中心市街地再生のためのまちづくりのあり方について ...-3-2...

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-1- 中心市街地再生のためのまちづくりのあり方について アドバイザリー会議報告書の概要 まちづくり三法(中心市街地活性化法、改正都市計画法、大店立地 が 制定されて今年で7年になるが 各種の取組にもかかわらず 中心市街地の衰退は深刻化しており、その再生は喫緊の政策課題。 この問題に関し、国土交通省は、有識者等からなるアドバイザリー 会議(座長:金本良嗣東京大学教授)を設置、中心市街地衰退の構造 的要因分析と既存施策の評価を中心に調査分析を行った。 第Ⅰ部 中心市街地の現状分析 中心市街地問題をどう見るか (1)中心市街地で何が起きているか ●都市の人口規模に関わらず、中心部の居住人口、事業所数は減少の一途。 ●中心商業地の機能も一貫して低下。 都市人口規模別の中心部の事業所数の推移 (平均) 0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 S56 S61 H3 H8 H13 0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40% 45% 50% 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 S50 S55 S60 H2 H7 H12 0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 万人 20~30万人 30~50万人 50万人以上 20~30万人 30~50万人 50万人以上 都市人口規模別の中心部の人口の推移 (平均) (実数) (市全体に対する割合) 都市人口規模別の中心部の販売額の推移 (平均) 都市人口規模別の中心部の売場面積の推移 (平均) 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 S54 S57 S60 S63 H03 H06 H09 H11 H14 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 億円 0 5 10 15 20 25 S54 S57 S60 S63 H03 H06 H09 H11 H14 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 万㎡ (実数) (市全体に対する割合) (実数) (市全体に対する割合) 20~30万人 30~50万人 50万人以上 20~30万人 30~50万人 50万人以上

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中心市街地再生のためのまちづくりのあり方についてアドバイザリー会議報告書の概要

○ まちづくり三法(中心市街地活性化法、改正都市計画法、大店立地) 、 、法 が 制定されて今年で7年になるが 各種の取組にもかかわらず

中心市街地の衰退は深刻化しており、その再生は喫緊の政策課題。

○ この問題に関し、国土交通省は、有識者等からなるアドバイザリー会議(座長:金本良嗣東京大学教授)を設置、中心市街地衰退の構造的要因分析と既存施策の評価を中心に調査分析を行った。

第Ⅰ部 中心市街地の現状分析

1 中心市街地問題をどう見るか

(1)中心市街地で何が起きているか

●都市の人口規模に関わらず、中心部の居住人口、事業所数は減少の一途。

●中心商業地の機能も一貫して低下。

都市人口規模別の中心部の事業所数の推移(平均)

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

S56 S61 H3 H8 H13

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

40%

45%

50%

0

1

2

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9

10

S50 S55 S60 H2 H7 H12

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

万人

20~30万人 30~50万人 50万人以上

20~30万人 30~50万人 50万人以上

都市人口規模別の中心部の人口の推移(平均)(実数) (市全体に対する割合)

都市人口規模別の中心部の販売額の推移(平均)

都市人口規模別の中心部の売場面積の推移(平均)

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

S54 S57 S60 S63 H03 H06 H09 H11 H14

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60%億円

0

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20

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S54 S57 S60 S63 H03 H06 H09 H11 H14

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

万㎡

(実数)

(市全体に対する割合)20~30万人 30~50万人 50万人以上

20~30万人 30~50万人 50万人以上

(実数)

(市全体に対する割合)20~30万人 30~50万人 50万人以上

20~30万人 30~50万人 50万人以上

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(2)都市全体で何が起きているか

●モータリゼーションが進展、地方都市では自動車依存型の生活へ。

●市役所、病院、文化施施設等の公共公益施設が郊外に移転。

、 、 。● 年以降 大規模商業施設の出店が顕著 最近は郊外立地割合が多い1990

45

168

188

217

81

57

222

164

135

37

187

626

299

171

14

0% 20% 40% 60% 80% 100%

00~03年

90~99年

80~89年

70~79年

 ~69年

中心地域 周辺地域 郊外地域

総数

132

523

651

1016

289

SCの地域別立地割合

地方中核都市圏における代表交通手段構成の推移

44.6

52.7

54.0

24.0

20.1

19.0

25.3

20.6

21.12.9

2.9

2.4

3.0

3.7

3.7S62

H04

H11

鉄道 バス 自動車 二輪車 徒歩

(%)

