 100 億米ドルを超え、欧米の有名大学にも引けを取らない売上高を有してい

る。

ワイツマン研究所の技術を採用している企業の約 60%はライフ・サイエンス分野の企業

であり、残りの約 40%は、化学、IT、技術系企業である。

Yeda の経営哲学は、基盤がしっかりした企業と提携することと、ベンチャー企業設立を

促進することである。一方で、ベンチャー企業の設立や開発に要する資金の調達そのもの

については起業家自身に任せており、ベンチャー企業への投資や経営には関与しない方針

である。同研究所がライセンス供与した企業に対しては、週に一回程度、同研究所の研究

者によるコンサルテーションを提供している。

イスラエル政府も、大学や研究機関から産業界への技術移転を促進するための 2 つのプ

ログラムを用意しており、Yeda もそれらのプログラム、「Magneton」と「Nofar」を活用し

て、資金調達している。

(1) Magneton

このプログラムは、基礎科学研究によって商業化・製品化に至るような技術的な実現可

能性を証明するための研究・開発を支援することを目的としている。

具体的には、1 つの学術グループと 1 つの民間企業との間との提携や共同プロジェクトに

対して、財政的な支援をしている。当局によって承認されたプロジェクトは、学術機関と

民間企業の両方を合わせた同プロジェクトの全体予算のうち、最大 66%の補助金が支給さ

れる。

この支援プログラムを活用したとしても、プロジェクト終了後に、イスラエル政府に対

してロイヤルティを支払う必要はない。プロジェクト期間は 12~24 ヶ月間で、プロジェク

トの予算は最大で 360 万 NIS(約 96 万米ドル)である。

(2) Nofar

このプログラムは、応用学術研究を支援することを目的としている。特定の製品・商品

を研究・開発する前段階の技術・研究ではあるが、既に民間企業等のビジネス・パートナ

ーが関心を示している技術・研究を、より発展させて製品化・商品化に至るよう支援する。

このプロジェクトの期間は最大で 15 カ月である。

当該プロジェクトがイスラエル産業貿易労働省・OCS によって承認された場合、OCS か

ら当該プロジェクト予算の 90%(最大 42 万 NIS)(約 11 万 2000 ドル)の資金が提供され、

残りの 10%の資金については、イスラエルの民間企業等のパートナーによって提供される

ことになる。また資金を提供した民間企業は、その研究プロジェクトの成果を最初に利用

する権利が与えられる。

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4. 提携企業

Yeda は多くの特許ポートフォリオを有しており、ベンチャー企業はもちろん、多くの多

国籍企業(Novartis、Baxter、Pfizer、Sanofi-Aventis、Johnson & Johnson、Merck- Serono、Teva、

Invitrogen、Syngenta 等)とも提携している。

対日ビジネス成功事例としては、ドナリエラ藻類から発見したベータ・カロチンが癌抑

制の効能があるとして、そのベータ・カロチンをベースとして健康食品を開発した事例が

ある。日本の健康食品メーカーが、同製品を紅海に面したエイラット市で製造し、日本へ

サプリメントとして輸出・販売している。

5. Yeda 連絡先

機関名:Yeda Research and Development Company Ltd (Yeda):Technology Transfer from the

Weizmann Institute of Science

住所:P.O. Box 95, Rehovot 76100, Israel

電話: +972-(0)8-9470617

ファックス:+972-(0)8-9470739

URL:www.YedaRnD.com

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<3>Maayan Ventures

2010 年 3 月 1 日、同社オフィスにて、技術担当副社長のジュディス・ジルバーシュタイン

氏(Dr. Judith Zilberstein)にインタビュー。

1. 企業概要

Maayan Ventures(以下、Maayan)は、開発初期段階のベンチャー企業への投資企業であ

り、同時に国内に 3 つインキュベーター施設も有している。1990 年に国営企業として設立

され、2003 年に民営化された。その後 2005 年に、インキュベーターとして、イスラエル国

内で初めてテルアビブ証券取引(TASE)に株式公開された。

2006 年 7 月、Maayan は、イスラエル南部ディモナ市のインキュベーター施設である Rotem

Industries と提携し、ATC インキュベーター(現 Rotem Ventures)を買収して事業を拡大した。

同年 12 月には、更に Sde Boker キブツ内にある Am-Shav インキュベーターを買収した。

これらの 3 つのインキュベーターを併せ持つことで、Maayan はイスラエルにおいて最大

のインキュベーター管理会社となった。

Maayan は、国内のハイテク・ベンチャー企業に対して、経営陣採用、財政的支援、事業

開発、営業戦略コンサルティング、資金調達、業務管理、法律サービスおよびコーチング

などの各種サービスを提供している。

またイスラエル産業貿易労働省・OCS とも提携している他、ポートフォリオ企業に対し

て将来的に、追加投資し得るだけの十分な財源も有している。

現在、従業員は 17 名で、その他、多くの外部コンサルタントを採用している。

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2. キーパーソン(経営陣)

