中心静脈リザーバーを留置される方へ - 高知医療セ...
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中心静脈リザーバーを留置される方へ
様
1.どうして中心静脈リザーバーを入れるのですか?
1 日中持続して点滴をしたり、薬を連日静脈から投与する場合には、毎日あるいは日に何回も静脈注射をする
ことになります。また、口から栄養を充分取ることができず、栄養価の高い輸液(高カロリー輸液)をしなければな
らない場合には、肩(鎖骨)の下から心臓の近くまで管を入れておくことがあります。
血管がでにくく注射が入りにくい方、注射してもすぐ漏れてしまう方、漏れると皮膚に重大な障害を受ける可能
性がある薬(抗がん剤など)を使用される方では、何回も針を刺しかえるという苦痛をおかけすることがあります。
また、高カロリー輸液をされる方では、治療が終わるまで肩(鎖骨)の下から管が出っぱなしになってしまいます。
このような方には、点滴が終わるまでベッド上で安静にしていただいたり、肩(鎖骨)の下から管が出ている場合
には、お風呂にも入れず外出・外泊などにも不自由な思いをおかけすることになります。
そこで最近、鎖骨の下や、肘の静脈から心臓の近くまで細い管(カテーテ
ル)を入れて、「リザーバー」という小さな器械に接続し、胸(鎖骨の下から管を
入れた場合)や前腕部(肘から入れた場合)に埋め込みます。そうすると、皮
膚の上から「リザーバー」に針を刺すだけで、確実に静脈へ点滴あるいは薬剤
が投与でき、しかも針を固定しますからベッド上で安静にしていなくとも良いこ
とになります。治療を休む時には針を抜いて、お風呂も入れますし、外出・外
泊も許可が出ていればすることもできます。
この方法を用いると、在宅でも点滴や注射が受けられます。
2.どこから、どのようにして入れますか?
カテーテルを留置する場所としては、胸(鎖骨下静脈)、太腿(大腿静脈)、頸(内頚静脈)、前腕部、上腕部な
どがあります。最も多く行われているのは胸(鎖骨下静脈)から入れる方法です。胸から入れる場合は、鎖骨の
下の一部分を麻酔して、鎖骨の奥にある「鎖骨下静脈」に針をさしてカテーテルを入れます。前腕部から入れる
場合は、肘の小指側の静脈に針を刺して入れます。肘の静脈が皮膚の上から見えにくい時には、手首の方から
小さな針をさして、造影剤という血管を見えるようにする薬を入れ、テレビに映して(透視)静脈を見ながら針で刺
してカテーテルを入れます。
カテーテルと「リザーバー」をつないだら、皮膚の下に埋め込むように2~3cm切開します。胸に留置する場合は、
皮下脂肪が厚いので、前腕部に留置するものより少し大きな「リザーバー」を留置します。「リザーバー」を埋め込
んだ部位は、表面からコブのように浮き上がりますが、それを目印に針を刺します。衣服で隠すことができます。
3.カテーテルを入れる時には、どんな合併症がありますか?
胸(鎖骨の所)から入れる場合は、鎖骨下静脈に針を刺す時にそれに関連して合併症が起こることがあります。
手探りで針を刺しますので、動脈を刺したり、肺を刺したり、リンパ管を刺したり(左側から入れる場合)する事が
まれにあります。肺を刺した時には「気胸」といって、肺が縮んで呼吸が苦しくなったり、動脈を刺した時には、胸
に血がたまったり(血胸)することがあります。場合によっては緊急手術が必要になることも報告されています。
一方、前腕部(肘の所)から入れる場合には、血管が細い方では、カテーテルの刺激により静脈炎を起こすこ
とがあります。カテーテルの入っている血管に沿って痛みが生じることがあります。湿布でよくなります。
どこから入れるにしても、なんらかの原因で薬や点滴が漏れて、「リザーバー」周囲に痛みや発赤、腫れなど
(炎症といいますが生じることがあります。感染を起こして膿がたまると「リザーバー」が入っている限り治りません
ので、埋め込んだものを全部はずしてしまわなければなりません。
また、血管の中に入っているカテーテルの周りに、血のかたまり(血栓といいます)ができることがありますが、
その時にはカテーテルを入れた方の手が腫れてきます。そのままにしておけば、血栓が血液の流れと一緒に肺
に入り「肺梗塞」という命に関わる合併症が起こることがありますので、血栓が疑われたらカテーテルを入れてあ
る血管に、手首の側の細い血管から造影剤を注入しながら写真を撮り、血栓がどのくらいできているかを調べ、
それによって血栓を溶かす薬を飲んでいただくことがあります。場合によってはカテーテルを全部はずしてしまう
こともあります。全部はずしてしまった後も引き続き「中心静脈リザーバー」を必要とする場合には、別の場所(多
くは反対側の手)に入れ替えをしていただく事になります。
詳しくは、http://www2.biglobe.ne.jp/̃msojiro/に載せてありますので、インターネットにつなげる環境をお持ち
の方は御参照下さい。
4.点滴をしている時に気をつけることはありますか?