56.0

63.8

69.6

21.1

17.5

13.8

18.0

14.6

13.02.0

1.7

2.0 2.9

2.4

1.6

S62

H04

H11

鉄道 バス 自動車 二輪車 徒歩

(%)

平日 休日

379

1089

119

237

164

1434

297

1491

0%

20%

40%

60%

80%

100%

市役所 文化施設 病院 高校・大学

中心市街地 郊外部

公共公益施設の郊外移転状況公共公益施設の地域別立地状況

32

14 10

5

18 22

8 1725

1316

10

0

10

20

30

40

50

60

70

80

1970年代 1980年代 1990年代

市役所 文化施設 病院 高校・大学

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2 具体事例の分析

●鹿児島市、旧静岡市を「活性化している都市」として分析。

(旧静岡市中心市街地)

(鹿児島市中心市街地)

H9からの増減 H8からの増減 H7からの増減青森市 -4.88 -0.98 -0.16 盛岡市 -3.91 -0.78 0.01秋田市 -3.85 -1.75 -0.42 山形市 -5.82 -1.28 -0.21 福島市 -5.84 -1.83 -0.59 水戸市 -5.35 -2.84 -0.52 宇都宮市 -5.19 -1.00 -0.40 前橋市 -4.11 -1.57 -0.76 新潟市 -5.86 -3.28 -0.63 富山市 -3.57 -2.66 -0.23 金沢市 -4.34 -1.93 -1.48 福井市 -2.77 -1.72 -0.33 甲府市 -4.70 -1.49 -0.43 長野市 -3.43 -2.26 -1.32 岐阜市 -7.64 -3.11 -1.70 旧静岡市 -7.25 1.27 -0.20 津市 -5.51 -1.85 -0.82 和歌山市 -5.90 -0.90 -0.16 鳥取市 -11.28 -0.51 -0.72 松江市 -3.08 -0.63 -0.49 岡山市 -1.40 -0.92 -0.32 山口市 -9.16 -3.55 -1.80 徳島市 -6.19 -0.66 -0.23 高松市 0.46 -1.71 -0.48 松山市 -4.78 0.14 -0.14 高知市 -5.47 -1.24 -0.55 佐賀市 -5.46 -4.37 -0.37 長崎市 -3.46 0.62 -0.17 熊本市 -3.85 -1.13 -0.23 大分市 -4.56 -1.95 -0.43 宮崎市 -7.01 -2.07 -0.73 鹿児島市 1.69 -0.61 0.00那覇市 -9.35 -1.71 -0.51

15.7331.8320.8319.1120.4925.8918.8617.3733.6020.8426.2811.9525.5921.9231.8131.7621.9021.0626.9230.1925.5821.4020.2820.7629.4124.7518.4841.3821.3721.9221.1634.02

11.0239.2120.1519.6828.7023.3520.1920.4730.8423.2030.5114.4324.9226.2840.5324.5036.4815.0836.2035.7624.5329.1116.9330.1831.4729.9516.4843.4214.8119.8629.1626.3834.6030.30

0.6910.265.064.615.054.804.155.81

11.554.86

14.601.886.46

11.0318.843.61

11.412.737.828.843.25

22.481.536.49

5.77

7.586.813.668.57

15.23

中心市街地の市全体に対する小売販売額シェア

(%)

中心市街地の市全体に対する事業所数シェア(%)

中心市街地の市全体に対する人口シェア(%)