(1) Dr. Tsvika Ben-Porat(博士):CEO

2005 年に Maayan の CEO 就任。 前職は、Ness Technologies Inc.(NASDAQ:NSTC)

(http://www.ness.com/)の創設者兼 CTO であった。物理学博士用特別プログラムを履修し、

イスラエルの南部のベルシェバ市にあるベングリオン大学にて経営管理学の博士号を取得。

(2) Mr. Lior Pelleg:財務担当役員

最先端電気工学機器・装置の開発・製造企業である ELBIT SYSTEMS ELECTRO-OPTICS

ELOP LTD (EL-OP 社:http://www.el-op.co.il/)の予算、価格設定、及び管理部門の上級エコノ

ミストであり、ワイツマン研究所のチーフ・エコノミスト兼部長を歴任。ヘブライ大学に

て経済・経営学の学士号を取得。

(3) Mr. Yifat Leibovich:営業担当役員

Ness Technologies 本社(http://www.ness.com/)で CTO やプロジェクト・コーディネーターを

歴任。ベングリオン大学にて英文学と政治学の学士号を取得、及び行政学の MBA を取得。

(4) Dr. Judith Zilberstein:技術担当役員

数々のバイオ技術関連企業の CTO を歴任、技術系インキュベーター施設の科学技術部門担

当役員の経験も有する。ベングリオン大学にて生物物理学の学士号を取得。ワイツマン研

究所の「Feinberg Graduate School」で物理化学の修士号(首席)およびライフ・サイエンス

学の博士号を取得。

3. ベンチャー企業の傾向

SDE BOKER

INCUBATOR

DIMONA

INCUBATOR

OMER

INCUBATOR その他

(株式保有等)

17社

(うちインキュベーター

には10社)

17社

(うちインキュベーター

には10社)

21社

(うちインキュベーター

には7社)

テクノプラス・ベンチャ

ー:11.35%

Capital Point :23.55%

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現在、Maayan が投資しているベンチャー企業は以下の通り。