カテーテルは細いので、点滴が落ちにくい感じを受けられるかもしれません。しかし、1 日に必要な量は投与で
きますので心配なさらないで下さい。特に、前腕部(肘の所)から入れる場合には、腕を曲げていると点滴の落ち
が遅くなったり、たまに止まったりする事があります。どのような時に点滴が落ちにくくなるか、時々観察なさって
下さい。どのようなかっこうをしたら点滴が良く落ちるのかも工夫なさって下さい。
針はしっかり固定するようにしますが、何かの拍子に少し抜けてくる場合があります。少し浅めになるくらいで
は心配はありませんが、抜けてしまうと針を刺している周りに薬剤が漏れてしまいます。その時には針を刺してい
る部位の違和感や、痛みが起こりますので、看護師にお知らせ下さい。
5.治療が終了したら中心静脈リザーバーはどうしますか?
治療が終了して、点滴や薬の投与が必要でなくなれば全部はずしてしまいます。その時には「リザーバー」を埋
め込んだ場所をまた切開させていただきます。
しかし、在宅で点滴が引き続き必要な方も、在宅看護をしている施設に連絡して手続きをとれば、自宅
で点滴できるように訪問を受けることができます。
中心静脈リザーバーに関する Q & A 集
中心静脈リザーバーに関して、よく受ける質問をQ&A としてまとめてみました。
Q: カテーテルの先端はどこに留置しますか?
A:上大静脈に留置します。通常の鎖骨下静脈から留置する IVHカテーテルと同様です。上大静脈は血流が速く、
高濃度の輸液(高カロリー輸液)や抗癌剤を投与しても瞬時に薄まり、血管炎などの障害が防止できます。
Q:カテーテル、ポート留置による違和感はありませんか?
A: 感染、液漏れなど特に異常がない場合は、痛みや違和感などはあまりないようです。しかし、前腕部に留置さ
れた場合、肘部で表面近くに位置するカテーテルが屈曲して多少の違和感を感じると言われる方がいらっしゃい
ます。日常生活には差し障りはないようです。ポートに関しては、留置部位によりさまざまな違和感を訴える方が
いらっしゃいます。
前腕留置の場合、両腕を使う仕事をする方などでは、手に抱えた物があたる、上腕部留置では腕を曲げた時、
筋肉の収縮に伴い異物感を感じる、鎖骨下留置では下着のひもやリュックサックの肩掛けがあたる、大腿部留置
では自転車のサドルがあたると言った様々な訴えを聞いてきました。しかし、それが原因で抜去が必要となった
方はいらっしゃいません。
Q:リザーバーは目立ちますか?
A:皮膚に丸い盛り上がりが残りますが、それほど目立ちません。前腕留置では、半袖をきた場合ポートの盛り上
がりが気になると言われる方がいらっしゃいます。その他の部位への留置では、着衣で隠れるため外見上は目
立ちません。
Q:リザーバー留置によって運動は制限されますか?
A: 埋め込んだ直後は、留置部位の激しい運動は避けなければなりませんが、傷が治ってしまえば入浴やその他
の運動も可能です。
Q:リザーバーからの治療中に入浴してもいいですか?