H14 H13 H12

2.393.055.34

鹿児島市は、中心市街地の小売販売額シェアが増加

旧静岡市は、中心市街地の

事業所数シェアが増加

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●鹿児島市が活性化している理由

・大規模商業施設の多くが中心市街地に立地。→

・街なか居住も進む (右下)。(市街化調整区域における郊外

。)住宅開発は認めてこなかった

・公共公益施設の多くも、中心市街地に立地。

・公共交通機関の利便性向上のため、各種施策が講じられ、中心市街地が公共交通の結節点として賑わいを見せる。

・結果として、他の地方都市に比べ買い物の際の徒歩分担率が高い。

●旧静岡市が活性化している理由・公共公益施設の多くが中心市街地

に立地。・市街化調整区域における郊外住宅

開発は認めてこなかった。・バスを中心に、公共交通機関利用

増進策を講じる。

(近年、郊外に大規模商業施設の立地が進み、中心市街地の商業機能は低下傾向 )。

●一方、他の典型的地方都市では、

・公共公益施設が郊外に移転・郊外住宅開発の進展・中心部の人口密度が低下

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004

中心

市街

地人

口(人

0

500

1000

1500

2000

2500

3000

3500

4000

4500

5000

マン

ション

供給

累積

戸数

(戸)

過去10年間のマンション累積供給戸数 中心市街地人口

S59移転 市中央図書館

凡例

病院(300床以上)

官公庁施設

文化施設

移転施設

中心市街地

凡例

病院(300床以上)

官公庁施設

文化施設

移転施設

中心市街地

19.8%18.7%

20.8%20.3%

0%

5%

10%

15%

20%

25%

1991 1994 1997 2002

対都

市圏

中心

市街

地販

売額

シェ

ア(%

0

50,000

100,000

150,000

200,000

250,000

300,000

1万

㎡以

上の

商業

施設

の売

り場

面積

累積

(㎡

1万㎡以上の中心市街地内大規模商業施設 1万㎡以上の鹿児島市郊外大規模商業施設

1万㎡以上の鹿児島都市圏大規模商業施設 中心市街地の対都市圏年間販売額シェア

1999年

A店 約1.7万㎡

鹿児島市

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●他の典型的地方都市と比較すると、鹿児島市、旧静岡市は

・公共施設徒歩圏内の住宅比率が高い。

。・中心部の人口密度が高い・公共交通利用者が多い。

○中心部の人口密度が高く、公共公益施設が集中立地。⇒集約型都市構造

○公共交通ネットワークがよく機能、中心市街地が集積のメリットを活かして交通結節点となる。

○各種都市機能へ徒歩、公共交通機関でアクセスしやすい。⇒歩いて暮らせるまち

→拡散型都市構造●これに対し、他の典型的地方都市は

・公共交通機関利用者も少なく、都市機能へのアクセスは自動車依存

・中心市街地から大規模商業施設が撤退、商店街には空き店舗が累積

30%

19%16%

30%

72%

65%

57%

50%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

鹿児島市 旧静岡市 A市 B市

最寄り駅までの徒歩利用圏内(1km)住宅比率

最寄り医療機関までの徒歩圏内(500m)住宅比率

30%

19%16%

30%

72%

65%

57%

50%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

鹿児島市 旧静岡市 A市 B市

最寄り駅までの徒歩利用圏内(1km)住宅比率

最寄り医療機関までの徒歩圏内(500m)住宅比率

A市・B市

病院移転

あり

鹿児島市・

旧静岡市

病院移転なし

路面電車網

あり

各市の中心部の人口密度(3kmメッシュ)

71

84

5658

40

45

50

55

60

65

70

75

80

85

90

鹿児島市 旧静岡市 A市 B市

人口

密度

(人

/ha)

各市の中心部の人口密度(3kmメッシュ)

71

84

5658

40

45

50

55

60

65

70

75

80

85

90

鹿児島市 旧静岡市 A市 B市

人口

密度

(人

/ha)

2000年の路面電車・バスの利用者数(人)

1,834

10,149

8,934

12,240

29,912

14,445

0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000

B市の路面電車・バス利用者数

A市のバス利用者数

旧静岡市のバス利用者数

鹿児島市電・バス利用者数

2000年の路面電車・バスの利用者数(人)

