アイメイクによる錯視効果の検討 -...

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アイメイクによる錯 効果の検討 A13AB016 井上優花 A13AB018 岩永友梨香 日本人女性の目の大きさの平均は、横幅3cm,縦幅1cmと言われる。 二重・一重の目を撮影し、Photoshopを使用して加工、平均に準ずる試料を作成した。 .緒言 .試料 ①アイシャドウ ②アイライン上のみ ③アイライン上+1/3 ④アイライン全周囲 ⑤まつ毛メイク ⑥まつ毛メイク アイライン上のみ ⑦まつ毛メイク アイライン上+1/3 ⑧まつ毛メイク アイライン全周囲 90% 100% 95% 105% 110% 115% ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ アイメイクを施した8試料 5.二重瞼・一重瞼の比較刺激 標準刺激の試料と 比較刺激の100%の試料は 同じ大きさの目である。 女性にとって化粧は、自己を美しくみせる手段であるが、特にアイメイクには、女性の印象を大きく変える 重要な要素がある。「デカ目メイク」といって、目を大きく見せる方法が日々雑誌やテレビ番組で取り上げら れるが、これはアイメイクの方法により見た目を違って見せる錯視効果である。 そこで本研究は、アイラインとまつ毛メイク、アイシャドウを要因として、目がどの程度大きく知覚されるの かについて、精神物理的測定指標を用いて実験を行い、観察者の性別を変えた錯視量の測定と、観察距 離を変えた錯視量を測定し、毎日習慣として行っているアイメイクの効果を明らかにした。 .事前調査 4.二重瞼・一重瞼の標準刺激 1.最も印象が変わる部分 2.目を大きく見せようと意識しているか 3.アイメイクに使用しているもの 実験を行うにあたって、女子大生がアイメイクをどの程度意識して化粧をしているか、本学科の学生50名を対象に アンケート調査を行った。 標準刺激 比較刺激 化粧をしていない目を90%から115%まで1%ずつ変化させた26試料 顔のパーツの中で、目が化粧によって最も印象の変わると思われており、ほとんどの人が目を大きく見せる ためにアイメイクをしているということが分かった。 アイメイクに使用しているものについて、アイシャドウ・アイライン・マスカラが多数でつげまつげが少数である のは、2016年のアイメイクのトレンドが「ナチュラルデカ目」であることが関係していると推察した。

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アイメイクによる錯視効果の検討A13AB016 井上優花 A13AB018 岩永友梨香

日本人女性の目の大きさの平均は、横幅3cm,縦幅1cmと言われる。二重・一重の目を撮影し、Photoshopを使用して加工、平均に準ずる試料を作成した。

1.緒言

3.試料

①アイシャドウ ②アイライン上のみ ③アイライン上+下1/3 ④アイライン全周囲 ⑤まつ毛メイク ⑥まつ毛メイクアイライン上のみ

⑦まつ毛メイクアイライン上+下1/3

⑧まつ毛メイクアイライン全周囲

90% 100%95% 105% 110% 115%・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・

アイメイクを施した8試料

図5.二重瞼・一重瞼の比較刺激

標準刺激の試料と比較刺激の100%の試料は同じ大きさの目である。

女性にとって化粧は、自己を美しくみせる手段であるが、特にアイメイクには、女性の印象を大きく変える重要な要素がある。「デカ目メイク」といって、目を大きく見せる方法が日々雑誌やテレビ番組で取り上げられるが、これはアイメイクの方法により見た目を違って見せる錯視効果である。

そこで本研究は、アイラインとまつ毛メイク、アイシャドウを要因として、目がどの程度大きく知覚されるのかについて、精神物理的測定指標を用いて実験を行い、観察者の性別を変えた錯視量の測定と、観察距離を変えた錯視量を測定し、毎日習慣として行っているアイメイクの効果を明らかにした。

2.事前調査

図4.二重瞼・一重瞼の標準刺激

図1.最も印象が変わる部分 図2.目を大きく見せようと意識しているか 図3.アイメイクに使用しているもの

実験を行うにあたって、女子大生がアイメイクをどの程度意識して化粧をしているか、本学科の学生50名を対象にアンケート調査を行った。

標準刺激

比較刺激 化粧をしていない目を90%から115%まで1%ずつ変化させた26試料

顔のパーツの中で、目が化粧によって最も印象の変わると思われており、ほとんどの人が目を大きく見せるためにアイメイクをしているということが分かった。

アイメイクに使用しているものについて、アイシャドウ・アイライン・マスカラが多数でつげまつげが少数であるのは、2016年のアイメイクのトレンドが「ナチュラルデカ目」であることが関係していると推察した。