分野 企業数 割合

IT関連 18 33%

ライフ・サイエンス関連(主に医療機器) 16 29%

材料関連 9 16%

通信関連 5 9%

防衛関連 3 6%

環境技術関連 4 7%

合計 55 100%

Maayan が投資しているベンチャー企業における傾向としては、医療機器を中心としたラ

イフ・サイエンス分野が伸びており、2016 年までに大幅に成長すると予測している。

また近年では、水関連企業、エネルギー関連企業、エネルギー関連企業に対して、1 年あ

たり 2 社程度ずつ新規に投資を開始しているという。

2008 年、Maayan は、同社のポートフォリオであるベンチャー企業 18 社に対して、計 1850

万米ドルを投資した。

4. 最新技術動向

Maayan としては、医療機器分野のベンチャー企業の成長を期待している。一方で、イス

ラエル国内でも環境技術に対する注目が集まっているにも関わらず、環境技術関連のベン

チャー企業の成長はあまり期待できないとしている。

国内だけでなく世界的に、一種の環境技術・企業バブルになっており、これらの様々な

環境技術・企業の全てに革新的な新技術が伴っている訳ではなく、むしろ、ほとんどの技

術は、既に他企業・機関に開発された既存技術をベースに開発されている。

ベンチャー企業に対しても、分野だけで関心度合いが決まる訳ではなく、いかに革新的

な技術を有しているか、あるいは開発しようとしているかが最も重要なポイントとなる。

5. 成功事例とその要因

Maayan のポートフォリオであったベンチャー企業の Uri-Dent 社は、歯科用医療機器とし

て子供用の審美性クラウンを開発した。Maayan のインキュベーターで 2 年間活動した後、

米国の歯科用医療機器企業大手の Dentsply 社:www.dentsply.com に 1 億米ドルで売却され

た。

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この成功事例の主な要因は以下の通り。

(1) 技術的なポテンシャルが大きかった上、商品化・製品化までの期間が約 2 年間で、他の

ベンチャー企業に比べて非常に短かった。

(2) 既に市場で販売・活用されている既存の製品の一部分の材料を、ニッケルからホワイ

ト・ポリマーに変更した新商品・技術であったため、当該製品のコンセプトが市場に理

解されやすかった。

(3) 医療機器製品にも関わらず、上記(2)の通り、既存製品の一部分の材料を変更しただけで

あったため、当局による長期間の承認プロセスが不要となり、商品化・製品化までの期

間が短く済んだ。

(4) この技術・ビジネスプランを生み出したアイデアと、それを実現させたチームの存在。

Maayan では、技術開発プロセスが長期間に及んだ場合、そのベンチャー企業は失敗に陥

る可能性が高いとしている。そのため、Maayan では、ベンチャー企業が自ら定めた技術開

発スケジュール・工程に遅れが生じた場合、当該ベンチャー企業への投資を中止している。

また、せっかく新技術を開発したとしても、市場のニーズに合致しておらず、新技術の

活用方法が市場の中で見出せない場合も、失敗に繋がるとしている。

6. Maayan 連絡先

社名:Maayan Ventures

住所(本社):Omer Industrial Park, P.O.B. 3010, 84965, ISRAEL

電話:+972-(0)8-6255890

ファックス:+972-(0)8-6466870

URL:www.myv.co.il

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<4>Vertex Venture Capital

2010年 3月 1日、同社オフィスにて、パートナーのデイビッド・ヘラー氏(Mr. David Heller)、

及び営業開発部長のシャロン・ルイス氏(Ms. Sharon H. Lewis)にインタビュー。

1. 企業概要

Vertex Venture Capital(以下、Vertex)は、1997 年、シンガポールの国営ホールディング・

カンパニーである Temasec Holding 社とのジョイント・ベンチャーとして創立された。

1999 年、イスラエル政府は、国内のベンチャー・キャピタル産業を活性化させるため、

国内のベンチャー・キャピタル・ファンド 10 社に対して、外国のパートナー企業・ファン

ドとの提携を条件に、10 億米ドルを投資する計画を発表した。

Vertex 以外の残り 9 社のベンチャー・キャピタルは、米国のパートナー企業・ファンドと

提携したが、Vertex はアジア地域のパートナー企業・ファンドとの提携を模索した。その結

果、Vertex は最初にシンガポール国営企業からの投資を得た後、日本、台湾、香港からの投

資も獲得した。

現在、日本から大手ハイテク企業を含む 18 社からの投資を得ており、これはイスラエル

の他のどのベンチャー・キャピタルよりも、日本との結びつきは強い。

また、アジアとの提携だけではなく、現在では、米国、ヨーロッパ、カナダ、そしてイ

スラエル国内等からも投資も受けている。

現在、Vertex は、3 つのキャピタル・ファンドを管理しており、Vertex 1 は 1997 年に、Vertex

2 は 2001 年、Vertex 3 は 2005~6 年に、それぞれ設立した。

社員は 15 名で、うち 8 名はパートナーである。パートナーやその他の従業員は、ベンチ

ャー企業の起業、経営、売却などの豊富な経験をそれぞれ有している。あるいは、エレク

トロニクス・エンジニアリング分野などの技術的な見識を持つ専門家や法律専門家などで

構成されている。

現有の資本は 6 億米ドル以上であり、IT、通信、半導体、ソフトウェア、電子機器、太陽

光発電等の分野における開発初期段階にあるハイテク・ベンチャー企業に対して投資して

おり、その規模はイスラエル国内のベンチャー・キャピタルのトップ 3 から 5 位あたりを

競っている。

また Vertex は、テクニヨン大学(イスラエル随一の理工系科学技術専門大学)のインキ

ューベーター管理会社(テクニヨン・シード社:http://www.technionseed.co.il/)のシェアも

保有している。

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2. キーパーソン(経営陣)