1,834

10,149

8,934

12,240

29,912

14,445

0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000

B市の路面電車・バス利用者数

A市のバス利用者数

旧静岡市のバス利用者数

鹿児島市電・バス利用者数

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3 中心市街地再生を阻む理由

(1)中心市街地の中に関する課題

●行政が自ら中心市街地活性化基本計画の実現に取り組んでいる地区は、少数。(136地区、全体の22%)

●中心部の人口密度と販売額には相関関係。

街なか居住の推進が、中心市街地活性化の重要課題。

●世論調査でも、多くの人が大型店へ満足している一方で、中小小売店へは不満を持っている。

、 。●地方都市の中心市街地の店舗賃料は 大都市と比較しても決して安くない、 、 。空き店舗が増加しても 地権者が高い賃料へ期待 有効活用されにくい

16%

57%

9%

3%

10%5%

満足している

まあ満足している

やや不満である

不満である

どちらともいえない

わからない

「満足」「まあ満足」は合わせて73%

大型店の満足度

7%

33%

18%

9%

20%

13%

「満足」「やや満足」は合わせて40%

「不満」「やや不満」を合わせると27%

中小小売店の満足度

不満の1位は

「品揃えの悪さ」

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

0 2 4 6 8 10

人口密度(千人/km2)

販売額

(億円

新潟

静岡

浜松

岡山

熊本鹿児島

旭川

秋田

郡山

いわき

宇都宮

富山

金沢

長野

和歌山

倉敷

福山

高松

松山

高知

長崎

大分

宮崎

函館

青森

福島

前橋

福井

松本

沼津

下関

徳島

佐世保

八戸

盛岡

山形

水戸高崎

富士

四日市

大津

久留米

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

0 2 4 6 8 10

人口(万人)

販売額

(億円

那覇(11.7万人)

(1,454億円)

那覇(11.7万人)

(1,454億円)

三大都市圏以外の都市における中心部(3km四方の範囲)の人口密度と販売額

50~

100万人

20~30万人

30~50万人

50万人以上

都市圏内に他の核都市を有するもの

50万人未満

100万人以上

都市人口

都市圏人口

50~

100万人

20~30万人

30~50万人

50万人以上

都市圏内に他の核都市を有するもの

50万人未満

100万人以上

都市人口

都市圏人口

販売額(億円)

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(2)中心市街地の外に関する課題

、●大規模商業施設だけではなく拠点病院等の「集客施設」の郊外立地、郊外移転が中心市街地に影響。

※郊外立地を促す要因・容易な駐車場整備・農業者、事業者の土地

活用希望・税収、雇用等の期待

4 既存施策の評価

(1)中心市街地活性化施策

●市町村の基本計画の多くが、明確な数値目標を持たず、区域設定も広狭まちまちで、基本計画の運用面で課題。

●事業の実施状況把握、評価、見直しという業務管理が十分でなく、国又は都道府県によるチェックもほとんどなされないなど、事業実施面で課題。

。 。 、 、●商業振興に偏りがち 事業も既存事業が多い 居住 公共公益機能の充実民間の創意工夫を活かすための資金調達面の支援という観点が希薄。

(2)都市計画・建築規制制度

●用途地域制度は、雑多な土地利用を追認。また、白地地域等においては、、 、 。事実上用途制限がなく 開発許可も技術審査のみで 土地利用規制が緩い

地方圏における都市計画区域内の大規模商業施設(床面積3千㎡以上)規制状況別の面積割合

都市計画区域内 765万ha (100%)

市街化調整区域260万ha (34.0%)

非線引き白地391万ha (51.1%)

商業地域4.6万ha (0.6%)

大規模商業施設の立地を許容しない用途地域78万ha (10.2%)

大規模商業施設の立地を許容する用途地域31万ha(4.0%)