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4.男女別にみる錯視量の測定

・試料はコンピュータ画面(19.5cm×34cm)に呈示。

【空間条件】被験者が周囲の色に影響されるのを防ぐためモニターの後ろを黒い布で統一

【実験条件】・実施期間:2016年8月~11月・実験対象:生活環境デザイン学科4年生(14名)

他大学男子学生(10名)・実験場所:生活科学部・意匠色彩学実験室505室

【実験手順】

測定方法:精神物理的測定指標(極限法)

標準刺激比較刺激

①比較刺激の小さい90%から大きい115%へ変化させる上昇系列から行う。標準刺激を右、比較刺激を左に並べて呈示。標準刺激と比較し、比較刺激の方が「大」「同」「小」の3件法で判断。

②比較刺激が標準刺激より「小」と判断された場合、比較刺激を1%大きくし、再び判断。この判断が「同」となり、さらに「大」判断、または「同」判断なしに「大」判断を得るまで続け、第一系列を終了。

③次いで第二系列へ移る。「大」と判断された比較刺激から、小さい刺激 (下降系列)へ変化させ判断を求める。「小」判断が得られたら第二系列を終了。最後に第三系列へ移り、再び上昇系列を行い、ここで全ての系列を完了。

④空間的差異をなくすため、標準刺激と比較刺激の左右と上昇系列と下降系列の入れ替えを行い、各試料につき計4回測定し、主観的等価値(標準刺激と比較刺激の両者が等しいと判断された時の比較刺激の値)を算出。

標準刺激が右側・上昇系列

標準刺激が右側・下降系列

標準刺激が左側・上昇系列

標準刺激が左側・下降系列

5分間休憩

10分間休憩

5分間休憩

刺激強度90%→115%

刺激強度115%→90%

素顔と比較して、目の大きさがアイメイクによって何%大きく知覚されたか

比較刺激<標準刺激

比較刺激>標準刺激

101%

100%

99%

図6.実験風景

図8.実験手順②図7.実験手順①

この手順を3回繰り返す

表1.判断の記入例

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【実験結果及び考察】

90

95

100

105

110

115

錯視量(%)

標準刺激0

①アイシャドウ②アイライン上のみ③アイライン上+下1/3④アイライン全周囲

⑤まつ毛メイク⑥まつ毛メイク・アイライン上のみ⑦まつ毛メイク・アイライン上+下1/3⑧まつ毛メイク・アイライン全周囲

90

95

100

105

110

115

錯視量(%)

標準刺激0

女性

図9.錯視量二重平均

① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧

各被験者の平均錯視量と標準偏差を求めた。

90

95

100

105

110

115

錯視量(%)

標準刺激0

① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧90

95

100

105

110

115

錯視量(%)

標準刺激0

女性→・(⑦まつ毛メイク・アイライン上+下1/3)の錯視量が最も多く、化粧をしていない目より7.3%過大視された。・(①アイシャドウ)の錯視量が最も少なく、4.04%過大視された。・アイラインの試料の中で上+下1/3が最も過大視された。・まつ毛メイクにアイラインを加えると錯視量は増加した。・すべての試料で男性より錯視量が多いことから、一重においては、女性の方が化粧効果が大きいということが判明した。

男性→・(⑧まつ毛メイク・アイライン全周囲)の錯視量が最も多く、化粧をしていない目より5.06%過大視された。

・(①アイシャドウ)の錯視量が最も少なく、2.03%過大視された。・アイラインの試料②③④で大きな差は生じなかった。

男女共に全ての試料において、標準刺激とした試料よりも化粧をしていない比較刺激の錯視量が多いことから、アイメイクはいずれも目を大きく見せていることが明らかとなった。

① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧

図10.錯視量一重平均

男性

女性 男性

二重

一重

女性→・(⑦まつ毛メイク・アイライン上+下1/3)の錯視量が最も多く、化粧をしていない目より5.61%過大視された。・(①アイシャドウ)の錯視量が最も少なく、1.6%過大視された。・アイラインの試料の中で上+下1/3が最も過大視されたのは、目の周りを囲うことでアイラインを強調し、目をはっきりと見せることができるが、同時に締め効果を生み出していることと、アイラインの一部を消すことで目と顔の一体感を生じさせつつ、目の広がり感じさせ、大きさ対比を弱める効果があることが推察される。

・まつ毛メイクにアイラインを加えると錯視量が増加した。

男性→・(④アイライン全周囲)の錯視量が最も多く、化粧をしていない目より5.4%過大視された。・ (①アイシャドウ)の錯視量が最も少なく、1.63%過大視された。・アイラインの試料の中で全周囲が最も過大視されたのは、男性がアイラインを引いた範囲すべてを目と判断したからであると推察した。

・まつ毛メイクにアイラインを加えても、錯視量の増加する試料とそうでない試料が現れた。また、⑥⑦⑧の錯視量に大きな差は生じなかった。

男女共に全ての試料において、標準刺激とした試料よりも化粧をしていない比較刺激の錯視量が多いことから、アイメイクはいずれも目を大きく見せていることが明らかとなった。

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6.総括(1)アイメイクによる錯視量の測定結果から、男女共に全ての試料において、標準刺激とした試料よりも化粧をして

いない比較刺激の錯視量が多いことから、アイメイクはいずれも目を大きく見せていることが明らかとなった。

(2)二重の場合女性は、⑦まつ毛メイク・アイラインを上+下1/3を最も大きく判断し、男性は④アイライン全周囲を最も大きく判断した。一重の場合女性は、⑦まつ毛メイク・アイラインを上+下1/3を最も大きく判断し、男性は⑧まつ毛メイク・アイライン全周囲を最も大きく判断した。二重・一重共に性別によって化粧の見方が異なるということが分かった。

(3)距離を変化させて行った女性のアイメイクによる錯視量の測定結果から、遠条件下において化粧効果がより大きく判断されることが明らかとなった。錯視量増加の原因には、遠距離になるにつれ細部が見分けにくくなり、化粧と目との境目が曖昧に知覚されたことが推察される。

化粧による錯視効果の研究によって、女性がアイメイクをする際、アイメイクの種類だけでなく、観察者からどう見えるか考慮することにより、自分に合う化粧の効果を最大限引き出すことが期待できる。

5.観察距離を変えた錯視量の測定

【試料選定】・ (⑦まつ毛メイク・アイライン上+下1/3)実験4の結果より、二重で最も錯視量が多いため。

・ (③アイライン上+下1/3)アイラインのみの距離による錯視量の変化を得るため。

・(⑤まつ毛メイク)まつ毛メイクのみの距離による錯視量の変化を得るため。

【距離の選定】パーソナル・スペースを参考に試料と被験者との距離を決めた。

①45cm・・・夫婦などきわめて親しい人同士の距離

②1m・・・友人など親しい相手との距離

③3m・・・仕事上の話し合いなど、ビジネスに適した距離

⑦まつ毛メイク・アイライン上+下1/3

③アイライン上+下1/3 ⑤まつ毛メイク

90

95

100

105

110

115

45cm 1m 3m 45cm 1m 3m 45cm 1m 3m

錯視量(%)

③ ⑤ ⑦

0

③アイライン上+下1/3の錯視量

45cm・1m→0.56%増加1m・3m→1.58%増加45cm・3m→2.14%増加

⑤まつ毛メイクの錯視量

45cm・1m→0.82%増加

1m・3m→0.95%増加45cm・3m→1.77%増加

⑦まつ毛メイク・アイライン上+下1/3の錯視量

45cm・1m→1.11%増加

1m・3m→1.26%増加45cm・3m→2.37%増加

【実験結果及び考察】

図12.距離ごとに生じた錯視量

**p<0.01有意差*p<0.05有意差

** *** * *

生活環境デザイン学科4年生(14名)を対象に生活科学部・意匠色彩学実験室505室で行った。

図11.距離試料

・すべての距離において、⑦まつ毛メイク・アイライン上+下1/3 ③アイライン上+下1/3 ⑤まつ毛メイクの試料順に錯視量が多い。

・すべての試料において、45cm・3mの間では約2%錯視量が増加し、遠条件下での化粧効果は大きくなることが分かった。