A: 治療期間中でも休薬時には針を抜去できます。その場合には何の問題もなく入浴できます。連日持続注入で
治療を行っている場合には、穿刺部が濡れないように、塩化ビニール製のアームカバーを使用したり、サランラッ
プでくるんだり工夫して入浴できます。看護師が指導を行います。
Q:カテーテル、ポートはどのくらい使用に耐えることができますか?
A: 実際に穿刺を行うポートのセプタム部は、通常シリコン製で、穿刺耐用回数は約 1,500 回とされています。カテ
ーテルは抗血栓作用(血の塊がくっつきにくい)を持つ素材でできています。体内でどのくらい使用に耐えるかに
関する報告はないようです。
Q:リザーバーはどのくらいの期間使用できますか?
A: 埋め込み部の感染、カテーテル閉塞、カテーテルやポートの破損、カテーテル逸脱など、システムを抜去・入
れ替えしなければならない状況が発生しない限り、システムの管理がきちんとされていれば、長期間使用できま
す。2003年 8月現在、最長期間は2,100日間(約 6年間)使用中の方がいらっしゃいます。また、治療終了などで
必要がなくなった時には、簡単な切開で取り出せます。
Q:穿刺時の消毒にはイソジンを使う必要があるのでしょうか?
A:通常は、静脈注射に準じ消毒用アルコールで行っています。動注リザーバーでは消毒効果の高いイソジンを使
用する場合が多いようです。
Q:システム使用時や洗浄時には、逆流を確認する必要がありますか?また、逆流が見られない場合はどうしたら
いいでしょうか?
A:逆血を確認することによって、カテーテルが血管に確実に入っているという安心感を得ることができ、合併症を
回避をすることができます。逆血が見られない場合は、一度ゆっくり注入してから引いてみると逆血がみられる場
合があります。それでも逆血がみられない場合は、上大静脈の壁にカテーテルの先端が当たっていたり、奇静脈
にカテーテル先端が入っていたり、カテーテル周囲にフィブリンが付着してる状況が考えられますので、主治医に
報告し透視でカテーテル先端位置の確認、またはリザーバー造影での確認を行う必要があります。
Q: カテーテルの洗浄は、生食と蒸留水とではどちらがいいのでしょうか?
A: 通常の洗浄の場合には、生食・蒸留水のどちらでも良いと思います。蒸留水には溶血作用があるため、短期
間のロックであれば蒸留水の洗浄のみでもカテーテル内の血栓形成による閉塞は起こりにくいと考えています。
点滴を毎日行う場合には、毎日ヘパロックしなくても蒸留水のロックで十分です。
Q:リザーバーから採血や輸血ができますか?
A: 使用後にシステムの洗浄をきちんと行えば、採血や輸血のルートとして使用することに問題はありません。た
だし、システムからの採血時は、洗浄に蒸留水を用いると、カテーテル内での溶血によりデータに異常を来す可
能性があるので、生食を使用するようにしています。
Q:リザーバーを使用して持続点滴をしている場合、針の交換はどのくらいでしますか?
A: 穿刺針の交換は、連日使用の場合でも 1 週間に 1 回行うようにしています。ただし、ガーゼの汚れを確認して、
汚れている場合には適宜交換が必要です。
Q:長期間使用しない時のリザーバーの管理はどうすればいいですか?
A: 使用しない期間が2週間以内であれば、ヘパリンNa10単位/mlで、2週間以上に及ぶ場合はヘパリンNa 100
単位/ml で 1 ヶ月に 1 回、システムの洗浄を行って下さい。
Q:システムが閉塞した場合、看護師レベルではどの様に対処したらいいのでしょうか?
A:まず、10ml の注射器に蒸留水を引き、ポンピング注入してみて下さい。それでも注入できない場合には、主治
医に連絡して下さい。
Q:抜針時ポートを固定しないといけませんか?
A: 穿刺針を抜く時に、皮下組織が弱いとポートが浮き上がってきますので、ポートの固定は必要です。
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