× 大規模商業施設の建築が禁止される用途地域

▲ 大規模商業施設の建築が原則禁止される区域

○ 大規模商業施設の立地に制限のない区域

×

全国都市計画区域面積995万ha(26.3%)

全国都市計画区域外面積2,784万ha(73.7%)

内、地方圏都市計画区域面積765万ha(22.5%)

内、地方圏都市計画区域外面積2,641万ha(77.5%)

全国都市計画区域面積995万ha(26.3%)

全国都市計画区域外面積2,784万ha(73.7%)

内、地方圏都市計画区域面積765万ha(22.5%)

内、地方圏都市計画区域外面積2,641万ha(77.5%)

0人

1,000人

2,000人

3,000人

4,000人

5,000人

6,000人

7,000人

平成5年 平成8年 平成11年 平成14年

仲小路(日曜) 仲小路(月曜)

秋田赤十字病院(秋田県秋田市)

平成10年7月秋田市中心部(中通)から郊外(上北手猿田)に移転。旧病院が立地していた商店街(仲小路)の歩行者量が減少。

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※大規模商業施設は、近年では、商業地域への立地割合が大きく減少し、地方圏では工業系用途地域、非線引き白地地域への立地割合が増加。

●都市計画区域外で用途規制ができる「準都市計画区域」は、農振法の農用地区域以外の区域で設定。農用地区域から除外された土地は、農地関係の規制も都市計画規制も及ばない。

●市街化調整区域には、将来の市街化に備え、当面市街化を抑制するという性格もあり、急増する人口を受け止めるために、大規模な住宅開発等は、計画的開発として開発許可ができる仕組み。

農地の中に建つ建築物

3km3km

【札幌市の事例】

【凡例】

人口は自然増かつ社会増だが、増加率は徐々に低下。

都心地域では人口増加数が上昇基調にあるのに対し、郊外住宅地ではここ数年人口増加が急激に鈍化。

市街化区域の縁辺部では、既に人口減少や急激な高齢化等、「オールドタウン問題」が発生している地区が発生。

その一方、地権者等による低未利用地の活用ニーズが根強く、市街化調整区域における大規模開発の計画が多数存在。

市は行政指導や開発不許可処分により調整区域での大規模開発を極力抑制する施策をとっているが、審査請求が認容された事例もあり、事業者の協力を得られない場合、開発を許容せざるを得ない状況。

…市街化調整区域における大規模開発が実施された区域(平成10年以降)

…市の指導等により市街化調整区域における大規模開発が保留された区域(平成10年以降)

…人口減少、高齢化等の問題が顕在化している地域

開店時期

住居系用途地域

近隣商業地域

商業地域

準工業地域

工業地域

工業専用地域

市街化調整区域

非線引き白地

都市計画区域外

住居系用途地域

近隣商業地域

商業地域

準工業地域

工業地域

工業専用地域

市街化調整区域

非線引き白地

都市計画区域外16%

18%

19%

9%

11%

6%

9%

15%

17%

20%

15%

10%

26%

23%

29%

48%

57%

77%

20%

20%

17%

13%

9%

5%

7%

3%

5%

15%

12%

11%

5%

3%

1%

9%

1%

1%

3%

3%

2%

3%1%

2%

2%

2%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

H13~H16

H8~H12

H3~H7

S61~H2

S56~S60

S55以前

(件数)

186

460

233

124

138

346

(件数)