(1) Mr. YORAM ORON:創設者兼社長

(2) Mr. DAVID HELLER:パートナー

David 氏は、東京の若林・渡辺法律事務所で 5 年間弁護士として勤務した経験を有する。

Vertex では、同社の投資全般を管理している他、特に Vertex2 において、日本や台湾の投

資家との提携を深めることで多くの投資を獲得、また日本における同社のポートフォリ

オ企業の責任者でもある。

(3) Ms. SHARON LEWIS:事業開発及び IR 担当者

3. 国内のベンチャー企業の動向

(1) ICT 分野

マクロの観点では、イスラエルの ICT 分野は比較的強い分野である。特に、軍事・防衛

技術に関連する ICT 分野が強い。これらの分野における多くの製品・サービスは、元々が

イスラエル軍の研究・開発部門で軍事目的に開発され、その後、商業化され、民間市場へ

と派生したものが多い。当然、軍で現在開発中あるいは活用されている技術が外に出るこ

とはないが、この軍→民へと技術が派生していくという流れや考え方そのものについては、

イスラエル軍や国民の理解があると言ってよく、通常であれば、軍で開発された技術が外

に出ることは考えられないが、イスラエルでは一般的となっている。

特に、イスラエル政府が、軍事目的の ICT 技術を開発するために大きな投資したことで、

結果的に、イスラエルは、民間分野においても最先端の ICT 技術・製品を有することにな

った訳である。

(2) 環境関連分野

イスラエルにおいても環境分野がトレンドであるが、イスラエルの環境分野における新

技術開発は伸び悩んでいる。イスラエル政府はかつて、ICT 分野の企業やその技術開発に対

して大々的に支援したが、現在、環境分野の企業・技術開発については、ICT 分野ほどの大

規模な支援はまだ見られない。しかし、優れたアイデアと技術が注目され始めている。

環境関連のベンチャー企業は、IPO(新規株式公開)や他企業による M&A 等、一定のゴ

ールに至るまでには長い期間が必要である。ベンチャー・キャピタル業界では、通常、投

資ホライゾンを 7~10 年間と設定していることが多く、開発に長い期間を要する分野であ

る環境分野は、資金不足、すなわちベンチャー企業としての失敗に陥りやすい。

4. 国内の有望分野の動向

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(1) ICT 分野

ハードウェアやソフトウェアのいずれも、モバイル・インターネット関連技術、特に、ロ

ング・ターム・エボリューション(LTE)技術が、注目されている。

(2) 半導体

過去 2 年間は、半導体関連企業にとっては非常に厳しい時期であった。現在、新しいチッ

プの開発には、2~3 千万米ドルほどの投資が必要である。ベンチャー・キャピタルは、投

資額が比較的低く開発できる半導体企業を探す傾向にある。

5. イスラエルにおける日本のベンチャー企業

今日現在、日本のベンチャー企業がイスラエルのベンチャー企業と提携するなどして成

功したという話は聞いたことは無い。

一方で、イスラエルのベンチャー企業が、日本の大手企業に対して付加価値のある最新

技術を提供することで、それら日本の大手企業と提携するなどして成功したケースは非常

に多い。

6. 成功事例

(1) 2002 年、世界有数のコピープロテクト技術企業である Macrovision Corporation 社

(Nasdaq:MVSN)は、音楽産業のコピー防止技術を開発したイスラエル企業 Midbar Tech

(1998) Ltd.社を買収した。その買収以前、Vertex が Midbar 社に投資を始めた当初、Midbar

社は米国への販売・営業だけに集中していた。しかし、Vertex の勧めにより、Midbar 社は

日本市場への参入を開始し、実際に業界大手のソニーとの取引などに成功するなどして、

Macrovision 社にとって Midbar 社は最大の競合会社となった。最終的に Macrovision 社が

Midbar 社を買収した際の Midbar 社内のシェアは、日本が 60%、米国が 40%であった。

(2) 富士通による PowerDsine 社製品(http://www.microsemi.com/PowerDsine/)の購入。

(3) Voltaire 社(http://www.voltaire.com/)の日立との提携。

Vertex は、ベンチャー企業に投資するだけではなく、投資したベンチャー企業の付加価値

を高めるよう様々な支援をしており、この総合的な支援が成功の秘訣の一つであると考え

ている。

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7. イスラエルにおける日本のベンチャー企業のビジネスチャンスと課題

イスラエルにおいて日本のベンチャー企業が成功するためには、日本の技術をイスラエ

ルに持って来るのではなく、イスラエル企業の技術を補完的に活用することで、その技術

の付加価値を高めるなど、両国企業の共同技術開発というビジネスモデルが考えられる。

このビジネスモデルを成功させるためには、米国・イスラエル間や、シンガポール・イ

スラエル間でそれぞれ設立されている共同 R&D ファンドのような仕組みを、日本・イスラ

エル間でも設立することが有益。

8. Vertex 連絡先

社名:Vertex Venture Capital

住所:1 HaShikma Street, P.O. B 89, Savyon 56530, Israel

電話:+972+(0)3-7378888

ファックス:+972-(0)3-7378889

URL:www.vertexvc.com/