186

460

233

124

138

346

地方圏

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- 9 -

●病院、社会福祉施設等の公共公益施設は開発許可の適用除外。

●地方分権の推進により、都市計画権限の多くが市町村に委ねられる。広域的判断なく、開発が容認される傾向。

( ) 、市町村の発意で大規模商業施設等を規制できる制度 特別用途地区等 もほとんど活用されない。

庁舎、病院の建設をきっかけとして、幹線道路沿いに薬局等の店舗が建設され、農地への開発のしみ出しが見受けられる例

<宮崎県宮崎市の大規模SC>

周辺13市町村等が反対、しかし開発許可権者である宮崎市は開発行為を許可。

<福島県伊達町の大規模SC計画>

伊達町は県に、市街化区域編入を要望。近隣4町は慎重な取扱い要望。開発許可権者である福島県は、許可等を行わない方針。

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第Ⅱ部 政策分析

1 政策目標

(1)現状のまま推移すると

●現行の制度のままでは、人口減少時代においても、都市の拡散が続く

空洞化ア 中心市街地の賑わいは薄れ、するが一層進展

地域間競イ 少なくなるパイを食い合う、税収確保の観点から、大規争が激化

模商業施設等の立地を歓迎する市町村が増える

遊休地が増大、ウ 産業構造の変化で、大規模施設等の郊外立地の種地となる

エ 事業者間競争も激しく 「焼き畑的」、開発は、 、しかも撤退後も元には戻らない貴重な自然や緑を失わせ

●特に交通の観点からは、このまま低密度な都市の拡散傾向が続くと

ア となる公共交通の維持が困難イ 中心市街地に集積のメリットがなくなり

する交通結節点としての機能を喪失高齢者にとってウ 自動車依存社会化加速、

となる暮らしにくい都市構造

※郊外(買い物)の場合、中心市街地(買い物)と比べ、自動車依存度が高い。特に大規模商業施設を利用する場合はほとんどが自動車利用。

←新潟都市圏

代表交通手段分担率

※買い物目的では、中心市街地に居住する高齢者は他の地域に居住する高齢者に比べ、トリップ数が大きく、徒歩の割合が高い。中心市街地外においては、高齢者

免許非保有者のトリップ数が小さく、外出の制約になっている。

K市

33.1

63.4

84.8

16.5

16.5

10.6

38.0

19.0

4.5

10.7

0.7

0.00.0

0.4

1.8

0% 20% 40% 60% 80% 100%

中心市街地

その他地域

郊外大型店舗

自動車 二輪 徒歩 バス 鉄道 その他

33.1

63.4

84.8

16.5

16.5

10.6

38.0

19.0

4.5

10.7

0.7

0.00.0

0.4

1.8

0% 20% 40% 60% 80% 100%

中心市街地

その他地域

郊外大型店舗

自動車 二輪 徒歩 バス 鉄道 その他

0.06

0.07

0.06

0.04

0.18

0.08 0.01

0.01

0.00

0.00

0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25 0.30 0.35

中心市街地

その他の地域

自動車 二輪 徒歩 バス 鉄道 その他

0.20

0.33

(トリップ/人/日)

0.06

0.07

0.06

0.04

0.18

0.08 0.01

0.01

0.00

0.00

0.00 0.05 0.10 0.15 0.20 0.25 0.30 0.35

中心市街地

その他の地域

自動車 二輪 徒歩 バス 鉄道 その他

0.20

0.33

(トリップ/人/日)

1.70

0.26

1.90

0.24

0.26

0.29

0.20

0.55

0.84

0.27

0.42

0.11

0.13

0.06

0.02

0.10

0.01

0.01

0.01

0.02

0.00 0.50 1.00 1.50 2.00 2.50 3.00

中心・免許保有

中心・免許非保有

他・免許保有

他・免許非保有

自動車 二輪 徒歩 バス 鉄道 その他

2.62

(トリップ/人/日)

1.51

2.33

0.94

行き先案内板の例

路線が大幅に減少

Nバスセンターの現状

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- 11 -

●開発者のイニシアチブに任せると

ア 渋滞対策等、交通計画が後追い的、公共投資の計画性が無意味に

イ 立地が自由に行われる結果、白地地域等、本来想定していないところに大規模商業施設等が立地

各種都市機能が無秩序ウ 結果としてな形で散在し、全体として、都市機能へのアクセシビリティが悪い都市構造となる

※道路をはじめとするインフラ整備により、自動車利用者にとっての移動のしやすさ(モビリティ)は向上した。しかし、都市の拡散と公共交通ネットワークの衰退により、自動車利用者以外の人にとって、目的

( )地への到達のしやすさ アクセシビリティは、むしろ低下する傾向。

●地方公共団体の対応

ア 青森市は、拡散型都市構造が都市経営的にコストを伴うものであるこ、 。とを試算し コンパクトシティを都市計画マスタープランに位置づける

イ 特別用途地区、特定用途制限地域により大規模商業施設を規制している市町村もある (19市町)。

ウ 金沢市、京都市は商業施設の適正な立地を誘導する条例を制定。指導を行っている。福島県は、大規模業施設の立地に関し県が広域的な観点から調整を行う、事業者に地域貢献活動を求める等の措置を盛り込んだ条例を制定するべく準備を進めている。

交通渋滞の発生箇所が広域化し、近隣交差点のみでなく、遠く離れた道路の交通混雑を誘発した。

大規模集客施設立地前 大規模集客施設立地後

道路ネットワーク中心部で混雑している状態。

宇都宮市における大規模集客施設立地前後の交通渋滞発生状況

店舗 A

店舗 B

渋滞箇所が広域化し、バラバラに渋滞箇所が広域化し、バラバラに渋滞箇所が広域化し、バラバラに

総床面積 33,000 m2

駐車台数 2,500台

総床面積 33,000 m2

駐車台数 2,500台

総床面積 27,606 m2

駐車台数 2,300台

総床面積 27,606 m2

駐車台数 2,300台

車道幅員改良

交差点改良・電線共同溝整備

現道拡幅・橋梁整備

0~10 10~2020~40 40~

最大車列長 (VPH)

0~10 10~2020~40 40~

最大車列長 (VPH)

0~10 10~2020~40 40~

最大車列長 (VPH)

交通渋滞の発生箇所

ネットワークの

中心部で混雑

ネットワークの

中心部で混雑

ネットワークの

中心部で混雑

時間帯:休日ピーク時(P.M. 15:30-16:30)

車道幅員改良

交差点改良・電線共同溝整備

現道拡幅・橋梁整備

車道幅員改良

交差点改良・電線共同溝整備

現道拡幅・橋梁整備

0~10 10~2020~40 40~

最大車列長 (VPH)

0~10 10~2020~40 40~

最大車列長 (VPH)

0~10 10~2020~40 40~

最大車列長 (VPH)

交通渋滞の発生箇所

ネットワークの

中心部で混雑

ネットワークの

中心部で混雑

ネットワークの

中心部で混雑

時間帯:休日ピーク時(P.M. 15:30-16:30)

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(2)目指すべきアウトカム

●生活者の視点

・居住機能を重視。高齢社会を見据えると、過度に自動車に依存する都市構造は望ましくない 「歩いて暮らせるまちづくり 。。 」

・都市生活にふさわしい「多様性」は、交流人口による「賑わい」から生まれる。

生活者にとって暮らしやすく、魅力ある都市とは、多様な都市機能へ⇒公共交通ネットワークを活用したアクセシビリティが確保されている構造。

●「中心性」の新たな観点

・40年前の都市像中心市街地には諸機能が集積し、中心市街地の土地利用の高度化は自然な形で進展。従って都市環境を守る最低限の規制をしておけば、中心から郊外に向かってピラミッド型の土地利用が進む

・これから:人口の減少を伴いつつ空洞化が進む「市街地縮小の時代」中心性を1つの大きな中心市街地に戻すことは現実には困難。都市の様々なところが中心性を分担することができる。

都市圏に住む多くの人々が公共交通ネットワークによりアクセスしや⇒すい場所、集積のメリットを活かして更に多様な機能と交流人口を呼び込むことが期待される場所に、広域的な都市機能が効果的、集約的に立地する都市構造が望ましい。

●拡散型都市構造から集約型都市構造へ:イニシアチブを地域へ取り戻す

・これまでは、膨張する都市の外縁の問題が都市計画の最大課題だった。

今後の人口減少時代には、都市の内部に多様で優良な都市機能を集約⇒・誘導。

・しかし、それは単一の地区に集約するという意味ではない。

都市圏全体として、高齢者も含めた多くの人々にとって暮らしやすい⇒という視点で、各種都市機能の立地の適正性に関し、広域的な観点から「よく判断」された都市構造を実現。そのためには、地域の側が、「まちづくりのイニシアチブ」を持つ必要。

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・このことは、エネルギー効率が高く自然環境との調和をはじめ環境と共生する持続可能な都市(サステイナブルシティ)の実現を目指すことにもつながる。

2 中心市街地再生に向けた政策の方向性(分析結果の総括)

(1)総論

●都市の外では、無秩序散在型都市構造へ向かう流れに 一ブレーキをかける方で、都市の中では、街なか居住等都市機能の誘導・集約化により、中心市街地自体の振興を図る、つまり ことを同時に行っていアクセルをかけるくことが必要である。

都市圏にお●すべての都市の中心市街地の活性化が図られるわけではない。、多くの人にとって暮らける各都市の役割や集積のポテンシャルに応じて

しやすい都市構造の実現という観点から、どこに広域的都市機能を立地誘導するべきか、が適正に判断される必要がある。

● から、明確な政策的目標を持ち、効果的な施策の実「選択と集中」の観点施に積極的に取り組む市町村、都市経営の観点から責任を持ってまちづくりに取り組む主体に対して、積極的な支援を行うべきである。

(2) 中心市街地の振興方策

① 街の活力の源泉である居住人口の増加を図る方策の充実、強化が必要。

② 医療・福祉・文化等の公共公益施設の立地誘導策、公共交通機関の利便性向上策、交流を促進するための広場、緑地、歩行空間など賑わいの拠点となる施設や機能の充実、来街者を確保するための各種施策等の、拡充・強化が必要。

③ 特に賑わいを確保する効果が大きい地区について多様な施策を導入する必要。特に、従来ともすればまちづくりに積極的でなかった地権

、 、 。者等を巻き込み 空地 空き店舗の有効活用を促進する方策が不可欠

④ 従来の施策では、主に行政や商店街関係者の参画を念頭に置いていたが、今後は、中心市街地活性化に資する施設の整備・管理・運営など幅広いまちづくり事業を行う民間組織に対して、地域に蓄積された民間資金の活用により事業立ち上げ時の資金調達を支援する方策や、税制上の優遇措置の検討が必要。

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(3) 都市機能の適正立地

① 大規模商業施設等の立地に関しては、用途地域変更等の都市計画の手続を求め、その中で、住民参加等、幅広い意見の吸い上げと都道府県知事の同意等を通じて、広域的な観点から適正立地を確保することとしてはどうか。

② 公共公益施設がどこでも、自由に立地できるという制度を見直し、立地に際して適切な判断がなされる仕組みとしてはどうか。

③ 市街化調整区域において大規模開発であれば容認されること、都市計画区域外において農地等に都市計画規制が及ばないことといった現行制度上の問題点を改善する必要があるのではないか。

④ イニシアチブを官が独占しないために、民間からの提案制度を充実すべきではないか。

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アドバイザリー会議について

●検討状況

【第1回会議 (平成16年11月5日)】・中心市街地再生に関する各種施策と中心市街地の現状について

【第2回会議 (平成16年12月20日)】・中心市街地の意義に即した検証について・大型商業施設等の郊外立地・スプロールの影響について

【第3回会議 (平成17年1月26日)】・中心市街地の活性化・衰退の推移と主体的要因について

【第4回会議 (平成17年3月7日)】・中心市街地再生にかかる論点について

【第5回会議 (平成17年4月27日)】・報告のアウトラインについて

【第6回会議 (平成17年7月8日)】・報告書(案)について

●会議メンバー

東京大学大学院工学系研究科教授家田 仁(座長) 東京大学大学院経済学研究科教授金本 良嗣

福島県知事佐藤 栄佐久東京工業大学大学院社会理工学研究科教授中井 検裕國學院大学法科大学院教授西谷 剛流通経済大学経済学部教授原田 英生金沢市長山出 保日本経済新聞社論説委員吉野 源太郎

( 、 )50音順 敬称略